説明

半導体装置の製造方法

【課題】保護シートがセンサ構造体に触れないようにし、センサ構造体が破損することを防止する。
【解決手段】治具4によって保護シート1のキャップ部5の形状を保持した状態でダイシング装置への搬送およびダイシング工程を行う。そして、半導体基板11の裏面側からダイシングカットを行う。これにより、搬送時やダイシング工程の際に保護シート1が変形することを防止でき、保護シート1がセンサ構造体10に触れないようにできるため、センサ構造体10が破損することを防止することができる。そして、半導体基板11の裏面側からダイシングカットを行っているため、治具4を保護シート1から取り外さなくても、治具4がダイシングブレード13と干渉して邪魔になることなく、確実にダイシング工程を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護シートで覆った半導体ウェハをスクライブラインに沿ってダイシングカットしてチップ化する半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1、2において保護シートにて半導体基板に形成された各センサ構造体を覆ったのち、半導体基板をダイシングカットすることでチップ化した半導体装置の製造方法が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の半導体装置の製造方法では、保護シートを開口部が形成されたメタルマスクに貼り付けたのち、開口部から保護シートを塑性変形させることでドーム形状とする。そして、このドーム形状部分がセンサ構造体の位置と対応するように保護シートを半導体基板に貼り付けた後、保護シートで覆った状態で半導体基板をダイシングカットする。これにより、ダイシングカット時の水や研削屑からセンサ構造体を保護しつつ、チップ化を行う。このとき、保護シートのうちセンサ構造体と対応する部分をドーム状としているため、保護シートがセンサ構造体と接触することを防ぐことができ、保護シートとの接触によってセンサ構造体が破損してしまうことを抑制することもできる。
【0004】
また、特許文献2に記載の半導体装置の製造方法では、保護シートを真空吸引用の貫通孔が形成された凹部を有する治具に配置し、貫通穴を通じて真空吸引することで保護シートを凹部の形状に沿って変形させることでドーム状のキャップ部を形成する。また、センサ構造体が形成された半導体基板を用意し、キャップ部がセンサ構造体の位置と対応するようにして保護シートを半導体基板に貼り付ける。そして、治具を取り外したのち、保護シート側から半導体基板をダイシングすることでチップ化する。その後、再び真空吸引用の凹部が形成された治具を用意し、UV照射によって保護シートの粘着力を低下させると共に治具にて吸引し、保護シートをチップ化された半導体基板から剥離させる。このようにして、ダイシングカット時の水や研削屑からセンサ構造体を保護しつつ、半導体基板をチップ化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−245387号公報
【特許文献2】特許第4151164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2のいずれの方法においても、薄い保護シートのみが半導体基板に貼り付けられた状態とされることがあり、搬送時などにおいて保護シートのドーム状部分が元の形状に戻ったり撓んだりして、センサ構造体に接触してしまうことがある。また、ダイシング時には、薄い保護シートのみの状態でダイシングカット時に用いられる水が付着することになるため、より保護シートのドーム状部分が変形しやすく、センサ構造体に触れ易くなる。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、保護シートで覆った状態で半導体基板をダイシングカットしてチップ化する半導体装置の製造方法において、保護シートがセンサ構造体に触れないようにし、センサ構造体が破損することを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、保護シート(1)が配置される表面を有すると共に、該表面のうち半導体基板(11)に形成されたセンサ構造体(10)と対応する場所に凹部(2)が形成され、かつ、該凹部(2)内の真空吸引用の穴部(3)が形成された治具(4)を用意する工程と、治具(4)における凹部(2)が形成された面に対して裏面(1b)側を向けて保護シート(1)を配置したのち、穴部(3)を通じて凹部(2)内を真空吸引することで保護シート(1)を塑性変形させ、凹部(3)内にドーム状のキャップ部(5)を形成すると共に保護シート(1)を治具(4)に固定する治具固定工程と、治具(4)に保護シート(1)を固定した状態で、保護シート(1)の接着面(1a)に対して、該接着面(1a)側にセンサ構造体(10)が向けられた状態で半導体基板(11)を接着する接着工程と、保護シート(1)を治具(4)に固定したままの状態を維持し、半導体基板(11)のうちセンサ構造体(10)が備えられた一面と反対側となる裏面側からダイシングカットを行うことで、半導体基板(11)をチップ単位に分割するダイシング工程と、を含んでいることを特徴としている。
