半導体発光素子及びその製造方法
【課題】発光効率を高めることができて、しかも製造コストを低減できる半導体発光素子及びその製造方法を提供する
【解決手段】、AlGaInP活性層4上には、n型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2及びn型Al0.5In0.5Pクラッド層3が形成されている一方、AlGaInP活性層4下には、p型Al0.5In0.5Pクラッド層5、p型GaInP中間層6、p型GaPコンタクト層7及びp型GaP透光性半導体層8が形成されている。p型GaPコンタクト層7のキャリア濃度はp型GaP透光性半導体層8のキャリア濃度よりも大きい。
【解決手段】、AlGaInP活性層4上には、n型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2及びn型Al0.5In0.5Pクラッド層3が形成されている一方、AlGaInP活性層4下には、p型Al0.5In0.5Pクラッド層5、p型GaInP中間層6、p型GaPコンタクト層7及びp型GaP透光性半導体層8が形成されている。p型GaPコンタクト層7のキャリア濃度はp型GaP透光性半導体層8のキャリア濃度よりも大きい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば通信装置、道路・線路・案内表示板装置、広告表示装置、携帯電話、ディスプレイのバックライト、照明器具等に使用される発光体である半導体発光素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体発光素子の一つである半導体発光ダイオード(以下、「LED」と言う。)の製造技術が急速に進歩し、特に青色のLEDが開発されて以降は、光の3原色のLEDが揃ったことから、その3原色のLEDの組み合わせによりあらゆる波長の光を作り出すことが可能となった。その結果、LEDの適用範囲は急速に広まっており、中でも照明の分野では環境・エネルギー問題への意識の向上と相まって電球、蛍光灯に変わる自然光・白色光源として注目されているところである。
【0003】
しかしながら、現状のLEDは電球や蛍光灯と比較して投入されるエネルギーに対する光の変換効率が劣っており、より変換効率の高い、より輝度の高いLEDを目指した研究開発が波長を問わず進められている。
【0004】
一昔前までは高輝度化技術開発の中心はエピタキシャル成長技術にあったが、その技術が成熟した近年ではプロセス技術を中心とした開発へと移行しつつある。
【0005】
プロセス技術による輝度の向上とは外部量子効率(内部量子効率×外部取出し効率)の向上であり、素子の形状微細加工技術、反射膜、透明電極等が挙げられる。これらの中でもウェハボンディングによる手法は赤色、青色発光のLEDにおいていくつかの手法が確立されており、高輝度タイプのLEDが発明され市場に登場してきた。
【0006】
ウェハボンディングによる手法の1つに、発光層の出射光を透過する基板、例えばガラスやサファイアやGaP等をエピタキシャル層に直接貼り付ける手法がある。
【0007】
図1に、その手法が用いられたLEDの概略断面図を示す。
【0008】
図1において、201はウィンド層、202,204はエピタキシャル層、203は発光層、205は透明基板、206,207は電極である。
【0009】
図1のLEDでは、発光層203から出射された光が矢印で示すように透明基板205で吸収されずに透過する。
【0010】
特に、上記透明基板205をエピタキシャル層204に直接貼り付ける手法は、発光層203から出射された光が再び発光層203を通過すること無く、つまり、発光層203から出射された光が発光層203に吸収されること無く、LEDのほぼ全面より光を外部へ取り出すことが可能であり、より変換効率(取り出し効率)の高いLEDの開発が可能である。
【0011】
従来、透明基板をエピタキシャル層に貼り付ける手法としては、特許第3230638号公報(特許文献1)に記載されたものがある。この特許第3230638号公報では、4元系のLEDを作製するために、AlGaInP(アルミニウム・ガリウム・インジウム・リン)系の半導体層にGaP(ガリウム・リン)透明基板を直接貼り付けている。
【0012】
ところが、上述したような透明基板をエピタキシャル層に直接貼り付ける手法においては、基板濃度が高くなると、透明基板内でフリーキャリアによる光の吸収が起こり、充分に発光光が取り出せない問題があることが判った。この問題を解決するために、ドーパント原子の貼付界面への偏析を基板濃度低で抑えて、光吸収層の形成を防止し発光効率を低下させない方法や、透明基板のキャリア濃度減で、透明基板内でのフリーキャリアによる光の吸収を減らして発光効率を低下させない方法が、提案されている。
【0013】
これらの方法であれば、図2に示すように、ドーパント原子が透明基板304の貼付界面に偏析するのを抑えて、透明基板304の貼付界面における光透過率が低下するのを防ぐことができる。
【0014】
さらに、上記方法であれば、透明基板304のキャリア濃度が高くならないから、透明基板304内においてフリーキャリアによる光の吸収が減り、発光効率を低下させない。
【0015】
しかしながら、上記方法のように、透明基板304のキャリア濃度を限定することは、透明基板304の収率(歩留まり)を下げることになり、製造コストが上昇するという問題が生じてしまう。
【0016】
また、図2において、301はエピタキシャル層、302は発光層である。
【特許文献1】特許第3230638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで、本発明の課題は、発光効率を高めることができて、しかも製造コストを低減できる半導体発光素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明の半導体発光素子は、
第1導電型の半導体層と、
上記第1導電型の半導体層上に形成された発光層と、
上記発光層上に形成された第2導電型の半導体層と、
上記第2導電型の半導体層上に形成され、上記発光層からの光を透過する透過性半導体層と
を備え、
上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が上記透過性半導体層のキャリア濃度よりも大きいことを特徴としている。
【0019】
本明細書において、第1導電型とは、p型またはn型を意味する。また、第2導電型とは、第1導電型がp型の場合はn型、n型の場合はp型を意味する。
【0020】
上記構成の半導体発光素子によれば、図3に示すように、上記第2導電型の半導体層403のキャリア濃度が透過性半導体層404のキャリア濃度よりも大きいことによって、透過性半導体層404から第2導電型の半導体層403へのキャリアの拡散が抑制されるから、透過性半導体層404の発光層402側のドーパント原子の偏析が抑えられ、透過性半導体層404の光透過率が低下するのを防ぐことができる。
【0021】
また、仮に、上記透過性半導体層404を形成するための透過性半導体基板405のキャリア濃度が比較的高くても、透過性半導体基板405と第2導電型の半導体層403との間にある透過性半導体層404のキャリア濃度を低く抑制することで透過性半導体層404内におけるフリーキャリアによる光の吸収が減り、発光効率の低下を防ぐことができる。
【0022】
したがって、上記半導体発光素子の発光効率の低下を防ぐために、透過性半導体基板405のキャリア濃度を限定しなくてもよいから、透過性半導体基板405の収率が下がらず、製造コストを低減できる。
【0023】
なお、上記透過性半導体基板405は、第1導電型の半導体層401、発光層402、第2導電型の半導体層403および透過性半導体層404を形成した後、除去してもよい。つまり、本発明の半導体発光素子は、透過性半導体基板405を備えていてもよいし、透過性半導体基板405を備えてなくてもよい。
【0024】
上記透過性半導体層404は、第2導電型の半導体層403に直接貼り付けてもよいし、接着剤・金属・酸化物・窒化物などを介して、第2導電型の半導体層403に間接的に貼り付けてもよい。
【0025】
上記透過性半導体層404を、接着剤・金属・酸化物・窒化物などを介して、第2導電型の半導体層403に間接的に貼り付けた場合も、フリーキャリアによる光吸収を抑制することができる。
【0026】
言うまでもないが、上記接着剤・金属・酸化物・窒化物などは、少なくとも一部が発光層402からの光を透過するものである。
【0027】
また、上記透過性半導体層404と第2導電型の半導体層403との間に設ける層の数は単数であっても複数であってもよい。
【0028】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記透過性半導体層上に形成され、上記発光層からの光を透過する透過性半導体基板を備え、
上記透過性半導体層のキャリア濃度が上記透過性半導体基板のキャリア濃度以上である。
【0029】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記透過性半導体層のキャリア濃度が2.5×1018cm−3以下である。
【0030】
上記実施形態の半導体発光素子によれば、上記透過性半導体層のキャリア濃度が2.5×1018cm−3以下であるから、フリーキャリアの光吸収を低く抑えることができる。
【0031】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記透過性半導体層のキャリア濃度が2.5×1017cm−3〜8.0×1017cm−3の範囲内である。
【0032】
上記実施形態の半導体発光素子によれば、上記透過性半導体層のキャリア濃度が2.5×1017cm−3〜8.0×1017cm−3の範囲内であるから、上述した透過性半導体層の光透過率の低下の防止効果により、発光効率の向上効果を確実に得ることができる。
【0033】
なお、上記透過性半導体層のキャリア濃度の下限は、素子化のプロセスで電極形成の時にオーミックコンタクトが取れる濃度で決まる。
【0034】
図4Aに、上記透過性半導体層の一例であるキャリア濃度5.0×1017cm−3のp型GaP半導体層についての実験結果を示す。また、図4Bに、上記透過性半導体層の一例であるキャリア濃度1.5×1018cm−3のp型GaP半導体層についての実験結果を示す。なお、図4A,図4Bのp型GaP半導体層は、p型GaInP半導体層に貼り付けられ、亜鉛ドープされている。
【0035】
図4A,図4Bから判るように、p型GaP半導体層のキャリア濃度を高くするよりも、p型GaP半導体層のキャリア濃度を低くした方が、p型GaP半導体層とp型GaInP半導体層との貼付界面に偏析するZnを低減させることができる。すなわち、上記貼付界面での吸収を低減させることができるのである。
【0036】
図5に、上記p型GaP半導体層の単体での光透過率を示す。ここでは、上記p型GaP半導体層に入射する光の各界面での反射を考慮していないため、p型GaP半導体層のバンドギャップより低エネルギー側の光透過率は50%前後の値となる(実際の光透過率はほぼ90%以上)。
【0037】
図5から判るように、p型GaP半導体層に入射する光の波長が約550nm〜700nmの範囲内においては、p型GaP半導体層のキャリア濃度を高くするよりも、p型GaP半導体層のキャリア濃度を低くした方が、光透過率を大きく向上させることができる。
