説明

半導体ウエハ搬送装置

【課題】たとえばワイヤソーによる切断の後に、人手を介することなく半導体ウエハを1枚ずつ分離回収することが可能な半導体ウエハ搬送装置を提供すること。
【解決手段】本発明の半導体ウエハ搬送装置は、ウエハ槽1と、ウエハ排出手段2とを備えている。ウエハ槽1は、液体11を収容しており、鉛直方向上方に開口しているとともに、鉛直方向と交差する方向において互いに対向するように列をなした状態で、その少なくとも一部ずつが液体11に浸された複数のウエハwを収容する。ウエハ排出手段2は、複数のウエハwのうち上記列の先頭に位置するものを吸着する吸着部212を有しかつ当該ウエハwを開口1aからウエハ槽1上方に移送可能な吸着スライダ21を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば太陽電池の材料に用いられる半導体ウエハの製造において使用される搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、半導体ウエハの製造におけるワイヤソー装置を用いた切断工程を示している(たとえば特許文献1参照)。同図に示されたワイヤソー装置Xは、4つのガイドローラ93およびワイヤ94を備えており、半導体材料92をウエハ状に切断する装置である。ワイヤ94は、たとえばメッキが施されたピアノ線であり、4つのガイドローラ93に掛け回されており、図示された矢印の方向に送られる。半導体材料92は、たとえばガラスからなる保持部材91に接着剤によって接合された状態で、ワイヤ94に押し付けられる。ワイヤ94が半導体材料92を超えて保持部材91に到達すると、半導体材料92の切断が完了する。この切断により、保持部材91に各々の端縁が接合された状態で、複数のウエハが得られる。
【0003】
しかしながら、切断を終えた後には、最終的に上記ウエハを1枚ずつ分離した状態にする必要がある。この分離作業に先立って、切断粉の洗浄や、保持部材91からの剥離を目的として、上記ウエハは、洗浄液や接着剤を溶解する溶液に漬けられる。これらの液体によって上記ウエハがウエットの状態になると、となり合う上記ウエハどうしが張り付いてしまいやすい。このようなことでは、上記ウエハを1枚ずつ分離した状態とすることは容易ではなく、たとえば作業者が手作業によって上記半導体ウエハを1枚ずつ取り上げるといった作業が強いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−160431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、たとえばワイヤソーによる切断の後に、人手を介することなく半導体ウエハを1枚ずつ分離回収することが可能な半導体ウエハ搬送装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供される半導体ウエハ搬送装置は、液体を収容しており、鉛直方向上方に開口しているとともに、鉛直方向と交差する方向において互いに対向するように列をなした状態で、その少なくとも一部ずつが上記液体に浸された複数のウエハを収容するウエハ槽と、上記複数のウエハのうち上記列の先頭に位置するものを吸着する吸着部を有しかつ当該ウエハを上記開口から上記ウエハ槽上方に移送可能な吸着スライダ、を備える排出手段と、を備えていることを特徴としている。
【0007】
このような構成によれば、ウエハ槽内において列をなす複数のウエハについて、列の先頭に位置するものを、順次、排出手段によって上方に移送して分離することができる。したがって、かかる構成によれば、ウエハ槽内に浸された複数のウエハを、人手を介することなく自動的に分離回収することができる。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数のウエハを各別に収納可能なウエハ収納手段と、上記吸着スライダから上記ウエハを受け取り、このウエハを上記ウエハ収納手段に挿入する中継手段と、をさらに有する。このような構成によれば、ウエハを1枚ずつ分離した状態でウエハ収納手段に収納することができるので、分離回収後のウエハの取り扱いの面において便利である。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記中継手段は、回動および伸縮可能なアームと、上記アームの回動先端寄りに取り付けられた中継吸着部とを有しており、上記アームは、上記排出手段の上記吸着スライダに対して上記中継吸着部を正対させることにより上記ウエハの受け取りを可能とする中継角度と、上記ウエハ収納手段に上記ウエハを挿入する挿入角度とをとる。