説明

半導体産業用水素化物ガスの精製

水素化物ガスを精製する方法で、少なくとも1種類のランタニド金属またはランタニド金属酸化物を有する材料を使用する。この方法は、汚染物質を100ppb未満に、より好ましくは10ppb未満に、より好ましくは1ppb未満に低減する。この材料は、遷移金属および遷移金属酸化物、希土類元素および他の金属酸化物も含むことができる。本発明は、本発明の方法で使用するための材料も含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
水素化物ガス、特にアンモニアは、半導体および発光ダイオード(LED)の製造を含めて多くの方法で使用されている。またアルシン(AsH)、ホスフィン(PH)などその他の水素化物ガスも、高速データ伝送設備、携帯電話、テレビ電話、商業衛星などに使用されるヒ化ガリウム(GaAs)、リン化ガリウム(GaP)などの半導体薄膜の製造に使用されている。半導体の製造に使用される水素化物ガスには、さらにジボラン(B)、ジシラン(Si)、ゲルマン(GeH)およびシラン(SiH)が含まれる。本発明のために、水素(H)もまた水素化物ガスと見なされる。
【0002】
集積回路半導体技術の進展において、アルミニウム相互接続に代わって銅相互接続を有する半導体が開発された。銅の方がアルミニウムよりも抵抗が小さく、銅相互接続の方がマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、およびランダムアクセスメモリにおいて高性能となるので有利である。
【0003】
しかしながら、銅は時間の経過とともに移動する傾向があるので、半導体中に銅の移動を防止するバリア層を構築する必要がある。このようなバリア層は、通常窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)、窒化シリコン(Si)などの窒化物でできている。この層は、一般的にアンモニア(NH)ガスおよび/またはシランガスなどの水素化物ガスからの堆積によって形成される。
【0004】
さらに、アンモニアは、一部の薄膜利用におけるフィルム開発用の窒素供給源として広く使用されている。アンモニアは、化学気相成長(CDV)法における低温での薄膜成長を可能にする。シランおよびゲルマンは、SiGeフィルムおよび高速集積回路に使用されている。
【0005】
加えて、高性能発光ダイオード(LED)を開発する最近の研究がある。これは、有機金属気相成長法(MOCVD)によって作成される。トリアルキルガリウムが、アンモニアおよび水素の混合気体と反応して、窒化ガリウムとして堆積する。
【0006】
また窒化ガリウムは、「青色レーザ」、すなわち青色光を発するレーザ用にも検討されている。青色レーザ光は、赤色レーザ光を用いた現在のコンパクトディスクよりも大きな情報密度を有するコンパクトディスクを形成できるものと予測される。このような青色レーザ用の窒化ガリウムは、上記の高性能LEDに関して記述したのと同じ種類のアンモニア/水素ガス雰囲気から製造される。
【0007】
LED、青色レーザ、および集積回路は、全て電子受容性p型ドーパントを用いて製造される。これらの製品は、電子供給性n型材料の存在に対して極度に敏感であり、非常に低濃度のこのようなn型材料でも、十分にp型ドーパントを失活させ、集積回路、LED、および青色レーザの性能および動作性を損ねるかまたは壊滅させてしまう。酸素は特に有効なn型材料であり、酸素分子の存在は、半導体材料における所望のバンドギャップ特性に有害である。極めて低濃度(<10ppb)の酸素であっても、製造後の製品を廃棄しなければならないような、性能あるいは動作性の著しい低下を十分生じさせる。LED製造における酸素の存在は、ホトルミネセンス強度を減少させる結果をもたらす。
【0008】
水蒸気および炭酸ガスは、水素化物ガスにおけるその他の2つの有害な汚染物質であり、これらは水素化物ガス雰囲気からの金属あるいは金属化合物の活性層の堆積によって形成される製品を劣化させる。水は、ガス中に最も一般的に存在し、なおかつガスから除去するのが最も困難な不純物の1つである。水は、ほとんど全ての周辺環境に広く存在する。公称「乾燥状態」と呼ばれる系でも、通常はかなりの量の水を含んでおり、大部分の乾燥プロセスは、ガス中の水分含有量を未だ100万分の1(ppm)の範囲である「最少量」までに減少させることしかできない。しかしながら、ppm範囲の水分含有量は、多くの目的に関して問題なく許容できるものであるから、かかる「ppm乾燥プロセス」を取り扱った多くの特許や論文がある。
【0009】
しかしながら、前記のLED、青色レーザ、および集積回路製品の製造では、ppm範囲の析出ガス水分含有量は、極めて「湿った」状態である。水が、窒化ガリウムフィルム中のドーパント汚染物質として含まれている場合、ガス中の不純物はホトルミネセンス強度の損失をもたらす。満足できる製品を形成するためには、析出ガス中の水分含有量を十億分の1(ppb)の範囲、通常は約100ppb未満にまで減少させなければならない。Whitlock他、「High Purity Gases」、Ruthven編、ENCYCLOPEDIA OF SEPARATION TECHNOLOGY、vol.1、pp.987〜1000(1997)を参照されたい。
【0010】
水素化物ガスから酸素、二酸化炭素、水などの汚染物質を除去するために、還元状態のニッケルや銅の触媒などの材料を使用する試みは成功してこなかった。短時間であれば、10ppbのレベルまでの汚染物質の除去が達成されるが、水素化物ガス、特にアンモニアの反応効果によって、これらの材料は金属複合物を伴うガス流を非常に急速に劣化させ汚染するようになる。これらの材料によって前から存在していた不純物は減少するかもしれないが、新たな不純物が製造プロセスに導入されることは許容されない。