【0038】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記発光層と上記第2導電型の半導体層との間に形成された第2導電型の中間層を備え、
上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が上記第2導電型の中間層のキャリア濃度よりも大きい。
【0039】
上記実施形態の半導体発光素子によれば、上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が第2導電型の中間層のキャリア濃度よりも大きいから、第2導電型の半導体層よりも発光層に近い第2導電型の中間層のキャリア濃度が低濃度になり、発光層へのキャリアの拡散を防ぐことができる。
【0040】
さらに、上記中間層と発光層との間にキャリア拡散防止層を設けてもよく、キャリア拡散防止層を設けた場合、発光層へのキャリアの拡散を防ぐ効果を高めることができる。
【0041】
上記キャリア拡散防止層のキャリア濃度は中間層のキャリア濃度より小さくしてもよい。
【0042】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記透過性半導体層の厚みが0.5μm以上である。
【0043】
上記実施形態の半導体発光素子によれば、上記透過性半導体層の厚みが0.5μm以上あるから、透過性半導体層およびこれを形成するための例えば透過性半導体基板を高温加熱処理しても、透過性半導体基板のドーパント原子が透過性半導体層を通過するのを防ぐことができる。
【0044】
実際には、上記透過性半導体層の厚み最小値は、透過性半導体基板および透過性半導体層に行う熱処理の温度や時間、透過性半導体基板および透過性半導体層のキャリア濃度で決まる。
【0045】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記透過性半導体層上に形成され、上記発光層からの光を透過する透過性半導体基板を備え、
上記透過性半導体層と上記透過性半導体基板とのうちの少なくとも一方は第1導電型の半導体からなる。
【0046】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記透過性半導体層は第2導電型の半導体からなる。
【0047】
上記実施形態の半導体発光素子によれば、上記透過性半導体層は第2導電型の半導体からなるから、第2導電型の半導体層と同一極性になり、第2導電型の半導体層と電気的に接続することができる。
【0048】
したがって、上記発光層を発光させるための電極を透過性半導体層に形成することができる。
【0049】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記透過性半導体層上に形成され、上記発光層からの光を透過する透過性半導体基板を備え、
上記透過性半導体基板は第1導電型の半導体からなる。
【0050】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記第1導電型の半導体層、上記発光層及び上記第2導電型の半導体層は、それぞれ、ガリウム、アルミニウム、インジウム、リン、砒素、亜鉛、テルル、硫黄、窒素、シリコン、炭素、酸素のうちの少なくとも2つを含む。
【0051】
上記実施形態の半導体発光素子によれば、上記第1導電型の半導体層、上記発光層及び上記第2導電型の半導体層は、それぞれ、ガリウム、アルミニウム、インジウム、リン、砒素、亜鉛、テルル、硫黄、窒素、シリコン、炭素、酸素のうちの少なくとも2つを含むから、発光層の発光波長を赤外領域から近紫外領域までの広い範囲から選択することできる。
【0052】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記透過性半導体層の厚みが70μm以上である。
【0053】
上記実施形態の半導体発光素子によれば、上記透過性半導体層の厚みが70μm以上であるから、透過性半導体層を形成するための例えば透過性半導体基板を除去しても、透過性半導体層のみで強度を保つことができる。
【0054】
また、上記透過性半導体基板が高濃度であれば、透過性半導体基板を完全除去することで光の吸収を最低限に抑え光取り出し効率が良い素子を作製することができる。
【0055】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記透過性半導体層上に形成され、上記発光層からの光を透過する透過性半導体基板を備え、
上記透過性半導体層の導電型は上記透過性半導体基板の導電型と異なる。
【0056】
つまり、上記実施形態の半導体発光素子では、上記透過性半導体層の導電型は第1導電型であり、かつ、上記透過性半導体基板の導電型が第2導電型である、または、上記透過性半導体層の導電型は第2導電型であり、かつ、上記透過性半導体基板の導電型が第1導電型である。
【0057】
上記実施形態の半導体発光素子によれば、透過性半導体基板の導電型をp型・n型・ノンドープ等選択肢が拡がれば、製造コストが安い導電型の基板を透過性半導体基板として用いることが可能になるメリットがある。この際、上記製造コストが安い導電型の基板がたとえ透過性半導体層と逆極性の成長基板であったとしても、素子化のプロセスでその基板は除去され無くなるので問題はない。
【0058】
本発明の半導体発光素子の製造方法は、
第1導電型の半導体基板上に、第1導電型の半導体層、発光層及び第2導電型の半導体層を積層して、上記第1導電型の半導体基板、第1導電型の半導体層、発光層及び第2導電型の半導体層からなる第1のウエハを作製する工程と、
上記発光層からの光を透過する透過性半導体基板上に、上記発光層からの光を透過する透過性半導体層を積層して、上記透過性半導体基板と上記透過性半導体層とからなる第2のウエハを作製する工程と、
上記透過性半導体層が上記第2導電型の半導体層に対向するように、上記第1のウエハ上に上記第2のウエハを載せて、上記第2のウエハを上記第1のウエハへ向けて加圧しつつ、上記第1,第2のウエハを加熱することにより、上記第2のウエハを上記第1のウエハに接合した後、上記第1導電型の半導体基板を除去する工程と
を備え、
上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が上記透過性半導体層のキャリア濃度よりも大きいことを特徴としている。
【0059】
上記構成の半導体発光素子の製造方法によれば、上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が透過性半導体層のキャリア濃度よりも大きいことによって、透過性半導体層から第2導電型の半導体層へのキャリアの拡散が抑制されるから、透過性半導体層の発光層側の表面においてドーパント原子の偏析が抑えられ、透過性半導体層の光透過率が低下するのを防ぐことができる。
【0060】
また、上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が透過性半導体層のキャリア濃度よりも大きいから、つまり、透過性半導体層のキャリア濃度が第2導電型の半導体層のキャリア濃度よりも低いから、透過性半導体層内においてフリーキャリアによる光の吸収が減り、発光効率を高めることができる。
【0061】
また、仮に、上記透過性半導体基板のキャリア濃度が比較的高くても、透過性半導体基板と第2導電型の半導体層との間にある透過性半導体層のキャリア濃度が第2導電型の半導体層のキャリア濃度よりも低いから、発光効率の低下を防ぐことができる。
【0062】
したがって、上記半導体発光素子の発光効率の低下を防ぐために、透過性半導体基板のキャリア濃度を限定しなくてもよいから、透過性半導体基板の収率が下がらず、製造コストを低減できる。
【0063】
また、上記透過性半導体基板は導電型を選ばないので、より安価な半導体基板を透過性半導体基板として用いることができる。
【0064】
上記透過性半導体層は、第2導電型の半導体層に直接貼り付けてもよいし、接着剤・金属・酸化物・窒化物などを介して、第2導電型の半導体層に間接的に貼り付けてもよい。
【0065】
言うまでもないが、上記接着剤・金属・酸化物・窒化物などは、少なくとも一部が発光層からの光を透過するものである。
【0066】
また、上記透過性半導体層と第2導電型の半導体層との間に設ける層の数は単数であっても複数であってもよい。
【0067】
上記透過性半導体層の厚みは、半導体発光素子の材料や製造プロセスで最適化される。
【0068】
一実施形態の半導体発光素子の製造方法では、
上記第2のウエハを上記第1のウエハに接合した後に、上記透過性半導体基板を除去する。
【0069】
一実施形態の半導体発光素子の製造方法では、
上記透過性半導体層は液相エピタキシャル法またはCVD(化学気相堆積)法で作製する。
【0070】
上記実施形態の半導体発光素子の製造方法によれば、上記透過性半導体層は液相エピタキシャル法またはCVD法で作製するから、厚い半導体層を形成するのに適している。
【0071】
一実施形態の半導体発光素子の製造方法では、
上記透過性半導体層はMOCVD(有機金属化学気相堆積)法で作製される。
【0072】
上記実施形態の半導体発光素子の製造方法によれば、上記透過性半導体層はMOCVD法で作製されるから、透過性半導体層のキャリア濃度を制御しやすいので、安定した特性の素子を得ることができる。
【発明の効果】
【0073】
本発明の半導体発光素子によれば、上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が透過性半導体層のキャリア濃度よりも大きいことによって、透過性半導体層から第2導電型の半導体層へのキャリアの拡散が抑制されるから、透過性半導体層の発光層側の表面においてドーパント原子の偏析が抑えられ、透過性半導体層の光透過率が低下するのを防ぐことができる。
【0074】
また、上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が透過性半導体層のキャリア濃度よりも大きいから、つまり、透過性半導体層のキャリア濃度が第2導電型の半導体層のキャリア濃度よりも低いから、透過性半導体層内においてフリーキャリアによる光の吸収が減り、発光効率を高めることができる。
【0075】
また、仮に、上記透過性半導体層を形成するための例えば透過性半導体基板のキャリア濃度が比較的高くても、透過性半導体基板と第2導電型の半導体層との間にある透過性半導体層のキャリア濃度が第2導電型の半導体層のキャリア濃度よりも低いから、発光効率の低下を防ぐことができる。
【0076】
したがって、上記半導体発光素子の発光効率の低下を防ぐために、透過性半導体基板のキャリア濃度を限定しなくてもよいから、透過性半導体基板の収率が下がらず、製造コストを低減できる。
【0077】
上記透過性半導体層は、第2導電型の半導体層に直接貼り付けてもよいし、接着剤・金属・酸化物・窒化物などを介して、第2導電型の半導体層に間接的に貼り付けてもよい。
【0078】
言うまでもないが、上記接着剤・金属・酸化物・窒化物などは、少なくとも一部が発光層からの光を透過するものである。
【0079】
また、上記透過性半導体層と第2導電型の半導体層との間に設ける層の数は単数であっても複数であってもよい。
【0080】
本発明の半導体発光素子の製造方法によれば、上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が透過性半導体層のキャリア濃度よりも大きいことによって、透過性半導体層から第2導電型の半導体層へのキャリアの拡散が抑制されるから、透過性半導体層の発光層側の表面においてドーパント原子の偏析が抑えられ、透過性半導体層の光透過率が低下するのを防ぐことができる。