【0009】
また、治具(4)には、必要に応じて保護シート(1)の保持を強固にするための真空吸引用の穴(20)を形成しても良い。
【0010】
このように、治具(4)によって保護シート(1)のキャップ部(5)の形状を保持した状態を維持してダイシング工程を行うようにしている。このため、ダイシング工程の際に保護シート(1)が変形することを防止でき、保護シート(1)がセンサ構造体(10)に触れないようにできるため、センサ構造体(10)が破損することを防止することができる。そして、半導体基板(11)の裏面側からダイシングカットを行っているため、治具(4)を保護シート(1)から取り外さなくても、確実にダイシング工程を行うことが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、治具(4)を用意する工程では、治具(4)として、治具(4)における保護シート(1)が配置される表面のうち、ダイシングカットを行う際のスクライブラインと対応する場所に溝部(7)が形成されたものを用意し、ダイシング工程では、ダイシングカットをダイシングブレード(13)にて行うと共に、ダイシングブレード(13)の先端が溝部(7)に入り込むようにすることを特徴としている。
【0012】
このように、治具(4)のうちスクライブラインと対応する位置に溝部(7)を形成しておけば、ダイシング工程の際にダイシングブレード(13)が治具(4)に干渉して破損することを防止することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、治具(4)を用意する工程では、治具(4)として、治具(4)における保護シート(1)が配置される表面のうち、ダイシングカットを行う際のスクライブラインと対応する場所に溝部(7)が形成されており、かつ、溝部(7)内の真空吸引用の穴部(8)が形成されたものを用意し、治具固定工程では、凹部(2)内の真空吸引に加えて、穴部(8)を通じた溝部(7)内の真空吸引も行うことで、保護シート(1)のうちスクライブラインと対応する場所を凹ませた逃げ部(9)を形成し、ダイシング工程では、ダイシングカットをダイシングブレード(13)にて行うと共に、逃げ部(9)にてダイシングブレード(13)の先端を保護シート(1)に接触させないでダイシングカットを行うことを特徴としている。
【0014】
このように、治具(4)のうちスクライブラインと対応する位置に溝部(7)を形成し、治具(4)の溝部(7)内において保護シート(1)が真空引きされることで保護シート(1)が変形させられた逃げ部(9)が形成されるようにしている。これにより、ダイシングカット時にダイシングブレード(13)によって保護膜が切断されないようにできる。このため、保護シート(1)を半導体基板(11)から容易に剥離させることが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明では、保護シート(1)を用意する工程では、保護シート(1)として紫外光あるいは赤外光を照射させると粘着力が低下する粘着シートを用い、治具(4)を用意する工程では、治具(4)を光透過性の光透過性材料で構成し、ダイシング工程の後に、治具(4)側から紫外光あるいは赤外光を照射させることで、保護シート(1)の粘着力を低下させ、半導体基板(11)から保護シート(1)を剥がす工程を含んでいることを特徴としている。
【0016】
このように、治具(4)を光透過性のガラスもしくは樹脂等の光透過性材料で構成しておき、保護シート(1)として紫外光あるいは赤外光を照射させると粘着力が低下するような粘着シートを用い、治具(4)側から紫外光あるいは赤外光を照射することで保護シート(1)を剥せば、より容易に保護シート(1)を剥がすことができる。
【0017】
請求項5に記載の発明では、治具固定工程を終えた後、ダイシング工程を実施するためのダイシング装置に半導体基板(11)の搬送を行う搬送工程を含み、該搬送工程では、半導体基板(11)に対して接着された保護シート(1)のドーム形状を確実に維持したままで治具(4)に固定した状態で搬送を行うことを特徴としている。
