説明

半導体紫外線受光素子の製造方法

【課題】半導体紫外線受光素子の製造を容易にする。
【解決手段】 半導体紫外線受光素子の製造方法は、基板を準備する工程と、前記基板上の一部領域に極性反転層を形成する工程と、前記基板上及び前記極性反転層上に、−c極性ZnO系半導体層と+c極性ZnO系半導体層とを、同時にエピタキシャル成長させる工程と、前記−c極性ZnO系半導体層をエッチングにより除去する工程と、前記+c極性ZnO系半導体層上にショットキー電極を形成する工程と、前記ショットキー電極と対をなすオーミック電極を形成する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体紫外線受光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線透過性を呈するような膜厚を有するPtなどの金属をショットキー電極としてZnO基板上に形成した光起電力型の紫外線センサが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
ZnO系半導体上に形成するショットキー電極として、PEDOT:PSSなどの有機物導電材料を用いることにより、Ptなどの一般的な金属電極に比べて、逆バイアス電圧での暗電流が非常に小さく、センサとしての特性が良くなることが示されている(特許文献2参照)。
【0004】
ZnO系半導体の一部上に絶縁膜からなる台座部が形成され、台座部を覆ってZnO系半導体上に有機物電極が形成され、台座部上方の有機物電極上にワイヤーボンディング用電極が形成された素子構造により、ワイヤーボンディング時におけるワイヤーボンディング用電極の剥離を防止する技術が提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
有機物電極は、ワイヤーボンディング用金属電極との密着性が弱く、ワイヤーボンディング時にワイヤーボンディング電極が剥離しやすい。
【0006】
無極性単結晶基板上に成長させるZnO系半導体層の極性を制御する技術が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007‐201393号公報
【特許文献2】特開2008‐211203号公報
【特許文献3】特開2010‐205891号公報
【特許文献4】特開2005‐197410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、半導体紫外線受光素子の製造を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、半導体紫外線受光素子の製造方法は、基板を準備する工程と、前記基板上の一部領域に極性反転層を形成する工程と、前記基板上及び前記極性反転層上に、−c極性ZnO系半導体層と+c極性ZnO系半導体層とを、同時にエピタキシャル成長させる工程と、前記−c極性ZnO系半導体層をエッチングにより除去する工程と、前記+c極性ZnO系半導体層上にショットキー電極を形成する工程と、前記ショットキー電極と対をなすオーミック電極を形成する工程とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体紫外線受光素子の製造を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】単結晶基板上に成長させたZnO層の成長面の極性とエッチング速度との関係を示すグラフである。
【図2】本発明の第1の実施例による受光素子の主要な製造工程を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例による受光素子の主要な製造工程を示す概略断面図である。
【図4】本発明の実施例によるMgO層のパターニング例を表す概略平面図である。
【図5】本発明の第2の実施例による受光素子の主要な製造工程を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第2の実施例による受光素子の主要な製造工程を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第3の実施例による受光素子の主要な製造工程を示す概略断面図である。
【図8】本発明の第3の実施例による受光素子の主要な製造工程を示す概略断面図である。
【図9】本発明の第4の実施例による受光素子の主要な製造工程を示す概略断面図である。
【図10】本発明の第4の実施例による受光素子の主要な製造工程を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、単結晶基板上に成長させたZnO層の成長面の極性とエッチング速度との関係を示す表である。
【0013】
+c成長した(成長面がZn面の)ZnO膜と−c成長した(成長面がO面の)ZnO膜とをそれぞれ3種類のエッチャントを用いてエッチングを行った場合の、エッチング速度を調べた。エッチャントとしては、王水(HNO:HCl=1:3)、EDTA−2Na(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム):EDA(エチレンジアミン)=10:1混合溶液(pH=10.6)、4%の塩酸を用いた。
【0014】
エッチャントとして王水を用いた場合、+c成長したZnO膜のエッチング速度は約120nm/minであったのに対して、−c成長したZnO膜のエッチング速度は約20μm/minであり、−c成長したZnO膜のエッチング速度は+c成長したZnO膜のエッチング速度に比べて、約160倍以上も速いことが分かった。
