説明

半導体装置及び半導体装置の製造方法

【課題】素子分離領域での電流リークを低減する。
【解決手段】抵抗素子5用の多結晶シリコン膜50の第2領域52にはドーパントがイオン注入されている。抵抗素子6用の多結晶シリコン膜60の第2領域62には窒素等がイオン注入されている。第2領域52,62は第1領域51,61よりも結晶欠陥密度が高い。抵抗素子7用の多結晶シリコン膜70中の結晶欠陥密度はシリサイド膜73付近においてより高い。抵抗素子8用の多結晶シリコン膜80は素子分離絶縁膜3の開口内のシリサイド膜を介して基板2に接している。当該シリサイド膜付近の基板表面2S内の結晶欠陥密度は周辺よりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は素子分離領域での電流リークを低減可能な半導体装置及びそのような半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置では、トランジスタ、キャパシタ、抵抗等の基本素子を配線で接続している。なお、トランジスタの電極をそのまま配線として用いる場合もある。一般的に、トランジスタやキャパシタの電極や、配線として、アルミニウムや銅等の金属や、多結晶シリコンが多用されている。この際、電極や配線に多結晶シリコン膜を用いる場合、多結晶シリコン膜上に全体にシリサイド膜や金属膜を形成することによって、電気抵抗の低減化が図られる。
【0003】
半導体膜、例えば多結晶シリコン膜は抵抗素子としても用いられる。このとき、当該抵抗素子の抵抗値は多結晶シリコン膜の断面積に反比例し、長さ及び不純物(ドーパント)濃度に比例する。例えば抵抗を高くする場合、多結晶シリコン膜の断面積をより小さくしたり、長さをより長くしたりする。更には、多結晶シリコン膜の不純物濃度をより低くしたり又は多結晶シリコン膜に不純物を導入しないで用いることによっても抵抗を高くすることができる。
【0004】
電極や配線として用いる低抵抗の多結晶シリコン膜と、抵抗素子として用いる高抵抗の多結晶シリコン膜とは、1つの多結晶シリコン膜から形成可能である。ここで、図14を参照しつつ従来の半導体装置1Pの形成方法を説明する。
【0005】
まず、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法等を用いてシリコン酸化膜から成る素子分離絶縁膜3Pを形成することによって、シリコン基板2Pを活性領域と素子分離領域とに区画する。その後、ウエルや素子分離注入領域をイオン注入法等で形成する。
【0006】
次に、トランジスタ(図示せず)の形成領域に、ゲート酸化膜を形成する。その後、LPCVD(減圧CVD)法により、ドーピングされていない(真性の)多結晶シリコン膜を50nm〜250nmの厚さで基板2P上の全体に堆積し、当該多結晶シリコン膜を写真製版法によってパターニングする。このとき、多結晶シリコン膜のうちで素子分離膜3P上にパターニングされた部分が抵抗素子5Pになる。抵抗素子5Pはレジストや酸化膜等で覆い、トランジスタ製造工程での影響を受けないように保護する。
【0007】
上記パターニングされた多結晶シリコン膜のうちでトランジスタ配置領域内の部分は、シリサイド膜と共にトランジスタのゲート電極になる。具体的には、当該多結晶シリコン膜に接するように露出表面上にチタン、コバルト、ニッケル、タングステン等の金属膜を形成してシリサイド化反応を生じさせることにより、シリサイド膜を形成する。あるいは、多結晶シリコン膜に接するように直接、タングステンシリサイド膜等を堆積する。なお、このとき、ゲート・シリサイド膜を形成するための上記金属膜や上記シリサイド膜は、抵抗素子5Pを覆うレジスト等上にも形成される。
【0008】
その後、不図示の保護膜や金属配線等を形成することによって、半導体装置1Pが完成する。
【0009】
なお、多結晶シリコンに代えて非結晶(アモルファス)シリコンが用いられる場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、トランジスタ配置領域に対して各種処理を施す間、抵抗素子5Pはレジストや酸化膜で覆われる。また、トランジスタ配置領域への処理の際、かかるレジスト等上にゲート・シリサイド膜を形成するための上記金属膜や上記シリサイド膜が形成される。
【0011】
ところで、レジストや酸化膜中での金属原子の拡散係数はシリコン中での拡散係数(図15参照)と同様の傾向を示し、ボロンやヒ素等に比べて大きい。このため、上述のゲート・シリサイド膜用の金属膜中やシリサイド膜中の金属原子がレジスト等中へ進入する場合がある。
【0012】
