説明

半導体発光装置及びその製造方法

【課題】ダム材を備えたLED装置において、ダム材により取り囲まれた領域に白色レジストやシリコーン樹脂等の反射部材を配置しようとすると位置精度の高いフォトリソグラフィ法や印刷法を適用しなければならなくなる。
【解決手段】ダム材11が取り囲む領域の底部に反射性シリコーン樹脂21を流動塗布する。ことのき反射性シリコーン樹脂21の上面はLED22の上面より低い。反射性シリコーン樹脂21の厚みは略30〜50μmであると良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
回路基板上に半導体発光素子を実装した半導体発光装置及びその製造方法に関し、詳しくは回路基板上において半導体発光素子をダム材が取り囲み、そのダム材が取り囲んだ領域に樹脂を充填し、その樹脂で半導体発光素子を封止する半導体発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子(以後とくに断らない限りLED素子と呼ぶ)を回路基板に実装しパッケージ化した半導体発光装置(以後とくに断らない限りLED装置と呼ぶ)のなかで、発光効率を改善させるため回路基板表面に白色の反射部材を備えたLED装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1の図1には白色レジスト層6(反射部材)を備えた光源装置10(LED装置)が示されている。光源装置10は、基板1(回路基板)上に一対の電極2,3が形成され、これらの電極2,3と接続された発光ダイオードのチップ4(LED素子)が透明樹脂7に封止されている。発光ダイオードのチップ4は、一方の電極2上に配置されて、この電極2と電気的に接続している。また、チップ4と他方の電極3との間は、ワイヤ5によって電気的に接続している。透明樹脂7は上面が球面となったドーム形状となっている。この基板1上に白色レジスト層6(反射部材)が形成されている。白色レジスト層6は、発光ダイオードのチップ4や、ワイヤ5が接続する電極3の端子付近が開口部となっており、開口部以外の部分では電極2,3を覆っている。開口部は矩形状となっており、開口部の壁面6Aは、チップ4や電極3の端子に近い箇所にある。
【0004】
LED装置は回路基板や封止部材、反射構造などの構成部品の形状によりさまざまな形態をとる。これらのなかで、主に照明装置向けとして回路基板に複数のLED素子を配列させ、そのLED素子を取り囲むダム材を設け、そのダム材が取り囲んだ領域に樹脂を充填しLED素子を封止するLED装置が知られている。例えば特許文献2の図1に示された半導体発光装置100は配線基板1(回路基板)と堰22(ダム材)を備えた4つの発光部2とを有している。堰22は各発光部2に配置された複数の半導体発光素子21を取り囲み、半導体発光素子21は堰22に囲われた領域で封止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−201171号公報 (図1)
【特許文献2】特開2009−135485号公報 (図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の図4ではダム材(堰22)の外側に反射部材(白色コーティング層)を備えている。しかしながら発光効率を大幅に改善するにはダム材の内側に反射部材を配置することが望ましい。この場合、先ず硬化前の白色の反射部材を回路基板上の所望の位置に配置する。反射部材が白色レジストである場合には、フォトリソグラフィ法で外郭や開口部を形成する。反射部材が白色塗料(インク)である場合には印刷法を適用する。次に反射部材を硬化しLED素子を実装する。最後にダム材の形成と封止樹脂の充填を行う。ところがLED素子の実装部のような反射部材の開口領域で発光効率を著しく低下させないためには、フォトリソグラフィ法や印刷法において高い位置精度が必要になるという課題が発生する。
【0007】
そこで本発明は、この課題に鑑みてなされたものであり、ダム材により取り囲まれた回路基板領域に反射部材を容易に配置できる半導体発光装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の半導体発光装置は、半導体発光素子を実装した回路基板上に該半導体発光素子を取り囲むダム材を備え、該ダム材が取り囲んだ領域に封止樹脂を充填し、該封止樹脂で前記半導体発光素子を封止する半導体発光装置において、
前記ダム材が取り囲む領域の底部に流動塗布した反射部材を備え、
該反射部材の上面が前記半導体発光素子の上面より低いことを特徴とする。
【0009】
前記反射部材の厚みが略30〜50μmであることが好ましい。
【0010】
前記反射部材が反射性粒子を混練したシリコーン樹脂であっても良い。
【0011】
前記反射部材が反射性粒子を混練したセラミックインクであっても良い。
【0012】
本発明の半導体発光装置の製造方法は、半導体発光素子を実装した回路基板上に該半導体発光素子を取り囲むダム材を備え、該ダム材が取り囲んだ領域に封止樹脂を充填し、該封止樹脂で前記半導体発光素子を封止する半導体発光装置の製造方法において、
前記回路基板に前記半導体発光素子を実装し前記ダム材を形成する工程と、
前記ダム材の内側の領域であって前記半導体発光素子の占める領域を除いた領域に硬化前の前記反射部材を流し込み、該反射部材を硬化させる工程と、
