半導体気相成長装置
【課題】サセプタの交換周期を長くしても均一な膜厚分布の半導体結晶膜が形成された基板を作製することができる半導体気相成長装置を提供すること。
【解決手段】反応炉内に少なくとも2種類以上の原料ガスを供給して半導体結晶膜を基板31上に形成する半導体気相成長装置において、基板31を挿通可能な貫通穴27aが形成されたサセプタ27と、基板31を保持する基板保持用治具37と、基板31の基板厚さ方向の位置を変更するためのスペーサー35と、が設けられることを特徴とする。
【解決手段】反応炉内に少なくとも2種類以上の原料ガスを供給して半導体結晶膜を基板31上に形成する半導体気相成長装置において、基板31を挿通可能な貫通穴27aが形成されたサセプタ27と、基板31を保持する基板保持用治具37と、基板31の基板厚さ方向の位置を変更するためのスペーサー35と、が設けられることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体気相成長装置に係り、特に基板の保持を行うための構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の半導体気相成長装置には、基板の成膜面とサセプタの表面とを同一平面上に配置し成膜を行う構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図11は、サセプタ1とその付属部品からなるサセプタ部3の上面側を示している。図に示すように、サセプタ1には、貫通穴1aがサセプタ1の中心軸を中心に45度間隔で8箇所に形成されている。そして、貫通穴1aの各々には、円板状の取手部5aが形成された均熱部材5が挿入されている。
【0004】
図12は、サセプタ部3の下面側を示している。図に示すように、サセプタ1に形成された8箇所の貫通穴1aの各々には、基板7が収容されている。この基板7は、サセプタ1の下面1bと当接して配置された爪部材9により保持されている。爪部材9は貫通穴1aの中心軸を中心に45度間隔で8箇所に配置されている。
【0005】
図13は、図11のA−A線に沿う断面を示している。図に示すように、サセプタ1の下面1bには、貫通穴1aとの境界に爪部材9が配置されており、この爪部材9の先端側には基板7が載置されている。さらに、基板7の上面7aには、均熱部材5が載置されており、これにより基板7の温度は一定に保たれる。また、基板7の下方には成膜用の原料ガスが流通する。
【0006】
基板7への成膜にあたっては、先ず、基板7が収容されたサセプタ部3を不図示の反応管内に設置する。次いで、反応管内に原料ガスを供給する。すると、基板7は均熱部材5により加熱されているため、原料ガスが熱分解し、基板7上に結晶が形成され、半導体結晶膜11(図14記載)が成膜される。このとき、サセプタ1も加熱されるので、サセプタ1の下面1bには堆積層13が形成される。
【0007】
次いで、基板7上に所定量の成膜が行われたら、基板7を取り出し、再び成膜前の基板7をサセプタ部3に設置する。そして、上述した操作を繰り返し、多数の基板7に成膜を行う。
【0008】
ところで、基板7に所定量の成膜が行われると基板7のみを交換し、サセプタ1を大気に曝すことなく、次の基板7の成膜を行うので、図14に示すようにサセプタ1の下面1bに形成される堆積層13の膜厚L1が厚くなり、堆積層13の下面13aと、基板7の下面7bに形成される半導体結晶膜11の下面11aとの段差L2も大きくなる。段差L2が大きくなると、基板7に接触する原料ガスの流れは、基板7の下面7bでの位置により大きく相違するようになる。そのため、半導体結晶膜11の厚さ分布が不均一になる前に、サセプタ1の交換を行っている。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−283444号公報 (第3頁、第1図)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したように従来の半導体気相成長装置では、基板7の下面7bとサセプタ1に形成される堆積層13の下面13aとの段差L2を少なくするために、頻繁にサセプタ1の交換を行う必要があり、作業性が悪くなり、生産性が低下してしまうという問題があった。また、使用したサセプタ1を再利用する場合にはクリーニングを行う必要があり手間がかかるという問題があった。
【0011】
本発明は、上記事情を考慮し、サセプタの交換周期を長くしても均一な膜厚分布の半導体結晶膜が形成された基板を作製することができる半導体気相成長装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の半導体気相成長装置は、反応炉内に少なくとも2種類以上の原料ガスを供給して半導体結晶膜を基板上に形成する半導体気相成長装置において、前記基板を挿通可能な貫通穴が形成されたサセプタと、前記基板を保持する保持部と、前記基板の前記基板厚さ方向の位置を変更するための調整部材と、が設けられることを特徴とする。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、調整部材により基板の基板厚さ方向の位置が変更される。基板への成膜処理にあたっては、基板に成膜を行う毎にサセプタに堆積する堆積層の厚さが厚くなり、基板の下面と堆積層の下面との段差が大きくなり、基板に接触する原料ガスの流れは、基板面での位置により大きく相違するようになる。そのため、均一な膜厚分布の半導体結晶膜を基板に形成するのが困難になる。しかしながら、調整部材により基板の基板厚さ方向の位置を変更することで段差を解消することが可能である。そのため、サセプタの交換周期が長くなり、均一な膜厚分布の半導体結晶膜が形成された基板を多数作製することができる。
【0014】
請求項2に記載の半導体気相成長装置は、請求項1に記載の半導体気相成長装置において、前記基板を加熱するための均熱部材が設けられ、前記調整部材を前記均熱部材と前記基板との間隙に挟み込むことを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、基板と基板を加熱するための均熱部材との間に調整部材を挟み込むようにしたので、所定量サセプタに堆積層が形成されたら、調整部材を取り外すことで、基板の下面と堆積層の下面との段差を解消することが可能である。また、調整部材の取外しは基板を取り換えるときに同時に手軽に行うことができる。
【0016】
