説明

半導体発光装置

【課題】、照射面に色むらが生じず、目的とする色を容易に演色可能な半導体発光装置を提供する。
【解決手段】配線基板と、
該配線基板に実装され、発光波長が360nm〜480nmの範囲内である複数の発光ダイオード素子と、
該発光ダイオード素子から放射される光の少なくとも一部を波長変換する蛍光体を含有し、該発光ダイオード素子を個別に被覆する複数の蛍光体含有層と
を有する
ことを特徴とする、半導体発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種照明装置等に使用可能であり、多様な色を演色可能な半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光装置は、携帯端末を始めとして、家電等の表示装置、室内用の照明装置等として、広く用いられている。半導体発光装置は、例えば、所定の配線パターンを設けた基板上に、正負一対の電極を設け、その電極上に発光ダイオード素子を接着することにより構成される。また、例えば、シリコーン樹脂等の封止部に蛍光体を含有させて発光ダイオード素子上、または、発光ダイオード素子の周辺に配置することにより、発光ダイオード素子から発光される光の波長を変換し、異なる波長の光を出すことも可能となる(例えば、特許文献1〜3)。例えば青色波長領域の光を発する発光ダイオード素子の表面に、青色波長領域の光を黄色波長領域の光に変換する蛍光体を含有する蛍光体含有層を設け、白色光を得る半導体発光装置等が、照明装置として実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−168235
【特許文献2】特開2003−110144
【特許文献3】国際公開第2008−018548号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこのような半導体発光装置を用いた照明装置では、発光ダイオード素子からの光の一部が蛍光体含有層を透過してしまうことがあり、照射面の中央部が青色となったり、その周囲に黄色のリングが生じる等して照射面に色むらが生じ、均一な白色光が得られない等の課題があった。
【0005】
また照明装置として、例えば発光波長域の異なる複数の発光ダイオード素子を一つの装置内に複数配置し、これらの発光ダイオード素子のオンオフや電力量を制御することにより、種々の色を演色する装置も実用化されている。しかしながら、発光ダイオード素子から発せられる光は指向性が高く、混色した際に色むらが生じること等があり、照射面の色度を均一にすることが難しいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、半導体発光装置内に配置される発光ダイオード素子を、それぞれ個別に蛍光体含有層によって被覆することにより、例えば照明装置に用いた場合に照射面に色むらが生じず、均一な色度とすること等が可能であることを見出し、本願に至った。本発明の要旨は、以下に存する。
【0007】
(1)配線基板と、該配線基板に実装され、発光波長が360nm〜480nmの範囲内である複数の発光ダイオード素子と、該発光ダイオード素子から放射される光の少なくとも一部を波長変換する蛍光体を含有し、該発光ダイオード素子を個別に被覆する複数の蛍光体含有層とを有することを特徴とする、半導体発光装置。
(2)該蛍光体含有層がそれぞれ、該発光ダイオード素子から放射される光を赤色領域に波長変換する赤色蛍光体を含有する赤色蛍光体含有層と、該発光ダイオード素子から放射される光を緑色領域に波長変換する緑色蛍光体を含有する緑色蛍光体含有層と、該発光ダ
イオード素子から放射される光を青色領域に波長変換する青色蛍光体を含有する青色蛍光体含有層とが、この順に発光ダイオード素子側から積層されている積層体であることを特徴とする、(1)に記載の半導体発光装置。
(3)該蛍光体含有層から出射する一次光の色度がそれぞれ異なる、2種以上の該蛍光体含有層を有することを特徴とする、(1)に記載の半導体発光装置。
(4)各発光ダイオード素子の制御により、該半導体発光装置から出射する出射光の色度が可変であることを特徴とする、(3)に記載の半導体発光装置。
(5)各該蛍光体含有層の投影面積が、5mm以下であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の半導体発光装置。
(6)該発光ダイオード素子の集積密度が4個/cm以上であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の半導体発光装置。
(7)蛍光体含有層の一つが2個以上16個以下の発光ダイオード素子を被覆することを特徴とする、(1)〜(6)のいずれかに記載の半導体発光装置。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の半導体発光装置を有することを特徴とする照明装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、近紫外光を放射する発光ダイオード素子を用い、この発光ダイオード素子を、個別に蛍光体含有層により被覆することにより、蛍光体含有層中の蛍光体を効率よく励起することが可能である。また蛍光体含有層から出射する、波長変換後の一次光は指向性が低いため混色が容易であり、半導体発光装置を照明装置等に用いた場合、照射面に色むらが生じにくいものとすることができる。また、本発明の装置構成によれば、各蛍光体含有層中の蛍光体の種類を個別に適宜選択することが可能であり、各蛍光体含有層から出射する一次光の色度を異なるものとすることも可能である。したがって、これらの一次光を利用して様々な色を演色可能な半導体発光装置とすることも可能である。またさらに、蛍光体含有層の塗布面積が小さいため、蛍光体の量を少ないものとすることができ、コストの面からも好ましい。また、発光ダイオード素子を個別に蛍光体含有層が被覆しているため、蛍光体含有層の表面積を大きなものとすることができ、さらに隣接する発光ダイオード素子間で、相互に出射する光を吸収すること等を低減することも可能となるため、光取り出し効率が向上するという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の半導体発光装置の一例を示す概略図であり、(a)は、光取出し面側から観察したときの概略平面図であり、(b)は、(a)におけるα−α部の概略断面図である。
【図2】(a)及び(b)は、本発明の半導体発光装置における蛍光体含有層の形状を説明するための説明図である。
【図3】(a)及び(b)は、本発明の半導体発光装置における蛍光体含有層の形状を説明するための説明図である。
【図4】本発明の半導体発光装置における蛍光体含有層の形状を説明するための概略断面図である。
【図5】本発明の半導体発光装置における蛍光体含有層の形状を説明するための概略断面図である。
【図6】本発明の半導体発光装置に用いられる配線基板の一例を示す概略平面図である。
【図7】(a)及び(b)は、本発明の半導体発光装置における蛍光体含有層の配置の例を説明するための模式図である。
【図8】本発明の実施例における蛍光体含有層の形成方法の一工程を示す工程図である。
【図9】本発明の実施例における蛍光体含有層の形成方法の一工程を示す工程図である。
【図10】本発明の実施例における蛍光体含有層の形成方法の一工程を示す工程図である。
【図11】本発明の実施例1及び実施例2の白色半導体発光装置より発光スペクトルをマルチチャンネル分光器で測定した結果である。
【図12】(a)及び(b)は、実施例1及び2の半導体発光装置を用いた場合のCIExy色度図である。(b)は、(a)の一部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の内容に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
【0011】
本発明の半導体発光装置の一例の概略図を図1に示す。図1(a)は、半導体発光装置を光取り出し面側から観察したときの概略平面図であり、図1(b)は、図1(a)におけるα−α部の概略断面図である。ただし、これらの図は本発明の半導体発光装置を説明するために模式的に表わしたものであり、各部材の縮尺等を正確に示すものではない。
【0012】
図1に示すように、本発明の半導体発光装置10は、配線基板1と、該配線基板1上に実装された複数の発光ダイオード素子2と、該発光ダイオード素子2をそれぞれ個別に被覆する蛍光体含有層3とを有するものである。以下、本発明の半導体発光装置の各構成について説明する。なお、以下の説明において、特に断りがない限り、一次光とは、各蛍光体含有層表面から出射する個々の光を指すものとし、出射光とは、半導体発光装置から出射する光、すなわち各一次光を集めた光を指すものとする。
【0013】
1.蛍光体含有層
本願発明の蛍光体含有層は、後述する発光ダイオード素子から放射される光の少なくとも一部を波長変換する蛍光体を含有し、該発光ダイオード素子を個別に被覆するものである。ここで、個別に被覆する、とは、通常1つの発光ダイオード素子に対して、1つの蛍光体含有層が形成されることをいうが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば2つ以上の発光ダイオード素子が、1つの蛍光体含有層により被覆されている態様も含むものとする。なお、一つの蛍光体含有層により被覆される発光ダイオード素子の数の上限は、通常16であり、好ましくは9、さらに好ましくは4である。
