説明

半導体装置の製造方法

【課題】基板間におけるボイドの発生を抑制する半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】
半導体装置の製造方法は、一定のピッチで配列したバンプ電極14から構成されるバンプ電極群12であって、第2の方向T2に沿ったバンプ電極の数より第1の方向T1に沿ったバンプ電極の数の方が少ないバンプ電極群12を備えた第1の基板10と、第2の基板と、を準備する工程と、第1の基板10と第2の基板との間に隙間が形成されるように第1の基板10と第2の基板とをバンプ電極14を介して接合する工程と、第1の基板10と第2の基板との間の隙間に、バンプ電極群12の第2の方向T2に沿って封止樹脂34を流動させて、封止樹脂34で当該隙間を充填する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板間の隙間に封止樹脂が形成された半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化および高機能化に伴って、貫通電極を有する複数の半導体チップが積層されたCoC型の半導体装置が提案されている。CoC型の半導体装置では、通常、各々の半導体チップ間に封止樹脂が配設されている。特開2007−36184号(以下、特許文献1と呼ぶ。)は、このような、CoC型の半導体装置およびその製造方法を開示している。
【0003】
特許文献1には、複数のチップをバンプ電極を介して接合し、チップ間の隙間に液状の封止樹脂を注入することも記載されている。封止樹脂は、一般に、液滴吐出法により、半導体チップの側方から半導体チップ間の隙間に注入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−36184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板、例えば半導体チップ間の隙間に封止樹脂を注入する際、例えばアンダーフィル材のような封止樹脂が形成されない領域、つまりボイドが基板間の隙間に生じることがある。これは、バンプ電極が存在する領域と、バンプ電極が存在しない領域との間で、封止樹脂の流速差が生じることに起因する。バンプ電極が存在しない領域では、封止樹脂が、下流に向けて早く移動し、バンプ電極が存在する領域の下流側の領域に回り込む。このように、封止樹脂の回り込みによって、バンプ電極が存在する領域付近に封止樹脂によって取り囲まれた空間、つまりボイドが生じる。
【0006】
特に、バンプ電極間のピッチが狭くなるほど封止樹脂の流速差が大きくなり、ボイドが発生し易くなる。
【0007】
封止樹脂を基板間に流動させた後の工程、例えば封止樹脂を熱硬化させる工程などでは、熱膨張や熱収縮によって基板に応力が生じる。上記のボイドは、バンプ電極の接合部近傍の、熱応力に対する耐久性を低下させる。これにより、バンプ電極が破壊される虞があり、半導体装置の信頼性が低下することがある。
【0008】
したがって、基板間におけるボイドの発生を抑制することができる半導体装置の製造方法を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様における半導体装置の製造方法は、一定のピッチで配列したバンプ電極から構成されるバンプ電極群であって、第1の方向に沿ったバンプ電極の数より、第1の方向に直交する第2の方向に沿ったバンプ電極の数の方が少ないバンプ電極群を備えた第1の基板と、第2の基板と、を準備する工程と、第1の基板と第2の基板との間に隙間が形成されるように第1の基板と第2の基板とをバンプ電極を介して接合する工程と、第1の基板と第2の基板との間の隙間に、バンプ電極群の第2の方向に沿って封止樹脂を流動させて、封止樹脂で隙間を充填する工程と、を有する。
【0010】
この製造方法によれば、バンプ電極が並んでいる数が少ない方向(第2の方向)に封止樹脂を流動させるため、アンダーフィル材のバンプ電極群にぶつかる領域とそれ以外の領域との間で、封止樹脂の進行速度の差をなるべく低下することができる。これにより、封止樹脂の回りこみを防止することができ、第1の基板と第2の基板との間の隙間におけるボイドの発生が抑制される。その結果、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板間におけるボイドの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は半導体チップの概略平面図であり、(b)は(a)の1B−1B線に沿った半導体チップの概略断面図である。
