説明

半導体レーザおよびそれを用いた半導体レーザジャイロ

【課題】 半導体レーザジャイロに適した新規な構造の半導体レーザ、およびその半導体レーザを用いることによって、半導体レーザを用いた従来のジャイロよりも精度よく簡単に回転を検出できる半導体レーザジャイロを提供する。
【解決手段】 第1および第2のレーザ光を出射可能な半導体レーザであって、活性層24と活性層24にキャリアを注入するための第1および第2の電極とを備える。第1のレーザ光35は、活性層24内において多角形の経路上を周回するレーザ光(L1)の一部が出射されたレーザ光であり、第2のレーザ光36は、上記経路上をレーザ光(L1)とは逆の方向に周回するレーザ光(L2)の一部が出射されたレーザ光である。活性層24は、少なくとも1層の半導体層(A)を含み、半導体層(A)は、第1の半導体からなる複数の量子ドットと、第1の半導体とは異なる第2の半導体からなり量子ドットを覆うように形成されたカバー層とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザおよびそれを用いた半導体レーザジャイロに関する。
【背景技術】
【0002】
回転する物体の角速度を検出するためのジャイロの中でも、光ジャイロは精度が高いという特徴を有する。光ジャイロでは、環状の光路を互いに逆方向に進む2つのレーザ光の周波数差を用いて角速度の検出を行う。このような光ジャイロとして、希ガスレーザを用いた光ジャイロが提案されている(たとえば特許文献1参照)。これらの光ジャイロでは、同じ経路を互いに逆方向に周回するレーザ光を取り出して干渉縞を形成させる。これらの光ジャイロの一般的な構成を図17に示す。図17の光ジャイロにおいて、干渉縞は、以下の式(1)で表される。
【0003】
【数1】

【0004】
ここで、I0はレーザ光の光強度であり、λはレーザ光の波長である。また、εは図17に示す角度であり、χは図17に示すX方向の座標である。Δωは、ジャイロが回転したときの時計回りのモードと反時計回りのモードとの周波数差であり、tは時刻である。Δωはジャイロの回転の角速度Ωと比例関係にある。すなわち、Δω=4AΩ/(Lλ)である。ここで、Aはリング形状の囲む面積であり、Lは光路長である。φは、2つのレーザ光の初期の位相差を示す。このジャイロでは、干渉縞の移動速度および移動方向を検出することによって、ジャイロの回転速度および回転方向が検出される。しかし、希ガスレーザを用いた光ジャイロは、駆動に高電圧が必要で消費電力が大きいという課題、および、装置が大きく熱に弱いという課題を有していた。
【0005】
このような課題を解決するジャイロとして、環状(たとえば四角環状)の導波路を備える半導体リングレーザを用いたジャイロが提案されている(たとえば特許文献2参照)。このジャイロで用いられている半導体レーザは、ほぼ一定の幅の環状の導波路を備える。そして、その環状の導波路を互いに反対方向に周回する2つのレーザ光を外部に取り出して、その干渉縞を検出する。しかしながら、細い導波路を用いて閉じこめられたレーザ光は、導波路の外部に出射する際に大きく広がってしまうため、実際に干渉縞を精度よく検出することは困難である。そのため、半導体レーザを用いるジャイロでは、半導体レーザの2つの電極間の電圧変化から、2つのレーザ光の周波数差に対応するビート周波数を検出するジャイロ(たとえば特許文献3参照)や、共振器の端面からしみだしたエバネッセント光を用いてビート周波数を検出するジャイロ(たとえば特許文献4参照)が一般的である。
【特許文献1】特開平11−351881号公報
【特許文献2】特開2000−230831号公報
【特許文献3】特開平4−174317号公報
【特許文献4】特開2000−121367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ビート周波数を検出するジャイロでは、回転方向の検出に特別な装置が必要となる。また、従来の半導体レーザは発熱が大きいため、安定に連続発振させるには、ペルチェ素子などで冷却することが必要となる。
【0007】
このような状況に鑑み、本発明は、半導体レーザジャイロに適した新規な構造の半導体レーザを提供することを目的の1つとする。また、本発明は、半導体レーザを用いた従来のジャイロよりも精度よく簡単に回転を検出できる半導体レーザジャイロを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特別な構造の半導体レーザによって特別なレーザ光を励起できることを見出した。この半導体レーザでは、菱形の経路を互いに逆方向に進む2つのレーザ光が励起される。この2つのレーザ光は、それぞれよくコリメートされた状態で半導体レーザから外部に出射され、明瞭な干渉縞を形成する。本発明は、この新たな知見に基づくものである。さらに、本発明の半導体レーザでは、活性層に量子ドットを適用して発熱を抑制している。
【0009】
本発明の半導体レーザは、第1および第2のレーザ光を出射可能な半導体レーザであって、基板と、前記基板上に形成された活性層と、前記活性層にキャリアを注入するための第1および第2の電極とを備え、前記第1のレーザ光は、前記活性層内において多角形の経路上を周回するレーザ光(L1)の一部が出射されたレーザ光であり、前記第2のレーザ光は、前記経路上を前記レーザ光(L1)とは逆の方向に周回するレーザ光(L2)の一部が出射されたレーザ光であり、前記活性層は、少なくとも1層の半導体層(A)を含み、前記半導体層(A)は、第1の半導体からなる複数の量子ドットと、前記第1の半導体とは異なる第2の半導体からなり前記量子ドットを覆うように形成されたカバー層とを含む。
【0010】
また、本発明の半導体レーザジャイロは、第1および第2のレーザ光を出射する半導体レーザと光検出器とを備える半導体レーザジャイロであって、前記光検出器は、前記第1および第2のレーザ光によって干渉縞が形成される位置に配置されており、前記半導体レーザが、上記本発明の半導体レーザである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、閾値電流が低く半導体レーザジャイロに適した半導体レーザが得られる。この半導体レーザからは、環状の光路を互いに逆方向に進行する2つのレーザ光が、よくコリメートされた状態で出射される。また、この半導体レーザでは、出射端面におけるレーザ光の劣化が小さい。そのため、本発明の半導体レーザを用いた本発明の半導体レーザジャイロでは、2つのレーザ光によって明瞭な干渉縞が形成され、精度よく回転速度(角速度)を検出できる。また、本発明の半導体レーザは、活性層に量子ドットを適用しているため、発熱が少ない。そのため、本発明の半導体レーザジャイロは、ペルチェ素子などで冷却しなくても連続発振させることが可能である。また、本発明の半導体レーザは素子の熱膨張が少なく光路長が一定であるため、周波数変動のない安定したレーザ光が得られる。
【0012】
また、本発明のジャイロによれば、2つ以上の受光素子で干渉縞の移動を観測することによって、回転速度および回転方向を簡単に算出できる。これらの検出には、希ガスレーザを用いた従来の光ジャイロで用いられている回路と類似の回路を適用できるため、本発明のジャイロは様々な機器への応用が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下で説明する半導体レーザおよび半導体レーザジャイロ(半導体レーザジャイロ素子)は本発明の一例であり、本発明は以下の説明に限定されない。また、以下の説明では、同様の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略する場合がある。
【0014】
