説明

半導体装置、配線基板付き裏面電極型太陽電池セル、太陽電池モジュールおよび半導体装置の製造方法

【課題】生産性に優れ、半導体基板と配線基板との機械的な接続の安定性を向上することができるとともに、半導体基板の電極と配線基板の配線との電気的な接続の安定性を向上することができる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】第1の絶縁性接着材が極性の異なる電極間の半導体基板の表面領域と隣り合う配線間の絶縁性基材の表面領域との間に配置され、第2の絶縁性接着材が第1の絶縁性接着材と導電性接着材との間に配置されており、第1の絶縁性接着材は、第1の硬化状態となった後に軟化状態となってその後第2の硬化状態となる性質を有し、第1の絶縁性接着材が第2の硬化状態となるまで第1の絶縁性接着材の粘度を第2の絶縁性接着材の粘度よりも高くして製造される半導体装置とその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に地球環境の保護の観点から、太陽光エネルギを電気エネルギに変換する太陽電池セルは次世代のエネルギ源としての期待が急激に高まっている。太陽電池セルの種類には、化合物半導体を用いたものや有機材料を用いたものなどの様々なものがあるが、現在、シリコン結晶を用いた太陽電池セルが主流となっている。
【0003】
現在、最も多く製造および販売されている太陽電池セルは、太陽光が入射する側の面(受光面)にn電極が形成されており、受光面と反対側の面(裏面)にp電極が形成された構成の両面電極型太陽電池セルである。
【0004】
また、太陽電池セルの受光面には電極を形成せず、太陽電池セルの裏面のみにn電極およびp電極を形成した裏面電極型太陽電池セルの開発も進められている。
【0005】
たとえば特許文献1(特開2009−88145号公報)には、裏面電極型太陽電池セルと配線基板とを接続する技術が開示されている。特許文献1においては、以下の工程により、裏面電極型太陽電池セルと配線基板とを接続している。
(1)裏面電極型太陽電池セルをSn−Bi半田槽に浸漬して電極部分を半田コートする工程。
(2)スクリーン印刷によりアクリル系粘着剤を裏面電極型太陽電池セルの裏面の電極以外の部分に塗布する工程。
(3)配線基板上に裏面電極型太陽電池セルを設置する工程。
(4)裏面電極型太陽電池セルと配線基板とを加熱圧着する工程。
【0006】
これにより、特許文献1においては、裏面電極型太陽電池セルの電極と配線基板の配線とをSn−Bi半田によって電気的に接続するとともに、裏面電極型太陽電池セルと配線基板とをアクリル系粘着剤によって接着して機械的に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−88145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、裏面電極型太陽電池セルと配線基板とを接着材によって接着する技術が開示されているが、裏面電極型太陽電池セルと配線基板とを貼り合わせるときに接着材をどのような状態にするかということについては記載されていない。
【0009】
仮に、接着材が塗布後に硬化していない場合には、裏面電極型太陽電池セルと配線基板とを貼り合せるときの圧力によって、接着材が裏面電極型太陽電池セルの電極と配線基板の配線との間に入り込み、十分な電気的な接続が得られなくなる可能性がある。
【0010】
接着材を塗布後に完全に硬化させた場合には上記の問題は解決するが、接着材の接着力が著しく低下し、裏面電極型太陽電池セルと配線基板とを接着する接着材としての機能を失うことに加えて、硬化した接着材と配線基板とが接する面が平坦になるとは限らないため、接着材と配線基板との間の隙間から加熱によって溶融した半田が流出し、隣り合う電極間または配線間での短絡を引き起こすという問題も発生する。
【0011】
また、特許文献1には、接着材として粘着性のテープを用いることができる旨が記載されているが、電極間または配線間の狭い領域に電極または配線に重ならないように粘着性のテープを貼り付ける工程は生産性や品質の著しい低下を招きかねない。
【0012】
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、生産性に優れ、半導体基板と配線基板との機械的な接続の安定性を向上することができるとともに、半導体基板の電極と配線基板の配線との電気的な接続の安定性を向上することができる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、一方の表面に極性の異なる電極が設けられた半導体基板と、絶縁性基材の一方の表面に配線が設けられた配線基板と、半導体基板と絶縁性基材との間に設けられた第1の絶縁性接着材および第2の絶縁性接着材と、電極と配線との間に設けられた導電性接着材と、を含み、第1の絶縁性接着材は、極性の異なる電極間の半導体基板の表面領域と隣り合う配線間の絶縁性基材の表面領域との間に配置され、第2の絶縁性接着材は、第1の絶縁性接着材と導電性接着材との間に配置されており、第1の絶縁性接着材は、未硬化の状態にエネルギが供給されることにより、未硬化の状態から粘度が上昇して第1の硬化状態となった後に第1の硬化状態から粘度が一旦低下して軟化状態となり、その後粘度が再度上昇して第1の硬化状態よりも粘度が高い状態である第2の硬化状態となる性質を有し、第2の絶縁性接着材は、未硬化の状態にエネルギが供給されることにより、未硬化の状態から粘度が上昇して硬化状態となる性質を有している半導体装置である。
【0014】
ここで、本発明の半導体装置において、第1の硬化状態は、常温における未硬化状態と比べて粘度が高く、形状保持性を有しており、かつ接着性の低い状態であり、第2の硬化状態は、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材の粘度が一旦低下した後に再度上昇することによって接着可能となる状態であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の半導体装置において、導電性接着材は、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材の粘度が低下し始める温度よりも高い融点を有していることが好ましい。
【0016】
また、本発明の半導体装置において、第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材は白色であることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、一方の表面に極性の異なる電極が設けられた半導体基板の電極間の表面領域および絶縁性基材の一方の表面に配線が設けられた配線基板の隣り合う配線間の絶縁性基材の表面領域の少なくとも一方に第1の絶縁性接着材を設置する工程と、第1の絶縁性接着材の粘度を上昇させて第1の硬化状態とする工程と、電極の表面および配線の表面の少なくとも一方に導電性接着材を含む第2の絶縁性接着材を設置する工程と、半導体基板の電極と配線基板の配線とが対向するように半導体基板と配線基板とを重ね合わせる工程と、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材の粘度を低下させて軟化状態とする工程と、導電性接着材を溶融させる工程と、軟化状態の第1の絶縁性接着材の粘度を上昇させて第2の硬化状態とする工程と、を含み、第2の硬化状態とする工程では、第1の絶縁性接着材の粘度を第2の絶縁性接着材の粘度よりも高くする半導体装置の製造方法である。
【0018】
ここで、本発明の半導体装置の製造方法において、第1の硬化状態は、常温における未硬化状態と比べて粘度が高く、形状保持性を有しており、かつ接着性の低い状態であり、第2の硬化状態は、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材の粘度が一旦低下した後に再度上昇することによって接着可能となる状態であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の半導体装置の製造方法においては、軟化状態とする工程と、溶融させる工程と、第2の硬化状態とする工程とは、1回の加熱工程で行なわれることが好ましい。
【0020】
また、本発明の半導体装置の製造方法において、導電性接着材は、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材の粘度が低下し始める温度よりも高い融点を有していることが好ましい。
【0021】
また、本発明の半導体装置の製造方法において、第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材は白色であることが好ましい。
【0022】
また、本発明の半導体装置の製造方法においては、第1の絶縁性接着材を設置する工程において、第1の絶縁性接着材は、半導体基板の電極と半導体基板の周縁部との間に設置されることが好ましい。
【0023】
また、本発明の半導体装置の製造方法において、第1の絶縁性接着材は、半導体基板の電極と半導体基板の周縁部との間に、半導体基板と配線基板との位置合わせを行なうための位置合わせパターンを形成するように設置されることが好ましい。
【0024】
また、本発明の半導体装置の製造方法において、配線基板には第1の絶縁性接着材の位置合わせパターンに対応する位置合わせパターンが設けられており、重ね合わせる工程は、半導体基板に設けられた第1の絶縁性接着材の位置合わせパターンと配線基板の位置合わせパターンとが重なるように位置合わせをする工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、生産性に優れ、半導体基板と配線基板との機械的な接続の安定性を向上することができるとともに、半導体基板の電極と配線基板の配線との電気的な接続の安定性を向上することができる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態の配線基板付き裏面電極型太陽電池セルの模式的な断面図である。
【図2】(a)〜(g)は、実施の形態の裏面電極型太陽電池セルの製造方法の一例について図解する模式的な断面図である。
【図3】裏面電極型太陽電池セルを裏面側から見たときの一例の模式的な平面図である。
【図4】裏面電極型太陽電池セルを裏面側から見たときの他の一例の模式的な平面図である。
【図5】裏面電極型太陽電池セルを裏面側から見たときのさらに他の一例の模式的な平面図である。
【図6】実施の形態の配線基板の一例を配線の設置側から見たときの模式的な平面図である。
【図7】図6のVII−VIIに沿った模式的な断面図である。
【図8】(a)〜(h)は、配線基板付き裏面電極型太陽電池セルの製造方法の一例を図解する模式的な断面図である。
【図9】裏面電極型太陽電池セルの電極と周縁部との間に未硬化状態の第1の絶縁性接着材の位置合わせパターンを設けた構成の裏面電極型太陽電池セルの裏面の一例の模式的な拡大平面図である。
【図10】実施の形態の裏面電極型太陽電池セルと配線基板とを重ね合わせた後の一例の模式的な平面図である。
【図11】配線基板の他の一例を絶縁性基材側から見たときの模式的な拡大平面図である。
【図12】裏面電極型太陽電池セルと配線基板との位置合わせ時の第1の絶縁性接着材の位置合わせパターンと配線基板の位置合わせパターンとの位置関係の一例を図解する模式的な拡大平面図である。