【図2】複数の半導体チップを積層する工程を示す工程図である。
【図3】図3は、チップ積層体に封止樹脂を形成する工程を示す工程図である。
【図4】半導体チップ間の隙間をアンダーフィル材が進行する様子を示す図である。
【図5】封止樹脂が形成された複合チップ積層体を配線基板に搭載する工程を示す工程図である。
【図6】配線基板に外部端子を接続する工程を示す工程図である。
【図7】第1の実施形態における半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置の概略断面図である。
【図8】(a)は第2の実施形態における半導体チップの概略平面図であり、(b)は(a)の8B−8B線に沿った半導体チップの概略断面図である。
【図9】(a)は第3の実施形態における半導体チップの概略平面図であり、(b)は(a)の9B−9B線に沿った半導体チップの概略断面図である。
【図10】(a)は第4の実施形態における半導体チップの概略平面図であり、(b)は(a)の10B−10B線に沿った半導体チップの概略断面図である。
【図11】(a)は第5の実施形態における半導体チップの概略平面図であり、(b)は(a)の11B−11B線に沿った半導体チップの概略断面図である。
【図12】第6の実施形態における半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置の概略断面図である。
【図13】第6の実施形態における半導体装置の製造方法を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本発明は、基板間の隙間に封止樹脂が形成された半導体装置の製造方法に関する。当該基板は、半導体チップや配線基板などを含む。
【0014】
第1の実施形態における半導体装置の製造方法として、まず、半導体装置を構成する半導体チップを準備する。図1(a)は、半導体装置を構成する半導体チップ10の概略平面図である。図1(b)は、図1(a)の1B−1B線に沿った半導体チップ10の概略断面図である。
【0015】
半導体チップ10は、どのような種類のものであっても良い。本実施形態では、半導体チップ10は、略長方形の板状で、一面11に所定の回路が形成されている。半導体チップは、例えば、メモリ回路が形成されたメモリチップであっても良い。
【0016】
半導体チップ10は、外部と電気的に接続するためのバンプ電極群12を有している。本明細書では、バンプ電極群12とは、一定のピッチで配列したバンプ電極14から構成される電極群のことを言う。このバンプ電極群12では、行方向(第1の方向)T1のバンプ電極14の数が、列方向(第2の方向)T2のバンプ電極14の数より多く配置されている。バンプ電極群12は、例えば50μmピッチで、27行3列の格子状に配列されたバンプ電極14から構成される。
【0017】
バンプ電極14は、半導体チップ10の両面に配置されている。表面のバンプ電極14とこれに対応する裏面のバンプ電極14とは、貫通電極16を介して電気的に接続されている。本実施形態では、このような構成を有する半導体チップ10を複数準備した。
【0018】
図2は、複数の半導体チップを積層する工程を示す概略断面図である。まず、図2(a)に示すように、半導体チップ10の表面11、具体的には回路形成面を上方に向けて、半導体チップ10を吸着ステージ20上に置く。吸着ステージ20には凹部21が形成されており、凹部21内に半導体チップ10が収容される。そして、図示しない真空装置により吸着孔22を通じて半導体チップ10を真空吸引することで、半導体チップ10が保持固定される。
【0019】
次に、吸着ステージ20上に保持された1段目の半導体チップ10の上に、図2(b)に示すように、2段目の半導体チップ10を搭載する。2段目の半導体チップ10は、ボンディングツール23により、高温、例えば300℃程度に加熱された状態で荷重を印加されることで、バンプ電極14を介して2段目の半導体チップ10に接合される。
【0020】
2段目の半導体チップ10は1段目の半導体チップ10と同種の機能を有するチップであっても良く、異なる機能を有するチップであっても良い。1段目の半導体チップ10の表面のバンプ電極14と2段目の半導体チップ10の裏面のバンプ電極14とが、熱圧着により接続される。これにより、1段目の半導体チップ10の表面に2段目の半導体チップ10が搭載される。このように、バンプ電極14を介してそれぞれの半導体チップ10を互いに接合することで、半導体チップ10間に隙間25が形成される。
【0021】
