説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】 半田のリフロー工程時に半田の小さな粒が飛散して制御パッド上に付着することがあっても、制御パッド上にワイヤボンディングしたときのボンディング強度の低下を極力防止できる半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 半導体装置1は、半導体素子2の両面に金属体を半田付けして構成されたものにおいて、半導体素子2の一方の面に設けられ金属体を半田付けするための第1の電極7と、半導体素子2の一方の面における周辺部に設けられボンディングワイヤを2本以上ボンディングすることが可能な面積を有する制御パッド8とを備えるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の両面に金属体を半田付けして構成された半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高耐圧・大電流用のパワーIC(IGBTやMOSFET等)の半導体チップ(半導体素子)は、使用時の発熱が大きいため、半導体チップからの放熱性を向上させるための構成が必要である。この構成の一例として、半導体チップの両面にヒートシンク(金属体)を半田付けする構成が考えられており、例えば特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2003−068959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来構成の半導体チップ(例えばIGBT)の上面には、半田付け用の第1の電極(例えばエミッタ電極)が設けられていると共に、その周辺部にワイヤボンディング用の制御パッド(例えばゲートパッド)が設けられている。この構成の場合、半導体チップの第1の電極上に銅ブロック(ヒートシンク)を半田付けした後、制御パッドにボンディングワイヤをボンディングしている。
【0004】
しかし、上記構成の場合、半導体チップの第1の電極上に銅ブロックを半田付けするとき、即ち、半田のリフロー工程において半田を融解するときに、半田が突沸することがあり、溶融した半田の小さな粒が飛散して制御パッド上に付着することがあった。そして、半田が付着した制御パッド上にワイヤボンディングすると、ボンディング強度が低下し、剥離が起こるおそれがあった。
【0005】
これに対して、制御パッドを覆う治具を半導体チップに取り付け、溶融した半田の小さな粒が飛散しても、上記治具により制御パッド上に付着することを防止する構成が考えられる。しかし、この構成の場合、半導体チップには反りがあるため、治具で制御パッドを密着して覆うことが難しく、半田の付着を防止することが困難であった。また、治具により半導体チップの割れを招くおそれもあり、この治具を用いる方法は実際には採用することができなかった。
【0006】
尚、リフロー工程後に、IPA(イソプロピルアルコール)を用いて洗浄することにより、リフロー時の異物を除去する方法がある。しかし、この方法では、制御パッドに付着した半田を除去することができない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、半田のリフロー工程時に半田の小さな粒が飛散して制御パッド上に付着することがあっても、制御パッド上にワイヤボンディングしたときに、ボンディング強度が低下することを極力防止できる半導体装置及びその製造方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の半導体装置は、半導体素子の両面に金属体を半田付けして構成されたものにおいて、前記半導体素子の一方の面に設けられ、前記金属体を半田付けするための第1の電極と、前記半導体素子の一方の面における周辺部に設けられ、ボンディングワイヤを2本以上ボンディングすることが可能な面積を有する制御パッドとを備えたところに特徴を有する。
【0009】
上記構成によれば、制御パッドの面積を、ボンディングワイヤを2本以上ボンディングすることが可能な面積としたので、半田のリフロー工程時に半田の小さな粒が飛散して制御パッド上に付着することがあっても、制御パッド上に半田が付着していない部分を確保することができ、制御パッド上にワイヤボンディングしたときに、ボンディング強度が低下することを極力防止できる。
【0010】
