説明

半導体メモリ装置および半導体メモリシステム

【課題】製品寿命の長いメモリカード2を提供する。
【解決手段】実施形態のメモリカード2は、SLC領域22Aと、MLC領域22Bと、を有するメモリ部22と、MLC領域22Bに記憶されたデータの誤りを訂正する誤り訂正部20と、誤り訂正部20が誤りを検出したデータを記憶していた多値メモセルの位置情報をSLC領域22Aに記憶し前記位置情報にもとづき消失訂正を行う消失訂正部21と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、消失訂正を行う半導体メモリ装置および前記半導体メモリ装置を具備する半導体メモリシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
不揮発性の半導体メモリ装置であるNAND型フラッシュメモリ装置が、パーソナルコンピュータ、携帯電話もしくはデジタルカメラ等のホストデバイスの外部メモリ装置、またはコンピュータシステムの内蔵メモリ装置として普及している。
【0003】
メモリ装置に記憶するデータは、誤り訂正符号により符号化され、読み出し時に誤り検出/訂正処理を行うことで、高い信頼性を担保している。出願人は、より高い信頼性を担保するために、誤りが発生した符号の履歴を記憶する誤り訂正履歴記憶部を有し、その履歴をもとに、消失訂正を行う半導体メモリ装置を開示している。消失訂正では読み出したデータのうち「0」か「1」か、全くわからない無効データを、正常データを用いて復元する。
【0004】
ここで、メモリ装置では、記憶するときには記憶するデータに応じてメモリセルの電荷蓄積層に絶縁膜を介して所定の電荷を注入し、再生するときにはメモリセルの電荷量に応じたトランジスタの閾値電圧の違いを測定し記憶されたデータを読み出す。すなわち、メモリセルは異なる閾値電圧を有する複数の記憶状態となり、それぞれの記憶状態に対応するデータが決められている。2値メモリ装置においては、それぞれのメモリセルは、例えば、電荷が蓄積されていない閾値電圧が低い状態のメモリセルを「1」データとし、電荷が蓄積されている閾値電圧が高い状態のメモリセルを「0」データと決められている。
【0005】
また、4つの異なる閾値電圧の記憶状態を用いることで、ひとつのメモリセルに、2ビットデータの記憶が可能な多値メモリ装置も開発されている。なお、多値記憶メモリセルの信頼性は2値記憶メモリセルと比較すると、良くはない。
【0006】
ここで、NAND型フラッシュメモリ部には、書き込み/消去回数の制限、および読み出し回数の制限がある。書き込み/消去回数の制限は書き込み/消去処理では、基板に対してゲートに高電圧がかけられフローティングゲートに電子が注入されることに起因する。すなわち書き込み/消去処理が何回も実行されるとフローティングゲート周りの酸化膜が劣化し、データが破壊されてしまうことがある。
【0007】
一方、読み出し回数の制限はリードディスターブに起因する。リードディスターブとは非選択メモリセルにもワード線から読出し電圧が印加されるため電子が徐々にフローティングゲートに注入される現象である。すなわちデータが記憶されたメモリセルから読み出し処理のみを繰り返していくに従い、データを読み出すときの閾値電圧が変化しデータの記憶状態が劣化する。そして、読み出し誤りが多くなり、読み出したデータの信頼性が低下していく。
【0008】
特に、電子辞書データのように読み出し専用データを記憶しているメモリ部は、読み出し回数の増加により、正しいデータが読み出せなくなり、信頼性が低下するおそれがあった。
【0009】
リードディスターブを防ぎ信頼性を維持するためには、リフレッシュ処理(再書き込み処理)を行うことが有効である。しかしリフレッシュ処理回数が多くなると、今度は、書き込み/消去回数の制限により、メモリ装置の製品寿命が短くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−300020号公報