【0018】
このように、治具固定工程からダイシング工程に至る過程において搬送工程があったとしても、保護シート(1)を治具(4)に固定したまま、かつ、ドーム形状を維持したまま搬送を行うことで、搬送工程中に保護シート(1)がセンサ構造体(10)に触れることを防止でき、センサ構造体(10)が破損することを防止することができる。
【0019】
請求項6または7に記載の発明は、上述した請求項2または3に記載の半導体装置の製造方法に用いると好適な治具に関するものである。このような治具を用いて、請求項2または3に記載の半導体装置の製造方法を実現することができる。
【0020】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造工程を示す概略断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態にかかる半導体装置の製造工程を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態にかかる半導体装置の製造工程を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0023】
(第1実施形態)
本実施形態は、本発明による半導体装置の製造方法を、半導体にて構成された可動部を有するセンサ構造体を含む半導体装置に適用したものとして説明する。このようなセンサ構造体としては、例えば、表面マイクロ加工型の加速度センサ、回転角度センサ、熱によって抵抗値を変化させる赤外線センサおよびDMD(反射投影ディジタルマイクロ鏡プロジェクタ装置)等がある。図1は、本実施形態にかかる半導体装置の製造工程を示す概略断面図であり、以下、本実施形態をこの製造工程順に説明していく。
【0024】
〔図1(a)に示す工程〕
まず、保護シート1を用意する。保護シート1としては、一面側が接着面1aとされる熱可塑性シートを用いており、例えばポリ塩化ビニルなどのビニールテープやポリオレフィン等を基材とするUV硬化性シート等を用いることができる。保護シート1の厚さとしては、加熱や吸引によって塑性変形する程度の厚みとされ、例えば100〜150μm程度としている。
【0025】
〔図1(b)に示す工程〕
次に、複数の凹部2と当該凹部2の各底面に形成された真空吸着用の穴部3を有する治具4を、ヒータブロック上(図示せず)に設置する。凹部2は、後述する図1(d)に示したウェハ状とされている半導体基板11に備えられた複数のセンサ構造体10と対応する場所それぞれに形成されている。穴部3は、治具4に形成された複数の凹部2それぞれの底部から垂直方向に形成されたのち、すべてが統合され、治具4の側面に形成された真空吸引口4aに繋げられている。そして、治具4の真空吸引口4aには図示しない真空引き装置が接続され、真空引き装置を作動させることにより、各穴部3を通じて複数の凹部2内の空気を真空引きできる構成とされている。また、治具4には、凹部2以外の場所にも必要に応じて真空吸引用の穴20が形成されており、この穴20を通じた真空吸引により、保護シート1の保持を強固にすることが可能となる。
【0026】
〔図1(c)に示す工程〕
次に、治具固定工程を行う。具体的には、ヒータブロックにより治具4を40〜200℃に加熱しておき、保護シート1の接着面1aを上にして、接着面1aとは反対側の裏面1bを治具4上に置き、この状態で真空引き装置を作動させることで真空吸着用の穴部3を通じて凹部2内の空気を吸引する。これにより、保護シート1が治具4の凹部2内に吸引されて凹まされる。このとき、治具4がヒータブロックによって加熱されているので、保護シート1が容易に塑性変形し、凹部2の形状に対応するキャップ部(保護キャップ部)5が保護シート1に形成される。そして、穴部3からの吸引力により保護シート1は治具4に固定される。また、治具4に穴20を形成してあれば、穴20を通じての真空吸引も行えるため、より保護シート1の保持を強固に行うことが可能となる。
【0027】
〔図1(d)に示す工程〕