【図13】第1の絶縁性接着材にBステージ化可能な樹脂を用い、導電性接着材を含む第2の絶縁性接着材として半田樹脂を用いたときの経過時間に対する加熱温度の変化と、第1の絶縁性接着材および第2の絶縁性接着材の粘度変化との関係の一例を示す図である。
【図14】第1の絶縁性接着材にBステージ化可能な樹脂を用い、導電性接着材を含む第2の絶縁性接着材として半田樹脂を用いて作製された配線基板付き太陽電池セルの一例の模式的な拡大断面図である。
【図15】実施の形態の太陽電池モジュールの一例の模式的な断面図である。
【図16】第1の絶縁性接着材を設置した後の実施例の裏面電極型太陽電池セルの裏面の拡大写真である。
【図17】実施例の配線基板の配線の設置側の表面の拡大写真である。
【図18】実施例の温度プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。また、後述する各工程の間にはその他の工程が含まれていてもよいことは言うまでもない。
【0028】
<配線基板付き裏面電極型太陽電池セル>
図1に、本発明の半導体装置の一例である本実施の形態の配線基板付き裏面電極型太陽電池セルの模式的な断面図を示す。図1に示すように、配線基板付き裏面電極型太陽電池セルは、裏面電極型太陽電池セル8と、配線基板10と、を含んでいる。
【0029】
裏面電極型太陽電池セル8は、半導体基板1を有するとともに、半導体基板1の一方の表面に設けられたn型用電極6とp型用電極7とを有している。ここで、n型用電極6とp型用電極7とは極性の異なる電極である。
【0030】
配線基板10は、絶縁性基材11を有するとともに、絶縁性基材11の一方の表面に設けられたn型用配線12とp型用配線13とを有している。ここで、n型用配線12は、n型用電極6に対応する配線であり、n型用電極6に対向して設けられている。また、p型用配線13は、p型用電極7に対応する配線であり、p型用電極7に対向して設けられている。
【0031】
裏面電極型太陽電池セル8のn型用電極6は、配線基板10のn型用配線12と導電性接着材21により電気的に接続されている。裏面電極型太陽電池セル8のp型用電極7は、配線基板10のp型用配線13と導電性接着材21により電気的に接続されている。
【0032】
裏面電極型太陽電池セル8の半導体基板1と、配線基板10の絶縁性基材11と、の間には、第1の絶縁性接着材22と、第2の絶縁性接着材23と、が設けられている。
【0033】
第1の絶縁性接着材22は、半導体基板1の一方の表面において隣り合って配置されているn型用電極6とp型用電極7との間における半導体基板1の表面領域と、絶縁性基材11の一方の表面において隣り合って配置されているn型用配線12とp型用配線13との間における絶縁性基材11の表面領域と、の間に配置されている。第1の絶縁性接着材22は、n型用配線12の表面の幅方向の端部とp型用配線13の表面の幅方向の端部とをそれぞれ覆うようにして設けられている。
【0034】
第2の絶縁性接着材23は、第1の絶縁性接着材22と、導電性接着材21と、の間に配置されている。第2の絶縁性接着材23は、配線基板10のn型用配線12およびp型用配線13のそれぞれの表面と、半導体基板1の電極形成側の表面との間に設けられており、n型用電極6と導電性接着材21との接続体およびp型用電極7と導電性接着材21との接続体をそれぞれ覆っている。
【0035】
第1の絶縁性接着材22は、未硬化の状態にエネルギが供給されることにより、未硬化の状態から粘度が上昇して第1の硬化状態となった後に、第1の硬化状態から粘度が一旦低下して軟化状態となり、その後粘度が再度上昇して第1の硬化状態よりも粘度が高い状態である第2の硬化状態となる性質を有している。なお、図1に示す配線基板付き裏面電極型太陽電池セルの状態においては、第1の絶縁性接着材22は、第2の硬化状態となっている。第1の絶縁性接着材に供給されるエネルギとしては、たとえば、加熱などによる熱エネルギおよび/または紫外線などの光の照射による光エネルギなどが挙げられる。
【0036】
ここで、未硬化の状態の第1の絶縁性接着材は、たとえば、加熱および/または紫外線などの光の照射などによって硬化して第1の硬化状態となる。これにより、未硬化の第1の絶縁性接着材の状態と比べて、粘着力および流動性が低下した第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材を得ることができる。
【0037】
また、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材は、常温(約25℃)における未硬化状態と比べて粘度が高く、形状保持性(外力を加えない限り変形しない性質)を有しており、かつ接着性の低い状態(第1の絶縁性接着材の表面に裏面電極型太陽電池セル8や配線基板10を接触させても裏面電極型太陽電池セル8や配線基板10に第1の絶縁性接着材が付着しない程度の接着性を有する状態)であることが好ましい。この場合には、後述する半田樹脂を設置する工程において、生産性の高い印刷工程を採用することが可能となる。さらには、後述する裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10とを重ね合わせる工程において、裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10とを重ね合わせた後においても、裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10とを容易に取り外しできる傾向にある。そのため、裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線基板10の配線との位置合わせを容易かつ高精度に行なうことができる傾向にある。
【0038】
第2の硬化状態は、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材の粘度が一旦低下した後に再度上昇することによって接着可能となる状態であることが好ましい。この場合には、後述する裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10とを重ね合わせる工程において、第1の硬化状態で裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10との位置関係を調整した後に第1の絶縁性接着材を第2の硬化状態とすることによって、所望の位置関係で裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10とを接着することができる。これにより、生産性、裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10との機械的な接続の安定性、および裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線基板10の配線との電気的な接続の安定性を向上することができる傾向が大きくなる。
【0039】
未硬化状態の第1の絶縁性接着材を第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材とする手段が加熱による場合は、第1の絶縁性接着材が第1の硬化状態となる温度は、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材が軟化する温度および軟化状態の第1の絶縁性接着材が第2の硬化状態となる温度よりも低いことが好ましい。これにより、未硬化状態の第1の絶縁性接着材を第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材とする工程における加熱温度を制御した場合には、未硬化状態の第1の絶縁性接着材が軟化状態や第2の硬化状態まで進行してしまうことを防止することができる。
【0040】
また、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材を軟化して軟化状態の第1の絶縁性接着材を形成する工程と、軟化状態の第1の絶縁性接着材を硬化して第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材を形成する工程と、が加熱によって行なわれる場合には、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材を軟化する温度は、軟化状態の第1の絶縁性接着材を硬化して第2の硬化状態とする温度よりも低いことが好ましい。このように加熱温度を制御することで第1の絶縁性接着材を確実に第1の硬化状態、軟化状態および第2の硬化状態の順に状態を遷移させることができる。
【0041】
また、第2の絶縁性接着材23は、未硬化の状態にエネルギが供給されることにより、未硬化の状態から粘度が上昇して硬化状態となる性質を有している。第2の絶縁性接着材23に供給されるエネルギとしては、たとえば、加熱などによる熱エネルギおよび/または紫外線などの光の照射による光エネルギなどが挙げられる。
【0042】
導電性接着材21は、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材の粘度が低下し始める温度よりも高い融点を有していることが好ましい。この場合には、後述するように、導電性接着材21が電極間および配線間に流れ出すことによる電気的な短絡の発生を有効に防止することができる傾向にある。
【0043】
第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22は白色であることが好ましい。第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22が白色である場合には、これらの樹脂における光の反射率が高くなり、裏面電極型太陽電池セル8を透過してきた光をこれらの樹脂で効率的に反射して裏面電極型太陽電池セル8に光が再度照射されることで光損失を低減させることができることから、配線基板付き裏面電極型太陽電池セルの変換効率を向上させることができる傾向にある。本明細書において、「白色」とは、波長360〜830nmの光に対する反射率が50%以上であることをいう。なお、第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22が白色である場合に、第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22の波長360〜830nmの光に対する反射率は100%近い方が好ましい。
【0044】
<裏面電極型太陽電池セル>
裏面電極型太陽電池セル8としては、たとえば以下のようにして製造した裏面電極型太陽電池セル8を用いることができる。以下、図2(a)〜(g)の模式的断面図を参照して、本実施の形態で用いられる裏面電極型太陽電池セル8の製造方法の一例について説明する。
【0045】
まず、図2(a)に示すように、たとえばインゴットからスライスすることなどによって、半導体基板1の表面にスライスダメージ1aが形成された半導体基板1を用意する。半導体基板1としては、たとえば、n型またはp型のいずれかの導電型を有する多結晶シリコンまたは単結晶シリコンなどからなるシリコン基板を用いることができる。
【0046】
次に、図2(b)に示すように、半導体基板1の表面のスライスダメージ1aを除去する。ここで、スライスダメージ1aの除去は、たとえば半導体基板1が上記のシリコン基板からなる場合には、上記のスライス後のシリコン基板の表面をフッ化水素水溶液と硝酸との混酸または水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液などでエッチングすることなどによって行なうことができる。