レジスト等へ進入した金属原子は多結晶シリコン膜5P中又は/及び素子分離絶縁膜3P中を通って基板2P内へ拡散する。その結果、図16に示すように、基板2P中に進入した金属原子11Pによって、素子分離絶縁膜3Pの下方で、すなわち素子分離領域でリーク電流12Pが引き起こされる。
【0013】
なお、メタル・ゲートとしての金属膜(例えばタングステンやアルミニウム等)や金属配線(例えばアルミニウムや銅等)中の金属原子も上記金属原子11Pに成りうる。
【0014】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、素子分離領域での電流リークを低減可能な半導体装置及びそのような半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様に係る半導体装置は、半導体基板の半導体表層に配置された活性領域と、前記活性領域を区画するように前記半導体基板の半導体表層に形成され、絶縁膜からなる素子分離膜と、前記素子分離膜上に配置された半導体膜からなる抵抗素子と、を備え、前記抵抗素子は、平面視において第1領域と、前記第1領域内よりも結晶欠陥の密度が高い第2領域とを含み、前記第2領域は、前記絶縁膜上に配置される。
【0016】
また、本発明の別の態様に係る半導体装置の製造方法は、(a)半導体基板の表層に、活性領域を区画するように、絶縁膜からなる素子分離膜を形成する工程と、(b)前記素子分離膜上に、半導体膜からなる抵抗素子を形成する工程とを備え、前記工程(b)は、(b)-1)平面視における前記半導体膜の一部の領域内の結晶欠陥の密度を増大する工程を含み、前記半導体膜の前記一部の領域は、前記半導体膜のうちで前記絶縁膜の上に配置されている部分である。
【発明の効果】
【0017】
上記一態様によれば、第2領域内の結晶欠陥がゲッタリング効果を奏するので、絶縁膜下でのリーク電流を低減することができる。
【0018】
また、上記別の態様によれば、工程(b)-1)で生成された結晶欠陥がゲッタリング効果を奏するので、絶縁膜下でのリーク電流が低減された半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1に係る半導体装置を説明するための斜視図である。
【図2】実施の形態1に係る半導体装置を説明するための断面図である。
【図3】実施の形態1に係る半導体装置を説明するための断面図である。
【図4】実施の形態1に係る半導体装置を説明するための断面図である。
【図5】実施の形態1に係る半導体装置を説明するための断面図である。
【図6】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図7】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図8】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図9】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図10】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図11】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図12】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図13】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図14】従来の半導体装置を説明するための斜視図である。
【図15】シリコン中での拡散係数を説明するためのグラフである。
【図16】従来の半導体装置における電流リークを説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施の形態1>
図1に実施の形態1に係る半導体装置1を説明するための斜視図を示す。図1に示すように、半導体装置1は、半導体基板(以下、単に「基板」とも呼ぶ)2と、MOSFET90と、素子分離絶縁膜(ないしは絶縁膜)3と、抵抗素子5,6,7,8,5Pとを備えている。なお、図1への図示化は省略するが、半導体装置1は他のトランジスタやキャパシタ等を備えている。
【0021】
具体的には、基板2は例えばp型のシリコンから成る。基板2の表面(以下「基板表面」とも呼ぶ)2S上に素子分離絶縁膜3が形成されており、素子分離絶縁膜3によって基板2が活性領域と素子分離領域とに区画されている。なお、素子分離絶縁膜3下の基板表面2S内に素子分離注入領域が形成されている。
【0022】