【0015】
エッチャントとしてEDTA−2Na:EDA=10:1混合溶液を用いた場合、+c成長したZnO膜のエッチング速度は約12nm/minであったのに対して、−c成長したZnO膜のエッチング速度は約300nm/minであり、−c成長したZnO膜のエッチング速度は+c成長したZnO膜のエッチング速度に比べて、約25倍以上も速いことが分かった。
【0016】
エッチャントとして4%塩酸を用いた場合、+c成長したZnO膜のエッチング速度は約20nm/minであったのに対して、−c成長したZnO膜のエッチング速度は約250nm/minであり、−c成長したZnO膜のエッチング速度は+c成長したZnO膜のエッチング速度に比べて、約12.5倍以上も速いことが分かった。
【0017】
以上のように、エッチャントとして、酸性溶液を用いた場合でもアルカリ性溶液を用いた場合でも、+c成長したZnO膜のエッチング速度に比べて−c成長したZnO膜のエッチング速度が極めて速いことが分かった。なお、これは成長面の極性(+c、−c)により化学的特性が大きく異なるためと考えられる。
【0018】
以上の結果から、ZnO系半導体膜をエッチング処理によって除去する工程において、除去したい部分に、犠牲層としてZnO系半導体膜を−c成長させることにより、簡便なプロセスで素子形成が可能となる。
【0019】
以下、実施例として、絶縁性基板上に、ZnO系半導体膜を+c成長させるとともに、一部に犠牲層としてZnO系半導体膜を−c成長させ、該−c成長させたZnO系半導体膜のみをエッチング除去して、絶縁性基板を露出させる工程を含む紫外線受光素子の製造方法を説明する。
【0020】
なお、本明細書において、+c成長とは成長面が+c極性(ZnOの場合は、Zn面)であるエピタキシャル成長を示し、−c成長とは成長面が−c極性(ZnOの場合は、O面)であるエピタキシャル成長を示す。
【0021】
また、本明細書において、Mg組成x(又はy、以下同じ)を明示したMgZn1−xOは、0≦x<0.6のときはウルツ鉱構造となり、0.6≦x≦1のときは岩塩構造となる。なお、Mg組成xが0のMgZn1−xOはZnOを表す。
【0022】
なお、ウルツ鉱構造のMgZn1−xOにおいて、Mg組成xを0から0.6まで大きくすると、エネルギーギャップは3.3eV(波長376nm)から4.4eV(波長282nm)まで大きくなる。また、岩塩構造のMgZn1−xOにおいて、Mg組成xを0.6から1.0まで大きくすると、エネルギーギャップは5.4eV(波長230nm)から7.8eV(波長159nm)まで大きくなる。エネルギーギャップが大きくなることにより、受光感度波長が短波長側へシフトする。これを利用することにより波長選択が可能となる。
【0023】
太陽光の紫外線は、UV−A(320〜400nm)、UV‐B(280〜320nm)、及びUV−C(280nm以下)に分類されるが、UV−Cはオゾン層で吸収されて地表まで届かないので、通常の紫外線は、実質的にUV−AとUV‐Bである。UV−Cは、例えば火炎等のみに含まれることになる。なお、エネルギーギャップの大きな岩塩構造のMgZn1−xOを使用することにより、短波長のUV−C(280nm以下)だけを検知する事が可能となる。従って、例えば、UV−Cを含む炎を検知するための火炎センサとして使用可能となる。
【0024】
Mg組成は、成長温度、Mgフラックス量、Oラジカル量、VI/II比により、所望の値に制御可能である。Mg組成は、Mgフラックス、Oラジカル量(O流量、RFパワー)、成長温度(Zn付着係数)に依存する。したがって、これらの条件を適宜選択することにより、所望のMg組成を得ることができる。例えば、Zn及びMgフラックス一定のもと、Oラジカル量を減らす(O流量を減らす、RFパワーを落とす)ことにより、Mg組成を高くすることが可能であり、Oラジカル量を増やすことにより、Mg組成を低くすることが可能である。あるいは、Znフラックス及びOラジカル量一定のもと、Mgフラックスを変化させてもよい。さらに、成長温度が900℃まではZnの付着係数が「1」であるが、950℃以上となるとZnの付着係数が減少していくため、同じフラックス条件においてもMg組成が高くなる。
【0025】
図2(A)〜図3(D)は、本発明の第1の実施例による受光素子100の主要な製造工程を示す概略断面図である。第1の実施例では、サファイアである絶縁性の単結晶基板上に、MBE法にてZnO系半導体層を成長させる。
【0026】
まず、図2(A)に示すように、c面サファイア基板1の+c面上に、MgビームとOラジカルビームを同時照射して、MgO(111)層2を厚さ約10nm成長させる。MgO(111)層2の成長条件は、例えば、成長温度650℃、Mgフラックス0.05nm/s、OソースガンのO流量2sccm/RFパワー300Wとする。
【0027】
MgO(111)層2は、その上に成長させるZnO系半導体層をZn極性面(+c面)で成長させる極性反転(極性制御)層となる。なお、無極性単結晶基板上方に成長させるZnO系半導体層の極性を、MgO層を介して制御する技術については、特開2005‐197410号公報の「発明を実施するための最良の形態」の項を参照する。
【0028】
なお、極性反転(極性制御)層としては、CrN(111)層もしくはAlN(111)層を形成してもよい。
【0029】
