説明

半導体装置の製造方法

【課題】半田接続部に生じる熱応力の緩和効果を維持しつつ、半田接続部の耐疲労性を向上させることを可能にした半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態においては、配線基板2の接続パッド4上にSn合金からなる予備半田層10を形成する。半導体チップ2の電極パッド5上にSn合金からなる半田バンプ13を形成する。予備半田層10と半田バンプ13とを位置合せしつつ接触させた後、予備半田層10及び半田バンプ13の融点以上の温度に加熱して溶融させ、Ag及びCuを含むSn合金からなる半田接続部6を形成する。予備半田層10と半田バンプ13のうち、予備半田層10のみをAgを含むSn合金で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの多ピン化、ファインピッチ化、信号速度の高速化に対応するために、配線・接続長が短い実装方式としてフリップチップ(FC)接続を適用した半導体装置が使用されている。FC接続に使用される半導体チップは、電極パッド上にバリアメタル層を介して形成された半田バンプを有している。半導体チップが接続される配線基板は、半導体チップの電極パッドと対応する接続パッドと、接続パッド上に直接又はバリアメタル層を介して形成された予備半田層とを有している。
【0003】
半導体チップに形成される半田バンプや配線基板に形成される予備半田層には、Pbを実質的に含まないPbフリー半田が使用されている。Pbフリー半田としては、例えばSn−Ag合金、Sn−Cu合金、Sn−Ag−Cu合金、Sn−Bi合金等のSn合金が使用されている。バリアメタル層は主にNiを含み、半田バンプや予備半田層の組成等に応じて選択される。バリアメタル層としては、例えばNi/TiやNi/Cu/Ti等の積層膜が適用されている。
【0004】
Sn−Ag合金中のAgは半田を硬くするため、FC接続後の半田接続部(半田バンプと予備半田層との溶融固化体)による接続強度を向上させるという利点を有する。その反面、Agは半田接続部のクリープ性を低下させるため、FC接続等の際に半導体チップと配線基板との熱膨張係数の差に基づいて半田バンプに生じる熱応力を十分に緩和することができない。このため、半導体チップにクラックや層間剥離が生じやすくなる。特に、半導体チップの層間絶縁膜に配線間容量の低減が可能な低誘電率絶縁膜(low−k膜)を用いた場合、low−k膜はそれ自体の強度や他の膜との接着強度が低いため、クラックや層間剥離が生じやすくなる。
【0005】
Sn−Cu合金中のCuは半田のクリープ性を向上させ、半田バンプに生じる熱応力を緩和させる効果を有する。このため、半導体チップのクラックや層間剥離、特にlow−k膜のクラックや層間剥離を抑制することが可能となる。その反面、半田バンプに生じる熱応力を緩和する際に、半田内の結晶粒が成長して半田が脆化しやすい。これによって、半田接続部の耐疲労性を低下させてしまう。これは半導体装置に熱サイクル試験(TCT)を施した際に、半田接続部にクラック等を生じさせる原因となる。
【0006】
半導体装置(半導体パッケージ)と配線基板との接続構造において、Sn−Au−Ag−Cu合金で形成された半田接続部が知られている。半田バンプは、一般的に合金の電解めっきにより形成されるが、合金めっき液は高価であり、また寿命も短いため、半田バンプの形成コストが増加する。半田バンプの形成に低コストの積層めっき(合金の各構成元素のめっき膜の積層)を適用することも検討されているが、Agめっきは凹形状に形成され、膜厚ばらつきが大きいため、数%程度の微量濃度を制御することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−330678号公報