本発明の半導体レーザは、第1および第2のレーザ光を出射可能な半導体レーザであって、基板と、基板上に形成された活性層と、活性層にキャリアを注入するための第1および第2の電極とを備える。第1のレーザ光は、活性層内において多角形の経路上を周回するレーザ光(L1)の一部が出射されたレーザ光であり、第2のレーザ光は、上記経路上をレーザ光(L1)とは逆の方向に周回するレーザ光(L2)の一部が出射されたレーザ光である。活性層は、少なくとも1層の半導体層(A)を含み、その半導体層(A)は、第1の半導体からなる複数の量子ドットと、第1の半導体とは異なる第2の半導体からなり量子ドットを覆うように形成されたカバー層とを含む。
【0015】
活性層の平面形状は、上記多角形の経路の角部が外縁部に位置するように上記多角形を内包する形状である。活性層に電流が注入されると光が発生するが、この光は、活性層の端面で反射されるとともに誘導放出を生じさせる。そして、活性層の平面形状に応じて、特定の経路を安定に周回するレーザ光(L1およびL2)が励起される。すなわち、活性層は共振器(キャビティー)として機能する。共振器として機能する活性層の端面は、発生した光が所定の形状の経路を周回するように形成される。たとえば、菱形の経路を周回するレーザ光を励起する場合、活性層には、経路(仮想の菱形)の4つの角部のそれぞれに対応する位置に端面(側面)が形成される。活性層を挟むように配置されるクラッド層は、通常、均一な層であり、上記経路に対応するような一定の幅の導波路は形成されていない。多角形の経路の形状は、活性層の形状によって変化させることができる。多角形の経路の好ましい形状は菱形であるが、他の四角形や三角形であってもよい。
【0016】
(半導体レーザ)
まず、本発明の半導体レーザについて説明する。
【0017】
活性層に配置される量子ドットは、第1の半導体からなる微小粒子である。この量子ドットの平均サイズは、通常、直径が10nm〜100nm、高さが2nm〜20nm程度の範囲にある。活性層は、量子ドットを含む半導体層と障壁層とのセットを1〜50セット(たとえば2〜10セット)積層した構造を有することが好ましい。活性層は、量子ドットを含む半導体層を10〜20層含んでもよい。
【0018】
量子ドットの自己形成を容易にするため、量子ドットを形成する第1の半導体と基板との間の格子不整合量(歪み量)は、下地層(その上に量子ドットが形成される層)と基板との間の格子不整合量よりも大きいことが好ましい。たとえば、基板および下地層がGaAsの場合には、第1の半導体としてInAsやInGaAsが適用できる。量子ドットをカバーするカバー層と基板との間の格子不整合量は、第1の半導体と基板との間の格子不整合量よりも小さいことが好ましい。
【0019】
通常、量子ドットを形成する第1の半導体のバンドギャップは、カバー層を形成する第2の半導体のバンドギャップよりも小さい。
【0020】
本発明の半導体レーザでは、第1の半導体がInとAsとを含むIII−V族化合物半導体であり、前記第2の半導体がGaとAsとSbとを含むIII−V族化合物半導体であることが好ましい。たとえば、第1の半導体としてInAsやInGaAsを用い、第2の半導体としてInGaAsSbを用いることができる。カバー層にSbを添加することによって、カバー層の表面の平坦性を向上させることができ、その上に形成される半導体層の結晶性を向上できる。
【0021】
第2の半導体のV族元素に占めるSbの割合は、0.2原子%〜10原子%(より好ましくは1原子%〜5原子%)の範囲にあることが好ましい。Sbの割合を0.2原子%〜10原子%の範囲とすることによって、平坦効果を得ることができる。一方、Sbの割合が10原子%を超えると、転位が形成され、結晶性を悪化させる場合がある。
【0022】
本発明の半導体レーザは、半導体層(A)に隣接するように半導体層(A)の基板側に形成された半導体層(B)を含んでもよい。半導体層(B)はSbを含むIII−V族化合物半導体からなる。半導体層(B)は、たとえば、GaAsSbやInGaAsSbである。半導体層(B)のSbの含有率は、量子ドットを構成する第1の半導体のSbの含有率よりも高い。量子ドットは、半導体層(B)上に成長する。Sbの含有率が高い半導体層(B)上で量子ドットを成長させることによって、連続発振させやすい半導体レーザが得られる。
【0023】
半導体層(B)を構成するIII−V族化合物半導体において、V族元素に占めるSbの割合は、0.2原子%〜100原子%(より好ましくは1原子%〜10原子%)の範囲にあることが好ましい。
【0024】
本発明の半導体レーザは、半導体層(A)と半導体層(B)との間に配置された、厚さが20原子層以内の半導体層(C)を含んでもよい。半導体層(C)は、GaとAsとを含むIII−V族化合物半導体からなり、たとえばGaAsである。
【0025】
本発明の半導体レーザは、通常、半導体層(A)に隣接するように半導体層(A)上に形成された半導体層(D)を含んでもよい。半導体層(D)のバンドギャップは、第2の半導体のバンドギャップよりも大きい。半導体層(D)は、障壁層として機能する。半導体層(D)は、複数の層で構成されてもよい。
【0026】
半導体層(D)の少なくとも1部は、ドーピングされていてもよく、p型ドーピングされていてもよい。障壁層にp型変調ドープを行うことによって、量子ドットの価電子帯側の基底準位にホールが充分供給されるので、量子ドットレーザが基底準位発振しやすくなる。つまり、低しきい値発振可能となる。半導体層(D)にp型変調ドープを行う場合、そのドーピング濃度は、1×1017〜5×1019cm-2の範囲であることが好ましい。
【0027】
半導体レーザの活性層は、その平面形状が環状でないことが好ましい。環状に形成された細い導波路内に閉じこめられたレーザ光は、出射される際に広がるため、明瞭な干渉縞が形成されない。そのため、活性層の平面形状は実質的に環状(たとえば多角環状)でないことが好ましい。この場合、活性層内にキャリアを注入し、2次元方向に広がる活性層を共振器とする特定のモードのレーザ光、具体的には活性層内を周回するレーザ光を得ることができる。このような活性層から出射されるレーザ光は、よくコリメートされており、そのレーザ光強度の半値幅を10°以下(たとえば5°以下)とすることが可能である。なお、活性層の中央付近に貫通孔が形成されている場合でも、実質的に環状でない活性層、すなわちほぼ一定の幅の導波路が環状に形成されていない活性層であればよい。なお、この明細書において、「平面形状」とは、図3に示される形状、すなわち、半導体層の積層方向と垂直な方向の形状を意味する。
【0028】
上記多角形の経路は菱形の経路であり、活性層は、上記菱形の経路の第1から第4の角部に対応する位置に形成された第1から第4の端面を有することが好ましい。すなわち、第1から第4の端面上には、それぞれ、菱形の経路の第1から第4の角部が位置する。この場合、活性層にキャリアを注入することによって、菱形上を周回するレーザ光が励起される。すなわち、レーザ光(L1)は、上記菱形の経路上を周回するレーザ光であり、レーザ光(L2)は、上記菱形の経路上をレーザ光(L1)とは逆の方向に周回するレーザ光である。
【0029】
第1および第2の電極から選ばれる少なくとも1つの電極と半導体レーザを構成する半導体層とが、上記菱形の経路(多角形の経路)に沿って接触することが好ましい。電流は、接触している領域を介して注入される。この構成によれば、活性層のうち上記菱形の経路の部分にキャリアを注入でき、菱形の経路上を周回する2つのレーザ光(L1およびL2)が容易に励起される。典型的な一例では、上記少なくとも1つの電極が、菱形の経路(多角形の経路)に実質的に対応するように半導体層と接触する。これらの場合、上記少なくとも1つの電極と半導体層とが環状に接触していてもよい。なお、この明細書において、「菱形の経路に実質的に対応するように」とは、菱形の経路に完全に対応する場合に加えて、菱形の経路の50%以上(好ましくは、70%以上でより好ましくは90%以上)に対応する場合を含む。また、「環状に接触」とは、接触している領域が実質的に環を形成していればよく、完全に連続した環でなくともよいことを意味している。また、菱形の経路に対応する上記領域の面積は、活性層の平面形状の面積に対して通常50%以下であり、たとえば30%以下である。