活性領域内において、基板表面2S上にMOSFET90のゲート絶縁膜92と、多結晶シリコン膜93と、シリサイド膜94とがこの順序で形成されている。なお、多結晶シリコン膜93とシリサイド膜94とから成る構成がMOSFET90のゲート電極95にあたる。基板2のうちでゲート絶縁膜92下方部分、すなわちチャネル領域を介して、基板表面2S内にMOSFET90のソース/ドレイン領域91が形成されている。
【0023】
次に、抵抗素子5〜8,5Pを説明する。各抵抗素子5〜8,5PはMOSFET90のゲート電極95やソース/ドレイン領域91と不図示の部分で接続されている、あるいは不図示のトランジスタやキャパシタ等に接続されている。なお、抵抗素子5Pは従来と同様の抵抗素子である。
【0024】
図2に抵抗素子5を説明するための断面図を示す。図2は図1中のA−A線における縦断面の一部にあたる。抵抗素子5は素子分離絶縁膜3上に形成された(より具体的には素子分離絶縁膜3を介して基板表面2Sに対面し、素子分離絶縁膜3に接して形成された)多結晶シリコン膜(ないしは半導体膜)50から成る。当該多結晶シリコン膜50は例えば50nm〜250nm厚の帯状に形成されている。
【0025】
特に、抵抗素子5の多結晶シリコン膜50は基板表面2Sの平面視に相当の平面視において第1領域51と、第1領域51よりも不純物(ないしはドーパント)濃度が高い第2領域52とを含んでいる。第2領域52は、例えば、ヒ素を5×1020/cmの濃度で含んでいる。なお、第2領域52内のドーパントはP型/N型のいずれの導電型を与えるものであっても良い。第2領域52内の不純物は結晶欠陥4を誘起する結晶欠陥誘起粒子として働き、不純物濃度の違いに起因して第2領域52は第1領域51よりも結晶欠陥4の密度が高い。
【0026】
多結晶シリコン膜50は第2領域52を少なくとも1つ含んでおり(図1には2つの場合を図示している)、第2領域52は例えば、多結晶シリコン膜50の表面のうちで素子分離絶縁膜3から遠い表面内に形成されている。なお、図1及び図2の図示とは違えて、第2領域52を素子分離絶縁膜3に接するように、すなわち厚さ方向の全体に形成しても構わないし、帯状の幅方向の一部に形成しても(つまり全幅でなくても)構わない。
【0027】
次に、図3に抵抗素子6を説明するための断面図を示す。図3は図1中のB−B線における縦断面の一部にあたる。抵抗素子6は上記抵抗素子5の多結晶シリコン膜50と同様に多結晶シリコン膜60から成り、抵抗素子6の多結晶シリコン膜60は上記多結晶シリコン膜50と同様に第1領域61及び少なくとも1つの第2領域62を含んでいる。
【0028】
特に、抵抗素子6の第2領域62は、上記抵抗素子5の第2領域52が含むドーパントに変えて、多結晶シリコン膜60の導電型に関与しにくい粒子(元素)、例えば窒素、フッ素、アルゴン、シリコン(ないしは半導体元素)等の少なくとも1種類の粒子を結晶欠陥誘起粒子として含んでおり、第2領域62は第1領域61よりも結晶欠陥4の密度が高い。なお、第2領域62中の上記窒素等の濃度は例えば1×1015〜3×1015/cmである。
【0029】
次に、図4に抵抗素子7付近の構造を説明するための断面図を示す。図4は図1中のC−C線における縦断面の一部にあたる。抵抗素子7は上記抵抗素子5の多結晶シリコン膜50と同様に多結晶シリコン膜70から成り、抵抗素子7の多結晶シリコン膜70は上記多結晶シリコン膜50と同様に第1領域71及び少なくとも1つの第2領域72を含んでいる。第2領域72は第1領域71よりも結晶欠陥4の密度が高い。
【0030】
抵抗素子7に関して、半導体装置1は例えばチタンシリサイド、コバルトシリサイド、ニッケルシリサイド、タングステンシリサイド等から成るシリサイド膜73を更に備えている。シリサイド膜73は多結晶シリコン膜70を介して素子分離絶縁膜3に対面し、多結晶シリコン膜70の第2領域72に接するように配置されている。換言すれば、抵抗素子7の第2領域72はシリサイド膜73と素子分離絶縁膜3との間に設けられている。
【0031】
次に、図5に抵抗素子8付近の構造を説明するための断面図を示す。図5は図1中のD−D線における縦断面の一部にあたる。半導体装置1では、素子分離絶縁膜3に少なくとも1つの開口3Kが形成されており、当該開口3Kは素子分離絶縁膜3を厚さ方向に貫いている。(基板表面2Sの平面視において)開口3K内に位置する基板表面2S内には(p型の基板2とは反対の導電型である)n型の不純物領域22が形成されている。
【0032】
抵抗素子8に関して、半導体装置1は不純物領域22に接する、換言すれば開口3K内の基板表面2Sに接するシリサイド膜(ないしは化合物膜)23を更に備えている。なお、シリサイド膜23は上述のシリサイド膜73と同様に各種のシリサイド材料が適用可能である。
【0033】
特に、不純物領域22は、より具体的には開口3K内の基板表面2Sにおけるシリサイド膜23付近の領域は、その周辺よりも結晶欠陥4の密度が高く、上述の抵抗素子7の第2領域52に対応する。