請求項3に記載の半導体気相成長装置は、反応炉内に少なくとも2種類以上の原料ガスを供給して半導体結晶膜を基板上に形成する半導体気相成長装置において、前記基板を挿通可能な貫通穴が形成されたサセプタと、前記基板を保持する保持部と、を有し、前記保持部には、前記基板の前記基板厚さ方向の位置を変更するための調節部が設けられることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、保持部に設けられた調節部により基板の基板厚さ方向の位置が変更される。基板への成膜処理にあたっては、基板に成膜する毎にサセプタに堆積する堆積層の厚さが厚くなり、基板の下面と堆積層の下面との段差が大きくなり、基板に接触する原料ガスの流れは、基板面での位置により大きく相違するようになる。そのため、均一な膜厚分布の半導体結晶膜を基板に形成するのが困難になる。しかしながら、調節部により基板の基板厚さ方向の位置を変更することで段差を解消することが可能である。そのため、サセプタの交換周期が長くなり、均一な膜厚分布の半導体結晶膜が形成された基板を多数作製することができる。
【0018】
請求項4に記載の半導体気相成長装置は、反応炉内に少なくとも2種類以上の原料ガスを供給して半導体結晶膜を基板上に形成する半導体気相成長装置において、前記基板を挿通可能な貫通穴が形成されたサセプタと、前記基板を保持する保持部と、前記基板を加熱するための均熱部材と、が設けられ、前記サセプタには凹部又は凸部が形成され、前記均熱部材には前記サセプタの前記凹部又は凸部と係合する凸部又は凹部が形成され、前記サセプタの前記凹部又は凸部と前記均熱部材の前記凸部又は凹部とを係合させることで、前記均熱部材の前記サセプタ厚さ方向の位置を変更することを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、サセプタには凹部又は凸部が形成され、均熱部材にはサセプタに形成された凹部又は凸部と係合する凸部又は凹部が形成されるので、サセプタの凹部又は凸部と均熱部材の凸部又は凹部とを係合させることで、均熱部材のサセプタ厚さ方向の位置が変更する。基板への成膜処理にあたっては、基板に成膜する毎にサセプタに堆積する堆積層の厚さが厚くなり、基板の下面と堆積層の下面との段差が大きくなり、基板に接触する原料ガスの流れは、基板面での位置により大きく相違するようになる。そのため、均一な膜厚分布の半導体結晶膜を基板に形成するのが困難になる。しかしながら、均熱部材の凸部又は凹部をサセプタの凹部又は凸部に係合させ基板の基板厚さ方向の位置を変更することで段差を解消することが可能である。そのため、サセプタの交換周期が長くなり、均一な膜厚分布の半導体結晶膜が形成された基板を多数作製することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、本発明の半導体気相成長装置の第1実施形態を示している。半導体気相成長装置15は、反応炉17を有しており、この反応炉17内には、石英ガラス製の反応管19が設けられている。また、反応炉17には、ガス流入口21とガス流出口23とが設けられ、原料ガスが反応管19内を流通するようにされている。原料ガスは反応管19内のサセプタ部25に接触する。
【0022】
図2は、サセプタ部25の上面側を示している。サセプタ部25は円板状のサセプタ27を有しており、このサセプタ27には、サセプタ27の中心軸を中心に45度間隔で8箇所に貫通穴27aが形成されている。そして、各々の貫通穴27aには、円板状の取手部29aが形成された均熱部材29が挿入されている。なお、サセプタ27は、高純度の等方性黒鉛の表面に炭化珪素(SiC)を被覆したものである。
【0023】
図3は、サセプタ部25の下面側を示している。図に示すように、サセプタ27に形成された8箇所の貫通穴27aの各々には、基板31が収容されている。この基板31は、サセプタ27の下面27bよりも下方に配置された輪環状部材33により保持されている。
【0024】
図4は、図2のB−B線に沿う断面を示している。図に示すように、サセプタ27の貫通穴27aより下方には輪環状部材33が配置されており、この輪環状部材33には基板31が載置されている。さらに、基板31の上面31aには、均熱部材29が載置されており、この均熱部材29により基板31の温度は一定に保たれる。また、均熱部材29の上端側にはフランジ部29bが形成され、このフランジ部29bの外径はサセプタ27の貫通穴27aの径よりも大きく形成されている。そして、フランジ部29bとサセプタ27の上面27cとの間に調整部材である輪環状のスペーサー35が挟み込まれる。なお、均熱部材29は、少なくとも800℃以上の高温に耐えることができる材質で形成する必要がある。そのため、均熱部材29の材料には、カーボン板にPBN、AlN、又はAl2O3をコーティングしたもの等が用いられる。また、スペーサー35の材料には、耐熱性のあるセラミックが好ましい。
【0025】
次に、図5の斜視図を用いてサセプタ部25について詳細に説明する。サセプタ部25は、貫通穴27aが形成されたサセプタ27と、このサセプタ27の貫通穴27aと同径の貫通穴35aが形成されたスペーサー35とを有している。また、サセプタ部25は、均熱部材29と、この均熱部材29に連結され基板31を保持する保持部である基板保持用治具37とを有している。この基板保持用治具37は、薄板状の輪環状部材33と、この輪環状部材33の中心軸を中心に120度間隔で3箇所に立設された雄螺子部材39と、この雄螺子部材39と螺合するナット41と、を有している。なお、輪環状部材33、雄螺子部材39、及びナット41の材料には、耐熱性のあるセラミックが好ましい。
【0026】
均熱部材29は、均熱部材29を把持するための取手部29aと、フランジ部29bと、比較的厚みのある凸部29cとを有している。また、フランジ部29bには、その中心軸を中心に120度間隔で3箇所に貫通穴29dが形成されている。
【0027】
そして、サセプタ部25の組立てにあたっては、先ず、サセプタ27の上面27cに、スペーサー35を載置する。このとき、サセプタ27の中心とスペーサー35の中心とが同心軸上に配置されるようにする。次いで、基板31を基板保持用治具37の輪環状部材33上に載置し、この状態で、基板保持用治具37の雄螺子部材39を均熱部材29のフランジ部29bに形成された貫通穴29dに挿通し、ナット41を螺合し、基板31を均熱部材29の凸部29cに当接させ、一体化する。最後に、基板保持用治具37と基板31と均熱部材29の凸部29cとを、均熱部材29のフランジ部29bがスペーサー35に当接するまで、スペーサー35の貫通穴35a及びサセプタ27の貫通穴27aに挿入する。
【0028】
また、基板31への成膜にあたっては、先ず、基板31が収容されたサセプタ部25を反応管19内に設置する。次いで、反応管19内に原料ガスを供給する。すると、基板31は灼熱部材29により加熱されているため、原料ガスが熱分解し、基板31上に結晶が形成され、半導体結晶膜43(図6記載)が成膜される。このとき、サセプタ27も加熱されるので、サセプタ27の下面27bには堆積層45が形成される。
【0029】
次いで、基板31上に所定量の成膜が行われたら、基板31を取り出し、再び成膜前の基板31をサセプタ部25に設置する。そして、上述した操作を繰り返し、多数の基板31に成膜を行う。