図2(c)では、同様に、2段目の半導体チップ10の上に3段目の半導体チップ10が搭載され、3段目の半導体チップ10の上に4段目の半導体チップ10が搭載され、4段目の半導体チップ10の上に5段目の半導体チップ10が搭載される。図2(c)に示す例では、1段目〜4段目の半導体チップ10はメモリチップとし、5段目の半導体チップ10はインターフェース(IF)チップとした。このようにして、例えば4つのメモリチップと1つのIFチップとが互いに積層されたチップ積層体28が形成される。
【0022】
なお、IFチップの表面のバンプ電極14は、後述する配線基板の接続パッドに接続されるため、200μm以上の広いピッチで配列されている。IFチップの裏面のバンプ電極14は、4段目の半導体チップ10の表面のバンプ電極14に対応して配置されている。
【0023】
上記例に代えて、チップ積層体を構成する半導体チップには、IFチップが設けられていなくてもよい。半導体装置が搭載される装置に半導体チップを制御する回路が設けられている場合には、半導体チップを制御する機能が重複するので、チップ積層体にIFチップが設けられていなくてもよい。
【0024】
上記例では、複数のメモリチップを貫通電極により積層したチップ積層体について説明するが、これに代えて、チップ積層体は、例えばメモリチップとロジックチップとの組み合わせから構成されても良い。チップ積層体は、どのような機能のチップの組み合わせから構成されても良い。
【0025】
図3は、チップ積層体に封止樹脂を形成する工程を示す断面図である。チップ積層体28は、図3(a)に示すように、ステージ30上に貼られた塗布用シート31上に載置されることが好ましい。塗布用シート31は、例えばフッ素系シート或いはシリコーン系接着材が付いたシート等のように、封止樹脂としてのアンダーフィル材に対して濡れ性の悪い材料であることがより好ましい。
【0026】
次に、図3(b)に示すように、チップ積層体28の端部近傍に、ディスペンサ32によりアンダーフィル材34を供給する。アンダーフィル材34は、毛細管現象により半導体チップ間の隙間25を流動し、半導体チップ間の隙間25に充填される。
【0027】
図4は、チップ積層体28の半導体チップ10間の隙間25を、アンダーフィル材34が進行する様子を示している。アンダーフィル材34は、バンプ電極群12の列方向T2における、半導体チップ10の短辺付近の供給位置P(図4参照)に供給される。毛管現象により、アンダーフィル材34は、半導体チップ間の隙間25に、バンプ電極群12の列方向T2に沿って流動する(図4(b)参照)。これにより、半導体チップ間の隙間25にアンダーフィル材34が充填される。
【0028】
アンダーフィル材34は、バンプ電極14が並んでいる数が少ない第2の方向T2に流動させられる。そのため、バンプ電極群12にぶつかる領域とそれ以外の領域との間で、アンダーフィル材34の進行速度の差が低下する。これにより、アンダーフィル材34の回りこみが防止され、半導体チップ間の隙間25におけるボイドの発生が抑制される。その結果、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0029】
塗布用シート31がアンダーフィル材34との濡れ性の悪い材料からなる場合、塗布用シート31上でのアンダーフィル材34の広がりを抑制し、フィレット幅を縮小することができる。
【0030】
さらに、半導体チップ10は長方形状であり、半導体チップ10の長辺がバンプ電極群12の行方向T1と平行に配置されていることが好ましい。この場合、アンダーフィル材34は、半導体チップ10の長辺側から、バンプ電極12の列方向T2に沿って流動する。これにより、アンダーフィル材34の流動距離が短くなるため、アンダーフィル材の充填速度を速めることができる。
【0031】
図3(c)に示すように、チップ積層体28へのアンダーフィル材34の充填が完了した後、塗布用シート31と共にチップ積層体28を、所定温度、例えば150℃程度でキュアする。これにより、アンダーフィル材34が硬化し、チップ積層体28の周囲及び半導体チップ間の隙間に、封止樹脂としてのアンダーフィル材34が形成される。塗布用シート31により、ステージ30へのアンダーフィル材34の付着を防止することができる。
【0032】
アンダーフィル材34の熱硬化後、塗布用シート31からチップ積層体28をピックアップする。これにより、図3(d)に示すように、封止樹脂34が形成されたチップ積層体28が得られる。塗布用シート31がアンダーフィル材34と濡れ性の悪い材料である場合、チップ積層体28のピックアップが容易にできるという利点がある。