【0014】
また、各蛍光体含有層に含有される蛍光体の種類は適宜選択され、「5.半導体発光装置の構造」の項で詳しく説明するように、各蛍光体含有層から出射する一次光は全て同一の色度を有していてもよく、また異なる色度を有していてもよい。
【0015】
例えば発光ダイオード素子から放射される光の波長が紫外または紫の場合は、蛍光体として赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体を用いることによりRGB(赤色と緑色と青色)の3原色の光を発生させる、または、BY(青色と黄色)、RG(赤色と緑色)などの補色関係にある波長の光に変換することにより、一次光として白色光を得ることができる。また、発光ダイオード素子から放射される光の波長が青色光の場合には、黄色蛍光体によりY(黄色)に波長変換する、または、赤色蛍光体と緑色蛍光体によりRG(赤色と緑色)に波長変換し(目的等に応じて、さらに黄色蛍光体によりY(黄色)に波長変換してもよい)、発光ダイオード素子の青色発光との混色により、一次光として白色光を得ることができる。
また本発明においては、各蛍光体含有層からの一次光を、様々な色温度を有する白色光としてもよいが、例えば、青色光や、赤色光、緑色光等、所望の色としてもよい。
【0016】
このような蛍光体含有層の形状は、本発明の目的及び効果を損なわない限り特に制限は
ないが、通常、各発光ダイオード素子を封止する形状とされる。例えば図2(a)及び(b)に示すように表面が平坦な形状を有する層状としてもよく、また例えば図3(a)に示すような砲弾型状としてもよく、また例えば図3(b)に示すようなレンズ形状等としてもよい。また、例えば図4に示すように、円柱状もしくは四角柱状としてもよく、図5に示すように、円錐状もしくは四角錐状としてもよい。
【0017】
また、蛍光体含有層は例えば図2(a)及び図3(a)に示すように単層体としてもよく、例えば図2(b)及び図3(b)に示すように積層体としてもよい。
単層体とする場合には、少なくとも1種、あるいは複数種の蛍光体を含有する単一の層とすることができる。蛍光体は単層体中に均一に、あるいは連続した濃度分布を持って含有される。このような単層体(蛍光体含有層)から出射する一次光は、発光ダイオード素子から放射される光を蛍光体が波長変換した光であり、蛍光体による変換後の波長範囲の光となる。また例えば単層体(蛍光体含有層)中に複数種の蛍光体が含有されている場合には、各蛍光体による変換後の光の合成光となる。
【0018】
なお、上記単層体(蛍光体含有層)が発光色(発光波長ピーク)の異なる複数種の蛍光体を含有し、特に点灯使用条件において電気、熱、および光に対して不安定な特定の蛍光体を含む場合には、その特定の蛍光体のみを発光ダイオード素子から離し、他の安定な蛍光体を発光ダイオード素子近傍に配置した層構造としても良い。
【0019】
また、蛍光体含有層を積層体とする場合には、少なくとも1種、あるいは複数種の蛍光体を含有する層を複数層積層したものとすることができる。蛍光体は、各層中に均一に、あるいは連続した濃度分布を持って含有される。このような積層体(蛍光体含有層)から出射する一次光は、発光ダイオード素子から放射される光を、各層中の蛍光体が波長変換した光の合成光となる。したがって、各層の組み合わせにより、蛍光体含有層一次光の色度等が決定される。
【0020】
蛍光体含有層を積層体とする場合の各層の例としては、図2(b)及び図3(b)に示すように、例えば発光ダイオード素子2から放射される光を赤色領域に波長変換する赤色蛍光体を含有する赤色蛍光体含有層3R、発光ダイオード素子2から放射される光を緑色領域に波長変換する緑色蛍光体を含有する緑色蛍光体含有層3G、発光ダイオード素子2から放射される光を青色領域に波長変換する青色蛍光体を含有する青色蛍光体含有層3B等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、任意の波長領域に波長変換する蛍光体を含有する層を用いることができる。
【0021】
上記いずれの場合においても、蛍光体含有層の膜厚(蛍光体含有層を積層体とする場合には積層体全体の膜厚)は、通常20μm以上、好ましくは50μm以上、さらに好ましくは75μm以上である。また通常3000μm以下、好ましくは2000μm以下、さらに好ましくは1500μm以下である。これにより、発光ダイオード素子から放射される光を効率よく波長変換することが可能となる。
【0022】
また、各蛍光体含有層の個々の大きさは、本発明の目的及び効果を損なわない限り特に制限はなく、通常発光ダイオード素子の大きさに応じて適宜選択されるが、中でも投影面積が5mm以下であることが好ましく、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.25mm以下である。上記値以下とすることにより、半導体発光装置内に発光ダイオード素子を高集積化することが可能となり、大光束が得られるものとすることができる。なお、本発明でいう蛍光体含有層の投影面積とは、各蛍光体含有層を、半導体発光装置の光取り出し面側から投影した形状の面積をいうこととする。また、蛍光体含有層中に複数の発光ダイオード素子を含む場合は、その数に応じて蛍光体含有層の大きさも大きくすることが好ましい。
【0023】
ここで、蛍光体含有層は、通常、発光ダイオード素子及び配線基板を封止するための封止部材、及び上記発光ダイオード素子から発せられる光の少なくとも一部、もしくは全部を吸収し、任意の波長に波長変換する無機または有機の蛍光体を含有するものとすることができる。またさらに、蛍光体含有層は必要に応じチキソ剤や屈折率調整剤、光拡散剤等を含有していてもよい。
また、各蛍光体含有層間の距離は、隣接する発光ダイオード素子間で、相互に出射する光を吸収すること等を低減する程度離れていることが好ましい。これにより光取り出し効率が向上することが期待される。具体的には、各蛍光体含有層間の隙間は、50μm以上、好ましくは100μm以上、さらに好ましくは200μm以上であることが好ましく、集積化の観点からは1.5mm以下であることが好ましい。
【0024】
(封止部材)
蛍光体含有層に用いる封止部材は特に限定されず、通常、発光ダイオード素子を覆ってモールディングすることのできる硬化性材料を用いることができる。硬化性材料とは、流体状の材料であって、何らかの硬化処理を施すことにより硬化する材料のことをいう。ここで、流体状とは、例えば液状又はゲル状のことをいう。
【0025】
硬化性材料としては、無機系材料及び有機系材料並びに両者の混合物のいずれを用いることも可能である。
無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液、またはこれらの組み合わせを固化した無機系材料(例えばシロキサン結合を有する無機系材料)等を挙げることができる。
【0026】
一方、有機系材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体例を挙げると、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0027】
従来、半導体発光装置用の蛍光体分散材料としては、一般的にエポキシ樹脂が用いられてきたが、本発明においては特に、発光ダイオード素子からの発光に対して劣化が少なく、耐熱性にも優れる珪素含有化合物を使用することが好ましい。
【0028】
珪素含有化合物とは分子中に珪素原子を有する化合物をいい、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系材料)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。これらの中でも、透明性、接着性、ハンドリングの容易さや、硬化物が応力緩和力を有する点から、シリコーン系材料が好ましい。半導体発光装置用シリコーン樹脂に関しては例えば特開平10−228249号公報や特許2927279号公報、特開2001−36147号公報などで封止剤への使用、特開2000−123981号公報において波長調整コーティングへの使用が試みられている。
【0029】
また、光取り出し効率の面から、封止部材は膜厚1mmでの350nm以上500nm以下の発光波長における光透過率が、80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上であり、また通常98%以下である。
【0030】
また封止部材には、本発明の効果を著しく損なわない限り、上記の無機系材料及び/又は有機系材料などに、更にその他の成分を混合して用いることも可能である。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0031】
(蛍光体)
