説明

半導体装置

【課題】ヒューズを切断するか否かで回路状態を設定することなく、不良メモリセルを冗長メモリセルに簡単に置換することができる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、複数のメモリセルおよび冗長メモリセルを含むメモリを搭載する。選択信号に応じて、メモリセルの不良ビットを冗長メモリセルに置換するか否かを制御する冗長セルセレクタと、選択信号とグランドとの間に接続されたプルダウン抵抗とを備える。選択信号は接続パッドに接続され、接続パッドは、選択信号の電位に応じて、オープン状態とされているか、もしくは電源ピンにボンディングされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリを搭載する半導体装置において、メモリセルの不良ビット(不良メモリセル)を冗長メモリセル(不良メモリセルと置換して使用される予備のメモリセル)に置換して救済する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大規模メモリが搭載される半導体装置において、メモリの歩留まりを向上させる技術の1つにメモリリペアがある。メモリリペアとは、事前にメモリのテストを実施して不良メモリセルを把握しておき、不良メモリセルがアクセスされる場合に、あらかじめ作り込まれている冗長メモリセルがアクセスされるように回路を切り替えておくことによって、良品のメモリと同じ機能を実現する技術である。
【0003】
なお、どのメモリセルを冗長メモリセルに置換するかは不良ビットの発生状況によって異なる。このため、半導体チップ毎に回路の切り替え仕様を変える必要があるとともに、恒久的にその切り替え情報が半導体チップ内部に保持される必要がある。
【0004】
これを実現するために、レーザーで切断可能な複数のヒューズを半導体チップ内部に設けておき、半導体ウェハの製造後に、ヒューズを切断するか否かで回路状態を任意に設定する手法が用いられている。一度ヒューズを切断すると、回路状態はパッケージングされた後も保持されるため、不良メモリセルが冗長メモリセルに置換された状態が維持され、正常に動作する半導体装置を提供できる。
【0005】
しかし、ヒューズ切断をレーザーで行うため、原理上、ヒューズの上下層とその周囲の領域にはデバイスや配線を配置できない。そのため、ヒューズ配置領域は半導体チップ内で相当な面積を占め、チップサイズの増大につながる。また、レーザーリペア装置を使用するため、その設備費、設置場所等を考慮する必要がある。さらに、リペア時間およびリペア後テストがテスト時間に上乗せされるため、テストコストが上昇する。
【0006】
なお、本発明に関わる先行技術文献として、例えば特許文献1のマイクロプロセッサがある。
【0007】
特許文献1には、冗長メモリセルを有するキャッシュメモリを内蔵したマイクロプロセッサにおいて、キャッシュメモリの各ビットが不良であるか否かを試験しその不良ビットを抽出する不良ビット検出手段と、検出手段により検出された不良ビットを含むメモリブロックを冗長メモリセルと置き換える手段とを備え、これらの手段が電源電圧の供給を受けてからシステムリセットが解除されるまでの間に実行されることが開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平7−44461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、ヒューズを切断するか否かで回路状態を設定することなく、不良メモリセルを冗長メモリセルに簡単に置換することができる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、複数のメモリセルおよび冗長メモリセルを含むメモリを搭載する半導体装置であって、
選択信号に応じて、前記メモリセルの不良ビットを前記冗長メモリセルに置換するか否かを制御する冗長セルセレクタと、前記選択信号とグランドとの間に接続されたプルダウン抵抗とを備え、
前記選択信号は接続パッドに接続され、該接続パッドは、前記選択信号が必要とする電位に応じて、オープン状態とされているか、もしくは電源ピンにボンディングされていることを特徴とする半導体装置を提供するものである。
【0011】
