説明

半導体装置の製造方法、及び、反射型露光マスク

【課題】静電チャックに吸着させた反射型露光マスクを取り外すのに必要な時間を短縮させる。
【解決手段】基板11と、基板11の第1の面側に形成された反射層14及びマスクパターン15と、基板11の第2の面側に形成された導電膜12と、導電膜12上の一部の領域に形成された弾性変形体13とを有する反射型露光マスクを提供する。弾性変形体13は、非導電性物質で構成されている。そして、反射型マスク用静電チャックに電圧を印加し、反射型露光マスクを吸着させると、弾性変形体13は圧縮し、電圧の印加をストップすると、元の形状に戻ろうとする。当該力により、反射型マスク用静電チャックからの反射型露光マスクの引き離しが促進される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、及び、反射型露光マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、極端紫外線(EUV:Extreme Ultra Violet)を用いた露光装置が開発されている。当該露光装置における投影光学系及びマスクは、EUVの透過率が高い適切な材料が無いため、反射型ミラーで構成される(以下、当該マスクを「反射型露光マスク」という)。また、露光環境は真空中となる。
【0003】
このような露光装置では、光は反射型露光マスクに対して斜めに入射するため、反射型露光マスクに対してテレセントリックな光学系にならない。このため、反射型露光マスクの表面の平坦度が悪いと、転写パターンに位置ずれが生じる。そして、反射型露光マスクの自重たわみも平坦度劣化の原因になるため、一般的に、反射型露光マスクの保持には、平坦度の高い静電チャックが用いられている。
【0004】
反射型露光マスクを静電チャックに吸着した際の表面平坦度の再現性を高めるためには、静電チャックの印加電圧を高くして吸着力を出来るだけ高めるのが望ましい。しかしながら、強い吸着力でマスクを静電チャックに吸着させると、チャック電圧をOFFにしてもチャック表面に残留電荷が残るため吸着力がなかなか下がらず、マスクの取り外しに時間がかかるという問題がある。吸着条件によってはマスクの取り外しに数時間程度かかる場合があり、露光装置の処理スループットが大幅に低下してしまう。
【0005】
特許文献1(特開2006−324268号公報)には、反射型露光マスクの裏面導電膜と表面側のパターン形成層の間に側面導電膜で導通をとり、裏面導電膜の残留電荷を逃がしやすくしてマスクの取り外しを容易にしようとする技術が記載されている。
【0006】
特許文献2(特開2002−299228号公報)には、反射型露光マスクを静電チャックで保持するために、裏面に導電膜を成膜したマスクを用いる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−324268号公報
【特許文献2】特開2002−299228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術の場合、マスク表面の残留電荷が抜けても、静電チャック表面の残留電荷はすぐには抜けないので、吸着力は短時間では十分に下がらないと考えられる。その結果、マスク交換に時間がかかり、露光装置の稼働率が低下するという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、基板と、前記基板の第1の面側に形成されたマスクパターンと、前記基板の第2の面側に形成された導電膜と、非導電性物質で構成され、前記導電膜上の一部の領域に形成された弾性変形体と、を有する反射型露光マスクを静電チャック上に載置後、前記静電チャックに電圧を印加することで、前記静電チャックに前記反射型露光マスクを吸着させる保持工程と、前記保持工程の後、露光を行う露光工程と、前記露光工程の後、前記静電チャックへの電圧の印加をストップし、前記反射型露光マスクを前記静電チャックから取り外す取り外し工程と、前記取り外し工程の後、前記静電チャックに、前記反射型露光マスクと異なる前記反射型露光マスクを吸着させる第2の保持工程と、前記第2保持工程の後、露光を行う第2の露光工程と、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、基板と、前記基板の第1の面側に形成されたマスクパターンと、前記基板の第2の面側に形成された導電膜と、非導電性物質で構成され、前記導電膜上の一部の領域に形成された弾性変形体と、を有する反射型露光マスクが提供される。
【0011】