本発明の半導体発光装置に用いられる蛍光体としては、後述する発光ダイオード素子から放射される光、すなわち360〜480nmの範囲の光の少なくとも一部を波長変換励起することが可能な下記の赤色、黄色、緑色、および青色蛍光体等が挙げられ、これらより選択される1種以上を単独で、または2種以上を任意の組み合わせおよび任意の比率で使用することができる。
【0032】
蛍光体の組成に特に制限はないが、母体結晶となる、Y、YVO、ZnSiO、YAl12、SrSiO等に代表される金属酸化物、(Ca,Sr)AlSiN等に代表される金属窒化物、Ca(POCl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物、YS、LaS等に代表される酸硫化物等にCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活元素又は共付活元素として組み合わせたものが挙げられる。表1に、好ましい結晶母体の具体例を示す。
【0033】
なお、本発明の例示では、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。例えば、「YSiO:Ce3+」、「YSiO:Tb3+」及び「YSiO:Ce3+,Tb3+」を「YSiO:Ce3+,Tb3+」と、「LaS:Eu」、「YS:Eu」及び「(La,Y)S:Eu」を「(La,Y)S:Eu」とまとめて示している。省略箇所はカンマ(,)で区切って示す。
【0034】
【表1】

【0035】
但し、上記の母体結晶及び付活元素又は共付活元素は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は360〜480nmの範囲の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
【0036】
具体的には、蛍光体として以下に挙げるものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。なお、以下の例示では、前述の通り、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。
【0037】
[橙色ないし赤色蛍光体]
橙色ないし赤色蛍光体としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。
この際、同色併用蛍光体である橙色ないし赤色蛍光体の発光ピーク波長は、通常570nm以上、好ましくは580nm以上、より好ましくは585nm以上、また、通常780nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは680nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0038】
以上の中でも、赤色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、(La,Y)S:Eu、Eu(ジベンゾイルメタン)・1,10−フェナントロリン錯体等のβ−ジケトン系Eu錯体、カルボン酸系Eu錯体、KSiF:Mnが好ましく、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Sr,Ca)AlSi(N,O)
:Eu、(La,Y)S:Eu、KSiF:Mnがより好ましい。
【0039】
また、橙色蛍光体としては、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Ceが好ましい。
【0040】
[青色蛍光体]
青色蛍光体を使用する場合、当該青色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、青色蛍光体の発光ピーク波長は、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上、また、通常500nm未満、好ましくは490nm以下、より好ましくは480nm以下、さらに好ましくは470nm以下、特に好ましくは460nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0041】
以上の中でも、青色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu、(Ba,Ca,Mg,Sr)SiO:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu、(Ba,Ca,Sr)MgSi:Euが好ましく、(Ba,Sr)MgAl1017:Eu、(Ca,Sr,Ba)10(PO(Cl,F):Eu、BaMgSi:Euがより好ましく、Sr10(POCl:Eu、BaMgAl1017:Euが特に好ましい。
【0042】
[緑色蛍光体]
緑色蛍光体を使用する場合、当該緑色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、緑色蛍光体の発光ピーク波長は、通常500nm以上、中でも510nm以上、更には515nm以上、また、通常550nm未満、中でも542nm以下、更には535nm以下の範囲であることが好ましい。この発光ピーク波長が短過ぎると青味を帯びる傾向がある一方で、長過ぎると黄味を帯びる傾向があり、何れも緑色光としての特性が低下する場合がある。
【0043】
以上の中でも、緑色蛍光体としては、Y(Al,Ga)12:Ce、CaSc:Ce、Ca(Sc,Mg)Si12:Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Si,Al)(O,N):Eu(β−sialon)、(Ba,Sr)Si12:N:Eu、SrGa:Eu、BaMgAl1017:Eu,Mnが好ましい。
【0044】
本発明の半導体発光装置を照明装置に用いる場合には、Y(Al,Ga)12:Ce、CaSc:CeCa(Sc,Mg)Si12:Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Si,Al)(O,N):Eu(β−sialon)、(Ba,Sr)Si12:N:Euが好ましい。
【0045】
また、本発明の半導体発光装置を画像表示装置に用いる場合には、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Si,Al)(O,N):Eu(β−sialon)、(Ba,Sr)Si12:N:Eu、SrGa:Eu、BaMgAl1017:Eu,Mnが好ましい。
【0046】
[黄色蛍光体]
黄色蛍光体を使用する場合、当該黄色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常62
0nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0047】
以上の中でも、黄色蛍光体としては、YAl12:Ce、(Y,Gd)Al12:Ce、(Sr,Ca,Ba,Mg)SiO:Eu、(Ca,Sr)Si:Euが好ましい。
【0048】
[好ましい組み合わせ]
本発明の半導体発光装置を照明装置に用いる場合には、赤色蛍光体として(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu、青色蛍光体として(Ca,Sr,Ba)MgAl1017:Eu、緑色蛍光体としてY(Al,Ga)12:Ce、CaSc:Ce、Ca(Sc,Mg)Si12:Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Si,Al)(O,N):Eu(β−sialon)、または、(Ba,Sr)Si12:N:Euの組み合わせを用いることが好ましい。
【0049】
また、本発明の半導体発光装置を画像表示装置に用いる場合には、赤色蛍光体として(Ca,Sr,Ba)AlSiN:Eu、青色蛍光体として(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu、緑色蛍光体として(Sr,Ba)SiO:Eu、(Si,Al)(O,N):Eu(β−sialon)、(Ba,Sr)Si12:N:Eu、SrGa:Eu、BaMgAl1017:Eu,Mnの組み合わせを用いることが好ましい。
【0050】
[その他の蛍光体]
蛍光体としては、上述したもの以外の蛍光体を含有させることも可能である。例えば、蛍光体含有層自体をイオン状の蛍光物質や有機・無機の蛍光成分を均一・透明に溶解・分散させた蛍光性樹脂で形成することもできる。
【0051】
[蛍光体の粒径]
蛍光体含有層中の蛍光体の粒径は、発光ダイオード素子から放射される光が十分に散乱される粒径であることが好ましい。
蛍光体の粒径は特に制限はないが、中央粒径(D50)で、通常0.1μm以上、好ましくは2μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。蛍光体の中央粒径(D50)が上記範囲にある場合は、蛍光体含有層において、発光ダイオード素子から放射された光が充分に散乱される。また、発光ダイオード素子から放射された光が充分に蛍光体粒子に吸収されるため、波長変換が高効率に行なわれると共に、蛍光体から発せられる光が全方向に照射される。これにより、複数種類の蛍光体から発せられる光を混色して、蛍光体含有層から所望の色(例えば、白色)の一次光を得ることができると共に、均一な色と照度が得られる。一方、蛍光体の中央粒径(D50)が上記範囲より大きい場合は、蛍光体が蛍光体含有層の空間を充分に埋めることができないため、発光ダイオード素子から放射された光が充分に蛍光体に吸収されない可能性がある。また、蛍光体の中央粒径(D50)が、上記範囲より小さい場合は、蛍光体の発光効率が低下するため、照度が低下する可能性がある。