【0047】
スライスダメージ1aの除去後の半導体基板1の大きさおよび形状も特に限定されないが、半導体基板1の厚さをたとえば50μm以上400μm以下とすることができる。
【0048】
次に、図2(c)に示すように、半導体基板1の裏面に、n型不純物拡散領域2およびp型不純物拡散領域3をそれぞれ形成する。n型不純物拡散領域2は、たとえば、n型不純物を含むガスを用いた気相拡散などの方法により形成することができ、p型不純物拡散領域3は、たとえば、p型不純物を含むガスを用いた気相拡散などの方法により形成することができる。
【0049】
n型不純物拡散領域2およびp型不純物拡散領域3はそれぞれ図2の紙面の表面側および/または裏面側に伸びる帯状に形成されており、n型不純物拡散領域2とp型不純物拡散領域3とは半導体基板1の裏面において交互に所定の間隔をあけて配置されている。
【0050】
n型不純物拡散領域2はn型不純物を含み、n型の導電型を示す領域であれば特に限定されない。なお、n型不純物としては、たとえばリンなどのn型不純物を用いることができる。
【0051】
p型不純物拡散領域3はp型不純物を含み、p型の導電型を示す領域であれば特に限定されない。なお、p型不純物としては、たとえばボロンまたはアルミニウムなどのp型不純物を用いることができる。
【0052】
n型不純物を含むガスとしては、たとえばPOCl3のようなリンなどのn型不純物を含むガスを用いることができ、p型不純物を含むガスとしては、たとえばBBr3のようなボロンなどのp型不純物を含むガスを用いることができる。
【0053】
次に、図2(d)に示すように、半導体基板1の裏面にパッシベーション膜4を形成する。ここで、パッシベーション膜4は、たとえば、熱酸化法またはプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などの方法により形成することができる。
【0054】
パッシベーション膜4としては、たとえば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、または酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層体などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
パッシベーション膜4の厚みは、たとえば0.05μm以上1μm以下とすることができ、特に0.2μm程度とすることが好ましい。
【0056】
次に、図2(e)に示すように、半導体基板1の受光面の全面にテクスチャ構造などの凹凸構造を形成した後に、その凹凸構造上に反射防止膜5を形成する。
【0057】
テクスチャ構造は、たとえば、半導体基板1の受光面をエッチングすることにより形成することができる。たとえば、半導体基板1がシリコン基板である場合には、たとえば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ水溶液にイソプロピルアルコールを添加した液をたとえば70℃以上80℃以下に加熱したエッチング液を用いて半導体基板1の受光面をエッチングすることによって形成することができる。
【0058】
反射防止膜5は、たとえばプラズマCVD法などにより形成することができる。なお、反射防止膜5としては、たとえば、窒化シリコン膜などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0059】
次に、図2(f)に示すように、半導体基板1の裏面のパッシベーション膜4の一部を除去することによってコンタクトホール4aおよびコンタクトホール4bを形成する。ここで、コンタクトホール4aは、n型不純物拡散領域2の表面の少なくとも一部を露出させるようにして形成され、コンタクトホール4bは、p型不純物拡散領域3の表面の少なくとも一部を露出させるようにして形成される。
【0060】
なお、コンタクトホール4aおよびコンタクトホール4bはそれぞれ、たとえば、フォトリソグラフィ技術を用いてコンタクトホール4aおよびコンタクトホール4bの形成箇所に対応する部分に開口を有するレジストパターンをパッシベーション膜4上に形成した後にレジストパターンの開口からパッシベーション膜4をエッチングなどにより除去する方法、またはコンタクトホール4aおよびコンタクトホール4bの形成箇所に対応するパッシベーション膜4の部分にエッチングペーストを塗布した後に加熱することによってパッシベーション膜4をエッチングして除去する方法などにより形成することができる。
【0061】
次に、図2(g)に示すように、コンタクトホール4aを通してn型不純物拡散領域2に接するn型用電極6と、コンタクトホール4bを通してp型不純物拡散領域3に接するp型用電極7と、を形成することによって、裏面電極型太陽電池セル8を作製する。
【0062】
n型用電極6およびp型用電極7としては、たとえば、銀などの金属からなる電極を用いることができる。n型用電極6およびp型用電極7はそれぞれパッシベーション膜4に設けられた開口部を通して、半導体基板1の裏面のn型不純物拡散領域2およびp型不純物拡散領域3に沿って、n型不純物拡散領域2およびp型不純物拡散領域3にそれぞれ接するように形成されている。
【0063】
図3に、上記のようにして製造した裏面電極型太陽電池セル8を裏面側から見たときの一例の模式的な平面図を示す。図3に示すように、n型用電極6およびp型用電極7はそれぞれ櫛形状に形成されており、櫛形状のn型用電極6の櫛歯に相当する部分と櫛形状のp型用電極7の櫛歯に相当する部分とが1本ずつ交互に噛み合わさるようにn型用電極6およびp型用電極7が配置されている。その結果、櫛形状のn型用電極6の櫛歯に相当する部分と櫛形状のp型用電極7の櫛歯に相当する部分とはそれぞれ1本ずつ交互に所定の間隔を空けて配置されることになる。
【0064】
裏面電極型太陽電池セル8の裏面のn型用電極6およびp型用電極7のそれぞれの形状および配置は、図3に示す構成に限定されず、後述する配線基板のn型用配線およびp型用配線にそれぞれ電気的に接続可能な形状および配置であればよい。
【0065】
図4に、裏面電極型太陽電池セル8を裏面側から見たときの他の一例の模式的な平面図を示す。図4に示すように、n型用電極6およびp型用電極7はそれぞれ同一方向に伸長(図4の上下方向に伸長)する帯状に形成されており、半導体基板1の裏面において上記の伸長方向と直交する方向にそれぞれ1本ずつ交互に配置されている。
【0066】
図5に、裏面電極型太陽電池セル8を裏面側から見たときのさらに他の一例の模式的な平面図を示す。図5に示すように、n型用電極6およびp型用電極7はそれぞれ点状に形成されており、点状のn型用電極6の列(図5の上下方向に伸長)および点状のp型用電極7の列(図5の上下方向に伸長)がそれぞれ半導体基板1の裏面において1列ずつ交互に配置されている。
【0067】
<配線基板>
図6に、本実施の形態で用いられる配線基板の一例を配線の設置側から見たときの一例の模式的な平面図を示す。図6に示すように、配線基板10は、絶縁性基材11と、絶縁性基材11の表面上に設置されたn型用配線12、p型用配線13および接続用配線14を含む配線16とを有している。
【0068】
n型用配線12、p型用配線13および接続用配線14はそれぞれ導電性であり、n型用配線12およびp型用配線13はそれぞれ複数の長方形が長方形の長手方向に直交する方向に配列された形状を含む櫛形状とされている。一方、接続用配線14は帯状とされている。また、配線基板10の終端にそれぞれ位置しているn型用配線12aおよびp型用配線13a以外の隣り合うn型用配線12とp型用配線13とは接続用配線14によって電気的に接続されている。
【0069】
配線基板10においては、櫛形状のn型用配線12の櫛歯(長方形)に相当する部分と櫛形状のp型用配線13の櫛歯(長方形)に相当する部分とが1本ずつ交互に噛み合わさるようにn型用配線12およびp型用配線13がそれぞれ配置されている。その結果、櫛形状のn型用配線12の櫛歯に相当する部分と櫛形状のp型用配線13の櫛歯に相当する部分とはそれぞれ1本ずつ交互に所定の間隔を空けて配置されることになる。
【0070】
図7に、図6のVII−VIIに沿った模式的な断面図を示す。図7に示すように、配線基板10においては、絶縁性基材11の一方の表面上にのみn型用配線12およびp型用配線13が設置されている。
【0071】
絶縁性基材11の材質としては、電気絶縁性の材質であれば特に限定なく用いることができ、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(PEN:Polyethylene naphthalate)、ポリフェニレンサルファイド(PPS:Polyphenylene sulfide)、ポリビニルフルオライド(PVF:Polyvinyl fluoride)およびポリイミド(Polyimide)からなる群から選択された少なくとも1種の樹脂を含む材質を用いることができる。
【0072】
絶縁性基材11の厚さは特に限定されず、たとえば25μm以上150μm以下とすることができる。
【0073】
絶縁性基材11は、1層のみからなる単層構造であってもよく、2層以上からなる複数層構造であってもよい。
【0074】
配線16の材質としては、導電性の材質のものであれば特に限定なく用いることができ、たとえば、銅、アルミニウムおよび銀からなる群から選択された少なくとも1種を含む金属などを用いることができる。
【0075】
配線16の厚さも特に限定されず、たとえば10μm以上50μm以下とすることができる。
【0076】
配線16の形状も上述した形状に限定されず、適宜設定することができるものであることは言うまでもない。
【0077】
配線16の少なくとも一部の表面には、たとえば、ニッケル(Ni)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、錫(Sn)、SnPb半田、およびITO(Indium Tin Oxide)からなる群から選択された少なくとも1種を含む導電性物質を設置してもよい。この場合には、配線基板10の配線16と後述する裏面電極型太陽電池セル8の電極との電気的接続を良好なものとし、配線16の耐候性を向上させることができる傾向にある。
【0078】
配線16の少なくとも一部の表面には、たとえば防錆処理や黒化処理などの表面処理を施してもよい。
【0079】
配線16も、1層のみからなる単層構造であってもよく、2層以上からなる複数層構造であってもよい。
【0080】
以下に、図6および図7に示される構成の配線基板10の製造方法の一例について説明する。
【0081】
まず、たとえばPENフィルムなどの絶縁性基材11を用意し、その絶縁性基材11の一方の表面の全面にたとえば金属箔または金属プレートなどの導電性物質を貼り合わせる。たとえば所定の幅にカットされた絶縁性基材のロールを引き出し、絶縁性基材の一方の表面に接着剤を塗布し、絶縁性基材の幅よりやや小さくカットされた金属箔のロールを重ね合わせて加圧・加熱することで貼り合わせることができる。
【0082】
次に、絶縁性基材11の表面に貼り合わされた導電性物質の一部をフォトエッチングなどにより除去して導電性物質をパターンニングすることによって、絶縁性基材11の表面上にパターンニングされた導電性物質からなるn型用配線12、p型用配線13および接続用配線14などを含む配線16を形成する。
【0083】
以上により、図6および図7に示される構成の配線基板10を作製することができる。
<配線基板付き裏面電極型太陽電池セルの製造方法>
