説明

半導体ウェーハの評価装置及び評価方法

【課題】 従来特許の方法ではシリコンウェーハの破壊強度の評価が極めて困難になり、評価法の改善が求められてきた。
【解決手段】 半導体ウェーハの衝撃強度を評価するための装置であって、少なくとも、打撃物質と、該打撃物質を任意の所望の高さから落下させるための落下手段と、半導体ウェーハである試料を、ウェーハの径方向が前記打撃物質の落下方向と等しくなるように支持する押さえ手段とを具備し、前記押さえ手段により前記試料を、ウェーハの径方向が前記打撃物質の落下方向と等しくなるように支持した状態で、前記落下手段により前記打撃物質を前記所望の高さから前記試料のエッジ部に向けて落下させることができるものであることを特徴とする半導体ウェーハ評価装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス製造プロセス等で使用するウェーハ、たとえばシリコンウェーハの衝撃耐性を評価するための半導体ウェーハの評価装置と評価方法に関し、より具体的には、安定した衝撃耐性を示すウェーハを供給するための半導体ウェーハの評価装置と評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハは静的な応力に比べてウェーハに打撃を与えたときの衝撃強度は桁違いに小さい傾向が見られる。主にウェーハエッジ部に打撃が加わるケースが多く、このエッジ部の衝撃強度の評価が重要である。
【0003】
半導体デバイス製造プロセスにおいて、材料のシリコンウェーハに割れが発生すると、大きな損失が発生する。
このためデバイス製造時には、割れにくい半導体ウェーハが強く要望されている。
【0004】
半導体や液晶の製造プロセス、特にドライエッチング、イオン注入、蒸着等の工程においては、高温化/急加熱/急冷が進んでおり、さらに、真空下やドライ環境下で行われる製造工程も増加している。
また、基板としてのシリコンウェーハやガラス基板等はその大口径化が進み、衝撃の耐性が益々重視されるようなっている。
【0005】
ここで、板ガラスの場合は、衝撃破壊強度を測定し、統計的な処理をする様々な方法がある。
例えば「建築で使用する板ガラスの強度は、1/1000枚の破壊強度に耐えられる厚さを使用」などが目安として活用されている。
しかし、シリコンウェーハではこのような目安が存在せず、解析手法の開発が望まれている。
【0006】
ここで、シリコンウェーハはその結晶性から脆性材料といえるため、一般的な材料の評価技術では測定値のバラツキが大きい。
そのため、シリコンウェーハの割れ易さを評価して検査するための標準的な機器は市販されておらず、そのため例えば特許文献1〜4のような評価方法・評価装置が考案されてきた。
【0007】
ここで、特許文献1の測定装置及び測定方法について簡単に説明する。図5に、特許文献1の機械的強度評価装置の一例である概略図を示す。(a)は側面概略図、(b)はその一部の平面概略図である。
この機械的強度測定装置110は、半導体ウェーハ101を載置する載置台102と、載置台102に備えられ、半導体ウェーハ101をウェーハ外周の少なくとも2点A、Bで支持する支持手段103と、荷重シャフト104を平行移動させて先端部をウェーハ外周に押し当てて荷重する荷重手段105とを具備するものである。そして、半導体ウェーハ101を載置台102に載置した後、支持手段103により半導体ウェーハ101をウェーハ外周の少なくとも2点A、Bで支持しながら、荷重手段105により荷重シャフト104の先端部をウェーハ外周の1点Cに押し当て、半導体ウェーハ101の中心Oに向かって静圧荷重を加えるものである。
また、荷重手段105はエアシリンダ105aと圧力制御バルブ105bとを具備し、エアシリンダ105aにより荷重シャフト104を移動させ、圧力制御バルブ105bにより静圧荷重を制御する。圧力制御バルブ105bは、例えばArガスのボンベ106に接続されている。
【0008】
上記測定装置110を用いて、まず半導体ウェーハ101を載置台102に載置する。そして、載置台102に備えられた支持手段103により半導体ウェーハ101をウェーハ外周の少なくとも2点A、Bで支持しながら、荷重手段105の荷重シャフト104を平行移動させて、荷重シャフト104の先端部を半導体ウェーハ101のウェーハ外周の1点Cに押し当て、半導体ウェーハ101の中心に向かって静圧荷重を加え、該静圧荷重を増加して半導体ウェーハ101が破壊されたときの静圧荷重を測定する。
【0009】
しかし、上記特許文献1の測定装置及び測定方法でのシリコンウェーハ破壊強度は非常に高くてバラツキが大きく、本発明の目的とする半導体ウェーハの耐衝撃性のわずかの差異を評価するには、感度・精度の能力が不足していると懸念される。
また、特許文献2−4の方式では、強度=繰り返し打撃回数とする評価方法であり、シリコンウェーハは脆性材料であることを考慮すると、繰り返し打撃回数の影響を過大評価していると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−287139号公報
【特許文献2】特開2004−101258号公報