【0030】
ところで、基板31に所定量の成膜が行われると基板31のみを交換し、サセプタ27を大気に曝すことなく、次の基板31の成膜を行うので、図6に示すようにサセプタ27の下面27bに形成される堆積層45の膜厚L3が厚くなり、堆積層45の下面45aと、基板31の下面31bに形成される半導体結晶膜43の下面43aとの段差L4も大きくなる。段差L4が大きくなると、基板31の下面側に接触する原料ガスの流れは、基板31の下面31bでの位置により大きく相違するようになる。そのため、基板31に形成される半導体結晶膜43の厚さ分布が不均一になる。
【0031】
そこで、堆積層45の厚さがスペーサー35の厚さになったら、基板31を取り換える際にスペーサー35を撤去し、図7に示すようにスペーサー35がない状態で基板31をサセプタ27の貫通穴27aに挿入する。すると、基板31の下面31bと堆積層45の下面45aとは、同一平面上に位置することになり、段差L4(図6記載)が解消する。そのため、基板31の下面31bでの位置により原料ガスの流れが相違し、半導体結晶膜43の厚さ分布が不均一になるという問題が解決される。
(実施例)
次に、本発明の実施例として、基板31上に半導体結晶膜43をエピタキシャル成長させる場合について説明する。
【0032】
GaAs結晶を成長させる場合には、原料ガスとしてIII族原料のトリメチルガリウム((CH3)3Ga)と、V族原料のアルシン(AsH3)とを用いる。
【0033】
AlGaAs結晶を成長させる場合には、原料ガスとしてIII族原料のトリメチルガリウム((CH3)3Ga)及びトリメチルアルミニウム((CH3)3Al)と、V族原料のアルシン(AsH3)とを用いる。
【0034】
また、n型の化合物半導体結晶を成長させる場合には、シリコン(Si)の原料となるジシラン(Si2H6)をn型ドーパントとして用いる。
【0035】
スペーサー35の厚さは、基板31の面内バラツキが約2%を超えない総膜厚よりも小さい寸法にする。ここでは、0.25mmのものを用いる。このスペーサー35をサセプタ27とフランジ部29bとの間に挟み込ませた状態で、基板31上に成膜を行い、基板31の面内バラツキが約2%を超えない総膜厚に達した時点でスペーサー35を取り外し、基板31の下面31bの位置をサセプタ27に形成された堆積層45の下面45aの位置に近接させる。
【0036】
図8は、従来のサセプタ部3を用いた場合と本発明のサセプタ部25を用いた場合とにおける基板面内の膜厚のバラツキを示している。縦軸は基板31の下面31bでの膜厚のバラツキを示しており、横軸はサセプタ1,27の下面1b,27bに形成される堆積層13,45の厚さを示している。黒丸印は従来のサセプタ部3を用いた場合の試験結果を示しており、黒四角印は本発明のサセプタ部25を用いた場合の試験結果を示している。
【0037】
図から分かるように、従来のサセプタ部3を用いた場合には、堆積層13の厚さが0.3mm程に達したあたりから、基板7に形成される膜厚の基板面内バラツキが急に大きくなり2%を超える。しかしながら、本発明のサセプタ部25を用いた場合には、堆積層45の厚さがスペーサー35の厚さと同じ0.25mm程に達したときにスペーサー35をサセプタ部25から撤去し、基板31の下面31bの位置を堆積層45の下面45aの位置まで下降させているので、堆積層45の厚さが0.45mm程に達するまで、膜厚の基板面内バラツキが2%以内に抑えられている。すなわち、サセプタ27の交換周期が1.5倍程に延びている。
【0038】
以上述べたように本発明の第1実施形態によれば、スペーサー35により基板31の基板厚さ方向の位置が変更される。基板31への成膜処理にあたっては、基板31に成膜を行う毎にサセプタ27に堆積する堆積層45の厚さが厚くなり、基板31の下面31bと堆積層45の下面45aとの段差L4が大きくなり、基板31に接触する原料ガスの流れは、基板31の下面31bでの位置により大きく相違するようになる。そのため、均一な膜厚分布の半導体結晶膜43を基板31に形成するのが困難になる。しかしながら、スペーサー35を取り外すことにより基板31の基板厚さ方向の位置を変更することで段差L4を解消することが可能である。そのため、サセプタ27の交換周期が長くなり、均一な膜厚分布の半導体結晶膜43が形成された基板31を多数作製することができる。また、スペーサー35の取外しは基板31を取り換えるときに同時に手軽に行うことができる。
【0039】
[第2実施形態]
図9は、本発明の半導体気相成長装置の第2実施形態におけるサセプタ部47を示している。なお、この第2実施形態は、サセプタ部47の構造のみ第1実施形態のサセプタ部25と相違するため、サセプタ部47についてのみ説明する。また、第1実施形態と同一構成部材には同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0040】
サセプタ部47は、貫通穴27aが形成されたサセプタ27を有している。また、サセプタ部47は、均熱部材29と、この均熱部材29に連結され基板31を保持する保持部である基板保持用治具49とを有している。この基板保持用治具49は、1箇所に形成された螺子穴51aと2箇所に形成された貫通穴51bとを有する輪環状部材51と、螺子穴51aに螺合される雄螺子部材53と、貫通穴51bに挿通されるガイド棒55と、雄螺子部材53を回転中心軸とするモーター57とを有している。そして、雄螺子部材53、ガイド棒55、及びモーター57により基板31の基板厚さ方向の位置を変更するための調節部が形成されている。また、1つの螺子穴51aと2つの貫通穴51bとは、輪環状部材51の中心軸を中心に120度間隔で3箇所に形成されている。なお、輪環状部材51、雄螺子部材53、及びガイド棒55の材料には、耐熱性のあるセラミックが好ましい。
【0041】
そして、サセプタ部47の組立てにあたっては、先ず、モーター57の回転中心軸である雄螺子部材53を均熱部材29の貫通穴29dに取手部29a側から挿通し、輪環状部材51の螺子穴51aに螺合する。次いで、基板31を基板保持用治具49の輪環状部材51上に載置する。
【0042】
次いで、ガイド棒55を均熱部材29の貫通穴29dに取手部29a側から挿通し、さらに輪環状部材51の螺子穴51bに挿通する。最後に、基板保持用治具49と基板31と均熱部材29の凸部29cとを、均熱部材29のフランジ部29bがサセプタ27の上面27cに当接するまで、サセプタ27の貫通穴27aに挿入する。
【0043】
また、基板31の基板厚さ方向位置の変更にあたっては、モーター57に直流電流を流し雄螺子部材53を回転させ、輪環状部材51をその軸方向に移動させる。このとき、ガイド棒55はガイドの役割を果たす。
【0044】
この第2実施形態でも第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0045】
