説明

半導体発光素子の製造方法

【課題】信頼性の向上、及び製造歩留まりの向上を図ることができる半導体発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態に係る半導体発光素子の製造方法は、シリコンを含む支持基板の主面上に複数の発光領域を形成する工程と、アルカリ性溶液による異方性エッチングによって、前記発光領域の表面に凹凸部を形成するとともに、前記支持基板の主面における前記複数の発光領域のあいだに、前記アルカリ性溶液による異方性エッチングによってV字状の溝を形成する工程と、前記溝の位置において前記支持基板を分割し、前記発光領域ごとに分ける工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)等の半導体発光素子では、基板の上に、発光層を含む積層体を形成する技術が用いられている。半導体発光素子においては、光の出射面(取り出し面)に凹凸加工を施すことで、光の取り出し効率を向上させている。このような半導体発光素子においては、さらなる信頼性の向上、及び製造歩留まりの向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−114373号公報
【特許文献2】特開2010−114374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、信頼性の向上、及び製造歩留まりの向上を図ることができる半導体発光素子の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体発光素子の製造方法は、シリコンを含む支持基板の主面上に複数の発光領域を形成する工程と、アルカリ性溶液による異方性エッチングによって、前記発光領域の表面に凹凸部を形成するとともに、前記支持基板の主面における前記複数の発光領域のあいだに、前記アルカリ性溶液による異方性エッチングによってV字状の溝を形成する工程と、前記溝の位置において前記支持基板を分割し、前記発光領域ごとに分ける工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する模式的断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する模式的断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する模式的断面図である。
【図4】第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する模式的断面図である。
【図5】溝について例示する模式図である。
【図6】半導体発光素子を例示する模式的断面図である。
【図7】第2の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する模式的断面図である。
【図8】第2の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する模式的断面図である。
【図9】第3の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する模式的断面図である。
【図10】第3の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する模式的断面図である。
【図11】第3の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する模式的断面図である。
【図12】第3の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
また、以下の説明では、一例として、第1導電形をn形、第2導電形をp形とした具体例を挙げる。
【0008】
(第1の実施形態)
図1〜図4は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する模式的断面図である。
本実施形態に係る製造方法は、図3(c)に表したように、支持基板60の主面60a上に複数の発光領域100Rを形成する工程と、図4(a)に表したように、支持基板60の主面60aにおける複数の発光領域100Rのあいだに、異方性エッチングによってV字状の溝60Gを形成する工程と、図4(d)に表したように、溝60Gの位置において支持基板60を分割し、発光領域100Rごとに分ける工程と、を備える。
【0009】