【0030】
第1および第2の電極から選ばれる少なくとも1つの電極は、利得が発生する電流を注入する第1の部分と、第1の部分よりも少ない電流を注入する第2の部分とを含んでもよい。第1の部分ではレーザ発振に必要な電流が注入される。第2の部分には、利得が発生しないように弱い電流を注入することによって、菱形の光路以外の方向に進行するレーザ光を減衰させることができる。
【0031】
上記菱形の経路の対向する第1および第2の角部の内角は、第3および第4の角部の内角よりも角度が小さく、第1および第2のレーザ光はともに第1の角部に対応する位置に形成された第1の端面から出射されることが好ましい。より具体的には、第1および第2のレーザ光は、キャビティーとして機能する活性層の長手方向の一方端から出射されることが好ましい。第1の角部と第2の角部とを結ぶ対角線と、第1および第2のレーザとは非平行である。
【0032】
活性層は、レーザ光(L1)およびレーザ光(L2)が第3および第4の端面において全反射する条件を満たすことが好ましい。第1から第4の端面はミラー面として機能するが、第3および第4の端面でレーザ光を全反射させることによって、レーザ発振の閾値を下げることができる。第3および第4の端面においてレーザ光を全反射させるためには、第3および第4の端面と、それに入射するレーザ光(L1およびL2)とがなす角度を、一定以下の角度とすればよい。全反射に必要な角度は、レーザ光の波長と活性層の屈折率とから簡単に導かれる。活性層の端面とレーザ光とがなす角度は、菱形の経路の形状を変化させることによって、すなわち、活性層の平面形状を変化させることによって調節できる。レーザ光の波長や活性層の材質によって好ましい形状は異なるが、第1の角部と第2の角部との距離(菱形の長い方の対角線の長さ)と、第3の角部と第4の角部とを結ぶ距離(菱形の短い方の対角線の長さ)との比は、たとえば、600:190〜600:30の範囲とされる。第1の端面はミラー面ではあるが、活性層内を周回するレーザ光の一部が外部に出射されるように、通常、ミラーコート処理などは行わない。なお、第1の端面には、レーザ光が外部に出射しやすいような処理をしてもよい。また、第2の角部における活性層の端面は、ミラーコート処理がされていることが好ましい。
【0033】
活性層の第1の端面は、曲面であることが好ましい。特に、第1および第2の端面は、それぞれ、外側に凸の曲面であることが好ましい。この構成によれば、菱形の経路を周回するレーザ光を安定に発生させることができるとともに、第1および第2のレーザ光を第1の端面から安定に出射できる。外側に凸の2つの曲面は、それぞれ、菱形の経路の第1および第2の角部を結ぶ対角線上に中心を有する円柱の一部であることが好ましい。なお、第1および第2の端面から選ばれる少なくとも1つを平面または内側に凸の曲面とすることも可能である。
【0034】
上述した円柱の半径、すなわち、上記第1の端面の曲率半径R1および第2の端面の曲率半径R2は共に、第1の角部と第2の角部との間の距離L以上であってもよい。この構成によれば、菱形の光路を周回するレーザ光(L1およびL2)を安定に励起できる。R1およびR2の上限は特に限定はないが、たとえば距離Lの2倍以下である。
【0035】
活性層は、菱形の経路を含む第1の領域と、第1の領域に隣接する第2の領域とを含むことが好ましい。この場合、第1の領域の平面形状は、略長方形状であることが好ましく、より詳細には、長方形の短辺を外側に凸の曲面とした形状であることが好ましい。この構成では、第1の領域を共振器として菱形の光路を進むレーザ光が励起される。また、この構成によれば、菱形の経路以外の方向に進むレーザ光を第2の領域によって減衰させることができる。
【0036】
上記第1の領域と第2の領域とによって構成される活性層の平面形状は略H字状(より詳細には、Hを横に伸ばした形状)であることが好ましい(図3参照)。この場合、第1の領域には、4つの第2の領域が隣接する。この場合、第1の角部と第2の角部とを結ぶ対角線に平行な方向における第2の領域の長さLs(μm)と、第1の角部と第2の角部との距離L(μm)とが、L/4<Lsを満たすことが好ましい。また、第3の角部と第4の角部とを結ぶ対角線に平行な方向における第2の領域の長さWs(図3参照)は、たとえば、第3の角部と第4の角部とを結ぶ距離Wの1〜3倍の範囲である。
【0037】
本発明の半導体レーザを構成する半導体および積層構造に特に限定はなく、利用するレーザ光の波長などに応じて選択される。本発明の半導体レーザが出射するレーザ光の波長に特に限定はないが、波長が短い方が高い精度で回転の角速度を検出できる。レーザ光の波長はたとえば300〜1700nmの範囲であり、好ましくは1550nm以下であり、特に好ましくは900nm以下である。半導体層の材料の一例としては、例えばIII−V族化合物半導体が挙げられる。
【0038】
以下、本発明で用いられる半導体レーザの好ましい一例について説明する。半導体レーザの一例の斜視図を図1に示し、図1の線I−Iにおける断面図を図2に示す。図2において、絶縁層12以外のハッチングは省略する。なお、本発明の説明に用いる図面は模式的なものであり、理解が容易なように各部の縮尺を変更している。
【0039】
図1の半導体レーザ10は、基板11と、基板11上に形成された半導体層20と、半導体層20上に形成された絶縁層12および第1の電極13と、基板11の裏面側の全面に形成された第2の電極14とを備える。
【0040】
図2を参照して、半導体層20は、基板11側から順に積層された、バッファ層21、クラッド層22、光閉じ込め層23、活性層24、光閉じ込め層25、クラッド層26およびコンタクト層27を含む。コンタクト層27の上には、パターニングされた絶縁層12が形成されている。絶縁層12上には、第1の電極13が形成されている。絶縁層12には貫通孔が形成されているため、第1の電極13とコンタクト層27とは、貫通孔が形成されている領域31で接触する。クラッド層22、光閉じ込め層23、光閉じ込め層25およびクラッド層26によって、レーザ光が活性層24内に閉じ込められる。
【0041】
半導体レーザ10の活性層24を上方から見たときの平面形状を図3および図4に示す。図4では、第1の電極13と半導体層20(コンタクト層27)とが接触している領域31を、ハッチングを付して示す。なお、半導体層20は、活性層24と同じ平面形状を有する。
【0042】
図3を参照して、活性層24は、菱形の経路32を含む面状に形成された薄膜である。経路32の第1から第4の角部32a〜32dのうち、第1および第2の角部32aおよび32bは、第3および第4の角部32cおよび32dよりも角度が小さい。活性層24は、角部32a〜32dを含むように配置された第1から第4の端面(ミラー面)24a〜24dを有する。第1および第2の端面24aおよび24bは、外側に向かって凸の曲面である。第3および第4の端面24cおよび24dは、フラットな平面である。
【0043】
活性層24は、第1の領域24fと、第1の領域に隣接する4つの第2の領域24sとを備える。第1の領域24fの平面形状は、長方形の短辺を外側に凸の曲面とした形状である。経路32は、第1の領域24f内に形成される。第1の領域24fと第2の領域24sとによって構成される活性層24は、略H字状の形状(より詳しくはHの字を横に引き延ばした形状)をしている。
【0044】