前記ダム材の内側の領域に硬化前の前記封止樹脂を充填し、該封止樹脂を硬化させる工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導体発光装置は、半導体発光素子を避けながらダム材で囲まれた領域の底部に隙間なく反射部材を敷き詰めている。この反射部材は、この領域に流動性のある反射部材を塗布し、その反射部材を硬化させることで容易に形成できる。以上のように本発明の半導体発光装置は、反射部材がダム材により取り囲まれた領域に容易に配置できる構造を備えている。
【0014】
同様に本発明の半導体発光装置の製造方法は、ダム材と半導体発光素子の間に流動性のある反射部材を塗布し硬化させることで容易に反射部材を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態におけるLED装置の斜視図。
【図2】図1から蛍光体樹脂(封止樹脂)を除いたLED装置の斜視図。
【図3】図2から反射性シリコーン樹脂(反射部材)を除いたLED装置の斜視図。
【図4】図1に示すLED装置の製造方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図1〜4を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また説明のため部材の縮尺は適宜変更している。
【0017】
図1により本実施形態のLED装置10の外観を説明する。図1はLED装置10を上面方向から眺めた斜視図である。回路基板13上には+電極14と−電極15、合わせマ
ーク16が形成され、枠状のダム材11が配置されている。ダム材11の内側には蛍光体樹脂12(封止樹脂)が充填されている。
【0018】
+及び−電極14,15並びに合わせマーク16は銅箔上にニッケルと金をメッキした金属パターンである。ダム材11はシリコーン樹脂中に二酸化チタン等の反射性粒子が分散したもので、蛍光樹脂12の流れ止めとともに側面方向(回路基板と平行な方向)に向かう光を正面方向(回路基板に垂直な方向)に向かわせる反射体としても機能している。蛍光体樹脂12はシリコーン樹脂中にYAG等の蛍光体が分散したもので、LED素子22(図2に示す)の青色発光を白色化する。
【0019】
図2により反射部材の配置関係を説明する。図2は図1から蛍光体樹脂12を取り去ったLED装置10の斜視図である。ダム材11の内側には4個のLED素子22が配列している。反射性シリコーン樹脂21(反射部材)はダム材の内側領域のなかでLED素子22が占めていない領域に隙間なく存在する。反射性シリコーン樹脂21は、溶媒とともに反射性粒子として二酸化チタンをシリコーン樹脂に混練し、このシリコーン樹脂をダム材11とLED素子22の隙間に流動塗布し焼結したものである。
【0020】
ダム材11の内側の底部に流動塗布した反射性シリコーン樹脂21は、その上面をLED22の上面より低くし、LED22の側面から出射する光を妨害しないようにする。反射性シリコーン樹脂21は厚さを略30〜50μmにする。この厚さが30μmより小さいと反射性シリコーン樹脂21の反射特性が回路基板13の表面の影響をおおきく受ける。厚さが30μm以上になると実用的なレベルになり、50μmあれば略完全に回路基板13の影響を受けなくなる。
【0021】
図3により反射性シリコーン樹脂21の下部を説明する。図3は図2から反射性シリコーン樹脂21を取り去ったLED装置10の斜視図である。反射性シリコーン樹脂21を取り去ると、ダム材11の内側に+電極14及び−電極15に加え接続用の電極31,32、33が現れる。LED素子22はフリップチップ実装され、これらの電極14,15,31,32,33とLED素子22のアノード及びカソードがバンプを介して接続している。これらのLED素子22は直列接続している。
【0022】
電極14,15,31,32,33は反射性シリコーン樹脂21に覆われているので反射電極とする必要がない。つまり電極14,15,31,32,33の表面は、反射率は高いが硫化やマイグレーションへの対策が必要な銀層ではなく、着色し反射率もそれほど高くないが安定な金層を備えている。
【0023】
図4によりLED装置10の製造方法を説明する。図4はLED装置10の製造方法の説明図である。一般的にLED装置10を製造する場合、複数の回路基板13が連結した集合基板にLED装置10を形成し、最後に集合基板を切断して個片化することが多い。しかしながら本実施形態では、説明を簡単にするため単個の回路基板13で製造工程を説明している。また回路基板13に実装されているLED素子22も1個とした。
【0024】
(a)は回路基板13上にLED素子22を実装してからダム材11を形成する工程を示している。先ず回路基板13にLED素子22をフリップチップ実装する。回路基板13の電極とLED素子22の電極は金錫共晶で接合する。この金錫共晶接合は、接合温度が約300℃であり、回路基板13をマザー基板にリフロー(温度は約260℃)するとき接合部が固体のまま維持されているという特徴がある。次にLED素子22を実装したらディスペンサで硬化前のダム材11を配置する。このダム材11は、約150℃で硬化させる。LED装置10の発光色を精度良くコントロールするためには蛍光体樹脂12の厚さも精度良くコントロールされる必要がある。蛍光体樹脂12は塗布量で規定されるた