【特許文献2】特開2001−93288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の実施形態は、製品寿命の長い信頼性の高い半導体メモリ装置および前記半導体メモリ装置を具備する半導体メモリシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様の半導体メモリ装置は、2種類の閾値電圧を有する記憶状態になる複数の2値メモリセルにより構成される2値記憶領域と、4種類以上の閾値電圧を有する記憶状態になる複数の多値メモリセルにより構成される多値記憶領域と、を有するメモリ部と、多値記憶領域に記憶されたデータの誤りを検出し訂正する誤り検出訂正部と、誤り検出訂正部が誤りを検出したデータを記憶していた多値メモセルの位置情報を2値記憶領域に記憶し、位置情報にもとづき消失訂正を行う消失訂正部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態の半導体メモリシステムの構成図である。
【図2】実施形態の半導体メモリの消失訂正処理を説明するための説明図である。
【図3】実施形態の半導体メモリの復号処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図4】実施形態の半導体メモリの復号処理を説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態の半導体メモリ装置(以下、「メモリ装置」ともいう)および前記メモリ装置を具備する半導体メモリシステム(以下、「メモリシステム」ともいう)1について説明する。
【0015】
図1に示すように、メモリシステム1は、ホストデバイス(以下「ホスト」という)3と、メモリ装置であるメモリカード2と、を有する。ホスト3は、パソコンまたはデジタルカメラ等であり、メモリカード2は、ホスト3と着脱可能に接続されるNAND型フラッシュメモリ装置である。なお、本発明の実施形態としてのメモリ装置は、ホストの内部に収納され、ホストの起動データ等を記憶する、いわゆるエンベデッドタイプであってもよく、または半導体ディスク:SSD(Solid State Drive)等の形態であってもよい。あるいはメモリ装置とホスト3とが、例えば携帯音楽プレーヤであるMP3プレーヤ等のメモリシステム1を構成していてもよい。
【0016】
メモリカード2は、メモリ部22と、メモリコントローラ10とを有する。メモリ部22はNAND型のフラッシュメモリ部であり、単位セルである多数のメモリセル23が、書き込みに用いるビット線および読み出しに用いるワード線等で接続された構成を有する。メモリセル23は、記憶時には記憶するデータに応じた電荷量が蓄積され、記憶するデータに応じたトランジスタの閾値電圧に設定される。
【0017】
そして本実施形態のメモリカード2のメモリ部22は、2種類の閾値電圧を有する記憶状態になる複数の2値メモリセルにより構成される2値記憶領域22Aと、4種類以上の閾値電圧を有する記憶状態になる複数の多値メモリセルにより構成される多値記憶領域22Bと、を有する。
【0018】
以下、2値記憶領域22Aを、SLC(Single Level Cell)領域ともいい、多値記憶領域22Bを、MLC(Multi Level Cell)領域ともいう。MLC領域22Bはメモリカード2の大容量化に大きく寄与している。
【0019】
メモリコントローラ10は、CPU12を用いて、ホスト I/F(インターフェイス)14を介してホスト3とのデータ送受信を、NAND I/F(インターフェイス)16を介してメモリ部22とのデータ送受信を、バス17を介して行う。
【0020】
ROM11はCPU12の動作に必要なファームウエアを記憶し、RAM13には動作中に書き替えが行われる情報等が記憶される。
【0021】
メモリコントローラ10の誤り訂正(ECC:Error Correcting Code)回路15は、データ記憶のときに誤り訂正符号(パリティ)を生成しデータに付与する符号化器18と、データ読み出し(再生)のときに、読み出された符号化データを復号する復号器19とを有する。なお、メモリコントローラ10は、ホスト3からのユーザーデータを所定長のデータ列、例えば1KB長のデータ列(DATA1)として処理する。
【0022】
復号器19は、誤り訂正部20と、消失訂正部21と、を有する。誤り訂正部20は、誤り検出訂正符号であるパリティ情報に従って、メモリ部22に記憶されたデータの誤りを検出し訂正する。