ここで、前記選択信号は、電源パッドと隣接する接続パッドに接続され、該接続パッドは、前記選択信号が必要とする電位に応じて、オープン状態とされているか、もしくは前記接続パッドに隣接する電源パッドとともに、電源ピンにダブルボンディングされていることが望ましい。
【0012】
また、本発明は、複数のメモリセルおよび冗長メモリセルを含むメモリを搭載する半導体装置であって、
選択信号に応じて、前記メモリセルの不良ビットを前記冗長メモリセルに置換するか否かを制御する冗長セルセレクタと、前記選択信号と電源との間に接続されたプルアップ抵抗とを備え、
前記選択信号は接続パッドに接続され、該接続パッドは、前記選択信号が必要とする電位に応じて、オープン状態とされているか、もしくはグランドピンにボンディングされていることを特徴とする半導体装置を提供する。
【0013】
ここで、前記選択信号は、グランドパッドと隣接する接続パッドに接続され、該接続パッドは、前記選択信号が必要とする電位に応じて、オープン状態とされているか、もしくは前記接続パッドに隣接するグランドパッドとともに、グランドピンにダブルボンディングされていることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の半導体装置では、ヒューズを切断するか否かによって回路状態を設定するのではなく、ボンディングをする時に、選択信号の電位を設定することによって、恒久的に任意の回路状態に設定することができる。本発明の半導体装置では、ヒューズが不要なので、そのチップサイズを削減することができ、ヒューズを切断するための特別な装置や追加のテスト時間も不要であり、コストダウンすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の半導体装置を詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の半導体装置の構成を表す一実施形態の概略図である。同図に示す半導体装置10は、メモリ12と、冗長セルセレクタ14と、2つのプルダウン抵抗(Pull Down)16a、16bとによって構成されている。なお、図1では、説明を容易にするために、上記以外の構成要素を省略しているが、実際には、上記以外の各種の構成要素が含まれていることは当然である。
【0017】
メモリ12は、図2に示すように、それぞれ複数のメモリセルを含む4つのメモリセルブロック3〜0と、複数の冗長メモリセルを含む冗長メモリセルブロックとによって構成されている。本実施形態では、不良メモリセルだけを冗長メモリセルに置換するのではなく、メモリセルブロック3〜0のうち、不良メモリセルを含むメモリブロックを冗長メモリセルブロックと置換するものとする。
【0018】
冗長セルセレクタ14は、選択信号S1,S0に応じて、不良メモリセルを冗長メモリセルに置換するか否かを制御する。本実施形態の場合、冗長セルセレクタ14は、上記の通り、不良メモリセルを含むメモリブロックを冗長メモリセルブロックと置換するか否かを制御する。冗長セルセレクタ14からは、置換するか否かを制御するための制御信号C3〜0が出力され、メモリ12に入力される。
【0019】
ここで、選択信号S1,S0は、その電位によって、メモリセルの不良ビットを冗長メモリセルに置換するか否かを決定するもので、従来、ヒューズを介して電源に接続されていた信号である。選択信号S1,S0は、それぞれ電源パッド(VDD)18a、18bに隣接する接続パッド20a、20bと接続されている。また、選択信号S1,S0とグランドとの間に、それぞれプルダウン抵抗16a、16bが接続されている。
【0020】
冗長セルセレクタ14は、本実施形態の場合、図3に示すように、2つのインバータ22a、22bと、4つのAND回路24a、24b、24c、24dとによって構成されている。
【0021】
AND回路24aには、選択信号S1,S0と、イネーブル信号ENとが入力され、AND回路24aからは制御信号C3が出力される。制御信号C3は、図2に示すように、メモリ12のメモリセルブロック3に入力される。
【0022】
以下順に、AND回路24bには、選択信号S1と、インバータ22bを介して選択信号S0の反転信号と、イネーブル信号ENとが入力され、AND回路24bから出力される制御信号C2は、メモリ12のメモリセルブロック2に入力される。
【0023】
AND回路24cには、インバータ22aを介して選択信号S1の反転信号と、選択信号S0と、イネーブル信号ENとが入力され、AND回路24cから出力される制御信号C1は、メモリ12のメモリセルブロック1に入力される。
