説明

半導体装置

【課題】半導体素子の電極と配線部材を繋ぐ金属細線において、異径の金属細線を配置して、パワーモジュールの小型化を図るとともに、機械的信頼性の高い半導体装置を提供する。
【解決手段】スイッチング素子1、このスイッチング素子1に形成された第一の電極4と第二の電極5、これら各電極と配線部材とを接続する金属細線、前記スイッチング素子1、配線部材、金属細線を収納する外装ケース7、及び前記外装ケース7に封入する封入樹脂11を有する半導体装置であって、第一の金属細線6は第二の金属細線9よりも線径が大きく、かつ長くし、第一の金属細線6の近傍に略並行に第二の金属細線9を配線した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、線径が異なる複数の金属細線を用いてスイッチング素子と配線部材を繋いでなる半導体装置に関わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来からパワーモジュールなどにおいて、パワー回路ブロックと制御ブロックとを内部配線用の端子ブロックを用いずに、直接ワイヤボンディングする技術が知られている(特許文献1)。
一方、この発明が対象とする半導体装置は、基板に搭載されたスイッチング素子と配線部材とを有し、配線部材は、装置外部と電流の受け渡しをするために、外部端子と接続されるとともに、スイッチング素子とも接続される。スイッチング素子と配線部材の接続には、主として比較的電気抵抗が小さいアルミニウムを主成分とする材質からなる金属細線が用いられることが多い。また、スイッチング素子には、半導体装置が制御する電流を引き出すための第一の電極が素子表面に形成されるとともに、電流を流したり遮断したりするために電圧もしくは電流を印加する第二の電極が第一の電極と同じ素子表面に形成されている。
【0003】
第一の金属細線は、第一の電極から第一の配線部材に向かってループ形成されて接続され、また、第二の金属細線は、第二の電極から制御基板につながる第二の配線部材に向かってループ形成されて接続されている。さらに、第一、第二の配線部材はあらかじめ外装ケースに保持されるとともに、外装ケース内には、保護のために樹脂が封入されて、金属細線の周辺を覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−204115号公報(第3頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体装置においては、スイッチング素子の能動面積が大きいほど、制御できる電流が大きく性能が向上する。一方、第二の電極は印加される電力が小さいため、第二の電極を極力小さく作り、第一の電極を大きくする。また、第一の金属細線は大きな電流を流す必要がある一方で、第二の金属細線は接合する第二の電極が小さいこと、大きな電流を流す必要がないことから、第一の金属細線よりも線径が小さくなる。
【0006】
金属細線は線径が小さいほど、剛性が小さくなり、機械的信頼性が低下して、半導体装置に要求される性能によっては、線径を大きくせざるを得ず、半導体装置の小形化を妨げるだけでなく、第一の電極の面積が目減りして素子の性能を十分引き出せない問題があった。特に、この種半導体装置では、保護のために樹脂封入する構造となっており、封入樹脂と金属細線との線膨張差に起因する熱応力が金属細線に発生したり、封入樹脂の振動によって金属細線が揺られて歪みが蓄積し、金属細線の機械的特性が制限されるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、かかる課題を解決するためになされるものであり、スイッチング素子、スイッチング素子に形成された第一の電極と第二の電極、第一の電極と電気的に繋がる第一の配線部材、第一の電極と第一の配線部材を繋ぐ少なくとも1本の第一の金属細線、第二の電極と電気的に繋がる第二の配線部材、第二の電極と第二の配線部材を繋ぐ少なくとも1本の第二の金属細線、スイッチング素子、第一の配線部材、第二の配線部材、第一の金属細線、および第二の金属細線を収納する外装ケース、外装ケースに封入する封入樹脂とを備えた半導体装置であって、第一の金属細線は、第二の金属細線よりも線径が大きく、かつ長く又はその配線高さを高くし、第一の金属細線の近傍に略並行に第二の金属細線を配線したものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、半導体装置内部にあって、スイッチング素子と配線部材の間に配線される第一の金属細線と第二の金属細線のうち、剛性が大きい第一の金属細線で被覆樹脂が拘束されるために、剛性が小さい第二の金属細線は樹脂物性に影響することなく、機械的信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明における半導体装置の実施の形態1を説明するための概略図を示し、(a)は平面図、(b)は横断面を模式的に示す。