図4を参照して、第1の電極13と絶縁層12とが接触している領域31は、経路32に対応するように、略菱形に形成される。領域31が経路32に完全に対応していないのは、絶縁層12に貫通孔を形成する際に、製造工程上の制限があるためである。経路32に完全に対応するように領域31を公知の方法で菱形に形成することは可能であるが、製造工程が複雑になる。
【0045】
第1の電極13と第2の電極14との間に電圧を印加して活性層24にキャリアを注入すると、活性層24で光が発せられる。この光は、光閉じ込め層およびクラッド層によって閉じこめられるため、活性層24内を移動する。そのような光の中で、経路32上を進行する光は、端面24a〜24dによって反射されながら誘導放出を生じる。このため、経路32を光路として周回するレーザ光L1が発生する。同様に、経路32を光路としてレーザ光L1とは反対の方向に周回するレーザ光L2が発生する。レーザ光L1およびL2のうちの一部が、第1の端面24aの第1の角部32aから出射され、第1および第2のレーザ光35および36となる(図4参照)。
【0046】
レーザ光L1およびL2の損失を少なくするため、端面24bには、誘電体多層膜によるミラーコートがされている。第1の角部32aと第2の角部32bとの間の距離L(図3参照)は600μmであり、第3の角部32cと第4の角部32dとの間の距離Wは60μmである。半導体レーザ10では、端面24cおよび24dにおいて、レーザ光(L1およびL2)が全反射する。
【0047】
4つの第2の領域24sは、第1の領域24fで発生したレーザ光が端面24cおよび24dで多重反射されることによって発生するモードを抑制するために形成される。半導体レーザ10では、第1の角部32aと第2の角部32bとを結ぶ対角線32abに平行な方向における第2の領域24sの長さLs(図3参照)が160μmである。一方、L/4は150μmであり、L/4<Lsが満たされるため、上記モードが特に抑制される。また、第3の角部32cと第4の角部32dとを結ぶ対角線32cdの方向における第2の領域24sの長さWsは70μmである。
【0048】
端面24aおよび24bの形状は、それぞれ、円柱の曲面の一部の形状である。具体的には、対角線32ab上であって活性層24の表面と垂直に中心軸が配置された円柱の曲面の一部と同じ形状である。その円柱の半径、すなわち端面24aの曲率半径R1(図3参照)は600μmであり、端面24bの曲率半径R2(図示せず)も同じく600μmである。半導体レーザ10は、対角線32abおよび対角線32cdに対して線対称の形状であり、端面24bは、第3の角部32cと第4の角部32dとを結ぶ対角線32cdに対して端面24aと線対称の形状である。ただし、本発明の半導体レーザは必ずしも線対称の形状ではなくともよく、たとえば、端面24bは、端面24aとは曲率が違う曲面であってもよく、平面であってもよく、内側に凸の曲面であってもよい。
【0049】
図5を参照して、活性層24の積層構造について説明する。活性層24は、交互に積層された3つの半導体層(半導体層(A))51と3つの障壁層(半導体層(D))52とを備える。半導体層51は、複数の量子ドット51aと、量子ドットを覆うように形成されたカバー層51bとによって構成されている。障壁層52は、電子を効率よく閉じ込めるための層であり、カバー層51bと同じかカバー層51bよりもバンドギャップが大きい材料で形成される。なお、カバー層51bと障壁層52とは、同じ材料で形成してもよい。
【0050】
図5の活性層24では、GaおよびAs(およびIn)を含むカバー層51bにSbを添加することによって、カバー層の表面の平坦性を向上させることができる。これにより、複数の半導体層51を含む積層膜を形成する場合に、下層で成長した量子ドットの影響を受けずに上層の半導体層51や障壁層52を形成することができる。その結果、各半導体層51に含まれる量子ドットのサイズを均一化することが可能となる。
【0051】
しかし、カバー層におけるSbの組成比が高すぎると転位が発生するので、半導体層51の結晶性が悪化する。Sbの組成比の影響を調べるために、カバー層のV族元素に占めるSbの組成比と活性層24のフォトルミネセンス(PL)のピークの半値幅との関係を実験によって求めた。このとき、活性層24として、以下の表1に示す活性層(Sbの割合は異なる)を成長させた。実験では、表1の構造のレーザエピにおいて、Ga0.85In0.15As1-ySbyカバー層のSb組成を変更したエピを6枚成長させてPLを比較した。成長では、Sbフラックス以外の条件は後述する製造例の条件と全て同じとし、Sbフラックスは、0〜2.0×10-4Pa(0〜1.5×10-6Torr)の範囲で変更した。実験結果を図6に示す。図6に示すように、V族元素に占めるSbの割合を0.2原子%〜10原子%の範囲とすることが好ましく、1原子%〜5原子%の範囲とすることがより好ましい。
【0052】
基板11および半導体層20の各層の構成の一例を表1に示す。なお、活性層24は、図5に示すように、量子ドットを含むカバー層と障壁層とが3セット積層された構造を有する。この構成によれば、1μm帯のレーザ光が出射される。
【0053】
【表1】

【0054】
絶縁層12は、Si34やSiO2などで形成できる。第1の電極13および14は、公知の電極材料で形成でき、たとえば、Ni/Ge/Au積層膜や、Ti/Pt/Au積層膜を用いることができる。なお、第1の電極13および第2の電極14を構成する各層は、熱処理によって合金化されていてもよい。また、表1に示す構成は一例であり、半導体レーザに求められる特性に応じて適宜変更される。
【0055】
なお、半導体レーザ10の第1の電極13は、利得が発生する電流を注入する第1の部分13aと、第1の部分13aよりも少ない電流を注入する第2の部分13bとを含んでもよい。そのような電極と半導体層20(コンタクト層27)とが接触する領域の形状と、活性層24の平面形状と、経路32との関係を図7に示す。なお、図7では、第1の部分13aがコンタクト層27と接触する領域31aと、第2の部分13bがコンタクト層27と接触する領域31bとを、ハッチングを付して示している。領域31aは経路32の1つの辺に対応する位置に形成され、領域31bは他の3つの辺に対応する位置に形成される。このような電極は、絶縁層12の形状を変更することによって容易に形成できる。
【0056】
半導体レーザ10では、注入される電流が閾値電流を超えるとシングルモードの発振を開始する。そして、注入される電流が閾値電流からさらに増加するに従って、発振のモードが、シングルモード、ツインモード、ロッキングモードという順で変化する。シングルモードでは、図4に示すように、第1および第2のレーザ光35および36が出射される。ツインモードでは、2つのレーザ光が周期的に交互に出射される。ロッキングモードでは、2つのレーザ光のうちの1つのレーザ光のみが出射される。したがって、半導体レーザジャイロで用いる場合、通常、半導体レーザ10をシングルモードで動作させる。なお、本発明のジャイロでは、注入する電流によって発振のモードを変更できることを利用して、特別な機能を付与してもよい。
【0057】
活性層に量子ドットを用いない場合、閾値電流密度は500A/cm2程度である。そのため、L=600μmのレーザの場合、室温パルス動作時における閾値電流は180mA程度となる。素子のCW駆動時の熱抵抗をRth[K/W]、注入電流をI[A]、動作電圧をV[V]、レーザ端面からの光出力をP[W]とすると、活性層の温度上昇ΔTは、以下の式で記述できる。
ΔT=Rth(IV−P)
【0058】
ここで、850nm帯のレーザにおいて、Rth=80K/W、閾値電圧が2Vと仮定した場合、閾値での活性層の温度上昇は約30Kとなる。この場合、素子をヒートシンク上にマウントし、ペルチェ素子でヒートシンクの温度を常に25℃に保った場合でも、活性層は55℃となる。ヒートシンクを冷却しない場合には、活性層からの熱の放散がスムーズに行われないため、CW発振が困難になる。
