説明

半導体発光装置および半導体発光装置の製造方法

【課題】基部の周端面から出射する光の量の均等化を図ることができる半導体発光装置および半導体発光装置の製造方法を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る半導体発光装置は、第1の方向における屈折率と、前記第1の方向に直交する第2の方向における屈折率とが異なる基部と、前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向に設けられた発光部と、を備えている。そして、前記基部の前記第1の方向における周端面に形成された改質部の前記第3の方向における断面形状と、前記基部の前記第2の方向における周端面に形成された改質部の前記第3の方向における断面形状と、が同じとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
後述する実施形態は、半導体発光装置および半導体発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基部上にn形半導体部、発光部、p形半導体部、透光性電極を積層するようにして形成した半導体発光装置がある。この様な半導体発光装置においては、発光部において発生した光を、透光性電極や基部の周端面を介して外部に取り出すようにしている。そのため、複数の周端面における性状が異なるものとなると周端面から出射する光の量が不均等となるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−18547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、基部の周端面から出射する光の量の均等化を図ることができる半導体発光装置および半導体発光装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体発光装置は、第1の方向における屈折率と、前記第1の方向に直交する第2の方向における屈折率とが異なる基部と、前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向に設けられた発光部と、を備えている。そして、前記基部の前記第1の方向における周端面に形成された改質部の前記第3の方向における断面形状と、前記基部の前記第2の方向における周端面に形成された改質部の前記第3の方向における断面形状と、が同じとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態に係る半導体発光装置を例示する模式断面図である。
【図2】比較例に係る加工ビームの断面形状と集光ビームの断面形状とを例示する模式図である。
【図3】比較例に係る改質痕の断面形状を例示する模式図である。(a)は改質痕の模式平面図、(b)は(a)におけるA−A矢視断面図、(c)は(a)におけるB−B矢視断面図である。
【図4】比較例に係る基部の周端面に形成された改質部を例示する模式図である。
【図5】実施形態に係る改質部の形成を例示する模式図である。(a)は加工ビームの断面形状、集光ビームの断面形状、改質痕の断面形状を例示する模式図であり、(b)は基部の周端面に形成された改質部の断面形状を例示する模式図である。
【図6】他の実施形態に係る改質部の形成を例示する模式図である。(a)、(b)は加工ビームの断面形状、集光ビームの断面形状、改質痕の断面形状を例示する模式図であり、(c)は基部の周端面に形成された改質部の断面形状を例示する模式図である。
【図7】他の実施形態に係る改質部の形成を例示する模式図である。(a)は加工ビームの断面形状、集光ビームの断面形状、改質痕の断面形状を例示する模式図であり、(b)は基部の周端面に形成された改質部の断面形状を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る半導体発光装置を例示する模式断面図である。
図1に示すように、半導体発光装置1には、基部2、半導体部3、発光部4、半導体部5、透光性電極7、電極8、電極9、絶縁部10が設けられている。
基部2は、矩形状を呈し、X方向(第1の方向の一例に相当する)における屈折率と、X方向に直交するY方向(第2の方向の一例に相当する)における屈折率とが異なっている。また、基部2は、周端面2aと周端面2bとを有し、周端面2a、2bには改質部2cが形成されている。なお、改質部2cに関する詳細は後述する。
【0008】
X方向およびY方向に直交するZ方向(第3の方向の一例に相当する)における基部2の一方の主面側には半導体部3が設けられている。半導体部3は、基部2となる基板上に結晶成長させることで形成されたものとすることができる。半導体部3を基板上に結晶成長させる場合には、半導体部3と同じ材料を用いた基板としたり、半導体部3と格子定数や熱膨張係数の近い材料を用いた基板としたりすることができる。例えば、半導体部3が窒化物半導体を用いたものである場合には、基部2となる基板が窒化物半導体、サファイア、SiC、スピネルなどから形成されたものとすることができる。