【0034】
そして、シリサイド膜23及び素子分離絶縁膜3に接して、抵抗素子8を成す多結晶シリコン膜(ないしは半導体膜)80が形成されている。なお、多結晶シリコン膜80のうちで素子分離絶縁膜3に接する部分は素子分離絶縁膜3を介して基板表面2Sに対面している。上述の多結晶シリコン膜50と同様に、多結晶シリコン膜80は例えば50nm〜250nm厚の帯状に形成されている。
【0035】
このとき、不純物領域22によって抵抗素子8と基板2とを電気的に分離することができる。また、シリサイド膜23はバリアメタルとして働き、多結晶シリコン膜80(のシリコン原子)が基板2へ進入するのを防ぐことができる。
【0036】
1つの抵抗素子8に対して、換言すれば1つの多結晶シリコン膜80に対して、素子分離絶縁膜3の開口3K、シリサイド膜23及び不純物領域22を含む構成が少なくとも1つ設けられている。なお、図1及び図5の図示とは違えて、帯状の多結晶シリコン80の幅を素子分離絶縁膜3の開口3Kよりも広く形成しても構わない。
【0037】
抵抗素子5,6,7,8の抵抗値は多結晶シリコン膜50,60,70,80の不純物濃度や断面積や長さ等によって調整・設定可能である。
【0038】
次に、図1〜図5に加えて図6〜図13の断面図を参照しつつ半導体装置1の製造方法を説明する。
【0039】
まず、基板2を準備し、例えばLOCOS(Local Oxidation of Silicon)法等によって基板表面2Sに接する素子分離絶縁膜3を形成する。このとき、抵抗素子8用の開口3Kを設けて素子分離絶縁膜3を形成する(図6参照)。なお、素子分離絶縁膜3をトレンチ素子分離法によって形成しても良く、かかる場合には素子分離絶縁膜3は基板2に形成されたトレンチ内に充填される(従って基板表面2S上に形成される)。素子分離絶縁膜3の形成後、ウエルや素子分離注入領域をイオン注入法等で形成する。
【0040】
その後、図7に示すように素子分離絶縁膜3上にレジスト122Aを、開口3Kを開けて形成する。そして、当該レジスト122Aをマスクにして例えばヒ素22Aをイオン注入して、開口3K内の基板表面2S内に不純物領域22を形成する。そして、レジスト122Aを除去する。なお、不純物領域22を形成するためのイオン注入工程は例えばチャネル・ドープ工程と兼ねることが可能である。
【0041】
次に、図8に示すように、不純物領域22を覆って例えばチタン等の金属膜23Aを形成する。続いて、金属膜23Aと不純物領域22とにシリサイド化反応(ないしは合金化反応)を生じさせてシリサイド膜を形成する。なお、一般的にシリサイド化反応は例えばドーパントを活性化させるための熱処理よりも低い温度で実施される。その後、金属膜23Aの未反応部分を除去することにより、図9に示すようにシリサイド膜23を得る。かかるシリサイド化反応時に不純物領域22内に、より具体的には開口3K内の基板表面2Sにおけるシリサイド膜23付近の領域に結晶欠陥4が形成される。
【0042】
その後、MOSFET90(図1参照)のゲート絶縁膜92用の酸化膜を形成する。
【0043】
次に、例えばLPCVD(減圧CVD)法によって、図10に示すように、ドーピングされていない真性の多結晶シリコン膜5Aを50nm〜250nmの厚さで堆積する。このとき、多結晶シリコン膜5Aは素子分離絶縁膜3及びゲート絶縁膜92用の上記酸化膜を覆って基板表面2S上に全面的に形成する。そして、写真製版法によって多結晶シリコン膜5Aをパターニングして、多結晶シリコン膜50,60,70,80、抵抗素子5P用の多結晶シリコン膜及びゲート電極95用の多結晶シリコン膜(後に多結晶シリコン膜93となる)を形成する(図1参照)。
【0044】
その後、抵抗素子5,6の第2領域52,62及び抵抗素子7に関するシリサイド膜73を形成する。
【0045】
詳細には、抵抗素子5の第2領域52は以下のようにして形成する。図11に示すように、多結晶シリコン膜50上にレジスト152Aを、第2領域52を形成する部分を開けて形成する。そして、当該レジスト152Aをマスクとして多結晶シリコン膜50に対して例えばヒ素(ないしは結晶欠陥誘起粒子)52Aをイオン注入する。ヒ素52Aは例えば20keV以上の加速エネルギー及び3×1015/cm以上のドーズ量でイオン注入する。このイオン注入により第2領域52内に結晶欠陥4が形成される(結晶欠陥密度が増大する)。
【0046】
このとき、抵抗素子5の第2領域52のイオン注入工程を、MOSFET90のソース/ドレイン領域91を形成するためのイオン注入工程と同時に実施することが可能である。なお、ソース/ドレイン領域91のためのイオン注入工程においてゲート電極95の多結晶シリコン膜93のためのイオン注入を同時に行っても良い。
【0047】