【特許文献2】特開2003−203941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、半田接続部に生じる熱応力の緩和効果を維持しつつ、半田接続部の耐疲労性を向上させることを可能にした半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の半導体装置の製造方法は、配線基板の接続パッド上にSn合金からなる予備半田層を形成する工程と、半導体チップの電極パッド上にSn合金からなる半田バンプを形成する工程と、予備半田層と半田バンプとを位置合せしつつ接触させる工程と、予備半田層及び半田バンプの融点以上の温度に加熱して溶融させ、Ag及びCuを含有するSn合金からなる半田接続部を形成して、配線基板の接続パッドと半導体チップの電極パッドとを接続する工程とを具備する。予備半田層と半田バンプのうち、予備半田層のみがAgを含有するSn合金からなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態の製造方法を適用して作製した半導体装置を示す断面図である。
【図2】実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態の半導体装置の製造方法について、図面を参照して説明する。図1は実施形態の製造方法を適用して作製した半導体装置の構成を示す断面図である。同図に示す半導体装置1は、配線基板2とその上に実装された半導体チップ3とを具備している。半導体装置1は、配線基板2の接続パッド4と半導体チップ3の電極パッド5とを半田接続部6で電気的及び機械的に接続した構造、いわゆるフリップチップ(FC)接続構造を有している。半田接続部6は半導体チップ3の電極パッド5と配線基板2の接続パッド4にそれぞれ電気的に接続されている。
【0012】
半導体チップ3は、半導体基板の素子形成面(回路形成面)に設けられた複数の電極パッド5を有している。図1では図示を省略したが、半導体チップ3はSi基板等の半導体基板と、その上に形成された半導体素子部と、金属配線と層間絶縁膜とで構成された回路部とを有している。半導体チップ3の回路部には、例えばCu配線と比誘電率が3.5以下のSiOF膜、SiOC膜、有機シリカ系膜、これらの多孔質膜等からなる低誘電率絶縁膜(low−k膜)とが用いられている。電極パッド5は、回路部の金属配線と電気的に接続されており、例えばCuパッドとAlパッドとの積層体で構成されている。
【0013】
半導体チップ3が搭載される配線基板2は、有機樹脂基板のような絶縁基板の内部や表面に配線網を設けたものである。配線基板2の具体例としては、ガラス−エポキシ樹脂やBT樹脂(ビスマレイミド・トリアジン樹脂)等からなる絶縁性樹脂基板に配線網を設けたプリント配線板が挙げられる。配線基板2は、チップ搭載面となる第1の面2aと、それとは反対側の第2の面2bとを有している。
【0014】
配線基板2の第1の面2aには、複数の接続パッド4が配列されている。複数の接続パッド4は半導体チップ3の電極パッド5の配列形状に応じて配置されている。図1では図示を省略したが、配線基板2の第2の面2bには半導体装置1の外部接続端子が設けられる。外部接続端子は配線基板2の配線網を介して接続パッド4と電気的に接続される。半導体装置1をBGAパッケージとして使用する場合には、外部接続端子として半田ボール等の金属ボールが適用される。半導体装置1をLGAパッケージとして使用する場合には、外部接続端子として金属ランドが適用される。
【0015】
配線基板2の接続パッド4と半導体チップ3の電極パッド5とは、半田接続部6で電気的及び機械的に接続されている。半田接続部6は、半導体チップ3の電極パッド5上にバリアメタル層(図1では図示せず)を介して形成された半田バンプと、配線基板2の接続パッド4上に必要に応じてバリアメタル層(図1では図示せず)を介して形成された予備半田層とを接触させた後、半田バンプ及び予備半田層の融点以上の温度に加熱して溶融させることにより形成されたものである。半導体チップ3は配線基板2にFC接続を適用して実装されている。半導体装置1はFC接続部として半田接続部6を有している。
【0016】
配線基板2と半導体チップ3との間の隙間には、アンダーフィル樹脂7が充填されている。アンダーフィル樹脂7は熱硬化性樹脂からなり、キュア処理(熱硬化処理)により硬化されている。このようなアンダーフィル樹脂7によって、半田バンプ6は保護されている。アンダーフィル樹脂7には、例えばエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。さらに、配線基板2上には封止樹脂層8が形成されている。半導体チップ3は封止樹脂層8で覆われている。
【0017】