本発明の反射型露光マスクによれば、反射型マスク用静電チャック上に、弾性変形体が反射型マスク用静電チャックと対峙するよう反射型露光マスクを載置し、反射型マスク用静電チャックに所定値の電圧を印加すると、反射型マスク用静電チャックと反射型露光マスクの間に発生した力により、反射型露光マスクは反射型マスク用静電チャックに吸着する。この時、弾性変形体は圧縮し、内部に圧縮応力が生じる。なお、弾性変形体は非導電性物質で構成されるので、当該力による弾性変形体と反射型マスク用静電チャックとの吸着は抑制される。
【0012】
そして上記状態において、反射型マスク用静電チャックへの電圧の印加をストップすると、弾性変形体は元の形状に戻ろうとする。当該力は、反射型マスク用静電チャックと反射型露光マスクとを引き離す方向に作用する。結果、当該力により、反射型マスク用静電チャックからの反射型露光マスクの引き離しが促進される。
【0013】
このような反射型露光マスクを利用する本発明の半導体装置の製造方法によれば、反射型マスク用静電チャックに吸着させた反射型露光マスクを短時間で取り外すことができるので、露光装置の処理スループットの低下を抑制することができる。結果、半導体装置の製造効率を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、静電チャックに吸着させた反射型露光マスクを取り外すのに必要な時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の露光装置の一例の模式図である。
【図2】本実施形態の反射型露光マスクの一例の断面模式図である。
【図3】本実施形態の反射型露光マスクの平面模式図の一例である。
【図4】本実施形態の反射型露光マスクの平面模式図の一例である。
【図5】本実施形態の反射型露光マスクの平面模式図の一例である。
【図6】本実施形態の反射型露光マスクの一例の断面模式図である。
【図7】本実施形態の反射型露光マスクの一例の断面模式図である。
【図8】本実施形態の反射型露光マスクの一例の断面模式図である。
【図9】本実施形態の反射型露光マスクの平面模式図の一例である。
【図10】本実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0017】
<第1の実施形態>
まず、本実施形態の半導体装置の製造方法で用いられる露光装置、及び、反射型露光マスクについて説明する。
【0018】
本実施形態の露光装置は、EUV光を露光光とする露光装置であり、反射型露光マスクを吸着するための反射型マスク用静電チャックを有する。このような露光装置は、従来技術を利用したあらゆる構成とすることができるが、以下、図面を用いて一例を説明する。
【0019】
図1は、本実施形態の露光装置の一例の模式図である。図示する本実施形態の露光装置は、EUV光を発する光源(不図示)と、反射型マスク用静電チャック20と、複数の反射型ミラー30と、ウエハ保持部(不図示)と、を有する。
【0020】
反射型マスク用静電チャック20は、本実施形態の反射型露光マスク10を保持可能に構成されている。具体的には、反射型露光マスク10を反射型マスク用静電チャック20上に載置後、反射型マスク用静電チャック20に電圧を印加する。この電圧の印加により、反射型マスク用静電チャック20と反射型露光マスク10の間に静電吸着力を発生させ、当該力により、反射型露光マスク10を吸着させる。
【0021】
ウエハ保持部(不図示)は、露光処理対象のウエハ40を保持可能に構成されている。
【0022】
当該露光装置による露光処理は以下のようなものである。反射型マスク用静電チャック20に反射型露光マスク10を吸着させ、かつ、ウエハ保持部(不図示)にウエハ40を保持させた状態で、光源(不図示)からEUV光を出射する。当該EUV光は、反射型ミラー30を反射した後、反射型露光マスク10に入射する。その後、反射型露光マスク10を反射したEUV光は、複数の反射型ミラー30を反射後、ウエハ40に入射する。
【0023】
次に、本実施形態の反射型露光マスク10について説明する。
図2は、本実施形態の反射型露光マスク10の一例の断面模式図である。図示するように、本実施形態の反射型露光マスク10は、基板11と、導電膜12と、弾性変形体13と、反射層14と、マスクパターン15とを有する。
【0024】
基板11は、例えば、低熱膨張材料で構成することができる。本実施形態では、「低熱膨張材料」を、室温(25℃)における熱膨張係数が1×10-6/K以下の材料と定義する(以下同様)。このような低熱膨張材料としては、例えば石英ガラス、Tiドープ石英ガラス等が考えられる。基板11の厚さは、例えば5mm以上とすることができる。
【0025】