図8(a)〜図8(h)に、本実施の形態の配線基板付き裏面電極型太陽電池セルの製造方法の一例を図解する模式的な断面図を示す。以下、図8(a)〜図8(h)を参照して、本実施の形態の配線基板付き裏面電極型太陽電池セルの製造方法の一例について説明する。
【0084】
<第1の絶縁性接着材を設置する工程>
まず、図8(a)に示すように、上記のようにして製造した裏面電極型太陽電池セル8を用意する。次に、図8(b)に示すように、裏面電極型太陽電池セル8の半導体基板1の裏面のn型用電極6とp型用電極7との間に、それぞれ、未硬化状態の第1の絶縁性接着材22aを設置する。
【0085】
未硬化状態の第1の絶縁性接着材22aの設置方法としては、たとえば、スクリーン印刷、ディスペンサ塗布またはインクジェット塗布などの方法を挙げることができる。なかでも、第1の絶縁性接着材22aの設置方法としては、スクリーン印刷を用いることが好ましい。スクリーン印刷により第1の絶縁性接着材22aを設置する場合には、簡易に、低コストで、かつ短時間で第1の絶縁性接着材22aを設置することができる。
【0086】
裏面電極型太陽電池セル8の半導体基板1側における第1の絶縁性接着材22aの幅は、n型用電極6およびp型用電極7と接触しないような幅であることが好ましい。この場合には、裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線基板10の配線との間の電気的な接続の安定性を向上することができる。
【0087】
裏面電極型太陽電池セル8の半導体基板1側とは反対側における第1の絶縁性接着材22aの幅は、配線基板10の配線の間隔よりも狭いことが好ましい。この場合にも、裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線基板10の配線との間の電気的な接続の安定性を向上することができる。
【0088】
第1の絶縁性接着材22aの形状は、裏面電極型太陽電池セル8の半導体基板1の裏面のn型用電極6およびp型用電極7のそれぞれに沿うライン状とすることが好ましいが、断続的に配置するような形状でも構わない。
【0089】
第1の絶縁性接着材22aとしては、Bステージ化可能な樹脂が用いられることが好ましい。Bステージ化可能な樹脂とは、液体状態の未硬化の第1の絶縁性接着材22aを加熱したときに、粘度が上昇して硬化状態(第1の硬化状態)となった後に粘度が低下して軟化し、その後に再度粘度が上昇して硬化状態(第2の硬化状態)となる樹脂のことである。上記の第1の硬化状態がBステージと言われる。Bステージ化可能な樹脂としては、たとえば、液体状態から溶媒を揮発させて固体状態(Bステージ)とすることができる樹脂などがある。また、Bステージ化可能な樹脂としては、たとえば、第2の硬化状態において、裏面電極型太陽電池セル8の裏面の電極間および配線基板10の配線間の短絡を防止することができる程度の絶縁性を有するとともに、配線基板付き裏面電極型太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの長期信頼性を保つために裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10との間の機械的な接続強度を保持することができる程度の接着力を有する樹脂を用いることができる。
【0090】
また、第1の絶縁性接着材22aとしては、膨潤タイプの樹脂を用いることも好ましい。膨潤タイプの樹脂は、未硬化で液体状態の樹脂と、微粒子状態の樹脂と、の混合物である。膨潤タイプの樹脂の熱挙動はたとえば以下のようである。膨潤タイプの樹脂を微粒子状態の樹脂のガラス転移温度以上に加熱すると、微粒子状態の樹脂の分子間に液体状態の樹脂が入り込む。これにより、見かけ上、微粒子状態の樹脂の体積が膨張した状態(膨潤状態)となって粘度が上昇するため、見かけ上硬化状態(第1の硬化状態)となる。しかしながら、液体状態の樹脂は未硬化であるため、再度加熱すると、微粒子状態の樹脂の分子間に入り込んだ液体状態の樹脂が流動可能な状態となり、粘度が低下して軟化状態となる。そして、さらに加熱を続けると、液体状態の樹脂が硬化して硬化状態(第2の硬化状態)となる。
【0091】
第1の絶縁性接着材22aとして、たとえばBステージ化可能な樹脂や膨潤タイプの樹脂を用いた場合には、未硬化の第1の絶縁性接着材22aが、第1の硬化状態および軟化状態を経た後に、第2の硬化状態とすることができる。
【0092】
また、未硬化状態の第1の絶縁性接着材22aは、裏面電極型太陽電池セル8の電極間だけでなく、裏面電極型太陽電池セル8の電極(n型用電極6、p型用電極7)と裏面電極型太陽電池セル8の周縁部との間にも設置することが好ましい。この場合には、裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10との機械的な接続の安定性をさらに向上することができる。
【0093】
また、第1の絶縁性接着材22aは、裏面電極型太陽電池セル8の電極(n型用電極6、p型用電極7)と周縁部との間に、裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10との位置合わせを行なうための位置合わせパターンを形成するように設置されることが好ましい。この場合には、後述する裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10とを重ね合わせる工程において、第1の絶縁性接着材22aの位置合わせパターンに基づいて裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10とを位置合わせすることができるため、裏面電極型太陽電池セル8の電極や導電性接着材21に基づいて位置合わせする場合と比較して、隣り合って配置されている配線(n型用配線12、p型用配線13)間に第1の絶縁性接着材22aをより精度よく設置することができる。そのため、導電性接着材21が配線間に流れ出すことによる電気的な短絡を第1の絶縁性接着材によって有効に防ぐことができるため、裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線基板10の配線との電気的な接続の安定性を向上することができる傾向にある。
【0094】
図9に、裏面電極型太陽電池セル8の電極と周縁部との間に第1の絶縁性接着材22aの位置合わせパターンの一例として、未硬化状態の第1の絶縁性接着材22aが設けられていない非設置領域を設けた構成の裏面電極型太陽電池セル8の裏面の一例の模式的な拡大平面図を示す。
【0095】
図9に示すように、裏面電極型太陽電池セル8の電極(n型用電極6、p型用電極7)と周縁部31との間には、未硬化状態の第1の絶縁性接着材22aが設けられていない非設置領域41a,41bが互いに距離を空けて配置されている。非設置領域41a,41bの内側には、それぞれ、円形状の表面を有するn型用電極6aおよびトラック状の表面を有するp型用電極7aが配置されている。n型用電極6aはn型用電極6の延長線上に設けられており、p型用電極7aはp型用電極6の延長線上に設けられている。
【0096】
なお、本実施の形態においては、裏面電極型太陽電池セル8の半導体基板1の裏面の極性の異なる電極間の表面領域に未硬化状態の第1の絶縁性接着材22aを設置する場合について説明するが、未硬化状態の第1の絶縁性接着材22aは、配線基板10の隣り合う配線間の絶縁性基材11の表面領域に設置されてもよく、裏面電極型太陽電池セル8の裏面の極性の異なる電極間の表面領域および配線基板10の隣り合う配線間の絶縁性基材11の表面領域の双方に設置されてもよい。
【0097】
また、第1の絶縁性接着材22aの位置合わせパターンは、上記の第1の絶縁性接着材22aが設けられていない非設置領域に限られず、第1の絶縁性接着材22aの他の部分と区別可能なパターンであればよく、たとえば、第1の絶縁性接着材22aの端部を凹状若しくは凸状に形成した構成としてもよく、非設置領域内に他の形状の第1の絶縁性接着材22aを設けた構成としてもよい。
【0098】
また、n型用電極6aおよびp型用電極7aは、第1の絶縁性接着材22aを裏面電極型太陽電池セル8の電極間に設置する際に、第1の絶縁性接着材22aと電極との位置合わせに用いられる。ここで、n型用電極6aおよびp型用電極7aは、必ずしも非設置領域41a,41bの内側に設けられる必要はないが、非設置領域41a,41bの内側に設けることによって、後述する配線基板10との位置合わせ用の第1の絶縁性接着材22aのパターンと、第1の絶縁性接着材22aとの位置合わせ用のn型用電極6aおよびp型用電極7aのパターンと、を裏面電極型太陽電池セル8の裏面の別々の領域に設ける必要がない。これにより、裏面電極型太陽電池セル8の裏面における電極形成領域を広げることができるため、より多くの電流をより効率的に取り出すことができる。
【0099】
n型用電極6aおよびp型用電極7aは、第1の絶縁性接着材22aを裏面電極型太陽電池セル8の電極間に設置する際に認識できればよいため、第1の絶縁性接着材22aを裏面電極型太陽電池セル8に設置した後には第1の絶縁性接着材22aで覆われていてもよい。また、n型用電極6aおよびp型用電極7aは、第1の絶縁性接着材22aの内側に設けなくてもよく、第1の絶縁性接着材22aの外側に設けてもよく、第1の絶縁性接着材22aと一部が重なる形状または全部が重なる形状であってもよい。
【0100】
n型用電極6aおよびp型用電極7aは本実施の形態の形状に限られるものではなく、第1の絶縁性接着材22aの設置箇所の位置合わせに適した様々な形状を用いることができる。また、n型用電極6aおよびp型用電極7aは、同一形状であってもよく、異なる形状であってもよいが、裏面電極型太陽電池セル8の電極間に設置される第1の絶縁性接着材22aの形状が回転対称形状でない場合、または第1の絶縁性接着材22aの設置工程において裏面電極型太陽電池セル8の向きを一方向に揃えたい場合には、n型用電極6aとp型用電極7aとを異なる形状とすることが好ましい。これにより、裏面電極型太陽電池セル8に第1の絶縁性接着材22aを設置する工程において、裏面電極型太陽電池セル8と第1の絶縁性接着材22aとの向きが誤った状態で第1の絶縁性接着材22aを設置してしまうことを防ぐことができる。
【0101】
<第1の絶縁性接着材を第1の硬化状態とする工程>
次に、図8(c)に示すように、未硬化状態の第1の絶縁性接着材22aの粘度を上昇させることによって、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bとする。第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bは、未硬化状態の第1の絶縁性接着材22aにエネルギを供給することにより形成される。
【0102】
未硬化状態の第1の絶縁性接着材22aにエネルギを供給する方法としては、たとえば、加熱などによって熱エネルギを供給する方法および/または紫外線などの光の照射によって光エネルギを供給する方法などを用いることができる。
【0103】
なお、第1の硬化状態についての説明は上記と同様であるため、ここではその説明については省略する。
【0104】
<第2の絶縁性接着材を設置する工程>
次に、図8(d)に示すように、裏面電極型太陽電池セル8の半導体基板1の裏面のn型用電極6およびp型用電極7のそれぞれの表面に半田樹脂20を設置する。半田樹脂20は、導電性接着材21と、第2の絶縁性接着材23と、を含んでおり、第2の絶縁性接着材23中に導電性接着材21が分散した構成を有している。
【0105】