さらに、この第2実施形態では、モーター57により連続的に基板31の基板厚さ方向の位置を変更することができるので、半導体結晶膜43の成長に合わせて基板31の基板厚さ方向の位置を変更すれば、常時、基板31に形成される半導体結晶膜43の下面43aとサセプタ27に形成される堆積層45の下面45aとの段差を解消することができる。そのため、サセプタ27の交換を行わなくても、第1実施形態よりも均一な膜厚分布の半導体結晶膜43が形成された基板31を多数作製することができる。
【0046】
[第3実施形態]
図10は、本発明の半導体気相成長装置の第3実施形態におけるサセプタ部59を示している。なお、この第3実施形態は、サセプタ部59の構造のみ第1実施形態のサセプタ部25と相違するため、サセプタ部59についてのみ説明する。また、第1実施形態と同一構成部材には同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0047】
サセプタ部59は、貫通穴60aが形成されたサセプタ60を有している。このサセプタ60には、貫通穴60aの中心軸を中心に90度間隔で凹部であるスリット60dが形成されている。また、均熱部材61のフランジ部61bには、フランジ部61bの中心軸を中心に90度間隔で4箇所に突起部61eが形成されている。
【0048】
そして、サセプタ部59の組立てにあたっては、先ず、基板31を基板保持用治具37の輪環状部材33上に載置し、この状態で、基板保持用治具37の雄螺子部材39を均熱部材61のフランジ部61bに形成された貫通穴61dに挿通し、ナット41に螺合し、基板31を均熱部材61の凸部61cと当接させ、一体化する。最後に、基板保持用治具37と基板31と均熱部材61の凸部61cとを、取手部61aを把持しながら、均熱部材61の突起部61eがサセプタ60の上面60cに当接するまで貫通穴60aに挿入する。
【0049】
また、サセプタ60の下面60bに突起部61eの高さ分の成膜が行われたら、取手部61aを把持しながら均熱部材61を回転させ、突起部61eをサセプタ60のスリット60dに嵌合させる。すると、均熱部材61は、フランジ部61bがサセプタ60の上面60cと当接するまで下降し、基板31の下面31bとサセプタ60の下面60bに形成された堆積層45の下面45aとは同一平面上に位置するようになる。
【0050】
この第3実施形態でも第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0051】
さらに、この第3実施形態では、均熱部材61のフランジ部61bに突起部61eを形成し、サセプタ60のスリット60dに突起部61eを嵌合させ、均熱部材61の基板31の基板厚さ方向位置を変更できるようにしたので、第1実施形態のようにスペーサー35を必要とせず、部品点数の低減を図ることができる。
【0052】
なお、上述した第3実施形態では、均熱部材61のフランジ部61bに凸部61cを形成し、サセプタ60にスリット60dを形成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、フランジ部61bにその周方向に沿って複数の円柱突起を設け、サセプタ60にこの円柱突起と係合する嵌合穴を設けるようにしても良い。或いは、サセプタ60の上面60cにその周方向に沿って複数の円柱突起を設け、フランジ部61bにこの円柱突起と係合する嵌合穴を設けるようにしても良い。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、サセプタに対する基板の基板厚さ方向の位置を変更できるようにしたので、サセプタの交換周期が長くなり、均一な膜厚分布の半導体結晶膜が形成された基板を多数作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体気相成長装置の第1実施形態を示す説明図である。
【図2】図1のサセプタ部の上面側を示す説明図である。
【図3】図1のサセプタ部の下面側を示す説明図である。
【図4】図2のB−B線に沿う断面図である。
【図5】図1のサセプタ部を斜視的に示す分解図である。
【図6】図4のサセプタに堆積層が形成された状態を示す説明図である。
【図7】図4のスペーサーを取り外した状態を示す説明図である。
【図8】従来のサセプタ部を用いた場合と本発明のサセプタ部を用いた場合とにおける基板面内の膜厚のバラツキを示す説明図である。
【図9】本発明の半導体気相成長装置の第2実施形態におけるサセプタ部を示す説明図である。
【図10】本発明の半導体気相成長装置の第3実施形態におけるサセプタ部を示す説明図である。
【図11】従来のサセプタ部の上面側を示す説明図である。
【図12】従来のサセプタ部の下面側を示す説明図である。
【図13】図11のA−A線に沿う断面図である。
【図14】図13のサセプタに堆積層が形成された状態を示す説明図である。
【符号の説明】
15 半導体気相成長装置
17 反応炉
27,60 サセプタ
27a,60a 貫通穴
29,61 均熱部材
31 基板
35 スペーサー
37,49 基板保持用治具
43 半導体結晶膜
60d スリット
61e 突起部
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体気相成長装置に係り、特に基板の保持を行うための構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の半導体気相成長装置には、基板の成膜面とサセプタの表面とを同一平面上に配置し成膜を行う構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図11は、サセプタ1とその付属部品からなるサセプタ部3の上面側を示している。図に示すように、サセプタ1には、貫通穴1aがサセプタ1の中心軸を中心に45度間隔で8箇所に形成されている。そして、貫通穴1aの各々には、円板状の取手部5aが形成された均熱部材5が挿入されている。
【0004】
図12は、サセプタ部3の下面側を示している。図に示すように、サセプタ1に形成された8箇所の貫通穴1aの各々には、基板7が収容されている。この基板7は、サセプタ1の下面1bと当接して配置された爪部材9により保持されている。爪部材9は貫通穴1aの中心軸を中心に45度間隔で8箇所に配置されている。
【0005】
図13は、図11のA−A線に沿う断面を示している。図に示すように、サセプタ1の下面1bには、貫通穴1aとの境界に爪部材9が配置されており、この爪部材9の先端側には基板7が載置されている。さらに、基板7の上面7aには、均熱部材5が載置されており、これにより基板7の温度は一定に保たれる。また、基板7の下方には成膜用の原料ガスが流通する。
【0006】