次に、上述した半導体装置1の製造工程、すなわち配線基板2と半導体チップ3とのFC接続工程について、図2を参照して説明する。図2(a)に示すように、配線基板2の接続パッド(Cuパッド)4上にバリアメタル層9を介して予備半田層10を形成する。予備半田層10は後に詳述するように、接続パッド4上に直接形成してもよい。なお、図中の符号11はソルダレジスト層である。一方、半導体チップ3の電極パッド(Cu/Alパッド)5上にバリアメタル層12を介して半田バンプ13を形成する。予備半田層10及び半田バンプ13は、Sn合金(Sn基合金)で形成される。半導体チップ3のバリアメタル層12としては、Ni/Ti積層膜、Ni/Cu/Ti積層膜、Pd/Ni/Ti積層膜等が適用される。
【0018】
予備半田層10を有する配線基板2上に必要に応じて接続用のフラックスを塗布した後、配線基板2上に半田バンプ13を有する半導体チップ3を配置する。半導体チップ3は、電極パッド5を配線基板2の接続パッド4に対して位置合せした後、電極パッド5上に設けられた半田バンプ13が接続パッド4上に設けられた予備半田層10と接触するように配置される。半田バンプ13及び予備半田層10の融点以上の温度に加熱し、半田バンプ13及び予備半田層10を溶融させることで、図2(b)に示すように配線基板2の接続パッド4と半導体チップ3の電極パッド5とを接続する半田接続部6を形成する。配線基板2と半導体チップ3とは半田接続部6を介して機械的及び電気的に接続される。
【0019】
配線基板2と半導体チップ3との間には、半田接続部6の高さに基づいて隙間が生じる。このような配線基板2と半導体チップ3との間の隙間に、アンダーフィル樹脂7となる熱硬化性樹脂組成物(液状樹脂)を注入し、これをキュア処理して硬化させることによって、熱硬化された熱硬化性樹脂からなるアンダーフィル樹脂7を形成する。このようにして、アンダーフィル樹脂7で半田接続部6を保護しつつ、半導体チップ3を配線基板2に固定することによって、図1に示した半導体装置1が作製される。配線基板2の第2の面2bには必要に応じて外部接続端子が形成される。
【0020】
予備半田層10及び半田バンプ13の形成材料には、半田接続部6をAg及びCuを含有するSn合金で構成することが可能なSn合金が適用される。このようなSn合金で半田接続部6を構成することで、半田接続部6に生じる熱応力を緩和しつつ、半田接続部6の耐疲労性を向上させることができる。すなわち、半田接続部6を構成するSn合金にCuを含有させることで、半田接続部6のクリープ性が向上し、FC接続時やTCT時に半田接続部6に生じる熱応力を緩和することができる。従って、半導体チップ3のクラックや層間剥離、特にlow−k膜のクラックや層間剥離を抑制することが可能となる。
【0021】
上記した熱応力の緩和効果を得る上で、半田接続部6を構成するSn合金は0.3質量%以上のCuを含有することが好ましい。Cuの含有量が0.3質量%未満であると半田接続部6のクリープ性を十分に向上させることができないおそれがある。Cuの含有量は1質量%以下とすることが好ましい。ただし、半田接続部6を構成するSn合金がCuのみを含有する場合には、半田接続部6に生じる熱応力を緩和する際に、Sn合金内の結晶粒が成長して脆化し、半田接続部6の耐疲労性が低下してしまう。そこで、半田接続部6を構成するSn合金はCuに加えてAgを含有している。
【0022】
半田接続部6を構成するSn合金にCuと共にAgを含有させることによって、Sn合金内の結晶粒の成長が抑制される。従って、Cuに基づいて半田接続部6のクリープ性を向上させた上で、半田接続部6の耐疲労性を高めることができる。これによって、TCTにおける半田接続部6のクラックや破壊等を抑制することが可能となる。なお、Cuの含有量が1質量%を超えると、Cuと共に適量のAgを含有させた場合においても、半田接続部6の耐疲労性を十分に高めることができないおそれがある。このため、Sn合金のCuの含有量は1質量%以下とすることが好ましい。
【0023】
半田接続部6の耐疲労性を向上させる上で、半田接続部6を構成するSn合金は0.2質量%以上のAgを含有することが好ましい。Agの含有量が0.2質量%未満であると半田接続部6の耐疲労性を十分に向上させることができない。ただし、Sn合金のAg含有量が多すぎると、半田接続部6が硬くなりすぎてクリープ性が低下する。このため、半田接続部6を構成するSn合金のAg含有量は1.5質量%以下とすることが好ましい。さらに、Sn合金のAg含有量は1質量%未満とすることがより好ましい。特に、後に詳述するように、バリアメタル層9、12にNi膜を適用する場合には、Sn合金のAg含有量を1質量%未満とすることが望ましい。