【0009】
半導体部3は、n形となるようにドープされた半導体(n形半導体)から形成されたものとすることができる。この場合、半導体部3は、n形の窒化物半導体から形成されたものとすることができる。窒化物半導体としては、例えば、GaN(窒化ガリウム)、AlN(窒化アルミニウム)、AlGaN(窒化アルミニウムガリウム)、InGaN(窒化インジウムガリウム)などを例示することができる。
【0010】
発光部4は、半導体部3の基部2が設けられる側とは反対側に設けられている。
発光部4は、正孔および電子が再結合して光を発生する井戸層と、井戸層よりも大きなバンドギャップを有する障壁層(クラッド層)と、によって構成された量子井戸構造とすることができる。
この場合、単一量子井戸(SQW;Single Quantum Well)構造としてもよいし、多重量子井戸(MQW;Multiple Quantum Well)構造としてもよい。また、単一量子井戸構造のものを複数積層するようにしてもよい。
なお、発光部4は量子井戸構造に限定されるわけではなく、発光可能な構造を適宜選択することができる。
【0011】
半導体部5は、発光部4の半導体部3が設けられる側とは反対側に設けられている。
半導体部5は、p形となるようにドープされた半導体(p形半導体)から形成されたものとすることができる。この場合、p形の窒化物半導体から形成されたものとすることができる。窒化物半導体としては、例えば、GaN(窒化ガリウム)、AlN(窒化アルミニウム)、AlGaN(窒化アルミニウムガリウム)、InGaN(窒化インジウムガリウム)などを例示することができる。
【0012】
透光性電極7は、半導体部5の発光部4が設けられる側とは反対側に設けられている。 ここで、半導体部5がp形GaN(窒化ガリウム)から形成されたものである場合には、電子の移動度が低く、電極8からの電流が半導体部5の全面に広がらないおそれがある。そのため、透光性電極7は、電極8からの電流を半導体部5の全面に広げるために設けられている。
【0013】
また、透光性電極7は入射した光を透過させる必要もある。例えば、発光部4から発せられ透光性電極7に入射した光L3や基部2などにより反射され透光性電極7に入射した光L1を透過させる必要がある。そのため、透光性電極7は光を透過させることのできる材料から形成されている。
この場合、透光性電極7は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide;酸化インジウムスズ)などから形成されたものとすることができる。
【0014】
電極8は、透光性電極7上に形成されている。また、電極9は、半導体部3上に形成されている。電極8、電極9は、例えば、Ni(ニッケル)/Au(金)の二重層などの金属材料から形成されたものとすることができる。
絶縁部10は、半導体部3、発光部4、半導体部5の露出部分を覆うようにして形成されている。絶縁部10は、例えば、SiO(二酸化シリコン)などの絶縁性材料から形成されたものとすることができる。
【0015】
ここで、発光部4から発せられ基部2に入射した光L2は、基部2の周端面2a、2bから外部に向けて出射する。そのため、周端面2a、2bに改質部2cが形成されている場合には、改質部2cの形態により出射する光L2の量が変化することになる。
【0016】
次に、改質部2cについて例示する。
なお、一例として、基部2の主面がサファイアの結晶のC軸に垂直なC面である場合、すなわち、基部2がC面サファイア基板を用いて形成された場合について例示をする。
複数の半導体発光装置1を一体的に形成した後、レーザ光を用いて各半導体発光装置1毎に割断することで個片化する場合がある。
この様な個片化においては、まず、基部2となる基板42の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより、割断予定線に沿って複数の改質痕を基板42の内部に形成する。そして、改質痕を割断の起点として、各半導体発光装置1を割断予定線に沿って割断するようにする。そのため、半導体発光装置1に設けられた基部2の周端面2a、2bには改質痕が分断されることにより改質部2cが形成されることになる。
【0017】
ここで、複屈折性を有するサファイアを用いて基板42を形成した場合には、基板42の外部における加工ビームの断面形状と、基板42の内部における集光ビームの断面形状とが異なるものとなる。
図2は、比較例に係る加工ビームの断面形状と集光ビームの断面形状とを例示する模式図である。
図3は、比較例に係る改質痕の断面形状を例示する模式図である。なお、図3(a)は改質痕の模式平面図、図3(b)は図3(a)におけるA−A矢視断面図、図3(c)は図3(a)におけるB−B矢視断面図である。
また、図2、図3(a)におけるX、Y、Zは互いに直交する3方向を表し、Y方向を劈開方向、Z方向をレーザ光の照射方向としている。
また、図2中のLxはX方向における割断予定線(第1の割断予定線の一例に相当する)、LyはY方向における割断予定線(第2の割断予定線の一例に相当する)を表している。
【0018】