【0059】
これに対して、本発明の半導体レーザでは、活性層に量子ドットを用いているため、閾値電流密度を10分の1程度に低減できる。表1に示した活性層24では、閾値電流密度を50A/cm2に低減でき、閾値電流としては18mAという低い値が得られる。その結果、活性層の温度上昇を3Kに低減でき、ペルチェフリーでCW発振させることが十分に可能である。このように、本発明の半導体レーザでは、活性層に量子ドットを用いることによって、ペルチェ素子を不要とすることができ、超小型で安価なレーザジャイロを実現できる。
【0060】
(半導体レーザジャイロ)
本発明のジャイロは、第1および第2のレーザ光を出射する半導体レーザと、第1および第2のレーザ光で干渉縞が形成された位置に配置された光検出器とを備える。半導体レーザには、上記本発明の半導体レーザが用いられる。光検出器は、干渉縞の移動を検出できるものであれば特に限定がなく、通常は、フォトダイオードやフォトトランジスタといった半導体受光素子が用いられる。光検出器は、干渉縞の光量の強弱に応じた信号を出力する。干渉縞が移動すると、光検出器に入力される光量が周期的に変化するため、干渉縞の移動速度を算出できる。
【0061】
光検出器は、複数の受光素子を備える2チャンネルの光検出器であってもよい。2つ以上の受光素子を干渉縞の移動方向に配置することによって、干渉縞の移動速度に加えて干渉縞の移動方向を検出することができる。干渉縞の移動速度と移動方向とを検出することによって、半導体レーザジャイロの回転方向と回転速度とを算出できる。
【0062】
本発明のジャイロでは、上記半導体レーザと受光素子(光検出器)とが、モノリシックに形成されていてもよい。この場合、半導体レーザと光検出器(たとえばフォトダイオード)とが同じ積層構造を有してもよい。この構成では、半導体レーザと光検出器とを、半導体素子を製造する一連のプロセスで同時に形成できる。そのため、製造が容易であると共に、半導体レーザと光検出器とを正確な配置に形成できる。
【0063】
本発明のジャイロは、レンズをさらに備えてもよい。この場合、光検出器は、レンズを透過した第1および第2のレーザ光によって干渉縞が形成される位置に配置される。半導体レーザの半導体層とレンズとは、同じ積層構造を有してもよい。この場合のレンズは、たとえば、平面形状が半円状のレンズであり、レンズとして機能する部分は、半導体レーザの活性層と同じ半導体からなる。そのため、レンズに入射した光は、半導体からなるレンズで吸収されて減衰する。そのような減衰を抑制するために、レンズを構成する積層された半導体層に電流を流してもよい。電流を流すには、たとえば、電極を含めて半導体レーザとレンズとを全く同じ積層構造とすればよい。流す電流は、レーザ発振を生じる電流よりは少ないことが望ましい。電流を流すことによってレンズによる光の減衰を抑制できる。また、レンズによる光の減衰を抑制するために、レーザ光の吸収が少ない材料、たとえば、酸化シリコンなどでレンズを形成してもよい。その場合でも、製造工程は多くなるが、レンズと半導体レーザとを公知の方法でモノリシックに形成できる。
【0064】
本発明のジャイロは、プリズムをさらに備えてもよい。この場合、光検出器は、プリズムを透過した第1および第2のレーザ光によって干渉縞が形成される位置に配置される。所定の形状のプリズムを用いることによって、形成される干渉縞の周期長を長くすることができ、干渉縞の移動をより正確に測定できる。
【0065】
半導体レーザジャイロがプリズムを備える場合、半導体レーザとプリズムとがモノリシックに形成されてもよい。また、半導体レーザとプリズムと光検出器とがモノリシックに形成されてもよい。これらの構成によれば、各素子を所定の位置および形状に精度よく形成できる。さらにこの場合、半導体レーザの半導体層とプリズムとが同じ積層構造を有してもよい。また、半導体レーザの半導体層と、光検出器(たとえばフォトダイオード)の半導体層と、プリズムとが同じ積層構造を有してもよい。この構成によれば、半導体レーザを製造する一連のプロセスで、光検出器および/またはプリズムを形成できる。
【0066】
なお、プリズムの積層構造を半導体レーザの半導体層と同じ積層構造とした場合、半導体レーザから出射されたレーザ光は、半導体からなるプリズムに入射して減衰する。そのような減衰を抑制するために、プリズムを構成する積層された半導体層に電流を流してもよい。電流を流すには、たとえば、電極を含めて半導体レーザとプリズムとを全く同じ積層構造とすればよい。流す電流は、レーザ発振を生じる電流よりは少ないことが望ましい。電流を流すことによってプリズムによる光の減衰を抑制できる。また、プリズムによる光の減衰を抑制するために、レーザ光の吸収が少ない材料、たとえば、酸化シリコンなどでプリズムを形成してもよい。その場合でも、製造工程は多くなるが、プリズムと半導体レーザとを公知の方法でモノリシックに形成できる。
【0067】
図4を参照しながら、本発明の半導体レーザジャイロの原理を簡単に説明する。半導体レーザ10が回転すると、レーザ光L1とレーザ光L2とでは、経路32の光路を一周するのに要する時間が変化する。光の速度は一定であるため、半導体レーザ10が回転すると、レーザ光L1とレーザ光L2との間で周波数差が生じ、その周波数差に応じた速度で干渉縞が移動する。干渉縞の移動方向は、半導体レーザ10の回転方向に応じて変化する。このため、干渉縞の移動速度を測定することによって、半導体レーザ10の回転速度(角速度)を算出でき、干渉縞の移動方向を検出することによって半導体レーザの回転方向を検出できる。より具体的には、活性層24の表面と平行な面内における回転方向と回転速度とを算出できる。上述したように、このような光ジャイロの原理は公知の原理であり、希ガスレーザを用いた光ジャイロなどで利用されている。したがって、本発明の半導体レーザジャイロは、公知の駆動回路で駆動でき、ジャイロによって得られた情報は公知の方法で処理できる。なお、本発明の半導体レーザジャイロを3つ組み合わせることによって、全方向における回転方向と回転速度とを算出することが可能である。
【0068】
以下、本発明の半導体レーザジャイロについて、例を挙げて説明する。なお、以下の実施形態では、第1の電極13が図7に示した電極である場合について示しているが、第1の電極13は図1および図4に示した電極であってもよい。
【0069】
(実施形態1)
実施形態1では、半導体レーザと光検出器とがモノリシックに形成されている半導体レーザジャイロの一例について説明する。実施形態1のジャイロ101の斜視図を図8(a)に示す。また、半導体レーザジャイロ101の半導体レーザ10および光検出器113(受光素子113aおよび113b)がモノリシックに形成された基板11の斜視図を図8(b)に示す。なお、図8(a)では、カバー111の一部を切断して内部を解放した状態を示している(以下の図においても同様である)。
【0070】
図8(a)を参照して、ジャイロ101の主要部は、カバー111とステム112とによってパッケージ(いわゆるCANパッケージ)されている。ジャイロ101は、ステム112と、ステム112上に配置された基板11とを備える。半導体レーザ10と受光素子113aおよび113bとは、基板11を共有してモノリシックに形成されている。ステム112は、5本の電極114で支持されている。5本の電極のうちの4つは、それぞれ、半導体レーザ10の第1の電極13の第1の部分13a、第2の部分13b、受光素子113a、および受光素子113bに接続されている。5本の電極のうちの残りの1つは、上記4つの電極と対になる接地電極である。なお、電極114の接続方法は一例であり、本発明はこれに限定されない。円形のステム112の直径に限定はないが、規格で決められたサイズ、たとえば直径5.6mmとすることができる。
【0071】