【特許文献3】特開平5−288663号公報
【特許文献4】特開平6−201533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
シリコンウェーハは結晶性の脆性材料のために、一般的な材料の評価技術では測定値のバラツキが大きい。また特に問題となるエッジ部の評価については、JIS規格は存在していない。
数世代前のシリコンウェーハでは、最外周部に析出や歪などが残っているケースもあって、1ロットにおける破壊強度の「最大値÷最小値=10倍」を超えるケースもあった。
このようなケースでは前出の従来技術の方法による強度の評価方法「破壊強度=繰り返し打撃回数」による選択も可能であった。
【0012】
しかし、最近のシリコンウェーハは、結晶の製造法やウェーハ加工方法が大幅に改善されている。このため、1ロットにおける破壊強度の「最大値÷最小値」の差はごく僅かであり、破壊強度と繰り返し打撃回数の相関関係が低くなってきた。
このため、従来技術の方法ではシリコンウェーハの破壊強度の評価が極めて困難になり、評価法の改善が求められてきた。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、半導体ウェーハのエッジ部における衝撃強度を安定かつ正確に評価することができる評価装置及び評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明では、半導体ウェーハの衝撃強度を評価するための装置であって、
少なくとも、打撃物質(以下、落鐘ともいう)と、該打撃物質を任意の所望の高さから落下させるための落下手段と、半導体ウェーハである試料を、ウェーハの径方向が前記打撃物質の落下方向と等しくなるように支持する押さえ手段とを具備し、
前記押さえ手段により前記試料を、ウェーハの径方向が前記打撃物質の落下方向と等しくなるように支持した状態で、前記落下手段により前記打撃物質を前記所望の高さから前記試料のエッジ部に向けて落下させることができるものであることを特徴とする半導体ウェーハ評価装置を提供する。
【0015】
このような評価装置であれば、半導体ウェーハからなる試料のエッジ部に与える打撃強度を可変することができ、所謂ステアケース法による半導体ウェーハの衝撃強度の評価を行うことができるため、従来に比べてバラツキ幅の小さな半導体ウェーハの衝撃強度評価を行うことができる。すなわち、半導体デバイス製造プロセスでのウェーハの割れ易さの指標となりうる高い信頼性を有する衝撃強度値を評価することができる評価装置とできる。
【0016】
また、本発明は、半導体ウェーハのエッジ部の衝撃強度を評価する方法であって、少なくとも下記(1)−(6)の工程を行うことができる。
(1) 半導体ウェーハである試料を、ウェーハの径方向が打撃物質の落下方向と等しくなるように支持するための押さえ手段によって支持し、前記打撃物質を、所定の重量及び高さから前記試料のエッジ部に落下させる。
(2) 2回目の実験として、(1)工程の試料とは別の試料を前記押さえ手段によって支持し、(1)工程で前記試料が破壊されなかった場合は、(1)工程よりも位置を高くするか、または高重量のものとしてから前記打撃物質を落下させ、(1)工程で前記試料が破壊された場合は、(1)工程よりも位置を低くするか、または低重量のものとしてから前記打撃物質を落下させる。
(3) 3回目の実験として、(1)工程及び(2)工程の試料とは別の試料を前記押さえ手段によって支持し、(2)工程で前記試料が破壊されなかった場合は(2)工程よりも位置を高くするか、または高重量のものとしてから前記打撃物質を落下させ、(2)工程で前記試料が破壊された場合は、(2)工程よりも位置を低くするか、または低重量のものとしてから前記打撃物質を落下させる。
(4) 所定の回数nとなるまで、上記工程を繰り返す。
(5) 前記破壊された試料の数とそのときの前記打撃物質の高さもしくは重量、前記破壊されなかった試料の数とそのときの前記打撃物質の高さもしくは重量の関係から、50%衝撃破壊高さ(H50)、50%衝撃破壊高さの標準偏差(SH)を算出する。
(6) 前記H50、前記SHから50%衝撃破壊エネルギー(E50)、50%衝撃破壊エネルギーの標準偏差(SE)を計算する。
【0017】
このように、本発明は打撃物質を所定の高さから落下させることによって、半導体ウェーハのエッジ部における動的応力に対する衝撃耐性を評価することができる。本発明は、曲げ破壊試験などの静的応力の評価を行う一般的な材料試験に比べて、より実際の半導体デバイス工程に近い環境での試験とすることができる。また、所定の回数落下試験を行うため、単発の試験に比べて偶発的なトラブルの入り込む余地を小さくすることができ、精度の高い評価とすることができる。更に直前の試験結果に応じて衝撃強度を変えるため、ウェーハ自体の不良による測定誤差が入り込む余地を減ずることができ、高精度化に寄与することになる。
これら以上の結果から、半導体ウェーハの衝撃強度を安定かつ正確に評価することができる評価方法となる。
【0018】