実施形態では、支持基板60としてシリコンを含む基板を用いている。また、異方性エッチングとしては、例えばアルカリ性溶液を用いた、ウェットエッチングが用いられる。これにより、溝60Gは、シリコンの面方位に基づく角度でV字状に形成される。支持基板60に溝60Gが形成されることにより、この溝60Gの位置を起点としたブレーキングによって支持基板60の分割が行われる。
【0010】
また、実施形態では、異方性エッチングによって、発光領域100Rの表面に凹凸部12pを形成している。発光領域100Rの表面に凹凸部12pが形成されることで、発光領域100Rから放出される光の外部への取り出し効率が向上する。実施形態では、この凹凸部12pを形成する際の異方性エッチングとともに、支持基板60への溝60Gの形成を行っている。したがって、凹凸部12pの形成と、溝60Gの形成と、を別工程で行うことなく、同一工程で行うことができ、製造工程の簡素化を達成できる。
【0011】
次に、具体的な製造方法について、図1〜図4に基づき説明する。
先ず、図1(a)に表したように、例えばサファイアからなる成長用基板70の主面70a上に、バッファ層(図示せず)を形成した後、第1半導体層10、発光層30及び第2半導体層20を含む積層体100を結晶成長させる。
【0012】
積層体100は、例えば有機金属気相成長法を用いて形成される。一例として、積層体100は、次のような窒化物半導体によって構成される。
本明細書において「窒化物半導体」とは、InAlGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)またはBInAlGa1−x−y−zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x、y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むもの、導電形などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0013】
先ず、表面がサファイアc面からなる成長用基板70の上に、バッファ層として、高炭素濃度の第1AlNバッファ層(例えば、炭素濃度が3×1018cm−3以上、5×1020cm−3以下で、例えば、厚さが3nm以上、20nm以下)、高純度の第2AlNバッファ層(例えば、炭素濃度が1×1016cm−3以上3×1018cm−3以下で、厚さが2μm)、及びノンドープGaNバッファ層(例えば、厚さが2μm)が、この順に形成される。上記の第1及び第2AlNバッファ層は、単結晶の窒化アルミニウム層である。第1及び第2AlNバッファ層として単結晶の窒化アルミニウム層を用いることで、後述する結晶成長において高品質な半導体層を形成することができ、結晶に対するダメージが大幅に軽減される。
【0014】
次に、その上に、シリコン(Si)ドープn形GaNコンタクト層(例えば、Si濃度が1×1018cm−3以上5×1019cm−3以下で、厚さが6μm)、及びSiドープn形Al0.10Ga0.90Nクラッド層(例えば、Si濃度が1×1018cm−3で、厚さが0.02μm)が、この順番で順次形成される。Siドープn形GaNコンタクト層、及びSiドープn形Al0.10Ga0.90Nクラッド層は、第1半導体層10である。なお、便宜上、上記バッファ層の全部または一部を第1半導体層10に含めてもよい。
【0015】
次に、その上に、発光層30として、Siドープn形Al0.11Ga0.89Nバリア層と、GaInN井戸層と、が交互に3周期積層され(多重量子井戸)、さらに、多重量子井戸の最終Al0.11Ga0.89Nバリア層がさらに積層される。Siドープn形Al0.11Ga0.89Nバリア層においては、例えばSi濃度が1.1×1019cm−3以上1.5×1019cm−3以下とされる。最終Al0.11Ga0.89Nバリア層においては、例えばSi濃度が1.1×1019cm−3以上1.5×1019cm−3以下で、例えば厚さが0.01μmとされる。このような多重量子井戸構造の厚さは、例えば0.075μmとされる。この後、Siドープn型Al0.11Ga0.89N層(例えば、Si濃度が0.8×1019cm−3以上1.0×1019cm−3以下で、例えば、厚さがを0.01μm)を形成する。なお、発光層30における発光光の波長は、例えば370nm以上、480nm以下である。
【0016】
さらに、第2半導体層20として、ノンドープAl0.11Ga0.89Nスペーサ層(例えば、厚さが0.02μm)、Mgドープp形Al0.28Ga0.72Nクラッド層(例えば、Mg濃度が1×1019cm−3で、例えば、厚さが0.02μm)、Mgドープp形GaNコンタクト層(例えば、Mg濃度が1×1019cm−3で、例えば、厚さが0.4μm)、及び、高濃度Mgドープp形GaNコンタクト層(例えば、Mg濃度が5×1019cm−3で、例えば、厚さが0.02μm)が、この順で順次形成される。