【0033】
半導体チップ間の隙間に封止樹脂が形成された構造を、以下では、複合チップ積層体36と称する。
【0034】
次に、上述のようにして複合チップ積層体36を作製した後、半導体装置を組み立てるまでの手順の一例について図5および図6を用いて説明する。なお、図5及び図6は、複数の半導体装置を一括して形成するための組み立て手順の一例を示している。
【0035】
図5に示すように、まずマトリックス状に配置された複数の製品形成部41を備えた配線基板40を準備する。製品形成部41は、各々が半導体装置の配線基板40となる部位である。各製品形成部41には所定のパターンの配線が形成されており、各配線はワイヤバンプ44及びランド42を除いてゾルダーレジスト膜等の絶縁膜によって覆われている。この配線基板40の製品形成部41間が、各半導体装置を個々に切り離す際のダイシングラインとなっている。
【0036】
配線基板40の一方の面には、複合チップ積層体36と接続するための複数の接続パッド43が形成されている。配線基板40の他方の面には、外部端子となる金属ボール(図6の符号51も参照)を接続するための複数のランド42が形成されている。接続パッド43は、所定のランド42と配線によって接続されている。
【0037】
接続パッド43の上にはワイヤバンプ44が設けられている。ワイヤバンプ44は、溶融して先端がボール状になったAuやCu等のワイヤを、配線基板40の接続パッド21上に、例えば超音波熱圧着法を用いて接合した後、ワイヤを引き切ることで形成することができる。ワイヤバンプ44を配線基板40側に形成することで、半導体チップ10の貫通電極16のサイズの小型化や狭ピッチ化を図ることができる。なお、ワイヤバンプ44は、複合チップ積層体36側に形成しても良い。
【0038】
本実施形態では、複合チップ積層体36と配線基板40との接続を容易にするために、接続パッド43上にワイヤバンプ44を形成する例を示している。しかしながら、複合チップ積層体36内の表面のバンプ電極14に配線基板40の接続パッド43を直接接続してもよい。
【0039】
上述のように、配線基板40の準備が完了すると、図5(a)に示すように、配線基板40の各製品形成部41上にそれぞれ絶縁性の接着部材45をディスペンサ46により塗布する。接着部材45は、例えば、NCP(Non-Conductive Paste)を用いることができる。
【0040】
次に、複合チップ積層体36をボンディングツール47等で吸着保持し、配線基板40の製品形成部41上にそれぞれ搭載する(図5(b)参照)。複合チップ積層体36の最上層の半導体チップ(IFチップ)10のバンプ電極14と、配線基板40の各ワイヤバンプ44とを、例えば熱圧着法を用いて接合する。このとき、配線基板40上の接着部材45が、複合チップ積層体36と配線基板40との間に充填され、配線基板40と複合チップ積層体36とが接着固定される。複合チップ積層体36の周囲にはテーパ状に封止樹脂34が形成されているため、接着部材45の這い上がりを防止できる。これにより、ボンディングツール47へ接着部材45が付着することに起因する、複合チップ積層体36の破損や接合不良等を低減できる。
【0041】
上記のようにして、図5(c)に示すように、複合チップ積層体36が搭載された配線基板40が出来上がる。複合チップ積層体36が搭載された配線基板40は、不図示のトランスファモールド装置の上型と下型から成る成型金型にセットされ、モールドエ程に移行する。
【0042】
成型金型の上型には、複数の複合チップ積層体36を一括して覆う不図示のキャビティが形成され、該キャビティ内に配線基板40上に搭載された複合チップ積層体36が収容される。
【0043】
次に、成型金型の上型に設けられたキャビティ内に加熱溶融させた封止樹脂を注入し、複合チップ積層体36全体を覆うようにキャビティ内に封止樹脂を充填する。封止樹脂には、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いる。
【0044】
続いて、キャビティ内を封止樹脂で充填した状態で、所定の温度、例えば180℃程度でキュアすることで封止樹脂を熱硬化させる。これにより、図6(a)に示すように、複数の製品形成部41上に搭載された各複合チップ積層体36を一括して覆う封止樹脂層50が形成される。さらに、所定の温度でベークすることで、封止樹脂層50を完全に硬化させる。
【0045】
また、本実施形態では、複合チップ積層体36を構成する半導体チップ10間を封止樹脂(アンダーフィル材)34で封上した後、複合チップ積層体36全体を覆う第2の封止樹脂層50を形成するため、半導体チップ10どうしの隙間でのボイドの発生をより抑制できる。