サファイアは複屈折性を有する材料であるので、図2に示すように、基板42の外部において加工ビーム100の断面形状が円であっても、基部2の内部においては集光ビーム101の断面形状が楕円となる。すなわち、X方向における屈折率と、Y方向における屈折率との違いに基づいて集光ビーム101の断面形状が変化することになる。
【0019】
そのため、図3(b)、(c)に示すように、基板42の内部に形成される改質痕102cの断面形状がX方向とY方向とでは異なるものとなる。すなわち、図3(a)に示すように、Z方向から見た改質痕102cの断面形状は、集光ビーム101の断面形状に応じて楕円となる。そのため、図3(b)、(c)に示すように、X方向から見た改質痕102cの断面形状と、Y方向から見た改質痕102cの断面形状とが異なるものとなる。
このことは、割断面である基部102の周端面102a、102bに形成された改質部の断面形状がX方向とY方向とでは異なるものとなることを意味する。
【0020】
図4は、比較例に係る基部の周端面に形成された改質部を例示する模式図である。
図3(a)に示すように、Z方向から見た改質痕102cの断面形状は、長軸がY方向に向いた楕円となる。そのため、割断面である基部102の周端面102aに形成された改質部102c1の断面形状は、Z方向から見た場合に楕円の長軸に沿って楕円を分断した形状となる。一方、基部102の周端面102bに形成された改質部102c2の断面形状は、Z方向から見た場合に楕円の短軸に沿って楕円を分断した形状となる。
【0021】
この様に、基部102の周端面102a、102bに形成された改質部102c1、102c2の断面形状がX方向とY方向とで異なるものとなると、X方向とY方向とで出射する光L2の量が異なるものとなる。例えば、図4に例示をしたものの場合には、周端面102a側から出射する光L2の量よりも周端面102b側から出射する光L2の量の方が多くなるおそれがある。この場合、X方向とY方向とで出射する光L2の量が異なるものとなると、半導体発光装置1における光の取り出し効率が低下したり、配光特性が狭くなりすぎたりするおそれがある。
【0022】
そのため、本実施形態においては、基部2のX方向における周端面2aに形成された改質部2cのZ方向における断面形状と、基部2のY方向における周端面2bに形成された改質部2cのZ方向における断面形状と、が同じとなっている。
なお、本明細書において改質部の断面形状が同じとは、寸法的に全く同じの場合のみならず、出射する光の量に大きな影響を与えない程度の寸法誤差を含むものとする。また、改質部の断面形状における輪郭は必ずしも明確である必要はない。
【0023】
図5は、本実施形態に係る改質部の形成を例示する模式図である。なお、図5(a)は加工ビームの断面形状、集光ビームの断面形状、改質痕の断面形状を例示する模式図であり、図5(b)は基部の周端面に形成された改質部の断面形状を例示する模式図である。また、図5(a)におけるLxはX方向における割断予定線、LyはY方向における割断予定線を表している。
基部2の周端面2a、2bに形成された改質部2cの断面形状がX方向とY方向とで同じとなるようにするためには、Z方向から見た集光ビームの断面形状が4回対称(90°対称)となる形状(例えば、正4角形)となったり、円となったりするようにすればよい。
【0024】
図5(a)は、Z方向から見た集光ビームの断面形状が円の場合を例示するものである。
前述したように、基板42は複屈折性を有する材料を用いて形成されるため、加工ビームの断面形状を円とすれば、集光ビームの断面形状が円とはならず楕円となる。
そのため、本実施形態においては、集光ビーム21の断面形状の変化に応じた加工ビーム20の断面形状とすることで、集光ビーム21の断面形状が円となるようにしている。例えば、加工ビーム20の断面形状を長軸がX方向に向いた楕円とし、X方向における屈折率と、Y方向における屈折率とを考慮して楕円を規定するようにすれば、集光ビーム21の断面形状が円となるようにすることができる。この場合、予め実験やシミュレーションなどを行うことで加工ビーム20の断面形状を適宜決定することができる。
なお、加工ビーム20の断面形状が所定の楕円となるようにするためには、例えば、X方向とY方向とで曲率半径の異なるレンズを用いたり、シリンドリカルレンズなどを適宜組み合わせたレンズセットを用いたりすることで、加工ビーム20の断面形状が所定の楕円となるようにすることができる。また、波長板やマスクなどの光学要素を適宜用いるようにすることもできる。
また、複屈折性を有した材料でレンズを作成し、X方向とY方向とにおけるレンズの曲率半径を一緒にするとともに、レンズの複屈折軸と基板42の複屈折軸との位置関係を制御して、集光ビーム21の断面形状が円となるように加工ビーム20の断面形状を所定の楕円となるようにすることができる。
【0025】
また、加工ビーム20の断面を複数の領域に分割し、複数の領域毎にレーザ光を照射することができる光学系において、レーザ光が照射される領域を適宜選択することで加工ビーム20の断面形状が疑似的に所定の楕円となるようにすることもできる。すなわち、小さな断面形状を有する複数のレーザ光の照射位置を適宜組み合わせることで、加工ビーム20の断面形状が疑似的に所定の楕円となるようにすることもできる。