またこのとき、各工程における試料を、1枚の半導体ウェーハを分割して作製することが好ましい。
【0019】
このように、1枚の半導体ウェーハを分割して試料を作製することによって、1枚の半導体ウェーハから複数の衝撃強度を評価できるため、ウェーハを無駄にせずに済み、評価コストが高くなることを防ぐことができる。また、異なる半導体ウェーハでは衝撃強度が微妙に異なる事があるがこのような問題を軽減することができ、より精度の高い半導体ウェーハの衝撃強度の評価方法とすることができる。
【0020】
またこのとき、(1)−(6)の工程を、前記各工程における試料とは別の種類の半導体ウェーハに対しても行い、それらの結果から半導体ウェーハの衝撃強度の比較を行うことが好ましい。
【0021】
このように、上述のような本発明の工程(1)−(6)では、半導体ウェーハの衝撃強度を精度良く定量的に評価できるため、半導体ウェーハ同士の衝撃強度を比較するのに非常に好適であり、まず1つの半導体ウェーハに対して上記評価工程を行い、その後別の半導体ウェーハに対しても上記評価工程を行うことによって、半導体ウェーハ同士の衝撃強度を定量的に比較することができるようになる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明のように半導体ウェーハからなる試料のエッジ部に与える打撃強度を可変することで、半導体ウェーハの衝撃強度を統計的に評価することが可能となり、従来の評価方法・評価装置に比べて、評価能力・精度の向上を図ることができ、半導体デバイス製造プロセスでの半導体ウェーハのエッジ部の割れ易さを定量的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の半導体ウェーハ評価装置の概略の一例を示した図である。
【図2】本発明の半導体ウェーハ評価装置の押さえ手段及び用いる試料の一例を示した図である。
【図3】本発明の半導体ウェーハ評価装置の打撃物質及びその落下手段の他の一例の一部を拡大した図である。
【図4】本発明の半導体ウェーハ評価装置における押さえ手段の他の一例を示した図である。
【図5】特許文献1の機械的強度評価装置の一例の側面概略図及びその一部の平面概略図を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明についてより具体的に説明する。
前述のように、従来技術の方法ではシリコンウェーハの破壊強度の評価が極めて困難であり、評価法の改善が求められてきた。
【0025】
そこで、本発明者は、半導体ウェーハでは、静的な応力に比べてウェーハに打撃を与えたときの衝撃強度は桁違いに小さい傾向が見られることに着目し、統計的な手法によって半導体ウェーハの衝撃強度を評価することができる評価方法や装置について鋭意検討を重ねた。
【0026】
その結果、本発明者は、定落下重量でのステアケース法の原理を利用した衝撃耐性試験の方法やそれを行うことができる評価装置を用いること、そして測定結果をステアケース法によって解析することによって、特に半導体ウェーハのエッジ部の衝撃強度を統計的に評価できることを発想した。
【0027】
ステアケース法とは、ストレスの水準を上下させて各水準に区分したときの試料の破壊の有無のサンプル数とそのときのストレス水準値から衝撃破壊強度を統計解析する手法である(例えばDixon, W.J. and Mood,A.M., J.Amer.Stat.Assn., Vol.43, pp.109−126, 1948等参照)。このステアケース法は、品質検査でよく用いられており、恒常刺激法よりも試行回数を低減できることが利点としてあげられ、またその精度も高いことが知られている。
【0028】
そしてこのような方法やこれを行うことができる装置であれば、シリコンウェーハ等の半導体ウェーハの衝撃破壊強度を統計的に評価することが可能となることを発見し、本発明を完成させた。
【0029】
以下、本発明について図を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。図1は本発明の半導体ウェーハ評価装置の概略の一例を示した図である。
【0030】
図1に示すように、本発明の半導体ウェーハ評価装置1は、少なくとも、打撃物質5と、例えば高さ調整レール2とスライダー3と電磁磁石4からなり、打撃物質5を任意の所望の高さから落下させるための落下手段15と、評価装置1のベースとなる装置ベース8と、半導体ウェーハである試料Wの径方向と打撃物質5の落下方向とが等しくなるように一定の力で支持するための押さえ手段7aとを具備するものである。
そして、試料Wを押さえ手段7aにより試料Wの径方向と打撃物質5の落下方向とが等しくなるように支持した状態で、落下手段15により打撃物質5を所望の高さから試料Wのエッジ部に向けて垂直に落下させることができるものである。
【0031】
また、押さえ手段7aの上には、試料Wが割れた際の破片や試料Wに衝突した後の打撃物質5等の飛散防止対策のためのポリカーボネートカバー6を設置することが望ましい。
打撃物質5は、電磁磁石4から落下し始め、ポリカーボネートカバー6を通過して試料Wのエッジ部に衝突する。その後、打撃物質5は、ポリカーボネートカバー6によって回収される。