このような構成によれば、排出手段と中継手段との間のウエハの受け渡しを適切に行うことができる。また、中継手段のアームを適宜回動ないし伸縮させることにより、排出手段から受け取ったウエハを、ウエハ収納手段に挿入可能な所定の姿勢に変更したうえで、ウエハ収納手段に収納することができる。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数のウエハのうち上記列の先頭に位置するものの角度を検出する角度検出手段をさらに備えており、上記排出手段は、上記吸着部を上記複数のウエハのうち上記列の先頭に位置するものに正対するように上記吸着スライダの角度を調整する角度調整手段を有している。このような構成によれば、ウエハ槽内における列の先頭に位置するウエハの角度に多少のばらつきがある場合でも、排出手段の吸着部を吸着すべきウエハに正対させることができる。しがたって、吸着スライダによるウエハの吸着を適正に行うことができる。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、移送中の上記吸着スライダが吸着した上記ウエハに対して、上記ウエハの面内方向に抵抗力を付与しうる抵抗力付与手段をさらに備える。このような構成によれば、吸着すべきウエハに対してこれに隣り合うウエハが密着したまま不当に持ち上げられた場合でも、その不当に持ち上げられたウエハを分離してウエハ槽に戻すことができる。したがって、ウエハ槽内の複数のウエハを1枚ずつ確実に分離回収することができる。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記抵抗力付与手段は、弾性部材からなるローラを含む。このような構成によれば、ウエハの破損を防止しつつ1枚ずつ確実に分離回収することができる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、移送中の上記吸着スライダが吸着した上記ウエハの端面に対して液体を噴射する液体噴射手段をさらに備える。このような構成によれば、ウエハを1枚ずつより確実に分離することができる。
【0014】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る半導体ウエハ搬送装置の一例を示す正面図である。
【図2】図1に示す半導体ウエハ搬送装置の要部右側面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】ウエハをウエハ収納手段に挿入する状態を表す、図1のIV−IV線に沿う拡大断面図である。
【図5】抵抗力付与手段の動作を示す要部断面図である。
【図6】中継手段によるウエハの受け取り動作を示す要部正面図である。
【図7】従来の半導体ウエハ製造における一工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。なお、説明の便宜上、図1を基準として上下の方向を特定することにする。
【0017】
図1〜図6は本発明に係る半導体ウエハ搬送装置の一例を示している。本実施形態の半導体ウエハ搬送装置Aは、ウエハ槽1と、ウエハ排出手段2と、中継手段3と、角度検出手段4と、カセット5と、抵抗力付与手段6と、これら各部の動作を制御する制御手段(図示せず)とを備えている。
【0018】
ウエハ槽1は、鉛直方向上方が開口する容器状とされており、複数のウエハwを、所定の液体11に浸した状態で収容するためのものである。ウエハ槽1は、後述する角度検出手段4の光学式センサ41からの光を透過可能な材料によって構成されており、たとえばアクリル製である。複数のウエハwは、鉛直方向と交差する方向において互いに対向するように列をなした状態で液体11に浸されている。これらウエハwの枚数は、たとえば1000枚程度である。ウエハwの寸法の一例を挙げると、外形が156mm角であって、厚さが0.14〜0.18mmである。
【0019】
図1および図3に表れているように、ウエハ槽1は、スライド駆動機構12によって水平横方向(複数のウエハwが並ぶ方向)にスライド移動可能とされている。スライド駆動機構12は、たとえばウエハ槽1を載置固定する水平スライダ121と、この水平スライダ121を水平移動可能に支持するガイド台122と、サーボモータ123とを備えており、サーボモータ123と水平スライダ121との間にはネジ送り機構124が介在されている。かかる構成により、サーボモータ123を駆動すると、ウエハ槽1は、ガイド台122に対して水平方向に移動させられる。