受光素子113aおよび113bはフォトダイオードであり、半導体レーザ10と同じ積層構造を有する。受光素子113aおよび113bは、半導体レーザ10を形成する製造工程で半導体レーザ10とともに形成される。
【0072】
半導体レーザ10の第1の端面24aから出射された第1のレーザ光35と第2のレーザ光36とは、第1の端面24aの近傍において干渉縞を形成する。その干渉縞の移動方向および移動速度を観測するため、受光素子113aおよび113bは、第1の端面24aに近接して配置される。なお、干渉縞の移動速度を精度よく検出するために、光検出器の受光領域のサイズは、干渉縞の周期長や、光検出器の受光感度を考慮して決定される。通常、受光領域のサイズは、干渉縞の周期長の5分の1程度以下とすることが好ましい。
【0073】
実施形態1の半導体レーザジャイロ101は、プリズムやレンズなどの光学素子を必要としないという利点がある。一方、半導体レーザジャイロ101を得るには、微細な受光素子113aおよび113bを形成する必要がある。
【0074】
(実施形態2)
実施形態2では、レンズを備える半導体レーザジャイロの一例について説明する。実施形態2のジャイロ102の斜視図を図9(a)に示す。また、ジャイロ102で用いられる半導体レーザ10の斜視図を図9(b)に示す。
【0075】
ジャイロ102は、半導体レーザ10と、球面レンズ115と、光検出器116とを備える。光検出器116は、2つの受光素子を備える2チャンネルの光検出器である。ジャイロ102は5本の電極114を備えている。電極114はジャイロ101と同様に接続される。
【0076】
球面レンズ115は、その焦点が、レーザ光の出射部(端面24a)の近傍に位置するように配置される。また、光検出器116は、端面24aから一定の距離(たとえば数センチメートル)離れた位置に配置される。したがって、ジャイロ102の一例のサイズは、3cm×2cm×1cm程度である。
【0077】
端面24aから出射される2つのレーザ光は、球面レンズ115で略平行な光となり、重なり合って干渉縞を生じる。球面レンズ115を用いることによって干渉縞の周期長を長くできるため、ジャイロ102では、干渉縞の移動を正確に測定できる。
【0078】
なお、球面レンズ115は、球状に限らず、薄膜などの他の形状であってもよい。たとえば、平面形状が半円状の薄膜状レンズを用いてもよい。この場合、レンズを基板11上にモノリシックに形成してもよい。レンズの材料としては、SiO2などの透明材料を用いることができるが、半導体を用いてもよい。たとえば、半導体レーザの半導体層とレンズとは同じ積層構造を有してもよい。
【0079】
(実施形態3)
実施形態3では、半導体レーザとプリズムとがモノリシックに形成されている半導体レーザジャイロの一例について説明する。実施形態3のジャイロ103の斜視図を図10(a)に示す。また、半導体レーザ10およびプリズム117が形成された基板11の斜視図を図10(b)に示す。
【0080】
ジャイロ103は、ステム112と、ステム112上に配置された半導体レーザ10および2チャンネルの光検出器116と、基板11上に形成されたプリズム117とを備える。プリズム117は半導体レーザ10の半導体層20と同じ積層構造を有し、半導体レーザ10とモノリシックに形成されている。そのため、プリズム117は、半導体層20を形成する際に同時に形成できる。
【0081】
ジャイロ103における2つのレーザ光の光路を図11に模式的に示す。半導体レーザ10から出射された2つのレーザ光は、プリズム117で重ね合わされて干渉縞を生じる。干渉縞の移動は、光検出器116の2つの受光素子116aおよび116bによって観測される。干渉縞は、ジャイロ103の回転速度に応じた速度で矢印の方向に移動する。干渉縞の移動方向は、ジャイロ103の回転方向に対応して変化する。
【0082】
プリズム117の形状は、入射する2つのレーザ光の角度や間隔、および光検出器116との距離などの条件に応じて決定される。干渉縞の周期長を長くするために、プリズム117の断面形状である三角形の最も大きい角は90°(0.5πラジアン)よりも僅かに大きいことが好ましい。その角の角度を(0.5π+ε)ラジアンとすると、εは、0.5ラジアン以下であることが好ましい。
【0083】
(実施形態4)
実施形態4では、半導体レーザとプリズムと光検出器とがモノリシックに形成されている半導体レーザジャイロの一例について説明する。実施形態4のジャイロ104の斜視図を図12(a)に示し、主要部の斜視図を図12(b)に示す。
【0084】
半導体レーザ10と、プリズム117と、光検出器113(受光素子113aおよび113b)とは、基板11上にモノリシックに形成されている。ジャイロ104では、図11と同様の光路を進む2つのレーザ光で干渉縞が形成される。
【0085】
半導体レーザ10の半導体層20と、受光素子113aおよび113bの半導体層と、プリズム117とは、同じ積層構造を有する。これらは、半導体層20を形成する過程で同時に形成できるため、製造が容易である。また、これらは半導体プロセスで形成できるため、正確な位置および形状に形成できる。なお、プリズム117だけを他の材料、たとえばSiO2などで形成することも可能である。
【0086】
(半導体レーザジャイロの製造方法)
本発明のジャイロで用いられる半導体レーザの製造方法に限定はなく、半導体素子を製造するための公知の技術によって製造できる。また、本発明のジャイロは、半導体レーザと他の部材とを公知の技術で組み立てることによって容易に製造できる。以下に、半導体レーザ10を製造する方法の一例を説明する。
【0087】
図13(a)〜(h)に、製造工程を模式的に示す。なお、図13(a)〜(h)では、絶縁層12の形成状態の理解を容易にするため、絶縁層12の表面にハッチングを付す。
【0088】
まず、図13(a)に示すように、基板11上に、複数の半導体層からなる半導体層20aと、絶縁層12aとを形成する。半導体層20aは、エッチングによって半導体層20(図2および表1参照)となる層である。活性層24を除き、半導体層20aを構成する各層は、一般的な方法、たとえば、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法で形成できる。絶縁層12aは、たとえばSi34やSiO2からなる。絶縁層12aは、スパッタリング法やCVD法といった方法で形成できる。
【0089】
活性層24は、たとえば、InAsからなる量子ドットとGaInAsSbからなるカバー層とで形成する。量子ドットは自己形成によって形成できる。具体的には、InAsを供給したのち、カバー層と、障壁層とを積層する。このようにして形成される半導体層と障壁層とのセットを1〜50セット積層する。量子ドット、カバー層および障壁層は、たとえば、ガスソースMBE、MBE、CBE、MOCVDで形成できる。
【0090】
MBE法を用いて活性層24を形成する一例について説明する。まず、Inフラックス1.1×10-5Pa(8×10-8Torr)とAsフラックス1.3×10-3Pa(1×10-5Torr)とによって、2.5ML(Mono-Layer)のInAsを供給して量子ドットを形成する。量子ドットは、自己形成によって形成される。次に、Inフラックス1.1×10-5Pa(8×10-8Torr)と、Gaフラックス4.7×10-5Pa(3.5×10-7Torr)と、Asフラックス1.3×10-3Pa(1×10-5Torr)と、Sbフラックス2.7×10-5Pa(2×10-7Torr)とを供給することによって、Ga0.85In0.15As0.98Sb0.02層(厚さ5nm)を形成する。次に、Gaフラックス4.7×10-5Pa(3.5×10-7Torr)と、Asフラックス1.3×10-3Pa(1×10-5Torr)とを供給することによって、GaAs障壁層(厚さ15nm)を形成する。これらの工程を3回繰り返すことによって、活性層24を形成できる。