【0011】
幾つかの従来技術プロセスで、アンモニア流から「ゲッター」として働く金属または金属複合物によって酸素が除去されると記載されている。しかしながら、これらはガス流を十分に除染するのには比較的効果が無い。さらにゲッターは通常、除染プロセスにおいて中心的役割を担うことのないシリカやゼオライトなどの基材上に堆積されるが、これらの基材自体が水素化物ガスによって劣化される可能性がある。たとえば、米国特許第5,496,778号(Hoffman他)、第5,716,588号(Vergani他)、および第4,976,944号(Pacaud他)、PCT公報第WO97/06104(SAES Getters S.p.A.)、および欧州特許EP0784595B1(SAES Getters S.p.A.)を参照されたい。
【0012】
Alvarez(米国特許第6,241,955号)は、水素化物ガスの低アルキル類似体を含めて、水素化物ガスからの酸素、二酸化炭素、および水蒸気を含む幾つかの汚染物質を除去するために、大きな表面積(>100m/g、好ましくは200〜800m/g)の還元金属酸化物の混合組成物を使用することを教示している。この金属酸化物は、マグネシウムまたはモリブデンの酸化物であることが好ましく、場合によっては鉄酸化物と混合することもできる。このような材料は長期の使用で安定であることが判明しているが、水除去効率と水および酸素容量に限界があり、モレキュラーシーブなどの乾燥剤をこれら材料に追加してやる必要があることが判明している(たとえばVergani、米国特許第5,716,588号参照)。
【0013】
水素化物ガス中の汚染物質濃度を除去によって100ppb以下までに低下させる問題は、高純度のLED、青色レーザ、半導体などの製造分野において依然として深刻な問題である。使用されている汚染除去プロセスは、除染材料の有効寿命が極めて短いことおよび度々交換する必要があることから高価である。さらに、反応性水素化物ガスの存在下、除染材料の正確な劣化速度を決定することが難しいので、このような除染材料の使用者は、最短の予想有効寿命よりも短い間隔で材料の廃棄および交換を計画しなければならない。そうしなければ、除染ユニットの能力不足によって汚染した製品を生ずる危険が生じる。したがって、現在のシステムは、除染ユニットの大部分ではないにしても多くを、ある程度有効寿命を残したまま廃棄する必要があり、それ故システム運転の費用がさらに増加する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、汚染物質除去容量が、従来技術より劇的な増加を示す物質の組成およびガス精製の方法を提供する。さらに本発明は、単位表面積当たりの汚染物質除去容量の点で、従来技術の材料および方法に勝るより明確な利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は、水素化物ガス流から汚染物質を除去する方法を含む。この方法は、水素化物ガスを、好ましくは材料の表面積が約100m/g未満である、ある量のランタニド金属酸化物を含む材料と、ガス流の汚染レベルを約100ppb以内に減少させるのに十分な時間接触させるものである。さらに、この材料は一般的に安定で、十分な量の材料を用いた典型的な運転条件の下、少なくとも6ヶ月間所望の汚染レベルが維持されることで証明されるように、水素化物ガスの存在によって実質上影響を受けない。
【0016】
本発明の方法は、幾つかのランタニド金属のいずれかを、場合によっては希土類金属酸化物および遷移金属酸化物を含む低陽電性の金属酸化物と併せて使用することを含む。これらの金属は、金属全体で比較すれば極めて陽電性が高いが、ランタニド系元素に比較すると陽電性が低い。
【0017】
本発明は、また精製用組成物を提供する。この精製用組成物は、一般的に本発明の方法に使用するためのものである。この組成物は、ランタニド金属酸化物を、場合によっては、構造および好ましくは汚染物質除去容量をもたらす他の高い陽電性の金属または金属酸化物と併せて含む精製用材料である。金属および金属酸化物は、部分的にあるいは完全に還元状態であってよい。この金属および金属酸化物は、組成が変化しないよう、酸化物部分が構造的に十分安定な混合酸化状態で存在することが好ましい。本発明で使用される追加の金属および金属酸化物は、アルカリ土類および希土類の金属、他のランタニド金属、および/または遷移金属を含むことができる。本発明の組成物は、十分な量の材料を用いた典型的な使用方法の下で、媒体を再生しなければならなくなるまでに、少なくとも約6カ月の有効寿命を有していることで証明されるように、水素化物ガスの存在によって実質上影響を受けない。
【0018】
本発明は、ランタニド金属酸化物が、極めて効率の良いガス精製用基材であるという発見に基づいている。さらに、ランタニド金属酸化物が、一般的には100m/g未満というその比較的低い表面積にもかかわらず、効率的に汚染物質を除去できることが発見された。これは、精製用基材が一般的に大きな表面積の材料で、ガスの精製が主に基材の表面で行われることを考えれば驚くべきことである。ランタニドの独特な性質が、基材内の格子内部における酸素の高い移動性を提供し、これが酸素容量の増加をもたらす。ランタニドの高い配位数が、同程度のさらには実質上大きな表面積さえ有する他の基材と比較して、高い水分容量を表面上にもたらす。
【0019】