【0024】
半田接続部6は、0.2〜1.5質量%の範囲のAgと0.3〜1質量%の範囲のCuとを含有し、残部が実質的にSnからなるSn合金(第1のSn基合金)で形成することが好ましい。さらに、半田接続部6は、0.2質量%以上1.0質量%未満の範囲のAgと0.3〜1質量%の範囲のCuとを含有し、残部が実質的にSnからなるSn合金(第2のSn基合金)で形成することがより好ましい。第2のSn基合金はバリアメタル層9、12の少なくとも一方がNi膜を有する場合に有効である。
【0025】
上述したAg及びCuを含有するSn合金で半田接続部6を形成するにあって、Agは予備半田層10のみに含有させる。すなわち、予備半田層10をSn−Ag合金又はSn−Ag−Cu合金で形成し、半田バンプ13をSn−Cu合金で形成する。これによって、半田接続部6を構成するSn合金のCu濃度及びAg濃度が制御しやすくなるため、クリープ性と耐疲労性とを両立させた半田接続部6を再現性よく得ることが可能となる。
【0026】
予備半田層10は、0.4〜6質量%の範囲のAgを含有し、残部が実質的にSnからなるSn合金(Sn基合金)、又は0.4〜6質量%の範囲のAgと0.5〜1質量%の範囲のCuとを含有し、残部が実質的にSnからなるSn合金(Sn基合金)で形成することが好ましい。Sn合金のAg含有量は0.4〜4質量%の範囲がより好ましい。半田バンプ13は、0.5〜1質量%の範囲のCuを含有し、残部が実質的にSnからなるSn合金(Sn基合金)で形成することが好ましい。
【0027】
予備半田層10や半田バンプ13を形成するSn合金の組成は、半田接続部6を構成するSn合金の目的組成や予備半田層10や半田バンプ13の形状に応じて適宜に設定される。半田接続部6を構成するSn合金の組成は、基本的には予備半田層10と半田バンプ13の合金組成や体積比に基づくものである。半田バンプ13の体積は、その厚さと電極パッド(Cu/Alパッド)5上に形成するバリアメタル層12のサイズとによって決まる。予備半田層10の体積は、接続パッド(Cuパッド)4上のソルダレジスト層11による開口サイズや半田印刷マスクのデザイン(厚さと開口径)等によって決まる。
【0028】
半田バンプ13と予備半田層10との体積比が2:1である場合、例えば半田バンプ13を0.75質量%のCuを含有するSn合金で形成し、予備半田層10を3.5質量%のAgを含有するSn合金で形成する(実施例1)と、FC接続後の半田接続部6の合金組成はSn−1.2質量%Ag−0.7質量%Cu程度となる。FC接続後の半田接続部6のAg濃度は、半田バンプ13と予備半田層10の体積比から概ね1/3となる。しかし、Cu濃度は両者の体積比のみでは決まらない。これは半田接続部6中にCuパッド(接続パッド)4からCuが拡散するからである。
【0029】
Cuパッド4上にNi膜等のバリアメタル層9が存在していない場合、配線基板2のCuパッド4上に予備半田層10を形成する際に、Sn−Ag合金からなる予備半田層10中にCuが拡散する。このため、FC接続後の半田接続部6のCu濃度は、半田バンプ13と予備半田層10の体積比で決まる濃度(0.5質量%)よりも多くなる傾向にある。実施例1の半田バンプ13と予備半田層10との組み合わせにおいては、半田接続部6を構成するSn合金のCu濃度は0.7質量%程度となる。
【0030】
ただし、配線基板2のCuパッド4上にNi膜等のバリアメタル層9を形成しなくても、金属拡散によりCu−Sn合金であるCu6Sn5層が形成されると、これがバリアのように作用するため、半田接続部6へのCuの拡散が抑制される。例えば、半田バンプと予備半田層の双方にSn−0.75質量%Cu半田(共晶半田)を使用しても、FC接続後の半田接続部のCu濃度は1質量%未満である。逆に、Cuを含まないSn−Ag合金系半田を双方に使用した場合でも、半田接続部のCu濃度は0.3質量%程度となる。
【0031】
実施例1と同様に、半田バンプ13と予備半田層10の体積比が2:1である場合に、半田バンプ13を0.75質量%のCuを含有するSn合金で形成し、予備半田層10を3.0質量%のAgと0.5質量%のCuを含有するSn合金で形成する(実施例2)と、FC接続後の半田接続部6の合金組成はSn−1.0質量%Ag−0.8質量%Cu程度となる。実施例1と比較して、予備半田層10をSn−Ag−Cu合金で形成しているために、半田接続部6を構成するSn合金のCu濃度の差異は小さい。