導電性接着材21としては、たとえば半田粒子などの導電性物質を用いることができる。第2の絶縁性接着材23としては、たとえばエポキシ樹脂、アクリル樹脂およびウレタン樹脂からなる群から選択された少なくとも1種を樹脂成分として含む熱硬化型および/または光硬化型の絶縁性樹脂などを用いることができる。
【0106】
半田樹脂20の設置方法としては、たとえば、スクリーン印刷、ディスペンサ塗布またはインクジェット塗布などの方法を用いることができるが、なかでも、スクリーン印刷を用いることが好ましい。スクリーン印刷を用いた場合には、簡易に、低コストで、かつ短時間で半田樹脂20を設置することができる。
【0107】
なお、未硬化状態の第1の絶縁性接着材22aを設置した後に、半田樹脂20をスクリーン印刷により設置する場合には、粘着力の高い第1の絶縁性接着材22aとスクリーン印刷の印刷マスクとが接触して半田樹脂20を設置することができないという問題がある。
【0108】
また、未硬化状態の第1の絶縁性接着材22aを設置した後に、半田樹脂20をディスペンサ塗布またはインクジェット塗布により設置する場合には、第1の絶縁性接着材22aの粘着力が高い場合でも半田樹脂20を設置することはできるが、処理時間が長く、生産性が悪化するおそれがある。
【0109】
さらに、未硬化状態の第1の絶縁性接着材22aの流動性が高い状態で半田樹脂20を設置した場合には、後の工程において、第1の絶縁性接着材22aが半田樹脂20に流入することによって裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線基板10の配線との電気的な接続が阻害されるおそれがある。また、この場合には、裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10との接着力が低下したり、導電性接着材21が溶融して第1の絶縁性接着材22aと混ざり合ってしまうことによって隣り合う導電性接着材21間が短絡するおそれもある。
【0110】
以上の観点から、未硬化状態の第1の絶縁性接着材22aを硬化して第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bとした後に、半田樹脂20を設置することが好ましい。この場合には、裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10との機械的な接続の安定性および裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線基板10の配線との電気的な接続の安定性を向上して、配線基板付き裏面電極型太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの生産性を高くすることができる。
【0111】
なお、本実施の形態においては、裏面電極型太陽電池セル8の電極上に半田樹脂20を設置する場合について説明するが、配線基板10の配線上に半田樹脂20を設置してもよく、裏面電極型太陽電池セル8の電極上および配線基板10の配線上の双方に半田樹脂20を設置してもよい。また、第1の絶縁性接着材22aと半田樹脂20との両方を裏面電極型太陽電池セル8若しくは配線基板10に設置しなくてもよく、たとえば、裏面電極型太陽電池セル8の電極間に第1の絶縁性接着材22aを設置して、配線基板10の配線上に半田樹脂20を設置してもよい。
【0112】
<半導体基板と配線基板とを重ね合わせる工程>
次に、図8(e)に示すように、裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10とを重ね合わせる。
【0113】
裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10との重ね合わせは、たとえば、裏面電極型太陽電池セル8のn型用電極6およびp型用電極7がそれぞれ配線基板10の絶縁性基材11上に設けられたn型用配線12およびp型用配線13と対向するようにして行なわれる。
【0114】
図10に、裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10とを重ね合わせた後の一例の模式的な平面図を示す。図10に示すように、裏面電極型太陽電池セル8の電極設置側の表面である裏面と、配線基板10の配線設置側の表面と、が向かい合うようにして裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10とが重ね合わされる。ここでは、1枚の配線基板10上に16枚の裏面電極型太陽電池セル8を重ね合わせているが、この構成に限定されないことは言うまでもなく、たとえば1枚の配線基板10上に1枚の裏面電極型太陽電池セル8を重ね合わせた構成としてもよい。
【0115】
また、裏面電極型太陽電池セル8の電極と周縁部との間に位置合わせパターンを有する第1の絶縁性接着材22aが設けられた場合には、第1の絶縁性接着材22aの位置合わせパターンに対応する位置合わせパターンが設けられた配線基板10を用いることが好ましい。
【0116】
たとえば図9に示す非設置領域41a,41bを設けるように未硬化状態の第1の絶縁性接着材22aが設置された場合には、たとえば図11の模式的拡大平面図に示すような非設置領域41a,41bに対応する位置合わせパターンの一例として開口部51が設けられた配線基板10を用いることが好ましい。なお、図11は、絶縁性基材11側から見たときの配線基板10の模式的な拡大平面図であり、配線基板10に設けられた開口部51は、絶縁性基材11を通した目視、若しくは赤外線などの特定の波長の光の使用などによって認識可能となっている。
【0117】
ここで、開口部51は、配線基板10の配線が設けられていない領域(すなわち、絶縁性基材11の表面が露出している領域)であり、図11に示す例では、n型用配線12の延長線上にn型用配線12の先端から離れた位置に設けられている。
【0118】
図9に示す裏面電極型太陽電池セル8と、図11に示す配線基板10とを重ね合わせる工程においては、たとえば図12の模式的拡大断面図に示すように、開口部51から非設置領域41aが見えるように、裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10との位置合わせを行なうことができる。これにより、仮に、半田樹脂20が裏面電極型太陽電池セル8のn型用電極6およびp型用電極7に対して位置がずれた状態で設置された場合でも、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bが配線基板10の隣り合うn型用配線12とp型用配線13との間に適切に位置決めして設置することができるため、隣り合う配線間に第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bをより安定して設置することができ、隣り合う配線間に設置された第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bによって半田樹脂20の流出を堰き止めることができるため、電気的な短絡の発生を抑えることができる傾向にある。
【0119】
また、配線基板10の向きに対して裏面電極型太陽電池セル8の向きが決まっている場合には、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bの非設置領域41aと非設置領域41bとが異なる形状としてもよい。これにより、配線基板10に設けられた開口部51を通して第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bの非設置領域41aまたは非設置領域41bの形状を確認することができるため、裏面電極型太陽電池セル8の向きが誤った状態で裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10との位置合わせが行なわれることを防ぐことができる。なお、図9の例のように、n型用電極6aおよびp型用電極7aが第1の絶縁性接着材22aが設置されていても認識可能である場合には、n型用電極6aの表面形状とp型用電極7aの表面形状とを異なる形状として、配線基板10に設けられた開口部51を通してn型用電極6aの表面形状およびp型用電極7aの表面形状を確認することによっても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0120】
なお、配線基板10の位置合わせパターンは、非設置領域41a,41bに対応した開口部51に限定されないことは言うまでもなく、たとえば、第1の絶縁性接着材22aの位置合わせパターンによって、裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線基板10の配線との位置合わせを適切に行なうことができる様々なパターンを用いることができる。
【0121】
<第1の絶縁性接着材を軟化状態とする工程>
次に、図8(f)に示すように、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bの粘度を低下させて軟化状態の第1の絶縁性接着材22cとする。
【0122】
第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bを軟化状態の第1の絶縁性接着材22cとする方法としては、たとえば、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bにエネルギを供給することにより行なうことができる。これにより、軟化状態の第1の絶縁性接着材22cは、上記のようにして重ね合わせた裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10との間の加圧によって変形して、裏面電極型太陽電池セル8の極性の異なる電極間の半導体基板1の表面領域と、配線基板10の隣り合う配線間の絶縁性基材11の表面領域と、の間に充填される。
【0123】
第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bにエネルギを供給する方法としては、たとえば、加熱などによって熱エネルギを供給する方法および/または紫外線などの光の照射によって光エネルギを供給する方法などを用いることができる。
【0124】
ここで、本実施の形態においては、第1の絶縁性接着材が第2の硬化状態となるまで第1の絶縁性接着材の粘度が第2の絶縁性接着材の粘度よりも高くされるため、第2の絶縁性接着材23が流動して極性の異なる電極間および/または隣り合う配線間の領域に流れ出すのを第1の絶縁性接着材22cによって堰き止めることができる。これにより、裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線基板10の配線との近傍に半田樹脂20を留めおくことができ、後述する溶融状態の導電性接着材21aを電極と配線との間に凝集させる際に媒体となる第2の絶縁性接着材が不足するのを防ぐことができる。また、第2の絶縁性接着材を電極と配線の周りに十分に配置することができ、これらによって電気的な接続の安定性を向上することができる。なお、第1の絶縁性接着材の粘度と第2の絶縁性接着材の粘度との関係は、第1の絶縁性接着材および第2の絶縁性接着材のそれぞれの材質を適宜調節することにより可能である。
【0125】