【0032】
図2は、本発明の半導体ウェーハ評価装置の押さえ手段及び用いる試料の一例を示した図である。
シリコンウェーハW0は面方位で表すと(100)ウェーハであり、ノッチ9が(011)に刻まれている。このウェーハを(110)のヘキ開面に沿って4分割して、扇状のシリコン片である試料Wを作成する。
試料Wを切り欠き10aから露出するように置いて、2つの押さえ手段7aでしっかりと挟みこみ、一定の力で保持されている。
そして、装置ベース8に試料Wの径方向が打撃物質5の落下方向と等しくなるように、押さえ手段7aを設置する。
【0033】
図2の切り欠き10aは小さな半円状である。これにより試料Wの保持領域を広くして、変形領域を狭くしている。このような押さえ手段は、シリコン片の変形量が少ない「微小部の破壊開始の強度」を評価する時に利用される。
試料Wのエッジ部は図2に示すように扇形の弧の形状をしているので、打撃物質5の底部との打撃領域は、必ず鉛直方向の点当りの衝撃力が加わる。この点で、打撃物質5は球状よりも円柱状が望ましい。
【0034】
このような評価装置1では、破壊エネルギーの強さを、打撃物質5の重量(サイズ)の増減と落下の高さを変更してコントロールすることが可能となっている。
具体的には、半導体ウェーハの衝撃強度を評価する際には、高さ調整レール2によってスライダー3を上下させ、任意の高さ(0〜2000mm)から打撃物質5を落下させ、試料Wのエッジ部が破損するか否かを評価し、試料が破損した場合は落下基準位置を下げ、破損しなかった場合は落下基準位置を上げることを繰り返すことができるようになっているものである。なお、打撃物質の高さではなく、打撃物質の重量を増減することもできるが、高さを調整する方が容易である。
なお、一連の衝撃強度の評価中は、打撃物質の落下高さまたは打撃物質の重量の一方を固定し、もう一方のみを変更することが望ましい。
【0035】
このような評価装置であれば、半導体ウェーハからなる試料のエッジ部に、強度の異なる打撃を簡単に加えることができるため、実際の半導体プロセスにおいて加わる衝撃を模擬することができる。また、加える衝撃は打撃物質を落下させる高さを変えることによって容易に変更して繰り返すことができ、ステアケース法のような統計的な手法を採用することができる。よってバラツキの小さい半導体ウェーハの衝撃強度評価を行うことができ、高い信頼性を有する衝撃強度値を得ることができる。
【0036】
ここで、半導体ウェーハとしてシリコンウェーハを評価する際には、シリコンの硬度(モース硬度7)が高いため、打撃物質や押さえ手段等は割れたシリコン片で傷つくことが予想される。また、打撃物質を任意の所望の高さから落下させるための落下手段としては、電磁磁石による保持が機構的に容易である。これらの打撃物質の保持と、劣化時の交換の事情から、打撃物質の材質はクロム鋼等が好適である。
【0037】
なお本発明では、上記の装置構造・材料のみに限定はされず、各種の特殊条件の測定が可能な装置構造にすることができる。
例えば、本発明の半導体ウェーハ評価装置の打撃物質及びその落下手段の他の一例の一部を拡大した図である図3のように、落下手段15´はストッパー12及び落鐘保持パイプ13をからなり、高さ調整レールに相当する落錘保持パイプ13はポリカーボネートからなり、落下高さ調整穴14が数多く開いている。そして、弾丸状の落錘5´をストッパー12によって所定の高さで保持することができるものである。
この落錘保持パイプ13はポリカーボネート製ならば、単軸スライダー方式のように高さの制限が無く、落錘5´の高さを10m以上と高くすることが出来る。そして、斜めや先端を曲げて保持することにより、シリコン片Wと落錘5´を特定の角度で激突させることも可能である。
そして、弾丸状の落錘5´は、ファインセラミックなどシリコンより硬度は高いが電磁磁石で保持が出来ない材質でも落錘を作製することが可能であり、落錘に歪ゲージを取り付けて評価することで、より子細な破壊挙動の特性を評価することが可能である。
【0038】
次に、上記のような本発明の半導体ウェーハ評価装置を用いた、本発明の半導体ウェーハの評価方法(半導体ウェーハのエッジ部の衝撃強度を評価する方法)の一例を以下に示すが、もちろん本発明はこれらに限定されるものではない。
以下、半導体ウェーハとしてシリコンウェーハを用いて、打撃物質の高さを変更して測定を行う場合を例にして説明するが、もちろん半導体ウェーハはこれに限定されず、貼り合わせ半導体ウェーハや半導体装置を搭載した石英基板、ガラス基板、あるいは化合物半導体基板等の各種半導体ウェーハの衝撃強度を評価できることや、打撃物質の高さのみならず、打撃物質の重量等を変更することによっても測定を行うことができることは言うまでもない。
【0039】
まず、試料の基となるシリコンウェーハや落下させる打撃物質、打撃物質を任意の所定の高さから落下させるための落下手段を準備する。
ここで、1枚の半導体ウェーハを分割することによって試料を作製することができる。例えば、直径300mm、導電型はP型、抵抗率10Ω・cm、酸素濃度12ppma、0.78mm厚の(100)ウェーハを5枚用意し、それらを4分割することによって20枚の試料を用意することができる。