【0026】
この様に、Z方向から見た集光ビームの断面形状を4回対称となるような形状としたり、円としたりすることで、基部2の周端面2a、2bに形成される改質部2cのZ方向から見た断面形状を同じものとすることができる。
例えば、Z方向から見た集光ビームの断面形状を円とすれば、図5(b)に示すように、基部2の周端面2a、2bに形成されるZ方向から見た改質部2cの断面形状を半円とすることができる。
基部2の周端面2a、2bに形成される改質部2cのZ方向から見た断面形状を同じものとすれば、基部2の周端面2a、2bから出射する光L2の量の均等化を図ることができる。また、半導体発光装置1における光の取り出し効率の向上や、配光特性の広角化などを図ることができる。
【0027】
図6は、他の実施形態に係る改質部の形成を例示する模式図である。なお、図6(a)、(b)は加工ビームの断面形状、集光ビームの断面形状、改質痕の断面形状を例示する模式図であり、図6(c)は基部の周端面に形成された改質部の断面形状を例示する模式図である。また、図6(a)はY方向における割断予定線Lyに沿って改質痕を形成する場合を表し、図6(b)はX方向における割断予定線Lxに沿って改質痕を形成する場合を表している。
本実施形態においても基部の周端面に形成された改質部2c1の断面形状がX方向とY方向とで同じとなるようになっている。
ただし、図5に例示をしたものの場合には、同じ断面形状の集光ビームによりX方向における改質痕とY方向における改質痕とを形成するようにしたが、図6に例示をしたものの場合には、X方向における改質痕を形成する場合とY方向における改質痕を形成する場合とで集光ビームの断面形状を変えるようにしている。
【0028】
例えば、図6(a)に示すように集光ビーム24の断面形状を長軸がY方向に向いた楕円とし、図6(b)に示すように集光ビーム24の断面形状を長軸がX方向に向いた楕円とする。この様にすれば、Y方向における割断予定線Lyに沿って形成される改質痕22cと、X方向における割断予定線Lxに沿って形成される改質痕22cとが同一形状となるようにすることができる。
【0029】
この場合、所定の断面形状を有する集光ビーム24となるように、割断予定線Lyに沿って改質痕22cを形成する場合の加工ビーム23aの断面形状と、割断予定線Lxに沿って改質痕22cを形成する場合の加工ビーム23bの断面形状とを異なるものとすることができる。
なお、加工ビーム23a、23bの断面形状の制御は前述の場合と同様とすることができる。
例えば、X方向とY方向とで曲率半径の異なるレンズを用いたり、シリンドリカルレンズなどを適宜組み合わせたレンズセットを用いたりすることで、加工ビーム23a、23bの断面形状が所定の楕円となるようにすることができる。また、波長板やマスクなどの光学要素を適宜用いるようにすることもできる。
また、複屈折性を有した材料でレンズを作成し、X方向とY方向とにおけるレンズの曲率半径を一緒にするとともに、レンズの複屈折軸と基板42の複屈折軸との位置関係を制御して、集光ビーム24の断面形状が前述した楕円となるように加工ビーム23a、23bの断面形状を所定の楕円となるようにすることができる。
また、小さな断面形状を有する複数のレーザ光の照射位置を適宜組み合わせることで、加工ビーム23a、23bの断面形状が疑似的に所定の楕円となるようにすることもできる。
【0030】
この様にすれば、基部2の周端面2a、2bに形成される改質部2c1のZ方向から見た断面形状を同じものとすることができる。
そのため、基部2の周端面2a、2bから出射する光L2の量の均等化を図ることができる。また、半導体発光装置1における光の取り出し効率の向上や、配光特性の広角化などを図ることができる。この場合、Z方向から見た改質部2c1の厚み寸法Wを小さくすることができるので、光の取り出し効率をさらに向上させることができる。
【0031】
以上に例示をしたように、改質部2c、2c1のZ方向における断面形状を、円、楕円、および4回対称となる形状からなる群より選ばれた形状の一部分とすることができる。
【0032】
図7も他の実施形態に係る改質部の形成を例示する模式図である。なお、図7(a)は加工ビームの断面形状、集光ビームの断面形状、改質痕の断面形状を例示する模式図であり、図7(b)は基部の周端面に形成された改質部の断面形状を例示する模式図である。また、図7(a)におけるLx1、Ly1は割断予定線を表している。図7(a)、(b)におけるX1、Y1、Zは互いに直交する3方向を表し、図5、図6におけるX方向、Y方向を回転方向に45°傾けてそれぞれをX1方向、Y1方向としている。
なお、基板42上に形成される半導体部3、発光部4、半導体部5、透光性電極7、電極8、電極9、絶縁部10などは、割断予定線Lx1、Ly1に合わせて回転方向に45°ずらして形成されている。
【0033】
本実施形態においても基部の周端面に形成された改質部2c2の断面形状がX1方向とY1方向とで同等となるようにしている。