【0023】
なお、メモリカード2においては、電子辞書等の読み出し専用データは符号化器18によりパリティが付されて、記憶密度が高い多値記憶領域22Bに記憶されている。
【0024】
これに対して、消失訂正部21は、誤り訂正部20が誤り訂正できなった場合に、誤り訂正部20による誤り訂正と協調して消失訂正を行う。消失訂正部21は、読み出したデータのうち「0」か「1」か、全くわからない無効データ(消失データ)を、位置を推定し正常データを用いて復元する。
【0025】
例えば、データとして「000、011、101、110」が考えられる場合に、3ビットの再生データである「1X1」の、中央ビットが無効(X=消失)とわかっているとすると、その消失を誤り訂正符号により「101」と正しく訂正することが可能である
【0026】
一般的に、誤り数をL個(ビット)、消失数をH個(ビット)、としたとき、誤り訂正部20による訂正能力(Tビット)は、(式1)2T≧2L+Hにより示される。以下、誤り訂正部20による最大訂正ビット数L=T=8ビット(H=0のとき)を例に説明する。
【0027】
図2に示すように、8個(ビット)の誤りを、消失訂正を併用して復号する場合は、式1においてH=8である。このため、4ビットの誤りを誤り訂正部20で復号可能な場合、消失訂正部21による訂正数8ビットと合わせて最大で12ビットの誤りが訂正できる。最大誤り訂正数の復号ができるのは消失位置推定Hit率(Hit率)、すなわち、推定した位置に誤りがある率が、100%のときである。しかし、Hit率100%を得ることは容易ではない。そして、合計誤り訂正数は、Hit率が75%の場合には10ビット、50%の場合には8ビット、25%の場合には6ビットとなる。
【0028】
なお、DATA1に発生した誤り数が12個(12ビット)を超えると、消失訂正でH=12ビット、誤り訂正でL=T−H=H/2=2ビットのトータル14ビットの誤りが訂正可能となり、同様に、最大で2T(16)ビットの誤りが訂正可能となる。
【0029】
すなわち、復号器19は、消失訂正部21を併用した復号処理を行うことにより、誤り訂正部20単独での訂正能力を超えた誤り訂正が可能である。
【0030】
メモリカード2では、復号器19は、記憶したデータに発生した誤り数が、誤り訂正部20の訂正能力Tを超えたときに、消失訂正部21を併用した誤り訂正方式に切り替える。メモリカード2の消失訂正では、過去の誤り位置情報が消失位置として記憶されている。
【0031】
誤り位置情報を記憶するのは、MLC領域22Bではなく、より信頼性の高いSLC領域22Aである。このため信頼性の高い誤り位置情報をもとに復号器19は消失訂正処理を行うことができる。このため、メモリカード2では、Hit率が高く、より多くの誤りを訂正できる。
【0032】
以下、図3のフローチャートおよび図4に従い、復号器19による復号処理について説明する。
【0033】
<ステップS10>データ読み出し工程
ホスト3からの指示により、メモリ部22のMCL領域22BのページアドレスAに記憶されていたDATA1が読み出される。ここで、DATA1は、電子辞書データ等の読み出し専用データ、言い換えればROM的データの一部である。そして多くの情報を記憶するために、DATA1はMCL領域22Bに記憶されている。
【0034】
なお、読み出し専用データであるDATA1は、読み出し処理のみが繰り返し行われるために、特にリードディスターブに起因する信頼性低下が発生しやすい。
【0035】
<ステップS11>誤り検出工程
復号器19の誤り検出部(不図示)が、パリティをもとに、DATA1に誤りが発生していないかを検出する。なお、誤り検出部は誤り訂正部20とともに、誤り検出訂正部を構成している。
【0036】
<ステップS12>誤り無し?
DATA1に誤りがなかった場合(YES)には、S20において、DATA1はホスト3に出力される。
【0037】
DATA1に誤りがあった場合(NO)には、S13からの処理が行われる。
【0038】
<ステップS13>誤り訂正工程
誤り訂正部20により、パリティを用いた誤り訂正処理が行われる。
【0039】
<ステップS14>訂正可能?
