説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】樹脂封止の工程に於ける金属細線の変形が抑制された半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の半導体装置10は、分離されたアイランド12Aおよびアイランド12Bと、アイランド12A、12Bに一端が接近するリード14と、アイランド12Aに固着されて金属細線24Cを経由してリード14Eと接続される制御素子20と、アイランド12Bに固着されて金属細線26を経由してリード14Eと接続されるスイッチング素子18と、を備える。更に、金属細線24Cと金属細線26とが交差して配置される構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置およびその製造方法に関し、特に、金属細線を経由して接続された半導体素子が樹脂封止された半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電源回路等を構成するスイッチング素子と制御素子とを1つのパッケージに樹脂封止した半導体装置が開発されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図6を参照して、この種の半導体装置100の構成を説明する。半導体装置100は、スイッチング素子103と、制御素子104と、スイッチング素子103が実装されるアイランド101と、制御素子104が実装されるアイランド102と、制御素子104またはスイッチング素子103と接続されて外部に導出するリード106と、これらを一体的に封止する封止樹脂107とを主要に備えている。
【0004】
スイッチング素子103は、例えばディスクリートのMOSFETであり、裏面のドレイン電極がアイランド101に接続され、表面のゲート電極が制御素子104と接続され、表面のソース電極が金属細線105を介してリード106Dに接続されている。一方、LSIから成る制御素子104は、表面に多数個の電極が設けられ、金属細線105を経由してスイッチング素子103やリード106A、106Bと接続される。
【0005】
また、封止樹脂107の側面からは、リード106A〜106Eが導出しており、これらのリードを実装基板に挿入することにより、半導体装置100は差込実装される。
【0006】
スイッチング素子103の裏面電極は数百Vの高電圧が印加される一方、制御素子104の裏面は周囲と絶縁される必要がある。従って、スイッチング素子103と制御素子104とを、導電性接着材を用いて同一のランドに固着すると、裏面に高電位が印加された制御素子104が誤動作してしまう恐れがある。
【0007】
この誤作動を防止するために、半導体装置100では、スイッチング素子103が実装されるアイランド101と、制御素子104が実装されるアイランド102とを分離して形成している。この様にすることで、スイッチング素子103に印加される電圧が制御素子に与える悪影響が排除される。
【0008】
また、上記した構成の半導体装置の製造方法は次の通りである。先ず、一枚の導電箔に対して、エッチング加工またはプレス加工を施すことにより、図6に示す形状のアイランド101、アイランド102およびリード106を形成する。次に、アイランド101の上面にスイッチング素子103を固着し、アイランド102の上面に制御素子104を固着する。更に、金属細線105を経由して、スイッチング素子103および制御素子104を所定のリードと接続する。次に、アイランド101、アイランド102およびリード106をモールド金型のキャビティに収納した後に、このキャビティに封止樹脂107を注入して樹脂封止の工程を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−320009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記した半導体装置100では、樹脂封止の工程に於いて金属細線がリード106Bの先端部に接触してしまう問題があった。
【0011】
具体的には、上記した樹脂封止の工程では、図6に示す矢印の方向に、液状又は半固形状の状態の封止樹脂105を高圧でキャビティの中に注入する。このようにすると、各金属細線は、注入される封止樹脂による圧力を受ける。特に、金属細線105Aは、封止樹脂による圧力が大きく作用する。この理由は、金属細線105Aが、制御素子104と、端部に配置されたリード106Aとを接続するので、封止樹脂の流れる方向に対して傾斜する角度が大きくなるからである。従って、封止樹脂が注入される圧力により、金属細線106Aが点線で示す形状に湾曲して、隣接するリード106Bに接触してしまう恐れがある。金属細線106Aがリード106Bに接触したまま封止樹脂107が硬化してしまうと、使用状況下にて両者がショートしてしまうので不良が発生する。