【0052】
蛍光体粒子の粒度分布(QD)は、蛍光体含有層での粒子の分散状態をそろえるために小さい方が好ましいが、小さくするためには分級収率が下がってコストアップにつながるので、通常0.03以上、好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.07以上である。また、通常0.4以下、好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下である。
【0053】
なお、中央粒径(D50)および粒度分布(QD)は、重量基準粒度分布曲線から求める
ことが出来る。重量基準粒度分布曲線は、レーザ回折・散乱法により粒度分布を測定し得られるもので、具体的には、例えば以下のように測定することが出来る。
【0054】
[蛍光体の混合方法]
蛍光体粒子を硬化性材料(封止部材)に含有させる際の混合方法は特に制限されない。例えば、蛍光体粒子の分散状態が良好な場合であれば、上述の硬化性材料に後混合するだけでよい。即ち、硬化性材料と蛍光体とを混合し、分散液を作製すればよい。また、例えばアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物を硬化性材料として用いる場合、その硬化性材料中で蛍光体粒子の凝集が起こりやすいのであれば、加水分解前の原料化合物を含む反応用溶液(以下適宜「加水分解前溶液」という。)に蛍光体粒子を前もって混合し、蛍光体粒子の存在下で加水分解・重縮合を行なうと、蛍光体粒子の表面が一部シランカップリング処理され、蛍光体粒子の分散状態が改善される。
【0055】
なお、蛍光体の中には加水分解性のものもあるが、アルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物を硬化性材料として用いた場合には、塗布前の流体状態において、水分はシラノール体として潜在的に存在し、遊離の水分はほとんど存在しないので、そのような蛍光体でも加水分解してしまうことなく使用することが可能である。また、加水分解・重縮合後の硬化性材料を脱水・脱アルコール処理を行なってから使用すれば、そのような蛍光体との併用が容易となる利点もある。
【0056】
また、アルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物を硬化性材料として用い、さらに、蛍光体粒子や無機粒子を硬化性材料に含有させる場合には、粒子表面に分散性改善のため有機配位子による修飾を行なうことも可能である。
【0057】
[蛍光体の含有率]
蛍光体含有層中の蛍光体の濃度は、発光ダイオード素子から発せられる光が十分に吸収される濃度であることが好ましい。
具体的には、蛍光体含有層における蛍光体の濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、その適用形態により自由に選定できる。ただし、蛍光体含有層中の蛍光体総量(濃度)として、通常5重量%以上、好ましくは6重量%以上、より好ましくは7重量%以上、また通常90重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。発光ダイオード素子に最も近い領域では、発光ダイオード素子から放射される光を良く吸収・分散するために蛍光体含有層中の蛍光体濃度は20重量%以上とすることが好ましい。
【0058】
また、流体状の硬化性材料を用いる場合の蛍光体の含有率は、硬化性材料中の蛍光体の含有率が前記範囲に収まるように設定すればよい。したがって、流体状の硬化性材料が硬化性材料硬化工程において重量変化しない場合は硬化性材料における蛍光体の含有率は蛍光体含有層における蛍光体の含有率と同様になる。また、流体状の硬化性材料が溶媒等を含有している場合など、硬化性材料が硬化性材料硬化工程において重量変化する場合は、その溶媒等を除いた硬化性材料中における蛍光体の含有率が蛍光体含有層における蛍光体の含有率と同様になるようにすればよい。
【0059】
蛍光体含有層の中の蛍光体含有率や濃度分布は、仕込みより計算できるほか、蛍光体含有層硬化物を化学溶解して蛍光体に特有な元素をICP分析したり、硬化物の断面を作製し、写真撮影後画像処理をおこなったりして求めることができる。以下に、画像処理による濃度分布を求める例を示す。
(1)発光ダイオード素子より蛍光体含有層を剥がし取り、カッターナイフなどで切断して深さ方向の観察が出来る断面を作製する。
(2)蛍光体含有層断面にブラックライトを照射し、蛍光体を各色に発光させた状態で写真を撮影する。
(3)断面写真を画像処理ソフトで処理し、RGB成分ごとに画像を分解して各蛍光体を強調した画像を取得し、蛍光体粒子の個数をカウントする。
(4)深さ方向の濃度分布を求める。
【0060】
[蛍光体含有層の形成方法]
蛍光体含有層を各発光ダイオード素子上に個別に形成する方法としては、目的とする蛍光体含有層の形状や、装置構成等に応じて適宜選択される。形成方法の例として、蛍光体を上記封止部材中に分散させた分散液を作製し、配線基板上に実装された発光ダイオード素子上にパターン上に塗設する方法等が挙げられる。蛍光体含有層が積層体とされる場合には、この塗設を繰り返し行なうこと等により形成可能である。
【0061】
塗設方法の例としては、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等の印刷法、ディスペンサー等を用いた塗布方法が挙げられる。また例えば、封止部材として感光性樹脂等を用い、全ての発光ダイオード素子を覆うように上記分散液を塗布した後、目的とする領域、すなわち特定の発光ダイオード素子上の感光性樹脂のみを硬化させるようマスク露光してパターニングする方法等も挙げられる。
【0062】
2.発光ダイオード素子
(発光波長)
発光ダイオード素子としては、通常波長360nm以上480nm以下の範囲の光、すなわち光、すなわち近紫外波長領域から青色領域の光を発するものが用いられる。具体的には、紫外線波長を放射する紫外発光ダイオード素子(発光ピーク波長300〜400nm)、紫色光を放射する紫色発光ダイオード素子(発光ピーク波長400〜440nm)、及び青色光を放射する青色発光ダイオード素子(発光ピーク波長440nm〜480nm)等を適用することができる。該発光ダイオード素子は、後述の蛍光体含有層中に含有される蛍光体や蛍光成分(以下、単に「蛍光体」ともいう。)を励起可能な光を放射することが可能なものであれば、その種類に特に制限はない。発光ダイオード素子の放射する光のピーク波長として、より好ましくは370nm以上であり、さらに好ましくは380nm以上である。またより好ましくは420nm以下であり、さらに好ましくは415nm以下である。
【0063】
(集積密度)
半導体発光装置内における発光ダイオード素子の集積密度は、本発明の目的及び効果を損なわない限り特に制限はないが、4個/cm以上が好ましく、より好ましくは16個/cm以上であり、さらに好ましくは20個/cm以上、特に好ましくは25個/cm以上である。また通常625個/cm以下であり、好ましくは400個/cm以下、より好ましくは256個/cm以下である。単位面積当たりの個数を上限値以下とすることにより、半導体発光装置から大光束を得やすくなり、また、下限値以上とすることにより、半導体発光装置を小型化することが可能となる。単位面積当たりの個数とは、半導体発光装置を光取り出し面側から投影した面を観察した際の、単位面積当たりに含まれる発光ダイオード素子の個数とする。
【0064】
また、半導体発光装置には、10cm以上の領域に、発光ダイオード素子を49個以上集積することが好ましく、より好ましくは64個以上、さらに好ましくは100個以上であり、特に好ましくは121個以上である。また通常900個以下、好ましくは625個以下、より好ましくは400個以下である。これにより、半導体発光装置から大光束を取り出すことが可能となる。なお、複数の発光ダイオード素子は、半導体発光装置内にランダムに配置していてもよいが、通常規則的に配置することが高集積化及び発光ダイオー
ド素子の制御の観点から好ましい。特に図1(a)に示すように、発光ダイオード素子2をマトリックス状に配置することが好ましい。
【0065】
隣接する発光ダイオード素子間の隙間(発光ダイオード素子の中心間の距離から発光ダイオード素子の一辺の長さを差し引いた距離)は、例えば白色半導体発光装置を光取り出
