説明

半導体装置の製造方法

【課題】電解複合研磨を用いたオーバー研磨において、配線溝中の金属膜が電解液中に溶出することを防止できる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板上の層間絶縁膜に形成された配線溝及び層間絶縁膜全面にバリアメタル膜を形成する工程(a)と、この工程(a)の後に、前記バリアメタル膜上に金属膜を堆積する工程(b)とを有している。そして、この工程(b)の後に、前記金属膜の膜厚を減少させるとともに、前記配線溝に埋め込まれた金属膜と前記層間絶縁膜上に堆積した金属膜との分離を行う工程(c)を有する。これにより配線溝の内外でこの金属膜が電気的に導通することがなくなり、後に行う電解複合研磨において、配線溝中の金属膜が電解液中に溶出することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路装置の多層配線形成において、配線溝に埋め込んだ金属膜の凹みを低減させる半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路装置の微細化、高速化、低消費電力化のために、銅を配線溝に埋め込んだ多層配線が用いられている。このような銅の埋め込み配線の形成には、研磨工程が用いられる。最近、さらなる高平坦化研磨技術として、電解研磨技術が提案されている。以下、図3を参照しながら、下記の特許文献1に示されている半導体装置の製造方法について説明する。
【0003】
まず、半導体基板上に形成された層間絶縁膜1に配線を形成するための配線溝2を形成する(図3(a))。次に、この配線溝2の底面及び側面を含む基板全面にバリアメタル膜3を形成する(図3(b))。そして、配線溝2を埋め込むように、バリアメタル3が形成された前記層間絶縁膜1上に金属膜4を堆積させる(図3(c))。
【0004】
次に、層間絶縁膜1上に堆積した金属膜4の表面に、当該金属膜4の電気化学反応を妨げる作用をもつ保護膜5を形成する(図3(d))。この保護膜5により、後の電解研磨の工程において金属膜4が電解液中に溶出することを防止する。保護膜5の形成方法は、例えば、金属膜4の表面に酸化剤を塗布して酸化膜を形成する方法による。あるいは、金属膜4の表面に、例えば、撥水膜、油膜、酸化防止膜、界面活性剤からなる膜、キレート剤からなる膜、シランカップリング剤からなる膜のいずれかを形成する方法によっても保護膜5を形成できる。保護膜5の種類は特に特に限定されないが、金属膜4に比して機械的強度が低い性質の材料を使用する。
【0005】
次に、この金属膜4に形成された保護膜5のうち、前記配線溝2の埋め込みによって生じた前記金属膜4の表面に存在する凸部上の保護膜5を化学的機械研磨によって選択的に除去し、当該金属膜の凸部を表面に露出させる(図3(e))。そして、この露出した金属膜4の凸部を電解研磨によって除去して、配線溝2の上に残存する保護膜5と金属膜4の凸部画除去された複合面を得る(図3(f))。
【0006】
この複合面に対して、機械的な研磨と電解液による研磨を複合した電解複合研磨を行う。すると、前記残存する保護膜5の機械的強度は上述したように金属膜4よりも低いため、この保護膜5はこの電解複合研磨において、主に機械的作用により除去される。こうして金属膜4の表面の凹凸を平坦化する(図3(g))。
【0007】
金属膜4には、銅(Cu)が使用される場合が多いため、以下金属膜は断りのない限りCuを指すものとする。Cuの埋め込み配線形成に電解研磨が必要になる技術世代の配線幅領域は、最小配線幅が90nm以下、最大配線幅が数μm〜数百nmである。
【特許文献1】特開2001−77117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この従来技術は、Cu膜堆積直後に表面に存在する凹凸を平坦化することには優れている。表面の平坦化後、さらに電解研磨を進めると、Cu膜4の下からバリアメタル膜3が露出する(図3(h))。通常、Cu膜4の研磨はバリアメタル膜3で研磨を停止させるために、研磨液のバリアメタル膜3に対するCu膜4の研磨レート比を大きく設定してある(通常100倍以上)。例えば、Cu膜の研磨レートを500nm/minとすると、バリアメタル膜の研磨速度は5nm/min以下である。
【0009】