【0020】
本実施形態では、ウエハ槽1内には、傾斜面13aを有する角度調整台13が配置されている。また、ウエハ槽1の底面内側部分はスリップ防止の処理が施されており、上記複数のウエハwは、角度調整台13にもたれるように傾斜姿勢を維持した状態で並んでいる。複数のウエハwは、ウエハ槽1内において、それぞれ、その上方寄りの一部を除いて液体11に浸かっている。ウエハ槽1内に収容される液体11としては、たとえば水が挙げられる。
【0021】
複数のウエハwは、前工程において柱状の半導体材料の切断等を行うことにより得ることができる。これらウエハwの作製は、たとえば以下の手順によって行う。まず、図7に示すようなワイヤソー装置Xを用い、保持部材91にその一側面が接着剤を介して接合された半導体材料92の下端をワイヤ94に押し当て、半導体材料92を切断する。半導体材料92を下方に押し下げると、ワイヤ94は、半導体材料92に対して相対的に上方に移動することとなる。ワイヤ94が保持部材91に到達すると、半導体材料92の切断が完了する。このとき、各ウエハは、それぞれの端縁が接着剤を介して保持部材91に保持された格好となっている。次に、保持部材91およびこれに保持されたウエハを接着剤の溶解液に浸し、各ウエハを保持部材91から剥離させる。次いで、分離された複数のウエハを洗浄液に浸して洗浄する。このようにして、複数のウエハwが得られる。なお、ウエハないし保持部材91を溶解液や洗浄液に浸す工程は、たとえば図示しない液浴槽を用いて行う。
【0022】
ウエハ排出手段2は、ウエハ槽1内の複数のウエハwを1枚ずつ分離してウエハ槽1の上方に移送するためのものであり、図1〜図3に表れているように、吸着スライダ21、および角度調整機構22を備えて構成されている。
【0023】
吸着スライダ21は、複数のウエハwのうち列の先頭に位置するものを、ウエハ槽1の開口1aを通じて上方に移送するためのものであり、図2によく表れているように、たとえばウエハ槽1の幅方向(図中の方向y1,y2)の外側に配置された長矩形枠状のガイド部材23に支持されている。吸着スライダ21は、ガイド部材23に対して、方向y1,y2方向において橋渡し状に配置されており、中央寄りにおいて垂下する支持プレート211と、支持プレート211に設けられた複数の吸着部212とを備えている。支持プレート211は、ガイド部材23が延びる方向に沿う姿勢で設けられており、本実施形態では、たとえば4つの吸着部212が、支持プレート211上において正方形のほぼ4隅に対応する位置に設けられている。
【0024】
吸着部212は、ウエハ槽1内の複数のウエハwのうち列の先頭に位置するものを吸着保持するためのものであり、たとえばカップ状の吸盤とされている。詳細な図示説明は省略するが、吸着部212の内側中央部は、たとえばフレキシブルチューブを介して吸引ポンプに連通しており、当該吸引ポンプの駆動により、吸着部212に正対するウエハwを吸着することができるようになっている。
【0025】
図2によく表れているように、ガイド部材23には、その長手方向に直線状に延びる一対のガイドレール231が設けられている。吸着スライダ21の方向y1、y2における両端部は、ガイドレール231に対してその長手方向にスライド移動可能に支持されている。また、ガイド部材23には、たとえばシリンダ232が設けられており、このシリンダ232は、ガイドレール231の長手方向に沿って進退移動するピストンロッド233を備えている。ピストンロッド233の先端部は、吸着スライダ21に連結されている。吸着スライダ21は、シリンダ232の駆動により、ピストンロッド233が進出させられた上動位置(図3において実線で表す)とピストンロッド233が後退させられた下動位置(図3において仮想線で表す)との間において、ガイド部材23に沿ってスライド移動させられる。
【0026】
本実施形態では、図3に表れているように、吸着スライダ21が下動位置にあるときには、複数の吸着部212は開口1aを通じてウエハ槽1内に進入してウエハwに対向する位置にあり、吸着スライダ21が上動位置にあるときには、複数の吸着部212はウエハ槽1に対して上方に離間した位置にある。かかる構成により、吸着スライダ21は、ウエハ槽1内のウエハwを、開口1aを通じてウエハ槽1の上方に移送可能となっている。
【0027】