し面側から投影した面を観察した際における発光ダイオード素子の形状が矩形状であり、矩形の長辺の長さが350μmである場合には、0.01mm以上であることが好ましく、より好ましくは0.03mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上であり、特に好ましくは0.15mm以上である。また通常2.0mm以下であり、0.4mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3mm以下、さらに好ましくは0.2mm以下である。なお、配線基板に段差が設けられている場合には、各発光ダイオード素子間の隙間の距離は、立体的距離をいうこととし、配線基板の形状に沿って測定される値とする。下限値以上とすることにより、隣接する発光ダイオード素子どうしが接触することなく、精度よく発光ダイオード素子を配置することが可能である。また下限値以上とすることにより、個々の発光ダイオード素子を被覆する蛍光体含有層の形成も容易となる。また上限値以下とすることにより発光ダイオード素子を高密度に集積することが可能となる。
【0066】
上記間隔は、半導体発光装置を光取り出し面側から投影した面を観察した際における発光ダイオード素子の形状によって適宜選択され、例えば発光ダイオード素子の形状が矩形状である場合には、上記隙間が、矩形の長辺の長さの3%以上であることが好ましく、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上である。また通常500%以下とされ、好ましくは250%以下、さらに好ましくは200%以下である。上記範囲内の隙間を有することにより、白色半導体発光装置から、大光束が得られることが可能となる。
【0067】
さらに、隣接する発光ダイオード素子の中心間距離、すなわち各発光ダイオード素子の中心部から、隣接する発光ダイオード素子の中心部までの距離は、0.1mm以上であることが好ましく、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上である。また通常2.0mm以下であり、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.8mm以下である。下限値以上とすることにより、半導体発光装置から大光束が得られやすくなる。また上限値以下とすることにより、発光ダイオード素子を高密度に集積することが可能となる。なお、発光ダイオード素子の中心部とは、各発光ダイオード素子を半導体発光装置の光取り出し面側から投影した形状の中心部をいうこととし、例えば該投影形状がまた例えば該投影形状が矩形状である場合には、該矩形の対角線の交点をいうこととする。また、隣接する発光ダイオード素子の中心間距離とは、隣接する発光ダイオード素子の中心部どうしの長さが最短になる長さをいうこととする。
【0068】
(形状)
発光ダイオード素子の形状としては、例えば矩形状、円形状、多角形状等、本発明の効果及び目的を損なわない限り、任意の形状とすることができるが、発光ダイオード素子用基板の加工の容易さの点から、通常矩形状、もしくはそれに近い形状とされる。なお、半導体発光装置内に配置される全ての発光ダイオード素子の形状は、同一であってもよく、また異なっていてもよい。
【0069】
各発光ダイオード素子の面積としては、20000μm以上が好ましく、より好ましくは40000μm以上、さらに好ましくは80000μm以上である。また通常360000μm以下、好ましくは250000μm以下、より好ましくは200000μm以下である。下限値以上とすることにより、効率よく発光させることができ、上限値以下とすることにより、目的とする単位面積当たりの個数で発光ダイオード素子を配置可能となる。なお、本発明でいう発光ダイオード素子の面積とは、発光ダイオード素子を、半導体発光装置の光取り出し面側から投影した形状の面積をいうこととする。
【0070】
また、発光ダイオード素子の形状を矩形状とする場合には、一辺の長さが通常100μm以上であり、200μm以上であることが好ましく、より好ましくは250μm以上、さらに好ましくは300μm以上である。また600μm以下であることが好ましく、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは400μm以下である。上記範囲内とすることにより、目的とする集積密度で、発光ダイオード素子を配置可能となる。
【0071】
通常、発光ダイオード素子は、目的とする大きさに発光ダイオード素子用基板等を切断して作製されるが、この切断面の形状に凹凸がある場合、近接して発光ダイオード素子を配置することが難しくなる場合がある。したがって、発光ダイオード素子の側面は、平面性が高いことが好ましい。発光ダイオード素子の側面の平面性を高いものとする方法としては、発光ダイオード素子用基板等の切断を、例えばレーザースクライバー等により行なう方法が挙げられる。
【0072】
(具体例)
上記発光ダイオード素子として具体的には、発光ダイオード(以下、適宜「LED」と略称する。)や半導体レーザダイオード(以下、適宜「LD」と略称する。)等が使用できる。
中でも、発光ダイオード素子としては、発光ダイオード素子用基板上にGaN系化合物半導体層が形成されたGaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、上述の蛍光体含有層中の蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDにおいては、AlGaN発光層、GaN発光層、又はInGaN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でInGaN発光層を有するものが発光強度が非常に強いので、特に好ましい。GaN系LDにおいては、InGaN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度が非常に強いので、特に好ましい。
【0073】
なお、上記においてX+Yの値は通常0.8以上、1.2以下の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
【0074】
GaN系LEDとしては、通常、これら発光層、p層、n層、電極、及び発光ダイオード素子用基板を基本構成要素としたものとすることができ、発光層をn型とp型のAlGaN層、GaN層、又はInGaN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高く、好ましく、さらにヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率がさらに高く、より好ましい。これらの積層方法は、一般的な発光ダイオード素子の形成方法と同様とすることができる。
【0075】
また、本発明に用いられる発光ダイオード素子は、動作時の電力量が1素子あたり通常5W以下、好ましくは4W以下、更に好ましくは3W以下であり、通常0.060W以上、好ましくは0.065W以上、更に好ましくは0.070W以上である。動作時の電力量が小さすぎると光出力が総じて少なくなりコスト的にも不利となる傾向があり、大きすぎると放熱が困難となり、蛍光体や蛍光体含有層中に含まれる封止部材、発光ダイオード素子等が熱劣化したり電極マイグレーションによる故障を誘起する可能性がある。またこれらにより、得られる半導体発光装置の寿命が短くなる可能性がある。
【0076】
本発明の半導体発光装置において、上記発光ダイオード素子と、後述する配線基板との
接続方法は特に制限はなく、例えば発光ダイオード素子用基板がSiCやGaNなど導電性材料である場合には、例えば上面の電極を1個とする(シングルワイヤボンディング)構成とすることができる。また発光ダイオード素子用基板をサファイアなどの低屈折率絶縁性材料とする場合には、例えば発光層を上面、発光ダイオード素子用基板を下面とし、後述する配線基板に接着した後、発光層にp、n2個の電極を設けて金線等で基板にボンディングする(ダブルワイヤボンディング)構成、または発光層を下面、発光ダイオード素子用基板側を上面とし、後述する配線基板に接合する(フリップチップ実装)構成等とすることができる。
【0077】
本発明においては上記の構成の中でも、発光ダイオード素子を配線基板に直接、フリップチップ実装する構成が好ましい。これにより省スペース化を図ることができ、発光ダイオード素子を高密度に集積することが可能となる。
【0078】
また、発光ダイオード素子の使用目的に応じ、発光ダイオード素子の発光面及びその側面に向けて出射する光の割合を調整してもよい。これらは、発光ダイオード素子の発光面や側面のカット形状により制御することができる。例えば発光ダイオード素子側面を、発光層から出射する光の全反射を抑制する形状にカッティングすることにより、側面へ向けて出射する光の割合が多くなり光取り出し効率を向上させること等も可能である。
【0079】
3.配線基板
本発明の半導体発光装置における配線基板は、配線パターンを有するものであれば、特に制限はなく、例えば、絶縁性の基板上に、金属からなるプリント配線が施されたプリント基板を金属板と貼り合わせた構造等とすることができる。