次に、図2(B)に示すように、レジストパターンRP11を形成する。レジストパターンRP11は、後の工程で+c極性のMgZnO層4が成長される領域(+c成長領域)GR1を覆い、後の工程で−c極性のMgZnO層4sが成長される領域(−c成長領域)GR2を露出する開口を有する。
【0030】
レジストパターンRP11をマスクとして、酸性又はアルカリ性溶液でMgO(111)層2をエッチングして、図2(B)に示すように、サファイア基板1の一部(−c成長領域GR2)を露出させる。なお、酸性又はアルカリ性溶液としては、王水(HNO:HCl=1:3)、HCl、HNO、HF、EDTA溶液、バッファードHF、EDTA−2Na(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム):EDA(エチレンジアミン)混合溶液等を用いることができる。また、ドライエッチングを用いてもよい。その後、レジストパターンRP11を除去して洗浄を行う。
【0031】
図4は、MgO(111)層2のパターニング例を表す概略平面図である。図中、ハッチングを施した領域はMgO(111)層2が形成されている領域(図2の領域GR1に相当)であり、その他の領域はサファイア基板1の表面が露出している領域(図2の領域GR2に相当)である。
【0032】
MgO(111)層2のパターンの一例として、図4(A)に示すように、垂直方向に延在する複数列のMgO(111)層2と各MgO(111)層2の列間に露出したサファイア基板1の表面がストライプ状になったものが考えられる。
【0033】
また、図4(B)に示すように、MgO(111)層2が形成されている領域とサファイア基板1の表面が露出している領域とが市松模様に配列しているパターンや、図4(C)及び図4(D)に示すように、4つのMgO(111)層2が形成されている領域を一組として、各組の中心部に、例えば、円形のサファイア基板1の表面が露出している領域を配置するようにしても良い。なお、図4(A)〜(D)に示すパターンは、後述の第2の実施例によるMgO(111)層2及び第3及び第4の実施例によるMgO(100)層32のパターンとしても用いることができる。また、MgO(111)層2及びMgO(100)層32のパターンはこれに限るものではない。
【0034】
図2(C)に戻り、MgO(111)層2のパターンを備えたサファイア基板1上に、Znビーム及びOラジカルビームを同時照射して、ZnOバッファー層3及びZnOバッファー層(犠牲層)3sを厚さ約30nm程度成長させる。ZnOバッファー層3、3sの成長条件は、例えば、成長温度300℃、Znフラックス0.1nm/s、OソースガンのO流量2sccm/RFパワー300Wとする。ZnOバッファー層3、3sの成長後、結晶性及び表面平坦性改善のため、900℃、30分のアニールを施す。なお、ZnOバッファー層3sは、後のエッチング工程において犠牲層となる。
【0035】
なお、ZnOバッファー層3の形成前に、MgO(111)層2のパターンを備えたサファイア基板1上に、再度MgO層2を約1nm成長させるようにしても良い。
【0036】
次に、図2(D)に示すように、ZnOバッファー層3、3s上に、Znビーム、Mgビーム、Oラジカルビーム、及びGaビーム又はAlビームを同時照射して、n型MgZnO層4、n型MgZnO層(犠牲層)4sを厚さ約1〜4μm成長させる。n型MgZnO層4、4sの成長条件は、例えば、成長温度400〜1050℃、Znフラックス0.1〜0.5nm/s、Mgフラックス0.02〜0.15nm/s、OソースガンのO流量1.0〜3.0sccm/RFパワー200〜300W、Gaセル温度を350〜420℃とする。例えば、Gaセル温度380℃の時、キャリア濃度は6×1017cm−3となり、400℃の時、2×1018cm−3となる。なお、n型MgZnO層4のキャリア濃度は、オーミックコンタクトを形成する観点から下限値は1017cm−3以上が好ましく、結晶性の観点から上限値は5×1018cm−3以下が好ましい。なお、+c成長と−c成長とでは、成長温度により成長速度が異なるので、n型MgZnO層4、4sの厚さは異なるものとなる。また、n型MgZnO層4sは、後のエッチング工程において犠牲層となる。
【0037】
続いて、図2(D)に示すように、n型MgZnO層4、4s上に、Znビーム、Mgビーム、及びOラジカルビームを同時照射して、アンドープMgZn1−xO(0≦x≦0.6)層5、アンドープMgZnO層(犠牲層)5sを例えば厚さ約1〜2μm成長させる。アンドープMgZnO層5、5sの成長条件は、例えば、成長温度400〜1050℃、Znフラックス0.1〜0.5nm/s、Mgフラックス0〜0.1nm/s、OソースガンのO流量1.0〜3.0sccm/RFパワー200〜300Wとする。なお、アンドープMgZnO層5のキャリア濃度は、ショットキー接合を形成する観点から1016cm−3以下が好ましい。なお、+c成長と−c成長とでは、成長温度により成長速度が異なるので、アンドープMgZnO層5、5sの厚さは異なるものとなる。また、アンドープMgZnO層5sは、後のエッチング工程において犠牲層となる。
【0038】
なお、n型MgZnO層4のMg組成をアンドープMgZnO層5のMg組成よりも高く設定することで、後の図3(A)に示すエッチング工程において、n型MgZnO層4をエッチングのストッパー層として用いることができる。
【0039】