なお、上記の組成、組成比、不純物の種類、不純物濃度及び厚さは一例であり、種々の変形が可能である。
【0017】
次に、図1(b)に表したように、積層体100の主面100bに第2電極50を選択的に形成する。続いて、図1(c)に表したように、積層体100の所定位置にドライエッチングを施し、メサ構造を形成する。
【0018】
次に、図2(a)に表したように、積層体100の主面100b及び第2電極50を覆うように、第1金属611を形成する。続いて、図2(b)に表したように、第2金属612を形成した支持基板60を用意する。そして、支持基板60の主面60aに形成した第2金属612と、先に製造した成長用基板70の側の第1金属611と、を向かい合わせにして、貼り合わせる。
ここで、第1金属611には、主面100b側から、例えば、チタン(Ti)/金(Au)/金錫合金(AuSn)の積層膜が用いられる。また、第2金属612には、主面60a側から、例えば、Ti/Auの積層膜が用いられる。第1金属611及び第2金属612が接合されたものは接合金属61になる。
【0019】
次に、図2(c)に表したように、成長用基板70の側から積層体100に対してレーザ光LSRを照射し、レーザリフトオフを行う。これにより、成長用基板70を、積層体100の主面100aから剥離する。
【0020】
次に、図3(a)に表したように、積層体100を半導体発光素子の境界線の位置でエッチングする処理を行う。ここで、エッチングとしては、例えばドライエッチングが用いられる。なお、図3(a)には、3つの半導体発光素子に分割する際のエッチング状態が例示されているが、実際には多数の半導体発光素子に対応して積層体100をマトリクス状に分割している。積層体100は、主面100aから反対側の主面100bまでエッチングされる。これにより、複数の発光領域100Rが形成される。
【0021】
次に、図3(b)に表したように、全面に保護膜80を形成する。保護膜80には、例えばSiOが用いられる。続いて、図3(c)に表したように、保護膜80を選択的に除去する。例えば、保護膜80を残す部分にのみレジストパターンRを形成し、レジストパターンRをマスクとして、例えばフッ酸によって保護膜80を除去する。これにより、発光領域100Rの表面の一部、及び複数の発光領域100Rのあいだの部分が露出する。
【0022】
次に、露出した複数の発光領域100Rのあいだの部分の接合金属61(第1金属611及び第2金属612)をエッチングする。ここで、第1金属611及び第2金属612に含まれるTiは、例えばフッ酸によってエッチングされ、Auは、例えばKI/Iの混合液によってエッチングされる。このエッチングによって、複数の発光領域100Rのあいだの支持基板60の部分が露出する。エッチング後、レジストパターンRを剥離する。
【0023】
次に、図4(a)に表したように、発光領域100R及び支持基板60の露出する部分を、異方性エッチングする。異方性エッチングとしては、例えばアルカリ性溶液によるウエットエッチングを用いる。アルカリ性溶液には、例えば水酸化カリウム(KOH)溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)、アンモニア水(NHOH)が用いられる。
本実施形態では、KOH溶液を用いる場合を例として説明する。
【0024】
この異方性エッチングによって、発光領域100Rの表面、すなわち露出している第1半導体層10の表面に凹凸部12pが形成される。さらに、この異方性エッチングによって、凹凸部12pの形成とともに、支持基板60の主面60aにおける複数の発光領域100Rのあいだに、V字状の溝60Gが形成される。
【0025】
異方性エッチングの条件としては、例えば、1モル(mol)/リットル(L)〜5mol/LのKOH溶液を80℃に加熱して、15分〜20分間のエッチングを行う。
KOH溶液などによるアルカリエッチングでは、GaN結晶の面方位(主に{10−1−1})に沿って異方性エッチングされ、その結果として六角錐の構造による凹凸部12pが形成される。
【0026】
凹凸部12pは、例えば発光層30から凹凸部12pに入射した発光光を有効に取り出すため、または入射角度を変えるために設けられる。このため、その大きさは結晶層内における発光光の波長以上であることが好ましい。本実施形態では、凹凸部12pの凹部の深さは、約1マイクロメートル(μm)〜2μmである。
【0027】
この異方性エッチングと同時に、シリコンによる支持基板60の主面60aに、所定角度のV字状の溝60Gが形成される。
【0028】
図5は、溝について例示する模式図である。