また、半田樹脂20中の導電性接着材21は、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bの粘度が低下し始める温度よりも高い融点を有していることが好ましい。この場合には、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bの粘度が低下して変形し、裏面電極型太陽電池セル8の極性の異なる電極間の半導体基板1の表面領域と配線基板10の隣り合う配線間の絶縁性基材11の表面領域との間に充填される前に、半田樹脂20中の導電性接着材21が極性の異なる電極間および/または隣り合う配線間の領域に流出するのを抑えることができる傾向にある。
【0126】
<導電性接着材を溶融させる工程>
次に、図8(g)に示すように、半田樹脂20中の固体状態の導電性接着材21を溶融して溶融状態の導電性接着材21aとする。固体状態の導電性接着材21を溶融する方法としては、たとえば、導電性接着材21を加熱する方法などを用いることができる。
【0127】
固体状態の導電性接着材21は溶融して溶融状態の導電性接着材21aとなることによって、n型用電極6とn型用配線12との間およびp型用電極7とp型用配線13との間にそれぞれ凝集する。
【0128】
ここでも、第1の絶縁性接着材22cの粘度が第2の絶縁性接着材23の粘度よりも高くされているため、溶融状態の導電性接着材21aが第2の絶縁性接着材23に混ざって極性の異なる電極間および/または隣り合う配線間の領域に流れ出すのを第1の絶縁性接着材22cによって堰き止めることができる。これにより、裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線基板10の配線との電気的な接続の安定性を向上することができる。
【0129】
<第1の絶縁性接着材を第2の硬化状態とする工程>
その後、図8(h)に示すように、軟化状態の第1の絶縁性接着材22cの粘度を上昇させて第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22とする。なお、第2の硬化状態についての説明は上記と同様であるため、ここではその説明については省略する。
【0130】
軟化状態の第1の絶縁性接着材22cを第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22とする方法としては、たとえば、軟化状態の第1の絶縁性接着材22cにエネルギを供給することにより行なうことができる。これにより、上記のようにして重ね合わせて加圧した裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10とを第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22によって接着することができる。
【0131】
軟化状態の第1の絶縁性接着材22cにエネルギを供給する方法としては、たとえば、加熱などによって熱エネルギを供給する方法および/または紫外線などの光の照射によって光エネルギを供給する方法などを用いることができる。
【0132】
本実施の形態においては、第1の絶縁性接着材が第2の硬化状態となるまで第1の絶縁性接着材の粘度が第2の絶縁性接着材の粘度よりも高くされるため、軟化状態の第1の絶縁性接着材22cが第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22となるまで半田樹脂20の第2の絶縁性接着材23は軟化状態の第1の絶縁性接着材22cに囲まれたn型用電極6とn型用配線12との間およびp型用電極7とp型用配線13との間の空間を充填するように変形する。これにより、裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線基板10の配線との機械的な接続の安定性を向上することができる。
【0133】
なお、第1の絶縁性接着材が第2の硬化状態となった後の第2の絶縁性接着材の粘度は、第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22の粘度よりも高くてもよく、低くてもよく、同一であってもよい。
【0134】
ここで、半田樹脂20の導電性接着材21の溶融開始温度が第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bの軟化開始温度よりも高い場合には、半田樹脂20が加熱されて半田樹脂20中の導電性接着材21が溶融し始めたときでも、軟化状態の第1の絶縁性接着材22cが配線基板10の配線間および裏面電極型太陽電池セル8の電極間に既に入り込んでいるため、隣りの配線および電極に向かって流出しない。そのため、隣り合う電極間および配線間が半田樹脂20中の導電性接着材21で短絡するのを有効に防止することができる。したがって、半田樹脂20中の導電性接着材21の溶融開始温度は、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bの軟化開始温度よりも高いことが好ましい。なお、導電性接着材21の溶融開始温度は導電性接着材21の融点であり、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bの軟化開始温度は第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bの粘度が低下し始める温度である。
【0135】
本実施の形態においては、第1の絶縁性接着材が第2の硬化状態となるまで第1の絶縁性接着材の粘度を第2の絶縁性接着材の粘度よりも高くして、裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10とを接着している。そのため、本実施の形態においては、半田樹脂20の導電性接着材21が裏面電極型太陽電池セル8の電極間および配線基板10の配線間に入り込むのを第1の絶縁性接着材で防ぎながら、軟化状態の第1の絶縁性接着材22cが裏面電極型太陽電池セル8の電極間および配線基板10の配線間に入り込むことによって配線基板10の表面のより広い領域に軟化状態の第1の絶縁性接着材22cを接触させ、その後、軟化状態の第1の絶縁性接着材22cを硬化して第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22として裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10とを強固に接着している。これにより、本実施の形態においては、裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10との機械的な接続の安定性を向上することができるとともに、裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線基板10の配線との電気的な接続の安定性を向上することができる。
【0136】
さらに、本実施の形態の方法によれば、特許文献1に記載された技術のように、電極間または配線間の狭い領域に電極または配線に重ならないように粘着性のテープを貼り付ける工程が必要ないため、生産性にも優れている。
【0137】
図13に、第1の絶縁性接着材にBステージ化可能な樹脂を用い、導電性接着材(Sn−Bi半田粒子)を含む第2の絶縁性接着材(エポキシ樹脂)として半田樹脂を用いたときの経過時間に対する加熱温度の変化と、第1の絶縁性接着材および第2の絶縁性接着材の粘度変化との関係を示す。
【0138】
まず、図13の横軸の加熱開始から加熱温度を上昇させていくにつれて、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材の粘度が低下していき、軟化状態の第1の絶縁性接着材となる。
【0139】
そして、加熱温度が導電性接着材の融点以上の温度となったときに、半田樹脂の導電性接着材は溶融して流動する。このとき、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材の粘度が低下して軟化状態の第1の絶縁性接着材となっていない場合には、第1の絶縁性接着材の粘度が高く、配線基板の隣り合う配線間に第1の絶縁性接着材が十分に入り込めないため、裏面電極型太陽電池セルと配線基板との間に空間が残りやすくなる。
【0140】
しかしながら、本実施の形態においては、第1の絶縁性接着材として、たとえばBステージ化可能な樹脂や膨潤タイプの樹脂のような、未硬化の第1の絶縁性接着材の粘度が上昇して第1の硬化状態となった後に粘度が低下して軟化状態となり、その後、再度粘度が上昇して第2の硬化状態となる樹脂を用いている。そのため、半田樹脂の導電性接着材が溶融して流動する前に、半田樹脂の設置箇所を除いた裏面電極型太陽電池セルと配線基板との間のできるだけ広い空間を埋めるように、軟化状態の第1の絶縁性接着材を充填することができる。
【0141】
その後、半田樹脂の導電性接着材の融点を超える温度で加熱温度を一定に保持することによって、導電性接着材が溶融した状態で軟化状態の第1の絶縁性接着材を硬化して第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材とする。ここで、裏面電極型太陽電池セルと配線基板との間のできるだけ広い空間には軟化状態の第1の絶縁性接着材が充填されているために、軟化状態の第1の絶縁性接着材が硬化して第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材となった後には、裏面電極型太陽電池セルと配線基板との接着強度を高くすることができ、裏面電極型太陽電池セルと配線基板との機械的な接続の安定性を高くすることができる。
【0142】
そして、加熱温度を半田樹脂の導電性接着材の融点未満の温度に低下させることによって、半田樹脂の導電性接着材を固化して裏面電極型太陽電池セルの電極と配線基板の配線との電気的な接続が行なわれる。このとき、第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材は、加熱温度の低下によっては硬度がほとんど変化しないため、裏面電極型太陽電池セルと配線基板との接着強度が保持される。
【0143】
なお、図13に示す経過時間に対する加熱温度の変化を変更した場合には、第1の絶縁性接着材の軟化温度、硬化開始時間、硬化完了時間および導電性接着材の溶融性等に影響を与えるため、本工程に適合する材料設計と、その材料設計に適した加熱温度の変化と、を組み合わせることが好ましい。
【0144】
たとえば、第1の絶縁性接着材は、半田樹脂20の導電性接着材21が溶融状態となる前に加圧による変形が可能な程度に軟化していることが好ましい。この場合には、第1の絶縁性接着材を配線基板10の配線間に充填した後に半田樹脂20の導電性接着材21を溶融状態とすることができるため、半田樹脂20の導電性接着材21の配線基板10の配線間への流入を有効に防止することができる。
【0145】
また、軟化状態の第1の絶縁性接着材22cが再度硬化して第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22となる前に半田樹脂20の導電性接着材21が溶融状態となることが好ましい。半田樹脂20の導電性接着材21の溶融によって裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10との間の高さが減少し、その減少とともに軟化状態の第1の絶縁性接着材22cが配線基板10の配線間に流入していく。そのため、第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22の形成後に半田樹脂20の導電性接着材21が溶融した場合には、軟化状態の第1の絶縁性接着材22cが配線基板10の配線間に十分に充填されていない状態で半田樹脂20の導電性接着材21が溶融状態で配線基板10の配線間に流入するおそれがある。また、導電性接着材21は溶融して電極と配線との間に凝集するとともに濡れ広がるが、第1の絶縁性接着材22が第2の硬化状態となると裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10との間の高さが固定されてしまうため、濡れ広がった導電性接着材21が電極と配線との間に十分に充填できないおそれがある。
