説明

医療総合システム

【課題】医療注射システムを備えた医療総合システムにおいて、簡単な手段にて柔軟性のある安全なかつ患者にやさしい検査を可能にする。
【解決手段】少なくとも1つの医学的な検査または治療装置(3)と制御装置(2)と割り当てられた医療注射システム(1)とを備えた医療総合システム(20)により、柔軟性のある患者にやさしい検査を保証するために、注射システム(1)が医療総合システム(20)に無線の双方向の通信接続および/または制御接続により接続可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置と、少なくとも1つの医学的な検査または治療装置と、医療注射システムとを備えた医療総合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検査ではしばしば造影剤が投与される。このいわゆるボーラス注入は、放射線診断装置による血管または組織の撮影時に比較的強いコントラストを可能にする。コントラストの改善のほかに、時間的に適切に定義されたボーラス注入時に、造影剤が組織内に広がる時間的経過から、例えば血液組織障壁の乱れの示唆が得られる。ボーラス注入および放射線診断装置による測定開始の時間的調整、すなわちタイミングは、この技術の再現性および高品質にとって決定的である。
【0003】
ボーラス注入は、医師によって注射器により手動で行なわれるか、または、例えば操作ユニットを介して制御される機械式の医療注射システムによって与えられる。患者に必要以上に長く負担をかけずに、利用可能な検査結果を得るためには、注射投与、X線の投入およびX線画像の撮影開始の間に、できるだけ正確なかつ信頼性のある同期化が必要である。この理由から、一般に医療注射システムは通信およびデータ交換のためにケーブルにより検査装置の制御装置に接続されている。このような装置は公知である(例えば、特許文献1参照)。事故防止のためおよび衛生学的な理由から、ケーブルによるデータ伝送が欠点である。
【特許文献1】独国特許出願公開第10302636号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、医療注射システムを備えた医療総合システムにおいて、簡単な手段にて柔軟性のある安全なかつ患者にやさしい検査を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明によれば、制御装置、少なくとも1つの医学的検査または治療装置および請求項1による医療注射システムを備えた医療総合システムによって解決される。本発明の有利な構成はそれぞれ従属請求項の対象である。
【0006】
本発明による医療総合システムの場合には、無線のデータ伝送による双方向の通信接続および/または制御接続によって全体として保証された検査経過の同期化において、邪魔になるケーブルなしに医療注射システムの位置決めおよび運搬を容易化することによって、使いにくくて事故の起こりやすい非衛生的なケーブルを省略することができ、また付加的に検査の柔軟性を高めることができる。
【0007】
本発明の一形態によれば、医療総合システムが注射システムと制御装置との間に無線の双方向の通信接続および/または制御接続を有する。これによって、ボーラス注入および検査または治療装置の測定開始の時間的調整の特に効果的な同期化が保証されている。
【0008】
有利な無線の通信接続および/または制御接続は、とりわけ電波接続または赤外線接続によって構成される。上述の無線接続はフレキシブルに使用可能であり、低コストで総合システムに組み込むことができる。
【0009】
本発明の他の形態によれば、通信接続および/または制御接続が指向性および/または周波数選択性に構成されているので、伝送信頼性が高められ、医療注射システムの総合システムへの明確な関連付けが簡単になる。
【0010】
医療注射システムは、特に医療注射システムへ組み込まれた蓄電池の形でのケーブル依存性のない電圧供給を有することが好ましい。無線の通信/制御と無線の電圧供給との組み合わせによって、総合システムからの医療注射システムの完全な電位分離および機械的分離が可能である。
【0011】
無線の通信および/または制御の改善された信頼性のための有利なやり方では、注射システムと制御装置との間の通信接続および/または制御接続が、CANopen(=Controller Area Network open、コントローラエリアネットワークオープン)の標準仕様に基づく複合データプロトコルを含む。この目的はトリガ信号の双方向の伝送も満たす。
【0012】
本発明の更に別の形態によれば、注射システムがRFIDトランスポンダを有し、制御装置がRFID送信−受信ユニットを有する(RFID=Radio Frequency Identification、無線自動識別または電波方式認識)。これによって、例えば注射器または造影剤に関して医療注射システムの簡単なかつ取り違えのない割り当てを保証することができる。このやり方で医療注射システムの使用可能性もチェックし、割り当てを容易にすることができる。
【0013】
本発明は、検査または治療装置がコンピュータ断層撮影システムまたは磁気共鳴システムまたはPETシステム(陽電子放出断層撮影システム)またはSPECTシステム(単光子放出コンピュータ断層撮影システム)またはX線装置によって構成されている総合システムにとって特に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下において、図面に概略的に示された実施例に基づいて、本発明ならびに従属請求項の特徴による有利な形態を詳細に説明する。ただし、それによって本発明はこの実施例に限定されない。図1は医療注射システムおよびX線診断装置を備えた本発明による医療総合システムを示し、図2は本発明による医療総合システムのための医療注射システムを詳細に示す。
【0015】
図1に、主要構成部分として医学的な検査または治療装置3、制御装置2および割り当て可能な医療注射システム1を有する本発明による医療総合システム20が示されている。制御装置2は、医療総合システム20の制御および監視のために役立ち、この目的のために、表示装置および画像処理用の画像システム14を備えた制御コンピュータ7を有する。制御装置2は医学的な検査または治療装置3にケーブルにより接続されているが、しかしケーブルなしに接続されていてもよいし、あるいは医学的な検査または治療装置3内に組み込まれていてもよい。
【0016】
本発明によれば、制御装置2は、無線の双方向の通信接続および/または制御接続により、医療注射システム1に接続可能である。この目的のために医療注射システム1は第1の送信および受信手段5を有し、制御装置2は第2の送信および受信手段6を有する。無線の通信方法に応じて、送信および受信手段5;6は、例えば無線電波送信/受信器または赤外線インターフェースとして構成されている。