【0040】
1枚の半導体ウェーハを分割して試料を作製することによって、1枚の半導体ウェーハから試料を多く作製することができるため、ウェーハの無駄が発生しにくく、評価を安く行うことができる。そして、異なる半導体ウェーハを用いる場合に発生する各半導体ウェーハ間の微妙な衝撃強度の違いの影響を軽減することができるため、より高精度な衝撃強度の評価とすることができる。
この分割方法としては、ウェーハ4分割・ウェーハ12分割・ウェーハ24分割等いずれの形態やサイズでもかまわず、特に限定されない。
【0041】
そして、先に準備した試料のうち1枚を選択し、試料を押さえ手段によって支持する。
また、試料の材質・厚み等から基本条件を決定する。例えば、打撃物質(落鐘)の形状を円柱、直径8mm、長さ20mm、重さ8.6g、打撃物質(落鐘)のスタート時の高さを100cm、高さの変化水準を10cmとすることができる。
【0042】
ここで、(1)工程として、押さえ手段によって支持された試料を装置ベースの上にセットし、電磁磁石によって保持されていた打撃物質を落下させ、試料のエッジ部に衝撃力を与える。
そして、試料の割れ欠けの有無を確認する。試料は割れ欠けの有無に関らず、打撃物質を落下させる操作を一回のみとして、新しい試料と交換する。これは、2つ目以降の試料についても同様である。
【0043】
次に(2)工程として、2回目の実験として、(1)工程とは別の試料を押さえ手段によって支持し、(1)工程で試料のエッジ部が破壊されなかった場合は(1)工程よりも高くした位置(例えば一水準高くした位置)から打撃物質を落下させ、(1)工程で試料のエッジ部が破壊された場合は(1)工程よりも低くした位置(例えば一水準低くした位置)から打撃物質を落下させる。
【0044】
そして、(3)工程として、3回目の実験として、(1)工程及び(2)工程とは別の試料を押さえ手段によって支持し、(2)工程で試料のエッジ部が破壊されなかった場合は(2)工程よりも高くした位置(例えば一水準高くした位置)から打撃物質を落下させ、(2)工程で試料のエッジ部が破壊された場合は(2)工程よりも低くした位置(例えば一水準低くした位置)から打撃物質を落下させる。
なお、試料の破壊の有無の判断は、試料の衝撃部位表面の亀裂・破断・破砕の有無を肉眼によって観察することによって行うことができるが、もちろんこれに限定されない。
【0045】
そして、(4)工程として、上記工程を、所定の回数nとなるまで繰り返す。試料1品種の評価について、n≧20すなわち上記工程を20回以上繰り返すことが望ましい。
また、このときの実験結果を下記表1に示す。表中の○は試料のエッジ部が破壊されなかった場合、×はエッジ部が破壊された場合を示している。
【0046】
【表1】

【0047】
更に、(5)工程として、エッジ部が破壊された試料の数とそのときの打撃物質の落下高さ、エッジ部が破壊されなかった試料の数とそのときの打撃物質の落下高さの関係から、50%衝撃破壊高さ(H50)、50%衝撃破壊高さの標準偏差(SH)を算出する。この50%衝撃破壊高さ(H50)は試験数の50%が破壊を起こす高さと推定されるものであり、また50%衝撃破壊高さの標準偏差(SH)はその標準偏差である。
この50%衝撃破壊高さ(H50)、50%衝撃破壊高さの標準偏差(SH)の算出には、ステアケース法の計算を用いるのが好ましい。
【0048】
例えば、エッジ部が破壊された試料の数とそのときの打撃物質の高さ、エッジ部が破壊されなかった試料の数とそのときの打撃物質の高さを整理して、エッジ部の破壊の有無において、測定された数の少なかった方を選び、その各落下高さに対する測定された数をfとする。
そして、50%衝撃破壊高さ(H50)および50%衝撃破壊高さの標準偏差(SH)は
(a) H50=H+(高さの変位量)×(A/C±1/2)
(b) SH=1.62×(高さの変位量)×((CB−A)/C+0.029)
上記の計算式によって求めることができる。
但しHはn=0に対する打撃物質の高さの値、また(a)式の±の符号については、エッジ部が破壊された試料の数をfnとした場合は−、エッジ部が破壊されなかった試料の数をfnとした場合は+、A=Σnf、B=Σn、C=Σfとする。
【0049】
このときにH50とSHが以下の条件1及び2を満足できない場合は、上記(1)から(5)の工程を再度行うことが望ましい。
条件1:H50−SH<スタート時の基準高さ<H50+SH
条件2:0.5×SH<高さの変化水準<2×SH
【0050】
そして、(6)工程として、先に算出したH50、SHから、50%衝撃破壊エネルギー(E50)、50%衝撃破壊エネルギーの標準偏差(SE)を計算する。
50%衝撃破壊エネルギー(E50)は、例えば
50=打撃物質の質量×重力加速度×50%衝撃破壊高さ(H50
から算出することができる。
また50%衝撃破壊エネルギーの標準偏差(SE)は、例えば各打撃物質の高さに打撃物質の質量と重力加速度を乗算したものの標準偏差から算出することができる。
【0051】