【0046】
第2の封止樹脂層50を形成した後、図6(b)に示すように、ボールマウント工程に移行する。ボールマウント工程では、配線基板40に形成されたランド42に、半導体装置の外部端子となる導電性の金属ボール51、例えば半田ボールを接続する。
【0047】
ボールマウント工程では、各ランド42の位置と一致する位置に複数の吸着孔を備えたマウントツール52を用いて複数の金属ボール51を吸着保持し、各金属ボール51にフランクスを転写した後、各金属ボール51をランド42上に一括して搭載する。
【0048】
全ての製品形成部41に対して金属ボール51を搭載した後、配線基板40をリフローすることで各金属ボール41と各ランド42とを接続する。
【0049】
金属ボール41の接続が完了すると、基板ダイシング工程に移行する。基板ダイシング工程では、所定のダイシングラインで個々の製品形成部41を切断分離することで半導体装置を形成する。
【0050】
基板ダイシング工程では、第2の封止樹脂層50にダイシングテープ53を貼着することで製品形成部41を支持する。そして、図6(c)に示すように、不図示のダイシング装置が備えるダイシングブレード54により所定のダイシングラインで切断することで製品形成部41毎に分離する。切断分離後、ダイシングテープ53から製品形成部をピックアップすることで、図7に示す半導体装置60が得られる。図7では、図1〜図6で示した符号と同一の部材には、同一の符号が付されている。
【0051】
次に、第2の実施形態における半導体装置の製造方法について説明する。第2の実施形態では、図1に示す半導体チップと比べて、半導体チップに設けられたバンプ電極の配置が異なっている。図8(a)は、第2の実施形態で用いた半導体チップの概略平面図である。図8(b)は、図8(a)の8B−8B線に沿った半導体チップの概略断面図である。
【0052】
半導体チップ10には、実質的に一定のピッチで配列したバンプ電極14から構成されるバンプ電極群12が2つ設けられている。それぞれのバンプ電極群12において、行方向(第1の方向)T1のバンプ電極14の数が、列方向(第2の方向)T2のバンプ電極14の数より多く配置されている。バンプ電極群12は、例えば50μmピッチで、27行3列の格子状に配列されたバンプ電極14から構成される。
【0053】
バンプ電極14は半導体チップの表面と裏面に設けられており、表面のバンプ電極と、これに対応する裏面のバンプ電極とが貫通電極16により接続されている。
【0054】
2つのバンプ電極群12は列方向T2に沿って並んでいる。バンプ電極群12間の距離D1は、バンプ電極群12を構成するバンプ電極14のピッチより大きく、200μm以上離れていることが好ましい。それぞれのバンプ電極群12は、半導体チップ10の端辺、例えば長辺の近傍に位置している。
【0055】
次に、このような半導体チップ10を用いて、第1の実施形態と同様にしてチップ積層体を構成する。このチップ積層体を構成する半導体チップ間の隙間に、バンプ電極群12の列方向T2に沿ってアンダーフィル材を流動させる。この場合にも、第1の実施形態と同様に、半導体チップ間のボイドの発生が抑制されるという効果が得られる。
【0056】
アンダーフィル材が列方向T2に流動している際に、バンプ電極群12が存在する領域と存在しない領域との間で、流速差が生じたとしても、バンプ電極群間の領域でアンダーフィル材の流速差が抑えられる。したがって、各バンプ電極群12での流速差の影響は蓄積されず、各バンプ電極群12近傍でのボイドの発生を抑制することができる。特に、列方向T2におけるバンプ電極群12間の距離D1が200μm以上のとき、発明者は半導体チップ10間にボイドが発生しなかったことを確認した。
【0057】
さらに、第2の実施形態では、半導体チップ10の対向する2辺にバンプ電極群12が配置されているため、半導体チップ10同士を安定して接合することができる。また、チップ積層体を安定して配線基板に搭載することもできる。
【0058】
なお、図8では、2つのバンプ電極群12が列方向T2に2つ並んでいるが、2つ以上のバンプ電極群12が列方向T2に並んでいても良い。この場合にも、バンプ電極群12間の距離を200μm以上あけることが好ましい。
【0059】
次に、第3の実施形態における半導体装置の製造方法について説明する。第3の実施形態では、図1に示す半導体チップと比べて、半導体チップ(基板)に設けられたバンプ電極の配置が異なっている。図9(a)は、第3の実施形態で用いた半導体チップの概略平面図である。図9(b)は、図9(a)の9B−9B線に沿った半導体チップの概略断面図である。