【図2】この発明の実施の形態2を説明するための概略平面図を示す。
【図3】この発明の実施の形態2を説明するための模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1を説明するために一部を取り出した部分模式図であり、図1(a)は平面、図1(b)は横断面を示す。
スイッチング素子1は、基板2に形成された金属配線パターン3の上に例えばはんだや導電ペーストによって接合される。スイッチング素子1には、その表面に半導体装置の主たる電流を制御するための第一の電極4と、スイッチング素子のゲートあるいはベースの電圧もしくは電流を制御するための第二の電極5が形成されている。第一の電極4には本実施の形態では4本の第一の金属細線6が接合されている。第一の金属細線6のもう一方の端部は、外装ケース7に保持された第一の配線部材である第一のターミナル部8あるいは基板2上の配線パターン部12に接合されている。このように、第一の金属細線によって第一の配線部材とスイッチング素子、あるいはスイッチング素子同士を電気的に接続することになる。
【0011】
一方、スイッチング素子1上の第二の電極5には、第一の金属細線6よりも線径が小さい第二の金属細線9が接合され、もう一方の端部はスイッチング素子1を制御する制御基板に接続するための第二のターミナル部10あるいは基板2上の配線パターン部13に接合されている。第二の金属細線9は第一の金属細線6に比べて線径を小さくすることで、第二の電極5の面積も小さくてすみ、大きな電流を制御するために設けた第一の電極4を大きな面積とすることができる。
また、第一の金属細線6は大きな電流を制御するために、電気抵抗の小さいアルミニウムを材質とし、線径は直径100〜600μm程度で、好ましくは、300〜500μmであれば、接合する際のエネルギーでスイッチング素子に損傷を与えることなく、接合することができる。一方、第二の金属細線9は、同等の機械的特性を有するアルミニウムあるいは金を材質とし、線径は直径15〜150μm程度で、好ましくは、20〜80μmであれば、第二の電極面積に対して十分に位置的な尤度をもって接合することができる。
【0012】
また、半導体装置には、スイッチング素子1や金属細線6、9を含む配線を保護するために封入樹脂11が封入されている。本実施の形態の金属細線においては、第二の金属細線9は、第一の金属細線6の極近傍に配線されており、各々が略平行なように配線されている。また、第一の金属細線6は、第二の金属細線9よりも長く形成されている。
第二の金属細線9は線径が小さいために、第一の金属細線と比べると剛性があまり大きくなく、半導体装置がさらされる温度サイクルや振動が加わると、封入樹脂との機械的物性の差異によって封入樹脂と金属細線が相対的に変位し、発生するストレスに対する耐量が第一の金属細線6に比べて小さい。
【0013】
しかしながら、本実施の形態のように剛性が小さい第二の金属細線9の極近くに第一の金属細線6を平行に配線することにより、封入樹脂11は剛性が高い第一の金属細線6によって拘束されるため、第一の金属細線6の変位に近くなる。一方、第一の金属細線6と第二の金属細線9はほぼ同等の機械的物性を有していることから、第二の金属細線9の周囲の封入樹脂と第二の金属細線9の相対変位は小さくなり、ストレスの発生を低減して機械的信頼性が向上する。
また、剛性が高い第一の金属細線6が例えば振動時に封入樹脂11に対して発生する慣性力を受け止めて樹脂の動きを拘束するため、剛性が小さい第二の金属細線9が樹脂に揺られることがなく、耐振性の向上が顕著である。
【0014】
なお、図1(b)の左側部に示すように、第一電極4と第一ターミナル部8とを接合する第一の金属細線6のように、第一の金属細線の高さが、第二の金属細線の高さよりも高くすることによって、第二の金属細線の頂部に作用する封入樹脂量が小さくなる。このため、線径が小さい第二の金属細線の接合部に特に大きなモーメントを作用させる頂部の樹脂量を減らせ、かつ、剛性が高い第一の金属細線が樹脂の動きを制限するため、接合部に作用するモーメントを大幅に低減させることができ、機械的信頼性が向上する。
【0015】
実施の形態2.