図1、図2、および図5に表れているように、ガイド部材23にはまた、抵抗力付与手段6が設けられている。抵抗力付与手段6は、吸着スライダ21によって上方に移送中のウエハwに対して抵抗力を付与するためのものであり、ウエハ槽1の開口1aの上方近傍に配置されている。抵抗力付与手段6は、スポンジゴムなどの弾性部材からなるローラ61と、このローラ61を回転駆動させるモータ62とを備え、たとえばローラ61とモータ62の出力軸との間にベルト63が掛け回されている。ローラ61は、上方に移送中のウエハwに対して適度な接触抵抗を付与することができるように、その取付位置が調整されている。また、ローラ61は、モータ62の駆動により、図1および図5における時計回りに回転する。
【0028】
吸着スライダ21の中央上部には、噴射ノズル24が設けられている。噴射ノズル24は、吸着スライダ21によって移送中のウエハwに液体を噴射するためのものであり、噴射ノズル24の先端部24aは、吸着保持されたウエハwの上端面に向けられている。この噴射ノズル24は、本発明でいう液体噴射手段に相当するものである。噴射ノズル24には、たとえば図示しないフレキシブルチューブが接続されており、このフレキシブルチューブを介して噴射すべき液体が供給される。噴射ノズル24から噴射される液体としては、たとえば水が挙げられる。なお、噴射ノズル(液体噴射手段)としては、移送中のウエハwに液体を噴射させることができるものであればよく、たとえば吸着スライダ21以外の場所に固定的に設けてもよい。
【0029】
角度調整機構22は、吸着スライダ21の角度を調整するためのものであり、図1〜図3に表れているように、たとえばガイド部材23の基端部に設けられたウォームギア221と、駆動源としてのサーボモータ222とを備えて構成されている。ここで、「吸着スライダ21の角度」とは、水平方向に対して、ガイド部材23が延びる方向(換言すると吸着スライダ21のスライド移動方向)がなす角度θを意味する。ウォームギア221は、サーボモータ222の出力軸に固定されたウォーム221aと、ガイド部材23の基端部に固定されたウォームホイル221bとを有している。これにより、サーボモータ222が駆動されると、ガイド部材23は、ウォームホイル221bの軸心O1周りに回動させられる。かかる構成により、吸着スライダ21の角度θを調整することが可能となっている。
【0030】
中継手段3は、吸着スライダ21からウエハwを受け取り、この受け取ったウエハwを、カセット5に挿入するためのものであり、図1に表れているように、アーム31と、複数の中継吸着部32とを備えている。
【0031】
アーム31は、たとえば長手方向に伸縮可能な伸縮ロッドを含む構成とされている。アーム31の基端寄りには、たとえばシリンダ33が設けられており、このシリンダ33は、アーム31の長手方向に沿って進退移動するピストンロッド34を備えている。ピストンロッド34の先端部は、アーム31の先端寄りの部分に連結されている。アーム31は、シリンダ33の駆動により、長手方向に伸縮させられる。
【0032】
アーム31はまた、所定の軸心周りに回動可能とされている。具体的には、アーム31の基端部は、たとえばロータリーアクチュエータ35の回動軸351に連結されている。アーム31は、ロータリーアクチュエータ35の駆動により、回動軸351の軸心O2周りに回動させられる。これにより、アーム31は、軸心O2周りに回動可能であり、かつ長手方向において伸縮可能となっている。
【0033】
中継吸着部32は、吸着スライダ21によって持ち上げられたウエハwを、当該ウエハwに対して吸着スライダ21とは反対側から吸着保持するためのものであり、たとえばカップ状の吸盤とされている。詳細な図示説明は省略するが、中継吸着部32の内側中央部は、たとえばフレキシブルチューブを介して吸引ポンプに連通しており、当該吸引ポンプの駆動により、中継吸着部32に正対するウエハwを吸着することができるようになっている。中継吸着部32は、アーム31の先端寄りに設けられたブラケット36に支持されている。本実施形態では、たとえば2つの中継吸着部32が、アーム31の長手方向において離間する位置に設けられている。図6を参照すると理解できるように、ブラケット36は、アーム31に対し、アーム31の長手方向に対して直角である方向にスライド移動可能に支持されており、アーム31の先端寄りに取り付けられたシリンダ37の駆動により、進退移動させられる。
【0034】
本実施形態では、水平方向に対してアーム31の長手方向がなす角度について、吸着スライダ21に対して中継吸着部32を正対させてウエハwの受け取りを可能とする中継角度αと、ウエハwをカセット5に挿入可能な挿入角度(本実施形態では0°)とをとるように、アーム31が回動させられる。