図5(a)は、溝の断面を例示する模式的断面図である。図5(b)は、溝の一部を例示する模式的斜視図である。
支持基板60の主面60aは、シリコンの(100)面である。また、溝60Gの壁面60cは、シリコンの(111)面である。
【0029】
すなわち、KOH溶液等のアルカリ性溶液によるシリコンのエッチングでは、面方位によってエッチングレートが異なる。例えば、KOH溶液によるシリコンのエッチングレートとしては、(100)面及び(110)面は1500ナノメートル(nm)/分(min)〜2000nm/min、(111)面は3.0nm/min〜4.0nm/minである。このようなエッチングレートの相違によって、主面60aにはV字状の溝60Gが形成される。
【0030】
なお、保護膜80として用いられるSiOの、KOH溶液によるエッチングレートは、約10nm/minであるため、凹凸部12p及び溝60Gを形成する際のエッチングではほとんど影響を受けない。
【0031】
図5(a)にしたように、溝60Gの壁面60cの主面60aに対する角度θは、約55°になる。また、溝60Gの開口側の幅wは、例えば42μmである。また、溝60Gの深さdは、例えば30μmである。
【0032】
図5(b)に表したように、溝60Gは、支持基板60の主面60aに、縦横に交差して設けられる。溝60Gに囲まれた領域が、発光領域100Rである。ここで、溝60Gの開口側の幅wは、隣り合う2つの発光領域100Rのあいだの幅と等しい。
【0033】
本実施形態では、一度の異方性エッチングによって、凹凸部12pと、溝60Gと、を一括形成する。このため、凹凸部12pにおける凹部の深さと、溝60Gの深さdと、の比率は、発光領域100Rの異方性エッチングによるエッチングレートと、支持基板60の異方性エッチングによるエッチングレートと、の比率と等しくなる。
【0034】
例えば、KOH溶液によるGaNのエッチングレートとしては、50nm/min〜100nm/minである。上記のように、KOH溶液によるシリコンの(100)面のエッチングレートとしては、1500ナノメートルnm/min〜2000nm/minであるため、凹凸部12pの凹部の深さを「1」とした場合、溝60Gの深さdは「15」〜「40」になる。
【0035】
次に、図4(b)に表したように、発光領域100Rの第1半導体層10の上に第1電極40を形成する。第1電極40には、例えばアルミニウム(Al)/Ti/Auの積層膜、及びTi/白金(Pt)/Auの積層膜のいずれかが用いられる。第1電極40は、例えば、レジストパターン(図示せず)を形成した上に電極材料を形成し、レジストパターンを除去する、リフトオフ法によって形成される。
【0036】
次に、図4(c)に表したように、支持基板60を所定の厚さに研削する。すなわち、支持基板60の一方の主面60aとは反対側の他方の主面60bを研削する。支持基板60の研削後の厚さは、溝60Gの深さdよりも厚く、溝60Gの深さdの約4倍以下、好ましくは3倍以下にする。本実施形態では、支持基板60の厚さを約90μm〜100μmにしている。その後、他方の主面60bの例えば全面に、電極膜51を形成する。電極膜51には、例えばTi/Pt/Auの多層膜が用いられる。
【0037】
次に、図4(d)に表したように、支持基板60の分割を行う。すなわち、支持基板60に形成された溝60Gの位置で、支持基板60のグレーキングを行う。溝60GはV字状になっているため、例えば主面60b側から支持基板60に圧力を加えることで、溝60Gの底部(V字状の先端部分)を起点として、支持基板60の主面60b側に亀裂が生じ、支持基板60を分割することができる。
【0038】
予め支持基板60を研削し、上記のような厚さにしているため、ブレーキングによって支持基板60は溝60Gの位置で的確に分割される。
支持基板60を分割することで、発光領域100Rごとに分けられた半導体発光素子110が完成する。
【0039】
このような半導体発光素子110の製造方法によれば、支持基板60をブレーキングする際に用いられる溝60Gを、凹凸部12pを形成する際の異方性エッチングによって一括形成するため、支持基板60に対して別途スクライブを行う必要がなく、製造工程の簡素化を図ることが可能になる。
【0040】
また、支持基板60をスクライブせずに溝60Gを形成するため、スクライブの際に生じやすい支持基板60の欠損やダストの発生、接合金属61の剥がれを発生させずに済む。したがって、信頼性の高い半導体発光素子110を製造することが可能になる。
【0041】
また、溝60Gは、異方性エッチングによって形成されるため、隣り合う2つの発光領域100Rのあいだに別途スクライブを設ける場合に比べて、隣り合う2つの発光領域100Rの間隔を狭く設定することができる。