さらに、バリアメタル膜3上に部分的に残留したCu膜4を除去するために、Cu膜4のオーバー研磨を行なう。このとき、Cu膜4とバリアメタル膜3の選択比が大きいことと研磨パッドの弾性変形のために、オーバー研磨中に配線溝2に埋め込まれたCu膜4が削られる(図3(h))。
【0010】
また、従来技術では、Cu膜4の研磨に電解研磨を用いているために、Cu膜4のオーバー研磨中に配線溝2に埋め込まれたCu膜4が溶出する。結果として、隣り合う配線溝2間の層間絶縁膜1上のCu膜の除去が完了したときには、配線溝2のCuが凹んでしまうために、ディッシングと呼ばれるCu配線の凹みが発生する。ディッシングは配線幅の増加とともに増加する性質がある。数μmの最大配線幅に対して、Cu膜の電解研磨後のディッシングは100nmを超える場合が発生する。微細な集積回路装置では、配線溝の深さは200nm以下になるため、ディッシングの影響(配線抵抗のばらつきなど)は微細化とともに拡大する。
【0011】
さらに、この従来技術では、Cu膜4の電解研磨に引き続き、バリアメタル膜3の化学的機械研磨を行なう(図3(i))。バリアメタル膜3の膜厚を10〜20nm、層間絶縁膜を30〜50nm研磨しても、最大配線幅の配線のディッシング6は50nm程度発生する。
【0012】
このディッシングは、配線抵抗のばらつき増加の原因になるだけでなく、上層配線形成時のCuまたはバリアメタル膜の研磨残りを引き起こす原因にもなる。このような研磨残りは、配線間の短絡不良の原因となる。このため、通常は、ディッシング上に成膜を行うつど、当該膜を平坦化することになる(平坦化工程)。従って、配線溝部分のCu膜のオーバー研磨耐性を向上させ、配線部の凹みを抑制しなければならない。
【0013】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、電解研磨を用いたオーバー研磨において、配線溝中の金属膜が電解液中に溶出することを防止できる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の目的を達成するために、本発明では以下のような手段を採用している。
【0015】
まず、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板上の層間絶縁膜に形成された配線溝及び層間絶縁膜全面にバリアメタル膜を形成する工程(a)と、この工程(a)の後に、前記バリアメタル膜上に金属膜を堆積する工程(b)とを有している。そして、この工程(b)の後に、前記金属膜の膜厚を減少させるとともに、前記配線溝に埋め込まれた金属膜と前記層間絶縁膜上に堆積した金属膜との分離を行う工程(c)を有する。これにより配線溝の内外でこの金属膜が電気的に導通することがなくなり、後に行う電解複合研磨において、配線溝中の金属膜が電解液中に溶出することを防止できるのである。
【0016】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、前記工程(c)の後に、前記配線溝に埋め込まれた金属膜の表面及び前記層間絶縁膜上に堆積した金属膜の表面に、この金属膜を電気化学反応から保護する保護膜を形成する工程(d)を有する。これもまた、配線溝中の金属膜が電解液中に溶出することを防止するためである。
【0017】
さらに、前記工程(d)の後に、電解複合研磨により前記層間絶縁膜上に堆積した金属膜の表面に形成された保護膜を除去する工程(e)と、前記工程(e)の後に、前記層間絶縁膜上に堆積したバリアメタル膜を除去する工程(f)とを有する。
【0018】
加えて、前記工程(c)と前記工程(d)との間に、前記層間絶縁膜上に堆積した金属膜をマスクとして前記配線溝周囲の前記バリアメタル膜を除去する工程(g)を設けることもできる。バリアメタル膜もわずかながら導電性があるので、この工程により、金属膜が電解液中に溶出することを十全に防止する。なお、この工程(g)には、化学的機械研磨またはドライエッチングを用いることができる。
【0019】
また、前記工程(c)は、化学的機械研磨または電解研磨によって前記分離を行うことができる。
【0020】