【0017】
本発明の一形態によれば、注射システム1と制御装置2との間の通信および/または制御は、注射のためのCANopen(=Controller Area Network Open、コントローラエリアネットワークオープン)の標準仕様に基づく複合データプロトコルを含む。この場合に、例えば標準仕様「CiA DSP 425(CANOpen in Automation Draft Standard Proposal)Part 2:Injektor」が知られている。更に、注射システム1と制御装置2との間の通信および/または制御がトリガ信号の双方向伝送を含むように設計されるとよい。他の可能性はWLANまたはブルートゥースによる伝送である。
【0018】
医療総合システム20への誤りのない割り当ておよび結合のために、医療注射システム1は付加的にRFIDトランスポンダ18を有する(RFID=Radio Frequency Identification、無線自動識別または電波方式認識)。RFIDトランスポンダ18には注射器に関する情報が記憶されている。制御装置2は、更に付加的にRFID送信−受信ユニット19を有する。制御装置2は、RFID送信−受信ユニット19により、医療総合システム2への医療注射システム1の割り当ての際に、誤った造影剤投与による場合によっては重大な誤りを回避するために、適切な注射システム1も存在するかどうかをチェックする。
【0019】
検査のために患者4に、供給チューブ9および描写されていない注入針を介して注射システム1を介して造影剤12が投与される。注射の作動指令もしくは検査の他の重要なパラメータが医療注射システム2にケーブルなしで伝達される。医療注射システム1は、例えば作動時間または注入量のようなデータを同様にケーブルなしで制御装置2に伝達する。それに続いて制御装置2は、例えば注入時間に依存して検査または治療装置3との同期を制御する。
【0020】
図2には医療注射システム1が模範的に詳細示されている。医療注射システム1は、注射器8および監視装置10を有する。更に、監視装置10は送信・受信手段5、表示装置15および入力装置16を有する。注射器8はピストン11、シリンダ13および造影剤12を含む。造影剤12はシリンダ13内におけるピストン11の挿入によって供給チューブ9を介して患者4の静脈内に注入される。監視ユニット10は、例えばセンサ17を介して造影剤12の充填状態をチェックすることができる。
【0021】
医療注射システム1の例は、注入ポンプ、特にいわゆるパフューザー(Pefusor)である。個別の監視装置10を持たずCANオープン基準により医療総合システム20を介して制御される医療注射システム1も公知である。更に、例えば一方では食塩水、他方では造影剤のような複数の物資を注入することができる医療注射システム1も公知である(二重ヘッドインジェクタ)。
【0022】
本発明は、次のように要約される。少なくとも1つの医学的な検査または治療装置3と制御装置2と割り当てられた医療注射システム1とを備えた医療総合システム20により、柔軟性のある患者にやさしい検査を保証するために、注射システム1が医療総合システム20に無線の双方向の通信接続および/または制御接続により接続可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による医療総合システムの概略図
【図2】本発明による医療総合システムのための医療注射システムの概略図
【符号の説明】
【0024】
1 医療注射システム
2 制御装置
3 診断または治療装置
4 患者
5 送信および受信手段
6 送信および受信手段
7 制御コンピュータ
8 注射器
9 供給チューブ
10 監視ユニット
11 ピストン
12 造影剤
13 シリンダ
14 画像システム
15 表示装置
16 入力装置
17 センサ
18 RFIDトランスポンダ
19 RFID送信−受信装置
20 医療総合システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの医学的な検査または治療装置(3)と制御装置(2)とを備えた医療総合システム(20)において、総合システム(20)に医療注射システム(1)が割り当てられていて、注射システム(1)が総合システム(20)に無線の双方向の通信接続および/または制御接続により接続可能であることを特徴とする医療総合システム。
【請求項2】
総合システム(20)が注射システム(1)と制御装置(2)との間に無線の双方向の通信接続および/または制御接続を有することを特徴とする請求項1記載の医療総合システム。
【請求項3】
通信接続および/または制御接続が電波接続または赤外線接続によって構成されることを特徴とする請求項2記載の医療総合システム。
【請求項4】
通信接続および/または制御接続が指向性および/または周波数選択性に構成されていることを特徴とする請求項2記載の医療総合システム。
【請求項5】
注射システム(1)と制御装置(2)との間の通信接続および/または制御接続が、CANopen標準仕様に基づく複合データプロトコルを含むことを特徴とする請求項2記載の医療総合システム。
【請求項6】
注射システム(1)と制御装置(2)との間の通信接続および/または制御接続が、トリガ信号の双方向伝送を含むことを特徴とする請求項2記載の医療総合システム。
【請求項7】
医療注射システム(1)がケーブル依存のない電圧供給を有することを特徴とする請求項1記載の医療総合システム。
【請求項8】
医療注射システム(1)が電圧供給のための蓄電池を有することを特徴とする請求項7記載の医療総合システム。
【請求項9】
検査または治療装置(3)が、コンピュータ断層撮影システムまたは磁気共鳴システムまたは陽電子放出断層撮影システムまたは単光子放出コンピュータ断層撮影システムまたはX線装置によって構成されることを特徴とする請求項1記載の医療総合システム。
【請求項10】
注射システム(1)がRFIDトランスポンダ(18)を有し、制御装置(2)がRFID送信−受信ユニット(19)を有することを特徴とする請求項1記載の医療総合システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−275596(P2007−275596A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99424(P2007−99424)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】