【0091】
次に、図13(b)に示すように、絶縁層12a上に、パターニングされたレジスト膜151を形成する。レジスト膜151は、図3に示した活性層24の形状にパターニングする。
【0092】
次に、図13(c)に示すように、レジスト膜151をマスクとして、絶縁層12aと半導体層20aと基板11の一部とをエッチングしたのち、レジスト膜151を除去する。エッチングは、RIE(Reactive Ion Etching)法によって行い、少なくともクラッド層22の深さまで行う。エッチングによって、所定の形状の絶縁層12および半導体層20が形成される。エッチングは、半導体層20の側面の垂直性および平滑性が高くなるような条件で行われる。そのような条件は、半導体製造プロセスで一般的に採用されている。エッチングによって、半導体層20を構成するすべての半導体層の平面形状は、図3に示した活性層24の平面形状と同じになる。また、半導体層20の側面はミラー面として機能する。
【0093】
次に、図13(d)に示すように、領域31(図2および図4参照)に対応するように、絶縁層12に略菱形の貫通孔12hを形成する。貫通孔12hは、一般的なフォトリソ・エッチング工程で形成できる。
【0094】
次に、図13(e)に示すように、基板11の表面全体を覆うようにレジスト膜152を形成する。このとき、基板11の表面と絶縁層12の表面との間の段差を埋めるために、レジスト膜152は、レジスト層152aおよびレジスト層152bの2層からなることが好ましい。レジスト膜152は、レジスト層152aを基板11の表面全体に塗布して段差を埋めたのち、レジスト層152bを塗布することによって形成できる。この方法によれば、表面の平坦性が高いレジスト膜152を形成できる。
【0095】
次に、図13(f)に示すように、レジスト膜152をパターニングし、レジスト膜152に貫通孔152hを形成する。貫通孔152hは、第1の電極13を形成する領域に対応する形状に形成される。貫通孔152hを形成したのち、半導体層20(コンタクト層27)と第1の電極13との間で良好なコンタクトが得られるように、貫通孔152h内の半導体層20(コンタクト層27)の表面を0.01μm〜0.02μm程度エッチングする。
【0096】
次に、図13(g)に示すように、第1の電極13を形成する。第1の電極13は、リフトオフ法で形成できる。具体的には、まず、レジスト膜152をマスクとして、第1の電極13を構成する複数の金属層を電子ビーム法で順次成膜する。その後、レジスト膜152をアセトンで除去する。このようにして、所定の形状の第1の電極13を形成できる。第1の電極13は、絶縁層12に形成された貫通孔12hを介して半導体層20(コンタクト層27)に接触する。
【0097】
1枚の基板11(ウェハ)を用いて多数の半導体レーザを形成する場合、基板11のへき開を容易にするため、基板11の厚さが100〜150μmになるように基板11の裏面を研磨することが好ましい。
【0098】
次に、図13(h)に示すように、基板11の裏面側に複数の金属層を蒸着法で順次形成して第2の電極14を形成する。その後、第1の電極13および第2の電極14を構成する金属層を合金化するために、400〜450℃で熱処理する。最後に、必要に応じて、半導体レーザごとに基板11をへき開する。
【0099】
このようにして、半導体レーザ10が形成される。なお、半導体レーザ10と同じ積層構造を有するフォトダイオードをモノリシックに形成する場合には、半導体レーザを形成する部分とフォトダイオードを形成する部分とに対応するように、レジスト膜151および152をパターニングすればよい。同様に、半導体レーザの半導体層と同様の積層構造を有するプリズムを形成する場合には、半導体レーザを形成する部分とプリズムを形成する部分とに対応するようにレジスト膜151をパターニングすればよい。
【0100】
なお、基板11には、光検出器およびプリズム以外の、他の光学素子や電子部品を形成してもよい。たとえば、半導体レーザを駆動するための駆動回路や、光検出器から出力された信号を処理するための回路を形成してもよい。また、本発明の半導体レーザジャイロに、従来のジャイロに用いられている公知の技術をさらに適用してもよい。
【0101】
本発明の半導体レーザの他の例を示す。以下で説明する半導体レーザも、本発明のジャイロに適用できる。
【0102】
表2に、1.3μm帯レーザの層構造を示す。なお、半導体レーザの形状等は、上述したレーザと同じである。
【0103】
【表2】

【0104】
図14に活性層の一部を模式的に示す。活性層は、下地層(半導体層(B))141と、下地層141上に形成された半導体層(半導体層(A))142と、障壁層(半導体層(D))143とからなる積層構造144が12セット積層された構造を有する。半導体層142は、量子ドット142aと、量子ドットをカバーするカバー層142bとからなる。
【0105】
下地層141には、ノンドープGaAs0.98Sb0.02層(厚さ7nm)を用いた。量子ドット142aは、下地層141上にノンドープInAsを2.5ML供給することによって形成した。カバー層142bには、ノンドープGa0.87In0.13As層(厚さ3nm)を用いた。障壁層143には、ノンドープGaAs層(厚さ23nm)を用いた。
【0106】
レーザを構成する各層は、MBE法によって形成したが、ガスソースMBE、CBE、MOCVDといった方法で形成してもよい。量子ドットは、自己形成によって形成される。なお、各層を成長する際の基板温度は530℃とした。各層を形成したのち、フォトリソグラフィーとメサエッチングとを行い、レーザを形成した。このレーザの25℃におけるしきい値電流密度(Jth)は0.04kA/cm2と低く、閾値電流も15mAと低かった。
【0107】
GaAsSbからなる下地層(半導体層(B))を用いることによって、GaAs上に量子ドットを形成する場合に比べ、フォトルミネッセンス強度を高めることが可能である。GaAsSb上に量子ドットを形成する場合と、GaAs上に量子ドットを形成する場合とについて、量子ドットの密度とフォトルミネッセンス強度との関係を図15に示す。図15に示すように、ドット密度が3×1010cm-2の場合、GaAsSbからなる下地層を用いることによって、フォトルミネッセンス強度が約3倍となった。
【0108】
なお、積層構造の繰り返し回数は、12セットに限定されず、1セット〜50セットの範囲から選択してもよい。
【0109】
また、障壁層143を構成する半導体はノンドープのGaAsに限定されず、ドーピング濃度が1×1017〜5×1019cm-2の範囲でp型に変調ドーピングを行ってもよい。変調ドープが行われた障壁層を含む活性層の一例の一部を図16に模式的に示す。
【0110】
図16の活性層は、障壁層の部分のみが図14の活性層と異なる。図16の活性層は、ノンドープのGaAsSb下地層141と、半導体層142と、障壁層163(厚さ26nm)とからなる積層構造164が12セット積層された構造を有する。障壁層163は、ノンドープGaAs層163a(厚さ18nm)と、p型GaAs層163b(厚さ6nm)と、ノンドープGaAs層163c(厚さ2nm)とを含む。p型GaAs層163bのドーピング濃度は1×1018cm-3である。各層は、表2に記載のレーザと同様の方法で形成できる。
【0111】
図16の活性層を用いたレーザの25℃におけるしきい値電流密度(Jth)は0.04kA/cm2と低く、閾値電流も15mAと低かった。
【0112】
上述した下地層および変調ドーピングは、波長300nm〜1700nm帯のレーザにも適用できる。
【0113】