また本発明は、ある精製条件の下、鉄(Fe)を含む精製用基材が、一酸化炭素(CO)を放出し、その結果、精製プロセス中にガスに汚染物質を追加するという発見にも関係している(実施例2参照)。本発明の精製用基材は、通常鉄を含まないので、精製中このガス汚染源はなくなっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、水素化物ガス流を、好ましくは約100m/g未満の比較的低い表面積を有し、少なくとも1つのランタニド族金属酸化物を含む精製用基材へ、汚染物質を100ppb未満、好ましくは10ppb未満、より好ましくは1ppb未満、さらに好ましくは0.1ppb未満に低減させるのに十分な時間暴露することを含む、水素化物ガスの精製方法である。この方法によって除去される汚染物質には、水(HO)、二酸化炭素(CO)、酸素(O)、非メタン炭化水素、水素化ガス酸化生成物(たとえば、シランと水との反応によって生じるシロキサン)、水素化物ガスの二次汚染物質(たとえば、シラン中のppm程度のホスフィン)、および硫黄(たとえばSO、ただし、xは1〜3)または窒素(たとえばNO、ただしxは1〜3)含有化合物が含まれる。この方法によって除去される汚染物質には、さらに金属含有化合物および揮発性金属化合物、特に堆積やエッチングなどの半導体プロセスにおいて極めて重要な不純物である遷移金属ハロゲン化物が含まれる。揮発性金属化合物汚染物質には、たとえば、TiCl、AlCl、およびCrFがある。したがって、本発明の一実施形態において、金属不純物は水素化物ガス流から10ppb未満、好ましくは1ppb未満、より好ましくは0.1ppb未満に除去される。
【0021】
従来技術において培われてきた見識は、ガスの精製は主に基材の表面で行われるので、基材の表面積を大きくすることによって大きな表面積の材料からなる精製用基材を改善できるというものである。たとえば、半導体産業では汚染物質をより一層低いレベルに除去すること、それもより低コストで達成することが要求されている。材料のコストは、一般的に表面積が大きくなると高くなるので、比較的小さな表面積で効率よく除染する、新規でより効率的な精製組成物が必要とされる。本発明は、その表面積特性とランタニドを含むその組成の両方において、独自の精製用基材を提供する。
【0022】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明の組成物は、約3〜20%のランタニド酸化物、好ましくは酸化ランタンを含む。好ましくは、この組成物は、銅、鉄およびニッケルの少なくとも1つ、特に鉄を基本的に含んでいない。この材料は、マンガン酸化物、たとえば約75〜90%の二酸化マンガン、場合によっては遷移金属または遷移金属酸化物を含むことができ、残りは二酸化シリコン、酸化アルミニウムおよび/または酸化カリウムなどの充填材である。好ましくは、この組成物は、約8%の酸化ランタン、約88%の二酸化マンガン、および約4%の二酸化シリコン、酸化アルミニウムおよび/または酸化カリウムなどの充填材を含む。精製用基材中の材料の酸化状態は、基材の活性化および基材が有効寿命のどの時点にあるかによって変わる。
【0023】
ランタニド族元素は、周期律表中で独特の金属系列を構成する。この金属はサイズ、価電子軌道、求電子性、磁気的および電子的性質に関して独特である。ランタニドの4f価電子軌道は、半径方向の伸長が限定されている。その結果、軌道要因は、原子価軌道が比較的大きな半径方向の伸長を有している遷移金属におけるのと同じ程度にしか化学的性質に影響を及ぼさない。このことは、潜在的反応物質が、さまざまな向きでランタニド金属の中心に接近でき、反応経路は軌道に関して禁止されないことを意味する。さらに、ランタニドは全くの陽電性であり、酸素含有分子に対して高い親和力がある。ランタニド系金属は、ポーリングスケールで1.10〜1.25の電気陰性度を示す。
【0024】
ランタニド系元素を含有する材料が混合酸化状態を維持できることはよく知られている。しかしながら、酸化状態を予測する能力は限られている。これは、ランタニドの金属状態がその熱力学的不安定性のため、極端な状況(たとえば、高温で生成して不活性条件の下で貯蔵する)を除けば、基本的に知られていないためである。たとえば、Laに対するLa(III)の還元電位は2.37である。したがってランタニド族金属は酸素に対して極めて反応性があり、空気に触れると急速に酸化する。
【0025】
酸素貯蔵能力という用語は、酸化ランタンもしくは酸化セリウムおよび類似の材料(ランタニド酸化物)の、材料内で酸素原子を容易に受容し供与できる独特の能力であると定義される。この能力は、材料のいたるところで酸素の占有および空位を、触媒的に活性な部位(たとえそこが非ランタニド元素で占有されている場合であっても)も含めて、容易に再分布できるという結果をもたらす。このような流動性の格子は、広範囲なランタニド酸化物対金属/金属酸化物比において可能である。この酸素貯蔵能力の機序についてはなお調査中であるが、ランタニド元素の高い陽電性的性質とイオンの結合特性がある役割を担っているものと考えられる。基材内の酸素の高い流動性によって、小さな表面積の材料でも精製に成功裏に使用することができるのである。
【0026】
ランタニド金属は、通常6〜12の範囲の高い配位数を有している。これは、通常4〜6の範囲である遷移金属の配位数よりもかなり高い。したがって、ランタニド金属は高い潜在的結合能力を有している。ランタニド金属は、酸素含有化合物(水、CO、O)などの一般的なガス汚染物質、ならびに非メタン炭化水素、シロキサン、非アンモニア水素化物ガス、水素化物ガス酸化生成物、2次水素化物ガス汚染物質、揮発性金属化合物、含硫黄化合物および含窒素化合物を含めて、極度に陰性の元素または分極化合物を含む化合物と優先的に結合する。配位数が高いと、基材表面の単位面積当たりに実質上より多くの結合部位が提供されて、基材の活性表面が効果的に増加する。