【0060】
バンプ電極14は半導体チップ10の表面と裏面に設けられており、表面のバンプ電極と、これに対応する裏面のバンプ電極とが貫通電極16により接続されている。
【0061】
各バンプ電極群12において、行方向T1のバンプ電極14の配置数は、列方向T2のバンプ電極14の数より多く配置されている。図9に示す例では、各バンプ電極群12は、例えば50μmピッチで、5行3列で格子状に配置されている。本実施形態では、各バンプ電極群12は、行方向T1に700μm以下の距離あけて複数配置されている。図9に示す例では、バンプ電極群12の行方向T1に沿って、4つのバンプ電極群12が互いに離間して配置されている。それぞれのバンプ電極群12の間の距離D2は、各バンプ電極を構成するバンプ電極14間のピッチよりも大きく、且つ700μm以下である。
【0062】
次に、このような半導体チップ10を用いて、第1の実施形態と同様にしてチップ積層体を構成する。このチップ積層体を構成する半導体チップ間の隙間に、バンプ電極群12の列方向T2に沿ってアンダーフィル材を流動させる。
【0063】
複数のバンプ電極群12が行方向に並んで配置されている場合、バンプ電極群12間の距離は700μm以下であることが好ましい。バンプ電極群12間の距離が700μm以下であると、バンプ電極群12が配置された領域での封止樹脂の流速と、バンプ電極群12が配置されていない領域での封止樹脂の流速との差が抑えられる。これにより、流速差に起因する封止樹脂の回り込みを防止することができるため、半導体チップ間でのボイドの発生を抑制することができる。
【0064】
行方向のバンプ電極12間の距離D2が700μmのとき、半導体チップ間にボイドが生じないことが確認できた。ここで、封止樹脂としてのアンダーフィル材の塗布時の温度は80℃程度あり、この温度での封止樹脂の粘度は約0.1Pa・sであった。なお、常温時の封止樹脂の粘度は約10Pa・sであった。したがって、このような粘度の範囲の封止樹脂を用い、行方向のバンプ電極12間の距離D2が700μm以下であると、封止樹脂の流速差が抑えられ、ボイドの発生がより抑制される。同様に、行方向T1における、半導体チップ10の端辺とバンプ電極群12との間の距離も、700μm以下であることが好ましい。
【0065】
さらに、バンプ電極群12が設けられていない領域では、半導体チップ10を貫通する貫通電極16が存在しないため、半導体チップ10の強度を向上できる。これにより、貫通電極16を基点として生じるチップクラックの発生を抑制できる。
【0066】
次に、第4の実施形態における半導体装置の製造方法について説明する。第4の実施形態では、図1に示す半導体チップと比べて、半導体チップに設けられたバンプ電極の配置が異なっている。図10(a)は、第4の実施形態で用いた半導体チップの概略平面図である。図10(b)は、図10(a)の10B−10B線に沿った半導体チップの概略断面図である。
【0067】
バンプ電極14は半導体チップ10の表面と裏面に設けられており、表面のバンプ電極と、これに対応する裏面のバンプ電極とが貫通電極16により接続されている。
【0068】
各バンプ電極群12において、行方向T1に沿って並ぶバンプ電極14の数は、列方向T2に沿って並ぶバンプ電極14の数より多く配置されている。図10に示す例では、各バンプ電極群12は、例えば50μmピッチで、5行2列で格子状に配置されている。バンプ電極群12は、例えば列方向に700μm程度の距離、行方向に700μm以下の距離を開けて配置されている。図10では、半導体チップの中央付近に、行方向に沿って4つ、列方向に沿って3つのバンプ電極群12が配置されている。
【0069】
本実施形態でも、バンプ電極群12の列方向T2に沿ってアンダーフィル材を流動させる。この場合にも、第1の実施形態と同様に、半導体チップ間のボイドの発生が抑制されるという効果が得られる。また、本実施形態では、1つのバンプ電極群12を構成するバンプ電極14の数を減らすことで、バンプ電極群12またはその近傍でのボイドの発生をより抑制できる。
【0070】
次に、第5の実施形態における半導体装置の製造方法について説明する。第5の実施形態では、図1に示す半導体チップと比べて、半導体チップ(基板)に設けられたバンプ電極の配置が異なっている。図11(a)は、第5の実施形態で用いた半導体チップの概略平面図である。図11(b)は、図11(a)の11B−11B線に沿った半導体チップの概略断面図である。
【0071】