また、上記構成の場合、制御パッドを複数に分割することが好ましい。この構成の場合、Al配線上に金属層を設けて制御パッドを形成すると共に、前記金属層の上に半田レジスト材料を設けることにより制御パッドを分割することが更に良い構成である。また、Al配線上に金属層を設けて制御パッドを形成すると共に、前記金属層を半田レジスト材料により分割することにより制御パッドを分割することがより一層好ましい。更に、Al配線上に金属層を設けて制御パッドを形成すると共に、前記金属層及び前記Al配線を半田レジスト材料により分割することにより制御パッドを分割することがより一層良い構成である。
【0011】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体素子の一方の面に設けられ半田付け用の第1の電極と、前記半導体素子の一方の面における周辺部に設けられワイヤボンディング用の制御パッドとを備えた半導体装置の製造方法において、前記制御パッドを形成するためのAl配線の上に、前記制御パッドを分割するための半田レジスト材料を設ける工程と、前記Al配線の上に金属層を設ける工程とを備えたところに特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施例について、図1ないし図4を参照しながら説明する。まず、図3は本実施例の半導体装置の概略構成を示す断面図である。この図3に示すように、本実施例の半導体装置1は、半導体素子2と、下側ヒートシンク(金属体)3と、上側ヒートシンク(金属体)4と、ヒートシンクブロック(金属体)5とを備えて構成されている。
【0013】
上記半導体素子2は、例えばIGBTやMOSFETやサイリスタ等のパワー半導体素子から構成されている。この半導体素子2の形状は、本実施例の場合、例えば矩形の薄板状である。また、下側ヒートシンク3、上側ヒートシンク4及びヒートシンクブロック5は、例えばCuで構成されている。尚、上記Cuに代えて、Al等の熱伝導性及び電気伝導性の良い金属で構成しても良い。
【0014】
また、上記構成の半導体装置1において、半導体素子2の下面と下側ヒートシンク3の上面との間は、接合部材である例えば半田6によって接合されている。そして、半導体素子2の上面とヒートシンクブロック5の下面との間も、半田6によって接合されている。更に、ヒートシンクブロック5の上面と上側ヒートシンク4の下面との間も、半田6によって接合されている。
【0015】
上記構成においては、半導体素子2の両面からヒートシンク3、4及びヒートシンクブロック5を介して放熱される構成となっている。
また、図1及び図2に示すように、半導体素子2の一方の面である上面には、主電極である第1の電極(例えばエミッタ電極)7が設けられていると共に、上記上面における周辺部である図1中の下辺部には、制御電極である例えば5個の制御パッド8が設けられている。これら制御パッド8は、例えばゲートパッドや、電流センサ用の制御パッドや、温度センサ用の制御パッド等である。
【0016】
各制御パッド8は、後述するようにして、例えば4個に分割された分割パッド8aを有している。各分割パッド8aの面積は、ボンディングワイヤ9(図1参照)を1本ボンディングすることが可能な最小の面積である。従って、制御パッド8は、ボンディングワイヤ9を例えば4本(即ち、2本以上)ボンディングすることが可能な面積を有している。
【0017】
また、半導体素子2の他方の面である下面の全面には、主電極である第2の電極(例えばコレクタ電極)10が設けられている。
そして、図1に示すように、第2の電極10には、下側ヒートシンク3が半田6を介して電気的に接続されていると共に、第1の電極7には、ヒートシンクブロック5が半田6を介して電気的に接続されている。また、制御パッド8は、リードフレーム11にボンディングワイヤ9を介してワイヤーボンディングされている。
【0018】
この構成の場合、制御パッド8の4個の分割パッド8aすべてに対してワイヤーボンディングしても良いし、4個の分割パッド8aのうちの適当な3個または2個または1個の分割パッド8aに対してワイヤーボンディングするように構成しても良い。また、第1の電極7から遠い側の2個の分割パッド8a(またはそのうちの1個の分割パッド8a)だけに対してワイヤーボンディングするように構成しても良い。
【0019】
また、下側ヒートシンク3及び上側ヒートシンク4は、厚さ寸法が例えば約2mm程度の板材で形成されている。ヒートシンクブロック5は、厚さ寸法が例えば約1.5mm程度の板材で形成されており、その大きさは、半導体素子2の大きさよりも1回り小さい程度の大きさ(即ち、第1の電極7とほぼ同じ大きさ)である。また、半導体素子2の厚さ寸法は、例えば約0.14mm程度であり、半田6の厚さ寸法は、例えば約0.1mm程度である。