次に、貼り合わせ工程を行う。この工程では、まず、可動部を含むセンサ構造体10を持つ半導体基板(シリコン基板等)11を用意する。ここでは、半導体基板11として、支持基板11aの上に埋込絶縁膜11bを介してSOI層11cが備えられたSOI基板を用いており、このSOI基板に対して周知の手法によってセンサ構造体10が形成されている。センサ構造体10は後でチップ化されるときの各チップ領域ごとに備えられている。このような半導体基板11を治具4上においてセンサ構造体10とキャップ部5ととが対向するように配置し、治具4に固定されている保護シート1の接着面1aと接着させる。ここでの接着は、接着剤等を用いて行っても良いし、予め保護シート1として感圧性の粘着シートを用いるようにすることで接着することも可能である。なお、保護シート1と半導体基板11との位置合わせは、保護シート1と半導体基板11とに各々アライメントキーを形成し、両者のアライメントキーが合うように貼り合わせたり、CCDカメラを用いて位置合わせを行う等により可能である。
【0028】
この貼り合わせ工程により、半導体基板11の一方の面に、キャップ部5を有する保護シート1が、治具4に固定されたまま接着される。なお、図1(d)中では、1個のチップ領域につきセンサ構造体10を1個しか図示していないが、複数個ある場合には各センサ構造体10毎にキャップ部5で覆われる構造としても良いし、複数個まとめて1つのキャップ部5で覆われる構造としても良い。
【0029】
〔図1(e)に示す工程〕
この後、上記ヒータブロックから半導体基板11および治具4を取り除き、ダイシング工程を行うダイシング装置に搬送する。このとき、治具4を半導体基板11および保護シート1から取り除かずに、保護シート1のキャップ部5の形状が治具4にて保持されたままの状態で搬送を行う。キャップ部5の形状の保持は、保護シート1と治具4との接触力によってもある程度可能である。しかしながら、真空引き装置による真空引きを続けながら搬送したり、もしくは、真空吸引口4aを蓋閉めして穴部3内の負圧を確保した状態で搬送すると、より確実にキャップ部5が治具4の凹部2内に接触した状態が保たれるため、このようにすることでより好適にキャップ部5の形状の保持を行うことができる。
【0030】
そして、ダイシング装置における真空吸引が行われるチャックテーブル12上に、半導体基板11を搭載する。このとき、半導体基板11を治具4と共にチャックテーブル12上に搭載し、半導体基板11の裏面、つまり保護シート1が接着された面と反対側の面を上方に向け、保護シート1を固定したままの治具4がチャックテーブル12の表面に配置されるようにする。この状態で、ダイシングブレード13にて、半導体基板11の裏面側からダイシングカットを行い、半導体基板11をチップ単位に分割することでチップ化される。なお、このとき保護シート1も切断されても構わないが、保護シート1が切断されないようにすると、この後保護シート1を半導体基板11から剥がすときに一繋がりのまま剥がせるため、保護シート1の剥離を容易に行える。
【0031】
その後の工程については図示しないが、ダイシング装置のチャックテーブル12から治具4と共にチップ化された半導体基板11を取り外し、治具4を保護シート1および半導体基板11から取り外す。そして、保護シート1を半導体基板11から剥がす。例えば、加熱装置などにおいて加熱することにより保護シート1の接着力を低下させるようにすると、半導体基板11から剥がし易くなる。このようにして、チップ化された半導体装置が完成する。
【0032】
以上説明した半導体装置の製造方法によれば、治具4によって保護シート1のキャップ部5の形状を保持した状態でダイシング装置への搬送およびダイシング工程を行うようにしている。このため、搬送時やダイシング工程の際に保護シート1が変形することを防止でき、保護シート1がセンサ構造体10に触れないようにできるため、センサ構造体10が破損することを防止することができる。そして、半導体基板11の裏面側からダイシングカットを行っているため、治具4を保護シート1から取り外さなくても、治具4がダイシングブレード13と干渉して邪魔になることなく、確実にダイシング工程を行うことが可能となる。
【0033】
また、通常、ダイシング工程において、チャックテーブル12上に半導体基板11を配置したときに、ダイシング時の位置ずれを防止するために、チャックテーブル12にて半導体基板11を真空吸引して位置固定する。このチャックテーブル12の真空吸引と治具4の真空吸引とを同じ真空引き装置にて行うことも考えられる。しかしながら、その場合、ダイシング時に使用する水吸引によってチャックテーブル12の真空引きが安定しないため、治具4の真空吸引も安定しなくなって保護シート1のキャップ部5の形状を保持できなくなる可能性がある。これに対し、本実施形態では、チャックテーブル12の真空吸引と治具4の真空吸引とを別々に行えるようにしている。このため、チャックテーブル12と治具4との間に水が浸入したとしても、治具4による保護シート1の吸引に影響を与えないため、治具4の真空吸引によって確実にキャップ部5の形状を保持しながらダイシング工程を行うことが可能となる。
