説明

半導体発光装置

【課題】半導体発光装置の光の利用効率が向上する。
【解決手段】配線パターンが設けられた基板110と、基板110の一方の主面に搭載され、配線パターンに電気的に接続された半導体発光素子130とを備える。基板110は、半導体発光素子130からこの基板110に向けて放射された光の少なくとも一部を上記一方の主面に対して直交する方向に反射させる凹凸構造111を上記一方の主面に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードなどの半導体発光素子は、小型で消費電力が少なく、高輝度の発光を安定して行なうことができるという利点を有している。近年、白熱灯などの照明器具を、白色光を発するLED(Light Emitting Diode)からなる発光装置を用いた照明器具に置き換える動きが進んでいる。
【0003】
半導体発光素子は、平面視において300μm角程度の大きさの直方体状の外形を有するチップを含む。そのチップの全方位に光が放射される。そのため、液晶表示装置のバックライトまたは一般照明などに半導体発光素子を用いる場合は、光の放射方向を一定方向に制御する必要がある。
【0004】
そこで一般に、半導体発光素子を搭載する実装基板、または、半導体発光素子を封止するパッケージに、半導体発光素子から放射される光の波長に対して高い反射率を有する材料が用いられる。若しくは、反射体などが設けられる。
【0005】
反射部材を有する発光装置を開示した先行文献として特開2005−317592号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された発光装置は、平面視形状が長方形状のセラミックスから成る基体と、この基体の上側主面の対向する長辺間にかけて短辺と平行に形成された、上面に発光素子の搭載部を有する凸部とを有する。また、発光装置は、下面に凹部が形成され、基体の上側主面に凹部が凸部に嵌合するとともに搭載部を取り囲むように接合された、内周面が発光素子が発光する光を反射する反射面とされている枠状の反射部材と、凸部の上面に形成された、発光素子が電気的に接続される導体層とを有している。
【0006】
発光ダイオード用パッケージを開示した先行文献として、特開2006−287132号公報(特許文献2)がある。特許文献2に記載された発光ダイオード用パッケージにおいては、発光ダイオード素子を実装するためのベース体の上部に、反射面を有する開口を形成したカバー体を貼着している。ベース体およびカバー体を、気孔直径が0.10〜1.25μmのアルミナセラミックス、または、気孔率が10%以上のアルミナセラミックスを用いて形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−317592号公報
【特許文献2】特開2006−287132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体発光素子を搭載する実装基板の上面の反射率を高くするだけでは、半導体発光素子から下方に放射された光を効率よく利用することができない。なぜなら、半導体発光素子から放射された光を実装基板の上面に対して直交する方向に反射しなければ光の利用効率を向上することができないからである。
【0009】
半導体発光素子から下方に放射された光は、実装基板の上面に対する入射角度が小さいため、実装基板の上面に対して直交する方向に反射される割合が少ない。よって、光の利用効率をさらに向上する余地があった。
【0010】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、光の利用効率が向上した半導体発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に基づく半導体発光装置は、配線パターンが設けられた基板と、基板の一方の主面に搭載され、配線パターンに電気的に接続された半導体発光素子とを備える。基板は、半導体発光素子からこの基板に向けて放射された光の少なくとも一部を上記一方の主面に対して直交する方向に反射させる凹凸構造を上記一方の主面に有する。
【0012】
本発明の一形態においては、凹凸構造は、平面視において、半導体発光素子を中心として同心円状に複数位置する。
【0013】
本発明の一形態においては、凹凸構造は、平面視において、半導体発光素子を中心として同心矩形状に複数位置する。
【0014】
本発明の一形態においては、凹凸構造は、平面視において、半導体発光素子を中心として同心状に位置し、内側は円状、外側は矩形状に位置する。
【0015】
本発明の一形態においては、基板は、平面視において略長方形状の外形を有し、かつ、縁を囲むようにリフレクター部をさらに有する。凹凸構造は、基板の長手方向に直交する方向に延在し、上記長手方向において互いに間隔を置いて複数位置する。
【0016】
本発明の一形態においては、凹凸構造が、半導体発光素子を囲むように矩形状にさらに位置する。