ただし、図5、図6に例示をしたものの場合には集光ビームの断面形状が所定のものとなるように制御したが、図7に例示をしたものの場合には照射されるレーザ光に対する基板42の回転方向の位置を45°傾けるようにしている。
この場合、加工ビーム25の断面形状が円であるため集光ビーム26の断面形状は回転方向に45°傾いた楕円となる。そのため、Z方向から見た改質痕32cの断面形状は、集光ビーム26の断面形状に応じて回転方向に45°傾いた楕円となる。
【0034】
この様にすれば、Y1方向における割断予定線Ly1に沿って形成される改質痕32cと、X1方向における割断予定線Lx1に沿って形成される改質痕32cとが同じ形状となるようにすることができる。
そのため、図7(b)に示すように、基部2の周端面2a、2bに形成される改質部2c2のZ方向から見た断面形状を同じものとすることができる。その結果、基部2の周端面2a、2bから出射する光L2の量の均等化を図ることができる。また、半導体発光装置1における光の取り出し効率の向上や、配光特性の広角化などを図ることができる。また、集光ビームの断面形状の制御を行う必要がないので製造工程や製造装置の簡略化を図ることができる。
【0035】
なお、図7において例示をしたものは回転方向に45°傾ける場合であるが、回転方向に135°、225°、315°傾けるようにすることもできる。
また、互いに直交する方向における屈折率の違いを考慮して回転方向に傾ける角度を適宜変更することもできる。例えば、実験やシミュレーションなどにより適切な角度を求め、求められた角度に基づいて基板42の回転方向の位置を傾けるようにすることもできる。 この様に、改質部2c2のZ方向における断面形状を楕円の一部とし、楕円の長軸が周端面2a、2bに対して所定の角度傾けられているようにすることができる。
【0036】
なお、以上に例示をしたものではY方向を劈開方向としたが、X方向が劈開方向の場合にも適用が可能である。また、材料によってはX方向、Y方向が劈開方向となる場合もあるが、その様な場合にも適用が可能である。
【0037】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係る半導体発光装置の製造方法について例示をする。
まず、サファイアなどからなる基板42上に所定の形状を有する半導体部3、発光部4、半導体部5、透光性電極7、電極8、電極9、絶縁部10を複数組形成する。この場合、基板42上に形成される半導体部3、発光部4、半導体部5、透光性電極7、電極8、電極9、絶縁部10などは、割断予定線により画される領域に形成する。
【0038】
例えば、有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、ハイドライド気相成長(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)法、分子線エピタキシャル成長(MBE;Molecular Beam Epitaxy)法などを用いて半導体部3、発光部4、半導体部5となる膜を成膜し、リソグラフィ技術やエッチング技術などを用いて半導体部3、発光部4、半導体部5の形状を成形するようにすることができる。
【0039】
また、真空蒸着法やスパッタリング法などの各種の物理的気相成長(PVD:Physical Vapor Deposition)法、各種の化学的気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法などと、リソグラフィ技術やエッチング技術などとを組み合わせることで透光性電極7、電極8、電極9、絶縁部10などを形成するようにすることができる。
なお、前述した成膜法、リソグラフィ技術やエッチング技術などは既知の技術を適用することができるので各要素の形成に関する詳細な説明は省略する。
【0040】
次に、半導体部3などが形成された側とは反対側からレーザ光を照射して、割断予定線に沿って改質痕を形成する。
そして、割断予定線に沿って、隣接する改質痕と一部が重なる様にして複数の改質痕を形成することで、基板42の内部に複数の改質痕を含む改質領域を形成する。この場合、基板42の厚み方向(Z方向)に改質痕の列が複数形成されるようにすることができる。 例えば、第三高調波(355nm(紫外光))を有するレーザ光を照射することができるYAG(Yittrium Aluminium Garnet)レーザ装置を用いて改質痕を形成するようにすることができる。
【0041】
この際、互いに直交する方向(例えば、前述したX方向とY方向、X1方向とY1方向)における割断予定線に沿って形成される改質痕の形状が同一となるようにする。なお、改質痕の形状に関する詳細は前述したものと同様とすることができるのでその説明は省略する。また、加工ビームの断面形状の制御、集光ビームの断面形状の制御、照射されるレーザ光に対する基板42の回転方向の位置などに関しても前述したものと同様とすることができるのでそれらの説明は省略する。
【0042】
次に、必要に応じてブレーキングを行う。
割断予定線に沿って改質領域を形成すれば、各半導体発光装置1毎に個片化することができる場合もあるが、外力を加えることで改質痕を起点とした割断を行うことが必要となる場合もある。