反射層14は、EUV光を反射する機能を有する。このような反射層14は従来技術に準じた構成とすることができるが、例えば、モリブデン層とシリコン層を有する積層構造とすることができる。反射層14の厚さは、例えば200nm以上500nm以下、好ましくは280nm以上350nm以下とすることができる。反射層14は、基板11の第1の面(図中、下側の面)側に形成される。
【0026】
マスクパターン15は、平面形状が所定形状にパターニングされており、EUV光を吸収する機能を有する。このようなマスクパターン15は従来技術に準じた構成とすることができるが、例えば、TaN、TaBN、TaSiなどのTa系材料で構成することがきる。また、Ta系材料の層の下側にCrNの層を伴った積層構造(例:TaNとCrNの積層構造)にすることもできる。マスクパターン15の厚さは、例えば40nm以上100nm以下とすることができる。マスクパターン15は、基板11の第1の面(図中、下側の面)側に、基板11/反射層14/マスクパターン15の積層順になるよう形成される。
【0027】
導電膜12は、導電性を有する材料で構成される。このような導電膜12は従来技術に準じて実現できるが、例えば、クロム、窒化クロム等の導電材料を含む膜とすることができる。導電膜12の厚さは、例えば20nm以上100nm以下とすることができる。導電膜12は、基板11の第2の面(図中、上側の面)側に形成される。
【0028】
弾性変形体13は、以下の(1)及び(2)の要件を満たす材料で構成される。なお、(3)乃至(5)の要件をさらに満たすのが望ましい。
【0029】
(1)非導電性物質である。
(2)反射型マスク用静電チャック20に反射型露光マスク10を載置し、吸着のための所定値の電圧を反射型マスク用静電チャック20に印加すると、反射型マスク用静電チャック20と反射型露光マスク10の間に発生した力により圧縮し、上記電圧の印加をストップすると、元の形状に戻ろうとする性質を有する。
なお、上記電圧の所定値は設計的事項であるが、反射型マスク用静電チャック20に反射型露光マスク10を十分に吸着でき、かつ、反射型露光マスク10の表面の十分な平坦度が確保できる程度の値とすることができる。
【0030】
(3)低熱膨張材料である。
(4)200℃以上の耐熱性を有する。
(5)酸性液、オゾン水等のマスク洗浄薬品に対する耐性を有する。
【0031】
弾性変形体13は、少なくとも上記(1)及び(2)の要件を満たすあらゆる材料で構成することができるが、例えば、石英ガラスで構成することができる。
【0032】
弾性変形体13の厚さは、20nm以上1μm以下、好ましくは40nm以上100nm以下、さらに好ましくは40nm以上60nm以下とすることができる。このような弾性変形体13は、基板11の第2の面(図中、上側の面)側に、基板11/導電膜12/弾性変形体13の積層順になるよう形成される。そして、弾性変形体13は、導電膜12上の一部の領域に形成される。なお、弾性変形体13の面積をどの程度にするかは設計的事項であるが、弾性変形体13の面積を大きくし過ぎると、導電膜12の露出面積が小さくなり過ぎ、反射型露光マスク10と反射型マスク用静電チャック20の吸着力が弱くなるので好ましくない。
【0033】
ここで、弾性変形体13の平面形状の一例について説明する。
【0034】
図3は、図2に示す反射型露光マスク10を、図中、上から下方向にみた平面模式図であり、あわせて一部を拡大表示している。図3に示す例においては、弾性変形体13は、導電膜12上略全面(基板11の略全面)に所定のパターンで形成されている。所定のパターンは、複数の縦ライン及び横ラインを規則正しく配列した格子状パターンである。導電膜12上の弾性変形体13の配置にむらがあると、吸着時の反射型露光マスク10の表面平坦度に悪影響を与える。そのため弾性変形体13は、配置密度が均一になるように周期性をもたせて配置するのが望ましい。また、局所的な配置密度の均一性を高めるには縦ライン及び横ラインの幅とピッチは細くするのが好ましく、例えば、幅を5mm以下に、ピッチを10mm以下にするのが望ましい。
【0035】
図4は、図2に示す反射型露光マスク10を、図中、上から下方向にみた平面模式図の一部を拡大表示した他の一例である。図4に示す例においても、弾性変形体13は、導電膜12上略全面(基板11の略全面)に所定のパターンで形成されている。所定のパターンは、同一形状(正方形)の複数のドットを規則正しく配列したドット状パターンである。なお、ドットの形状は正方形に限定されず、その他のあらゆる形状を採用することができる。当該例においても同様に、弾性変形体13は、配置密度が均一になるように周期性をもたせて配置するのが望ましい。また、局所的な配置密度の均一性を高めるには1つのドットの大きさとピッチは小さくするのが好ましく、例えば、大きさを5mm角以下(表面積25mm以下)に、ピッチを10mm以下にするのが望ましい。