【0017】
好ましくは、凹凸構造は、配線パターンと半導体発光素子との接続位置と重ならないように位置する。
【0018】
好ましくは、凹凸構造は、半導体発光素子の周側面からこの半導体発光素子の厚さの1倍以上1.5倍以下の距離だけ離間した位置より離れて形成されている。
【0019】
本発明の一形態においては、凹凸構造は、横断面鋸歯状の外形を有し、かつ、半導体発光素子から放射された光を反射する反射面となる複数の傾斜面を有する。半導体発光素子の厚さをH、複数の傾斜面のうち最も半導体発光素子に近接する近接傾斜面と上記一方の主面との交差線と、半導体発光素子の周側面との間の最短距離をL、近接傾斜面と上記一方の主面とのなす内角をθとすると、近接傾斜面は、2θ=90°−tan-1(H/L)の関係を満たす。
【0020】
好ましくは、30°≦θ≦45°である。
本発明の一形態において、凹凸構造の横断面において、互いに隣接する凸部の頂点同士の間隔をLp、上記頂点の高さをh、上記頂点同士の間に位置する傾斜面の上記内角をθpとすると、Lp=h/tanθpの関係を満たす。
【0021】
本発明の一形態においては、凹凸構造は、セラミックスで構成されている。
本発明の一形態においては、凹凸構造は、金属で構成されている。
【0022】
本発明の一形態においては、凹凸構造の表面が鏡面加工されている。
本発明の一形態においては、凹凸構造の表面が銀で構成されている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、半導体発光装置の光の利用効率が向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態1に係る半導体発光装置の構成を示す断面図である。
【図2】同実施形態に係る半導体発光装置を図1の矢印II方向から見た平面図である。
【図3】同実施形態の第1変形例に係る半導体発光装置を図1の矢印III方向から見た平面図である。
【図4】同実施形態の第2変形例に係る半導体発光装置を図1の矢印IV方向から見た平面図である。
【図5】半導体発光素子から放射された光の一部が凹凸構造により反射されている状態を示す一部断面図である。
【図6】半導体発光素子と凹凸構造との配置関係を示す一部断面図である。
【図7】蛍光体層に含まれる蛍光粒子の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示すグラフである。
【図8】配線パターンおよび凹凸構造が設けられた基板の構造を示す一部断面図である。
【図9】半導体発光素子を基板上にダイボンディングした状態を示す一部断面図である。
【図10】半導体発光素子の電極パッドと基板のボンディングパッドとをワイヤボンディングした状態を示す一部断面図である。
【図11】基板上に蛍光体層を形成するための堰き止め部材であるダムシートを貼り付けた状態を示す一部断面図である。
【図12】基板上に蛍光粒子を含む樹脂を注入した状態を示す一部断面図である。
【図13】透明樹脂が内側に充填された成型金型を蛍光体層に対向するように配置した状態を示す一部断面図である。
【図14】透明樹脂が内側に充填された成型金型で蛍光体層を覆った状態を示す一部断面図である。
【図15】本発明の実施形態2に係る半導体発光装置の構成を示す平面図である。
【図16】図15のXVI−XVI線矢印方向から見た断面図である。
【図17】本実施形態に係る半導体発光装置のパッケージの構成を示す平面図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII線矢印方向から見た断面図である。
【図19】図17のXIX−XIX線矢印方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態1に係る半導体発光装置について説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。なお、実施形態の説明において、説明の便宜上、上、下、左、右の表現を用いるが、これらの表現は示した図に基づくものであって発明の構成を限定するものではない。
【0026】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る半導体発光装置の構成を示す断面図である。図2は、本実施形態に係る半導体発光装置を図1の矢印II方向から見た平面図である。図3は、本実施形態の第1変形例に係る半導体発光装置を図1の矢印III方向から見た平面図である。図4は、本実施形態の第2変形例に係る半導体発光装置を図1の矢印IV方向から見た平面図である。
【0027】
図1に示すように、本発明の実施形態1に係る半導体発光装置100は、配線パターンが設けられた基板110と、基板110の一方の主面である上面に搭載され、配線パターンに電気的に接続された半導体発光素子130とを備えている。本実施形態においては、半導体発光素子130は蛍光体層181に覆われ、蛍光体層181は透明樹脂層182に覆われている。蛍光体層181と透明樹脂層182とから封止部180が構成されている。