上述のように、(1)工程のように打撃物質を所定の高さから落下させることによって、半導体ウェーハの動的応力に対する衝撃耐性を評価することができる。本発明は、曲げ破壊試験などの一般的な材料試験に比べて、より実際の半導体デバイス工程に近い環境での試験とすることができる。
また、(4)工程に示すように、(2)−(3)工程を所定の回数nになるまで繰り返すことによって、単発の試験に比べて偶発的なトラブルの入り込む余地を小さくすることができ、精度の高い評価とすることができる。更に直前の試験結果に応じて衝撃強度を変えるため、ウェーハ自体の不良による測定誤差が入り込む余地を減ずることができ、高精度化に寄与することになる。
そして(5)−(6)工程のようにH50、SHを算出、E50、SEを計算することによって、半導体ウェーハの衝撃強度を他の半導体ウェーハと評価可能な程度に定量的に評価することができる。
これら以上のことによって、半導体ウェーハの衝撃強度を安定かつ正確に評価することができるようになる。
【0052】
また試料を準備する段階において、ウェーハを分割せずに丸ごと用いてももちろん良い。その一例を図4に示す。
【0053】
図4の押さえ手段7bは、各種の特殊条件の測定が可能な保持治具の構造である。
シリコンはダイヤモンド構造の立方晶系であり、ヤング率などの物性には異方性が存在している。図4の押さえ手段7bでは丸ごとのウェーハを使って、特定の結晶面での衝撃強度を評価する事が可能である。
また、図4の切り欠き10bは、大きな半楕円状になっている。これによりシリコンウェーハW0の保持領域を小さくして、変形領域を広くしている。
【0054】
またこのとき、シリコンウェーハW0のノッチ9に打撃物質5が衝突しないように、図中のθ分だけ打撃物質5の落下位置とノッチ9をずらす必要がある。このときのθの値は、ノッチ9の位置から反時計回りに0〜360°の範囲で任意に選択することができる。
例えば、結晶方位(100)ウェーハでノッチが(011)に刻まれている場合は、θの値を標準的な方向とされている45°とすることが好ましい。しかしシリコン等の異方性の結晶は、同じウェーハでもθの値によって衝撃破壊強度の測定値が異なってしまうため、測定を行う上で最適な角度θを任意に選択することが必要である。
【0055】
直径300mmのシリコンウェーハは、面積に比較して厚さは0.78mmと薄い。自重によっておおきく撓む場合もある。図4の押さえ手段7bと切り欠き10bはこのような弾性変形や座屈などの現象が見られる場合の、シリコンウェーハのマクロの破壊強度を評価する時に利用される。
このように、本発明は試料の保持方法における切り欠きや打撃物質の形状を変更することで、各種の子細な破壊挙動や特性を評価することが可能である。
【0056】
また、上記(1)−(6)の工程を、別の種類の半導体ウェーハに対しても行い、半導体ウェーハの衝撃強度の比較を行うことができる。
上述の衝撃強度の評価方法であれば、統計的な手法によって衝撃強度を評価しているため、精度良く定量的に衝撃強度を評価できる。
そのため、半導体ウェーハ同士の衝撃強度を比較するのに非常に適しており、各種シリコンウェーハの衝撃破壊強度の比較をするのに好適である。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示すような半導体ウェーハ評価装置を用いて実験を行った。対象ウェーハとして、直径300mm、導電型はP型、抵抗率10Ω・cm、酸素濃度12ppma、0.78mm厚、結晶方位(100)のシリコンウェーハ10枚を準備し、このウェーハを各々4分割し、それぞれ2枚はそのまま、2枚は熱処理をした。すなわち、「熱処理をしていないシリコン片20枚と熱処理をしたシリコン片20枚」の比較評価を行った。
このとき、上記熱処理を(800℃、2hr)に続けて(1000℃、16hr)の条件で行った。
また、このときの打撃物質は材質をクロム鋼、熱処理品、形状を円柱、直径を8mm、長さを20mm、重さを8.6gとし、打撃物質のスタート時の高さを100cm、高さの変化水準を10cmとした。
【0058】
このとき、熱処理をしなかったシリコン片20枚については、90度散乱LST(MO441)BMD欠陥測定機では、BMD欠陥を検出することが出来なかった。
尚、50%衝撃破壊エネルギー及びその標準偏差は以下のようになった。
50%衝撃破壊エネルギー(E50) = 0.082J
50%衝撃破壊エネルギーの標準偏差(SE) = 0.014J
【0059】
また、熱処理を行ったシリコン片20枚については、90度散乱LST(MO441)測定では、BMD欠陥が1.0×10/cm3検出された。
またこのとき、50%衝撃破壊エネルギー及びその標準偏差は以下のようになった。
50%衝撃破壊エネルギー(E50) = 0.101J
50%衝撃破壊エネルギーの標準偏差(SE) = 0.009J
【0060】
熱処理をしなかったシリコン片と熱処理を行ったシリコン片の破壊された破壊強度の分布から、母平均の検定(有意水準0.05)を行うと、母平均に有意差が見られた。