【0024】
AND回路24dには、インバータ22a、22bを介して選択信号S1,S0の反転信号と、イネーブル信号ENとが入力され、AND回路24dから出力される制御信号C0は、メモリ12のメモリセルブロック0に入力される。
【0025】
なお、イネーブル信号ENは、図1では省略しているが、選択信号S1,S0と同様のものとして扱う。従って、イネーブル信号ENも接続パッドに接続され、イネーブル信号ENとグランドとの間にプルダウン抵抗が接続されている。
【0026】
冗長セルセレクタ14では、イネーブル信号ENがローレベルの時、制御信号C3〜C0は全てローレベルとなる。この場合、メモリ12において、メモリセルブロック3〜0と冗長メモリセルブロックとの置換は行われない。
【0027】
一方、イネーブル信号ENがハイレベルで、かつ選択信号S1,S0がともにハイレベルの時、制御信号C3だけがハイレベルとなる。この場合、メモリ12では、メモリセルブロック3が冗長メモリセルブロックと置換される。
【0028】
以下同様に、イネーブル信号ENがハイレベルで、かつ選択信号S1がハイレベル、選択信号S0がローレベルの時、制御信号C2だけがハイレベルとなり、メモリセルブロック2が冗長メモリセルブロックと置換される。
【0029】
イネーブル信号ENがハイレベルで、かつ選択信号S1がローレベル、選択信号S0がハイレベルの時、制御信号C1だけがハイレベルとなり、メモリセルブロック1が冗長メモリセルブロックと置換される。
【0030】
イネーブル信号ENがハイレベルで、かつ選択信号S1,S0がともにローレベルの時、制御信号C0だけがハイレベルとなり、メモリセルブロック0が冗長メモリセルブロックと置換される。
【0031】
半導体装置10では、事前にメモリ12のテストを実施して、不良メモリセルが含まれているメモリブロックを把握しておく。そして、半導体装置10の各接続パッドを接続ピンにボンディングする時に、選択信号S1,S0が必要とする電位に応じて、選択信号S1,S0が接続された接続パッド20a、20bを、オープン状態とするか、もしくは接続パッド20a、20bに隣接する電源パッド18a、18bとともに、電源ピン(VDDピン)にダブルボンディングする。
【0032】
例えば、メモリセルブロック3〜0の全てに不良メモリセルが含まれていない場合、イネーブル信号ENをローレベルとする必要がある。従って、イネーブル信号ENが接続された接続パッドオープン状態とする。
【0033】
これによって、イネーブル信号ENは、プルダウン抵抗を介してグランドに接続され、所定電位のローレベルとなる。
【0034】
一方、メモリセルブロック0に不良メモリセルが含まれている場合、選択信号S1,S0をローレベルとする必要がある。従って、選択信号S1,S0が接続された接続パッド20a、20bを、ともにオープン状態とする。
【0035】
これによって、選択信号S1,S0は、それぞれプルダウン抵抗16a、16bを介してグランドに接続され、所定電位のローレベルに設定される。
【0036】
以下同様に、メモリセルブロック1に不良メモリセルが含まれている場合、選択信号S1をローレベル、選択信号S0をハイレベルとする必要がある。従って、選択信号S1が接続された接続パッド20aをオープン状態とし、選択信号S0が接続された接続パッド20bを、接続パッド20bに隣接する電源パッド18bとともに、電源ピンにダブルボンディングする。
【0037】
これによって、選択信号S1は、上記と同様にしてローレベルに設定され、選択信号S0は、プルダウン抵抗16bを介してグランドに接続されるとともに電源ピンに接続され、所定電位のハイレベルに設定される。
【0038】
メモリセルブロック2に不良メモリセルが含まれている場合、選択信号S1をハイレベル、選択信号S0をローレベルとする必要がある。従って、選択信号S1が接続された接続パッド20aを、接続パッド20aに隣接する電源パッド18aとともに、電源ピンにダブルボンディングし、選択信号S0が接続された接続パッド20bをオープン状態とする。
【0039】
これによって、選択信号S1は、プルダウン抵抗16aを介してグランドに接続されるとともに電源ピンに接続され、所定電位のハイレベルに設定される。また、選択信号S0は、上記と同様にしてローレベルに設定される。
【0040】