【0034】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して治具4の構成を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0035】
図2は、本実施形態にかかる半導体装置の製造工程を示した概略断面図である。この図を参照して本実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。
【0036】
まず、図2(a)に示す工程において、図1(a)と同様の保護シート1を用意し、図2(b)に示す工程において、治具4を用意する。本実施形態では、治具4として、基本的には第1実施形態と同じ構造を有したものを用いているが、治具4のうちダイシング工程においてスクライブラインと対応する場所に溝部7が形成されたものを用意する。溝部7の幅はダイシングブレード13の幅よりも広くされ、溝部7の深さはダイシングカット時にダイシングブレード13の先端が干渉しない程度の深さとされている。
【0037】
そして、このような治具4を用いて、図2(c)〜(e)に示す工程において、第1実施形態の図1(c)〜(e)と同様の工程を行う。このようにすると、図2(e)のダイシング工程におけるダイシングカット時に、治具4に溝部7が形成してあるため、ダイシングブレード13を溝部7内に入り込ませることが可能となる。
【0038】
第1実施形態のように、溝部7が備えられていない治具4を用いる場合には、ダイシングブレード13の先端が治具4に干渉することを防ぐべく、ダイシングカット時におけるダイシングブレード13の高さ調整の精度や治具4の高さの精度が求められる。しかしながら、本実施形態のように溝部7が備えられた治具4を用いれば、溝部7内にダイシングブレード13の先端を逃がすことができるため、ダイシングブレード13が治具4に干渉して破損することを防止することができる。なお、ダイシング工程でのスクライブラインと溝部7の位置合わせについては、赤外線顕微鏡等を使用すれば明確に溝部7を見ることができることから、容易に行うことができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態では、治具4のうちスクライブラインと対応する位置に溝部7を形成している。これにより、ダイシング工程において、ダイシングブレード13が治具4に干渉して破損することを防止することができる。
【0040】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1、第2実施形態に対して治具4の構成を変更したものであり、その他に関しては第1、第2実施形態と同様であるため、第1、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0041】
図3は、本実施形態にかかる半導体装置の製造工程を示した概略断面図である。この図を参照して本実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。
【0042】
まず、図3(a)に示す工程において、図1(a)と同様の保護シート1を用意し、図2(b)に示す工程において、治具4を用意する。本実施形態では、治具4として、第2実施形態のようにスクライブラインと対応する場所に溝部7が形成されているものを用いているが、さらに、溝部7内を真空吸引するための穴部8が備えられたものを用いている。この穴部8は、凹部2に繋がる穴部3に接続され、真空吸引口4aを通じて真空吸引可能とされている。穴部8の数については任意であるが、スクライブラインと対応してライン状に配置される溝部7上において等間隔に備えられていると好ましい。
【0043】
そして、このような治具4を用いて、図3(c)に示す工程において、ヒータブロックにより治具4を40〜200℃に加熱した状態で穴部3、8を通じて保護シート1を真空引きすることにより、保護シート1を塑性変形させる。これにより、凹部2内においてキャップ部5が構成されると共に、溝部7内においても保護シート1がドーム状とされることで逃げ部9が形成される。この逃げ部9は、ダイシング時にダイシングブレード13の先端が保護シート1に接触しないようにするものである。このため、逃げ部9の幅、すなわち溝部7の両側面における保護シート1間の距離はダイシングブレード13の幅よりも大きくされている。また、逃げ部9の深さ、すなわち保護シート1のうち溝部7の底面上に位置する部分と溝部7や凹部2以外の部分の上に位置する部分との高さの差が、ダイシングカット時にダイシングブレード13の先端と干渉しない程度の深さとされている。なお、溝部7と保護シート1とは必ずしも密着していなくても良く、形状を保持できる程度に保護シート1が変形していれば良い。この場合には、保護シート1の変形度合いを考慮して溝部7の寸法を考慮すればよい。