基板7への成膜にあたっては、先ず、基板7が収容されたサセプタ部3を不図示の反応管内に設置する。次いで、反応管内に原料ガスを供給する。すると、基板7は均熱部材5により加熱されているため、原料ガスが熱分解し、基板7上に結晶が形成され、半導体結晶膜11(図14記載)が成膜される。このとき、サセプタ1も加熱されるので、サセプタ1の下面1bには堆積層13が形成される。
【0007】
次いで、基板7上に所定量の成膜が行われたら、基板7を取り出し、再び成膜前の基板7をサセプタ部3に設置する。そして、上述した操作を繰り返し、多数の基板7に成膜を行う。
【0008】
ところで、基板7に所定量の成膜が行われると基板7のみを交換し、サセプタ1を大気に曝すことなく、次の基板7の成膜を行うので、図14に示すようにサセプタ1の下面1bに形成される堆積層13の膜厚L1が厚くなり、堆積層13の下面13aと、基板7の下面7bに形成される半導体結晶膜11の下面11aとの段差L2も大きくなる。段差L2が大きくなると、基板7に接触する原料ガスの流れは、基板7の下面7bでの位置により大きく相違するようになる。そのため、半導体結晶膜11の厚さ分布が不均一になる前に、サセプタ1の交換を行っている。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−283444号公報 (第3頁、第1図)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したように従来の半導体気相成長装置では、基板7の下面7bとサセプタ1に形成される堆積層13の下面13aとの段差L2を少なくするために、頻繁にサセプタ1の交換を行う必要があり、作業性が悪くなり、生産性が低下してしまうという問題があった。また、使用したサセプタ1を再利用する場合にはクリーニングを行う必要があり手間がかかるという問題があった。
【0011】
本発明は、上記事情を考慮し、サセプタの交換周期を長くしても均一な膜厚分布の半導体結晶膜が形成された基板を作製することができる半導体気相成長装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の半導体気相成長装置は、反応炉内に少なくとも2種類以上の原料ガスを供給して半導体結晶膜を基板上に形成する半導体気相成長装置において、前記基板を挿通可能な貫通穴が形成されたサセプタと、前記基板を保持する保持部と、前記基板の前記基板厚さ方向の位置を変更するための調整部材と、が設けられることを特徴とする。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、調整部材により基板の基板厚さ方向の位置が変更される。基板への成膜処理にあたっては、基板に成膜を行う毎にサセプタに堆積する堆積層の厚さが厚くなり、基板の下面と堆積層の下面との段差が大きくなり、基板に接触する原料ガスの流れは、基板面での位置により大きく相違するようになる。そのため、均一な膜厚分布の半導体結晶膜を基板に形成するのが困難になる。しかしながら、調整部材により基板の基板厚さ方向の位置を変更することで段差を解消することが可能である。そのため、サセプタの交換周期が長くなり、均一な膜厚分布の半導体結晶膜が形成された基板を多数作製することができる。
【0014】
請求項2に記載の半導体気相成長装置は、請求項1に記載の半導体気相成長装置において、前記基板を加熱するための均熱部材が設けられ、前記調整部材を前記均熱部材と前記基板との間隙に挟み込むことを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、基板と基板を加熱するための均熱部材との間に調整部材を挟み込むようにしたので、所定量サセプタに堆積層が形成されたら、調整部材を取り外すことで、基板の下面と堆積層の下面との段差を解消することが可能である。また、調整部材の取外しは基板を取り換えるときに同時に手軽に行うことができる。
【0016】
請求項3に記載の半導体気相成長装置は、反応炉内に少なくとも2種類以上の原料ガスを供給して半導体結晶膜を基板上に形成する半導体気相成長装置において、前記基板を挿通可能な貫通穴が形成されたサセプタと、前記基板を保持する保持部と、を有し、前記保持部には、前記基板の前記基板厚さ方向の位置を変更するための調節部が設けられることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、保持部に設けられた調節部により基板の基板厚さ方向の位置が変更される。基板への成膜処理にあたっては、基板に成膜する毎にサセプタに堆積する堆積層の厚さが厚くなり、基板の下面と堆積層の下面との段差が大きくなり、基板に接触する原料ガスの流れは、基板面での位置により大きく相違するようになる。そのため、均一な膜厚分布の半導体結晶膜を基板に形成するのが困難になる。しかしながら、調節部により基板の基板厚さ方向の位置を変更することで段差を解消することが可能である。そのため、サセプタの交換周期が長くなり、均一な膜厚分布の半導体結晶膜が形成された基板を多数作製することができる。
【0018】
請求項4に記載の半導体気相成長装置は、反応炉内に少なくとも2種類以上の原料ガスを供給して半導体結晶膜を基板上に形成する半導体気相成長装置において、前記基板を挿通可能な貫通穴が形成されたサセプタと、前記基板を保持する保持部と、前記基板を加熱するための均熱部材と、が設けられ、前記サセプタには凹部又は凸部が形成され、前記均熱部材には前記サセプタの前記凹部又は凸部と係合する凸部又は凹部が形成され、前記サセプタの前記凹部又は凸部と前記均熱部材の前記凸部又は凹部とを係合させることで、前記均熱部材の前記サセプタ厚さ方向の位置を変更することを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、サセプタには凹部又は凸部が形成され、均熱部材にはサセプタに形成された凹部又は凸部と係合する凸部又は凹部が形成されるので、サセプタの凹部又は凸部と均熱部材の凸部又は凹部とを係合させることで、均熱部材のサセプタ厚さ方向の位置が変更する。基板への成膜処理にあたっては、基板に成膜する毎にサセプタに堆積する堆積層の厚さが厚くなり、基板の下面と堆積層の下面との段差が大きくなり、基板に接触する原料ガスの流れは、基板面での位置により大きく相違するようになる。そのため、均一な膜厚分布の半導体結晶膜を基板に形成するのが困難になる。しかしながら、均熱部材の凸部又は凹部をサセプタの凹部又は凸部に係合させ基板の基板厚さ方向の位置を変更することで段差を解消することが可能である。そのため、サセプタの交換周期が長くなり、均一な膜厚分布の半導体結晶膜が形成された基板を多数作製することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、本発明の半導体気相成長装置の第1実施形態を示している。半導体気相成長装置15は、反応炉17を有しており、この反応炉17内には、石英ガラス製の反応管19が設けられている。また、反応炉17には、ガス流入口21とガス流出口23とが設けられ、原料ガスが反応管19内を流通するようにされている。原料ガスは反応管19内のサセプタ部25に接触する。