バンプ電極14,74は半導体チップ10の表面と裏面に設けられており、表面のバンプ電極と、これに対応する裏面のバンプ電極とが貫通電極16,76により接続されている。
【0072】
本実施形態では、第1のバンプ電極群12と、第1のバンプ電極群12を構成するバンプ電極14のピッチよりも広いピッチでバンプ電極74が配置された第2のバンプ電極群72とが存在する。
【0073】
第1のバンプ電極群12において、行方向T1に沿って並ぶバンプ電極14の数は、列方向T2に沿って並ぶバンプ電極14の数より多く配置されている。図11に示す例では、バンプ電極群12は、例えば50μmピッチで、27行3列で格子状に配置されている。
【0074】
第2のバンプ電極群72を構成するバンプ電極74間のピッチは200μm以上である。第2のバンプ電極群72では、第1のバンプ電極群の列方向T2に沿ったバンプ電極74の数が、行方向T1に沿ったバンプ電極74の数よりも多くなっている。本実施形態において、アンダーフィル材は、第1のバンプ電極12の列方向T2に沿って流動させる。この場合にも、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0075】
図11に示すように、十分に広いピッチでバンプ電極74が配列されたバンプ電極群72であれば、封止樹脂の流動方向に関係なくボイドが発生しない。実際に、200μm以上のピッチでバンプ電極74が配置されたバンプ電極群72であれば、封止樹脂の移動方向に関係なく、ボイドが発生しないことが確認できた。したがって、小さいピッチ、本例では50μmのピッチでバンプ電極14が配置された第1のバンプ電極群14に関して、バンプ電極が並んでいる数が少ない方向(第2の方向)T2に封止樹脂を流動させれば良い。
【0076】
次に、第6の実施形態における半導体装置の製造方法について説明する。図12は第6の実施形態における半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置の概略断面図である。
【0077】
この半導体装置80は、配線基板40と、配線基板40の上に搭載された半導体チップ10とを備えている。配線基板40は、絶縁基材40aと絶縁基材40aの表面の絶縁膜(ソルダーレジスト)40bとを有する。
【0078】
配線基板の一面には、絶縁膜40bから露出して、接続パッド43が設けられている。配線基板の他面にはランド42が設けられており、ランド42には外部端子である金属ボール51が設けられている。
【0079】
半導体チップ10と配線基板40とは、バンプ電極84を介して接合されている。半導体チップ10と配線基板40との間の隙間に、封止樹脂34が充填されている。また、半導体チップ10および封止樹脂34を覆う第2の封止樹脂50が、配線基板40上に設けられている。
【0080】
バンプ電極84は、実質的に一定のピッチで配列してバンプ電極群を構成している。行方向に沿ったバンプ電極の数は、列方向に沿ったバンプ電極の数よりも多くなっている。バンプ電極群を構成するバンプ電極84の配置は、図1(a)、図8(a)、図9(a)、図10(a)または図11(a)に示すものと同様である。
【0081】
図13は、この半導体装置の製造方法を説明するための工程図である。まず、マトリックス状に配置された複数の製品形成部41を備えた配線基板40を準備する。製品形成部41は、各々が半導体装置80の配線基板40となる部位である。
【0082】
図13(a)に示すように、配線基板40と半導体チップ10との間に隙間25が形成されるように、例えばボンディングツール90を用いて、配線基板40と半導体チップ10とをバンプ電極84を介して接合する。バンプ電極84の配置は上述した通りである。
【0083】
次に、図13(b)に示すように、配線基板40と半導体チップ10との間に隙間25に、バンプ電極群の列方向、つまりバンプ電極の配列数の小さい方向に沿って、封止樹脂としてのアンダーフィル材34を流動させる。アンダーフィル材34は、ディスペンサ91から、半導体チップ10の端辺近傍に供給される。
【0084】
次に、図13(c)に示すように、半導体チップ10および封止樹脂34を覆うように、配線基板40上に第2の封止樹脂50を形成する。その後、図13(d)に示すように、配線基板40のランド42に、外部端子となる金属ボール51を搭載する。それから、図13(e)に示すように、ダイシングブレード94により所定のダイシングラインで切断することで製品形成部41毎に分離する。切断分離後、ダイシングテープ93から製品形成部41をピックアップすることで、図12に示す半導体装置80が得られる。