【0032】
さらに、Sn−Cu合金からなる半田バンプ13は、SnめっきとCuめっきの積層めっき、又はSn−Cu合金ボール(Sn−Cu合金からなる半田ボール)の搭載により形成することが好ましい。これによって、半田バンプ13の形成コスト、ひいては半導体装置1の製造コストを低減することが可能となる。Agを含有するSn合金で半田バンプ13を形成する場合に積層めっきを適用しようとすると、Agめっきは凹形状に形成され、膜厚ばらつきが大きいため、数%程度の微量濃度を制御することが困難となる。このため、合金めっき液を用いた電解めっきを適用する必要があるが、合金めっきは前述したように半田バンプの形成コストを増加させる要因となる。
【0033】
上述した実施例1及び実施例2の条件(半田バンプ13及び予備半田層10の合金組成と体積比、半田接続部6の合金組成)に基づいて、半導体チップ3を配線基板2にFC接続し、さらに配線基板2と半導体チップ3との間にアンダーフィル樹脂7を充填したサンプルを用いて、−55℃×20分→常温(25℃)×20分→125℃×20分を1サイクルとするTCTを実施した。実施例1及び実施例2の半導体装置1は、いずれも信頼性良否判定サイクル後においてもlow−k膜の剥離や半田接続部6のクラック、破壊等の発生が認められなかった。さらに、半田バンプ13の形成に積層めっきを適用しているため、半田バンプ13の形成コストを低減することが可能であった。
【0034】
一方、3.5質量%のAgを含有するSn合金からなる半田バンプを有する半導体チップを、0.7質量%のCuを含有するSn合金(比較例1)、1.0質量%のAgと0.5質量%のCuを含有するSn合金(比較例2)からなる予備半田層を有する配線基板にFC接続し、さらに配線基板と半導体チップとの間にアンダーフィル樹脂を充填したサンプルを用いて、実施例と同様にしてTCTを実施した。その結果、比較例1及び比較例2においては、信頼性良否判定サイクル後にlow−k膜の剥離が認められた。
【0035】
さらに、0.7質量%のCuを含有するSn合金からなる半田バンプを有する半導体チップを、0.7質量%のCuを含有するSn合金からなる予備半田層を有する配線基板にFC接続し、さらに配線基板と半導体チップとの間にアンダーフィル樹脂を充填したサンプル(比較例3)を用いて、実施例と同様にしてTCTを実施した。その結果、比較例3においては信頼性良否判定サイクル後に半田クラックが認められた。
【0036】
半田接続部6を構成するSn合金の組成は、バリアメタル層9、12の構成に応じても適宜に設定することが好ましい。なお、バリアメタル層9、12を適用しない例については前述した通りである。例えば、実施例2と同組成のSn合金で半田バンプ13を形成し、配線基板2のCuパッド4上にAu/Ni積層膜(積層めっき膜)からなるバリアメタル層9を介して、実施例2と同組成のSn合金で予備半田層10を形成する(実施例3)と、FC接続後の半田接続部6の合金組成は実施例2と同様にSn−1.0質量%Ag−0.8質量%Cu程度となる。バリアメタル層9中のNi膜は、半田接続部6へのCuの拡散を阻止するため、半田接続部6のCu濃度の制御性が向上する。
【0037】
ただし、実施例2と比較して、FC接続時に半田バンプ13に生じる熱応力が増大する。これは配線基板2のCuパッド4上に形成したバリアメタル層9からNiが半田接続部6に拡散するためである。NiはAgと類似の特性を有し、半田の硬度を高める一方で、クリープ性を低下させる。そのため、FC接続後の半田接続部6のAg濃度が1質量%以上となるような構成で、Cuパッド4上にバリアメタル層9としてAu/Ni積層膜を形成すると、半田接続部6にNiが拡散することによって、FC接続時やTCT時にlow−k膜に剥離が生じるおそれが高まる。
【0038】