【0044】
この後、図3(d)、(e)に示す工程において、第1実施形態の図1(d)、(e)と同様の工程を行う。図3(e)のダイシング工程では、逃げ部9の形状が保持されるように、真空引き装置による真空引きを行うか、もしくは、真空吸引口4aを蓋締めすることで負圧を保ちつつ行う。このとき、保護シート1が変形させられた逃げ部9が形成されているため、ダイシングブレード13の先端が保護シート1と接しないようにできる。したがって、この後、半導体基板11を保護シート1から剥がしてチップ単位に分割した半導体装置とするときに、保護シート1が切断されていない状態にできるため、保護シート1の剥離工程が容易となる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態では、治具4のうちスクライブラインと対応する位置に溝部7を形成し、治具4の溝部7内において保護シート1が真空引きされることで保護シート1が変形させられた逃げ部9が形成されるようにしている。これにより、ダイシングカット時にダイシングブレード13によって保護膜が切断されないようにできる。このため、保護シート1を半導体基板11から容易に剥離させることが可能となる。特に、保護シート1が分断されずに繋がっている状態であるため、加熱などを行うことで保護シート1の粘着力を低下させれば、より容易に保護シート1を半導体基板11から剥離させられる。
【0046】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、加熱装置などを用いて保護シート1の接着力を低下させて半導体基板11から剥がす例を示した。しかしながら、治具4を光透過性のガラスもしくは樹脂等の光透過性材料で構成しておき、保護シート1として紫外光あるいは赤外光を照射させると粘着力が低下するような粘着シートを用い、治具4側から紫外光あるいは赤外光を照射することで保護シート1を剥せば、より容易に保護シート1を剥がすことができる。
【0047】
また、上記実施形態では、半導体基板11としてSOI基板を用いる場合を例に挙げて説明したが、センサ構造体が形成された半導体基板11であれば、どのようなものに対しても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 保護シート
1a 接着面
2 凹部
3 穴部
4 治具
4a 真空吸引口
5 キャップ部
7 溝部
8 穴部
9 逃げ部
10 センサ構造体
11 半導体基板
12 チャックテーブル
13 ダイシングブレード
20 保護シート固定補強用の穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側にセンサ構造体(10)が備えられた半導体基板(11)の前記一面側を保護シート(1)で覆ったのち、前記半導体基板(11)をダイシングカットしてチップ化する半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板(11)を覆う面となる接着面(1a)とは反対側の裏面(1b)を有する前記保護シート(1)を用意する工程と、
前記保護シート(1)が配置される表面を有すると共に、該表面のうち前記半導体基板(11)に形成された前記センサ構造体(10)と対応する場所に凹部(2)が形成され、かつ、該凹部(2)内の真空吸引用の穴部(3)が形成された治具(4)を用意する工程と、
前記治具(4)における前記凹部(2)が形成された面に対して前記裏面(1b)側を向けて前記保護シート(1)を配置したのち、前記穴部(3)を通じて前記凹部(2)内を真空吸引することで前記保護シート(1)を塑性変形させ、前記凹部(3)内にドーム状のキャップ部(5)を形成すると共に前記保護シート(1)を前記治具(4)に固定する治具固定工程と、
前記治具(4)に前記保護シート(1)を固定した状態で、前記保護シート(1)の前記接着面(1a)に対して、該接着面(1a)側に前記センサ構造体(10)が向けられた状態で前記半導体基板(11)を接着する接着工程と、