また、実施例において用いたシリコンウェーハは、熱処理によりBMD欠陥が多数発生し、50%衝撃破壊エネルギー(E50)が約23%程度高くなることがわかった。
このように本発明の評価装置により、半導体ウェーハのエッジ部の衝撃強度を統計的に評価することが可能になった。これにより従来の検査機に比べて評価能力の向上の効果が得られた。
【0061】
(比較例1)
図5に示すような特許文献1に記載の機械的強度測定装置を用いて、実施例1と同じ条件のシリコンウェーハの衝撃強度の評価を行った。尚、試料として熱処理をしないシリコンウェーハを20枚、熱処理を行うシリコンウェーハを20枚用意した。
【0062】
このとき、熱処理をしなかったシリコンウェーハ20枚については、90度散乱LST(MO441)BMD欠陥測定機では、BMD欠陥を検出することが出来なかった。
尚、シリコンウェーハのエッジ部の機械的強度、その平均値及びその標準偏差は以下のようになった。
機械的強度: 45Kg〜85Kg
機械的強度の平均値 = 55.1Kg
機械的強度の標準偏差 = 9.1Kg
【0063】
また、熱処理を行ったシリコンウェーハ20枚については、90度散乱LST(MO441)測定で、BMD欠陥が1.0×10/cm3検出された。
またこのとき、シリコンウェーハエッジ部の機械的強度、その平均値及びその標準偏差は以下のようになった。
機械的強度: 46Kg〜83Kg
機械的強度の平均値 = 54.8 Kg
機械的強度の標準偏差 = 10.1 Kg
【0064】
比較例1の測定結果では熱処理の有無による破壊強度の差異は確認できなかった。この装置でのシリコンウェーハ破壊強度は非常に高く、半導体デバイス製造プロセスではこのような高荷重が加わると考える事は難しい。また、破壊されたウェーハは非常に細かく粉砕された形状であり、デバイス製造時の割れとは異なる形態が見られた。
これらの原因はウェーハに静的荷重が加わるときには、座屈などのウェーハ変形により大きな内部応力が溜まって、破壊の発生の瞬間にウェーハを粉々にするからだと予想される。
【0065】
比較例1の測定結果と本発明の実施例1の結果は単位が異なるために単純には比較することは出来ない。しかし、本発明の実施例1では熱処理の有無による破壊強度の差を評価できる点で、比較例1の測定装置よりも検出精度が高いと考えられる。
【0066】
(比較例2)
特許文献2−4に記載されている評価装置は、ウェーハの保持方法やそれぞれ評価手段が異なっているために、本発明の結果と単純には比較することは出来ない。
しかし、上記の評価装置はいずれも1回にウェーハに与える衝撃強度を可変にすることが難しい。このために、破壊強度=繰り返し打撃回数が評価の基準である。
そこで本発明の半導体ウェーハ評価装置を使用して、「打撃強度を可変した破壊強度を評価(実施例1)」と「繰り返し打撃回数による破壊強度を評価(比較例2)」のどちらが破壊強度の解析手法として優れているかを比較した。
【0067】
具体的には、まず実施例1と同じ手法でウェーハ片である試料を作製し、装置ベースの上で保持する。尚、対象ウェーハとウェーハ片に対する熱処理は実施例1と同一の条件である。
その後、実施例1と同じ条件で落鐘を用意し、試料のエッジ部に向かって落下させる。尚、試料が破壊されたかどうかの判断は、試料の衝撃部位表面の亀裂・破断・破砕の有無を肉眼によって判断する。
【0068】
このとき、試料のエッジ部が破壊されなかった場合は、再び落鐘を繰り返し先程と同じ高さ(100cm)から落下させる。そして、試料の破壊が発生するまで何回も繰り返し打撃を与え続ける。
そして、試料のエッジ部が破壊されるまでの繰り返し打撃回数を記録して、熱処理をしなかった試料及び熱処理を行った試料各20枚ずつ全てに繰り返し衝撃試験を行う。
上記の実験結果によって得られた繰り返し打撃回数から、Σ打撃数(打撃回数×枚数 20枚分の総和)と、割れるまでの平均打撃数を計算する。このときの結果を、下記表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
このとき、熱処理をしなかったシリコン片20枚については、打撃1回目で11枚が破壊、繰り返し打撃2回目で3枚が破壊され、繰り返し打撃10回目で最後の1枚が破壊された。
結果は、Σ打撃数54回、割れるまでの平均打撃数2.7回/枚であった。
【0071】
また、熱処理を行ったシリコン片20枚については、打撃1回目で8枚が破壊され、繰り返し打撃7回目で最後の1枚が破壊された。
結果は、Σ打撃数52回・割れるまでの平均打撃数2.6回/枚であった。
以上の結果から「繰り返し打撃回数による破壊強度を評価(比較例2)」の解析手法では、熱処理の有無による品種間の破壊強度の差異を見出す事ができなかった。
【0072】
比較例2のケースでは、なかなか割れなかった1枚のサンプル試料が測定結果に大きく影響している。なかなか割れなかったサンプル試料を子細に観察すると、打撃により肉眼では確認できないサイズのミクロの打痕が発生しており、打痕が拡大することによって破壊に至っている。
この手法では破壊に繋がるちょうど良い強さの打撃強度で、同じ地点を何回も繰り返し打撃することが必要である。ちょうど良い強さの打撃強度は品種により異なるので、調整は難しい。