また、抵抗素子6の第2領域62は以下のようにして形成する。図12に示すように、多結晶シリコン膜60上にレジスト162Aを、第2領域62を形成する部分を開けて形成する。そして、当該レジスト162Aをマスクとして多結晶シリコン膜60に対して例えば窒素(ないしは結晶欠陥誘起粒子)62Aをイオン注入する。窒素62Aは例えば4keV以上の加速エネルギー及び2×1015/cm以上のドーズ量でイオン注入する。このイオン注入により第2領域62内に結晶欠陥4が形成される(結晶欠陥密度が増大する)。
【0048】
なお、窒素62Aに変えて、例えば、フッ素を5keV以上の加速エネルギーで、又は、アルゴンを2keV以上の加速エネルギーで、又は、シリコンを7keV以上の加速エネルギーで注入しても良い。また、複数種類のイオン種を注入しても良い。このとき、イオン種の原子量(原子の大きさ)が大きいほど、同じドーズ量においてより多くの結晶欠陥4を発生させることができる。
【0049】
また、抵抗素子7に関するシリサイド膜73は以下のようにして形成する。図13に示すように、多結晶シリコン膜70上にレジスト173Aを、シリサイド膜73を形成する部分を開けて形成する。そして、レジスト173Aの開口内に露出している多結晶シリコン膜70膜を覆って例えばチタン、コバルト、ニッケル、タングステン等の金属膜73Aを形成する。続いて、金属膜73Aと多結晶シリコン膜70とにシリサイド化反応(ないしは合金化反応)を生じさせてシリサイド膜を形成する。その後、金属膜73Aの未反応部分を除去することにより、図4に示すようにシリサイド膜73を得る。かかるシリサイド化反応時に多結晶シリコン膜70の第2領域72内に結晶欠陥4が形成される(結晶欠陥密度が増大する)。このとき、シリサイド膜73の形成工程を、MOSFET90のシリサイド膜94を形成するための工程と同時に実施することが可能である。
【0050】
なお、図1に示す状態の半導体装置1が得られた後、一般的な工程により保護膜や金属配線を形成する。
【0051】
半導体装置1によれば、第2領域52,62,72内及び不純物領域22内の結晶欠陥4がリーク電流12Pを引き起こす金属原子11P(図16参照)あるいは金属原子11Pと成りうる金属原子をゲッタリングするので、素子分離絶縁膜3下でのリーク電流を低減することができる。また、上述の製造方法によれば、そのような半導体装置1を製造することができる。
【0052】
このとき、第2領域52,62,72内及び不純物領域22内の結晶欠陥4の密度を1015/cmオーダー以上に設定することによって、ゲッタリング効果がより確実に発揮される。
【0053】
更に、多結晶シリコン膜50において複数の第2領域52の間隔を、リーク電流12Pを引き起こす金属原子11P(図16参照)の拡散長よりも短く(発明者の実験によれば例えば10μm以下に)設定することがより好ましい。かかる間隔設定によれば、金属原子11Pをより確実にゲッタリングすることができる。このような間隔設定は、多結晶シリコン膜60,70の第2領域62,72及び基板2内の不純物領域22のそれぞれについても当てはまる。
【0054】
更に、上述の間隔設定は隣接する抵抗素子5〜8間についても当てはまる。例えば、抵抗素子5の第2領域52と抵抗素子6の第2領域62との間隔を10μm以下に設定することがより好ましい。また、例えば抵抗素子5の第2領域52と抵抗素子7の第2領域72との間隔を10μm以下に設定する場合には、両第2領域52,72間に第2領域62を設けなくても構わない。すなわち、図1のように第2領域52,62,72及び不純物領域22(図5参照)を抵抗素子5〜8の配列方向(図1において横方向)に並べる必要はない。
【0055】
なお、例えば抵抗素子5の低抵抗の第2領域52は多結晶シリコン膜50の一部に形成されているに過ぎないので、抵抗素子5によれば同形状の従来の抵素子5Pと同様の抵抗値が得られる。
【0056】
さて、第2領域52,62,72及び不純物領域22を組み合わせても構わない。例えば第2領域52内に窒素等をイオン注入することにより、第2領域52,62を組み合わせることが可能である。あるいは、例えば、第2領域52又は62上にシリサイド膜73を形成しても良い。なお、上述のように一般的にシリサイド化反応はドーパントを活性化させるための熱処理よりも低い温度で実施されるので、第2領域52又は62とシリサイド膜73との両方に起因して結晶欠陥4を生成することができる。あるいは、例えば、抵抗素子8を成す多結晶シリコン膜80に対して第2領域52又は62又はシリサイド膜73を設けても構わない。
【0057】
また、上述の説明では1つの素子分離絶縁膜3上に複数種類の抵抗素子5〜8が形成されている場合を述べたが、1つの素子分離絶縁膜3上に1種類の抵抗素子5,6,7又は8を形成しても良い。