さらに、前記保護膜の形成方法としては、前記工程(d)において、金属膜と反応する液に前記半導体基板を浸すか、前記電解複合研磨を、前記金属膜と反応して前記保護膜を形成する成分を含有する電解液を用いて行う方法を採用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る半導体装置の製造方法によると、ディッシングやエロージョン(壊食)が小さい平坦な金属膜の埋め込み配線を実現することができる。結果として、配線抵抗のばらつきを低減することができる。また、本発明に係る半導体装置の製造方法によると、埋め込み配線部の配線の凹みが小さいため、上層の層間絶縁膜の平坦化工程が不要になる(工程削減)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第一の実施形態)
以下本発明の第一の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の第一の実施形態における半導体装置の製造方法の工程図である。
【0024】
本実施形態の半導体装置の製造方法は、配線溝に埋め込まれた金属膜と配線溝間に堆積された金属膜を分離し、金属膜表面に保護膜を形成することによって、電解複合研磨のオーバー研磨において配線溝に埋め込まれた金属膜の電気化学反応による溶解を抑制することが特徴である。
【0025】
以上のように構成された半導体装置の製造方法について、以下その詳細を説明する。
【0026】
まず、半導体基板上に層間絶縁膜101を形成する。そして、この層間絶縁膜101の表面に、配線溝102を形成する(図1(a))。配線溝102の最小配線幅は90nm以下、最大配線幅は数μm〜数百nmである。
【0027】
次に、前記配線溝102の底面及び側面を含む基板全面にバリアメタル膜103を形成する(図1(b))。このバリアメタル膜103は、次の工程で配線溝102に堆積される金属膜が、層間絶縁膜101中に拡散することを防止する機能を有している。そして、前記配線溝102を埋め込むように、前記層間絶縁膜101上に金属膜104を堆積し、アニールを行なう(図1(c))。ここでは金属膜を銅(Cu)とする。ここまでは、上記従来の方法と同様である。
【0028】
次に、最表面のCu膜104に対し第一の研磨を行なって、配線溝102に埋め込まれたCuと、配線溝102のない層間絶縁膜101上(以下「溝間領域」と呼ぶ)に堆積したCuを分離する(図1(d))。このときの研磨には、電解研磨ではなく化学的機械研磨を用いる。化学的機械研磨は、ある一定の研磨レートを確保するために、電解研磨と比較して大きい研磨圧力を必要とする。この大きい研磨圧力のために、研磨パッドの弾性変形が発生し、被研磨面の凹凸に研磨パッド表面が追随してしまう。結果として、化学的機械研磨は電解研磨よりも平坦化性能が劣ることになるが、本実施形態の第一の研磨では、この化学的機械研磨の性質を利用する。
【0029】
即ち、この化学的機械研磨は、前記配線溝102に応じた凹面Cに沿って進行する(図1(d))。その結果、配線溝102の開口部両端には、この配線溝102の内外においてCuを分離する分離領域Rが形成されるのである。
【0030】
つまり、化学的機械研磨を使った第一の研磨でCu膜104を研磨する際、分離領域R上にCuが残留しているアンダー研磨の状態では、研磨パッドの弾性変形によってこの分離領域R上のCuを除去する。そして、溝間領域にCuが残留していても、この分離領域R上のCuが除去された時点で、第一の研磨は終了させる。研磨時間の制御には、光反射による終点検出を利用する。この段階では、配線溝102内のCuの研磨による減少は小さく、最大配線幅の数μmの配線に対しても、50nm以下に抑えることができる。
【0031】
次に、基板上のCu表面に、Cuの電気化学反応を抑制するための保護膜105を形成する(図1(e))。ここでは、保護膜105の形成方法として、基板を、Cuと反応してCu表面にCuの電気化学反応を抑制するための保護膜105を形成することができる物質を含む液体に浸す方法を採用する。このような物質は、研磨パッドと接触しなくても、配線溝に埋め込まれたCuが電解液を介して電気化学的に溶出して、Cu配線高さが減少することを防止するという観点から、不導体で、かつCu表面で反応する物質が望ましい。例えばCuの酸化膜である酸化第一銅(Cu2O)、酸化第二銅(CuO)、酸化防止剤のベンゾトリアゾールやベンズインミダゾール、不溶性錯形成剤のキナルジン酸、等が挙げられる。
【0032】