【0012】
本発明は、上述した問題を鑑みて成されたものである。本発明の主な目的は、樹脂封止の工程の樹脂の注入圧による金属細線のショートが防止された半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の半導体装置は、互いに分離して形成された第1アイランドおよび第2アイランドと、前記第1アイランドの上面に固着された第1半導体素子と、前記第2アイランドの上面に固着された第2半導体素子と、前記第1アイランドおよび前記第2アイランドの一側辺の一端側に配置されたリードと、前記第1半導体素子の電極と、前記リードの前記一端側の上面とを接続する第1金属細線と、前記第2半導体素子の電極と、前記リードの他端側の上面とを接続する第2金属細線と、を備え、前記第1金属細線は前記第2金属細線の上方を延在すると共に、前記第1金属細線と前記第2金属細線とは平面視で交差することを特徴とする。
【0014】
本発明の半導体装置の製造方法は、第1アイランドと、前記第1アイランドと分離して形成された第2アイランドと、前記第1アイランドまたは前記第2アイランドに一端が接近する複数のリードを用意し、前記第1アイランドの上面に第1半導体素子を固着し、前記第2アイランドの上面に第2半導体素子を固着する工程と、前記第1アイランドおよび前記第2アイランドの一側辺の一端側に配置されたリードと前記第1半導体素子とを第1金属細線で接続し、前記第1金属細線と交差する第2金属細線により前記リードと前記第2半導体素子とを接続する工程と、モールド金型のキャビティに前記両アイランドおよび前記リードの一部を収納して、前記第1アイランドおよび第2アイランドの前記一側辺に対向する他側辺側から、前記キャビティに封止樹脂を注入する工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、樹脂封止時の圧力により他のリードに接触してしまう恐れがある第1金属細線を、第2金属細線と平面視で交差して配置させている。この様にすることで、樹脂封止の圧力により第1金属細線が湾曲したとしても、第2金属細線に第1金属細線が接触することにより、第1金属細線の過度の変形が抑制される。結果的に、第1金属細線が他のリードへ接触することによるショートが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の半導体装置を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は拡大された平面図であり、(C)は断面図である。
【図2】本発明の半導体装置の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は拡大された平面図である。
【図3】本発明の半導体装置の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は拡大された平面図である。
【図4】本発明の半導体装置の製造方法を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は平面図であり、(C)は拡大された平面図である。
【図5】本発明の半導体装置の製造方法を示す平面図である。
【図6】背景技術の半導体装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照して、本実施の形態に係る半導体装置10の構成を説明する。
【0018】
図1(A)を参照して、半導体装置10は、互いに分離されたアイランド12A(第1アイランド)およびアイランド12B(第2アイランド)と、アイランド12Aの上面に実装された制御素子20(第1半導体素子)と、アイランド12Bの上面に固着されたスイッチング素子18(第2半導体素子)と、外部接続端子として機能する複数のリード14と、これらを一体的に被覆して機械的に支持する封止樹脂16とを主要に備えた構成となっている。更に、制御素子20は複数の金属細線24A等を経由して各リード14と接続され、スイッチング素子18は複数の金属細線26を経由してリード14Eと接続される。
【0019】
アイランド12Aおよびアイランド12Bは、厚みが0.4mm程度の銅を主材料とした板を、エッチング加工やパンチング加工により所定形状に成形したものである。アイランド12Aおよびアイランド12Bは、上面に実装される回路素子(制御素子20、スイッチング素子18)よりも平面視で若干大きく形成される。また、アイランド12Aから連続してリード14Bが外部に導出し、アイランド12Bから連続してリード14Cが外部に導出する。リード14Bおよびリード14Cは、製造工程において、アイランド12Aおよびアイランド12Bを機械的に支持する吊りリードとして機能する。
【0020】