【0081】
また、上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が透過性半導体層のキャリア濃度よりも大きいから、つまり、透過性半導体層のキャリア濃度が第2導電型の半導体層のキャリア濃度よりも低いから、透過性半導体層内においてフリーキャリアによる光の吸収が減り、発光効率を高めることができる。
【0082】
また、仮に、上記透過性半導体基板のキャリア濃度が比較的高くても、透過性半導体基板と第2導電型の半導体層との間にある透過性半導体層のキャリア濃度が第2導電型の半導体層のキャリア濃度よりも低いから、発光効率の低下を防ぐことができる。
【0083】
したがって、上記半導体発光素子の発光効率の低下を防ぐために、透過性半導体基板のキャリア濃度を限定しなくてもよいから、透過性半導体基板の収率が下がらず、製造コストを低減できる。
【0084】
上記透過性半導体層は、第2導電型の半導体層に直接貼り付けてもよいし、接着剤・金属・酸化物・窒化物などを介して、第2導電型の半導体層に間接的に貼り付けてもよい。
【0085】
言うまでもないが、上記接着剤・金属・酸化物・窒化物などは、少なくとも一部が発光層からの光を透過するものである。
【0086】
また、上記透過性半導体層と第2導電型の半導体層との間に設ける層の数は単数であっても複数であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0087】
以下、本発明の半導体発光素子を図示の実施の形態で説明する。
【0088】
(第1実施形態)
図6Aに、本発明の第1実施形態のLEDの概略断面図です。
【0089】
上記LEDは、赤色の発光波長となる4元系のAlGaInP活性層4を備えている。このAlGaInP活性層4が発光層の一例である。
【0090】
また、上記LEDは、AlGaInP活性層4上に、n型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2及びn型Al0.5In0.5Pクラッド層3を備えている一方、AlGaInP活性層4下に、p型Al0.5In0.5Pクラッド層5、p型GaInP中間層6、p型GaPコンタクト層7、p型GaP透光性半導体層8及びp型GaP透光性基板9を備えている。このn型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2は第1導電型の半導体層の一例であり、p型GaInP中間層6は中間層の一例であり、p型GaPコンタクト層7は第2導電型の半導体層の一例であり、p型GaP透光性半導体層8は透光性半導体層の一例であり、p型GaP透光性基板9は透光性半導体基板の一例である。
【0091】
上記p型GaP透光性半導体層8及びp型GaP透光性基板9はp型GaPコンタクト層7に貼り付けられたものである。
【0092】
上記n型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2上には電極11が形成されている一方、p型GaP透光性基板9下には電極10が形成されている。上記電極11はn型GaAs基板1を除去した後、露出したn型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2の表面に形成される。
【0093】
以下、上記LEDの製造方法について説明する。
【0094】
先ず、MOCVD法により、図7Aに示すように、上記n型GaAs基板1上に、n型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2、n型Al0.5In0.5Pクラッド層3、AlGaInP活性層4、p型Al0.5In0.5Pクラッド層5、p型GaInP中間層6及びp型GaPコンタクト層7をこの順で積層してなるLED構造ウエハ20を作成する。このLED構造ウエハ20が第1のウエハの一例である。
【0095】
上記AlGaInP活性層4は量子井戸構造を有している。より詳しくは、上記AlGaInP活性層4は(Al0.05Ga0.95)0.5In0.5P井戸層と(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pバリア層とを交互に積層することで形成されている。そして、上記井戸層と上記バリア層とのペア数は10ペアとなっている。
【0096】
上記基板または各層の厚みは、n型GaAs基板1:250μm、n型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2:5.0μm、n型Al0.5In0.5Pクラッド層3:1.0μm、AlGaInP活性層4:0.5μm、p型Al0.5In0.5Pクラッド層5:1.0μm、p型GaInP中間層6:1.0μm、p型GaPコンタクト層7:4.0μmである。
【0097】
上記基板または各層において、n型ドーパントとしてSiを用いる一方、p型ドーパントとしてはZnを用いている。
【0098】
上記基板または各層のキャリア濃度は、n型GaAs基板1:1.0×1018cm−3、n型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2:1.0×1018cm−3、n型AlGaInPクラッド層3:5×1017cm−3、AlGaInP活性層4:ノンドープ、p型AlGaInPクラッド層5:5×1017cm−3、p型GaInP中間層6:1.0×1018cm−3、p型GaPコンタクト層7:2.0×1018cm−3とした。
【0099】
次に、上記LED構造ウエハ20のエピタキシャル面に、ハーフダイシングにより所定のピッチでハーフダイシング溝を形成する。このとき、上記ハーフダイシング溝の深さとしては10〜50μm程度がLED構造ウェハ20の強度を維持する点で適当である。
【0100】
次に、図7Bに示すように、上記p型GaP透光性基板9上に、液相エピタキシャル成長法によりp型GaPエピタキシャル層を10μm以上積層して、p型GaP透光性半導体層8を形成する。つまり、上記p型GaP透光性基板9とp型GaP透光性半導体層8とからなる透光性ウエハ30を作製する。この透光性ウエハ30が第2のウエハの一例である。
【0101】
上記p型GaP透光性半導体層8の厚みは100μmであり、p型GaP透光性基板9の厚みは280μmである。
【0102】
上記p型GaP透光性半導体層8のキャリア濃度は5.0×1017cm−3であり、p型GaP透光性基板9のキャリア濃度は5×1018cm−3である。
【0103】
次に、図8に示す治具50を用いて、上記p型GaP透光性半導体層8がp型GaPコンタクト層7に接触するように、透光性ウエハ30をLED構造ウエハ20に直接接合する。
【0104】
上記治具50は石英からなり、ウエハを支持する下台51と、p型GaP透光性基板9の図8において上側の面を覆う押さえ板52と、所定の大きさの力を受けて押さえ板52を押圧する押圧部53とを有している。
【0105】
上記押圧部53は、正面から見て概略コ字状を有する枠体54によって上下方向に案内されるようになっている。上記枠体54は下台51に係合して、この下台51と押圧部53との間に位置する押さえ板52に力を適切に伝達するようになっている。
【0106】
上記下台51とLED構造ウエハ20との間にはカーボンシート24を配置すると共に、押さえ板52と透光性ウエハ30との間にはカーボンシート25,PBN(熱分解チッ化ホウ素:パイロリティックボロンナイトライド)板29を配置する。
【0107】
このような治具50を用いて、p型GaP透光性半導体層8をp型GaPコンタクト層7に接触させ、押圧部53に例えば0.3〜0.8N・mの力を加えて、p型GaPコンタクト層7とp型GaP透光性半導体層8との接触面に圧縮力を作用させる。この状態で、上記LED構造ウエハ20に透光性ウエハ30を、治具50と共に加熱炉にセットして、水素雰囲気下において800℃前後で30分加熱する。そうすると、上記透光性ウエハ30がLED構造ウエハ20に直接接合する。
【0108】
次に、上記LED構造ウエハ20及び透光性ウエハ30を冷却した後、加熱炉から取り出して、アンモニア水と過酸化水素と水との混合液により、n型GaAs基板1を溶解除去する。
【0109】
次に、上記p型GaP透光性基板9の図8において下側の面にp型用電極10を形成すると共に、n型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2の図8において上側の面にn型用電極11を形成した後、上記ハーフダイシング溝に沿ってダイシングし、チップ分割を行うと、図8に示すようなLEDが得られる。
【0110】
ここでは、上記電極10の材料としてAnBe/Auを選択し、電極11の材料としてAuSi/Auを選択し、これらの材料を積層してフォトリソグラフィ法、ウェットエッチングにより任意の形状に加工することにより、電極10,11で形成している。
【0111】
以上のようにして得たLEDによれば、上記p型GaPコンタクト層7のキャリア濃度がp型GaP透光性半導体層8のキャリア濃度よりも大きいことによって、p型GaP透光性半導体層8からp型GaPコンタクト層7へのキャリアの拡散が抑制されるから、p型GaP透光性半導体層8のAlGaInP活性層4側の表面においてドーパント原子の偏析が抑えられ、p型GaP透光性半導体層8の光透過率が低下するのを防ぐことができる。
【0112】
また、上記p型GaP透光性半導体層8内においてフリーキャリアによる光の吸収が減り、発光効率を高めることができる。
【0113】
また、仮に、上記p型GaP透光性基板9のキャリア濃度が比較的高くても、p型GaP透光性基板9とp型GaPコンタクト層7との間にあるp型GaP透光性半導体層8のキャリア濃度がp型GaPコンタクト層7のキャリア濃度よりも低いから、発光効率の低下を防ぐことができる。
【0114】
したがって、上記LEDの発光効率の低下を防ぐために、p型GaP透光性基板9のキャリア濃度を限定しなくてもよいから、p型GaP透光性基板9の収率が下がらず、製造コストを低減できる。
【0115】
上記第1実施形態では、n型GaAs基板1がAlGaInP発光層4からの光を吸収するため、n型GaAs基板1を除去したが、AlGaInP発光層4からの光を吸収しない材料からなるn型基板であれば除去しなくてもよい。
【0116】
上記第1実施形態では、キャリア濃度5.0×1017cm−3のp型GaP透光性半導体層8を用いていたが、本発明に用いるp型GaP透光性半導体層8のキャリア濃度は5.0×1017cm−3に限定されない。つまり、本発明には、キャリア濃度2.5×1018cm−3以下のp型GaP透光性半導体層を用いることができる。
【0117】
上記キャリア濃度2.5×1018cm−3以下のp型GaP透光性半導体層を用いる場合、p型GaP透光性半導体層のキャリア濃度が、5.0×1017cm−3〜8.0×1017cm−3の範囲内だと好ましい。
【0118】
上記第1実施形態では、キャリア濃度2.0×1018cm−3のp型GaPコンタクト層7を用いていたが、本発明に用いるp型GaPコンタクト層のキャリア濃度は2.0×1018cm−3に限定されない。つまり、本発明には、キャリア濃度5.0×1017cm−3〜5.0×1018cm−3のp型GaPコンタクト層を用いることができる。