第1の実施例による受光素子100をUV−A用とする場合は、例えば、アンドープMgZn1−yO層5のMg組成(y)を0に設定する。この場合のアンドープMgZn1−xO層5の成長条件は、例えば、成長温度900℃、Znフラックス0.2nm/s、Mgフラックス0nm/s、OソースガンのO流量2.0sccm/RFパワー300Wである。
【0040】
また、第1の実施例による受光素子100をUV−B用とする場合は、例えば、アンドープMgZn1−yO層5のMg組成(y)を0.37に設定する。この場合のアンドープMgZn1−yO層5の成長条件は、例えば、成長温度900℃、Znフラックス0.2nm/s、Mgフラックス0.04nm/s、OソースガンのO流量1.5sccm/RFパワー250Wである。
【0041】
なお、Mg組成は、Mgフラックス、Oラジカル量(O流量、RFパワー)、成長温度(Zn付着係数)に依存する。したがって、これらの条件を適宜選択することにより、所望のMg組成を得ることができる。例えば、Zn及びMgフラックス一定のもと、Oラジカル量を減らす(O流量を減らす、RFパワーを落とす)ことにより、Mg組成を高くすることが可能であり、Oラジカル量を増やすことにより、Mg組成を低くすることが可能である。あるいは、Znフラックス及びOラジカル量一定のもと、Mgフラックスを変化させてもよい。さらに、+c成長においては、成長温度が900℃まではZnの付着係数が「1」であるが、950℃以上となるとZnの付着係数が減少していくため、同じフラックス条件においてもMg組成が高くなる。
【0042】
次に、図2(E)に示すように、酸性又はアルカリ性溶液で−c成長領域GR2上に積層されたZnO系半導体層であるZnOバッファー層3s、n型MgZnO層4s及びアンドープMgZnO層5s(犠牲層3s〜5s)をエッチング除去して、サファイア基板1の一部(−c成長領域GR2)を露出させる。上述したように、+c成長したZnO膜のエッチング速度に比べて−c成長したZnO膜のエッチング速度が極めて速いため、+c極性膜をほとんど残しつつ、犠牲膜(ZnOバッファー層3s、n型MgZnO層4s及びアンドープMgZnO層5s)を簡単にエッチング除去することができる。
【0043】
なお、酸性又はアルカリ性溶液としては、王水(HNO:HCl=1:3)、HCl、HNO、HF、EDTA溶液、バッファードHF、EDTA−2Na:EDA混合溶液等を用いることができる。その後、洗浄を行う。なお、この時、図2(B)に示すレジストパターンRP11と同様のレジストパターンを形成してからエッチング処理を行っても良い。
【0044】
次に、図3(A)に示すように、アンドープMgZnO層5及び露出しているサファイア基板1上に、レジストパターンRP12を形成する。レジストパターンRP12は、後の工程でオーミック電極7が配置される領域を露出する開口を有する。レジストパターンRP12をマスクとして、酸性又はアルカリ性溶液を用いたウエットエッチングでアンドープMgZnO層5をエッチングして、n型MgZnO層4を露出させる。なお、エッチャントは、王水(HNO:HCl=1:3)、HCl、HNO、HF、EDTA溶液、バッファードHF、EDTA−2Na:EDA混合溶液等を用いることができる。その後、レジストパターンRP12を除去して洗浄を行う。
【0045】
次に、図3(B)に示すように、レジストパターンRP13を形成する。レジストパターンRP13は、有機物電極(ショットキー電極)8の形成領域を露出する開口を有する。UVオゾン洗浄を行った後、導電率増加剤を添加したPEDOT:PSSを、スピンコートにより(加熱処理後の厚さで)例えば厚さ30nm塗布する。レジストパターンRP13とともに不要部のPEDOT:PSSを除去するリフトオフにより、有機物電極8を形成する。リフトオフ後、ホットプレートにより例えば200℃、20分の加熱処理を施す。
【0046】
有機物電極8は、アンドープMgZnO層5の上面と、アンドープMgZnO層5、n型MgZnO層4、ZnOバッファー層3、及びMgO層2の積層側面とを覆い、積層側面を覆った部分の端が、図2(E)のエッチング工程で露出したサファイア基板1上に達する。
【0047】
次に、図3(C)に示すように、オーミック電極7及びワイヤーボンディング用金属電極9を形成する。なお、オーミック電極7もワイヤーボンディングされるが、ワイヤーボンディング用金属電極9の方を、単にワイヤーボンディング用金属電極9と呼ぶこととする。
【0048】
オーミック電極7の形成領域と、ワイヤーボンディング用金属電極9の形成領域に開口を有する金属マスクを用い、EB蒸着により、例えば厚さ10nmのTi層7a、9aを形成し、Ti層7a、9a上に例えば厚さ500nmのAu層7b、9bを積層して、オーミック電極7及びワイヤーボンディング用金属電極9を同時形成する。
【0049】
オーミック電極7は、図3(A)のエッチング工程で露出したn型MgZnO層4上に形成される。ワイヤーボンディング用金属電極9は、アンドープMgZnO層5の上面上の有機物電極8の縁部と、アンドープMgZnO層5、n型MgZnO層4、ZnOバッファー層3、及びMgO層2の積層側面上の有機物電極8を覆い、さらに、図2(E)のエッチング工程で露出したサファイア基板1を覆って形成される。
【0050】
ワイヤーボンディング用金属電極9は、有機物電極8上から、絶縁性下地であるサファイア基板1上に延在するように配置され、透光領域を確保するため有機物電極8の一部上を覆い、サファイア基板1の上方部分に、ワイヤーボンディング領域となる程度の広い面積を確保する。Ti層9aが、絶縁性下地であるサファイア基板1との密着層として働く。
【0051】