【0027】
本発明の組成は、少なくとも1つのランタニド族金属酸化物、好ましくは1つまたは複数のランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、およびイッテルビウム(Yb)を、より好ましくはLa、CeおよびSmを、さらに好ましくは、主としてLaの形状であるが、一般的に混合酸化状態のLaを含む。ランタニド族の元素は、一般的に複数の酸化状態で存在し、混合酸化状態(たとえば、LaIIおよびLaIII、CeIVおよびCeIII、SmIIIおよびSmII、そしてYbIIIおよびYbII)が一般的であるが、理論的にはさらに還元された状態で存在することも可能である。本発明の性質および材料のいずれにおいても、金属酸化物が単一の別個の酸化状態で存在する可能性は低い。たとえば、Ceは、約3.3〜3.8の有効酸化状態を有していると考えられる。
【0028】
ランタニド金属および金属酸化物は、場合によっては1種あるいは複数の希土類金属、好ましくはスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)またはルテニウム(Lu)で補足してもよい。
【0029】
好ましい一実施形態において、本発明の組成物は、さらに1つまたは複数の、ランタニド金属よりは陽電性でないが、高陽電性の金属(たとえば、遷移金属)を含む。これら高い陽電性金属は、金属状態または混合酸化状態でなければならず、少なくとも金属の一部が金属状態である。このような金属には、これだけには限らないが、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、レニウム(Re)、プラチナ(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、バナジウム(V)、チタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)およびコバルト(Co)が含まれ、Mn、Cr、Mo、V、TiおよびZrが好ましい。
【0030】
ランタニド金属酸化物が、酸素含有汚染物質、とりわけ水を、水素化物ガス流から除去するのに特に効率的であることが発見された。本発明の組成物の汚染物質を除去する容量は、実施例において従来技術の化合物と比較されており、従来教示されている容量(たとえば、米国特許第6,241,955号で教示されている容量)より優れていることが証明されている。大きな表面積が望ましいとする従来技術の教示を考慮し、ここに開示されている材料の小さな表面積を考えると、これは正に驚くべきことである。
【0031】
典型的な本発明の精製方法は、一般的にUHP級(純度99.999%)の水素化物ガスを、最終用途において要求されるレベル、好ましくは全汚染物質が100ppb未満、より好ましくは10ppb未満、最も好ましくは1ppb未満になるのに十分な時間、本発明の組成物と接触させることを含む。精製に関する正確なパラメータは、当分野の技術者によく知られている、ソースガスの純度、必要な生産レベル、最終用途および使用した精製用材料を含む幾つかの要素に依存するが、これだけには限定されない。例示的な精製条件を以下の実施例に記載する。除去される汚染物質としては、HO、O、CO、非メタン炭化水素、水素化物ガス酸化生成物、揮発性金属化合物、および2次水素化物ガス汚染物質が含まれ、精製用材料はHOおよびOの除去において最も効率的である。
【0032】
本発明の材料は、好ましくは100m/g未満の表面積を有しているが、これより大きな表面積も許容される。この材料の表面積には、内部表面積および外部表面積の両方を考慮しなければならない。表面積は、産業標準、一般的にはBETモデルを使用して決定される。表面積は、75m/g、50m/g、さらには20m/gまでも低くてよい。所望の表面積、特に約50m/g以上の表面積を得るためには、ランタニド金属または金属酸化物材料を担体材料上に担持させることが必要であり得る。担体材料も、水素化物精製に寄与することがある。適切な担体材料は、本発明において精製される水素化物ガスの存在下、腐食または破壊を受けない材料である。また適切な担体材料は、還元雰囲気中で安定であり、400℃までの加熱など、材料のコンディショニングに必要となるかもしれない条件の下で安定である。また好ましくは、材料は再生に必要とされる条件の下で安定である。
【0033】
好ましい一実施形態において、ランタニドは、これだけには限らないが、ゾルゲル合成、共沈殿、含浸、および燃焼合成を含む方法によって高い陽電性金属と密接に混合される。このような方法は、当分野の技術者には良く知られている。
【0034】
本発明の組成物は、少なくとも1つの金属(M)酸化物、MO、好ましくは遷移金属酸化物、および少なくとも1つのランタニド金属(M’)酸化物、M’Oの混合物である。本発明の組成物は、含浸、共沈殿、あるいは当分野の技術者に知られている他の方法によって形成することができる。この混合物は、Hまたは他の還元ガス(たとえば、CO、メタン)の存在下、熱で活性化され、Oを、場合によっては水の形で放出して還元される。反応は次式によって表すことができる。
【0035】

MO+M’O――→MOx−n+M’Oy−m+(n+m)H

式中、0≦x−n≦1および0≦m≦1である。一般的に、MがMo、Mn、Fe、またはReの場合、x−n=1である。他の遷移金属を用いた場合は、一般的にx−n=0である。本発明に有用な組成物の例には、CeとSmの混合物、CeとZrの混合物、ならびにLiとLaの混合物が含まれる。ランタニドと遷移金属を組み合わせると、高い酸素容量を有する不規則格子となるため、これによって材料の全体にわたる酸素の占有および空位の容易な再分布が可能になる。