【0119】
上記キャリア濃度5.0×1017cm−3〜5.0×1018cm−3のp型GaPコンタクト層を用いる場合でも、このp型GaPコンタクト層のキャリア濃度は接触するp型GaP透光性半導体層のキャリア濃度よりも高くする。
【0120】
上記第1実施形態では、p型Al0.5In0.5Pクラッド層5とp型GaPコンタクト層7との間にp型GaInP中間層6を設けていたが、p型Al0.5In0.5Pクラッド層5とp型GaPコンタクト層7との間に何も設けず、p型Al0.5In0.5Pクラッド層5がp型GaPコンタクト層7に接触するようにしてもよい。
【0121】
上記第1実施形態では、p型GaP透光性半導体層8の厚みは100μmであったが、本発明に用いるp型GaP透光性半導体層の厚みは100μmに限定されない。つまり、本発明には、厚み0.5μm以上であるp型GaP透光性半導体層を用いることができる。
【0122】
上記p型GaP透光性半導体層8の厚みが100μmと厚いので、LED構造ウェハ20に透光性ウエハ30を直接接合した後、p型GaP透光性基板9を完全に除去して、図6Bに示すようなLEDを作成してもよい。
【0123】
このように、上記p型GaP透光性基板9を除去することによって、光の吸収を最低限に抑え、光取り出し効率を高めることができる。
【0124】
また、上記p型GaP透光性基板9を完全に除去できるのは、p型GaP透光性半導体層8の厚みが70μm以上のときである。これは、上記p型GaP透光性半導体層8の厚みが70μm以上であると、p型GaP透光性基板9を完全に除去しても、p型GaP透光性半導体層8のみで強度を保つことができるからである。
【0125】
上記第1実施形態では、p型GaP透光性基板9の厚みは280であったが、本発明に用いるp型GaP透光性基板の厚みは280μmに限定されない。
【0126】
上記第1実施形態において、n型GaAs基板1とn型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2との間に何も設けていなかったが、n型GaAs基板1とn型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2との間にバッファ層を設けてもよい。
【0127】
(第2実施形態)
図9に、本発明の第2実施形態のLEDの概略断面図である。図9において、図6に示した上記第1実施形態の構成部と同一材料かつ同一導電型の構成部は、図6における構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。したがって、図6と図9とにおいて、同一参照番号を付していても、形状が異なるものがある。
【0128】
上記LEDは、厚み70μmのn型GaP透光性半導体層108と厚み200μmのn型GaP透光性基板109を備えている点が上記第1実施形態とは異なっている。このn型GaP透光性半導体層108は透光性半導体層の一例であり、n型GaP透光性基板109は透光性半導体基板の一例である。
【0129】
上記n型GaP透光性基板109はAlGaInP発光層5からの光を透過する。つまり、上記n型GaP透光性基板109は、AlGaInP発光層5の発光波長に対して透明な半導体材料からなっている。
【0130】
上記n型GaP透光性半導体層108のp型GaInP中間層6側の表面の一部が露出しており、この一部上には電極10が形成されている。また、上記n型GaP透光性半導体層108の厚みはn型GaP透光性基板109が高濃度である場合は厚ければ厚い程光の吸収されないので発光効率が高くなる。このn型GaP透光性半導体層108は上記第1実施形態のp型GaP透光性半導体層8と形状および導電型のみが異なるだけである。
【0131】
上記構成のLEDも、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができると共に、n型GaP透光性半導体層108とn型GaP透光性基板109を備えているから、p型GaPコンタクト層7の一部を露出させ、この一部上に電極10を形成することができる。
【0132】
このように、上記一部上に電極を形成すると共に、n型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2上に電極11を形成することにより、ワイヤボンディングを電極10,11に簡単に行うことができる。
【0133】
上記LEDの製造方法では、n型GaAs基板1(図6参照)を除去した後、エピタキシャル層の一部をエッチング除去し、p型GaPコンタクト層8の一部を露出させて、この露出したp型GaPコンタクト層8にp型用電極10に形成する点が第1実施形態とは異なっている。
【0134】
上記第2実施形態では、n型GaP透光性基板109を用いていたが、n型GaP透光性基板109と同形状であってノンドープの透光性基板を用いてもよいし、n型GaP透光性基板109と同形状であってp型透光性基板を用いてもよい。
【0135】
上記第2実施形態では、上記第1実施形態と同様の貼り付ける手法を用いている。
【0136】
上記第1,第2実施形態において各層および基板の導電型を逆にしてもよい。
【0137】
上記第1実施形態と上記第2実施形態とを適宜組み合わせて本発明としてもよい。
【0138】
上記第1,第2実施形態ではLEDについて説明したが、本発明がLEDに限定されないのは言うまでもない。
【0139】
本発明は、4元系のAlGaInP発光層を有する発光ダイオードに限ったものではなく、半導体結晶によりなる発光層を有する半導体発光素子であれば適用できることは言うまでもない。
【0140】
また、本発明は、上記第1,第2実施形態の材料・手法に限定されるものではなく、あらゆる材料・手法を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】図1は従来のLEDの概略断面図である。
【図2】図2は上記従来のLEDの問題を解決できるLEDの概念図である。
【図3】図3は本発明の一実施の形態のLEDの概念図である。
【図4A】図4Aは低キャリア濃度のGaP半導体層の貼付界面における亜鉛濃度の深さ方向の分布を示すグラフである。
【図4B】図4Bは高キャリア濃度のGaP半導体層の貼付界面における亜鉛濃度の深さ方向の分布を示すグラフである。
【図5】図5はGaP基板への入射する光の波長とGaP基板の光透過率との関係を示すグラフである。
【図6A】図6Aは本発明の第1実施形態のLEDの概略断面図である。
【図6B】図6Bは上記第1実施形態のLEDの変形例の概略断面図である。
【図7A】図7Aは上記第1実施形態のLEDの製造方法の一工程図である。
【図7B】図7Bは上記第1実施形態のLEDの製造方法の一工程図である。
【図8】図8は本発明の第1,第2実施形態のLEDの製造に用いる治具の概略断面図である。
【図9】図9は本発明の第2実施形態のLEDの概略断面図である。
【符号の説明】
【0142】
2 n型Al0.6Ga0.4As電流拡散層
4 AlGaInP活性層
6 p型GaInP中間層
7 p型GaPコンタクト層
8 p型GaP透光性半導体層
9 p型GaP透光性基板
20 LED構造ウエハ20
30 透光性ウエハ
108 n型GaP透光性半導体層
109 n型GaP透光性基板
第1導電型の半導体層と、
401 第1導電型の半導体層
402 発光層
403 第2導電型の半導体層
404 透過性半導体層
405 透過性半導体基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば通信装置、道路・線路・案内表示板装置、広告表示装置、携帯電話、ディスプレイのバックライト、照明器具等に使用される発光体である半導体発光素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体発光素子の一つである半導体発光ダイオード(以下、「LED」と言う。)の製造技術が急速に進歩し、特に青色のLEDが開発されて以降は、光の3原色のLEDが揃ったことから、その3原色のLEDの組み合わせによりあらゆる波長の光を作り出すことが可能となった。その結果、LEDの適用範囲は急速に広まっており、中でも照明の分野では環境・エネルギー問題への意識の向上と相まって電球、蛍光灯に変わる自然光・白色光源として注目されているところである。
【0003】
しかしながら、現状のLEDは電球や蛍光灯と比較して投入されるエネルギーに対する光の変換効率が劣っており、より変換効率の高い、より輝度の高いLEDを目指した研究開発が波長を問わず進められている。
【0004】
一昔前までは高輝度化技術開発の中心はエピタキシャル成長技術にあったが、その技術が成熟した近年ではプロセス技術を中心とした開発へと移行しつつある。
【0005】
プロセス技術による輝度の向上とは外部量子効率(内部量子効率×外部取出し効率)の向上であり、素子の形状微細加工技術、反射膜、透明電極等が挙げられる。これらの中でもウェハボンディングによる手法は赤色、青色発光のLEDにおいていくつかの手法が確立されており、高輝度タイプのLEDが発明され市場に登場してきた。
【0006】
ウェハボンディングによる手法の1つに、発光層の出射光を透過する基板、例えばガラスやサファイアやGaP等をエピタキシャル層に直接貼り付ける手法がある。
【0007】
図1に、その手法が用いられたLEDの概略断面図を示す。
【0008】
図1において、201はウィンド層、202,204はエピタキシャル層、203は発光層、205は透明基板、206,207は電極である。
【0009】
図1のLEDでは、発光層203から出射された光が矢印で示すように透明基板205で吸収されずに透過する。
【0010】
特に、上記透明基板205をエピタキシャル層204に直接貼り付ける手法は、発光層203から出射された光が再び発光層203を通過すること無く、つまり、発光層203から出射された光が発光層203に吸収されること無く、LEDのほぼ全面より光を外部へ取り出すことが可能であり、より変換効率(取り出し効率)の高いLEDの開発が可能である。
【0011】
従来、透明基板をエピタキシャル層に貼り付ける手法としては、特許第3230638号公報(特許文献1)に記載されたものがある。この特許第3230638号公報では、4元系のLEDを作製するために、AlGaInP(アルミニウム・ガリウム・インジウム・リン)系の半導体層にGaP(ガリウム・リン)透明基板を直接貼り付けている。
【0012】
ところが、上述したような透明基板をエピタキシャル層に直接貼り付ける手法においては、基板濃度が高くなると、透明基板内でフリーキャリアによる光の吸収が起こり、充分に発光光が取り出せない問題があることが判った。この問題を解決するために、ドーパント原子の貼付界面への偏析を基板濃度低で抑えて、光吸収層の形成を防止し発光効率を低下させない方法や、透明基板のキャリア濃度減で、透明基板内でのフリーキャリアによる光の吸収を減らして発光効率を低下させない方法が、提案されている。
【0013】
これらの方法であれば、図2に示すように、ドーパント原子が透明基板304の貼付界面に偏析するのを抑えて、透明基板304の貼付界面における光透過率が低下するのを防ぐことができる。
【0014】
さらに、上記方法であれば、透明基板304のキャリア濃度が高くならないから、透明基板304内においてフリーキャリアによる光の吸収が減り、発光効率を低下させない。
【0015】
しかしながら、上記方法のように、透明基板304のキャリア濃度を限定することは、透明基板304の収率(歩留まり)を下げることになり、製造コストが上昇するという問題が生じてしまう。