【0022】
図2は、サセプタ部25の上面側を示している。サセプタ部25は円板状のサセプタ27を有しており、このサセプタ27には、サセプタ27の中心軸を中心に45度間隔で8箇所に貫通穴27aが形成されている。そして、各々の貫通穴27aには、円板状の取手部29aが形成された均熱部材29が挿入されている。なお、サセプタ27は、高純度の等方性黒鉛の表面に炭化珪素(SiC)を被覆したものである。
【0023】
図3は、サセプタ部25の下面側を示している。図に示すように、サセプタ27に形成された8箇所の貫通穴27aの各々には、基板31が収容されている。この基板31は、サセプタ27の下面27bよりも下方に配置された輪環状部材33により保持されている。
【0024】
図4は、図2のB−B線に沿う断面を示している。図に示すように、サセプタ27の貫通穴27aより下方には輪環状部材33が配置されており、この輪環状部材33には基板31が載置されている。さらに、基板31の上面31aには、均熱部材29が載置されており、この均熱部材29により基板31の温度は一定に保たれる。また、均熱部材29の上端側にはフランジ部29bが形成され、このフランジ部29bの外径はサセプタ27の貫通穴27aの径よりも大きく形成されている。そして、フランジ部29bとサセプタ27の上面27cとの間に調整部材である輪環状のスペーサー35が挟み込まれる。なお、均熱部材29は、少なくとも800℃以上の高温に耐えることができる材質で形成する必要がある。そのため、均熱部材29の材料には、カーボン板にPBN、AlN、又はAl2O3をコーティングしたもの等が用いられる。また、スペーサー35の材料には、耐熱性のあるセラミックが好ましい。
【0025】
次に、図5の斜視図を用いてサセプタ部25について詳細に説明する。サセプタ部25は、貫通穴27aが形成されたサセプタ27と、このサセプタ27の貫通穴27aと同径の貫通穴35aが形成されたスペーサー35とを有している。また、サセプタ部25は、均熱部材29と、この均熱部材29に連結され基板31を保持する保持部である基板保持用治具37とを有している。この基板保持用治具37は、薄板状の輪環状部材33と、この輪環状部材33の中心軸を中心に120度間隔で3箇所に立設された雄螺子部材39と、この雄螺子部材39と螺合するナット41と、を有している。なお、輪環状部材33、雄螺子部材39、及びナット41の材料には、耐熱性のあるセラミックが好ましい。
【0026】
均熱部材29は、均熱部材29を把持するための取手部29aと、フランジ部29bと、比較的厚みのある凸部29cとを有している。また、フランジ部29bには、その中心軸を中心に120度間隔で3箇所に貫通穴29dが形成されている。
【0027】
そして、サセプタ部25の組立てにあたっては、先ず、サセプタ27の上面27cに、スペーサー35を載置する。このとき、サセプタ27の中心とスペーサー35の中心とが同心軸上に配置されるようにする。次いで、基板31を基板保持用治具37の輪環状部材33上に載置し、この状態で、基板保持用治具37の雄螺子部材39を均熱部材29のフランジ部29bに形成された貫通穴29dに挿通し、ナット41を螺合し、基板31を均熱部材29の凸部29cに当接させ、一体化する。最後に、基板保持用治具37と基板31と均熱部材29の凸部29cとを、均熱部材29のフランジ部29bがスペーサー35に当接するまで、スペーサー35の貫通穴35a及びサセプタ27の貫通穴27aに挿入する。
【0028】
また、基板31への成膜にあたっては、先ず、基板31が収容されたサセプタ部25を反応管19内に設置する。次いで、反応管19内に原料ガスを供給する。すると、基板31は灼熱部材29により加熱されているため、原料ガスが熱分解し、基板31上に結晶が形成され、半導体結晶膜43(図6記載)が成膜される。このとき、サセプタ27も加熱されるので、サセプタ27の下面27bには堆積層45が形成される。
【0029】
次いで、基板31上に所定量の成膜が行われたら、基板31を取り出し、再び成膜前の基板31をサセプタ部25に設置する。そして、上述した操作を繰り返し、多数の基板31に成膜を行う。
【0030】
ところで、基板31に所定量の成膜が行われると基板31のみを交換し、サセプタ27を大気に曝すことなく、次の基板31の成膜を行うので、図6に示すようにサセプタ27の下面27bに形成される堆積層45の膜厚L3が厚くなり、堆積層45の下面45aと、基板31の下面31bに形成される半導体結晶膜43の下面43aとの段差L4も大きくなる。段差L4が大きくなると、基板31の下面側に接触する原料ガスの流れは、基板31の下面31bでの位置により大きく相違するようになる。そのため、基板31に形成される半導体結晶膜43の厚さ分布が不均一になる。
【0031】
そこで、堆積層45の厚さがスペーサー35の厚さになったら、基板31を取り換える際にスペーサー35を撤去し、図7に示すようにスペーサー35がない状態で基板31をサセプタ27の貫通穴27aに挿入する。すると、基板31の下面31bと堆積層45の下面45aとは、同一平面上に位置することになり、段差L4(図6記載)が解消する。そのため、基板31の下面31bでの位置により原料ガスの流れが相違し、半導体結晶膜43の厚さ分布が不均一になるという問題が解決される。
(実施例)
次に、本発明の実施例として、基板31上に半導体結晶膜43をエピタキシャル成長させる場合について説明する。
【0032】
GaAs結晶を成長させる場合には、原料ガスとしてIII族原料のトリメチルガリウム((CH3)3Ga)と、V族原料のアルシン(AsH3)とを用いる。
【0033】
AlGaAs結晶を成長させる場合には、原料ガスとしてIII族原料のトリメチルガリウム((CH3)3Ga)及びトリメチルアルミニウム((CH3)3Al)と、V族原料のアルシン(AsH3)とを用いる。
【0034】
また、n型の化合物半導体結晶を成長させる場合には、シリコン(Si)の原料となるジシラン(Si2H6)をn型ドーパントとして用いる。
【0035】
スペーサー35の厚さは、基板31の面内バラツキが約2%を超えない総膜厚よりも小さい寸法にする。ここでは、0.25mmのものを用いる。このスペーサー35をサセプタ27とフランジ部29bとの間に挟み込ませた状態で、基板31上に成膜を行い、基板31の面内バラツキが約2%を超えない総膜厚に達した時点でスペーサー35を取り外し、基板31の下面31bの位置をサセプタ27に形成された堆積層45の下面45aの位置に近接させる。
【0036】