前記保護シート(1)を前記治具(4)に固定したままの状態を維持し、前記半導体基板(11)のうち前記センサ構造体(10)が備えられた一面と反対側となる裏面側からダイシングカットを行うことで、前記半導体基板(11)をチップ単位に分割するダイシング工程と、を含んでいることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記治具(4)を用意する工程では、前記治具(4)として、前記治具(4)における前記保護シート(1)が配置される表面のうち、前記ダイシングカットを行う際のスクライブラインと対応する場所に溝部(7)が形成されたものを用意し、
前記ダイシング工程では、前記ダイシングカットをダイシングブレード(13)にて行うと共に、前記ダイシングブレード(13)の先端が前記溝部(7)に入り込むようにすることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記治具(4)を用意する工程では、前記治具(4)として、前記治具(4)における前記保護シート(1)が配置される表面のうち、前記ダイシングカットを行う際のスクライブラインと対応する場所に溝部(7)が形成されており、かつ、前記溝部(7)内の真空吸引用の穴部(8)が形成されたものを用意し、
前記治具固定工程では、前記凹部(2)内の真空吸引に加えて、前記穴部(8)を通じた前記溝部(7)内の真空吸引も行うことで、前記保護シート(1)のうち前記スクライブラインと対応する場所を凹ませた逃げ部(9)を形成し、
前記ダイシング工程では、前記ダイシングカットをダイシングブレード(13)にて行うと共に、前記逃げ部(9)にて前記ダイシングブレード(13)の先端が前記保護シート(1)と接触しないで前記ダイシングカットを行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記保護シート(1)を用意する工程では、前記保護シート(1)として紫外光あるいは赤外光を照射させると粘着力が低下する粘着シートを用い、
前記治具(4)を用意する工程では、前記治具(4)を光透過性の光透過性材料で構成し、
前記ダイシング工程の後に、前記治具(4)側から紫外光あるいは赤外光を照射させることで、前記保護シート(1)の粘着力を低下させ、前記半導体基板(11)から前記保護シート(1)を剥がす工程を含んでいることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記治具固定工程を終えた後、前記ダイシング工程を実施するためのダイシング装置に前記半導体基板(11)の搬送を行う搬送工程を含み、該搬送工程では、前記半導体基板(11)に対して接着された前記保護シート(1)を前記治具(4)に固定したまま前記搬送を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
一面側にセンサ構造体(10)が備えられた半導体基板(11)の前記一面側を保護シート(1)で覆ったのち、前記半導体基板(11)をダイシングカットしてチップ化する半導体装置の製造に用いられる治具であって、
前記保護シート(1)が配置される表面を有すると共に、該表面のうち前記半導体基板(11)に形成された前記センサ構造体(10)と対応する場所に凹部(2)が形成され、かつ、該凹部(2)内の真空吸引用の穴部(3)が形成されており、さらに前記保護シート(1)が配置される表面のうち前記ダイシングカットを行う際のスクライブラインと対応する場所に溝部(7)が形成されていることを特徴とする半導体装置の製造に用いられる治具。
【請求項7】
一面側にセンサ構造体(10)が備えられた半導体基板(11)の前記一面側を保護シート(1)で覆ったのち、前記半導体基板(11)をダイシングカットしてチップ化する半導体装置の製造に用いられる治具であって、
前記保護シート(1)が配置される表面を有すると共に、該表面のうち前記半導体基板(11)に形成された前記センサ構造体(10)と対応する場所に凹部(2)が形成され、かつ、該凹部(2)内の真空吸引用の穴部(3)が形成されており、さらに前記保護シート(1)が配置される表面のうち前記ダイシングカットを行う際のスクライブラインと対応する場所に溝部(7)が形成され、かつ、前記溝部(7)内の真空吸引用の穴部(8)が形成されていることを特徴とする半導体装置の製造に用いられる治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−272627(P2010−272627A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121916(P2009−121916)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】