リード14は、内蔵されたスイッチング素子18または制御素子20と電気的に接続され、一部が外部に露出して外部接続端子として機能している。図1(A)を参照すると、リード14A−14Eが、アイランド12A、12Bの上辺(一側辺)に沿って配置されている。リード14A、14Dおよび14Eは、アイランド12A、12Bの面よりも上方に位置し(図1(C)参照)、金属細線を経由して制御素子20またはスイッチング素子18に接続される。一方、リード14Bはアイランド12Aと連続しており、中間部に段差加工が施されている。同様に、リード14Cもアイランド12Bと連続しており、中間部に段差加工が施されている。
【0021】
スイッチング素子18としては、MOSFET(Metal−Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、バイポーラトランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が採用される。スイッチング素子18としてMOSFETが採用された場合は、裏面にドレイン電極が形成され、バイポーラトランジスタが採用された場合は裏面にコレクタ電極が形成される。更に、本実施の形態では、一例として電源回路が半導体装置10に内蔵されるので、スイッチング素子18としては、例えば1A以上の大電流のスイッチングを行うパワー系の半導体素子(パワー素子)が採用される。
【0022】
本実施の形態では、MOSFETがスイッチング素子18として採用され、下面のドレイン電極が導電性接着材を介してアイランド12Bの上面に接続され、上面のゲート電極は金属細線28を経由して制御素子20と接続され、上面のソース電極は複数の金属細線26を経由してリード14Eと接続される。そして、制御素子20から供給される制御信号に基づいて、スイッチング素子18はスイッチング動作を行う。
【0023】
制御素子20は、スイッチング素子18のスイッチングを制御する回路が表面に形成されたLSIである。制御素子20は、素子裏面に貼着された絶縁シートおよび絶縁性接着材を介して、アイランド12Aに絶縁された状態で固着され、上面の電極は金属細線24を経由してリード14やスイッチング素子18と接続されている。具体的には、制御素子20は、リード14A、14Dと、金属細線24A、24Bを経由して接続されている。更に、制御素子20の電極と、スイッチング素子18の制御電極とは、金属細線28を経由して接続されている。制御素子20には、一定以上の温度を検知したときにスイッチング素子18を強制的にオフ状態とする過熱保護回路が内蔵されている。
【0024】
更に、スイッチング素子18は、リード14が整列する方向(紙面上では横方向)に対して装置全体の右端付近に配置され、制御素子20は装置全体の中央部寄りに配置されている。
【0025】
本実施の形態では、金属細線24、26、28としては、直径が40μm以下の金から成る金線が採用されている。高価な金の使用量を減らしてコストを低減させるために細い金線を用いているが、この様にすることで金属細線の機械的強度が低下して樹脂封止時に金属細線が変形する恐れがある。本実施の形態では、金属細線のレイアウトを最適化することにより、樹脂封止時に於ける金属細線の変形によるショートの発生を抑制している。この事項に関しては、図1(B)を参照して後述する。
【0026】
封止樹脂16は、リード14の一部、アイランド12A、12B、スイッチング素子18、制御素子20、金属細線を一体的に被覆して全体を機械的に支持する機能を有する。封止樹脂16の材料としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂が採用される。また、封止樹脂16には、放熱性向上およびSiチップと樹脂の熱膨張係数の違いにより発生する応力を抑制させるために、粒状のシリカやアルミナ等のフィラーが混入された樹脂材料から成る。
【0027】
図1(B)を参照して、金属細線24Cおよび金属細線26の構成を説明する。装置の右端に配置されたリード14Eは、電源電位に接続されており、制御素子20およびスイッチング素子18の両方に接続される。このため、リード14Eは、金属細線24Cを経由して制御素子20に接続され、複数の金属細線26を経由してスイッチング素子のソース電極と接続される。ここで、金属細線24Cの長さは例えば3mm以上である。
【0028】
金属細線24Cは、一端が制御素子20の電極と接続され、他端がリード14Eに接続されている。更に、金属細線24Cの他端は、リード14Eの中央部よりも右側(外側)の領域に接続されている。この様にすることで、リード14Eに隣接されたリード14Dから、金属細線24Cを離間させることができる。具体的には、リード14Dと金属細線24Cとが離間する距離D1は、例えば0.5mm以上となる。リード14Eは接地電位と接続される一方、リード14Dは電位が異なる制御用の信号が通過する。従って、リード14Eに接続される金属細線24Cがリード14Dに接触するとショートが発生するが、このような構成にすることによりショートが防止される。