【0028】
基板110は、たとえば、セラミックスで構成されている。配線パターンの一部として、基板110の下面に電極部170、および、電極部170と接続されて基板110の上面まで延びるスルーホール160が設けられている。さらに、配線パターンの一部として、基板110の上面に、スルーホール160と電気的に接続されたボンディングパッド150が設けられている。ボンディングパッド150、スルーホール160および電極部170は、導電性材料で形成されている。
【0029】
基板110の上面の略中心にダイパッド120が設けられている。ダイパッド120は、たとえば、銀(Ag)ペーストを塗布してキュアすることにより形成される。基板110の上面には、後述する凹凸構造111が形成されている。凹凸構造111は、ダイパッド120が設けられる位置と重ならないように形成されている。
【0030】
半導体発光素子130は、赤(R)、緑(G)および青(B)のいずれかの色で発光する。半導体発光素子130は、たとえば、平面視において0.3mm角以上の大きさを有する。半導体発光素子130は、その発光色に応じて、GaN、サファイア、GaAsまたはAlGaInPなどを含む。
【0031】
本実施形態においては、青色に発光する半導体発光素子130を用いている。半導体発光素子130は、サファイア基板131と、サファイア基板131上に形成されたInGaN/GaN層からなる半導体層132と、半導体層132の上面の一部に導電性材料で形成された電極パッド133とを含む。
【0032】
サファイア基板131の半導体層132側とは反対側の面がダイパッド120により基板110の上面に接着されていることにより、半導体発光素子130が基板110に対して固着されている。
【0033】
電極パッド133とボンディングパッド150とは、金(Au)線からなるワイヤ140で接続されている。その結果、半導体発光素子130が、基板110の配線パターンに対して電気的に接続されている。
【0034】
蛍光体層181は、半導体発光素子130から発せられた光を透過させる樹脂から形成されている。蛍光体層181は、たとえば、透明なエポキシ樹脂またはシリコーン樹脂などから形成されている。蛍光体層181には、複数の蛍光粒子が分散して含有されている。半導体発光素子130から発せられた光は、蛍光粒子により波長変換される。その結果、半導体発光素子130から発せられた光とは異なる波長の光が、蛍光体層181から発せられる。
【0035】
蛍光粒子としては、たとえばBOSE(Ba、O、Sr、Si、Eu)などを好適に用いることができる。またBOSEの他、SOSE(Sr、Ba、Si、O、Eu)、YAG(Ce賦活イットリウム・アルミニウム・ガーネット)、αサイアロン((Ca)、Si、Al、O、N、Eu)、βサイアロン(Si、Al、O、N、Eu)などを蛍光粒子として好適に用いることができる。
【0036】
なお、本実施形態においては、半導体発光装置100が蛍光体層181を有する場合について説明するが、蛍光体層181に替えて光拡散層が設けられてもよい。光拡散層には、半導体発光素子130から発せられた光を散乱させる、たとえばTiO2、SiO2、アルミナ、窒化アルミニウム、または、粒径が10nm以上10μm以下程度のムライトの粉末などを成分とする散乱粒子が分散して含有される。また、色むらを抑えるために、光拡散層に蛍光粒子および散乱粒子を混合して含有させてもよい。
【0037】
透明樹脂層182は、半導体発光素子130および蛍光体層181から発せられた光を透過させる樹脂から形成されている。透明樹脂層182は、たとえば、透明なエポキシ樹脂またはシリコーン樹脂から形成されている。半導体発光素子130からの光の取り出し効率を向上するために、透明樹脂層182は蛍光体層181より小さな屈折率を有することが好ましい。
【0038】
半導体発光装置100においては、半導体発光素子130から発せられた1次光と、蛍光体層181から発せられた2次光とが混合された光が、透明樹脂層182を透過して出射する。半導体発光素子130の発光色と蛍光体層181の発光色とを適宜組み合わせることによって、半導体発光装置100から出射する光の色を自由に選択することができる。
【0039】
以下、凹凸構造111について詳細に説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る半導体発光装置100においては、凹凸構造111aは、平面視において、半導体発光素子130を中心として同心矩形状に複数位置する。本実施形態においては、矩形状の角部に丸みを付けているが、直角の角部であってもよい。
【0040】
図3に示すように、第1変形例に係る半導体発光装置においては、凹凸構造111bは、平面視において、半導体発光素子130を中心として同心円状に複数位置する。
【0041】