図6に、配線基板の一例を示す概略平面図を示す。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。図6は、窒化アルミ等の絶縁性基板(図示せず)に、配線パターン10をめっきにより設けた例を示すものである。また、図6において示す寸法の単位はmmである。図6の配線基板においては、11個×11個の発光ダイオード素子が実装されるものとされ、発光ダイオード素子の実装位置としては、例えば図6のaで示される配線パターンの四辺形の一辺の中間位置に隣接する四辺形パターンを跨るよう(図中、aは3箇所しか指し示していないが、その他のパターンにおいても同様である。)にそれぞれ実装される。四辺形の一辺が凸部を有することにより、フリップ実装する発光ダイオード素子の位置を認識することが容易にすることができる。また、電極の間隔を四辺形の一辺として短くすると配線パターンの精度上難しいところ、凸部を設けることにより電極の間隔を四辺形の間隔よりも短くすることができる。図6は、隣接する発光ダイオード素子の中心間距離が2.0mmの場合であり、図6では示していないが、内部で並列配線等も可能である。
【0080】
(絶縁性の基板)
絶縁性の基板としては、例えばセラミック基板や、樹脂基板、ガラスエポキシ基板、樹脂中にフィラーを含有する複合樹脂基板等が挙げられる。特に、発光ダイオード素子の発熱を効率よく放熱するためには、配線基板が放熱基板であることが好ましい。放熱基板としては、例えばアルミナや窒化アルミニウム等のセラミック基板、高熱伝導性を有するフィラーを含有する複合樹脂基板などを好適に用いることができる。
【0081】
また絶縁性の基板の形状は、平板状に限定されるものではなく、半導体発光装置の種類や用途等に合わせて、種々の形状を採用することができる。例えば絶縁性の基板に段差を設けてもよい。具体的には、各発光ダイオード素子を実装する領域が凹部、各発光ダイオード素子間の領域が凸部となるような基板が挙げられ、この場合、隣接する発光ダイオード素子どうしの間で光が再吸収されてしまうこと等がないものとすることができ、より大光束が得られる。また、発光ダイオード素子を実装した後も表面を平坦とすることができ
、上述の蛍光体含有層を各種印刷法により形成しやすい、という利点もある。基板に段差を設ける方法としては、一般的な方法を用いることができ、例えば基板を積層することにより設けることができる。
【0082】
また、絶縁性の基板上には、発光ダイオード素子から発光される光を反射するための反射部材が形成されていてもよい。反射部材は、本発明の目的及び効果を損なわない位置であれば特にその形成位置や形状に制限はない。反射部材としては、例えば後述する配線パターンと同時にプリントされた金属からなる層等であってもよく、またセラミック、銀、アルミニウムなどの金属やコバール、銀−白金、銀−パラジウム等の合金、白色ソルダーレジスト等からなる層等であってもよい。またこれらは組み合わせて用いられてもよい。
【0083】
さらに、絶縁性の基板上には発光ダイオード素子から発生する熱を放熱させるための放熱部材が形成されていても良い。放熱部材は例えば銅、アルミニウムなどの金属からなる層等であって良く、また高放熱性の金属やセラミックスフィラーを高密度に分散した樹脂等であっても良い。
【0084】
(配線パターン)
配線パターンは特に制限はなく、半導体発光装置の種類や目的、発光ダイオード素子の実装方法等に合わせて、適宜選択される。例えば、発光ダイオード素子を配線基板に直接、フリップチップ実装する場合には、例えばパッドパターン、給電ランドパターン、及びこれらをつなぐ導線パターン等からなるパターン等とすることができる。なお、本発明において、配線パターンには、電極やバンプ等も含むこととする。
【0085】
給電ランドパターンは通常、発光ダイオード素子を実装する領域の外側に形成され、外部電源と電気的に接続され、外部電源から給電を受けるために用いられる。またパッドパターンは、上述した複数の発光ダイオード素子に対応して複数設けられ、発光ダイオード素子側の電極と接続される。また、給電ランドパターン及びパッドパターンは導線パターンを介して接続される。これらのパターンの形状は、目的に合わせて適宜選択され、例えば多層配線等としてもよい
【0086】
ここで、上述したように、発光ダイオード素子をマトリックス状に配置する場合には、直列及び並列を併用して接続するパターンとすることが、駆動電圧等及び発光ダイオード素子の制御の面から好ましい。このような方法としては、例えばマトリックス状に配置された発光ダイオード素子の行方向を直列、列方向を並列に接続する方法等が挙げられる。
なお、直列に接続する際の電圧は、各発光ダイオードのVf値に直列数を乗じた値となることから、電圧が通常300V未満、好ましくは250V未満となるように発光ダイオード素子を接続することが好ましい。
【0087】
本発明において、配線パターンに用いられる材料として好ましいものとしては、反射率が高いものであることが好ましい。具体的には、波長400nmの光の反射率が70%以上であることが好ましく、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上である。これにより、半導体発光装置の輝度を良好なものとすることができる。
【0088】
上記反射率の測定方法は、積分球等を用いて正反射光とともに拡散反射光も含めて測定する方法が好ましく、例えばコニカミノルタセンシング株式会社製分光測色計CM2600d等を用いて測定することが出来る。
【0089】
また、配線パターンに用いられる材料としては、通常、金、銀、銅、アルミニウム等が挙げられ、中でも金、銀、銅が輝度向上や輝度の維持効果を得やすいという面から好ましい。これらは1種のみを用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
4.その他の部材
なお、本発明の半導体発光装置には、上記以外の部材を有するものであってもよく、例えば反射部等を有するものであってもよい。また、例えば個々の、もしくは複数の蛍光体含有層を可視光透過性樹脂でドーム状に覆って、レンズ機能を持たせてもよい。
【0091】
可視光透光性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を用いることができ、それらの中でも特にエポキシ樹脂が好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を用いることができる。またさらに、可視光透光性樹脂には、必要に応じて粘度調整剤、拡散剤、紫外線吸収剤等の添加剤を1種または2種以上を任意の比率及び組み合わせで含有させてもよい。
【0092】
また、本発明においては、蛍光体含有層と発光ダイオード素子との間に、実質的に蛍光体を含有せず、発光ダイオード素子からの光の波長を変えることなく、発光ダイオード素子より発せられた光を蛍光体含有層へ導く導光層等を有してもよい。発光ダイオード素子と蛍光体含有層との間に導光層を介在させることにより、発光ダイオード素子を直接蛍光体含有層で覆う層構造の半導体発光装置に比べ、蛍光体を発光ダイオード素子から離して配することができる。その結果、蛍光体の紫外線による劣化を低減することができ、長期間、安定した機能を有する半導体発光装置とすることができる。また、導光層は実質的に蛍光体を含有しないので、発光ダイオード素子の発熱等により導光層の温度が上昇しても、蛍光体に与える影響は少ない。よって、温度による蛍光体の劣化も抑制することができる。導光層として具体的には、上述した蛍光体含有層における封止部材を含有する層等とすることができる。導光層中には、必要に応じてチキソ剤や屈折率調整剤、光拡散剤等を含有していてもよい。
【0093】
5.半導体発光装置の構成
上述したように、本発明の半導体発光装置は、配線基板と、該配線基板に実装された複数の発光ダイオード素子と、これらを個別に被覆する蛍光体含有層を少なくとも有する。各蛍光体含有層から出射する一次光は全て同一の色度を有していてもよく、また異なる色度を有していてもよい。
【0094】
例えば本発明の第一の実施形態として、全ての蛍光体含有層から出射する一次光が全て同一の色度を有する半導体発光装置等が挙げられる。本実施形態においては、蛍光体含有層から出射する一次光の色度が、半導体発光装置から出射する出射光の色度となる。本実施形態の具体例としては、例えば半導体発光装置からの出射光を白色とする場合等が挙げられ、例えば蛍光体含有層として、上述の青色蛍光体含有層、緑色蛍光体含有層、及び赤色蛍光体含有層が積層された積層体を用いる場合等が挙げられる。なおこのような構成とする場合には、特に蛍光体含有層を、赤色蛍光体含有層、緑色蛍光体含有層、青色蛍光体含有層をこの順に発光ダイオード素子側から積層した積層体とすることが好ましい。蛍光体による変換後の波長が短波長である蛍光体含有層が発光ダイオード素子側に配置されると、該変換後の波長の光が、より表面側の蛍光体含有層の蛍光体の励起に寄与してしまうことがある。したがって、上記のような層構成とすることにより、所望の白色光が得られやすい。
【0095】
また本発明の第二の実施形態として、出射する一次光の色度が異なる、2種以上の蛍光体含有層を有する半導体発光装置が挙げられる。本実施形態でいう出射する一次光の色度が異なる、とは、通常色度が0.01以上異なることをいう。なお、色度はCIExy色度図
で規定される値である。
【0096】
本実施形態においては、半導体発光装置から出射する出射光の色度は、上記各一次光の