【0058】
また、複数の抵抗素子50,60,70,80を組み合わせて1つの抵抗素子を形成しても構わない。例えば、1つの多結晶シリコン膜に対して別個に第2領域52及びシリサイド膜73の両方を設けることが可能である。
【0059】
また、多結晶シリコン膜50,60,70,80に変えて非結晶(アモルファス)シリコンや他の半導体材料を用いることも可能である。また、非結晶シリコンを熱処理することにより多結晶シリコン膜50,60,70,80を形成しても構わない。
【0060】
なお、半導体装置1は一般的な比例縮小則に従って設計することにより、将来的な微細化の進展にも対応可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 半導体装置、2 半導体基板、2S 基板表面、3 素子分離絶縁膜(絶縁膜)、3K 開口、4 結晶欠陥、5,6,7,8 抵抗素子、22 不純物領域(第2領域)、23,73 シリサイド膜(化合物膜)、23A,73A 金属膜、50,60,70,80 多結晶シリコン膜(半導体膜)、51,61,71 第1領域、52,62,72 第2領域、52A ヒ素(結晶欠陥誘起粒子)、62A 窒素(結晶欠陥誘起粒子)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の半導体表層に配置された活性領域と、
前記活性領域を区画するように前記半導体基板の半導体表層に形成され、絶縁膜からなる素子分離膜と、
前記素子分離膜上に配置された半導体膜からなる抵抗素子と、を備え、
前記抵抗素子は、平面視において第1領域と、前記第1領域内よりも結晶欠陥の密度が高い第2領域とを含み、
前記第2領域は、前記絶縁膜上に配置される、
半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であって、前記第2領域に接して配置され、前記半導体膜の材料と金属との化合物からなる化合物膜をさらに備える、半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置であって、前記第2領域は、前記結晶欠陥を誘起している結晶欠陥誘起粒子を含んでいる、半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置であって、前記結晶欠陥誘起粒子は、前記半導体膜に対してドーパントとして働く元素、半導体元素、窒素、フッ素及びアルゴンのうちの少なくとも1種類の粒子を含む、半導体装置。
【請求項5】
請求項3に記載の半導体装置であって、前記結晶欠陥誘起粒子は、前記半導体膜の導電型に関与しない粒子からなる、半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置であって、前記結晶欠陥誘起粒子は、窒素、フッ素、アルゴン、シリコンの何れかからなる、半導体装置。
【請求項7】
請求項2に記載の半導体装置であって、前記化合物膜は配線が接続されない、半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の半導体装置であって、前記半導体膜は、多結晶半導体膜と非結晶半導体膜とのいずれかを含む、半導体装置。
【請求項9】
(a)半導体基板の表層に、活性領域を区画するように、絶縁膜からなる素子分離膜を形成する工程と、
(b)前記素子分離膜上に、半導体膜からなる抵抗素子を形成する工程とを備え、
前記工程(b)は、
(b)-1)平面視における前記半導体膜の一部の領域内の結晶欠陥の密度を増大する工程を
含み、
前記半導体膜の前記一部の領域は、前記半導体膜のうちで前記絶縁膜の上に配置されている部分である、
半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記工程(b)-1)は、
(b)-1-1)前記半導体膜の前記一部の領域付近で合金化反応を生じさせる工程、又は、
(b)-1-2)前記半導体膜の前記一部の領域に対してイオン注入を行う工程を含む、
半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−182488(P2012−182488A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−119609(P2012−119609)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【分割の表示】特願2001−231186(P2001−231186)の分割
【原出願日】平成13年7月31日(2001.7.31)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】