【0035】
角度検出手段4は、ウエハ槽1内にある複数のウエハwのうち、列の先頭に位置するものの角度を検出するためのものである。ここで、「ウエハwの角度」とは、水平方向とウエハwが延びる方向とがなす角度を意味する。本実施形態では、図3に表れているように、角度検出手段4は、たとえば、鉛直方向に離間して配置された2つの光学式センサ41を備えて構成されている。光学式センサ41は、たとえばレーザ光の出射部および受光部を有しており、出射部からウエハwに向けて水平方向に出射されたレーザ光がウエハw表面で反射され、当該反射光を受光することにより、光学式センサ41からウエハwまでの距離を測定することが可能となっている。たとえば、2つの光学式センサ41においてそれぞれ検出した測定距離情報と、2つの光学式センサ41が離間する、既知の距離との関係から、制御手段において演算処理を実行することにより、ウエハwの角度が算出される。なお、光学式センサ41の設置数は、2つに限定されず、3つ以上設けてもよい。
【0036】
カセット5は、中継手段3のアーム31によって移送されたウエハwを収納するためのものである。図1に表れているように、カセット5は、互いに積層配置された複数のポケット5aを有しており、各ポケット5aに1枚のウエハwを収納可能とされている。ポケット5aは、たとえばカセット5の奥壁5bから手前側に延びる仕切板5cによって仕切られている。仕切板5cは、鉛直方向に一定ピッチで設けられている。その一方、図4に表れているように、幅方向(同図における方向y1,y2)の中央部は仕切られておらず、鉛直方向において連通している。これにより、アーム31に支持されたウエハwを、中継吸着部32やブラケット36等とともにカセット5内に挿入することが可能となっている。
【0037】
上記構成のカセット5は、リフタ51によって鉛直方向に沿って移動可能とされている。詳細な図示説明は省略するが、リフタ51は、たとえばネジ送り機構およびサーボモータを備えて構成されており、一定ピッチずつ上昇させることができるように構成されている。
【0038】
次に、上記構成の半導体ウエハ搬送装置Aの動作について説明する。
【0039】
上記構成の半導体ウエハ搬送装置Aは、たとえば太陽電池の材料に用いられる半導体ウエハの製造において、上述の前工程(半導体材料の切断工程、および洗浄工程等)を経て、ウエハ槽1内において液体11に浸かった状態の複数のウエハwを、1枚ずつ分離回収するために用いられる。
【0040】
まず、複数のウエハwのうち列の先頭に位置するもの(図1および図3において列をなすウエハwの右端)の角度を、角度検出手段4によって検出する。ここで、2つの光学式センサ41においてそれぞれ検出した測定距離情報を利用して、列の先頭に位置するウエハwの角度が算出される。そして、角度調整機構22によって、吸着スライダ21の角度θを上記ウエハwの角度と一致するように調整する。
【0041】
次いで、ガイド部材23に設けられたシリンダ232(図2参照)の駆動により、上動位置にある吸着スライダ21を下動位置までスライド移動させる。ここで、吸着スライダ21の角度θが上記ウエハwの角度に一致させられているので、吸着部212は、列の先頭に位置するウエハwに正対している(図3の仮想線を参照)。次いで、光学式センサ41において検出した上記測定距離情報を利用して、スライド駆動機構12によって、ウエハ槽1の水平横方向の位置を調整する。このとき、たとえば、吸着部212の先端と列の先頭のウエハwとの間に僅かな隙間が生じるように、ウエハ槽1の位置合わせを行う。そして、吸着部212に接続された吸引ポンプを駆動させることにより、列の先頭のウエハwが吸着部212に吸着保持される。
【0042】
次いで、シリンダ232の駆動により、吸着スライダ21が上動位置までスライド移動する。これにともない、吸着部212に吸着保持されたウエハwは、ウエハ槽1の開口1aを通じて上方に移送される。ここで、吸着部212に吸着保持されたウエハwに対し、これに隣り合うウエハwが密着したまま持ち上げられる場合がある。この場合、図5に表れているように、不当に持ち上げられたウエハwには、ローラ61が回転しながら接触することにより、面内方向に下向きの抵抗力が与えられる。また、噴射ノズル24からウエハwの上端面に向けて水が噴射される。これにより、不当に持ち上げられたウエハwは、吸着部212に吸着保持されたウエハwからスムーズに分離し、ウエハ槽1内に戻る。
【0043】