【0085】
本実施形態では、アンダーフィル材34は、半導体チップ10との配線基板40との間を流動させられる。この場合であっても、既述の実施形態と同様に、半導体チップ10との配線基板40との間の隙間でのボイドの発生が抑制できる。
【0086】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施形態では、バンプ電極群は、50μmピッチで、格子状にバンプ電極が配置された場合について説明したが、バンプ電極群は1列に配置したバンプ電極から構成されるものであっても良い。
【0087】
また、上記の製造方法は、半導体チップ間、半導体チップと配線基板との間だけでなく、バンプ電極群を介して互いに接合された基板間をアンダーフィル材が流動する工程を有する方法全般に適用できる。
【0088】
バンプ電極の配列数が多い方向(第1の方向)は、半導体チップの長辺と平行であっても良く、短辺と平行であっても良く。また、バンプ電極群は、少なくともアンダーフィル材を流動させる隙間に配置されていれば良い。
【符号の説明】
【0089】
10 半導体チップ
12 バンプ電極群
14 バンプ電極
16 貫通電極
20 吸着ステージ
21 凹部
22 吸着孔
23 ボンディングツール
25 隙間
28 チップ積層体
30 ステージ
31 塗布用シート
32 ディスペンサ
34 封止樹脂(アンダーフィル材)
36 複合チップ積層体
40 配線基板
41 製品形成部
42 ランド
43 接続パッド
44 ワイヤバンプ
45 接着部材
46 ディスペンサ
47 ボンディングツール
50 封止樹脂層
51 金属ボール
52 マウントツール
53 ダイシングテープ
54 ダイシングブレード
T1 行方向
T2 列方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定のピッチで配列したバンプ電極から構成されるバンプ電極群であって、第1の方向に沿ったバンプ電極の数より、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿ったバンプ電極の数の方が少ないバンプ電極群を備えた第1の基板と、第2の基板と、を準備する工程と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に隙間が形成されるように、前記第1の基板と前記第2の基板とを前記バンプ電極を介して接合する工程と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の前記隙間に、前記バンプ電極群の前記第2の方向に沿って封止樹脂を流動させて、前記封止樹脂で前記隙間を充填する工程と、を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の基板は長方形状であり、前記第1の基板の長辺が前記バンプ電極群の前記第1の方向と平行に配置されている、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の基板と前記第2の基板は半導体チップである、請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1の基板は半導体チップであり、前記第2の基板は配線基板である、請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1の基板は前記バンプ電極群を複数有し、各々の前記バンプ電極群を構成するバンプ電極の配列数が多い方向が揃えられている、請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記複数のバンプ電極群は前記第1の方向に沿って並んでおり、前記バンプ電極群の間の間隔は、前記バンプ電極群を構成する前記バンプ電極の前記ピッチより大きく、且つ700μm以下である、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記複数のバンプ電極群は前記第2の方向に沿って並んでおり、前記バンプ電極群の間の間隔が200μm以上である、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−119368(P2012−119368A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265247(P2010−265247)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】