以上、本発明の実施形態について例を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の技術的思想に基づいて他の実施形態に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の半導体レーザは、半導体レーザジャイロに用いることができる。また、本発明の半導体レーザジャイロは、物体の回転の検出が必要な様々な機器に適用できる。代表的な例としては、姿勢制御装置やナビゲーション装置、手ぶれ補正装置に利用できる。具体的には、本発明のジャイロは、ロケットや飛行機などの航空機、自動車やバイクといった移動手段に利用できる。また、本発明のジャイロは超小型で取り扱いが容易であるという利点を生かし、携帯電話や小型のパーソナルコンピュータといった携帯情報端末、玩具、カメラなどに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の半導体レーザの一例を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示した半導体レーザを模式的に示す断面図である。
【図3】図1に示した半導体レーザの活性層の平面形状を模式的に示す図である。
【図4】図1に示した半導体レーザの機能を説明する図である。
【図5】本発明の半導体レーザの活性層の一例を模式的に示す断面図である。
【図6】活性層のカバー層を構成するV族元素に占めるSbの割合と、PLピークの半値幅との関係を示すグラフである。
【図7】第1の電極の一例を模式的に示す平面図である。
【図8】本発明の半導体レーザジャイロの一例を模式的に示す(a)全体の斜視図および(b)要部の斜視図である。
【図9】本発明の半導体レーザジャイロの他の一例を模式的に示す(a)全体の斜視図および(b)要部の斜視図である。
【図10】本発明の半導体レーザジャイロのその他の一例を模式的に示す(a)全体の斜視図および(b)要部の斜視図である。
【図11】図10に示した半導体レーザジャイロにおけるレーザ光の光路を示す模式図である。
【図12】本発明の半導体レーザジャイロのその他の一例を模式的に示す(a)全体の斜視図および(b)要部の斜視図である。
【図13】本発明の半導体レーザジャイロで用いられる半導体レーザの製造工程の一例を模式的に示す斜視図である。
【図14】本発明の半導体レーザジャイロで用いられる活性層の一例の一部を模式的に示す断面図である。
【図15】量子ドットを形成する下地層によってフォトルミネッセンス強度が変化することを示すグラフである。
【図16】本発明の半導体レーザジャイロで用いられる活性層の他の一例の一部を模式的に示す断面図である。
【図17】従来の光ジャイロの構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0116】
10 半導体レーザ
11 基板
12 絶縁層
12h 貫通孔
13 第1の電極
13a 第1の部分
13b 第2の部分
14 第2の電極
20 半導体層
21 バッファ層
22 クラッド層
23 光閉じ込め層
24 活性層
24a〜24d (第1から第4の)端面
25 光閉じ込め層
26 クラッド層
27 コンタクト層
31、31a、31b 第2の領域
32 菱形の経路
32a〜32d (第1から第4の)角部
35 第1のレーザ光
36 第2のレーザ光
51、142 半導体層(半導体層(A))
51a、142a 量子ドット
51b、142b カバー層
52、143、163 障壁層(半導体層(D))
101〜104 半導体レーザジャイロ
111 カバー
112 ステム
113、116 光検出器
113a、113b、116a、116b 受光素子
114 電極
115 球面レンズ
117 プリズム
141 下地層(半導体層(B))
151、152 レジスト膜
L1、L2 レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2のレーザ光を出射可能な半導体レーザであって、
基板と、前記基板上に形成された活性層と、前記活性層にキャリアを注入するための第1および第2の電極とを備え、
前記第1のレーザ光は、前記活性層内において多角形の経路上を周回するレーザ光(L1)の一部が出射されたレーザ光であり、
前記第2のレーザ光は、前記経路上を前記レーザ光(L1)とは逆の方向に周回するレーザ光(L2)の一部が出射されたレーザ光であり、
前記活性層は、少なくとも1層の半導体層(A)を含み、前記半導体層(A)は、第1の半導体からなる複数の量子ドットと、前記第1の半導体とは異なる第2の半導体からなり前記量子ドットを覆うように形成されたカバー層とを含む半導体レーザ。
【請求項2】
前記第1の半導体がInとAsとを含むIII−V族化合物半導体であり、前記第2の半導体がGaとAsとSbとを含むIII−V族化合物半導体である請求項1に記載の半導体レーザ。
【請求項3】
前記第2の半導体のV族元素に占めるSbの割合が、0.2原子%〜10原子%の範囲にある請求項2に記載の半導体レーザ。
【請求項4】
前記半導体層(A)に隣接するように前記半導体層(A)の前記基板側に形成された半導体層(B)を含み、
前記半導体層(B)はSbを含むIII−V族化合物半導体からなり、
前記半導体層(B)のSbの含有率が、前記第1の半導体のSbの含有率よりも高い請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
【請求項5】
前記半導体層(B)を構成するIII−V族化合物半導体において、V族元素に占めるSbの割合が0.2原子%〜100原子%の範囲にある請求項4に記載の半導体レーザ。
【請求項6】
前記半導体層(A)と前記半導体層(B)との間に配置された、厚さが20原子層以内の半導体層(C)を含む請求項4または5に記載の半導体レーザ。
【請求項7】
前記半導体層(A)に隣接するように前記半導体層(A)上に形成された半導体層(D)を含み、
前記半導体層(D)のバンドギャップが、前記第2の半導体のバンドギャップよりも大きい請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
【請求項8】
前記半導体層(D)の少なくとも1部がドーピングされている請求項7に記載の半導体レーザ。
【請求項9】
前記活性層の平面形状が環状ではない請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
【請求項10】
前記多角形の経路は菱形の経路であり、
前記活性層は、前記菱形の経路の第1から第4の角部に対応する位置に形成された第1から第4の端面を有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
【請求項11】
第1および第2のレーザ光を出射する半導体レーザと光検出器とを備える半導体レーザジャイロであって、
前記光検出器は、前記第1および第2のレーザ光によって干渉縞が形成される位置に配置されており、
前記半導体レーザが、請求項1〜10のいずれか1項に記載の半導体レーザである半導体レーザジャイロ。
【請求項12】
前記光検出器が複数の受光素子を備える請求項11に記載の半導体レーザジャイロ。
【請求項13】
前記半導体レーザと前記受光素子とが、モノリシックに形成されている請求項12に記載の半導体レーザジャイロ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−108641(P2006−108641A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230867(P2005−230867)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度独立行政法人情報通信研究機構、研究テーマ「シームレスな位置情報検出を実現する高精度角速度センサチップの研究開発」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】