【0146】
また、第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22が形成されるまで半田樹脂20の導電性接着材21が溶融状態となる温度を保持することが好ましい。この場合には、裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10とが第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22によって機械的に接続された後に半田樹脂20の導電性接着材21が固化するため、裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線基板10の配線との電気的な接続の安定性を向上することができる。
【0147】
このように、第1の絶縁性接着材の軟化および硬化のタイミングと、半田樹脂20の導電性接着材21の溶融のタイミングとを調節することによって、隣り合う電極間および/または配線間の導電性接着材21による短絡の発生を抑えて裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線基板10の配線とを電気的に接続することができるとともに、裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10とを第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22および第2の絶縁性接着材23で機械的に接続することができる。
【0148】
また、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bを軟化して軟化状態の第1の絶縁性接着材22cを形成する工程と、半田樹脂20の導電性接着材21を溶融する工程と、軟化状態の第1の絶縁性接着材22cを硬化して第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22を形成する工程とは、たとえば上述のように、1回の加熱工程で行なわれることが好ましい。この場合には、生産性がさらに優れる傾向にある。
【0149】
なお、第1の硬化状態、軟化状態および第2の硬化状態は、熱エネルギおよび/または光エネルギなどのエネルギを供給したときの時間の経過に対する粘度変化を調査することにより確認することができる。また、第1の硬化状態、軟化状態および第2の硬化状態は、それぞれ、第1の絶縁性接着材の特性、組成や状態を分析することによっても確認することができる。たとえば、第1の絶縁性接着材がBステージ化可能な樹脂である場合には、第1の絶縁性接着材の粘度、溶媒の含有量および樹脂の架橋率などを測定することによっても確認することができる。
【0150】
図14に、第1の絶縁性接着材にBステージ化可能な樹脂を用い、導電性接着材(Sn−Bi半田粒子)を含む第2の絶縁性接着材(エポキシ樹脂)として半田樹脂を用いて作製された配線基板付き太陽電池セルの一例の模式的な拡大断面図を示す。ここで、裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10とは、第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22および第2の絶縁性接着材23によって機械的に接続されている。また、裏面電極型太陽電池セル8のn型用電極6およびp型用電極7はそれぞれ配線基板10のn型用配線12およびp型用配線13と導電性接着材21により電気的に接続されている。
【0151】
ここで、裏面電極型太陽電池セル8の半導体基板1の裏面と、配線基板10の絶縁性基材11の表面との間の高さTは、n型用配線12およびp型用配線13の厚さがそれぞれたとえば35μm程度である場合には、たとえば50μm以上60μm以下程度とされる。
【0152】
また、隣り合うn型用配線12とp型用配線13との間の距離Pは、たとえば200μm程度とされる。なお、距離Pが5mm以下である場合、特に1mm以下である場合には、半田による配線間の短絡が発生しやすくなる。そのため、このような場合には、本発明の裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線基板10の配線との電気的な接続の安定性を向上できるという効果が有効に作用する。
【0153】
さらに、n型用配線12およびp型用配線13のそれぞれの幅Wは、たとえば550μm程度とされる。
【0154】
<封止材中に封止する工程>
上記のようにして作製された配線基板付き裏面電極型太陽電池セルは、たとえば図15の模式的断面図に示すように、表面保護材17と裏面保護材19との間の封止材18中に封止されることにより太陽電池モジュールが作製される。
【0155】
封止材中に封止する工程は、たとえば、ガラスなどの表面保護材17に備えられたエチレンビニルアセテート(EVA)などの封止材18と、ポリエステルフィルムなどの裏面保護材19に備えられたEVAなどの封止材18との間に配線基板付き太陽電池セルを挟み込み、表面保護材17と裏面保護材19との間を加圧しながら加熱することによりこれらの封止材18を一体化して行なうことができる。
【0156】
上記においては、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bの粘度を低下して軟化状態の第1の絶縁性接着材22cとする工程と、半田樹脂20中の導電性接着材21を溶融する工程と、軟化状態の第1の絶縁性接着材22cの粘度を上昇させて第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22とする工程と、を経た後の配線基板付き裏面電極型太陽電池セルを封止材18中に封止する場合について説明したが、封止材18中に封止する工程において、これらの工程を行なって配線基板付き裏面電極型太陽電池セルを封止材18中に封止して太陽電池モジュールを作製することが好ましい。この場合には、太陽電池モジュールの生産性をさらに優れたものとすることができる。すなわち、これらの工程を行なう前の重ね合わせた裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10とを表面保護材17に備えられた封止材18と、裏面保護材19に備えられた封止材18との間に挟み込み、表面保護材17と裏面保護材19との間を加圧しながら第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bにエネルギの供給を行なう。これにより、第1の絶縁性接着材が第1の硬化状態、軟化状態および第2の硬化状態を経て硬化して配線基板付き裏面電極型太陽電池セルを作製するとともに、その配線基板付き裏面電極型太陽電池セルが封止材18中に封止された太陽電池モジュールを作製することができる。
【0157】
また、この封止工程は真空引きされた雰囲気中で行なうことが好ましい。これにより、封止材18に気泡が発生することや、封止材18と配線基板付き裏面電極型太陽電池セルとの間に空隙が発生することを抑制することができる。さらに、真空引きされた雰囲気中で行なう封止工程に、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材22bを軟化状態の第1の絶縁性接着材22cとする工程と、半田樹脂20中の導電性接着材21を溶融する工程と、軟化状態の第1の絶縁性接着材22cの粘度を上昇させて第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22とする工程とを含ませることによって、裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10との間も脱気することができるため、第1の絶縁性接着材22、第2の絶縁性接着材23および導電性接着材21に気泡や空隙が発生するのを抑制することができ、信頼性の高い太陽電池モジュールを作製することができる。
【0158】
太陽電池モジュール中の第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22は白色であることが好ましい。第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材22が白色である場合には、第1の絶縁性接着材22における光の反射率が高くなり、裏面電極型太陽電池セル8を透過してきた光を第1の絶縁性接着材22で効率的に反射して裏面電極型太陽電池セル8に光が再度照射されることで光損失を低減させることができる。そのため、この場合には、太陽電池モジュールの変換効率を向上させることができる傾向にある。なお、「白色」についての説明は上記と同様であるため、ここではその説明については省略する。
【0159】
また、本発明における裏面電極型太陽電池セルの概念には、上述した基板の一方の表面側(裏面側)のみにn型用電極およびp型用電極の双方が形成された構成のものだけでなく、MWT(Metal Wrap Through)セル(基板に設けられた貫通孔に電極の一部を配置した構成の太陽電池セル)などのいわゆるバックコンタクト型太陽電池セル(太陽電池セルの受光面側と反対側の裏面側から電流を取り出す構造の太陽電池セル)のすべてが含まれる。
【0160】
以上のように、本実施の形態によれば、裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10との機械的な接続の安定性が向上するとともに、裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線基板10の配線との電気的な接続の安定性が向上した配線基板付き裏面電極型太陽電池セルおよび太陽電池モジュールを優れた生産性で製造することができる。そのため、本実施の形態によれば、短絡不良の発生を抑え、長期信頼性に優れた配線基板付き裏面電極型太陽電池セルおよび太陽電池モジュールを優れた生産性で製造することが可能となる。
【実施例】
【0161】
まず、n型シリコン基板の裏面のn型不純物拡散領域上に形成された帯状のn型用電極と、p型不純物拡散領域上に形成された帯状のp型用電極とが1本ずつ交互に配置された裏面電極型太陽電池セルを作製した。ここで、n型用電極およびp型用電極はそれぞれAg電極であって、隣り合うn型用電極とp型用電極との間のピッチは750μmとした。また、n型用電極およびp型用電極のそれぞれの幅は50μm〜150μmとし、n型用電極およびp型用電極のそれぞれの高さは3μm〜13μmとした。
【0162】
次に、裏面電極型太陽電池セルの裏面の隣り合うn型用電極とp型用電極との間に未硬化の第1の絶縁性接着材(サンワ化学工業(株)製SPSR−900G)をスクリーン印刷により設置した。ここで、第1の絶縁性接着材はエポキシ系のBステージ化可能な樹脂であり、第1の硬化状態の樹脂の粘着性が低く、真空引き中において温度が60℃以下では第1の硬化状態から軟化せず、80℃〜100℃以上で軟化して軟化状態となり、130℃以上で硬化が開始して第2の硬化状態となる性質を有する樹脂を選定した。図16に、第1の絶縁性接着材を設置した後の裏面電極型太陽電池セルの裏面の拡大写真を示す。図16に示すように、裏面電極型太陽電池セルの裏面においては、電極と周縁部との間に第1の絶縁性接着材の位置合わせパターン(本実施例においては図16の点線で囲まれた領域に示されるように第1の絶縁性接着材を菱形状に抜いたパターン)が2つ形成された。