図4に示すように、第2変形例に係る半導体発光装置においては、凹凸構造111は、平面視において、半導体発光素子130を中心として同心状に位置し、内側は円状、外側は矩形状に位置する。具体的には、半導体発光素子130を中心として半導体発光素子130の近傍は矩形状に形成され、半導体発光素子130から遠ざかるにつれて円形状に徐々に変化して形成される。
【0042】
このようにした場合、半導体発光素子130の近傍においては、半導体発光素子130の側面に直交する方向に進行する光を矩形状に位置する凹凸構造111aで効率よく反射し、半導体発光素子130から離れるに従って半導体発光素子130から放射状に進行する光を円形状の凹凸構造111bで均一に反射することができる。
【0043】
図1〜4に示すように、凹凸構造111は、配線パターンと半導体発光素子130との接続位置であるボンディングパッド150と重ならないように位置している。具体的には、ボンディングパッド150の下に、凹凸構造111が形成されていない。このようにすることにより、ボンディングパッド150の上面を平坦にしてワイヤ140をボンディングパッド150に安定して接続することができるため、ワイヤ140の接続不良を抑制できる。
【0044】
図5は、半導体発光素子から放射された光の一部が凹凸構造により反射されている状態を示す一部断面図である。図6は、半導体発光素子と凹凸構造との配置関係を示す一部断面図である。
【0045】
図5,6においては、半導体発光素子130から放射された光の一部を例示して示している。半導体発光素子130からは、放射状に光が放射されている。また、図6においては、ダイパッド120の厚さが半導体発光素子130の厚さに比較して極めて薄いため、半導体発光素子130の下面が基板110の上面に直接接触しているように図示している。
【0046】
図5に示すように、半導体発光素子130から基板110の上面に対して直交する方向に放射された光10は、そのまま進行して蛍光体層181内を伝播する。一方、半導体発光素子130から基板110の上面に向けて放射された光20は、基板110の上面で反射される。
【0047】
図5,6に示すように、基板110は、半導体発光素子130から基板110に向けて放射された光20の少なくとも一部を上面に対して直交する方向に反射させる凹凸構造111を上面に有している。この構成により、半導体発光素子130から放射された光の利用効率を向上することができる。
【0048】
基板110の上面において、半導体発光素子130の周側面の近傍の位置に放射される光の量は比較的少ないため、その位置に凹凸構造111を形成しても効果が少ない。そのため、たとえば、図6に示すように、凹凸構造111は、半導体発光素子130の周側面から半導体発光素子130の厚さHの1倍以上1.5倍以下の距離Lだけ離間した位置より離れて形成されていてもよい。すなわち、半導体発光素子130に最も近接した凹凸構造111dと半導体発光素子130との間の間隔を上記距離Lとしてもよい。このようにすることにより、無駄な凹凸構造111を減じて、効率よく光の利用効率の向上を図れる。
【0049】
本実施形態に係る半導体発光装置100においては、凹凸構造111は、横断面鋸歯状の外形を有し、かつ、半導体発光素子130から放射された光を反射する反射面となる複数の傾斜面を有する。
【0050】
図6に示すように、半導体発光素子130の厚さをH、複数の傾斜面のうち最も半導体発光素子130に近接する近接傾斜面111eと基板110の上面との交差線と、半導体発光素子130の周側面との間の最短距離をL、近接傾斜面111eと基板110の上面とのなす内角をθとすると、近接傾斜面111eは、2θ=90°−tan-1(H/L)の関係を満たすことが好ましい。ここで、図6に示すように、tan-1(H/L)=αとする。
【0051】
この構成により、半導体発光素子130の上面の端部から近接傾斜面111eに入射した光を、基板110の上面に直交する方向に反射することができる。よって、半導体発光素子130から基板110に向けて放射された光の大部分を基板110の上面に直交する方向に反射して、光の利用効率を高めることができる。
【0052】
上記の関係を満たすことにより、上記内角θは、距離Lが大きくなるに従って大きくなる。実用的には、30°≦θ≦45°とすることにより、近接傾斜面111eにより効果的に光を反射して光の利用効率を向上できる。
【0053】
また、複数の凹凸構造111同士は、凹凸構造111の横断面において、互いに隣接する凸部の頂点同士の間隔をLp、上記頂点の高さをh、上記頂点同士の間に位置する傾斜面の内角をθpとすると、Lp=h/tanθpの関係を満たすことが好ましい。このようにすることにより、横断面直角三角形状の外形を各々有する複数の凹凸構造111を互いに連続して配置することができる。
【0054】
なお、本実施形態においては、半導体発光素子130として、発光ピーク波長が450nmである青色発光素子を用いたが、半導体発光素子130はこれに限られない。
【0055】