【0042】
すなわち、隣り合う2つの発光領域100Rのあいだにスクライブを設ける場合には、スクライブを設けるためのツールの位置決めを行うため、2つの発光領域100Rの隙間にある程度の余裕を持たせる必要がある。
一方、異方性エッチングによって溝60Gを形成する場合には、フォトリソグラフィの精度によって正確に形成する位置を設定することができる。したがって、隣り合う2つの発光領域100Rの間隔を狭くすることができ、同じ大きさの支持基板60から多くの半導体発光素子110を製造することが可能になる。
【0043】
例えば、支持基板60の分割としてスクライブを利用する場合、スクライブを形成するために隣り合う2つの発光領域100Rの間隔として約100μm必要となる。一方、溝60Gを利用する場合、隣り合う2つの発光領域100Rの間隔を、溝60Gの幅wに合わせることができる。このため、2つの発光領域100Rの間隔として約50μmで済むことになる。これにより、同じ大きさの支持基板60から製造することができる半導体発光素子110の個数を、約10%増加できることになる。
【0044】
なお、上記の実施形態では、成長用基板70としてサファイアを用いる例を説明したが、成長用基板70はサファイアに限定されない。例えば、成長用基板70として、Siを含む基板を用いてもよい。Siでは、サファイアに比べて大きな成長用基板70を用意しやすい。したがって、Siを含む成長用基板70を用いることで、一つの成長用基板70から多くの半導体発光素子110を製造しやすくなる。
【0045】
図6は、半導体発光素子を例示する模式的断面図である。
図6では、第1の実施形態に係る製造方法によって製造された半導体発光素子110を例示している。半導体発光素子110は、発光領域100Rと、第1電極40と、第2電極50と、支持基板60と、を備える。
【0046】
発光領域100Rは、第1導電形の第1半導体層10と、第2導電形の第2半導体層20と、第1半導体層10と第2半導体層20とのあいだに設けられた発光層30と、を含む。発光領域100Rは、第1半導体層10、発光層30及び第2半導体層20の積層体100を分割して設けられたものである。
【0047】
発光領域100Rの第1半導体層10の上面には凹凸部12pが設けられている。この凹凸部12pによって、発光層30から放出した光の外部への取り出し効率が高まる。また、発光領域100Rの側面には、保護膜80が設けられる。
【0048】
第1電極40は、第1半導体層10と接する。第1電極40は、例えばn側電極である。第2電極50は、第2半導体層20と接する。第2電極50は、例えばp側電極である。
【0049】
発光領域100Rは、接合金属61を介して支持基板60に接続されている。接合金属61は、発光領域100Rの第2半導体層20の側に設けられた第1金属611と、支持基板60の一方の主面60a側に設けられた第2金属612と、を有する。この第1金属611と、第2金属612と、の貼り合わせによって、発光領域100Rと、支持基板60と、が接続される。
【0050】
支持基板60の側面における上部には、溝60Gの壁面60cの一部が露出している。壁面60cは、発光領域100Rの周辺を囲むように設けられる。先に説明したように、凹凸部12pと、溝60Gと、は一度の異方性エッチングによって形成される。支持基板60がシリコンの場合、壁面60cの主面60aに対する角度θは、約55°である。
【0051】
また、凹凸部12pにおける凹部の深さと、溝60Gの深さdと、の比率は、発光領域100Rの異方性エッチングによるエッチングレートと、支持基板60の異方性エッチングによるエッチングレートと、の比率と等しくなっている。
【0052】
(第2の実施形態)
図7〜図8は、第2の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する模式的断面図である。
ここでは、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
先ず、図7(a)に表したように、例えばサファイアからなる成長用基板70の主面70a上に、バッファ層(図示せず)を形成した後、第1半導体層10、発光層30及び第2半導体層20含む積層体100を結晶成長させる。積層体100の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0053】
次に、図7(b)に表したように、積層体100を、個々の半導体発光素子のサイズに分割する。すなわち、積層体100に対して例えばフォトリソグラフィ及びエッチングを施し、所定のサイズに分割する。所定のサイズに分割された積層体100は、発光領域100Rになる。