誤り訂正部20による訂正処理により誤りが訂正できた場合(YES)、すなわち本実施形態においては、誤り個数(ビット数)Tが8個(ビット)以下の場合には、S15からの処理が行われる。
すなわち、MLC領域22BのPage Address Aに保存されているDATA1に発生した誤り数がT個以内の場合は、パリティを用いて誤り訂正部20のみで復号できる。
【0040】
誤り訂正部20では、誤りが訂正できなかった場合(NO)には、S16において消失訂正を併用した誤り訂正処理が行われる。
【0041】
<ステップS15>誤り位置記憶工程
誤りのあったビットデータを記憶していたMLC領域22Bのメモセルの位置情報(アドレス)が、誤りセル位置情報としてSLC領域22Aに記憶される。
すなわち、DATA1に発生した誤り位置情報(Column Address、Bit Address)が、信頼性の高いSLC領域22Aに記憶される。Page Address A以外の場合でも同様に、復号後に誤り位置情報がSLC領域22Aに記憶される。
そして、S20において、復号されたDATA1がホスト3に出力される。
【0042】
なお、一般的には経年劣化、読み出し回数の増加等により、DATA1に発生する誤り数は増加していくために、誤り位置情報も、随時更新されていく。
【0043】
<ステップS16>消失訂正工程
DATA1に発生した誤り数が、T個を超えると、誤り訂正部20のみでは、DATA1は復号できない。この場合、復号器19は、これまでSLC領域22Aに記憶/更新されてきた誤りセル位置情報を消失セル位置として使い、復号処理を、(消失訂正+誤り訂正)で行う。すでに説明したように、消失訂正を併用する場合、消失位置として与える情報の信頼性、この例では、消失セル位置として与えたColumn Address、Bit Addressに本当に誤りが付加されているかの推定Hit率が訂正能力を大きく左右する。
【0044】
復号器19は、これまでに実際に発生した誤りの位置情報を消失位置として用いる。そのため、Hit率を効率的に飛躍的に向上させることが可能である。特に信頼性の高いSLC領域22Aに記憶されている無効セル(消失セル)位置情報をもとに消失訂正を併用した誤り訂正処理を行う復号器19は、最大誤り可能訂正能力の16ビットの誤り訂正が可能な場合もある。
【0045】
<ステップS17>消失訂正回数記憶工程
メモリカード2では、消失訂正により誤り訂正できた回数が、消失セル位置情報と合わせてSLC領域22Aに記憶される。言い換えれば8ビットを超える誤りが発生したときに、その回数が信頼性の高いSLC領域22Aに記憶される。
【0046】
<ステップS18、S19>リフレッシュ処理工程
消失訂正により誤り訂正した回数が、所定の回数KMAX以上の場合(S18:YES)には、S19においてリフレッシュ処理が行われる。すなわち、MLC領域22Bに記憶されていた読み出し専用データを、MLC領域22Bに再記憶する、いわゆる、引っ越し処理が行われる。なお、リフレッシュ処理においてはホスト3のメモリを利用してもよい。
【0047】
リフレッシュ処理を行う頻度が多いと、書き込み/消去回数の制限により、メモリカード2の製品寿命が短くなる。しかし、メモリカード2は、誤り訂正部20により誤り訂正可能な数以上の誤り発生があっても、消失訂正部21の機能により、誤り訂正が可能である。このため、リフレッシュ処理を行う頻度を大幅に低下することができるために、メモリカード2は製品寿命が長い、
【0048】
なお、そのメモリセルと同じブロックに記憶されているデータ全てを引っ越ししてもよいし、所定範囲のデータ単位で引っ越し処理してもよい。
【0049】
<ステップS20>復号データ出力
ホスト3に復号されたDATAが出力される。
【0050】
以上の説明のように、本実施形態のメモリカード2およびメモリシステム1は、リフレッシュ処理間隔を長くできるために製品寿命が長く、かつ、消失情報をSLC領域22Aに記憶しているために信頼性が高い。
【0051】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1…半導体メモリシステム、2…メモリカード、3…ホスト、15…ECC回路、18…符号化器、19…復号器、20…誤り訂正部、21…消失訂正部、22…メモリ部、22A…2値記憶領域、22B…多値記憶領域、23…メモリセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類の閾値電圧を有する記憶状態になる複数の2値メモリセルにより構成される2値記憶領域と、4種類以上の閾値電圧を有する記憶状態になる複数の多値メモリセルにより構成される多値記憶領域と、を有するメモリ部と、
前記多値記憶領域に記憶されたデータの誤りを検出し訂正する誤り検出訂正部と、
前記誤り検出訂正部が誤りを検出したデータを記憶していた多値メモセルの位置情報を、前記2値記憶領域に記憶し、前記位置情報にもとづき消失訂正を行う消失訂正部と、
を具備することを特徴とする半導体メモリ装置。
【請求項2】
前記消失訂正部が、前記誤り検出訂正部が誤り訂正できなった場合に、消失訂正を行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体メモリ装置。
【請求項3】
前記多値記憶領域に記憶されるデータが、読み出し専用データであることを特徴とする請求項1に記載の半導体メモリ装置。
【請求項4】
前記消失訂正部が、所定回数以上、前記消失訂正を行った場合に、前記多値記憶領域に記憶されていたデータを、前記多値記憶領域の別の位置に移動することを特徴とする請求項3に記載の半導体メモリ装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体メモリ装置と、
ホストデバイスと、
を具備することを特徴とする半導体メモリシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−89085(P2012−89085A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237684(P2010−237684)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】