図7は、蛍光体層に含まれる蛍光粒子の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示すグラフである。図7においては、縦軸に光の強度、横軸に光の波長を示している。また、励起スペクトルを点線、発光スペクトルを実線で示している。また、蛍光粒子として、βサイアロン蛍光体のデータを示している。
【0056】
図7に示すように、蛍光体層181に含まれる蛍光粒子には、紫外領域に高い励起スペクトルを有するものが多い。可視光領域の波長の光を用いて蛍光粒子を励起させる場合、蛍光粒子の励起スペクトルの縁部分を使用している場合がある。その場合、たとえば、発光ピーク波長が390nm以上420nm以下である紫外(近紫外)半導体発光素子を用いることにより、蛍光体層181の発光効率を向上させることができる。
【0057】
なお、本実施形態においては、蛍光体層181および透明樹脂層182で封止部180を構成したが、封止部180はこれに限られず、たとえば、光を透過するガラス層で封止部180を構成してもよい。
【0058】
このようにした場合にも、封止部180内を進行した光が、封止部180の外表面で全反射して封止部180内に閉じ込められることを抑制することができる。その結果、半導体発光素子130から放射された光の利用効率を向上することができる。
【0059】
以下、本実施形態に係る半導体発光素子の製造方法について説明する。
図8は、配線パターンおよび凹凸構造が設けられた基板の構造を示す一部断面図である。図8に示すように、上面にワイヤボンディング用のボンディングパッド150、下面に外部の回路と接続するための電極部170が設けられ、両者がスルーホール160により導通されて、半導体発光素子130に電力を供給可能に構成されている基板110を準備する。基板110の材質としては、光の反射率が高いセラミックスなどが好適である。
【0060】
基板110にセラミックス基板を用いる場合、グリーンシートの状態において所望の凹凸形状を予め形成した後、そのグリーンシートを焼成することにより、凹凸構造111を有するセラミックス基板を作製できる。この場合、凹凸構造111は、セラミックスで構成されている。
【0061】
または、表面に凹凸構造111を有する金属プレートを別途作製し、これをセラミックス基板の所望部分に嵌め込むことにより、凹凸構造111を有する基板110を作製してもよい。この場合、凹凸構造111は、金属で構成されている。
【0062】
好ましくは、凹凸構造111の表面が鏡面加工されている。それにより、凹凸構造111による光の反射率を高めることができる。また、凹凸構造111の表面が銀で構成されていることが好ましい。この場合、半導体発光素子130から放射される光の波長が370nm以上550nm以下であるときの凹凸構造111による光の反射率を高めることができる。
【0063】
図9は、半導体発光素子を基板上にダイボンディングした状態を示す一部断面図である。図9に示すように、基板110の上面の所定の位置に半導体発光素子130をダイボンディングする。基板110上には、複数の半導体発光素子130が互いに所定の間隔を置いてダイボンディングされる。
【0064】
図10は、半導体発光素子の電極パッドと基板のボンディングパッドとをワイヤボンディングした状態を示す一部断面図である。図10に示すように、半導体発光素子130の電極パッド133と基板110のボンディングパッド150とをワイヤ140によりワイヤボンディングして電気的に接続する。
【0065】
図11は、基板上に蛍光体層を形成するための堰き止め部材であるダムシートを貼り付けた状態を示す一部断面図である。図11に示すように、基板110の上面上に、半導体発光素子130を中心とした円状にダムシート185を貼り付ける。
【0066】
ダムシート185の厚さは、蛍光体層181の厚さに対応して設定される。また、ダムシート185の内周面で囲まれる領域の大きさは、蛍光体層181の大きさに対応して設定される。
【0067】
図12は、基板上に蛍光粒子を含む樹脂を注入した状態を示す一部断面図である。図12に示すように、基板110上のダムシート185で囲まれた領域に、ノズル183から蛍光粒子を含む樹脂を注入する。この樹脂は、ダムシート185で囲まれた領域を満たすまで注入される。このとき、樹脂がダムシート185の外側に流出することが、樹脂の表面張力により抑制される。
【0068】
ダムシート185としては、たとえば、テフロン(登録商標)またはフッ素ゴムなどの樹脂製シートの一方の面に粘着材が塗布されたものを用いることができる。
【0069】
フッ素ゴムは弾力性が高く、後述するようにダムシート185を除去する際に、容易にダムシート185を除去できるため好ましい。粘着材としては、ダムシート185の基板110の上面への貼り付けが容易であるとともに、ダムシート185を除去した際に基板110の上面に粘着材の残渣が残らないものが好ましい。
【0070】