【0016】
また、図2において、301はエピタキシャル層、302は発光層である。
【特許文献1】特許第3230638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで、本発明の課題は、発光効率を高めることができて、しかも製造コストを低減できる半導体発光素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明の半導体発光素子は、
第1導電型の半導体層と、
上記第1導電型の半導体層上に形成された発光層と、
上記発光層上に形成された第2導電型の半導体層と、
上記第2導電型の半導体層上に形成され、上記発光層からの光を透過する透過性半導体層と
を備え、
上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が上記透過性半導体層のキャリア濃度よりも大きいことを特徴としている。
【0019】
本明細書において、第1導電型とは、p型またはn型を意味する。また、第2導電型とは、第1導電型がp型の場合はn型、n型の場合はp型を意味する。
【0020】
上記構成の半導体発光素子によれば、図3に示すように、上記第2導電型の半導体層403のキャリア濃度が透過性半導体層404のキャリア濃度よりも大きいことによって、透過性半導体層404から第2導電型の半導体層403へのキャリアの拡散が抑制されるから、透過性半導体層404の発光層402側のドーパント原子の偏析が抑えられ、透過性半導体層404の光透過率が低下するのを防ぐことができる。
【0021】
また、仮に、上記透過性半導体層404を形成するための透過性半導体基板405のキャリア濃度が比較的高くても、透過性半導体基板405と第2導電型の半導体層403との間にある透過性半導体層404のキャリア濃度を低く抑制することで透過性半導体層404内におけるフリーキャリアによる光の吸収が減り、発光効率の低下を防ぐことができる。
【0022】
したがって、上記半導体発光素子の発光効率の低下を防ぐために、透過性半導体基板405のキャリア濃度を限定しなくてもよいから、透過性半導体基板405の収率が下がらず、製造コストを低減できる。
【0023】
なお、上記透過性半導体基板405は、第1導電型の半導体層401、発光層402、第2導電型の半導体層403および透過性半導体層404を形成した後、除去してもよい。つまり、本発明の半導体発光素子は、透過性半導体基板405を備えていてもよいし、透過性半導体基板405を備えてなくてもよい。
【0024】
上記透過性半導体層404は、第2導電型の半導体層403に直接貼り付けてもよいし、接着剤・金属・酸化物・窒化物などを介して、第2導電型の半導体層403に間接的に貼り付けてもよい。
【0025】
上記透過性半導体層404を、接着剤・金属・酸化物・窒化物などを介して、第2導電型の半導体層403に間接的に貼り付けた場合も、フリーキャリアによる光吸収を抑制することができる。
【0026】
言うまでもないが、上記接着剤・金属・酸化物・窒化物などは、少なくとも一部が発光層402からの光を透過するものである。
【0027】
また、上記透過性半導体層404と第2導電型の半導体層403との間に設ける層の数は単数であっても複数であってもよい。
【0028】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記透過性半導体層上に形成され、上記発光層からの光を透過する透過性半導体基板を備え、
上記透過性半導体層のキャリア濃度が上記透過性半導体基板のキャリア濃度以上である。
【0029】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記透過性半導体層のキャリア濃度が2.5×1018cm−3以下である。
【0030】
上記実施形態の半導体発光素子によれば、上記透過性半導体層のキャリア濃度が2.5×1018cm−3以下であるから、フリーキャリアの光吸収を低く抑えることができる。
【0031】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記透過性半導体層のキャリア濃度が2.5×1017cm−3〜8.0×1017cm−3の範囲内である。
【0032】
上記実施形態の半導体発光素子によれば、上記透過性半導体層のキャリア濃度が2.5×1017cm−3〜8.0×1017cm−3の範囲内であるから、上述した透過性半導体層の光透過率の低下の防止効果により、発光効率の向上効果を確実に得ることができる。
【0033】
なお、上記透過性半導体層のキャリア濃度の下限は、素子化のプロセスで電極形成の時にオーミックコンタクトが取れる濃度で決まる。
【0034】
図4Aに、上記透過性半導体層の一例であるキャリア濃度5.0×1017cm−3のp型GaP半導体層についての実験結果を示す。また、図4Bに、上記透過性半導体層の一例であるキャリア濃度1.5×1018cm−3のp型GaP半導体層についての実験結果を示す。なお、図4A,図4Bのp型GaP半導体層は、p型GaInP半導体層に貼り付けられ、亜鉛ドープされている。
【0035】
図4A,図4Bから判るように、p型GaP半導体層のキャリア濃度を高くするよりも、p型GaP半導体層のキャリア濃度を低くした方が、p型GaP半導体層とp型GaInP半導体層との貼付界面に偏析するZnを低減させることができる。すなわち、上記貼付界面での吸収を低減させることができるのである。
【0036】
図5に、上記p型GaP半導体層の単体での光透過率を示す。ここでは、上記p型GaP半導体層に入射する光の各界面での反射を考慮していないため、p型GaP半導体層のバンドギャップより低エネルギー側の光透過率は50%前後の値となる(実際の光透過率はほぼ90%以上)。
【0037】
図5から判るように、p型GaP半導体層に入射する光の波長が約550nm〜700nmの範囲内においては、p型GaP半導体層のキャリア濃度を高くするよりも、p型GaP半導体層のキャリア濃度を低くした方が、光透過率を大きく向上させることができる。
【0038】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記発光層と上記第2導電型の半導体層との間に形成された第2導電型の中間層を備え、
上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が上記第2導電型の中間層のキャリア濃度よりも大きい。
【0039】
上記実施形態の半導体発光素子によれば、上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が第2導電型の中間層のキャリア濃度よりも大きいから、第2導電型の半導体層よりも発光層に近い第2導電型の中間層のキャリア濃度が低濃度になり、発光層へのキャリアの拡散を防ぐことができる。
【0040】
さらに、上記中間層と発光層との間にキャリア拡散防止層を設けてもよく、キャリア拡散防止層を設けた場合、発光層へのキャリアの拡散を防ぐ効果を高めることができる。
【0041】
上記キャリア拡散防止層のキャリア濃度は中間層のキャリア濃度より小さくしてもよい。
【0042】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記透過性半導体層の厚みが0.5μm以上である。
【0043】
上記実施形態の半導体発光素子によれば、上記透過性半導体層の厚みが0.5μm以上あるから、透過性半導体層およびこれを形成するための例えば透過性半導体基板を高温加熱処理しても、透過性半導体基板のドーパント原子が透過性半導体層を通過するのを防ぐことができる。
【0044】
実際には、上記透過性半導体層の厚み最小値は、透過性半導体基板および透過性半導体層に行う熱処理の温度や時間、透過性半導体基板および透過性半導体層のキャリア濃度で決まる。
【0045】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記透過性半導体層上に形成され、上記発光層からの光を透過する透過性半導体基板を備え、
上記透過性半導体層と上記透過性半導体基板とのうちの少なくとも一方は第1導電型の半導体からなる。
【0046】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記透過性半導体層は第2導電型の半導体からなる。
【0047】
上記実施形態の半導体発光素子によれば、上記透過性半導体層は第2導電型の半導体からなるから、第2導電型の半導体層と同一極性になり、第2導電型の半導体層と電気的に接続することができる。
【0048】
したがって、上記発光層を発光させるための電極を透過性半導体層に形成することができる。
【0049】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記透過性半導体層上に形成され、上記発光層からの光を透過する透過性半導体基板を備え、
上記透過性半導体基板は第1導電型の半導体からなる。
【0050】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記第1導電型の半導体層、上記発光層及び上記第2導電型の半導体層は、それぞれ、ガリウム、アルミニウム、インジウム、リン、砒素、亜鉛、テルル、硫黄、窒素、シリコン、炭素、酸素のうちの少なくとも2つを含む。
【0051】
上記実施形態の半導体発光素子によれば、上記第1導電型の半導体層、上記発光層及び上記第2導電型の半導体層は、それぞれ、ガリウム、アルミニウム、インジウム、リン、砒素、亜鉛、テルル、硫黄、窒素、シリコン、炭素、酸素のうちの少なくとも2つを含むから、発光層の発光波長を赤外領域から近紫外領域までの広い範囲から選択することできる。
【0052】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記透過性半導体層の厚みが70μm以上である。
【0053】
上記実施形態の半導体発光素子によれば、上記透過性半導体層の厚みが70μm以上であるから、透過性半導体層を形成するための例えば透過性半導体基板を除去しても、透過性半導体層のみで強度を保つことができる。
【0054】
また、上記透過性半導体基板が高濃度であれば、透過性半導体基板を完全除去することで光の吸収を最低限に抑え光取り出し効率が良い素子を作製することができる。
【0055】
一実施形態の半導体発光素子では、
上記透過性半導体層上に形成され、上記発光層からの光を透過する透過性半導体基板を備え、
上記透過性半導体層の導電型は上記透過性半導体基板の導電型と異なる。
【0056】
つまり、上記実施形態の半導体発光素子では、上記透過性半導体層の導電型は第1導電型であり、かつ、上記透過性半導体基板の導電型が第2導電型である、または、上記透過性半導体層の導電型は第2導電型であり、かつ、上記透過性半導体基板の導電型が第1導電型である。
【0057】
上記実施形態の半導体発光素子によれば、透過性半導体基板の導電型をp型・n型・ノンドープ等選択肢が拡がれば、製造コストが安い導電型の基板を透過性半導体基板として用いることが可能になるメリットがある。この際、上記製造コストが安い導電型の基板がたとえ透過性半導体層と逆極性の成長基板であったとしても、素子化のプロセスでその基板は除去され無くなるので問題はない。
【0058】
本発明の半導体発光素子の製造方法は、