【0036】
図5は、図2に示す反射型露光マスク10を、図中、上から下方向にみた平面模式図の一部を拡大表示した他の一例である。図5に示す例においても、弾性変形体13は、導電膜12上略全面(基板11の略全面)に所定のパターンで形成されている。所定のパターンは、縦ラインを規則正しく配列したストライプ状パターンである。当該例においても同様に、弾性変形体13は、配置密度が均一になるように周期性をもたせて配置するのが望ましい。また、局所的な配置密度の均一性を高めるには、縦ラインの幅とピッチは細くするのが好ましく、例えば、幅を5mm以下に、ピッチを10mm以下にするのが望ましい。
【0037】
次に、本実施形態の反射型露光マスク10の製造方法の一例について説明する。なお、基板11上に導電膜12、反射層14、及び、マスクパターン15を形成する手段については、従来技術を適用することができるので、ここでの説明は省略する。以下、弾性変形体13の形成方法の一例について説明する。
【0038】
例えば、基板11上に、従来技術に準じて導電膜12を形成後、その上に、所定パターンの入った穴開きマスクを近接して配置する。当該マスクには、例えばアルミニウムの板を加工して表面に絶縁膜をコーティングしたものを使うことができる。そして、当該マスク越しに、スパッタリング法を用いて、弾性変形体13となる層を成膜することで、所定パターンの弾性変形体13を形成することができる。この方法を用いる場合には、1枚の穴開きマスクで所望のパターンを形成できるように、例えば図3の格子状パターンの場合は各辺の中央付近に切れ込みを入れるなど、レイアウトを工夫する必要がある。なお、上記アルミニウムの板の代わりに、レジストをマスクとして利用することもできる。
【0039】
その他の例としては、導電膜12上全面に弾性変形体13となる膜を形成後、フォトリソグラフィとエッチングにより当該膜をパターニングすることで、所定パターンの弾性変形体13を形成することもできる。
【0040】
次に、本実施形態の反射型露光マスク10の作用効果について、図6及び7を用いて説明する。
【0041】
(I)図6に示すように、反射型マスク用静電チャック20上に、弾性変形体13が反射型マスク用静電チャック20と対峙するよう反射型露光マスク10を載置し、反射型マスク用静電チャック20に所定値の電圧を印加すると、反射型マスク用静電チャック20と反射型露光マスク10の間に発生した静電吸着力により、反射型露光マスク10は反射型マスク用静電チャック20に吸着する。この時、上記(2)の要件を満たす弾性変形体13は、図示するように圧縮し、内部に圧縮応力が生じる。そのため、静電チャックの印加電圧はこの力に打ち勝つように、弾性変形体13が無い場合よりも高く設定する必要がある。一般的には印加電圧を高くするほど、マスク表面の平坦度の再現性は向上する。なお、弾性変形体13は、上記(1)の要件を満たすので、反射型マスク用静電チャック20との間に吸着力は生じない。
【0042】
そして図6に示す状態において、マスクを交換するために反射型マスク用静電チャック20への電圧の印加をストップすると、静電チャックとマスクの間には残留吸着力が残るが、上記(2)の要件を満たす弾性変形体13には元の形状に戻ろうとする力、すなわち、反射型マスク用静電チャック20と反射型露光マスク10とを引き離す方向に作用する力が働く。結果、当該力により、反射型マスク用静電チャック20からの反射型露光マスク10の引き離しが促進される。
【0043】
当該作用効果は、上記(1)及び(2)の要件を満たす弾性変形体13を、導電膜12上の一部の領域に形成することで達成される。なお、弾性変形体13の面積及び厚さを適切に調整することで、弾性変形体13により実現される「反射型マスク用静電チャック20と反射型露光マスク10とを引き離す力」を適切に調整することができる。当該作用効果を十分なものとするための弾性変形体13の厚さは、20nm以上、好ましくは40nm以上である。
【0044】
(II)また、本実施形態の弾性変形体13を基板11の略全面に所定のパターンで形成した場合、弾性変形体13が元の形状に戻ろうとする力が、反射型露光マスク10の略全面に加わることとなる。このため、反射型マスク用静電チャック20からの反射型露光マスク10の引き離しがより促進される。
【0045】
(III)さらに、本実施形態の弾性変形体13が上記(3)乃至(5)の要件を満たす場合には、反射型露光マスク10の洗浄や繰り返し使用における耐性を十分なものとすることができる。このため、弾性変形体13の劣化を抑制することができる。
【0046】