150℃の温度下で120分間加熱することにより蛍光粒子を含む樹脂を硬化させた後、ダムシート185を除去することにより蛍光体層181が形成される。ダムシート185の除去は、ダムシート185の一部を治具により把持して引き剥すようにしてもよい。この場合、ダムシート185の上面に乗り上げている蛍光粒子を含む樹脂をダムシート185とともに除去することができる。
【0071】
図13は、透明樹脂が内側に充填された成型金型を蛍光体層に対向するように配置した状態を示す一部断面図である。図13に示すように、成型金型の雄型184のキャビティ内に透明樹脂を充填し、蛍光体層181と対向するように雄型184を配置する。
【0072】
図14は、透明樹脂が内側に充填された成型金型で蛍光体層を覆った状態を示す一部断面図である。図14に示すように、蛍光体層181をキャビティ内に収容するように雄型184を配置する。基板110を図示しない雌型にセットする。雄型184と雌型とを図示しないベース型で型締めした状態で、150℃の温度下で1分間程度加熱することにより透明樹脂を硬化させる。その後、成型金型を分解して基板110を雌型から外す。
【0073】
このように圧縮成型により透明樹脂層182を形成した場合、基板110上で隣り合う透明樹脂層182同士が繋がることにより、透明樹脂層182の周縁部に薄い透明樹脂の膜が延在して基板110の上面を被覆することがある。
【0074】
150℃の温度下で2時間加熱することによりアフターキュアを行なった後、個別の半導体発光装置に分割する。この分割は、基板110の下面に設けられた分割溝上を、透明樹脂層182側からカッタにより剪断するように行なってもよい。この方法によれば、上述したように基板110の上面を被覆している透明樹脂の膜をカッタにより剪断できるとともに、基板110を分割溝に沿って分割できるため、容易に半導体発光装置を個片化できる。上記の方法により、図1に示す半導体発光装置100が得られる。
【0075】
なお、蛍光体層181と透明樹脂層182との平面視における大きさの比率は適宜設定される。ただし、半導体発光素子130から離れるに従って、半導体発光素子130から放射された光の強度が低下するため、半導体発光素子130の近傍のみ蛍光体層181を設け、半導体発光素子130から離れた部分には蛍光体層181を設けないようにしてもよい。
【0076】
このようにした場合、半導体発光素子130の近傍に放射されて比較的強度の強い光は凹凸構造111で反射させて蛍光体層181に入射させ、半導体発光素子130の遠方に放射されて比較的強度の弱い光は凹凸構造111で反射させて透明樹脂層182に入射させることができる。その結果、強度が弱く蛍光体層181で吸収されて有効利用されない光を低減して、半導体発光素子130から放射された光の利用効率を向上することができる。
【0077】
また上記のように、ダムシート185を用いて蛍光体層181を形成した場合、ダムシート185の配置精度により蛍光体層181の位置精度が決定されるため、高い位置精度で蛍光体層181を形成できる。その結果、半導体発光装置100から照射される光の輝度および色度のばらつきを抑制できる。
【0078】
以下、本発明の実施形態2に係る半導体発光装置について説明する。
(実施形態2)
図15は、本発明の実施形態2に係る半導体発光装置の構成を示す平面図である。図16は、図15のXVI−XVI線矢印方向から見た断面図である。図17は、本実施形態に係る半導体発光装置のパッケージの構成を示す平面図である。図18は、図17のXVIII−XVIII線矢印方向から見た断面図である。図19は、図17のXIX−XIX線矢印方向から見た断面図である。
【0079】
図15〜19に示すように、本発明の実施形態2に係る半導体発光装置200は、半導体発光素子230と、パッケージ290とを含む。パッケージ290は、一方電極を構成して半導体発光素子230が搭載される金属製の第1リードフレーム270と、他方電極を構成する金属製の第2リードフレーム271と、これらの一対の第1および第2リードフレーム270,271と一体樹脂成型された白色樹脂からなるリフレクター部210とを含む。
【0080】
第1および第2リードフレーム270,271は、平面視においてそれぞれ長方形状の外形を有している。第1リードフレーム270と第2リードフレーム271とは、所定の間隔を置いて位置している。第1および第2リードフレーム270,271は、放熱機能を有している。
【0081】
第1リードフレーム270、第2リードフレーム271およびパッケージ290のリフレクター部210から基板が構成されている。基板は、平面視において略長方形状の外形を有している。リフレクター部210は、基板の縁を囲むように形成されている。
【0082】
半導体発光素子230は、第1リードフレーム270の搭載面250上に塗布された接着剤220で固定されている。半導体発光素子230の搭載面250においては、第1リードフレーム270の金属表面が露出、または、第1リードフレーム270上に形成された銀メッキなどの金属層が露出している。