第1導電型の半導体基板上に、第1導電型の半導体層、発光層及び第2導電型の半導体層を積層して、上記第1導電型の半導体基板、第1導電型の半導体層、発光層及び第2導電型の半導体層からなる第1のウエハを作製する工程と、
上記発光層からの光を透過する透過性半導体基板上に、上記発光層からの光を透過する透過性半導体層を積層して、上記透過性半導体基板と上記透過性半導体層とからなる第2のウエハを作製する工程と、
上記透過性半導体層が上記第2導電型の半導体層に対向するように、上記第1のウエハ上に上記第2のウエハを載せて、上記第2のウエハを上記第1のウエハへ向けて加圧しつつ、上記第1,第2のウエハを加熱することにより、上記第2のウエハを上記第1のウエハに接合した後、上記第1導電型の半導体基板を除去する工程と
を備え、
上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が上記透過性半導体層のキャリア濃度よりも大きいことを特徴としている。
【0059】
上記構成の半導体発光素子の製造方法によれば、上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が透過性半導体層のキャリア濃度よりも大きいことによって、透過性半導体層から第2導電型の半導体層へのキャリアの拡散が抑制されるから、透過性半導体層の発光層側の表面においてドーパント原子の偏析が抑えられ、透過性半導体層の光透過率が低下するのを防ぐことができる。
【0060】
また、上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が透過性半導体層のキャリア濃度よりも大きいから、つまり、透過性半導体層のキャリア濃度が第2導電型の半導体層のキャリア濃度よりも低いから、透過性半導体層内においてフリーキャリアによる光の吸収が減り、発光効率を高めることができる。
【0061】
また、仮に、上記透過性半導体基板のキャリア濃度が比較的高くても、透過性半導体基板と第2導電型の半導体層との間にある透過性半導体層のキャリア濃度が第2導電型の半導体層のキャリア濃度よりも低いから、発光効率の低下を防ぐことができる。
【0062】
したがって、上記半導体発光素子の発光効率の低下を防ぐために、透過性半導体基板のキャリア濃度を限定しなくてもよいから、透過性半導体基板の収率が下がらず、製造コストを低減できる。
【0063】
また、上記透過性半導体基板は導電型を選ばないので、より安価な半導体基板を透過性半導体基板として用いることができる。
【0064】
上記透過性半導体層は、第2導電型の半導体層に直接貼り付けてもよいし、接着剤・金属・酸化物・窒化物などを介して、第2導電型の半導体層に間接的に貼り付けてもよい。
【0065】
言うまでもないが、上記接着剤・金属・酸化物・窒化物などは、少なくとも一部が発光層からの光を透過するものである。
【0066】
また、上記透過性半導体層と第2導電型の半導体層との間に設ける層の数は単数であっても複数であってもよい。
【0067】
上記透過性半導体層の厚みは、半導体発光素子の材料や製造プロセスで最適化される。
【0068】
一実施形態の半導体発光素子の製造方法では、
上記第2のウエハを上記第1のウエハに接合した後に、上記透過性半導体基板を除去する。
【0069】
一実施形態の半導体発光素子の製造方法では、
上記透過性半導体層は液相エピタキシャル法またはCVD(化学気相堆積)法で作製する。
【0070】
上記実施形態の半導体発光素子の製造方法によれば、上記透過性半導体層は液相エピタキシャル法またはCVD法で作製するから、厚い半導体層を形成するのに適している。
【0071】
一実施形態の半導体発光素子の製造方法では、
上記透過性半導体層はMOCVD(有機金属化学気相堆積)法で作製される。
【0072】
上記実施形態の半導体発光素子の製造方法によれば、上記透過性半導体層はMOCVD法で作製されるから、透過性半導体層のキャリア濃度を制御しやすいので、安定した特性の素子を得ることができる。
【発明の効果】
【0073】
本発明の半導体発光素子によれば、上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が透過性半導体層のキャリア濃度よりも大きいことによって、透過性半導体層から第2導電型の半導体層へのキャリアの拡散が抑制されるから、透過性半導体層の発光層側の表面においてドーパント原子の偏析が抑えられ、透過性半導体層の光透過率が低下するのを防ぐことができる。
【0074】
また、上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が透過性半導体層のキャリア濃度よりも大きいから、つまり、透過性半導体層のキャリア濃度が第2導電型の半導体層のキャリア濃度よりも低いから、透過性半導体層内においてフリーキャリアによる光の吸収が減り、発光効率を高めることができる。
【0075】
また、仮に、上記透過性半導体層を形成するための例えば透過性半導体基板のキャリア濃度が比較的高くても、透過性半導体基板と第2導電型の半導体層との間にある透過性半導体層のキャリア濃度が第2導電型の半導体層のキャリア濃度よりも低いから、発光効率の低下を防ぐことができる。
【0076】
したがって、上記半導体発光素子の発光効率の低下を防ぐために、透過性半導体基板のキャリア濃度を限定しなくてもよいから、透過性半導体基板の収率が下がらず、製造コストを低減できる。
【0077】
上記透過性半導体層は、第2導電型の半導体層に直接貼り付けてもよいし、接着剤・金属・酸化物・窒化物などを介して、第2導電型の半導体層に間接的に貼り付けてもよい。
【0078】
言うまでもないが、上記接着剤・金属・酸化物・窒化物などは、少なくとも一部が発光層からの光を透過するものである。
【0079】
また、上記透過性半導体層と第2導電型の半導体層との間に設ける層の数は単数であっても複数であってもよい。
【0080】
本発明の半導体発光素子の製造方法によれば、上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が透過性半導体層のキャリア濃度よりも大きいことによって、透過性半導体層から第2導電型の半導体層へのキャリアの拡散が抑制されるから、透過性半導体層の発光層側の表面においてドーパント原子の偏析が抑えられ、透過性半導体層の光透過率が低下するのを防ぐことができる。
【0081】
また、上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が透過性半導体層のキャリア濃度よりも大きいから、つまり、透過性半導体層のキャリア濃度が第2導電型の半導体層のキャリア濃度よりも低いから、透過性半導体層内においてフリーキャリアによる光の吸収が減り、発光効率を高めることができる。
【0082】
また、仮に、上記透過性半導体基板のキャリア濃度が比較的高くても、透過性半導体基板と第2導電型の半導体層との間にある透過性半導体層のキャリア濃度が第2導電型の半導体層のキャリア濃度よりも低いから、発光効率の低下を防ぐことができる。
【0083】
したがって、上記半導体発光素子の発光効率の低下を防ぐために、透過性半導体基板のキャリア濃度を限定しなくてもよいから、透過性半導体基板の収率が下がらず、製造コストを低減できる。
【0084】
上記透過性半導体層は、第2導電型の半導体層に直接貼り付けてもよいし、接着剤・金属・酸化物・窒化物などを介して、第2導電型の半導体層に間接的に貼り付けてもよい。
【0085】
言うまでもないが、上記接着剤・金属・酸化物・窒化物などは、少なくとも一部が発光層からの光を透過するものである。
【0086】
また、上記透過性半導体層と第2導電型の半導体層との間に設ける層の数は単数であっても複数であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0087】
以下、本発明の半導体発光素子を図示の実施の形態で説明する。
【0088】
(第1実施形態)
図6Aに、本発明の第1実施形態のLEDの概略断面図です。
【0089】
上記LEDは、赤色の発光波長となる4元系のAlGaInP活性層4を備えている。このAlGaInP活性層4が発光層の一例である。
【0090】
また、上記LEDは、AlGaInP活性層4上に、n型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2及びn型Al0.5In0.5Pクラッド層3を備えている一方、AlGaInP活性層4下に、p型Al0.5In0.5Pクラッド層5、p型GaInP中間層6、p型GaPコンタクト層7、p型GaP透光性半導体層8及びp型GaP透光性基板9を備えている。このn型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2は第1導電型の半導体層の一例であり、p型GaInP中間層6は中間層の一例であり、p型GaPコンタクト層7は第2導電型の半導体層の一例であり、p型GaP透光性半導体層8は透光性半導体層の一例であり、p型GaP透光性基板9は透光性半導体基板の一例である。
【0091】
上記p型GaP透光性半導体層8及びp型GaP透光性基板9はp型GaPコンタクト層7に貼り付けられたものである。
【0092】
上記n型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2上には電極11が形成されている一方、p型GaP透光性基板9下には電極10が形成されている。上記電極11はn型GaAs基板1を除去した後、露出したn型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2の表面に形成される。
【0093】
以下、上記LEDの製造方法について説明する。
【0094】
先ず、MOCVD法により、図7Aに示すように、上記n型GaAs基板1上に、n型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2、n型Al0.5In0.5Pクラッド層3、AlGaInP活性層4、p型Al0.5In0.5Pクラッド層5、p型GaInP中間層6及びp型GaPコンタクト層7をこの順で積層してなるLED構造ウエハ20を作成する。このLED構造ウエハ20が第1のウエハの一例である。
【0095】
上記AlGaInP活性層4は量子井戸構造を有している。より詳しくは、上記AlGaInP活性層4は(Al0.05Ga0.95)0.5In0.5P井戸層と(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pバリア層とを交互に積層することで形成されている。そして、上記井戸層と上記バリア層とのペア数は10ペアとなっている。
【0096】
上記基板または各層の厚みは、n型GaAs基板1:250μm、n型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2:5.0μm、n型Al0.5In0.5Pクラッド層3:1.0μm、AlGaInP活性層4:0.5μm、p型Al0.5In0.5Pクラッド層5:1.0μm、p型GaInP中間層6:1.0μm、p型GaPコンタクト層7:4.0μmである。
【0097】
上記基板または各層において、n型ドーパントとしてSiを用いる一方、p型ドーパントとしてはZnを用いている。
【0098】