(IV)なお、本実施形態の反射型露光マスク10の構成で弾性変形体13の配置にむらがある場合には、弾性変形体13の圧縮変形に起因してマスクに不均一な力が働き、反射型露光マスク10の表面の平坦度が損なわれる恐れがある。本実施形態の反射型露光マスク10は、当該不都合を軽減する構成を備えることができる。
【0047】
(IV−I)本実施形態の弾性変形体13を基板11の略全面に所定のパターンでむらが極力小さくなるように形成した場合、弾性変形体13の圧縮変形に起因した力が、反射型露光マスク10の略全面に細かい周期で均等に加わることとなる。このため、反射型露光マスク10の表面の局所的な変形を抑制することが可能となる。すなわち、反射型露光マスク10の表面の平坦度が損なわれる不都合を軽減することができる。
【0048】
(IV−II)また、弾性変形体13の平面形状を図3に示すような格子状パターンにする場合は、縦ライン及び横ラインの幅を5mm以下、ピッチを10mm以下とし、図4に示すようなドット状パターンにする場合は、1つのドットの大きさを5mm角以下、ピッチを10mm以下とし、図5に示すようなストライプ状にする場合は、縦ラインの幅を5mm以下、ピッチを10mm以下とすることで、弾性変形体13の圧縮変形に起因して反射型露光マスク10に加わる力を細かく分散させることが可能となる。結果、反射型露光マスク10の表面の局所的な変形を抑制することが可能となる。すなわち、反射型露光マスク10の表面の平坦度が損なわれる不都合を軽減することができる。
【0049】
(IV−III)さらに、基板11の厚さを5mm以上とし、弾性変形体13の厚さを1μm以下、好ましくは100nm以下とすることで、弾性変形体13の圧縮変形に起因した局所的な力は基板11の中が十分に吸収することが可能となる。結果、反射型露光マスク10の表面の変形を抑制することが可能となる。すなわち、反射型露光マスク10の表面の平坦度が損なわれる不都合を軽減することができる。
【0050】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。
図10は、本実施形態の半導体装置の製造方法の流れを示すフローチャートである。図10に示すように、本実施形態の半導体装置の製造方法は、保持工程S10と、露光工程S20と、取り外し工程S30と、第2の保持工程S40と、第2の露光工程S50とを有する。
【0051】
保持工程S10では、本実施形態の反射型露光マスク10を反射型マスク用静電チャック20上に載置後、反射型マスク用静電チャック20に電圧を印加することで、反射型マスク用静電チャック20に反射型露光マスク10を吸着させる。この時の電圧の値は設計的事項であるが、反射型マスク用静電チャック20に反射型露光マスク10を十分に吸着でき、かつ、反射型露光マスク10の表面の十分な平坦度が確保できる程度の値とすることができる。
【0052】
露光工程S20では、露光を行う。具体的には、図1に示すように、ウエハ保持部(不図示)に露光対象のウエハ40を保持させた状態で、光源(不図示)からEUV光を出射する。
【0053】
ウエハ40には、被処理膜が形成されており、その上に、所定パターンのレジストが形成されている。被処理膜としては、例えば、ポリシリコン等の導電膜の他、SiOC膜、SiCOH膜、これらのポーラス膜等のLow−k膜(絶縁膜)等が考えられる。
【0054】
光源から出射されたEUV光は、反射型ミラー30を反射した後、反射型露光マスク10を反射する。その後、反射型露光マスク10を反射したEUV光は、複数の反射型ミラー30を反射後、ウエハ40に入射する。このようにして露光が行われる。その後、現像、エッチング、レジスト除去等の処理がこの順に行われる。
【0055】
露光工程S20は、反射型マスク用静電チャック20に吸着させる反射型露光マスク10はそのままで、ウエハ保持部(不図示)に保持させるウエハ40を取り替えながら、所定回数繰返すことができる。
【0056】
取り外し工程S30では、露光工程S20の後、反射型マスク用静電チャック20への電圧の印加をストップし、反射型露光マスク10を反射型マスク用静電チャック20から取り外す。
【0057】
反射型マスク用静電チャック20への電圧の印加をストップすると、上記図6及び7を用いて説明したように、静電チャックとマスクの間には残留吸着力が残るが、圧縮していた弾性変形体13が元の形状に戻ろうとする力が反射型マスク用静電チャック20と反射型露光マスク10とを引き離す方向に作用し、これらの引き離しが促進される。結果、短時間で、反射型露光マスク10を反射型マスク用静電チャック20から取り外すことができる。
【0058】