【0036】
本発明の材料は、これだけには限定されないが、キャニスターおよび単一もしくは複数ベッドの装置を含む幾つかの精製装置のいずれかで使用することができる。好ましい一実施形態では、精製装置が複数のベッドを有しており、1つのベッドを再生している間に、別のベッドでガスを精製することができる。精製は、吸着材料を、所望のレベルまで除染させるのに十分な時間、水素化物ガス流と接触させることを含む。時間、圧力、流量、温度など、除染に関する検討事項は、当分野の技術者によって容易に決定される。
【0037】
精製用材料の再生は、還元剤(たとえばH)の存在下、高熱(約700℃)または低温(約400℃)で実施できる。好ましい一実施形態では、ベッドの再生に必要な超純粋水素は、精製した水素化物ガスの一部を取り出し、これを分解して水素を放出させて得ることができる(たとえば、米国特許第6,524,544号参照)。これにより、系が閉鎖された状態に保たれ、再生に使用するガスの高品質が保証される。
【0038】
本発明の精製用材料は、水素化物ガスの存在によって実質上影響を受けない。実質上影響を受けないとは、水素化物ガスから汚染物質を除去する過程で、材料が水素化物ガスに暴露されることによって、水素化物ガス流からの汚染物質除去について材料の所期の機能の発揮が妨げられるほどには材料が物理的に損傷しないことであると定義される。材料の所期の機能とは、材料の再生が必要となるまで短くても6ヶ月間汚染物質を水素化物ガスから所望のレベルまで除去する機能である。一般的に、25℃および15psigで、材料1リットル当たり少なくとも約4リットルの酸素を除去する酸素容量をもつ材料は、短くても約6ヶ月間汚染物質を除去することができる。またこのような材料は、一般的に25℃および15psigで、材料1リットル当たり少なくとも4リットルの水蒸気容量を有する。さらに、本発明の材料は、ガス流中の腐食および破損に耐える十分な構造的完全性を有する。
【0039】
本明細書に記載する全ての参考文献は、その全文が参照により本明細書に組み込まれる。全ての百分率は、特別の定めがない限り重量によるものである。
【実施例1】
【0040】
精製用基材CおよびDを含むランタニドの分析
目的
以下の試験の目的は、材料CおよびDの性能を、それぞれの水分、酸素、および一酸化炭素に関する汚染物質除去容量を測定することによって評価することであった。媒体の組成を表1にリストする。高温における一酸化炭素の放出についても両方の媒体について測定した。2つの材料に関する試験結果を比較した。
【0041】
【表1】

【0042】
実験方法
3本のAeronex 70K精製装置用キャニスターからなる第1のグループに媒体Cを充填し、3本の70Kキャニスターからなる第2のグループに媒体Dを充填した。流速1slmの95%Ar/5%Hでパージしながら、媒体を375℃で40時間活性化した。
【0043】
酸素容量
70K−C媒体精製装置の1つと70K−D媒体精製装置の1つとを並べて試験した。酸素容量試験パラメータとしては、対象酸素濃度6.5ppm、試験ガス圧力30psig、および各試験用精製装置の通過ガス流速:3slmなどがあった。試験期間を通じて、全ての平日に、破過(breakthrough)についてそれぞれの精製装置をチェックした。試験用精製装置の流出液中の酸素濃度を、LDLが酸素0.2ppbであるDelta F Nanotrace酸素分析計によって測定した。酸素破過レベルは、100ppb以上まで測定した。
【0044】
水分容量
70K−C媒体精製装置の1つと、70K−D媒体精製装置の1つとを並べて試験した。水分容量試験パラメータには、対象水分濃度:9.0ppm、試験ガス圧力:30psig、および各試験用精製装置通過ガス流速:1.5slmを含んでいた。試験期間を通して、全ての平日に、破過についてそれぞれの精製装置をチェックした。試験用精製装置の流出液中の水分濃度を、水分1ppbのLDLを有するMeeco Tracer水分分析計によって測定した。水分破過レベルは、100ppb以上について測定した。
【0045】
一酸化炭素の放出および容量
MethanizerおよびFIDを備えたHewlett−Packard GCを、ppbレベルの一酸化炭素を測定するために較正した。窒素中に351ppmのCOを含むシリンダーを使用する標準の付加方法を使用した。各試験用精製装置は、室温、200℃、375℃、および500℃でCO放出をチェックした。試験用精製装置を加熱するために、加熱マントルおよびTemp−O−Trol(IR)温度制御装置を使用した。最初の放出試験に続いて、各精製装置を500℃で一夜真空にし、媒体から吸着したCOを取り除いた。真空処理後、各精製装置を室温、200℃、375℃、および500℃で再度CO放出に関して試験した。放出試験の流速は、ガス圧45psigで、窒素3slmであった。CO放出試験の後に一酸化炭素容量試験を実施した。CO容量試験パラメータとしては、45psigにおける窒素流速:3slm、および対象CO濃度:800ppbがあった。
【0046】
結果/考察
表2は、1ppb破過点に対するO、HO、およびCO容量試験の結果を示す。データは、媒体1リットル当たりの汚染物質のリットル(L/L)単位で示されている。
【0047】
【表2】

【0048】
酸素容量は媒体Cの方が幾分高かったが、水分容量は媒体Dの方が高かった。
【0049】
酸素容量
材料CおよびDに関する酸素破過曲線を図1に示す。
【0050】
水分容量
水分破過曲線を図2に示す。
【0051】
一酸化炭素の放出および容量
10ppbCOまでの一酸化炭素較正曲線を図3に示す。
【0052】