【0054】
次いで、図7(c)に表したように、各発光領域100Rの主面100bに第2電極50を選択的に形成する。そして、各第2電極50を覆うように、第1金属611を形成する。
【0055】
続いて、図8(a)に表したように、第2金属612を形成した支持基板60を用意する。第2金属612は、支持基板60の主面60aに選択的に形成されている。第2金属612の形成位置は、個々の半導体発光素子の形成位置に合わせて選択的に形成されている。
【0056】
そして、支持基板60の主面60aに形成した第2金属612と、先に製造した成長用基板70の側の第1金属611と、を向かい合わせにして、貼り合わせる。各第1金属611と、各第2金属612と、は、それぞれ対向した状態で接合される。
【0057】
次に、図8(b)に表したように、成長用基板70の側から発光領域100Rの第1半導体層10に対してレーザ光LSRを照射し、レーザリフトオフを行う。これにより、成長用基板70を、発光領域100Rから剥離する。
【0058】
次に、図8(c)に表したように、個々の発光領域100Rを覆うように保護膜80を形成し、発光領域100Rの表面の一部、及び各発光領域100Rのあいだの部分を露出させる。
【0059】
このあとは、図4(b)〜(d)に表した工程と同様である。すなわち、発光領域100R及び支持基板60の露出する部分を、異方性エッチングして、発光領域100Rの表面には凹凸部12pを形成し、支持基板60の露出部分にはV字状の溝60Gを形成する。そして、支持基板60の研削、電極膜51の形成、ブレーキングを行って、個々の半導体発光素子が完成する。
【0060】
第2の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法では、第1の実施形態における効果に加え、次のような効果を得ることができる。
すなわち、第2の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法では、支持基板60を貼り合わせる前に、積層体100を分割して個々の発光領域100Rを形成しているため、支持基板60を貼り付ける際の応力、及び成長用基板70を剥離する際の応力を緩和することができる。
【0061】
つまり、第1の実施形態に比べて、支持基板60を貼り付ける際の接触面積が狭いため、貼り付けの際の応力を減少させることができる。また、第1の実施形態に比べて、成長用基板70と第1半導体層10との接触面積が狭いため、成長用基板70を剥離する際の応力を減少させることができる。
【0062】
これにより、成長用基板70を剥離する際の接合金属61の剥がれや、発光領域100Rの欠損などの発生を抑制することができる。
【0063】
また、第2の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法では、第1の実施形態に比べて接合金属61の材料の選択性を高めることができる。すなわち、第1の実施形態では、発光領域100Rの表面の一部が露出している状態で接合金属61(第1金属611及び第2金属612)のエッチングを行うことから(図3(c)参照)、このエッチングでは、発光領域100Rはエッチングされず、接合金属61のみエッチングされるエッチャントを用いる必要がある。したがって、接合金属61としては、このエッチャントでエッチングされる材料である必要がある。
【0064】
一方、第2の実施形態では、発光領域100Rとは独立して第1金属611及び第2金属612をエッチングしている。したがって、第2の実施形態では、第1の実施形態に比べてエッチャントに対する制限を受けることなく第1金属611及び第2金属612の材料を選択することができる。
【0065】
(第3の実施形態)
図9〜図12は、第3の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する模式的断面図である。
先ず、図9(a)に表したように、例えばサファイアからなる成長用基板70の主面70a上に、バッファ層(図示せず)を形成した後、第1半導体層10、発光層30及び第2半導体層20を含む積層体100を結晶成長させる。積層体100の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0066】
次に、図9(b)に表したように、積層体100の一部に凹部100tを形成する。凹部100tは、積層体100の主面100bから第1半導体層10にまで達する。これにより、凹部100tの底部に第1半導体層10が露出する(露出部分10e)。
【0067】