メモリセルブロック3に不良メモリセルが含まれている場合、選択信号S1,S0をともにハイレベルとする必要がある。従って、選択信号S1が接続された接続パッド20aを、接続パッド20aに隣接する電源パッド18aとともに、電源ピンにダブルボンディングし、選択信号S0が接続された接続パッド20bを、接続パッド20bに隣接する電源パッド18bとともに、電源ピンにダブルボンディングする。
【0041】
これによって、選択信号S1,S0は、上記と同様にしてともにハイレベルに設定される。
【0042】
半導体装置10では、ヒューズを切断するか否かによって回路状態を設定するのではなく、上記のように、ボンディングをする時に、選択信号S1,S0の電位を適宜設定することによって、恒久的に任意の回路状態に設定することができる。半導体装置10では、ヒューズが不要なので、そのチップサイズを削減することができ、ヒューズを切断するための特別な装置や追加のテスト時間も不要であり、コストダウンすることができる。
【0043】
なお、メモリに含まれるメモリセルブロックの数はいくつでもよく、1つのメモリセルブロックに含まれるメモリセルの数も何ら限定されない。また、メモリセルブロックを冗長メモリセルブロックに置換することも限定されず、例えば1ワード単位、1ビット単位など、任意の単位で置換してもよい。また、冗長セルセレクタの具体的な回路構成も何ら限定されず、同様の機能を果たすどのような回路であってもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、プルダウン抵抗と電源パッドおよび電源ピンを使用しているが、プルアップ抵抗とグランドパッドおよびグランドピンを使用しても同様の機能を実現できる。また、両者を組み合わせて使用しても良い。また、選択信号の本数も2本に限らず、必要に応じて何本の選択信号を使用しても良い。また、半導体装置には、上記以外の他の構成要素が含まれていても良い。
【0045】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明の半導体装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の半導体装置の構成を表す一実施形態の概略図である。
【図2】図1に示すメモリの構成を表す概略図である。
【図3】図1に示す冗長セルセレクタの構成を表す概略図である。
【符号の説明】
【0047】
10 半導体装置
12 メモリ
14 冗長セルセレクタ
16a、16b プルダウン抵抗
18a、18b 電源パッド
20a、20b 接続パッド
22a、22b インバータ
24a、24b、24c、24d AND回路
S1,S0 選択信号
C3〜0 制御信号
EN イネーブル信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のメモリセルおよび冗長メモリセルを含むメモリを搭載する半導体装置であって、
選択信号に応じて、前記メモリセルの不良ビットを前記冗長メモリセルに置換するか否かを制御する冗長セルセレクタと、前記選択信号とグランドとの間に接続されたプルダウン抵抗とを備え、
前記選択信号は接続パッドに接続され、該接続パッドは、前記選択信号が必要とする電位に応じて、オープン状態とされているか、もしくは電源ピンにボンディングされていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
複数のメモリセルおよび冗長メモリセルを含むメモリを搭載する半導体装置であって、
選択信号に応じて、前記メモリセルの不良ビットを前記冗長メモリセルに置換するか否かを制御する冗長セルセレクタと、前記選択信号と電源との間に接続されたプルアップ抵抗とを備え、
前記選択信号は接続パッドに接続され、該接続パッドは、前記選択信号が必要とする電位に応じて、オープン状態とされているか、もしくはグランドピンにボンディングされていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−344254(P2006−344254A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166652(P2005−166652)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(501285133)川崎マイクロエレクトロニクス株式会社 (449)
【Fターム(参考)】