有機物電極8が、アンドープMgZnO層5の上面、及び、アンドープMgZnO層5、n型MgZnO層4、ZnOバッファー層3、及びMgO層2の積層側面を覆っているので、ワイヤーボンディング用金属電極9が導電性ZnO層3〜5と接触する短絡が防止されている。
【0052】
次に、図3(D)に示すように、レーザスクライブ、ダイシングなどを用いて、素子分離を行う。このようにして、第1の実施例による受光素子100が作製される。その後、ダイボンディング及びワイヤーボンディングにより、第1の実施例による受光素子100をステム上に接合して、第1の実施例による受光装置を作製することができる。
【0053】
図5(A)〜図6(C)は、本発明の第2の実施例による受光素子200の主要な製造工程を示す概略断面図である。第2の実施例でも、第1の実施例と同様に、サファイアである絶縁性の単結晶基板上に、MBE法にてZnO系半導体層を成長させる。第2の実施例による半導体紫外線受光素子200は、受光感度波長帯域の異なる二つの受光半導体層を有する。
【0054】
まず、図2(A)〜(D)に示す第1の実施例と同様に、サファイア基板1上に、MgO層2、ZnOバッファー層3、3s、n型MgZnO層4、4sを成長させる。その後、図5(A)に示すように、n型MgZnO層4、4s上に、Znビーム、Mgビーム、及びOラジカルビームを同時照射して、アンドープMgZn1−xO(0.3≦x≦0.6)層25、25sを例えば厚さ約1〜2μm成長させる。アンドープMgZn1−xO(0.3≦x≦0.6)層25及びアンドープMgZnO層(犠牲層)25sの成長条件は、例えば、成長温度400〜1050℃、Znフラックス0.1〜0.5nm/s、Mgフラックス0.06〜0.1nm/s、OソースガンのO流量1.0〜3.0sccm/RFパワー200〜300Wとする。なお、MgZn1−xO層25のキャリア濃度は、ショットキー接合を形成する観点から1016cm−3以下が好ましい。
【0055】
本実施例では、アンドープMgZn1−xO層25は、後に、UV−B用の受光素子部分LSB(図6(C))を構成するので、Mg組成(x)を0.37に設定する。この場合のアンドープMgZn1−xO層25の成長条件は、例えば、成長温度900℃、Znフラックス0.2nm/s、Mgフラックス0.04nm/s、OソースガンのO流量1.5sccm/RFパワー250Wである。
【0056】
次に、図5(B)に示すように、アンドープMgZn1−xO(0.3≦x≦0.6)層25及び犠牲層25s上に、アンドープMgZn1−yO(0≦y<0.3)層26及びアンドープMgZnO層(犠牲層)26sを形成する。Znビーム、Mgビーム、及びOラジカルビームを同時照射して、アンドープMgZn1−yO(0≦y<0.3)層26を例えば厚さ約1〜2μm成長させる。アンドープMgZnO層26、26sの成長条件は、例えば、成長温度400〜1050℃、Znフラックス0.1〜0.5nm/s、Mgフラックス0〜0.06nm/s、OソースガンのO流量1.0〜3.0sccm/RFパワー200〜300Wである。
【0057】
本実施例では、アンドープMgZn1−yO層26は、後に、UV−A用の受光素子部分LSA(図6(C))を構成するので、Mg組成(y)を0に設定する。この場合のアンドープMgZn1−yO層26の成長条件は、例えば、成長温度900℃、Znフラックス0.2nm/s、Mgフラックス0nm/s、OソースガンのO流量2.0sccm/RFパワー300Wである。
【0058】
なお、n型MgZnO層4のMg組成をアンドープMgZnO層25のMg組成よりも高く設定することで、後の図6(A)に示すエッチング工程において、n型MgZnO層4をエッチングのストッパー層として用いることができる。また、上述のように、アンドープMgZnO層25のMg組成は、アンドープMgZnO層26のMg組成よりも高く設定されるので、後の図5(D)に示すエッチング工程において、アンドープMgZnO層25をエッチングのストッパー層として用いることができる。
【0059】
次に、図5(C)に示すように、第1の実施例と同様の手法で、酸性又はアルカリ性溶液で−c成長領域GR2上に積層されたZnO系半導体層であるZnOバッファー層3s、n型MgZnO層4s及びアンドープMgZnO層25s、26s(犠牲層3s、4s、25s、26s)をエッチング除去して、サファイア基板1の一部(−c成長領域GR2)を露出させる。上述したように、+c成長したZnO膜のエッチング速度に比べて−c成長したZnO膜のエッチング速度が極めて速いため、+c極性膜をほとんど残しつつ、犠牲層(ZnOバッファー層3s、n型MgZnO層4s及びアンドープMgZnO層25s、26s)を簡単にエッチング除去することができる。
【0060】
次に、図5(D)に示すように、アンドープMgZnO層26及び露出しているサファイア基板1上に、レジストパターンRP21を形成する。レジストパターンRP21は、後の工程で受光素子部分LSAのオーミック電極7が配置される領域上方のアンドープMgZnO層26を露出する開口及び受光素子部分LSBとなる領域のアンドープMgZnO層26を露出する開口を有する。レジストパターンRP21をマスクとして、酸性又はアルカリ性溶液を用いたウエットエッチングでアンドープMgZnO層26をエッチングして、受光素子部分LSAにおいてアンドープMgZnO層25の一部を露出させるとともに、受光素子部分LSBにおいてアンドープMgZnO層26を全て除去してアンドープMgZnO層25を露出させる。なお、エッチャントは、他のエッチング処理と同様のものを用いることができる。その後、レジストパターンRP21を除去して洗浄を行う。