【0163】
次に、裏面電極型太陽電池セルの隣り合うn型用電極とp型用電極との間に未硬化状態の第1の絶縁性接着材を設置した後に、80℃のオーブンに入れて10分間加熱し、第1の絶縁性接着材を硬化して第1の硬化状態とし、第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材の裏面電極型太陽電池セル側の幅が400μm、裏面電極型太陽電池セルとは反対側の幅が100μm、高さが概ね50μmとなるようにした。
【0164】
次に、裏面電極型太陽電池セルのn型用電極上およびp型用電極上にそれぞれ半田樹脂(タムラ化研(株)製のTCAP−5401−27)をスクリーン印刷により設置した。ここで使用した半田樹脂は、Sn−Bi系の半田粒子(導電性接着材)がエポキシ系の絶縁性樹脂(第2の絶縁性接着材)中に分散した半田樹脂で、幅が150μm、高さが概ね30μmとなるように設置した。なお、第1の絶縁性接着材が第1の硬化状態である場合には、第1の絶縁性接着材の粘着性が低下しているため、半田樹脂をスクリーン印刷により簡便に設置することができた。
【0165】
次に、裏面電極型太陽電池セルの裏面のn型用電極およびp型用電極のそれぞれが配線基板のn型用配線およびp型用配線に対向するように、配線基板上に裏面電極型太陽電池セルを重ね合わせた。ここで、n型用配線およびp型用配線はそれぞれPENからなる絶縁性基材上に形成されており、n型用配線およびp型用配線はそれぞれ銅配線とした。
【0166】
次に、裏面電極型太陽電池セルの裏面のn型用電極およびp型用電極のそれぞれが配線基板のn型用配線およびp型用配線に対向するように、配線基板上に裏面電極型太陽電池セルを重ね合わせた。ここで、n型用配線およびp型用配線はそれぞれPENからなる絶縁性基材上に形成されており、n型用配線およびp型用配線はそれぞれ銅配線とした。図17に、配線基板の配線の設置側の表面の拡大写真を示す。本実施例においては、図17に示すように、配線基板には、第1の絶縁性接着材の位置合わせパターンに対応する位置に、配線が設けられずにPENからなる絶縁性基材の表面が露出した位置合わせパターン(図17の点線で囲まれた領域)が設けられた。そして、裏面電極型太陽電池セルと配線基板とを重ね合わせる工程においては、裏面電極型太陽電池セルの第1の絶縁性接着材の位置合わせパターンと、配線基板の位置合わせパターンとが重なるように位置合わせが行なわれた。
【0167】
その後、重ね合わせた裏面電極型太陽電池セルと配線基板とを裏面電極型太陽電池セル側を下側として真空ラミネータに投入して、図18に示す温度プロファイルにより加熱および加圧することによって配線基板付き裏面電極型太陽電池セルを封止材中に封止して太陽電池モジュールを作製した。なお、図18に示す温度プロファイルは、熱電対1〜6を用いて測定された。
【0168】
より具体的には、図18に示すように、重ね合わせた裏面電極型太陽電池セルと配線基板とをEVAからなる封止材の間にセットした後に加熱を開始するとともに真空引きを180秒間実施し、その後加圧を開始して温度を上昇させた。そして、図18に示すように温度を上昇させながら加圧を600秒間実施することにより配線基板付き裏面電極型太陽電池セルが封止材中に封止された太陽電池モジュールを作製した。
【0169】
また、第1の絶縁性接着材は、加熱開始から約240秒の時点までは第1の硬化状態であったが、240秒を超えた時点から軟化して軟化状態となった。そして、その軟化状態は加熱開始から約300秒を超える時点まで続き、その後再度硬化して第2の硬化状態となった。
【0170】
また、第1の絶縁性接着材の粘度は、第1の絶縁性接着材が第2の硬化状態となるまで半田樹脂の第2の絶縁性接着材の粘度よりも高く設定された。
【0171】
上記のようにして製造した実施例の太陽電池モジュールにおいては短絡不良が発生せず、裏面電極型太陽電池セルの電極と配線基板の配線との接続部の周囲には空間が存在せず、裏面電極型太陽電池セルと配線基板とが第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材および硬化状態の第2の絶縁性接着材により強固に接合され、電気的な接続の安定性および機械的な接続の安定性に優れた太陽電池モジュールとすることができた。
【0172】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に利用することができ、特に、配線基板付き裏面電極型太陽電池セルおよび太陽電池モジュールならびにこれらの製造方法に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0174】
1 半導体基板、1a スライスダメージ、2 n型不純物拡散領域、3 p型不純物拡散領域、4 パッシベーション膜、4a,4b コンタクトホール、5 反射防止膜、6,6a n型用電極、7,7a p型用電極、8 裏面電極型太陽電池セル、10 配線基板、11 絶縁性基材、12,12a n型用配線、13,13a p型用配線、14 接続用配線、16 配線、17 表面保護材、18 封止材、19 裏面保護材、20 半田樹脂、21 導電性接着材、21a 溶融状態の導電性接着材、22 第2の硬化状態の第1の絶縁性接着材、22a 未硬化の第1の絶縁性接着材、22b 第1の硬化状態の第1の絶縁性接着材、22c 軟化状態の第1の絶縁性接着材、23 第2の絶縁性接着材、31 周縁部、41a,41b 非設置領域、51 開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の表面に極性の異なる電極が設けられた半導体基板と、
絶縁性基材の一方の表面に配線が設けられた配線基板と、
前記半導体基板と前記絶縁性基材との間に設けられた第1の絶縁性接着材および第2の絶縁性接着材と、
前記電極と前記配線との間に設けられた導電性接着材と、を含み、
前記第1の絶縁性接着材は、極性の異なる前記電極間の前記半導体基板の表面領域と、隣り合う前記配線間の前記絶縁性基材の表面領域と、の間に配置され、
前記第2の絶縁性接着材は、前記第1の絶縁性接着材と、前記導電性接着材と、の間に配置されており、
前記第1の絶縁性接着材は、未硬化の状態にエネルギが供給されることにより、前記未硬化の状態から粘度が上昇して第1の硬化状態となった後に、前記第1の硬化状態から粘度が一旦低下して軟化状態となり、その後粘度が再度上昇して前記第1の硬化状態よりも粘度が高い状態である第2の硬化状態となる性質を有し、
前記第2の絶縁性接着材は、未硬化の状態にエネルギが供給されることにより、前記未硬化の状態から粘度が上昇して硬化状態となる性質を有している、半導体装置。
【請求項2】
前記第1の硬化状態は、常温における未硬化状態と比べて粘度が高く、形状保持性を有しており、かつ接着性の低い状態であり、
前記第2の硬化状態は、前記第1の硬化状態の前記第1の絶縁性接着材の粘度が一旦低下した後に再度上昇することによって接着可能となる状態である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記導電性接着材は、前記第1の硬化状態の前記第1の絶縁性接着材の粘度が低下し始める温度よりも高い融点を有している、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2の硬化状態の前記第1の絶縁性接着材は白色である、請求項1から3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
一方の表面に極性の異なる電極が設けられた半導体基板の前記電極間の表面領域および絶縁性基材の一方の表面に配線が設けられた配線基板の隣り合う前記配線間の前記絶縁性基材の表面領域の少なくとも一方に第1の絶縁性接着材を設置する工程と、
前記第1の絶縁性接着材の粘度を上昇させて第1の硬化状態とする工程と、
前記電極の表面および前記配線の表面の少なくとも一方に導電性接着材を含む第2の絶縁性接着材を設置する工程と、
前記半導体基板の前記電極と前記配線基板の前記配線とが対向するように前記半導体基板と前記配線基板とを重ね合わせる工程と、
前記第1の硬化状態の前記第1の絶縁性接着材の粘度を低下させて軟化状態とする工程と、
前記導電性接着材を溶融させる工程と、
前記軟化状態の前記第1の絶縁性接着材の粘度を上昇させて第2の硬化状態とする工程と、を含み、
前記第2の硬化状態とする工程では、前記第1の絶縁性接着材の粘度を前記第2の絶縁性接着材の粘度よりも高くする、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の硬化状態は、常温における未硬化状態と比べて粘度が高く、形状保持性を有しており、かつ接着性の低い状態であり、
前記第2の硬化状態は、前記第1の硬化状態の前記第1の絶縁性接着材の粘度が一旦低下した後に再度上昇することによって接着可能となる状態である、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記軟化状態とする工程と、前記溶融させる工程と、前記第2の硬化状態とする工程とは、1回の加熱工程で行なわれる、請求項5または6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記導電性接着材は、前記第1の硬化状態の前記第1の絶縁性接着材の粘度が低下し始める温度よりも高い融点を有している、請求項5から7のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2の硬化状態の前記第1の絶縁性接着材は白色である、請求項5から8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1の絶縁性接着材を設置する工程において、前記第1の絶縁性接着材は、前記半導体基板の前記電極と前記半導体基板の周縁部との間に設置される、請求項5から9のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1の絶縁性接着材は、前記半導体基板の前記電極と前記半導体基板の前記周縁部との間に、前記半導体基板と前記配線基板との位置合わせを行なうための位置合わせパターンを形成するように設置される、請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記配線基板には前記第1の絶縁性接着材の前記位置合わせパターンに対応する位置合わせパターンが設けられており、
前記重ね合わせる工程は、前記半導体基板に設けられた前記第1の絶縁性接着材の前記位置合わせパターンと前記配線基板の前記位置合わせパターンとが重なるように位置合わせをする工程を含む、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図18】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−99566(P2012−99566A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244316(P2010−244316)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】