【0083】
第1リードフレーム270は、半導体発光素子230の一方の端子とワイヤ241によりワイヤボンディングされて電気的に接続されている。第2リードフレーム271は、半導体発光素子230の他方の端子とワイヤ242によりワイヤボンディングされて電気的に接続されている。
【0084】
ワイヤボンディングされる位置においては、第1および第2リードフレーム270,271の金属表面が露出、または、第1および第2リードフレーム270,271上に形成された銀メッキなどの金属層が露出していることが望ましい。
【0085】
第1および第2リードフレーム270,271上に凹凸構造211が設けられている。本実施形態においては、第1リードフレーム270と第2リードフレーム271との間に位置する白色樹脂の上面にも凹凸構造が形成されている。本実施形態に係る凹凸構造211は、実施形態1に係る凹凸構造111と機能は同一であり、凹凸構造111と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0086】
凹凸構造211は、基板の長手方向に直交する方向に延在し、基板の長手方向において互いに間隔を置いて複数位置している。本実施形態においては、凹凸構造211は、半導体発光素子230を囲むように矩形状にさらに位置している。
【0087】
このように凹凸構造211を構成することにより、リフレクター部210の内壁面で囲まれた領域内において、半導体発光素子230から第1および第2リードフレーム270,271上に放射された光を、第1および第2リードフレーム270,271の上面に直交する方向に効果的に反射させることができる。
【0088】
第1および第2リードフレーム270,271上に凹凸構造211を形成する方法としては、第1および第2リードフレーム270,271をプレス成形する際に、一体的に凹凸構造211を形成する方法がある。
【0089】
白色樹脂としては、反射性能を持たせるために、熱硬化性樹脂に酸化チタンなどの光拡散材が添加されたPKG(パッケージ)樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂としては、耐熱性および耐光性が良好な樹脂が好ましく、たとえば、シリコーン、エポキシ、ポリフタルアミド(PPA)およびそれらの有機変性樹脂などを用いることができる。
【0090】
図17〜19に示すように、パッケージ290は、キャビティ260を有する。キャビティ260は、周囲をリフレクター部210で囲まれている。リフレクター部210は、キャビティ260が開口端側に行くに従って広がるようにテーパ状の内壁面を有している。本実施形態においては、キャビティ260は、平面視矩形状の外形を有しているが、これに限られず、多角形または楕円形状の外形を有していてもよい。
【0091】
図16に示すように、キャビティ260は、封止樹脂280で充填されている。封止樹脂280は、光散乱材および蛍光材などを含有している。たとえば、半導体発光素子230が青色LEDである場合、青色光により赤色と緑色とを発光する蛍光材を封止樹脂280内に含有させることにより、半導体発光装置200から白色光を照射することが可能になる。
【0092】
封止樹脂280は、半導体発光素子230の表面、第1および第2リードフレーム270,271の表面に対し、略平行な上面を有するように充填されていることが好ましい。これにより、封止樹脂280を通過して上面に到達した光のほとんどを半導体発光装置200の外部に出射させることができるため、半導体発光素子230から放射された光の利用効率を向上することができる。
【0093】
以下、本実施形態に係る半導体発光装置200の製造方法について説明する。
まず、複数の第1および第2リードフレーム270,271を保持した成型金型内に白色樹脂を注入することにより、複数のパッケージ290をインサート成型する。
【0094】
次に、バリを取るためにブラスト処理を行なう。熱硬化性樹脂の場合、成型時にバリが発生するため、そのバリを除去するためのブラスト処理が行なわれる。このブラスト処理により、第1および第2リードフレーム270,271の表面がくすむため反射率が低下する。そのため、第1および第2リードフレーム270,271の表面を保護シートで覆った状態でブラスト処理を行なってもよい。
【0095】
次に、半導体発光素子230をダイボンディングおよびワイヤボンディングする。その後、封止樹脂280をキャビティ260内に充填する。
【0096】
基板の下面に切断用テープを貼り付けた状態で、ブレードを用いて格子状に基板を切断することにより、半導体発光装置200を個片化する。個片化された複数の半導体発光装置200は、切断用テープによりばらばらにならずに一体に保持されている。最後に、切断用テープを除去することにより、複数の半導体発光装置200が得られる。
【0097】