【0029】
金属細線26の一端はスイッチング素子18の上面に設けられた電極と接続され、他端はリード14Eの上面に接続される。ここで、一部の金属細線26の他端は、リード14Eの上面において、中心よりも左側(内側)に接続される。
【0030】
更に、金属細線24Cは、金属細線26の上方を交差するように配置されており、このことにより金属細線24Cの変形が抑制される。具体的には、図1(B)に示すように、金属細線24Cは、中央部に配置される制御素子20と、端部のリード14Eと接続している。従って、製造工程の樹脂封止の段階にて供給される封止樹脂の流れにより、金属細線24Cには他の金属細線よりも大きな圧力が作用する。このことから、金属細線24Cは変形しやすい条件下にあり、上記したショートを防止するためにも変形を抑制する必要がある。更に、図1(C)を参照して、金属細線が接続されるリード14E(ポスト)は、スイッチング素子18や制御素子20よりも上方に位置している。従って、両者を接続する金属細線24Cが、樹脂の注入圧力により紙面上にて右方向に変形すると、図1(B)に示すリード14Dの下端に金属細線24Cが容易に接触してしまう。
【0031】
上記したショートを防止するために、本実施形態では、金属細線26の上方を交差するように金属細線24Cを配置している。この様にすることで、樹脂の封入圧により金属細線24Cがリード14D側に変形しても、金属細線26により金属細線24Cが支持される。結果的に、金属細線24Cの変形が抑制され、金属細線24Cがリード14Dに接触することが防止される。これは、金属細線24Cも金属細線26も同じリード14Eに接続されるため、仮に接触しても同電位で、故障しないから実現可能である。
【0032】
更に、本実施形態では、金属細線24Cが、複数の金属細線26により支持されているので、複数の金属細線26によりサポートされる支持力が大きく、金属細線24Cの変形を防止する効果が非常に大きくなっている。更に、リード14Eに接続される金属細線26の一部は、リード14Eの上面において中央よりも左側(中央側)に接続されている。この様にすることで、金属細線24Cと金属細線26とを確実に平面視で交差させることができる。
【0033】
図2から図5を参照して、上記した構成の半導体装置の製造方法を説明する。
【0034】
先ず、図2を参照して、所定形状のリードフレーム50を用意する。図2(A)はリードフレーム50全体を示す平面図であり、図2(B)はリードフレーム50に含まれるユニット54を示す斜視図である。
【0035】
図2(A)を参照して、リードフレーム50の外形は短冊形状であり、枠状の外枠52の内部に複数個のユニット54が形成されている。ここでユニットとは、1つの半導体装置を構成する部位の集まりである。図では、額縁状の外枠52と連結された7個のユニット54が示されているが、外枠52の内部にマトリックス状に多数個のユニット54が設けられても良い。ここで、以下の各工程は、リードフレーム50の各ユニット54に対して一括して行われる。
【0036】
図2(B)を参照して、1つのユニット54は、2つのアイランド12A、12Bと、アイランド12A、12Bに一端が接近する複数のリード14A−14Eとから成る。アイランド12A、12Bは、上面に半導体素子が載置可能な大きさである。アイランド12Aからはリード14Bが一体的に延在して外枠52と連結されている。また、アイランド12Bからはリード14Cが一体的に延在して外枠52と連結されている。即ち、リード14Bおよびリード14Cは、アイランド12Aおよびアイランド12Bを外枠52に固定する為の吊りリードとしても機能している。リード14A、14D、14Eは、一端がアイランド12A、12Bに接近して他端は外枠52に連結されている。
【0037】
更に、各ユニット54のアイランド12Aおよびアイランド12Bの上面には所定の回路素子が実装される。具体的には、アイランド12Aの上面には制御素子20が実装され、アイランド12Bの上面にはスイッチング素子18が実装される。制御素子20は、裏面に樹脂シートが貼着された状態で、エポキシ樹脂等の絶縁性接着材を介してアイランド12Aの上面に実装される。一方、スイッチング素子18は、導電性ペーストや半田等の導電性固着材を介して、アイランド12Bの上面に実装される。またここで、制御素子20とスイッチング素子18とは、分離されたアイランドに各々が実装されているので、導電性の固着材を用いて制御素子20をアイランド12Aに実装しても、両者はショートを起こさない。
【0038】
図3を参照して、次に、アイランド12A、12Bに固着された各素子の電気的接続を行う。図3(A)は本工程を示す平面図であり、図3(B)は1つのユニット54を拡大した平面図である。