また、なかなか破壊されないサンプル試料の有無の影響を小さくするには評価枚数を多くする必要がある。評価時間が非常にかかる問題点もある。しかも、ミクロの打痕の発生などは状況がバラツキ易いので、再現性のある測定をすることは難しい。
従って、比較例2の評価方法は、シリコンウェーハは脆性材料であることを考慮すると、繰り返し打撃回数の影響を過大に評価する危険性があると考えられる。
【0073】
一方、本発明の「打撃強度を可変する破壊強度の評価法(実施例1)」は、1回の打撃で試料の破壊の有無によらずに、新しい試料と交換している。これによりミクロの打痕が破壊強度に与える影響を排除している。
本発明の実施例1では熱処理の有無による耐衝撃性のわずかの差異を、統計的に評価できるため、従来の強度測定装置よりも検出感度・精度が高いと予想される。
【0074】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0075】
1…半導体ウェーハ評価装置、 2…高さ調整レール、 3…スライダー、
4…電磁磁石、 5、5´…打撃物質(落鐘)、 6…ポリカーボネートカバー、
7a、7b…押さえ手段、 8…装置ベース、 9…ノッチ、
10a、10b…切り欠き、 12…ストッパー、
13…落錘保持パイプ、 14…落下高さ調整穴、 15、15´…落下手段、
101…半導体ウェーハ、 102…載置台、 103…支持手段、
104…荷重シャフト、 105a…エアシリンダ、 105b…圧力制御バルブ、
106…ボンベ、 A、B…ウェーハが支持される点、
C…荷重シャフトの先端部を押し当てる点、 O…ウェーハ中心、
W…試料、 W0…シリコンウェーハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハの衝撃強度を評価するための装置であって、
少なくとも、打撃物質と、該打撃物質を任意の所望の高さから落下させるための落下手段と、半導体ウェーハである試料を、ウェーハの径方向が前記打撃物質の落下方向と等しくなるように支持する押さえ手段とを具備し、
前記押さえ手段により前記試料を、ウェーハの径方向が前記打撃物質の落下方向と等しくなるように支持した状態で、前記落下手段により前記打撃物質を前記所望の高さから前記試料のエッジ部に向けて落下させることができるものであることを特徴とする半導体ウェーハ評価装置。
【請求項2】
半導体ウェーハの衝撃強度を評価する方法であって、少なくとも下記(1)−(6)の工程を行うことを特徴とする半導体ウェーハの評価方法。
(1) 半導体ウェーハである試料を、ウェーハの径方向が打撃物質の落下方向と等しくなるように支持するための押さえ手段によって支持し、前記打撃物質を、所定の重量及び高さから前記試料のエッジ部に落下させる。
(2) 2回目の実験として、(1)工程の試料とは別の試料を前記押さえ手段によって支持し、(1)工程で前記試料が破壊されなかった場合は、(1)工程よりも位置を高くするか、または高重量のものとしてから前記打撃物質を落下させ、(1)工程で前記試料が破壊された場合は、(1)工程よりも位置を低くするか、または低重量のものとしてから前記打撃物質を落下させる。
(3) 3回目の実験として、(1)工程及び(2)工程の試料とは別の試料を前記押さえ手段によって支持し、(2)工程で前記試料が破壊されなかった場合は(2)工程よりも位置を高くするか、または高重量のものとしてから前記打撃物質を落下させ、(2)工程で前記試料が破壊された場合は、(2)工程よりも位置を低くするか、または低重量のものとしてから前記打撃物質を落下させる。
(4) 所定の回数nとなるまで、上記工程を繰り返す。
(5) 前記破壊された試料の数とそのときの前記打撃物質の高さもしくは重量、前記破壊されなかった試料の数とそのときの前記打撃物質の高さもしくは重量の関係から、50%衝撃破壊高さ(H50)、50%衝撃破壊高さの標準偏差(SH)を算出する。
(6) 前記H50、前記SHから50%衝撃破壊エネルギー(E50)、50%衝撃破壊エネルギーの標準偏差(SE)を計算する。
【請求項3】
前記各工程における試料を、1枚の半導体ウェーハを分割して作製することを特徴とする請求項2に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項4】
前記(1)−(6)の工程を、前記各工程における試料とは別の種類の半導体ウェーハに対しても行い、それらの結果から半導体ウェーハの衝撃強度の比較を行うことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の半導体ウェーハの評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−114254(P2012−114254A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262085(P2010−262085)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】