本実施形態に係る半導体発光装置200においても、凹凸構造211を設けることにより、半導体発光素子230から基板に向けて放射された光の少なくとも一部を基板の上面に対して直交する方向に反射させることができる。この構成により、半導体発光素子230から放射された光の利用効率を向上することができる。
【0098】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0099】
100,200 半導体発光装置、110 基板、111,111a,111b,111d,211 凹凸構造、111e 近接傾斜面、120 ダイパッド、130,230 半導体発光素子、131 サファイア基板、132 半導体層、133 電極パッド、140,241,242 ワイヤ、150 ボンディングパッド、160 スルーホール、170 電極部、180 封止部、181 蛍光体層、182 透明樹脂層、183 ノズル、184 雄型、185 ダムシート、210 リフレクター部、220 接着剤、250 搭載面、260 キャビティ、270 第1リードフレーム、271 第2リードフレーム、280 封止樹脂、290 パッケージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンが設けられた基板と、
前記基板の一方の主面に搭載され、前記配線パターンに電気的に接続された半導体発光素子と
を備え、
前記基板は、前記半導体発光素子から該基板に向けて放射された光の少なくとも一部を前記一方の主面に対して直交する方向に反射させる凹凸構造を前記一方の主面に有する、半導体発光装置。
【請求項2】
前記凹凸構造は、平面視において、前記半導体発光素子を中心として同心円状に複数位置する、請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記凹凸構造は、平面視において、前記半導体発光素子を中心として同心矩形状に複数位置する、請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記凹凸構造は、平面視において、前記半導体発光素子を中心として同心状に位置し、内側は円状、外側は矩形状に位置する、請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記基板は、平面視において略長方形状の外形を有し、かつ、縁を囲むようにリフレクター部をさらに有し、
前記凹凸構造は、前記基板の長手方向に直交する方向に延在し、前記長手方向において互いに間隔を置いて複数位置する、請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記凹凸構造が、前記半導体発光素子を囲むように矩形状にさらに位置する、請求項5に記載の半導体発光装置。
【請求項7】
前記凹凸構造は、前記配線パターンと前記半導体発光素子との接続位置と重ならないように位置する、請求項1から6のいずれかに記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記凹凸構造は、前記半導体発光素子の周側面から該半導体発光素子の厚さの1倍以上1.5倍以下の距離だけ離間した位置より離れて形成されている、請求項1から7のいずれかに記載の半導体発光装置。
【請求項9】
前記凹凸構造は、横断面鋸歯状の外形を有し、かつ、前記半導体発光素子から放射された光を反射する反射面となる複数の傾斜面を有し、
前記半導体発光素子の厚さをH、前記複数の傾斜面のうち最も前記半導体発光素子に近接する近接傾斜面と前記一方の主面との交差線と、前記半導体発光素子の周側面との間の最短距離をL、前記近接傾斜面と前記一方の主面とのなす内角をθとすると、
前記近接傾斜面は、2θ=90°−tan-1(H/L)の関係を満たす、請求項8に記載の半導体発光装置。
【請求項10】
30°≦θ≦45°である、請求項9に記載の半導体発光装置。
【請求項11】
前記凹凸構造の横断面において、互いに隣接する凸部の頂点同士の間隔をLp、前記頂点の高さをh、前記頂点同士の間に位置する前記傾斜面の前記内角をθpとすると、
p=h/tanθpの関係を満たす、請求項9または10に記載の半導体発光装置。
【請求項12】
前記凹凸構造は、セラミックスで構成されている、請求項1から11のいずれかに記載の半導体発光装置。
【請求項13】
前記凹凸構造は、金属で構成されている、請求項1から11のいずれかに記載の半導体発光装置。
【請求項14】
前記凹凸構造の表面が鏡面加工されている、請求項13に記載の半導体発光装置。
【請求項15】
前記凹凸構造の表面が銀で構成されている、請求項14に記載の半導体発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−110273(P2013−110273A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254128(P2011−254128)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】