図8は、従来のサセプタ部3を用いた場合と本発明のサセプタ部25を用いた場合とにおける基板面内の膜厚のバラツキを示している。縦軸は基板31の下面31bでの膜厚のバラツキを示しており、横軸はサセプタ1,27の下面1b,27bに形成される堆積層13,45の厚さを示している。黒丸印は従来のサセプタ部3を用いた場合の試験結果を示しており、黒四角印は本発明のサセプタ部25を用いた場合の試験結果を示している。
【0037】
図から分かるように、従来のサセプタ部3を用いた場合には、堆積層13の厚さが0.3mm程に達したあたりから、基板7に形成される膜厚の基板面内バラツキが急に大きくなり2%を超える。しかしながら、本発明のサセプタ部25を用いた場合には、堆積層45の厚さがスペーサー35の厚さと同じ0.25mm程に達したときにスペーサー35をサセプタ部25から撤去し、基板31の下面31bの位置を堆積層45の下面45aの位置まで下降させているので、堆積層45の厚さが0.45mm程に達するまで、膜厚の基板面内バラツキが2%以内に抑えられている。すなわち、サセプタ27の交換周期が1.5倍程に延びている。
【0038】
以上述べたように本発明の第1実施形態によれば、スペーサー35により基板31の基板厚さ方向の位置が変更される。基板31への成膜処理にあたっては、基板31に成膜を行う毎にサセプタ27に堆積する堆積層45の厚さが厚くなり、基板31の下面31bと堆積層45の下面45aとの段差L4が大きくなり、基板31に接触する原料ガスの流れは、基板31の下面31bでの位置により大きく相違するようになる。そのため、均一な膜厚分布の半導体結晶膜43を基板31に形成するのが困難になる。しかしながら、スペーサー35を取り外すことにより基板31の基板厚さ方向の位置を変更することで段差L4を解消することが可能である。そのため、サセプタ27の交換周期が長くなり、均一な膜厚分布の半導体結晶膜43が形成された基板31を多数作製することができる。また、スペーサー35の取外しは基板31を取り換えるときに同時に手軽に行うことができる。
【0039】
[第2実施形態]
図9は、本発明の半導体気相成長装置の第2実施形態におけるサセプタ部47を示している。なお、この第2実施形態は、サセプタ部47の構造のみ第1実施形態のサセプタ部25と相違するため、サセプタ部47についてのみ説明する。また、第1実施形態と同一構成部材には同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0040】
サセプタ部47は、貫通穴27aが形成されたサセプタ27を有している。また、サセプタ部47は、均熱部材29と、この均熱部材29に連結され基板31を保持する保持部である基板保持用治具49とを有している。この基板保持用治具49は、1箇所に形成された螺子穴51aと2箇所に形成された貫通穴51bとを有する輪環状部材51と、螺子穴51aに螺合される雄螺子部材53と、貫通穴51bに挿通されるガイド棒55と、雄螺子部材53を回転中心軸とするモーター57とを有している。そして、雄螺子部材53、ガイド棒55、及びモーター57により基板31の基板厚さ方向の位置を変更するための調節部が形成されている。また、1つの螺子穴51aと2つの貫通穴51bとは、輪環状部材51の中心軸を中心に120度間隔で3箇所に形成されている。なお、輪環状部材51、雄螺子部材53、及びガイド棒55の材料には、耐熱性のあるセラミックが好ましい。
【0041】
そして、サセプタ部47の組立てにあたっては、先ず、モーター57の回転中心軸である雄螺子部材53を均熱部材29の貫通穴29dに取手部29a側から挿通し、輪環状部材51の螺子穴51aに螺合する。次いで、基板31を基板保持用治具49の輪環状部材51上に載置する。
【0042】
次いで、ガイド棒55を均熱部材29の貫通穴29dに取手部29a側から挿通し、さらに輪環状部材51の螺子穴51bに挿通する。最後に、基板保持用治具49と基板31と均熱部材29の凸部29cとを、均熱部材29のフランジ部29bがサセプタ27の上面27cに当接するまで、サセプタ27の貫通穴27aに挿入する。
【0043】
また、基板31の基板厚さ方向位置の変更にあたっては、モーター57に直流電流を流し雄螺子部材53を回転させ、輪環状部材51をその軸方向に移動させる。このとき、ガイド棒55はガイドの役割を果たす。
【0044】
この第2実施形態でも第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0045】
さらに、この第2実施形態では、モーター57により連続的に基板31の基板厚さ方向の位置を変更することができるので、半導体結晶膜43の成長に合わせて基板31の基板厚さ方向の位置を変更すれば、常時、基板31に形成される半導体結晶膜43の下面43aとサセプタ27に形成される堆積層45の下面45aとの段差を解消することができる。そのため、サセプタ27の交換を行わなくても、第1実施形態よりも均一な膜厚分布の半導体結晶膜43が形成された基板31を多数作製することができる。
【0046】
[第3実施形態]
図10は、本発明の半導体気相成長装置の第3実施形態におけるサセプタ部59を示している。なお、この第3実施形態は、サセプタ部59の構造のみ第1実施形態のサセプタ部25と相違するため、サセプタ部59についてのみ説明する。また、第1実施形態と同一構成部材には同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0047】
サセプタ部59は、貫通穴60aが形成されたサセプタ60を有している。このサセプタ60には、貫通穴60aの中心軸を中心に90度間隔で凹部であるスリット60dが形成されている。また、均熱部材61のフランジ部61bには、フランジ部61bの中心軸を中心に90度間隔で4箇所に突起部61eが形成されている。
【0048】
そして、サセプタ部59の組立てにあたっては、先ず、基板31を基板保持用治具37の輪環状部材33上に載置し、この状態で、基板保持用治具37の雄螺子部材39を均熱部材61のフランジ部61bに形成された貫通穴61dに挿通し、ナット41に螺合し、基板31を均熱部材61の凸部61cと当接させ、一体化する。最後に、基板保持用治具37と基板31と均熱部材61の凸部61cとを、取手部61aを把持しながら、均熱部材61の突起部61eがサセプタ60の上面60cに当接するまで貫通穴60aに挿入する。
【0049】
また、サセプタ60の下面60bに突起部61eの高さ分の成膜が行われたら、取手部61aを把持しながら均熱部材61を回転させ、突起部61eをサセプタ60のスリット60dに嵌合させる。すると、均熱部材61は、フランジ部61bがサセプタ60の上面60cと当接するまで下降し、基板31の下面31bとサセプタ60の下面60bに形成された堆積層45の下面45aとは同一平面上に位置するようになる。
【0050】
この第3実施形態でも第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0051】