こうしてCu表面に保護膜105を形成した基板に対して、第二の研磨を行ない、溝間領域に堆積したCu及びその保護膜を除去する(図1(f))。このときの研磨には、上記背景技術で説明した電解複合研磨を用いる。電解複合研磨は、アノードである被研磨膜であるCuと研磨パッドに取り付けられたカソードの間に印加された電圧によって研磨レートの制御を行なうため、化学的機械研磨のような高い研磨圧力を必要としない。結果として研磨パッドの弾性変形が起こりにくくなり、配線溝102に埋め込まれたCuの研磨による減少を小さく抑えることができる。
【0033】
本実施形態の第二の研磨では、この電解複合研磨の性質を利用する。Cu表面には保護膜105が形成されているが、溝間領域のCuは、研磨パッドと直接接触しているため、保護膜105及びCuは機械的に除去することができる。一方、配線溝102内のCuは第一の研磨で表面が凹んで、溝間領域のCuと分離されており、かつ表面に保護膜105が形成されているため、研磨パッドと直接接触しない。さらに、電解複合研磨において溝間領域のCuに給電されても、配線溝102内のCuには給電が行なわれないために、このCuの溶解を最小限に抑えることができる。
【0034】
最後に、第三の研磨では、溝間領域に形成されたバリアメタル膜103を除去する(図1(e))。このときの研磨には、化学的機械研磨を用いる。この研磨では、バリアメタル膜103と層間絶縁膜101とCuの研磨レート比をほぼ同等になるように調整する。層間絶縁膜101の研磨レートを向上させるには、研磨砥粒の濃度を増加させる。また、Cu膜104の研磨レートを向上させるには、酸化剤の濃度を増大する。このようにすることによって、バリアメタル膜が除去された後、層間絶縁膜101を研磨する際にCu膜104表面に形成した保護膜105も機械的に除去することができる。バリアメタル膜103の膜厚は10〜20nm、Cu表面の保護膜105の膜厚は数nmで、層間絶縁膜101を30〜50nm研磨すると、最大配線幅数μmの配線のディッシングでも10nm以下というほぼ平坦な埋め込み配線形状を得ることができる。
【0035】
以上のように本実施形態によれば、電解複合研磨のオーバー研磨における配線溝に埋め込まれた金属膜の電気化学反応による溶解を抑制することができる半導体装置の製造方法を得ることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、第一の研磨を化学的機械研磨としたが、電解研磨を用いて同様な形状を作り出しても良い。また、本実施形態では、Cuと反応してCu表面にCuの電気化学反応を抑制するための保護膜を形成する方法として、基板を溶剤に浸す方法を採りあげたが、電解複合研磨の電解液中にCuと反応して保護膜を形成する成分を含有する溶剤を含ませる方法を用いても良い。
【0037】
(第二の実施形態)
以下、本発明の第二の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0038】
図2は、本発明の第二の実施形態における半導体装置の製造方法の工程図である。
【0039】
本実施形態の半導体装置の製造方法は、配線溝に埋め込まれた金属膜と配線溝間に堆積された金属膜を電気的に完全に分離し、金属膜表面に保護膜を形成することによって、金属膜の電解複合研磨のオーバー研磨において配線溝に埋め込まれた金属膜の電気化学反応による溶解を抑制することが特徴である。
【0040】
以上のように構成された半導体装置の製造方法について、以下その詳細を説明する。
【0041】
まず、基板上に層間絶縁膜101を形成する。そして、この層間絶縁膜101の表面に、配線溝102を形成する(図2(a))。配線溝102の最小配線幅は90nm以下、最大配線幅は数μm〜数百nmである。
【0042】
次に、前記配線溝102の底面及び側面を含む基板全面にバリアメタル膜103を形成する(図2(b))。そして、この配線溝102を埋め込むように、前記層間絶縁膜101上に金属膜104を堆積し、アニールを行なう(図2(c))。ここでは金属膜をCuとする。
【0043】
次に、最表面のCuに対し第一の研磨を行なって、配線溝に埋め込まれたCuと溝間領域上に堆積したCuを分離する(図2(d))。このときの研磨には、電解研磨ではなく化学的機械研磨を用いる。ここまでは、上記第一の実施形態と同様である。この段階では、配線溝部のCuの研磨による減少は小さく、最大配線幅の数μmの配線に対しても、50nm以下に抑えることができる。