【0020】
尚、半導体装置1のほぼ全体は、図示しない樹脂(例えばエポキシ樹脂)によりモールドされている。この場合、半導体装置1を樹脂でモールドするに当たっては、上下型からなる成形型(図示しない)を使用している。尚、ヒートシンク3、4の端子部(図示しない)及びリードフレーム11の端子部(図示しない)は、モールド成形体(図示しない)から突出するように構成されている。更に、下側ヒートシンク3の下面と上側ヒートシンク4の上面は、モールド成形体から露出するように構成されている。また、上記した構成の半導体装置1の製造方法(即ち、製造工程)の具体例は、本出願人がすでに出願した特願2001−127516に記載されており、これに記載されている方法を適宜使用すれば良い。
【0021】
次に、第1の電極7、第2の電極10及び制御パッド8の具体的構成について説明する。第2の電極10は、図2に示すように、半導体基板12の下面に金属層13を形成して構成されている。金属層13は、例えばNiとAuを積層して構成されている。第1の電極7と制御パッド8は、半導体基板12の上面に形成されたAl配線14と、このAl配線14の上に形成された金属層15とから構成されている。金属層15は、例えばNiとAuを積層して構成されている。尚、上記Al配線14の代わりに、例えばAlSi配線を形成するように構成しても良い。
【0022】
また、半導体基板12上における外周部並びに第1の電極7と制御パッド8との間には、保護膜16が設けられている。この保護膜16は、例えばポリイミドで形成されている。尚、上記ポリイミド(保護膜16)は、半田レジスト材料である。
【0023】
そして、図1及び図2に示すように、制御パッド8の金属層15は、保護膜16により4個の領域に分割されており、これら4個の領域が前記分割パッド8aを構成している。この構成の場合、金属層15は半田レジスト材料により分割されている。
【0024】
ここで、制御パッド8及び第1の電極7を形成する製造工程について、図4を参照して説明する。まず、図4(a)に示すように、半導体基板12上に所定のパターンのAl配線14を形成する。この場合、図4(a)中の右側のAl配線14が制御パッド8に対応し、左側のAl配線14が第1の電極7に対応している。
【0025】
この後、図4(b)に示すように、半導体基板12上に保護膜16を形成する。この場合、ポリイミドの膜を全面に形成した後、マスク等を用いて設定されたパターンの保護膜16だけを残すようにし、残りを除去する。ここで、保護膜16のうちの制御パッド8用のAl配線14の上に形成された部分が、制御パッド8を分割するための保護膜16、即ち、半田レジスト材料である。
【0026】
続いて、図4(c)に示すように、Al配線14の上に金属層15を形成する。この金属層15は、例えばNi層とAu層を積層して構成されている。これにより、第1の電極7及び制御パッド8が形成される。そして、制御パッド8においては、図1に示すように、その金属層15が保護膜16により4個に分割されている。
【0027】
このような構成の本実施例によれば、制御パッド8の面積を、ボンディングワイヤを4本ボンディングすることが可能な面積としたので、半導体素子2の第1の電極7にヒートシンクブロック5を半田付けするときに、即ち、半田のリフロー工程時に、半田の小さな粒が飛散して制御パッド8上に付着することがあっても、制御パッド8上に半田が付着していない部分をほぼ確実に確保することができ、制御パッド8上にワイヤボンディングしたときに、ボンディング強度が低下することを極力防止できる。
【0028】
特に、上記実施例では、制御パッド8を複数に、例えば4個に分割したので、半田のリフロー工程時に、半田の小さな粒が飛散して制御パッド8の4個の分割パッド8a中の1個または2個の分割パッド8a上に付着することがあっても、半田は、付着した分割パッド8a上で広がるだけであり、他の分割パッド8a上にまで広がらない。これにより、制御パッド8上に半田が付着していない部分をほぼ確実に確保することができる。
【0029】
更に、上記実施例においては、制御パッド8を分割するに際して、Al配線14上に設けられた金属層15を、保護膜16(半田レジスト材料)により分割するように構成したので、半田のリフロー工程時に、半田の小さな粒が飛散して制御パッド8の4個の分割パッド8a中の1個または2個の分割パッド8a上に付着することがあっても、保護膜16により、半田は、付着した分割パッド8a上で広がるだけとなり、他の分割パッド8a上にまで広がることを防止できる。
【0030】