バリアメタル層9としてAu/Ni積層膜等を適用する場合、言い換えると半田接続部6にNiが拡散するようなNi膜を有するバリアメタル層9を適用する場合には、Ag濃度が1質量%未満のSn合金で半田接続部6を構成することが好ましい。0.2質量%以上1.0質量%未満の範囲のAgと0.3〜1質量%の範囲のCuとを含有するSn合金からなる半田接続部6(実施例4)によれば、Niの拡散によるクリープ性の低下を抑制することができる。NiはAgと同様に作用するため、Ag濃度が1質量%未満であっても耐疲労特性を高めることができる。半導体チップ3のバリアメタル層12が半田接続部6中にNiが拡散するようなNi膜を有する場合も同様であり、半田接続部6をAg濃度が1質量%未満のSn合金で構成することが好ましい。
【0039】
さらに、バリアメタル層9としてAu/Pd/Ni積層膜等を有する配線基板2を用いた構成(実施例5)も有効である。バリアメタル層9がNi膜より予備半田層10に近い側に配置されたPd膜を有する場合には、Pd膜がNiの半田接続部6への拡散を阻止するため、バリアメタル層9を適用しない場合と同様なAg濃度を適用することができる。また、Cuパッド4からのCuの拡散はバリアメタル層9中のNi膜で阻止されるため、半田接続部6のCu濃度をより精度よく制御することができる。
【0040】
バリアメタル層12としてPd/Ni/Ti積層膜等を有する半導体チップ3を用いた構成(実施例6)も同様である。バリアメタル層12がNi膜より半田バンプ13に近い側に配置されたPd膜を有する場合には、Pd膜がNiの半田接続部6への拡散を阻止するため、半田接続部6にAg濃度が1.5質量%以下のSn合金を適用することができる。すなわち、半田接続部6に0.2〜1.5質量%の範囲のAgと0.3〜1質量%の範囲のCuとを含有するSn合金を適用することができる。
【0041】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1…半導体装置、2…配線基板、3…半導体チップ、4…接続パッド、5…電極パッド、6…半田接続部、7…アンダーフィル樹脂、8…封止樹脂層、9,12…アンダーフィル樹脂、10…予備半田層、13…半田バンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板の接続パッド上にSn合金からなる予備半田層を形成する工程と、
半導体チップの電極パッド上にSn合金からなる半田バンプを形成する工程と、
前記予備半田層と前記半田バンプとを位置合せしつつ接触させる工程と、
前記予備半田層及び前記半田バンプの融点以上の温度に加熱して溶融させ、Ag及びCuを含むSn合金からなる半田接続部を形成して、前記配線基板の前記接続パッドと前記半導体チップの前記電極パッドとを接続する工程とを具備し、
前記予備半田層と前記半田バンプのうち、前記予備半田層のみがAgを含むSn合金からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記予備半田層はSn−Ag合金又はSn−Ag−Cu合金からなり、前記半田バンプはSn−Cu合金からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置の製造方法において、
前記半田バンプを、SnめっきとCuめっきの積層めっき又はSn−Cu合金ボールの搭載により形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法において、
前記半田接続部は、0.2質量%以上1.5質量%以下の範囲のAg及び0.3質量%以上1質量%以下の範囲のCuを含むSn合金からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法において、
前記半田バンプは前記電極パッド上に第1のバリアメタル層を介して形成されていると共に、前記予備半田層は前記接続パッド上に第2のバリアメタル層を介して形成されており、
前記第1のバリアメタル層及び前記第2のバリアメタル層の少なくとも一方はNi膜を有し、
かつ、前記半田接続部は0.2質量%以上1質量%未満の範囲のAg及び0.3質量%以上1質量%以下の範囲のCuを含むSn合金からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−222986(P2011−222986A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64343(P2011−64343)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】