第2の保持工程S40では、取り外し工程S30の後、すなわち、それまで吸着していた反射型露光マスク10を反射型マスク用静電チャック20から取り外した後、当該反射型マスク用静電チャック20に、保持工程S10で反射型マスク用静電チャック20に吸着させたものとは異なる反射型露光マスク10を吸着させる。吸着は、保持工程S10と同様にして実現することができる。
【0059】
第2の露光工程S50では、第2の保持工程S40の後、露光を行う。当該工程における処理は、露光工程S20と同様である。
【0060】
以上説明した本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、反射型マスク用静電チャック20に吸着させた反射型露光マスク10を短時間で取り外すことができるので、露光装置の処理スループットの低下を抑制することができる。結果、半導体装置の製造効率を向上させることが可能となる。
【0061】
なお、本実施形態の半導体装置の製造方法においては、反射型マスク用静電チャック20に反射型露光マスク10を吸着させるための電圧の値を、反射型露光マスク10の表面の十分な平坦度が確保できる程度の値とすることができる。このため、反射型露光マスク10の表面の平坦度の悪さに起因した転写パターンの位置ずれを抑制できる。
【0062】
<第2の実施形態>
本実施形態は、反射型露光マスク10の構成が、第1の実施形態と異なる。その他は第1の実施形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0063】
図8は、本実施形態の反射型露光マスク10の一例の断面模式図である。図示するように、本実施形態の反射型露光マスク10は、基板11と、導電膜12と、反射層14と、マスクパターン15とを有し、基板11の一部が弾性変形体16を構成している。
【0064】
基板11は、第1の実施形態と同様の材料で構成することができる。そして、基板11は、第2の面(図中、上側の面)に、弾性変形体16となる凸部が形成されている。
【0065】
弾性変形体16(凸部)の平面形状は、第1の実施形態と同様とすることができる。また、弾性変形体16の導電膜12の露出面からの高さは、第1の実施形態の弾性変形体13の厚さと同様とすることができる。
【0066】
図9は、図8に示す反射型露光マスク10を、図中、上から下方向にみた平面模式図であり、あわせて一部を拡大表示している。図9に示す例においては、弾性変形体16は、基板11の略全面に所定のパターンで形成されている。所定のパターンは、複数の縦ライン及び横ラインを規則正しく配列した格子状パターンである。なお、本実施形態においても第1の実施形態における説明と同様の理由により、弾性変形体16は、配置密度が均一になるように周期性をもたせて配置するのが望ましい。また、局所的な配置密度の均一性を高めるには、縦ライン及び横ラインの幅とピッチは細くするのが好ましく、例えば、それぞれ5mm以下と10mm以下にするのが望ましい。
【0067】
次に、本実施形態の反射型露光マスク10の製造方法の一例について説明する。
【0068】
まず、基板11の第2の面(図中、上側の面)に、弾性変形体16となる凸部を形成する一例について説明する。例えば、基板11の第2の面(図中、上側の面)側に、所定パターンのマスクを形成後、基板11の露出部分をドライエッチングすることで、弾性変形体16となる凸部を形成することができる。
【0069】
次に、導電膜12は、基板11の第2の面(図中、上側の面)側の凹部を埋めるように形成される。その実現手段は特段制限されないが、例えば以下のようにして実現してもよい。
【0070】
基板11の第2の面(図中、上側の面)側に形成された凸部のみを覆うマスクを形成後、マスク越しに、導電膜12を形成する。その後、マスクを除去することで、基板11の第2の面(図中、上側の面)側の凹部を埋める導電膜12を形成してもよい。
【0071】
本実施形態によれば、第1の実施形態で実現した作用効果に加えて、以下の作用効果を実現することができる。すなわち、本実施形態の反射型露光マスク10によれば、基板11と弾性変形体16とが一体となっているため、これらの間に界面が存在しない。よって、第1の実施形態に比べて、弾性変形体16が反射型露光マスク10から剥がれ落ちるなどの不都合を軽減することができる。すなわち、繰り返し使用および洗浄に対する耐性がより強い反射型露光マスク10が実現される。
【符号の説明】
【0072】
10 反射型露光マスク
11 基板
12 導電膜
13 弾性変形体
14 反射層
15 マスクパターン
16 弾性変形体
20 反射型マスク用静電チャック
30 反射型ミラー