2ppbCOの検出下限限界値(LDL)は、較正データに基づいて決定した。0ppbおよび1ppbのGC試験は、同じ結果を生じた。ピーク面積の明確な増加が記録されたのは、2ppbのCOをGCに注入してからであった。
【0053】
図4のCO破過曲線から分かるように、どちらの材料も低ppbレベルのCO容量は無かった。
【0054】
CO放出実験の要約を表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
一酸化炭素は、精製装置本体を加熱するまで検出されなかった。その例外は、真空処理試験後の媒体Cであった。これは、バックグラウンドのCOレベルが高かったかまたはその日に計器がより敏感に反応した可能性がある。真空処理によって、材料Dから吸着されたCOが取り除かれたと思われた。媒体Dについて真空処理が行われた後は、500℃でもCOは検出されなかった。上記の試験の全てにおいて、試験用精製装置が200℃以上に加熱されたとき、メタンピークが現れた。二酸化炭素もまた高温で放出された。
【0057】
結論
媒体Cは、媒体Dより若干高い酸素容量を有していたが、媒体Dは媒体Cより大きな水分容量を有していた。どちらの材料も、顕著な一酸化炭素除去容量は有していなかったが、500℃真空処理後にCOを完全に脱着できたのは媒体Dであった。媒体Cは、真空処理後もなお幾らかのCOを含んでいた。この実験に基づけば、総体的に媒体Dが媒体Cより性能的に優れていた。
【実施例2】
【0058】
水素化物ガス精製装置からの一酸化炭素の放出
目的
以下の試験の目的は、Alvarez氏の米国特許第6,241,955号で教示されたような現在の水素化物ガス精製装置技術(媒体A)と、本発明の新規水素化物ガス精製装置材料(媒体E)の性能を、室温および高温における一酸化炭素放出に関して比較するものであった。また各媒体の一酸化炭素容量も測定した。
【0059】
実験方法
第1のAeronex 70K精製装置に媒体Aを充填し、第2のAeronex 70K精製装置に媒体Eを充填した。媒体の組成を表1に示す。
【0060】
精製装置を、流速1slmの95%Ar/5%Hでパージしながら、媒体を375℃で40時間活性化した。MethanizerおよびFIDを備えたHewlett−packard GCを、ppbレベルの一酸化炭素を測定するために較正した。窒素中に351ppmのCOを有するシリンダーを使用する標準の付加方法を使用した。各試験用精製装置は、CO放出を、室温、200℃、375℃、および500℃でチェックした。試験用精製装置を加熱するために、加熱マントルおよびTemp−O−Trol(IR)温度制御装置を使用した。精製装置がいずれかの温度でCOを放出した場合は、精製装置を500℃で一夜真空にして、媒体から吸着したCOを取り除いた。真空処理後、精製装置を室温、200℃、375℃、および500℃において再度CO放出試験を実施した。放出試験の流速は、ガス圧45psigで、窒素3slmであった。
【0061】
一酸化炭素容量試験は、CO放出試験の後に実施した。媒体Aに関するCO容量試験パラメータには、45psigにおける窒素流速3slm、および対象CO濃度800ppbがあった。媒体Eに関するCO容量試験パラメータには、45psigにおける窒素流速3slm、および対象CO濃度10ppbがあった。
【0062】
結果/考察
10ppbCOに対する一酸化炭素炭素較正曲線を図3に示す。2ppbCOの検出下限限界値(LDL)は、較正データに基づき決定した。0ppbおよび1ppbのGC試験は、同じ結果を生じた。ピーク面積の明確な増加が記録されたのは、2ppbのCOをGCに注入してからであった。
【0063】
CO放出実験の要約を図5および表4に示す。
【0064】
【表4】

【0065】
媒体Aが加熱されるまで、一酸化炭素は検出されなかった。真空処理によって、吸着されたCOが材料Aから取り除かれたと思われた。媒体Aについて真空処理が行われた後は、いかなる試験温度でもCOは検出されなかった。媒体Aの試験の全てにおいて、試験用精製装置が200℃以上に加熱されたとき、メタンピークが現れた。媒体Aについて、二酸化炭素も高温において放出された。
【0066】
結論
媒体Aから吸着したCOを取り除くには、高温真空処理が必要であった。媒体Aは、最初はCOを放出した。媒体Aは、一酸化炭素をppbレベルに除去するいかなる容量も有していなかった。媒体EはいかなるCOも放出しなかったので、高温真空処理は不要であった。この実験に基づけば、媒体Eの方が媒体Aより性能的に優れていた。
【実施例3】
【0067】
非ランタニドおよびランタニド媒体の水および酸素除去容量の比較
目的
以下の試験の目的は、媒体A、B、およびEの性能を、それぞれの水および酸素に関する汚染物質除去容量を測定することによって評価することであった。媒体Eはランタニドベースの媒体であり、媒体Cは酸化マンガンベースの媒体である。媒体Aは、現在水素化物ガス精製に使用されているマンガン−鉄材料である。全ての媒体の組成を表1に示す。
【0068】
実験方法
対のAeronex 70Kキャニスターに、媒体A、B、またはEをそれぞれ充填して、合計6本のキャニスターを製作した。充填したキャニスターを、流速1slmの95%Ar/5%Hでパージしながら、375℃で40時間活性化した。
【0069】
酸素容量
酸素容量試験パラメータとしては、対象酸素濃度6.5ppm、試験ガス圧力30psig、および各試験用精製装置を通過するガス流速3slmがあった。試験期間を通して全ての平日に、破過について各精製装置をチェックした。試験用精製装置の流出液中の酸素濃度を、酸素0.2ppbのLDLを有するDelta F Nanotrace 酸素分析計によって測定した。酸素破過レベルは、100ppb以上について測定した。