【0061】
次に、図6(A)に示すように、アンドープMgZnO層25、26及び露出しているサファイア基板1上に、レジストパターンRP22を形成する。レジストパターンRP22は、後の工程で受光素子部分LSAのオーミック電極7が配置される領域を露出する開口及び受光素子部分LSBのオーミック電極7が配置される領域を露出する開口を有する。レジストパターンRP22をマスクとして、酸性又はアルカリ性溶液を用いたウエットエッチングでアンドープ26及び25の一部をエッチングして、オーミック電極7が配置される領域のn型MgZnO層4を露出させる。なお、エッチャントは、他のエッチング処理と同様のものを用いることができる。その後、レジストパターンRP22を除去して洗浄を行う。
【0062】
次に、図6(B)に示すように、レジストパターンRP23を形成する。レジストパターンRP23は、有機物電極(ショットキー電極)8の形成領域を露出する開口を有する。UVオゾン洗浄を行った後、導電率増加剤を添加したPEDOT:PSSを、スピンコートにより(加熱処理後の厚さで)例えば厚さ30nm塗布する。レジストパターンRP23とともに不要部のPEDOT:PSSを除去するリフトオフにより、有機物電極8を形成する。リフトオフ後、ホットプレートにより例えば200℃、20分の加熱処理を施す。
【0063】
有機物電極8は、アンドープMgZnO層25又は26の上面と、アンドープMgZnO層5(及び26)、n型MgZnO層4、ZnOバッファー層3、及びMgO層2の積層側面とを覆い、積層側面を覆った部分の端が、図5(C)のエッチング工程で露出したサファイア基板1上に達する。
【0064】
次に、図6(C)に示すように、オーミック電極7及びワイヤーボンディング用金属電極9を形成する。なお、オーミック電極7もワイヤーボンディングされるが、ワイヤーボンディング用金属電極9の方を、単にワイヤーボンディング用金属電極9と呼ぶこととする。
【0065】
オーミック電極7の形成領域と、ワイヤーボンディング用金属電極9の形成領域に開口を有する金属マスクを用い、EB蒸着により、例えば厚さ10nmのTi層7a、9aを形成し、Ti層7a、9a上に例えば厚さ500nmのAu層7b、9bを積層して、オーミック電極7及びワイヤーボンディング用金属電極9を同時形成する。
【0066】
オーミック電極7は、図6(A)のエッチング工程で露出したn型MgZnO層4上に形成される。ワイヤーボンディング用金属電極9は、アンドープMgZnO層25又は26の上面上の有機物電極8の縁部と、アンドープMgZnO層25(及び26)、n型MgZnO層4、ZnOバッファー層3、及びMgO層2の積層側面上の有機物電極8を覆い、さらに、図5(C)のエッチング工程で露出したサファイア基板1を覆って形成される。
【0067】
ワイヤーボンディング用金属電極9は、有機物電極8上から、絶縁性下地であるサファイア基板1上に延在するように配置され、透光領域を確保するため有機物電極8の一部上を覆い、サファイア基板1の上方部分に、ワイヤーボンディング領域となる程度の広い面積を確保する。Ti層9aが、絶縁性下地であるサファイア基板1との密着層として働く。
【0068】
有機物電極8が、アンドープMgZnO層5の上面、及び、アンドープMgZnO層5、n型MgZnO層4、ZnOバッファー層3、及びMgO層2の積層側面を覆っているので、ワイヤーボンディング用金属電極9が導電性ZnO層3、4、25、26と接触する短絡が防止されている。
【0069】
このようにして、第2の実施例による受光素子200が作製される。その後、ダイボンディング及びワイヤーボンディングにより、第2の実施例による受光素子200をステム上に接合して、第2の実施例による受光装置を作製することができる。
【0070】
以上のようにして作製された第2の実施例による半導体紫外線受光素子200は、図6(C)に示すように、Mg組成(x)の高いMgZn1-xO(0.3≦x≦0.6)層25とする受光素子部分LSBと、受光半導体層をMg組成(y)の低いMgZn1-yO(0≦y<0.3)層26とする受光素子部分LSAとを有する。
【0071】
受光素子部分LSAは、例えば、波長400nm以下の紫外線に受光感度があるように設定し、UV−A(320〜400nm)及びUV‐B(280〜320nm)の測定に適するようにする。
【0072】
一方、受光素子部分LSBは、Mg組成を受光素子部分LSAよりも高く設定し、例えば、0.37として波長310nm以下(また例えばMg組成を0.31として波長320nm以下)の紫外線に受光感度があるようにして、UV‐B(280〜320nm)の測定に適するようにする。
【0073】
受光素子部分LSAで測定された光電流から、受光素子部分LSBで測定された光電流成分を差し引くことにより、UV−Aの強さも見積もることができる。このように、第1の実施例による受光素子は、例えば、日焼け対策のために太陽光の紫外線を測定する測定器に利用できる。上述のように、太陽光の紫外線は、実質的にUV−A(320〜400nm)とUV‐B(280〜320nm)である。
【0074】
図7(A)〜図8(D)は、本発明の第3の実施例による受光素子300の主要な製造工程を示す概略断面図である。第3の実施例では、ZnOである絶縁性の単結晶基板上に、MBE法にてZnO系半導体層を成長させる。絶縁性Zn(+c)面ZnO(0001)基板を用いる場合は、第1及び第2の実施例で用いたサファイア基板とは逆に、極性反転(極性制御)層がない場合は+c極性のMgZnO層が成長し、極性反転(極性制御)層がある場合に−c極性のMgZnO層(犠牲層)が成長する。