色度、もしくはこれらの合成光の色度となる。例えば図7(a)及び(b)の模式図に示すような配置で、発光ダイオード素子をそれぞれ、赤色蛍光体含有層(図4中、Rで示す)、緑色蛍光体含有層(図7中、Gで示す)、及び青色蛍光体含有層(図7中、Bで示す)で被覆した場合、各発光ダイオード素子のオンオフ、及び電力流の制御等により、出射光の色度が可変となる。本発明でいう、出射光の色度が可変とは、出射光の色度が0.01以上異なるものとすることができることをいい、0.02以上変化させることが可能であることが好ましく、さらに好ましくは0.04以上である。
【0097】
例えば図7(a)または(b)に示すような配置で各蛍光体含有層が形成されている場合、赤色蛍光体含有層により被覆された発光ダイオード素子のみに通電した場合、出射光は赤色光となる。また例えば赤色蛍光体含有層及び緑色蛍光体含有層により被覆された発光ダイオード素子に通電した場合には、出射光は赤色光及び緑色光の合成光となる。また全ての発光ダイオード素子に通電した場合には赤色光、緑色光、及び青色光の合成光である白色光となる。また各発光ダイオード素子の電力量を調整することにより、各光の強度を調整することも可能である。
【0098】
したがって、本実施形態によれば、半導体発光装置から出射する出射光の輝度、色温度、及び彩度を任意に調整することが可能となる。なお、上記図7に示した模式図は、本実施形態の一例を説明するために示した図に過ぎず、蛍光体含有層の一次光の色は赤、青、緑に限定されるものではなく、任意の色とすることが可能である。また各色蛍光体含有層の配置も、これらに限定されるものではない。
【0099】
本実施形態においては、一次光の色度が異なる蛍光体含有層を通常2種以上用いることが好ましい。例えば昼光色〜昼白色〜白色〜温白色から電球色等の照明光源、CIE標準の光(A、B、C、及びD65)、太陽光(自然光)スペクトル等、近紫外光から近赤外光の広範囲スペクトルを有する出射光を再現可能となる。
【0100】
例えば半導体発光装置からの出射光を白色光とする場合に、好ましい蛍光体含有層の一次光の波長範囲の組み合わせの例としては、下記が挙げられる。
・2色混合の例
一次光の波長がそれぞれ400nm〜490nm(青色)及び560nm〜590nm(黄色)の組合せ、480nm〜500nm(青緑色)及び580nm〜700nm(赤色)の組合せ。上記の中でも波長が400nm〜490nm(青色)及び560nm〜590nm(黄色)の組合せが好ましい。
【0101】
・3色混合の例
一次光の波長がそれぞれ430nm〜500nm、500nm〜580nm、及び580nm〜700nmの組合せ、430nm〜480nm、480nm〜500nm、及び580nm〜700nmの組合せ、430nm〜500nm、560nm〜590nm、及び590nm〜700nmの組合せ。中でも430nm〜500nm、500nm〜580nm、及び580nm〜700nmの組合せが好ましい。
【0102】
・4色混合の例
一次光の波長がそれぞれ430nm〜500nm、500nm〜580nm、580nm〜620nm、及び620nm〜700nmの組合せ、430nm〜480nm、480nm〜500nm、500nm〜580nm、及び580nm〜700nmの組合せ、430nm〜480nm、480nm〜500nm、560nm〜590nm、及び590nm〜700nmの組合せ。中でも430nm〜500nm、500nm〜580nm、580nm〜620nm、及び620nm〜700nmの組合せが好ましい。
【0103】
・5色混合の例
一次光の波長がそれぞれ430nm〜480nm、480nm〜500nm、500nm〜580nm、580nm〜620nm、及び620nm〜700nmの組合せ。
【0104】
5.半導体発光装置の光学・電気特性
本発明の半導体発光装置は、全光束が80(lm)以上、好ましくは90(lm)以上、より好ましくは100(lm)以上である。
【0105】
光学・電気特性の測定は、まず、測定対象となる半導体発光装置を、測定精度が保たれるように、積分球内部に面した半導体発光装置以外の部分(配線基板やヒートシンクなど)は白色など反射効率の高い色とし、積分球などがついた分光光度計に取り付ける。この分光光度計としては、例えばオーシャンオプティクス株式会社製「USB2000」等が挙げられる。積分球を用いるのは、半導体発光装置から出射した全方向の光を計測し積分する、すなわち、計測されずに測定系外に漏れる光をなくすためである。
【0106】
次に、この半導体発光装置を点灯し、その発光スペクトル及び全光束(lm)を測定する。測定されたスペクトルは、通常蛍光体含有層から漏れ出た励起用の発光ダイオード素子からの光(以下、単に「励起光」と記す。)と、蛍光体により波長変換された光が重な
って観測される。
全光束(lm)は発光スペクトルの観測された全波長領域において各波長ごとの光束を積分することにより求めることが出来る。また、消費電力(W)は、半導体発光装置に流れる電流(A)と電圧(V)の積をとることにより求めることが出来る。
そして、上記のようにして求めた全光束(lm)を消費電力(W)で除することにより、発光効率も求めることが出来る。
【0107】
ここで、白色半導体発光装置における投入電力量は、例えばn個の発光ダイオード素子を実装する場合、投入電力量(W)=電圧Vf×電流If×n(個)により求められる。なお、電流は、通常0(mA)以上200mA以下程度とすることができる。
【0108】
また半導体発光装置から放射される光のうち、発光ダイオード素子から放射される光のピーク強度は、出射光の可視光スペクトルの極大値の通常2倍以下であり、好ましくは1.5倍以下である。上記範囲とすることにより、発光効率を最適化することができる。なお、光の強度は、スペクトルから測定される。
【0109】
また半導体発光装置からの出射光を白色とする場合の、半導体発光装置の平均演色評価指数Raは80以上が好ましく、より好ましくは90以上であり、さらに好ましくは95以上である。これにより、演色性に非常に優れるものとすることができる。平均演色評価指数は、RaはJIS Z 8726により測定される。
【0110】
またこの際、半導体発光装置からの出射光の色温度は、その用途等に応じて適宜選択されるが、通常2000K以上、好ましくは2500K以上、より好ましくは2700K以上であり、また通常12000K以下、好ましくは10000K以下、より好ましくは7000K以下である。この範囲内とすることにより、寒色、暖色の見え方が良好であり、照明装置等の用途に好適となる。
【0111】
6.半導体発光装置の用途
本発明の半導体発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能である。本発明の半導体発光装置の用途の具体例として、例えば、従来のハロゲンランプ等の照明ランプの代替としてのランプ、薄型照明などといった種々の照明装置用の光源、および液晶ディスプレイなどの画像表示装置用の光源(バック
ライトおよびフロントライトなど)が挙げられる。
【0112】
また、画像表示装置は、半導体発光装置を備えた光源と、該光源からの光の照射を受ける、液晶パネルなどの光シャッタを備えた表示パネルを有するものとすることができる。画像表示装置がカラー画像を表示するものである場合、本発明の半導体発光装置をカラーフィルタと併用してもよい。また、本発明の半導体発光装置を照明装置や画像表示装置の光源として用いる場合、半導体発光装置を単独で用いてもよいし複数の半導体発光装置を組み合わせて用いてもよい。
【実施例】
【0113】
以下、実施例を示して本発明を更に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
【0114】
[実施例]
(配線基板の作製)
25mm×35mmの窒化アルミニウム基板上に、121個(11個×11個)のパッドパターンがマトリックス状に形成された配線基板を複数準備した。マトリクス状のパッドパターンは、列方向が並列、行方向が直列、すなわち11直列11並列となるように接続した。
該パッドパターンの位置は、発光ダイオード素子の中心間距離が2.0mmになるように調整した。この時の発光ダイオード素子間の隙間距離は1.65mm、発光ダイオード素子の単位面積当たりの個数は、268個/cm2である。
【0115】
(発光ダイオード素子の形成)
発光ダイオード素子(以下、ベアチップ或いはチップと言う)としては、ピーク波長が405nm、半値幅30nmのInGaN半導体を発光層にしたものを用いた。このベアチップの主な仕様は次のとおりであり、以下のようにして作製した。
発光部の構造:InGaN井戸層/GaN障壁層を6ペア積層したMQW構造
転位密度低減化の手法:ファセットLEPS法
ベアチップの外形:350μm×350μm方形
【0116】
C面サファイア基板上にフォトレジストによるストライプ状のパターニングを行い、RIE装置で1.5μmの深さまで断面方形となるようエッチングし、表面がストライプ状パターンの凹凸となった基板を得た。該パターンの仕様は、凸部幅3μm、周期6μm、ストライプの長手方向は、基板上に成長するGaN系結晶にとって〈11−20〉方向とした。
【0117】
フォトレジストを除去後、通常の横型常圧の有機金属気相成長装置(MOVPE)に基板を装着し、窒素ガス主成分雰囲気下で1100℃まで昇温し、サーマルクリーニングを行った。温度を500℃まで下げ、III族原料としてトリメチルガリウム(以下、TMG
と言う。)を、N原料としてアンモニアを流し、表面凹凸を形成したC面サファイア基板上に厚さ30nmのGaN低温成長バッファ層を成長させた。