例えば、割断予定線に沿って改質領域が形成された基板42にブレードを押し当てて、ブレードによる加圧を行うことで改質痕を起点とした割断を行うようにすることができる。
【0043】
以上に例示をしたように、本実施形態に係る半導体発光装置の製造方法は、X方向における屈折率と、X方向に直交するY方向における屈折率とが異なる基板42のX方向およびY方向に直交するZ方向における一方の主面側に半導体部3を形成する工程、半導体部3の基板42が設けられる側とは反対側に発光部4を形成する工程、発光部4の半導体部3が設けられる側とは反対側に半導体部5を形成する工程、X方向における割断予定線Lxに沿って基板42の内部に改質痕を形成する工程、Y方向における割断予定線Lyに沿って基板42の内部に改質痕を形成する工程、を備えている。そして、割断予定線Lxおよび割断予定線Lyにより画された領域に含まれた改質痕の一部(改質部となる部分)のZ方向における断面形状が同じとなるようにされている。
この場合、基板の内部に形成される改質痕のZ方向における断面形状は、円、楕円、および4回対称となる形状からなる群より選ばれた形状とすることができる。
また、改質痕のZ方向における断面形状を楕円とし、楕円の長軸が割断予定線Lxまたは割断予定線Lyに対して所定の角度傾けられているようにすることができる。
【0044】
以上に例示をした実施形態によれば、基部の周端面から出射する光の量の均等化を図ることができる半導体発光装置および半導体発光装置の製造方法を実現することができる。 以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 半導体発光装置、2 基部、2a 周端面、2b 周端面、2c 改質部、2c1 改質部、2c2 改質部、3 半導体部、4 発光部、5 半導体部、12c 改質痕、20 加工ビーム、21 集光ビーム、22c 改質痕、23a 加工ビーム、23b 加工ビーム、24 集光ビーム、32c 改質痕、42 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向における屈折率と、前記第1の方向に直交する第2の方向における屈折率と、が異なる基部と、
前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向に設けられた発光部と、
を備え、
前記基部の前記第1の方向における周端面に形成された改質部の前記第3の方向における断面形状と、前記基部の前記第2の方向における周端面に形成された改質部の前記第3の方向における断面形状と、が同じであることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
前記改質部の前記第3の方向における断面形状は、円、楕円、および4回対称となる形状からなる群より選ばれた形状の一部分であることを特徴とする請求項1記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記改質部の前記第3の方向における断面形状は、楕円の一部分であり、前記楕円の長軸が前記周端面に対して所定の角度傾けられていることを特徴とする請求項1記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記第1の方向および前記第2の方向の少なくともいずれかは、劈開方向であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項5】
第1の方向における屈折率と、前記第1の方向に直交する第2の方向における屈折率と、が異なる基板の前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向における一方の側に発光部を形成する工程と、
前記第1の方向における第1の割断予定線に沿って前記基板の内部に改質痕を形成する工程と、
前記第2の方向における第2の割断予定線に沿って前記基板の内部に改質痕を形成する工程と、
を備え、
前記第1の割断予定線および前記第2の割断予定線により画された領域に含まれた前記改質痕の一部分の前記第3の方向における断面形状を同じとすることを特徴とする半導体発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記改質痕の前記第3の方向における断面形状は、円、楕円、および4回対称となる形状からなる群より選ばれた形状であることを特徴とする請求項5記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記改質痕の前記第3の方向における断面形状は、楕円であり、前記楕円の長軸が前記第1の割断予定線または前記第2の割断予定線に対して所定の角度傾けられていることを特徴とする請求項5記載の半導体発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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