【0075】
まず、図7(A)に示すように、絶縁性Zn(+c)面ZnO(0001)基板31上に、MgビームとOラジカルビームを同時照射して、MgO(100)層32を厚さ約10nm成長させる。MgO層32の成長条件は、例えば、成長温度650℃、Mgフラックス0.05nm/s、OソースガンのO流量2sccm/RFパワー300Wとする。
【0076】
MgO(100)層32は、+c面ZnO基板31上に形成され、その上に成長させるZnO系半導体層をO極性面(−c面)とする極性反転(極性制御)層となる。
【0077】
次に、図7(B)に示すように、レジストパターンRP31を形成する。レジストパターンRP31は、後の工程で+c極性のMgZnO層4が成長される領域を露出する開口を有するとともに、−c極性のMgZnO層(犠牲層)4sが成長される領域を覆って形成される。
【0078】
レジストパターンRP31をマスクとして、酸性又はアルカリ性溶液でMgO(100)層32をエッチングして、図7(B)に示すように、ZnO基板31を露出させる。なお、エッチャントとしては他の実施例と同様のものを用いることができる。また、ドライエッチングを用いてもよい。その後、レジストパターンRP31を除去して洗浄を行う。
【0079】
次に、図7(C)に示すように、MgO(100)層32のパターンを備えたZnO基板31上に、Znビーム及びOラジカルビームを同時照射して、ZnOバッファー層33、33sを厚さ約30nm成長させる。ZnOバッファー層33、33sの成長条件は、第1の実施例によるZnOバッファー層3と同様である。
【0080】
次に、図7(D)に示すように、第1の実施例と同様に、ZnOバッファー層33、33s上に、n型MgZnO層4、4s及びアンドープMgZnO層5、5sを成長させる。
【0081】
次に、図7(E)に示すように、酸性又はアルカリ性溶液で−c成長領域GR2上に積層されたMgO層32及びZnO系半導体層であるZnOバッファー層33s、n型MgZnO層4s及びアンドープMgZnO層5s(犠牲層33s、4s、5s)をエッチング除去して、ZnO基板31の一部(−c成長領域GR2)を露出させる。上述したように、+c成長したZnO膜のエッチング速度に比べて−c成長したZnO膜のエッチング速度が極めて速いため、+c極性膜をほとんど残しつつ、犠牲膜(ZnOバッファー層33s、n型MgZnO層4s及びアンドープMgZnO層5s)を簡単にエッチング除去することができる。なお、このとき、図7(E)に破線で示すように、MgO層32の一部がMgO層32rとして残留する場合があるが、MgO層32rは絶縁性であるので問題はない。
【0082】
その後、図8(A)のオーミック電極形成領域露出工程(エッチング工程)、図8(B)の有機物電極形成工程、図8(C)の電極形成工程及び図8(D)の素子分離工程を経て、第3の実施例による受光素子300が作製される。図8(A)〜(D)に示す工程は図3(A)〜(D)に示す第1の実施例と実質的に同一の工程であるので、その説明を省略する。なお、この第3の実施例では、MgO層32rが残存して基板31が露出していない場合が考えられるが、その場合には、図8(A)〜(D)に示すように、有機物電極8及びTi層9aはMgO層32r上に形成される。その他の構成及び製造工程は、第1の実施例と同様である。
【0083】
その後、ダイボンディング及びワイヤーボンディングにより、第3の実施例による受光素子300をステム上に接合して、第3の実施例による受光装置を作製することができる。
【0084】
図9(A)〜図10(C)は、本発明の第4の実施例による受光素子400の主要な製造工程を示す概略断面図である。第4の実施例では、第3の実施例と同様にZnOである絶縁性の単結晶基板上に、MBE法にてZnO系半導体層を成長させる。また、第2の実施例と同様に、受光感度波長帯域の異なる二つの受光半導体層を有する。
【0085】
まず、第3の実施例による図7(A)〜図7(D)に示す工程と同様に、図9(A)に示すように、MgO(100)層32のパターンを備えたZnO基板31上に、ZnOバッファー層33、33s、n型MgZnO層4、4sを成長させる。なお、図7(D)に示す工程におけるアンドープMgZnO層5、5sは成長させない。
【0086】
次に、第2の実施例による図5(A)〜図5(B)に示す工程と同様に、図9(B)に示すように、n型MgZnO層4、4s上に、アンドープMgZn1−xO(0.3≦x≦0.6)層25及びアンドープMgZnO層(犠牲層)25s、アンドープMgZn1−yO(0≦y<0.3)層26及びアンドープMgZnO層(犠牲層)26sを形成する。
【0087】
次に、図9(C)に示すように、酸性又はアルカリ性溶液で−c成長領域GR2上に積層されたMgO層32及びZnO系半導体層であるZnOバッファー層33s、n型MgZnO層4s及びアンドープMgZnO層25s、26s(犠牲層33s、4s、25s、26s)をエッチング除去して、ZnO基板31の一部(−c成長領域GR2)を露出させる。上述したように、+c成長したZnO膜のエッチング速度に比べて−c成長したZnO膜のエッチング速度が極めて速いため、+c極性膜をほとんど残しつつ、犠牲膜(ZnOバッファー層33s、n型MgZnO層4s及びアンドープMgZnO層25s、26s)を簡単にエッチング除去することができる。なお、このとき、図9(C)に破線で示すように、MgO層32の一部がMgO層32rとして残留する場合があるが、MgO層32rは絶縁性であるので問題はない。