【0070】
水分容量
水分容量試験パラメータとしては、対象水分濃度9.0ppm、試験ガス圧力30psig、および各試験用精製装置通過ガス流速1.5slmがあった。試験の間中全ての平日に、破過について各精製装置をチェックした。試験用精製装置の流出液中の水分濃度を、水分1ppbのLDLを有するMeeco Tracer水分分析計によって測定した。水分破過レベルは、100ppb以上について測定した。
【0071】
結果/考察
1ppb破過点に対するOおよびHO容量試験の結果を表5に示す。データは、媒体1リットル当たりの汚染物質のリットル(L/L)単位で示されている。
【0072】
【表5】

【0073】
媒体Eの酸素容量は、媒体AおよびBのそれよりも大きかった。媒体Bは、この試験のための精製装置が適切に活性化されなかったので、水分については試験していない。
【実施例4】
【0074】
アルシンガスからの水分除去
Gatekeeper SK精製装置(Mykrolis Corporation、Billerica、MA)をバイパスするかまたは貫流するULSI級のアルシン(Matheson製99.9995%)ガスの分析ができるようにするためにマニホールドを取り付けた。精製装置の入口および出口でのアルシン中の水分濃度を、−110±2℃露点(0psigで、0.0015±0.001ppm)の検出限界を有するMシリーズプローブ(NIST標準検体)付きPanametrics Series3の水分分析計を使用して測定した。この分析のために、2基の別個の水分プローブを試験用精製装置のいずれかの側に設置した。さらに、10メートルの気体セル付きFourier Transform Infrared(FTIR)分光器を使用して、バイパスおよび排ガスを測定した。
【0075】
マニホールドを設置して不活性ガスを用いた初期パージの後、精製装置を流速40sccmのアルシンでコンディショニングした。コンディショニング段階では、著しい温度上昇は観察されず(1.4℃)、これは精製装置がアルシンに適合していることを表している。コンディショニングは、150ベッド容積のアルシンを精製装置に通した後に完了したことが示された。
【0076】
図6に示すように、アルシン中の水分除去が証明された。精製装置を出るアルシン中の初期の水分含有量は、精製装置に入るそれよりも高かった。アルシンを40sccmで21分間流した後に出口の水分レベルが減少し始めた。この初期水分スパイクは、一体型フィルタエレメントなどの物品の設置の際に、大気に触れた下流の構成部品からアルシンが誘発した水分脱着によって引き起こされるものと思われる。約1.5時間後に、出口センサが、入口センサよりも低い水分レベルを示した。Panametrics湿度計のドライダウン応答は遅く、流量2slmの乾燥窒素流の下、センサを3ppmから0.03ppmへと乾燥するのに4時間かかる。
【0077】
媒体が22Lのアルシンと接触した後で装置を分離した。その圧力は40.1psiaへと上昇した。温度および圧力を一夜記録した。13時間後、圧力は18psi増加して、約58psiaへと上昇した。ヘッドスペースのFT−IR分析では、観察可能な副産物は測定されず、アルシンだけであった(図7参照)。この圧力上昇は、アルシンがゆっくりと分解して水素を形成することによって起こると推論される。
【0078】
ヘッドスペースを分析した後、FT−IRによってアルシンが検出されないようにマニホールドをパージした。次に装置を再びアルシンと接触させた。アルシンに触れてから18分(336sccmで7分、168sccmで11分)後に、入口のPanametricsセンサが、0.12ppmの水分濃度を示し、一方出口センサは0.042ppmを示した。図8に示すように、次の50分間にわたって、センサは、入口水分濃度2ppm、出口水分濃度0.055ppmで安定した。
【実施例5】
【0079】
ランタニド媒体の二酸化炭素除去容量
目的
以下の試験の目的は、媒体Eの性能を二酸化炭素の除去容量を測定することによって評価することであった。媒体Eはランタニドベースの媒体で、その組成を表1に示す。
【0080】
実験方法
Aeronex 70Kキャニスターに媒体Eを充填した。充填したキャニスターを流速1slmの95%Ar/5%Hでパージしながら、375℃で40時間活性化した。
【0081】
MethanizerおよびFIDを備えたHewlett−Packard GCを、ppbレベルの二酸化炭素を測定するために較正した。COガスシリンダーを使用した標準の付加方法を使用した。目標の200ppbCOを調製するために、COシリンダーを窒素流中で希釈した。試験用精製装置を通過する流速は、45psigガス圧において窒素3slmであった。
【0082】
結果/考察
100ppbCOに対する二酸化炭素の較正曲線を図9に示す。
【0083】
2ppbCOの下限検出限界(LDL)は、較正データに基づき決定した。0ppbおよび1ppbのGC試験は、同じ結果を生じた。ピーク面積の明確な増加が記録されたのは、2ppbのCOをGCに注入してからであった。
【0084】
試験期間を通して全ての平日に、破過について試験用精製装置をチェックした。116日後に破過点(2ppbCO以上)が生じた。媒体1リットル当たりの汚染物質の容量(リットル)は、以下のように計算される。
(3slm*116日*24時間*60分*(200/1000000000))/.066L=1.51L/L
【0085】
結論
媒体Eは、2ppb破過に対して、1.51L/LのCO容量を有する。
【0086】