【0039】
図3(B)を参照して、本工程では、直径が40μm程度の金から成る金属細線を用いて、制御素子20およびスイッチング素子18の電気的接続を行う。制御素子20の上面に設けられた電極は、リード14A、14D、14Eと、金属細線24A、24B、24Cを経由して接続される。また、スイッチング素子18の上面に設けられたソース電極は、複数の金属細線26を介して、リード14Eと接続される。更に、スイッチング素子18のゲート電極は、金属細線28を介して制御素子20の電極と接続される。
【0040】
制御素子20とリード14Eとを接続する金属細線24Cは、金属細線26の上方を交差して配置されている。本工程では、先ず、スイッチング素子18のソース電極とリード14Eとを金属細線26を経由して接続する。金属細線26の一端は、スイッチング素子18のソース電極に等間隔にボールボンディングされる。そして、金属細線26の他端は、リード14Eの端部付近に等間隔にスティッチボンディングされる。スイッチング素子18のソース電極は大電流が通過するので、オン抵抗を低減するために複数の金属細線26が用いられる。
【0041】
金属細線26の接続が終了した後に、制御素子20とリード14Eとを金属細線24Cにより接続する。金属細線24Cの一端は、制御素子20の一番右側にある電極と接続され、他端はリード14Eと接続される。このとき、金属細線24Cの他端は、リード14Eの中央よりも右側(外側)に配置される。この様にすることで、リード14Eに隣り合うリード14Dと、金属細線24Cとを離間させて、両者のショートを防止できる。
【0042】
図4を参照して、次に、制御素子20等が被覆されるように樹脂封止を行う。図4(A)は本工程を示す断面図であり、図4(B)は本工程を示す平面図であり、図4(C)は拡大された断面図である。
【0043】
図4(A)を参照して、本工程では、モールド金型56を用いて樹脂封止を行う。このモールド金型56は、上金型58と下金型60とから成り、両者を当接させることで、封止樹脂が注入されるキャビティ62が形成される。樹脂封止の方法としては、熱硬化性樹脂を用いるトランスファーモールドが採用される。
【0044】
具体的な封止方法は、先ず、前工程のワイヤボンディングが終了したアイランド12Aおよびアイランド12Bを、キャビティ62に収納する。このとき、封止圧によりアイランド12Aが浮上することを防止するために、アイランド12Aの先端部付近は、押圧部(可動ピン)64、66により押圧されて厚み方向に固定されている。同様に、アイランド12Bの上下主面も押圧部により固定される。押圧部64は、上金型58に備えられた可動式のピンであり、下端がアイランド12Aの上面に接触している。押圧部66は、下金型60に設けられた可動式のピンであり、上端がアイランド12Aの下面に接触している。次に、モールド金型56に設けたゲート46からキャビティ62の内部に封止樹脂を注入して、アイランド12A、12B、制御素子20、スイッチング素子18、リード14および各金属細線を樹脂封止する。封止樹脂の注入に伴い、キャビティ62の内部の空気はエアベント48を経由して外部に放出される。
【0045】
更に本工程では、キャビティ62に注入された封止樹脂が硬化する途中段階で押圧部64、66を引き抜いているので、アイランド12Aの上面および下面は封止樹脂により覆われ外部には露出しない。
【0046】
同様に、アイランド12Bの上面および下面も、上記した押圧部により固定される。
【0047】
図4(B)を参照して、ゲート46から液状または半固形状の封止樹脂がキャビティ62に注入されると、注入された封止樹脂による圧力で、金属細線は湾曲する。特に、端部に配置されたリード14Eと制御素子20とを接続する金属細線24Cは、封止樹脂の流れに対して傾斜して配置されるので、樹脂による圧力が大きくなり変形する恐れがある。
【0048】
図4(C)に変形した状態の金属細線24Cを示す。ここでは、変形する前の金属細線24Cを点線にて示し、変形した後の状態の金属細線24Cを実線にて示している。上記したように、金属細線24Cは、金属細線26の上方にて交差するように配置されている。従って、樹脂圧により金属細線24Cがリード14D側に変形すると、金属細線26に接触して支持され、この時点で金属細線24Cの変形がストップする。このことにより、変形した金属細線24Cがリード14Dに接触することが防止される。更に本工程では、金属細線24Cの下方に、複数の金属細線26が設けられている。従って、樹脂封止時に於いて、複数の金属細線26による充分な支持力により、金属細線24Cの変形が抑制される。また、金属細線26は、封止樹脂の流れに対して、金属細線24Cよりも平行に形成されているので、封止樹脂の圧力による変形は比較的に小さい。
【0049】