次いで、吸着スライダ21が上動位置に到達すると、角度調整機構22によって、吸着スライダ21の角度θが所定の角度αとなるように調整される。ここで、図1に表れているように、中継手段3のアーム31は伸長した状態にあり、中継吸着部32は、吸着スライダ21が吸着したウエハwに対向する位置にある。また、このとき、アーム31は、あらかじめウエハwの受け取りが可能な中継角度αをとっており、中継吸着部32が吸着スライダ21に対して正対する姿勢となっている。
【0044】
次いで、中継吸着部32は、図6において仮想線で表すように、シリンダ37の駆動によって吸着スライダ21側に進出移動させられ、ウエハwに当接する。この状態において、中継吸着部32に接続された吸引ポンプを駆動させることにより、ウエハwが中継吸着部32に吸着保持される。引き続き、吸着部212に接続された吸引ポンプを停止し、吸着部212内側を大気圧状態に開放する。これにより、吸着部212がウエハwから離れ、中継吸着部32によるウエハwの受け取りが完了する。この後、中継吸着部32は、シリンダ37の駆動によって、アーム31側に後退移動する。
【0045】
次いで、図1において仮想線で表すように、シリンダ33の駆動により、アーム31が収縮させられる。そして、ロータリーアクチュエータ35の駆動により、アーム31は、軸心O2周りに回動させられ、カセット5にウエハwを挿入可能な挿入角度(0°)をとる。
【0046】
引き続き、シリンダ33の駆動によってアーム31が伸長させられ、中継吸着部32に吸着保持されたウエハwがカセット5のポケット5aに挿入される。次いで、カセット5は、リフタ51の駆動によって、ポケット5aの1ピッチ分だけ上昇移動する。これと同時に、中継吸着部32に接続された吸引ポンプを停止し、中継吸着部32内側を大気圧状態に開放する。これにより、中継吸着部32がウエハwから離れ、ウエハwは仕切板5cに支持された状態でポケット5aに収納される。
【0047】
次いで、シリンダ33の駆動により、アーム31が収縮させられる。そして、ロータリーアクチュエータ35の駆動により、アーム31は、軸心O2周りに回動させられ、ウエハwの受け取りが可能な中継角度αに戻る。ここで、アーム31が中継角度に戻るまでの間に、ウエハ槽1内の列の先頭のウエハw(先に搬送されたウエハwに隣り合うウエハw)の角度を、角度検出手段4によって検出する。
【0048】
そして、角度検出手段4、ウエハ排出手段2、中継手段3、リフタ51等の各部の一連の動作を繰り返すことにより、カセット5に複数のウエハwが1枚ずつ分離した状態で収納される。
【0049】
次に、半導体ウエハ搬送装置Aの作用について説明する。
【0050】
本実施形態の半導体ウエハ搬送装置Aを用いれば、ウエハ槽1内において列をなす複数のウエハwについて、列の先頭に位置するものを、順次、ウエハ排出手段2によって上方に移送して分離することができる。したがって、かかる構成によれば、ウエハ槽1内に浸された複数のウエハwを、人手を介することなく自動的に分離回収することができる。
【0051】
本実施形態の半導体ウエハ搬送装置Aは、複数のウエハwを各別に収納可能なカセット5と、吸着スライダ21からウエハwを受け取り、このウエハwをカセット5に挿入する中継手段3と、を有している。これにより、ウエハwを1枚ずつ分離した状態でカセット5に収納することができる。このことは、分離回収後のウエハwの取り扱いの面において便利である。
【0052】
中継手段3は、回動および伸縮可能なアーム31と、アーム31の回動先端寄りにブラケット36を介して取り付けられた中継吸着部32とを有している。アーム31は、ウエハ排出手段2の吸着スライダ21に対して、中継吸着部32を正対させることによりウエハwの受け取りを可能とする中継角度αと、カセット5にウエハwを挿入する挿入角度(0°)とをとる。これにより、ウエハ排出手段2と中継手段3との間のウエハwの受け渡しを適切に行うことができる。また、中継手段3のアーム31を適宜回動ないし伸縮させることにより、ウエハ排出手段2から受け取ったウエハwを、カセット5に挿入可能な所定の姿勢に変更したうえで、カセット5に収納することができる。
【0053】