凹部100tを形成するには、積層体100の第2主面100b上に図示しないマスクを形成し、例えばドライエッチングを行う。すなわち、マスクには、凹部100tを形成する部分に開口が設けられていて、エッチングによって積層体100が第2主面100bから第1半導体層10まで除去される。これにより、凹部100tが形成される。
【0068】
次に、第2半導体層20と接する第2電極50を形成する。第2電極50としては、先ず、第2半導体層20の表面に、オーミック電極となるAg/PtやAg/Niの積層膜を例えば200nmの膜厚で形成し、酸素雰囲気中で約400℃、1分でシンター処理を行う。次に、オーミック電極の上に、電流拡散用および後で述べるパッド55への接合金属用及び後述する絶縁層81への接着金属として、例えば、Ti/Au/Tiの積層膜を例えば400nmの膜厚で形成する。
【0069】
次に、図9(c)に表したように、第2電極50及び凹部100tを覆うように、絶縁層81を形成する。絶縁層81として、例えばSiOを800nmの膜厚で形成する。
【0070】
次に、オーミック特性を有するn側電極を形成するため、凹部100t内の露出部分10eの上にある絶縁層81を除去する。そして、そこに、例えば、Al/Ni/Auの積層膜を例えば300nmの膜厚で形成する。これにより、接触部41が形成される。
【0071】
次に、図10(a)に表したように、接触部41及び絶縁層81が露出した面全体に、第1金属611を、例えば800nmの膜厚で形成する。
【0072】
次に、例えばシリコンからなる支持基板60を用意する。支持基板60の主面60aには、例えば膜厚3μmの第2金属612が設けられている。そして、第1金属611と、第2金属612と、を対向させて接合する。これにより、支持基板60を積層体100の主面100bの側に接合する。
【0073】
そして、図10(b)に表したように、積層体100に対して成長用基板70の側から、レーザ光LSRを照射し、レーザリフトオフを行う。これにより、成長用基板70を、積層体100の主面100aから剥離する。
【0074】
次に、図11(a)に表したように、積層体100の一部をドライエッチングで除去し、第2電極50の一部(引き出し部53)を露出させる。このエッチングによって、積層体100が個々の発光領域100Rに分割される。
【0075】
次に、発光領域100Rの全面に保護膜85を形成し、発光領域100Rの表面の一部及び発光領域100Rの周辺の一部に開口を設ける。保護膜85としては、例えばSiOが用いられる。保護膜85の膜厚は、例えば800nmである。
次いで、発光領域100Rの周辺の接合金属61(第1金属611及び第2金属612)をエッチングし、支持基板60の一部を露出させる。
【0076】
次に、図11(b)に表したように、開口が設けられた保護膜85をマスクとして、発光領域100Rの露出した表面を、異方性エッチングする。異方性エッチングとしては、例えばアルカリ性溶液によるウエットエッチングを用いる。アルカリ性溶液には、例えばKOH溶液、TMAHが用いられる。本実施形態では、KOH溶液が用いられる。
【0077】
この異方性エッチングによって、発光領域100Rの表面、すなわち露出している第1半導体層10の表面に凹凸部12pが形成される。さらに、この異方性エッチングによって、凹凸部12pの形成とともに、支持基板60の露出した部分に、V字状の溝60Gが形成される。
【0078】
次に、引き出し部53を被覆している保護膜85の一部を除去し、その領域にパッド55を形成する。パッド55としては、例えばTi/Auの積層膜が用いられる。パッド55の膜厚は、例えば800nmである。このパッド55にはボンディングワイヤが接続される。ボンディング特性を向上させるため、パッド55の表面に例えばめっきによってAuを厚く(例えば10μm)形成することが望ましい。
【0079】
次に、図12に表したように、支持基板60の分割を行う。すなわち、支持基板60に形成された溝60Gの位置で、支持基板60のグレーキングを行う。溝60GはV字状になっているため、例えば主面60b側から支持基板60に圧力を加えることで、溝60Gの底部(V字状の先端部分)を起点として、支持基板60の主面60b側に亀裂が生じ、支持基板60を分割することができる。
これにより、半導体発光素子130が完成する。
【0080】
このようにして製造された半導体発光素子130では、発光領域100Rの凹凸部12pが形成された光取り出し面に第1電極50が設けられていないため、光取り出し面の全面から効率良く光を取り出すことが可能になる。
【0081】
以上説明したように、実施形態によれば、信頼性の向上、及び製造歩留まりの向上を図ることができる半導体発光素子の製造方法を提供することができる。