【0044】
第一の実施形態では、第一の研磨で配線溝周辺のCuを除去することによって分離領域Rを形成し、第二の研磨である電解研磨による配線部のCuの溶出を抑えようとした。しかし、Cuの下にはバリアメタル膜が存在しているため、配線溝周辺のCuを除去しても、配線溝間の溝間領域上のCuと配線溝部のCuは電気的に完全に分離はされていない。バリアメタル膜はCuよりも高抵抗であるため影響は小さいが、本実施形態では溝間領域上のCuと配線溝102内のCuが電気的に完全に分離される方法を説明する。
【0045】
ここでは、半導体基板表面のCu膜をマスクにして、分離領域Rに露出しているバリアメタル膜103を除去する。このために、第二の研磨による方法を採りあげる。この第二の研磨はバリアメタル膜の化学的機械研磨で、研磨液には、バリアメタル膜103に対するCu膜104の研磨レート比を5分の1以下と小さく設定したものを用いる。例えば、バリアメタル膜103の研磨レートを50nm/min、Cu膜104の研磨レートを10nm/minである。バリアメタル膜103の膜厚を20nmとすると、研磨時間30秒以上で、上記分離領域Rに露出しているバリアメタル膜を除去することができる。このとき、マスクとして使用したCuの削減量は数nmと微小である。この方法によって、配線溝に埋め込まれたCuと配線溝間に堆積されたCuを電気的に完全に分離することができる(図2(e))。
【0046】
次に、半導体基板上のCu表面に、Cuの電気化学反応を抑制するための保護膜105を形成する(図2(f))。ここでは、保護膜105の形成方法として、Cuと反応してCu表面にCuの電気化学反応を抑制するための保護膜105を形成することができる物質を含む液体に、半導体基板を浸す方法を取り上げる。このような物質は、不導体でCu表面で反応する物質が望ましい。例えばCuの酸化膜である酸化第一銅(Cu2O)、酸化第二銅(CuO)、酸化防止剤のベンゾトリアゾールやベンズインミダゾール、不溶性錯形成剤のキナルジン酸、等が挙げられる。
【0047】
Cu表面に保護膜105を形成した基板に対して、第三の研磨を行ない、溝間領域に堆積したCu及びその保護膜105を除去する(図2(g))。このときの研磨には、上記第一の実施形態と同様に電解複合研磨を用いる。Cuの電解複合研磨で、溝間領域に堆積したCuを除去する。Cu表面には保護膜105が形成されているが、溝間領域上のCuは、研磨パッドと直接接触しているため、保護膜105及びCuは機械的に除去することができる。一方、配線溝部のCuは、第一の研磨及び分離領域Rのバリアメタル膜除去によって、溝間領域のCuと電気的に完全に分離されているため、電解複合研磨において溝間領域のCuに給電されても、配線溝102内のCuには給電が行なわれず、このCuは溶解しない。また、第一の研磨で表面が凹んでいるため、研磨パッドと直接接触せず、機械的にCu表面が削られることもない。
【0048】
最後に、第四の研磨で溝間領域に形成されたバリアメタル膜103を除去する(図2(h))。このときの研磨には、化学的機械研磨を用いる。バリアメタル膜103の研磨では、バリアメタル膜103と層間絶縁膜101とCu膜104の研磨レート比をほぼ同等になるように調整する。層間絶縁膜101の研磨レートを向上させるには、研磨砥粒の濃度を増加させる。また、Cu膜104の研磨レートを向上させるには、酸化剤の濃度を増大する。こうすることによって、バリアメタル膜103が除去された後、層間絶縁膜101を研磨する際にCu表面に形成した保護膜105も機械的に除去することができる。バリアメタル膜103の膜厚は10〜20nm、Cu表面の保護膜105の膜厚は数nmで、層間絶縁膜101を30〜50nm研磨すると、最大配線幅数μmの配線のディッシングでも10nm以下というほぼ平坦な埋め込み配線形状を得ることができる。
【0049】
以上のように本実施形態によれば、電解複合研磨のオーバー研磨における配線溝に埋め込まれた金属膜の電気化学反応による溶解を抑制することができる半導体装置の製造方法を得ることができる。
【0050】
尚、本実施形態では、第一の研磨を化学的機械研磨としたが、電解研磨を用いて同様な形状を作り出しても良い。また、本実施形態では、配線溝周辺のバリアメタル膜を除去する方法として化学的機械研磨を用いたが、ドライエッチングを用いても良い。