【0118】
続いて、温度を1000℃に昇温し、原料(TMG、アンモニア)、ドーパント(シラン)を流し、GaN低温成長バッファ層上にn型GaN層(コンタクト層)を成長させた。このときのGaN層の成長は、凸部の上面、凹部の底面から、断面山形でファセット面を含む尾根状の結晶として発生した後、凹部内に空洞を形成することなく、全体を埋め込む成長であった。
【0119】
ファセット構造を経由して平坦なGaN埋め込み層を成長し、続いて、n型AlGaNクラッド層、InGaN発光層(MQW構造)、p型AlGaNクラッド層、p型GaNコンタクト層を順に形成し、発光波長405nmのLED用エピ基板とし、さらに、n型コンタクト層を表出させるためのエッチング加工、電極形成、350μm×350μmのチップへと素子分離を行い、ベアチップ状態の発光ダイオード素子を得た。
【0120】
上記各配線基板上にバンプボンダーによる、発光ダイオード素子の電極位置相当にスタッドバンプを形成し、そのスタッドバンプ上に発光ダイオード素子を、フリップチップボンダーを用いて実装した。このときの単位面積当たりの個数単位面積当たりの個数単位面積当たりの個数、及び各発光ダイオード素子間の隙間を表2に示す。
【0121】
(蛍光体含有層の形成)
上記発光ダイオード素子及び配線基板を覆うための各色蛍光体含有層用組成物(各ペースト)を以下の配合により作成した。
青ペースト 青色蛍光体 22.5重量%
緑ペースト 緑色蛍光体 18.8重量%
赤ペースト 赤色蛍光体 5.0重量%
(重量%は熱硬化性のシリコーン封止樹脂に対する割合)
青色蛍光体としては、Ba0.7Eu0.3MgAl1017、主発光ピークのピーク波長457nm、重量メジアン径11μmを用い、
緑色蛍光体としては、Ba1.39Sr0.46Eu0.15SiO4、主発光ピークのピーク波長
525nm、重量メジアン径20μmを用い、
赤色蛍光体としては、(Sr0.8Ca0.2)AlSiN:Eu、主発光ピークのピーク波長628nm、重量メジアン径13μmを用いた。
シリコーン封止樹脂は、市販の付加重合型ジメチル系シリコーン樹脂を用いた。
調合後、分散性を高めるために自転公転型真空脱法機にて分散した。
【0122】
蛍光体含有層の形成は、下記の手順で行なった。
まず、図8(a)に示すように、蛍光体含有層3を個別に塗布できるように平面形状にくり貫かれ、その中に発光ダイオード素子2が実装された配線基板1に、メタルマスクを密着させた。(なお、図8中では、便宜上、発光ダイオード素子2を層として記載しているが、発光ダイオード素子は、この層2中の所定の位置に、それぞれ埋め込まれている。)上記ペーストの塗布は、スキージによってペーストを塗設することのできる真空印刷装置を使用した。次いで図8(b)及び(c)に示すように、メタルマスク上に赤ペーストを載せ、スキージを摺動させることにより、目的とする位置(発光ダイオード素子2上)にのみ、赤ペーストを塗布した。次いで、図8(d)に示すように、メタルマスクを外し、100℃で1分間加熱し、タックフリー状態の塗膜(赤色蛍光体含有層3R)を形成した。次に、図9(a)〜(d)に示すように、同様に、赤色蛍光体含有層3R上に、緑ペーストを印刷し、100℃で1分間加熱し、タックフリー状態の塗膜(緑色蛍光体含有層3G)を形成した。さらに、図10(a)〜(d)に示すように、同様に、緑色蛍光体含有層3G上に、青ペーストを印刷し、100℃で1分間加熱し、タックフリー状態の塗膜(緑色蛍光体含有層3B)を形成して、蛍光体含有層とした。
なお、各ペーストの膜厚はマスクの厚みで調整することができ、ほぼどの層も、0.4mmであった。さらにその後、本硬化をするために150℃で1時間加熱し、発光ダイオードが実装された基板上に赤色蛍光体層、緑色蛍光体層、青色蛍光体層の3層構造を有する蛍光体含有層を形成した。
【0123】
1発光ダイオード素子あたりの駆動電流値を20mAとしたため、各配線基板には、発光ダイオード素子が11直列接続されているので、220mAの電流が流れたことになる。
各実施例における白色半導体発光装置の消費電力(W)、光束(lm)、発光効率(lm/W)、色温度(K)、平均演色指数(Ra)を表2に示す。
【0124】
【表2】

【0125】
光束の測定は、ラボスフェア社製10インチ積分球LMS−100により行なった。
発光効率は、光束を入力した電力で除することにより求めた。
色温度及び平均演色指数はスペクトルから計算により求めた。
【0126】
また、図11に、実施例1及び実施例2の半導体発光装置より発光スペクトルをマルチチャンネル分光器で測定した結果を示す。
図11から、実施例1、2共、405nmのピークが大きく、発光半導体から出た光が、蛍光体に変換されずに蛍光体含有層を通り抜けた光が多いことが明らかである。このことは、蛍光体組成等を最適化することにより光束を上げる余地があること、即ち蛍光体含有層をベタ塗りした場合以上に発光効率が高いことを示している。
【0127】
また、図12(a)及び(b)に、本願の半導体発光装置を用いた際の、CIExy色度図を示す。(b)は、(a)の一部を拡大した図である。本願発明の半導体発光装置は、本実施例の発光ダイオード素子と蛍光体の組合せにおいては、色度を色度図上で実施例1および2よりもx軸方向に−0.1〜−0.5、y軸方向に+0.1〜0.5程度移動するように調整することにより明るくなることが予測される。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の半導体発光装置は、照射面に色むらがなく、出射光の色度の調整が容易に可能な半導体発光装置である。したがって、例えば照明ランプや薄型照明などといった種々の照明装置用の光源、および液晶ディスプレイなどの画像表示装置用の光源(バックライトおよびフロントライトなど)等として有用である。
【符号の説明】
【0129】
1 …配線基板
2 …発光ダイオード素子
3 …蛍光体含有層
10…半導体発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、
該配線基板に実装され、発光波長が360nm〜480nmの範囲内である複数の発光ダイオード素子と、
該発光ダイオード素子から放射される光の少なくとも一部を波長変換する蛍光体を含有し、該発光ダイオード素子を個別に被覆する複数の蛍光体含有層と
を有する
ことを特徴とする、半導体発光装置。
【請求項2】
該蛍光体含有層がそれぞれ、
該発光ダイオード素子から放射される光を赤色領域に波長変換する赤色蛍光体を含有する赤色蛍光体含有層と、
該発光ダイオード素子から放射される光を緑色領域に波長変換する緑色蛍光体を含有する緑色蛍光体含有層と、
該発光ダイオード素子から放射される光を青色領域に波長変換する青色蛍光体を含有する青色蛍光体含有層とが、
この順に発光ダイオード素子側から積層されている積層体である
ことを特徴とする、請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
該蛍光体含有層から出射する一次光の色度が異なる、2種以上の該蛍光体含有層を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
各発光ダイオード素子の制御により、該半導体発光装置から出射する出射光の色度が可変である
ことを特徴とする、請求項3に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
各該蛍光体含有層の投影面積が、5mm以下である
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
該発光ダイオード素子の集積密度が4個/cm以上である
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項7】
蛍光体含有層の一つが2個以上16個以下の発光ダイオード素子を被覆する
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体発光装置を有する
ことを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−159832(P2011−159832A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20697(P2010−20697)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 応用物理学会中国四国支部、日本物理学会中国支部・四国支部、日本物理教育学会中国四国支部 2009年度支部学術講演会 平成21年8月1日 MES2009 エレクトロニクス実装学会 秋季大会 第19回マイクロエレクトロニクスシンポジウム 平成21年9月10日、11日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人 医薬基盤研究所「基礎研究推進事業」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける出願
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】