め、厚さを精度よくするためにはダム材11の形状も高精度である必要がある。
【0025】
(b)は反射性シリコーン樹脂21を配置する工程である。ダム材11の内側の領域にLED素子22の上面を超えないように、ディスペンサでダム材11とLED素子22の間の領域に硬化前の反射性シリコーン樹脂21を塗布する。図示していないが、LED素子22同士の隙間にも反射性シリコーン樹脂21をいき亘らせる。焼結温度は約150℃であり、焼結後の反射性シリコーン樹脂21の厚さが50μm程度になると回路基板13表面が完全に見えなくなる。
【0026】
(c)はダム材11の内側の領域においてLED素子10を蛍光体樹脂12で封止する工程である。ディスペンサにより正確な量の蛍光体樹脂12をダム材11の内側の領域に充填し、150℃で蛍光体樹脂12を硬化させる。
【0027】
本発明はもともと備えられていたダム材を活用し、塗布により反射部材の正確な配置を簡単に実現したものである。本実施形態ではLED素子10を回路基板に実装した後、反射部材を流動塗布しているので、反射部材はLED素子接合時の高温の影響を受けることがないためシリコーンをはじめとするさまざまな樹脂が使えるようになる。また、反射部材は樹脂に限られず、オルガノポリシロキサン等のバインダー中に、溶媒とともに二酸化チタン粒子等の反射性粒子を混練した反射性セラミックインクでも良い。このセラミックインクはガラス質でありながら触媒により150℃程度の比較的低い温度で焼結できる。また無機質であるためLED素子22の発光で劣化せず長寿命化に寄与できるという特徴もある。
【0028】
本実施形態では封止樹脂として蛍光体樹脂12を使っていたが、封止樹脂は必ずしも蛍光体を含有しなくても良く、透明な封止樹脂や散乱材を混練した封止樹脂であっても良い。また蛍光体も封止樹脂中に混練させることに限定する必要はなく、樹脂の上部に蛍光体層を形成したりLED素子22の周辺部だけに蛍光体層を局在化させたりしても良い。
【0029】
本実施形態ではLED素子22をフリップチップ実装していた。しかしながらLED素子の実装方法はフリップチップ実装に限られず、LED素子の半導体層をLED装置の上面側に向け、ワイヤで給電するフェイスアップ実装法であっても良い。なお本実施形態で採用したフリップチップ実装用のバンプには電解メッキ法等で形成したメッキバンプやスタッドバンプが使える。このときメッキバンプは厚さが20〜30μm程度であり、スタッドバンプは厚さが100μm前後なので、反射部材を流動塗布すると回路基板13とLED素子22の隙間に反射部材21が入り込む。LED素子22の下に反射部材を配置したくない場合は、LED素子22下の領域に予めアンダーフィル材を配置しておくと良い。
【符号の説明】
【0030】
10…LED装置(半導体発光装置)、
11…ダム材、
12…蛍光体樹脂(封止樹脂)、
13…回路基板、
14…+電極、
15…−電極、
16…合わせマーク、
21…反射性シリコーン樹脂(反射部材)、
22…LED素子(半導体発光素子)、
31,32,33…電極。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子を実装した回路基板上に該半導体発光素子を取り囲むダム材を備え、該ダム材が取り囲んだ領域に封止樹脂を充填し、該封止樹脂で前記半導体発光素子を封止する半導体発光装置において、
前記ダム材が取り囲む領域の底部に流動塗布した反射部材を備え、
該反射部材の上面が前記半導体発光素子の上面より低い
ことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
前記反射部材の厚みが略30〜50μmであることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記反射部材が反射性粒子を混練したシリコーン樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記反射部材が反射性粒子を混練したセラミックインクであることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
本発明の半導体発光装置の製造方法は、半導体発光素子を実装した回路基板上に該半導体発光素子を取り囲むダム材を備え、該ダム材が取り囲んだ領域に封止樹脂を充填し、該封止樹脂で前記半導体発光素子を封止する半導体発光装置の製造方法において、
前記回路基板に前記半導体発光素子を実装し前記ダム材を形成する工程と、
前記ダム材の内側の領域であって前記半導体発光素子の占める領域を除いた領域に硬化前の前記反射部材を流し込み、該反射部材を硬化させる工程と、
前記ダム材の内側の領域に硬化前の前記封止樹脂を充填し、該封止樹脂を硬化させる工程と
を備えることを特徴とする半導体発光装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−54383(P2012−54383A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195439(P2010−195439)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】