【0051】
また、本実施形態では、Cuと反応してCu表面にCuの電気化学反応を抑制するための保護膜を形成する方法として、基板を溶剤に浸す方法を採りあげたが、電解複合研磨の電解液中に溶剤を含ませる方法を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0052】
銅の配線技術は、最先端の微細で高集積の半導体集積回路に必要不可欠である。本発明の半導体装置の製造方法を適用することによって、よりばらつきの小さいCu配線を製造することができる。ばらつきの小さいCu配線を有する半導体集積回路は、高速で多機能なシステムLSIとして、デジタル家電や携帯電話等に搭載され、産業の発展に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第一の実施形態における半導体装置の製造方法の工程図。
【図2】本発明の第二の実施形態における半導体装置の製造方法の工程図。
【図3】従来の半導体装置の製造方法の工程図。
【符号の説明】
【0054】
1 層間絶縁膜
2 配線溝
3 バリアメタル膜
4 Cu
5 Cuの保護膜
6 ディッシング
101 層間絶縁膜
102 配線溝
103 バリアメタル膜
104 Cu
105 Cuの保護膜
R 分離領域
C 凹面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上の層間絶縁膜に形成された配線溝及び層間絶縁膜全面にバリアメタル膜を形成する工程(a)と、
前記工程(a)の後に、前記バリアメタル膜上に金属膜を堆積する工程(b)と、
前記工程(b)の後に、前記金属膜の膜厚を減少させるとともに、前記配線溝に埋め込まれた金属膜と前記層間絶縁膜上に堆積した金属膜との分離を行う工程(c)と、
前記工程(c)の後に、前記配線溝に埋め込まれた金属膜の表面及び前記層間絶縁膜上に堆積した金属膜の表面に、該金属膜を電気化学反応から保護する保護膜を形成する工程(d)と、
前記工程(d)の後に、電解複合研磨により前記層間絶縁膜上に堆積した金属膜の表面に形成された保護膜及び金属膜を除去する工程(e)と、
前記工程(e)の後に、前記層間絶縁膜上に堆積したバリアメタル膜を除去する工程(f)と
を有することを特徴とする、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記工程(c)と前記工程(d)との間に、前記層間絶縁膜上に堆積した金属膜をマスクとして前記金属膜の分離領域に露出した前記バリアメタル膜を除去する工程(g)を有する、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記工程(g)に、化学的機械研磨を用いる、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記工程(g)に、ドライエッチングを用いる、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記工程(c)は、化学的機械研磨によって前記分離を行う、請求項1乃至4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記工程(c)は、電解研磨によって前記分離を行う、請求項1乃至4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記工程(d)は、前記金属膜と反応する液に前記半導体基板を浸す工程である、請求項1乃至6のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記電解複合研磨を、前記金属膜と反応して前記保護膜を形成する成分を含有する電解液を用いて行う、請求項1乃至6に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−164484(P2009−164484A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2573(P2008−2573)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】