上記基板または各層のキャリア濃度は、n型GaAs基板1:1.0×1018cm−3、n型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2:1.0×1018cm−3、n型AlGaInPクラッド層3:5×1017cm−3、AlGaInP活性層4:ノンドープ、p型AlGaInPクラッド層5:5×1017cm−3、p型GaInP中間層6:1.0×1018cm−3、p型GaPコンタクト層7:2.0×1018cm−3とした。
【0099】
次に、上記LED構造ウエハ20のエピタキシャル面に、ハーフダイシングにより所定のピッチでハーフダイシング溝を形成する。このとき、上記ハーフダイシング溝の深さとしては10〜50μm程度がLED構造ウェハ20の強度を維持する点で適当である。
【0100】
次に、図7Bに示すように、上記p型GaP透光性基板9上に、液相エピタキシャル成長法によりp型GaPエピタキシャル層を10μm以上積層して、p型GaP透光性半導体層8を形成する。つまり、上記p型GaP透光性基板9とp型GaP透光性半導体層8とからなる透光性ウエハ30を作製する。この透光性ウエハ30が第2のウエハの一例である。
【0101】
上記p型GaP透光性半導体層8の厚みは100μmであり、p型GaP透光性基板9の厚みは280μmである。
【0102】
上記p型GaP透光性半導体層8のキャリア濃度は5.0×1017cm−3であり、p型GaP透光性基板9のキャリア濃度は5×1018cm−3である。
【0103】
次に、図8に示す治具50を用いて、上記p型GaP透光性半導体層8がp型GaPコンタクト層7に接触するように、透光性ウエハ30をLED構造ウエハ20に直接接合する。
【0104】
上記治具50は石英からなり、ウエハを支持する下台51と、p型GaP透光性基板9の図8において上側の面を覆う押さえ板52と、所定の大きさの力を受けて押さえ板52を押圧する押圧部53とを有している。
【0105】
上記押圧部53は、正面から見て概略コ字状を有する枠体54によって上下方向に案内されるようになっている。上記枠体54は下台51に係合して、この下台51と押圧部53との間に位置する押さえ板52に力を適切に伝達するようになっている。
【0106】
上記下台51とLED構造ウエハ20との間にはカーボンシート24を配置すると共に、押さえ板52と透光性ウエハ30との間にはカーボンシート25,PBN(熱分解チッ化ホウ素:パイロリティックボロンナイトライド)板29を配置する。
【0107】
このような治具50を用いて、p型GaP透光性半導体層8をp型GaPコンタクト層7に接触させ、押圧部53に例えば0.3〜0.8N・mの力を加えて、p型GaPコンタクト層7とp型GaP透光性半導体層8との接触面に圧縮力を作用させる。この状態で、上記LED構造ウエハ20に透光性ウエハ30を、治具50と共に加熱炉にセットして、水素雰囲気下において800℃前後で30分加熱する。そうすると、上記透光性ウエハ30がLED構造ウエハ20に直接接合する。
【0108】
次に、上記LED構造ウエハ20及び透光性ウエハ30を冷却した後、加熱炉から取り出して、アンモニア水と過酸化水素と水との混合液により、n型GaAs基板1を溶解除去する。
【0109】
次に、上記p型GaP透光性基板9の図8において下側の面にp型用電極10を形成すると共に、n型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2の図8において上側の面にn型用電極11を形成した後、上記ハーフダイシング溝に沿ってダイシングし、チップ分割を行うと、図8に示すようなLEDが得られる。
【0110】
ここでは、上記電極10の材料としてAnBe/Auを選択し、電極11の材料としてAuSi/Auを選択し、これらの材料を積層してフォトリソグラフィ法、ウェットエッチングにより任意の形状に加工することにより、電極10,11で形成している。
【0111】
以上のようにして得たLEDによれば、上記p型GaPコンタクト層7のキャリア濃度がp型GaP透光性半導体層8のキャリア濃度よりも大きいことによって、p型GaP透光性半導体層8からp型GaPコンタクト層7へのキャリアの拡散が抑制されるから、p型GaP透光性半導体層8のAlGaInP活性層4側の表面においてドーパント原子の偏析が抑えられ、p型GaP透光性半導体層8の光透過率が低下するのを防ぐことができる。
【0112】
また、上記p型GaP透光性半導体層8内においてフリーキャリアによる光の吸収が減り、発光効率を高めることができる。
【0113】
また、仮に、上記p型GaP透光性基板9のキャリア濃度が比較的高くても、p型GaP透光性基板9とp型GaPコンタクト層7との間にあるp型GaP透光性半導体層8のキャリア濃度がp型GaPコンタクト層7のキャリア濃度よりも低いから、発光効率の低下を防ぐことができる。
【0114】
したがって、上記LEDの発光効率の低下を防ぐために、p型GaP透光性基板9のキャリア濃度を限定しなくてもよいから、p型GaP透光性基板9の収率が下がらず、製造コストを低減できる。
【0115】
上記第1実施形態では、n型GaAs基板1がAlGaInP発光層4からの光を吸収するため、n型GaAs基板1を除去したが、AlGaInP発光層4からの光を吸収しない材料からなるn型基板であれば除去しなくてもよい。
【0116】
上記第1実施形態では、キャリア濃度5.0×1017cm−3のp型GaP透光性半導体層8を用いていたが、本発明に用いるp型GaP透光性半導体層8のキャリア濃度は5.0×1017cm−3に限定されない。つまり、本発明には、キャリア濃度2.5×1018cm−3以下のp型GaP透光性半導体層を用いることができる。
【0117】
上記キャリア濃度2.5×1018cm−3以下のp型GaP透光性半導体層を用いる場合、p型GaP透光性半導体層のキャリア濃度が、5.0×1017cm−3〜8.0×1017cm−3の範囲内だと好ましい。
【0118】
上記第1実施形態では、キャリア濃度2.0×1018cm−3のp型GaPコンタクト層7を用いていたが、本発明に用いるp型GaPコンタクト層のキャリア濃度は2.0×1018cm−3に限定されない。つまり、本発明には、キャリア濃度5.0×1017cm−3〜5.0×1018cm−3のp型GaPコンタクト層を用いることができる。
【0119】
上記キャリア濃度5.0×1017cm−3〜5.0×1018cm−3のp型GaPコンタクト層を用いる場合でも、このp型GaPコンタクト層のキャリア濃度は接触するp型GaP透光性半導体層のキャリア濃度よりも高くする。
【0120】
上記第1実施形態では、p型Al0.5In0.5Pクラッド層5とp型GaPコンタクト層7との間にp型GaInP中間層6を設けていたが、p型Al0.5In0.5Pクラッド層5とp型GaPコンタクト層7との間に何も設けず、p型Al0.5In0.5Pクラッド層5がp型GaPコンタクト層7に接触するようにしてもよい。
【0121】
上記第1実施形態では、p型GaP透光性半導体層8の厚みは100μmであったが、本発明に用いるp型GaP透光性半導体層の厚みは100μmに限定されない。つまり、本発明には、厚み0.5μm以上であるp型GaP透光性半導体層を用いることができる。
【0122】
上記p型GaP透光性半導体層8の厚みが100μmと厚いので、LED構造ウェハ20に透光性ウエハ30を直接接合した後、p型GaP透光性基板9を完全に除去して、図6Bに示すようなLEDを作成してもよい。
【0123】
このように、上記p型GaP透光性基板9を除去することによって、光の吸収を最低限に抑え、光取り出し効率を高めることができる。
【0124】
また、上記p型GaP透光性基板9を完全に除去できるのは、p型GaP透光性半導体層8の厚みが70μm以上のときである。これは、上記p型GaP透光性半導体層8の厚みが70μm以上であると、p型GaP透光性基板9を完全に除去しても、p型GaP透光性半導体層8のみで強度を保つことができるからである。
【0125】
上記第1実施形態では、p型GaP透光性基板9の厚みは280であったが、本発明に用いるp型GaP透光性基板の厚みは280μmに限定されない。
【0126】
上記第1実施形態において、n型GaAs基板1とn型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2との間に何も設けていなかったが、n型GaAs基板1とn型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2との間にバッファ層を設けてもよい。
【0127】
(第2実施形態)
図9に、本発明の第2実施形態のLEDの概略断面図である。図9において、図6に示した上記第1実施形態の構成部と同一材料かつ同一導電型の構成部は、図6における構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。したがって、図6と図9とにおいて、同一参照番号を付していても、形状が異なるものがある。
【0128】
上記LEDは、厚み70μmのn型GaP透光性半導体層108と厚み200μmのn型GaP透光性基板109を備えている点が上記第1実施形態とは異なっている。このn型GaP透光性半導体層108は透光性半導体層の一例であり、n型GaP透光性基板109は透光性半導体基板の一例である。
【0129】
上記n型GaP透光性基板109はAlGaInP発光層5からの光を透過する。つまり、上記n型GaP透光性基板109は、AlGaInP発光層5の発光波長に対して透明な半導体材料からなっている。
【0130】
上記n型GaP透光性半導体層108のp型GaInP中間層6側の表面の一部が露出しており、この一部上には電極10が形成されている。また、上記n型GaP透光性半導体層108の厚みはn型GaP透光性基板109が高濃度である場合は厚ければ厚い程光の吸収されないので発光効率が高くなる。このn型GaP透光性半導体層108は上記第1実施形態のp型GaP透光性半導体層8と形状および導電型のみが異なるだけである。
【0131】
上記構成のLEDも、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができると共に、n型GaP透光性半導体層108とn型GaP透光性基板109を備えているから、p型GaPコンタクト層7の一部を露出させ、この一部上に電極10を形成することができる。
【0132】
このように、上記一部上に電極を形成すると共に、n型Al0.6Ga0.4As電流拡散層2上に電極11を形成することにより、ワイヤボンディングを電極10,11に簡単に行うことができる。
【0133】
上記LEDの製造方法では、n型GaAs基板1(図6参照)を除去した後、エピタキシャル層の一部をエッチング除去し、p型GaPコンタクト層8の一部を露出させて、この露出したp型GaPコンタクト層8にp型用電極10に形成する点が第1実施形態とは異なっている。
【0134】
上記第2実施形態では、n型GaP透光性基板109を用いていたが、n型GaP透光性基板109と同形状であってノンドープの透光性基板を用いてもよいし、n型GaP透光性基板109と同形状であってp型透光性基板を用いてもよい。
【0135】
上記第2実施形態では、上記第1実施形態と同様の貼り付ける手法を用いている。
【0136】
上記第1,第2実施形態において各層および基板の導電型を逆にしてもよい。
【0137】
上記第1実施形態と上記第2実施形態とを適宜組み合わせて本発明としてもよい。
【0138】
上記第1,第2実施形態ではLEDについて説明したが、本発明がLEDに限定されないのは言うまでもない。
【0139】