【0082】
なお、上記に本実施の形態およびその変形例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施形態においては、第1導電形をn形、第2導電形をp形として説明したが、第1導電形をp形、第2導電形をn形としても実施可能である。また、前述の各実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものもや、各実施の形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
10…第1半導体層、12p…凹凸部、20…第2半導体層、30…発光層、40…第1電極、41…接触部、50…第2電極、60…支持基板、60G…溝、61…接合金属、70…成長用基板、100…積層体、100t…凹部、110、130…半導体発光素子、611…第1金属、612…第2金属、LSR…レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(100)面を主面とするシリコンからなる支持基板の前記主面上に複数の発光領域を形成する工程と、
前記複数の発光領域の間の前記支持基板の前記主面を露出させる工程と、
アルカリ性溶液による異方性エッチングによって、前記発光領域の表面に凹凸部を形成するとともに、前記支持基板の前記主面における前記複数の発光領域のあいだの前記支持基板に、前記アルカリ性溶液による異方性エッチングによって(111)面を壁面とするV字状の溝を形成する工程と、
前記溝の位置において前記支持基板を分割し、前記発光領域ごとに分ける工程と、
を備えたことを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項2】
支持基板の主面上に複数の発光領域を形成する工程と、
前記支持基板の主面における前記複数の発光領域のあいだに、異方性エッチングによってV字状の溝を形成する工程と、
前記溝の位置において前記支持基板を分割し、前記発光領域ごとに分ける工程と、
を備えたことを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記溝の形成とともに、前記異方性エッチングによって前記発光領域の表面に凹凸部を形成することを特徴とする請求項2記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記凹凸部における凹部の深さと、前記溝の深さと、の比率は、前記発光領域の前記異方性エッチングによるエッチングレートと、前記支持基板の前記異方性エッチングによるエッチングレートと、の比率に等しいことを特徴とする請求項3記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記異方性エッチングは、アルカリ性溶液を用いたエッチングであることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記支持基板は、シリコンからなることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記主面は、前記シリコンの(100)面であり、
前記溝の壁面は、前記シリコンの(111)面であることを特徴とする請求項6記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記発光領域を形成する工程は、
成長用基板に第1半導体層、発光層及び第2半導体層を順に積層した積層体を形成する工程と、
前記積層体に前記支持基板を貼り合わせる工程と、
前記積層体から前記成長用基板を剥離する工程とを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記溝の位置において前記支持基板を分割する工程では、前記支持基板の厚さを薄くした後に分割を行うことを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか1つに記載の半導体発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−231082(P2012−231082A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99732(P2011−99732)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【特許番号】特許第5023229号(P5023229)
【特許公報発行日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】