本実施形態においては、半導体ウエハ搬送装置Aは、ウエハ槽1内の複数のウエハwのうち列の先頭に位置するものの角度を検出する角度検出手段4を備えている。また、ウエハ排出手段2は、吸着部212を複数のウエハwのうち列の先頭に位置するものに正対するように吸着スライダ21の角度を調整する角度調整機構22を有している。これにより、ウエハ槽1内における列の先頭に位置するウエハwの角度に多少のばらつきがある場合でも、角度検出手段4および角度調整機構22が協働することによって、吸着部212を吸着すべきウエハwに正対させることができる。特に、吸着すべきウエハwに密着して不当に持ち上げられたウエハwがその後ウエハ槽1内に戻ると、ウエハwの角度が変化する場合があるが、このような場合においても、吸着部212を次に吸着すべきウエハwに正対させることができる。しがたって、吸着スライダ21によるウエハwの吸着を適正に行うことができる。
【0054】
本実施形態では、移送中の吸着スライダ21が吸着したウエハwに対して、ウエハwの面内方向に抵抗力を付与しうる抵抗力付与手段6が設けられている。これにより、吸着すべきウエハwに対してこれに隣り合うウエハwが密着したまま不当に持ち上げられた場合でも、その不当に持ち上げられたウエハwを分離してウエハ槽1に戻すことができる。したがって、ウエハ槽1内の複数のウエハwを1枚ずつ確実に分離回収することができる。また、不当に持ち上げられたウエハwに対する抵抗力の付与は、弾性部材からなるローラ61が当該ウエハwに接触することによって行われる。かかる構成によれば、ウエハwの破損を防止しつつ1枚ずつ確実に分離回収することができる。
【0055】
本発明に係る半導体ウエハ搬送装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る半導体ウエハ搬送装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0056】
A 半導体ウエハ搬送装置
w ウエハ
1 ウエハ槽
2 ウエハ排出手段
3 中継手段
4 角度検出手段
5 カセット(ウエハ収納手段)
6 抵抗力付与手段
1a 開口
21 吸着スライダ
212 吸着部
22 角度調整機構(角度調整手段)
24 噴射ノズル(液体噴射手段)
31 アーム
32 中継吸着部
61 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容しており、鉛直方向上方に開口しているとともに、鉛直方向と交差する方向において互いに対向するように列をなした状態で、その少なくとも一部ずつが上記液体に浸された複数のウエハを収容するウエハ槽と、
上記複数のウエハのうち上記列の先頭に位置するものを吸着する吸着部を有しかつ当該ウエハを上記開口から上記ウエハ槽上方に移送可能な吸着スライダ、を備える排出手段と、
を備えていることを特徴とする、半導体ウエハ搬送装置。
【請求項2】
上記複数のウエハを各別に収納可能なウエハ収納手段と、
上記吸着スライダから上記ウエハを受け取り、このウエハを上記ウエハ収納手段に挿入する中継手段と、をさらに有する、請求項1に記載の半導体ウエハ搬送装置。
【請求項3】
上記中継手段は、回動および伸縮可能なアームと、上記アームの回動先端寄りに取り付けられた中継吸着部とを有しており、
上記アームは、上記排出手段の上記吸着スライダに対して上記中継吸着部を正対させることにより上記ウエハの受け取りを可能とする中継角度と、上記ウエハ収納手段に上記ウエハを挿入する挿入角度とをとる、請求項2に記載の半導体ウエハ搬送装置。
【請求項4】
上記複数のウエハのうち上記列の先頭に位置するものの角度を検出する角度検出手段をさらに備えており、
上記排出手段は、上記吸着部を上記複数のウエハのうち上記列の先頭に位置するものに正対するように上記吸着スライダの角度を調整する角度調整手段を有している、請求項1ないし3のいずれかに記載の半導体ウエハ搬送装置。
【請求項5】
移送中の上記吸着スライダが吸着した上記ウエハに対して、上記ウエハの面内方向に抵抗力を付与しうる抵抗力付与手段をさらに備える、請求項1ないし4のいずれかに記載の半導体ウエハ搬送装置。
【請求項6】
上記抵抗力付与手段は、弾性部材からなるローラを含む、請求項5に記載の半導体ウエハ搬送装置。
【請求項7】
移送中の上記吸着スライダが吸着した上記ウエハの端面に対して液体を噴射する液体噴射手段をさらに備える、請求項1ないし6のいずれかに記載の半導体ウエハ搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−165891(P2010−165891A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7317(P2009−7317)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000153672)株式会社住友金属ファインテック (35)
【Fターム(参考)】