図5は本発明の第2の実施例を示すものである。尚、第1の実施例と同一構成には、同一符号を付している。この第2の実施例では、制御パッド8を分割するに際して、Al配線14上に設けられた金属層15を保護膜16により分割する代わりに、図5に示すように、金属層15の上に制御パッド8分割用の保護膜(半田レジスト材料)17を設けるように構成した。
【0031】
そして、上述した以外の第2の実施例の構成は、第1の実施例と同じ構成となっている。従って、第2の実施例においても、第1の実施例とほぼ同じ作用効果を得ることができる。
【0032】
図6は本発明の第3の実施例を示すものである。尚、第1の実施例と同一構成には、同一符号を付している。この第3の実施例では、制御パッド8を分割するに際して、Al配線14上に設けられた金属層15を保護膜16により分割する代わりに、図6に示すように、Al配線14及び金属層15を制御パッド8分割用の保護膜(半田レジスト材料)16で分割するように構成した。
【0033】
そして、上述した以外の第3の実施例の構成は、第1の実施例と同じ構成となっている。従って、第3の実施例においても、第1の実施例とほぼ同じ作用効果を得ることができる。
【0034】
また、上記各実施例においては、制御パッド8を4個の分割パッド8aに分割するように構成したが、これに限られるものではなく、2個、3個、または5個以上に分割するように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施例を示す半導体素子の上面図
【図2】図1中II−II線に沿う断面図
【図3】半導体装置の縦断面図
【図4】第1の電極及び制御パッドの製造工程を説明する図
【図5】本発明の第2の実施例を示す図2相当図
【図6】本発明の第3の実施例を示す図2相当図
【符号の説明】
【0036】
図面中、1は半導体装置、2は半導体素子、3は下側ヒートシンク(金属体)、4は上側ヒートシンク(金属体)、5はヒートシンクブロック(金属体)、6は半田、7は第1の電極、8は制御パッド、8aは分割パッド、9はボンディングワイヤ、10は第2の電極、11はリードフレーム、12は半導体基板、13は金属層、14はAl配線、15は金属層、16は保護膜、17は保護膜を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子の両面に金属体を半田付けして構成された半導体装置において、
前記半導体素子の一方の面に設けられ、前記金属体を半田付けするための第1の電極と、
前記半導体素子の一方の面における周辺部に設けられ、ボンディングワイヤを2本以上ボンディングすることが可能な面積を有する制御パッドとを備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記制御パッドは、複数に分割されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記制御パッドは、Al配線上に金属層を設けて形成されていると共に、前記金属層の上に半田レジスト材料を設けることにより分割されていることを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記制御パッドは、Al配線上に金属層を設けて形成されていると共に、
前記金属層は、半田レジスト材料により分割されていることを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項5】
前記制御パッドは、Al配線上に金属層を設けて形成されていると共に、
前記金属層及び前記Al配線は、半田レジスト材料により分割されていることを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体素子の一方の面に設けられ半田付け用の第1の電極と、前記半導体素子の一方の面における周辺部に設けられワイヤボンディング用の制御パッドとを備えた半導体装置の製造方法において、
前記制御パッドを形成するためのAl配線の上に、前記制御パッドを分割するための半田レジスト材料を設ける工程と、
前記Al配線の上に金属層を設ける工程とを備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−27183(P2007−27183A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202967(P2005−202967)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】