さらに、この第3実施形態では、均熱部材61のフランジ部61bに突起部61eを形成し、サセプタ60のスリット60dに突起部61eを嵌合させ、均熱部材61の基板31の基板厚さ方向位置を変更できるようにしたので、第1実施形態のようにスペーサー35を必要とせず、部品点数の低減を図ることができる。
【0052】
なお、上述した第3実施形態では、均熱部材61のフランジ部61bに凸部61cを形成し、サセプタ60にスリット60dを形成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、フランジ部61bにその周方向に沿って複数の円柱突起を設け、サセプタ60にこの円柱突起と係合する嵌合穴を設けるようにしても良い。或いは、サセプタ60の上面60cにその周方向に沿って複数の円柱突起を設け、フランジ部61bにこの円柱突起と係合する嵌合穴を設けるようにしても良い。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、サセプタに対する基板の基板厚さ方向の位置を変更できるようにしたので、サセプタの交換周期が長くなり、均一な膜厚分布の半導体結晶膜が形成された基板を多数作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体気相成長装置の第1実施形態を示す説明図である。
【図2】図1のサセプタ部の上面側を示す説明図である。
【図3】図1のサセプタ部の下面側を示す説明図である。
【図4】図2のB−B線に沿う断面図である。
【図5】図1のサセプタ部を斜視的に示す分解図である。
【図6】図4のサセプタに堆積層が形成された状態を示す説明図である。
【図7】図4のスペーサーを取り外した状態を示す説明図である。
【図8】従来のサセプタ部を用いた場合と本発明のサセプタ部を用いた場合とにおける基板面内の膜厚のバラツキを示す説明図である。
【図9】本発明の半導体気相成長装置の第2実施形態におけるサセプタ部を示す説明図である。
【図10】本発明の半導体気相成長装置の第3実施形態におけるサセプタ部を示す説明図である。
【図11】従来のサセプタ部の上面側を示す説明図である。
【図12】従来のサセプタ部の下面側を示す説明図である。
【図13】図11のA−A線に沿う断面図である。
【図14】図13のサセプタに堆積層が形成された状態を示す説明図である。
【符号の説明】
15 半導体気相成長装置
17 反応炉
27,60 サセプタ
27a,60a 貫通穴
29,61 均熱部材
31 基板
35 スペーサー
37,49 基板保持用治具
43 半導体結晶膜
60d スリット
61e 突起部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応炉内に少なくとも2種類以上の原料ガスを供給して半導体結晶膜を基板上に形成する半導体気相成長装置において、
前記基板を挿通可能な貫通穴が形成されたサセプタと、
前記基板を保持する保持部と、
前記基板の前記基板厚さ方向の位置を変更するための調整部材と、
が設けられることを特徴とする半導体気相成長装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体気相成長装置において、
前記基板を加熱するための均熱部材が設けられ、
前記調整部材を前記均熱部材と前記基板との間隙に挟み込むことを特徴とする半導体気相成長装置。
【請求項3】
反応炉内に少なくとも2種類以上の原料ガスを供給して半導体結晶膜を基板上に形成する半導体気相成長装置において、
前記基板を挿通可能な貫通穴が形成されたサセプタと、
前記基板を保持する保持部と、
を有し、
前記保持部には、前記基板の前記基板厚さ方向の位置を変更するための調節部が設けられることを特徴とする半導体気相成長装置。
【請求項4】
反応炉内に少なくとも2種類以上の原料ガスを供給して半導体結晶膜を基板上に形成する半導体気相成長装置において、
前記基板を挿通可能な貫通穴が形成されたサセプタと、
前記基板を保持する保持部と、
前記基板を加熱するための均熱部材と、
が設けられ、
前記サセプタには凹部又は凸部が形成され、
前記均熱部材には前記サセプタの前記凹部又は凸部と係合する凸部又は凹部が形成され、
前記サセプタの前記凹部又は凸部と前記均熱部材の前記凸部又は凹部とを係合させることで、前記均熱部材の前記サセプタ厚さ方向の位置を変更することを特徴とする半導体気相成長装置。
【請求項1】
反応炉内に少なくとも2種類以上の原料ガスを供給して半導体結晶膜を基板上に形成する半導体気相成長装置において、
前記基板を挿通可能な貫通穴が形成されたサセプタと、
前記基板を保持する保持部と、
前記基板の前記基板厚さ方向の位置を変更するための調整部材と、
が設けられることを特徴とする半導体気相成長装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体気相成長装置において、
前記基板を加熱するための均熱部材が設けられ、
前記調整部材を前記均熱部材と前記基板との間隙に挟み込むことを特徴とする半導体気相成長装置。
【請求項3】
反応炉内に少なくとも2種類以上の原料ガスを供給して半導体結晶膜を基板上に形成する半導体気相成長装置において、
前記基板を挿通可能な貫通穴が形成されたサセプタと、
前記基板を保持する保持部と、
を有し、
前記保持部には、前記基板の前記基板厚さ方向の位置を変更するための調節部が設けられることを特徴とする半導体気相成長装置。
【請求項4】
反応炉内に少なくとも2種類以上の原料ガスを供給して半導体結晶膜を基板上に形成する半導体気相成長装置において、
前記基板を挿通可能な貫通穴が形成されたサセプタと、
前記基板を保持する保持部と、
前記基板を加熱するための均熱部材と、
が設けられ、
前記サセプタには凹部又は凸部が形成され、
前記均熱部材には前記サセプタの前記凹部又は凸部と係合する凸部又は凹部が形成され、
前記サセプタの前記凹部又は凸部と前記均熱部材の前記凸部又は凹部とを係合させることで、前記均熱部材の前記サセプタ厚さ方向の位置を変更することを特徴とする半導体気相成長装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2004−273515(P2004−273515A)
【公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−58331(P2003−58331)
【出願日】平成15年3月5日(2003.3.5)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年3月5日(2003.3.5)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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