本発明は、4元系のAlGaInP発光層を有する発光ダイオードに限ったものではなく、半導体結晶によりなる発光層を有する半導体発光素子であれば適用できることは言うまでもない。
【0140】
また、本発明は、上記第1,第2実施形態の材料・手法に限定されるものではなく、あらゆる材料・手法を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】図1は従来のLEDの概略断面図である。
【図2】図2は上記従来のLEDの問題を解決できるLEDの概念図である。
【図3】図3は本発明の一実施の形態のLEDの概念図である。
【図4A】図4Aは低キャリア濃度のGaP半導体層の貼付界面における亜鉛濃度の深さ方向の分布を示すグラフである。
【図4B】図4Bは高キャリア濃度のGaP半導体層の貼付界面における亜鉛濃度の深さ方向の分布を示すグラフである。
【図5】図5はGaP基板への入射する光の波長とGaP基板の光透過率との関係を示すグラフである。
【図6A】図6Aは本発明の第1実施形態のLEDの概略断面図である。
【図6B】図6Bは上記第1実施形態のLEDの変形例の概略断面図である。
【図7A】図7Aは上記第1実施形態のLEDの製造方法の一工程図である。
【図7B】図7Bは上記第1実施形態のLEDの製造方法の一工程図である。
【図8】図8は本発明の第1,第2実施形態のLEDの製造に用いる治具の概略断面図である。
【図9】図9は本発明の第2実施形態のLEDの概略断面図である。
【符号の説明】
【0142】
2 n型Al0.6Ga0.4As電流拡散層
4 AlGaInP活性層
6 p型GaInP中間層
7 p型GaPコンタクト層
8 p型GaP透光性半導体層
9 p型GaP透光性基板
20 LED構造ウエハ20
30 透光性ウエハ
108 n型GaP透光性半導体層
109 n型GaP透光性基板
第1導電型の半導体層と、
401 第1導電型の半導体層
402 発光層
403 第2導電型の半導体層
404 透過性半導体層
405 透過性半導体基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体層と、
上記第1導電型の半導体層上に形成された発光層と、
上記発光層上に形成された第2導電型の半導体層と、
上記第2導電型の半導体層上に形成され、上記発光層からの光を透過する透過性半導体層と
を備え、
上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が上記透過性半導体層のキャリア濃度よりも大きいことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体発光素子において、
上記透過性半導体層のキャリア濃度が2.5×1018cm−3以下であることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体発光素子において、
上記透過性半導体層のキャリア濃度が2.5×1017cm−3〜8.0×1017cm−3の範囲内であることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体発光素子において、
上記発光層と上記第2導電型の半導体層との間に形成された第2導電型の中間層を備え、
上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が上記第2導電型の中間層のキャリア濃度よりも大きいことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体発光素子において、
上記透過性半導体層の厚みが0.5μm以上であることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体発光素子において、
上記透過性半導体層上に形成され、上記発光層からの光を透過する透過性半導体基板を備え、
上記透過性半導体層と上記透過性半導体基板とのうちの少なくとも一方は第1導電型の半導体からなることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体発光素子において、
上記第1導電型の半導体層、上記発光層及び上記第2導電型の半導体層は、それぞれ、ガリウム、アルミニウム、インジウム、リン、砒素、亜鉛、テルル、硫黄、窒素、シリコン、炭素、酸素のうちの少なくとも2つを含むことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体発光素子において、
上記透過性半導体層の厚みが70μm以上であることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項9】
請求項1に記載の半導体発光素子において、
上記透過性半導体層上に形成され、上記発光層からの光を透過する透過性半導体基板を備え、
上記透過性半導体層の導電型は上記透過性半導体基板の導電型と異なることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項10】
第1導電型の半導体基板上に、第1導電型の半導体層、発光層及び第2導電型の半導体層を積層して、上記第1導電型の半導体基板、第1導電型の半導体層、発光層及び第2導電型の半導体層からなる第1のウエハを作製する工程と、
上記発光層からの光を透過する透過性半導体基板上に、上記発光層からの光を透過する透過性半導体層を積層して、上記透過性半導体基板と上記透過性半導体層とからなる第2のウエハを作製する工程と、
上記透過性半導体層が上記第2導電型の半導体層に対向するように、上記第1のウエハ上に上記第2のウエハを載せて、上記第2のウエハを上記第1のウエハへ向けて加圧しつつ、上記第1,第2のウエハを加熱することにより、上記第2のウエハを上記第1のウエハに接合した後、上記第1導電型の半導体基板を除去する工程と
を備え、
上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が上記透過性半導体層のキャリア濃度よりも大きいことを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体発光素子の製造方法において、
上記第2のウエハを上記第1のウエハに接合した後に、上記透過性半導体基板を除去することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の半導体発光素子において、
上記透過性半導体層は液相エピタキシャル法またはCVD法で作製することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項1】
第1導電型の半導体層と、
上記第1導電型の半導体層上に形成された発光層と、
上記発光層上に形成された第2導電型の半導体層と、
上記第2導電型の半導体層上に形成され、上記発光層からの光を透過する透過性半導体層と
を備え、
上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が上記透過性半導体層のキャリア濃度よりも大きいことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体発光素子において、
上記透過性半導体層のキャリア濃度が2.5×1018cm−3以下であることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体発光素子において、
上記透過性半導体層のキャリア濃度が2.5×1017cm−3〜8.0×1017cm−3の範囲内であることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体発光素子において、
上記発光層と上記第2導電型の半導体層との間に形成された第2導電型の中間層を備え、
上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が上記第2導電型の中間層のキャリア濃度よりも大きいことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体発光素子において、
上記透過性半導体層の厚みが0.5μm以上であることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体発光素子において、
上記透過性半導体層上に形成され、上記発光層からの光を透過する透過性半導体基板を備え、
上記透過性半導体層と上記透過性半導体基板とのうちの少なくとも一方は第1導電型の半導体からなることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体発光素子において、
上記第1導電型の半導体層、上記発光層及び上記第2導電型の半導体層は、それぞれ、ガリウム、アルミニウム、インジウム、リン、砒素、亜鉛、テルル、硫黄、窒素、シリコン、炭素、酸素のうちの少なくとも2つを含むことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体発光素子において、
上記透過性半導体層の厚みが70μm以上であることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項9】
請求項1に記載の半導体発光素子において、
上記透過性半導体層上に形成され、上記発光層からの光を透過する透過性半導体基板を備え、
上記透過性半導体層の導電型は上記透過性半導体基板の導電型と異なることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項10】
第1導電型の半導体基板上に、第1導電型の半導体層、発光層及び第2導電型の半導体層を積層して、上記第1導電型の半導体基板、第1導電型の半導体層、発光層及び第2導電型の半導体層からなる第1のウエハを作製する工程と、
上記発光層からの光を透過する透過性半導体基板上に、上記発光層からの光を透過する透過性半導体層を積層して、上記透過性半導体基板と上記透過性半導体層とからなる第2のウエハを作製する工程と、
上記透過性半導体層が上記第2導電型の半導体層に対向するように、上記第1のウエハ上に上記第2のウエハを載せて、上記第2のウエハを上記第1のウエハへ向けて加圧しつつ、上記第1,第2のウエハを加熱することにより、上記第2のウエハを上記第1のウエハに接合した後、上記第1導電型の半導体基板を除去する工程と
を備え、
上記第2導電型の半導体層のキャリア濃度が上記透過性半導体層のキャリア濃度よりも大きいことを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体発光素子の製造方法において、
上記第2のウエハを上記第1のウエハに接合した後に、上記透過性半導体基板を除去することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の半導体発光素子において、
上記透過性半導体層は液相エピタキシャル法またはCVD法で作製することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2007−299846(P2007−299846A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125169(P2006−125169)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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