本発明を、その好ましい実施形態に即して具体的に説明してきたが、当分野の技術者には、添付の特許請求の範囲によって包含される発明の範囲から逸脱することなく、細部に様々な変更を加え得ることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】精製用基材CおよびDに関する酸素破過曲線である。
【図2】精製用基材CおよびDに関する水分破過曲線である。
【図3】10ppbCOに対するCO較正曲線である。
【図4】精製用基材CおよびDに関する破過曲線である。
【図5】CO放出対精製装置温度曲線である。
【図6】実施例4で説明したアルシンガスからの水分除去を示す図である。
【図7】一夜加圧する前後のアルシンガスのFT−IRスペクトルを示す図である。
【図8】調製済み媒体に接触させる前後のアルシンガスの水分含有量を示す図である。
【図9】100ppbCOに対するCO較正曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化物ガス流から汚染物質を除去する方法であって、水素化物ガス流をある量のランタニド族金属酸化物を含む材料と接触させて、前記ガス流の汚染物質レベルを約100ppb以下に低下させることを含み、前記材料は前記ガスによって実質上影響を受けない、前記方法。
【請求項2】
前記ランタニド金属が、(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ランタニド金属が、La,CeおよびSmからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記材料が、高い陽電性の金属または高い陽電性の金属酸化物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記材料が、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)およびルテチウム(Lu)からなる群から選択される希土類金属、ランタニド金属もしくはその酸化物、またはこれらの組合せをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記材料が、少なくとも1つの遷移金属もしくはその酸化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記遷移金属が、マンガン、クロミウム、モリブデン、バナジウム、チタニウムおよびジルコニウムからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記材料が、支持基材上に支持されている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記材料が、約100m/g未満の表面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記材料が、約75m/g未満の表面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記材料が、約50m/g未満の表面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記材料が、約20m/g未満の表面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記材料が、25℃および15psigにおいて、材料1リットル当たり少なくとも酸素約4リットルの酸素容量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記材料がさらに、25℃および15psigにおいて、材料1リットル当たり少なくとも水蒸気約4リットルの水蒸気容量を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記水素化物ガスが、アンモニア、アルシン、ホスフィン、ジボラン、ジシラン、ゲルマン、シランおよび水素からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
汚染物質の1種または複数が、水、二酸化炭素、酸素、非メタン炭化水素、水素化物ガス酸化生成物、二次水素化物ガス汚染物質、SOおよびNO(ただし、xは1〜3)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
汚染物質の1種または複数が、水、酸素、およびそれらの組合せよりなる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
汚染物質の1種または複数が、揮発性金属化合物よりなる請求項1に記載の方法。
【請求項19】
汚染物質の1種または複数が、金属含有化合物よりなる請求項1に記載の方法。
【請求項20】
水素化物ガス精製用組成物であって、3〜20重量%のランタニド族酸化物を含み、前記組成物が基本的に銅、鉄またはニッケルの少なくとも1つを含まない組成物。
【請求項21】
前記組成物が酸化マンガンをさらに含む、請求項20に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−528127(P2006−528127A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521217(P2006−521217)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/023491
【国際公開番号】WO2005/009593
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(506022865)インテグリス・インコーポレーテッド (21)
【Fターム(参考)】