図5に樹脂封止が終了した後のリードフレーム50を示す。ここでは、リードフレーム50に設けられた各ユニット54が一括して同時に樹脂封止される。
【0050】
本工程が終了した後は、打ち抜き加工を行うことで、リードフレーム50の外枠52から各ユニット54のリードを分離し、分離された半導体装置を、例えば実装基板上に実装する。また、外部に露出するリードの酸化を防止するために、リードの表面を半田メッキ等のメッキ膜により被覆する。
【0051】
以上の工程により、図1に構造を示す半導体装置10が製造される。
【符号の説明】
【0052】
10 半導体装置
12A、12B アイランド
14、14A、14B、14C、14D、14E リード
16 封止樹脂
18 スイッチング素子
20 制御素子
24、24A、24B、24C 金属細線
26、26A、26B、26C 金属細線
28 金属細線
46 ゲート
48 エアベント
50 リードフレーム
52 外枠
54 ユニット
56 モールド金型
58 上金型
60 下金型
62 キャビティ
64 押圧部
66 押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに分離して形成された第1アイランドおよび第2アイランドと、
前記第1アイランドの上面に固着された第1半導体素子と、
前記第2アイランドの上面に固着された第2半導体素子と、
前記第1アイランドおよび前記第2アイランドの一側辺の一端側に配置されたリードと、
前記第1半導体素子の電極と、前記リードの前記一端側の上面とを接続する第1金属細線と、
前記第2半導体素子の電極と、前記リードの他端側の上面とを接続する第2金属細線と、を備え、
前記第1金属細線は前記第2金属細線の上方を延在すると共に、前記第1金属細線と前記第2金属細線とは平面視で交差することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2半導体素子は、MOSFET、バイポーラトランジスタまたはIGBTからなるスイッチング素子であり、前記第1半導体素子は、前記スイッチング素子を制御する制御素子であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記スイッチング素子と接続される前記制御素子の電極は、前記両アイランドの一側辺の一端側に相当する、前記制御素子の一端に設けられることを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2金属細線は、前記スイッチング素子の電流流入側または電流流出側の電極に、複数本で接続されることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記両アイランドおよび前記両半導体素子は絶縁性樹脂で封止され、前記第1アイランドおよび第2アイランドの一側辺と対向する他側辺側に、前記絶縁性樹脂の注入ゲートがあることを特徴とする請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
第1アイランドと、前記第1アイランドと分離して形成された第2アイランドと、前記第1アイランドまたは前記第2アイランドに一端が接近する複数のリードを用意し、前記第1アイランドの上面に第1半導体素子を固着し、前記第2アイランドの上面に第2半導体素子を固着する工程と、
前記第1アイランドおよび前記第2アイランドの一側辺の一端側に配置されたリードと前記第1半導体素子とを第1金属細線で接続し、前記第1金属細線と交差する第2金属細線により前記リードと前記第2半導体素子とを接続する工程と、
モールド金型のキャビティに前記両アイランドおよび前記リードの一部を収納して、前記第1アイランドおよび第2アイランドの前記一側辺に対向する他側辺側から、前記キャビティに封止樹脂を注入する工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記封止樹脂を注入する工程では、
前記封止樹脂の注入圧により変形した前記第1金属細線が前記第2金属細線に接触することを特徴とする請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記接続する工程では、複数の前記第2金属細線により前記第2半導体素子と前記リードとを接続し、
前記封止樹脂を注入する工程では、前記複数の第2金属細線に前記第1金属細線が接触することを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−199492(P2010−199492A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45570(P2009−45570)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】