40 ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の第1の面側に形成されたマスクパターンと、
前記基板の第2の面側に形成された導電膜と、
非導電性物質で構成され、前記導電膜上の一部の領域に形成された弾性変形体と、
を有する反射型露光マスクを静電チャック上に載置後、前記静電チャックに電圧を印加することで、前記静電チャックに前記反射型露光マスクを吸着させる保持工程と、
前記保持工程の後、露光を行う露光工程と、
前記露光工程の後、前記静電チャックへの電圧の印加をストップし、前記反射型露光マスクを前記静電チャックから取り外す取り外し工程と、
前記取り外し工程の後、前記静電チャックに、前記反射型露光マスクと異なる前記反射型露光マスクを吸着させる第2の保持工程と、
前記第2保持工程の後、露光を行う第2の露光工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記弾性変形体は、熱膨張係数が1×10-6/K以下である低熱膨張材料で構成されている半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記弾性変形体は、石英ガラスで構成されている半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記弾性変形体の厚さは、20nm以上1μm以下である半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記弾性変形体は、前記導電膜上略全面に形成されている半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置の製造方法において、
前記弾性変形体は、格子状、ストライプ状またはドット状に周期性をもって配置されており、そのピッチは10mm以下になるように形成されている半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記基板の厚さは、5mm以上である半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7に記載の半導体装置の製造方法において、
前記基板は、熱膨張係数が1×10-6/K以下である低熱膨張材料で構成されている半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置の製造方法において、
前記基板は、石英ガラスで構成されている半導体装置の製造方法。
【請求項10】
基板と、
前記基板の第1の面側に形成されたマスクパターンと、
前記基板の第2の面側に形成された導電膜と、
非導電性物質で構成され、前記導電膜上の一部の領域に形成された弾性変形体と、
を有する反射型露光マスク。
【請求項11】
請求項10に記載の反射型露光マスクにおいて、
前記弾性変形体は、熱膨張係数が1×10-6/K以下である低熱膨張材料で構成されている反射型露光マスク。
【請求項12】
請求項11に記載の反射型露光マスクにおいて、
前記弾性変形体は、石英ガラスで構成されている反射型露光マスク。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか1項に記載の反射型露光マスクにおいて、
前記弾性変形体の厚さは、20nm以上1μm以下である反射型露光マスク。
【請求項14】
請求項10から13のいずれか1項に記載の反射型露光マスクにおいて、
前記弾性変形体は、前記導電膜上略全面に形成されている反射型露光マスク。
【請求項15】
請求項14に記載の反射型露光マスクにおいて、
前記弾性変形体は、格子状、ストライプ状またはドット状に周期性をもって配置されており、そのピッチは10mm以下になるように形成されている反射型露光マスク。
【請求項16】
請求項10から15のいずれか1項に記載の反射型露光マスクにおいて、
前記基板の厚さは、5mm以上である反射型露光マスク。
【請求項17】
請求項10から16に記載の反射型露光マスクにおいて、
前記基板は、熱膨張係数が1×10-6/K以下である低熱膨張材料で構成されている反射型露光マスク。
【請求項18】
請求項17に記載の反射型露光マスクにおいて、
前記基板は、石英ガラスで構成されている反射型露光マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−238645(P2012−238645A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105214(P2011−105214)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】