【0088】
その後、図9(D)及び図10(A)のオーミック電極形成領域露出工程(エッチング工程)、図10(B)の有機物電極形成工程、図10(C)の電極形成工程を経て、第4の実施例による受光素子400が作製される。図9(D)〜図10(C)に示す工程は図5(D)〜図6(C)に示す第2の実施例と実質的に同一の工程であるので、その説明を省略する。なお、この第4の実施例では、MgO層32rが残存して基板31が露出していない場合が考えられるが、その場合には、図9(D)〜図10(C)に示すように、有機物電極8及びTi層9aはMgO層32r上に形成される。その他の構成及び製造工程は、第2の実施例と同様である。
【0089】
以上、本発明の第1及び第2の実施例によれば、サファイア基板上の所望の領域に極性反転層を形成し、該極性反転層が形成された+c面成長領域(MgO(111)層2がある領域)と、該極性反転層が形成されていない−c面成長領域(MgO(111)層2がない領域)の双方を設け、その上にZnO系半導体層をエピタキシャル成長させることにより、成長面が−c極性のZnO系半導体層と、成長面が+c極性のZnO系半導体層とを同時に成長させる。成長面が−c極性のZnO系半導体層は、成長面が+c極性のZnO系半導体層に比べてエッチング速度が速いので、成長面が−c極性のZnO系半導体層をエッチング処理における犠牲層として利用することができる。よって、簡便なプロセスで紫外線受光素子を製造することが可能となる。
【0090】
また、本発明の第3及び第4の実施例によれば、絶縁性+c面ZnO基板上の所望の領域に極性反転層を形成し、該極性反転層が形成された−c面成長領域(MgO(100)層32がある領域)と、該極性反転層が形成されていない+c面成長領域(MgO(100)層32がない領域)の双方を設け、その上にZnO系半導体層をエピタキシャル成長させることにより、成長面が−c極性のZnO系半導体層と、成長面が+c極性のZnO系半導体層とを同時に成長させる。成長面が−c極性のZnO系半導体層は、成長面が+c極性のZnO系半導体層に比べてエッチング速度が速いので、成長面が−c極性のZnO系半導体層をエッチング処理における犠牲層として利用することができる。よって、簡便なプロセスで紫外線受光素子を製造することが可能となる。
【0091】
以上説明した実施例では、有機物電極(PEDOT:PSS)の導電率増加剤として、ジメチルスルホキシド(DMSO)を添加して使用したが、エチレングリコールや1‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)などの非プロトン性極性溶媒を使用してもよい。
【0092】
また、有機物電極形成において、スピンコートによりPEDOT:PSSを塗布し、リフトオフしてパターン形成したが、スクリーン印刷用の導電性ポリマーを使用して、スクリーン印刷により直接パターン形成してもよい。スクリーン印刷用の導電性ポリマーもポリチオフェン誘導体から形成されている。
【0093】
また、ワイヤーボンディング用金属電極の形成される絶縁層として、SiOを使用したが、例えば、SiON、Si、Al、MgOを使用してもよい。絶縁層形成方法として、スパッタリングを使用したが、例えば熱化学気相堆積(CVD)、プラズマCVD、低圧(LP)CVD等を用いてもよい。
【0094】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0095】
1 サファイア基板
2 MgO(111)層
3 ZnOバッファー層
4 n型MgZnO層
5、25、26 アンドープMgZnO層
7 オーミック電極
8 有機物電極
9 ワイヤーボンディング用金属電極
31 ZnO基板
32 MgO(100)層
RP レジストパターン
LSA、LSB 受光素子部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を準備する工程と、
前記基板上の一部領域に極性反転層を形成する工程と、
前記基板上及び前記極性反転層上に、−c極性ZnO系半導体層と+c極性ZnO系半導体層とを、同時にエピタキシャル成長させる工程と、
前記−c極性ZnO系半導体層をエッチングにより除去する工程と、
前記+c極性ZnO系半導体層上にショットキー電極を形成する工程と、
前記ショットキー電極と対をなすオーミック電極を形成する工程と
を有する半導体紫外線受光素子の製造方法。
【請求項2】
前記基板は、無極性基板であり、
前記基板上には前記−c極性ZnO系半導体層が成長し、
前記極性反転層上には前記+c極性ZnO系半導体層が成長する請求項1記載の半導体紫外線受光素子の製造方法。
【請求項3】
前記基板は、+c面基板であり、
前記基板上には前記+c極性ZnO系半導体層が成長し、
前記極性反転層上には前記−c極性ZnO系半導体層が成長する請求項1記載の半導体紫外線受光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−16677(P2013−16677A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148921(P2011−148921)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】