図2は、この発明の実施の形態2を説明するための半導体装置の概略図で、平面図を模式的に示す図である。本実施の形態では、第二の金属細線9a、9bは第一の金属細線6a、6bに囲まれるように配線されている。同様に、第二の金属細線9c、9dは第一の金属細線6c、6dに囲まれるように配線されている。また、図示しないが本実施形態においても、半導体装置内部に樹脂が封入されている。
剛性が大きい第一の金属細線6a、6b、6c、6dによって囲まれる領域の封入樹脂は、両側の金属細線に拘束されるために温度変化や振動時の変位が小さくなり、第一の金属細線6a、6b、6c、6dと同等材質である第二の金属細線9a、9b、9c、9dとの相対変位が小さくなり、ストレスを低減することができる。
さらに、第一の金属細線6a、6b、6c、6dによって囲まれる領域は小さい容積であるために、第二の金属細線9a、9b、9c、9dへの機械的影響が小さくなり、とりわけ振動時の樹脂の動きが小さくなるので、耐振性の向上が顕著となる。
【0016】
また、基板2上に第二の金属細線9a、9bと接続する配線パターン部13が形成されており、配線パターン部13からさらに図示しない配線ターミナル部に接続される。配線パターン部13は本実施形態では第一の金属細線6bをくぐるように下方に配線されており、立体的にコンパクトに集約されて配線をすることができる。
なお、第一の金属細線6aは第二の金属細線9aよりも長く、第二の金属細線9a、9bと第二の電極5ならびに配線パターン部12の接合部は、第一の金属細線6aの両端部から金属細線6bとの垂線で囲まれた領域(図3中斜線部)内に位置している。第二の金属細線9c、9dの場合も同様である。このような位置関係によって、特に信頼性を左右する接合部14、15近傍の樹脂が剛性の高い第一の金属細線6a、6b又は6c、6dの拘束を受けるので、接合部の信頼性が向上し、半導体装置としての信頼性が向上する。
【0017】
また、図1で説明したと同様に第二の金属細線の高さが、第一の金属細線の高さよりも小さくすることによって、線径が小さい第二の金属細線の接合部に特に大きなモーメントを作用させる第二の金属細線の頂部に作用する封入樹脂量が小さくなる。また、これと相まって剛性が高い第一の金属細線が樹脂の動きを制限するため、接合部に作用するモーメントを低減させることができ、機械的信頼性が向上する。
なお、本発明の実施形態のごとく、第一の金属細線が複数本形成されている場合には、第二の金属細線に最も近く配置された第一の金属細線6a1,6b1,6c1,6d1が、その他の金属細線と異なり、第二の金属細線の高さより高くするようにすれば、他の第一の金属細線を所望の高さとしつつ、上記と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 スイッチング素子、2 基板、3 金属配線パターン、4 第一の電極、5 第二の電極、6、6a、6b、6c、6d 第一の金属細線、7 外装ケース、8 第一ターミナル部、9、9a、9b、9c、9d 第二の金属細線、10 第二ターミナル部、11 封入樹脂、12 配線パターン部、13 配線パターン部、14 接合部、15 接合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子、前記スイッチング素子に形成された第一の電極と第二の電極、前記第一の電極と電気的に繋がる第一の配線部材、前記第一の電極と前記第一の配線部材を繋ぐ少なくとも1本の第一の金属細線、前記第二の電極と電気的に繋がる第二の配線部材、前記第二の電極と前記第二の配線部材を繋ぐ少なくとも1本の第二の金属細線、前記スイッチング素子、前記第一の配線部材、前記第二の配線部材、前記第一の金属細線および前記第二の金属細線を収納する外装ケース、前記外装ケースに封入する封入樹脂とを有する半導体装置であって、前記第一の金属細線は、前記第二の金属細線よりも線径が大きく、前記第一の金属細線の近傍に略並行に前記第二の金属細線を配線するとともに、前記第一の金属細線は、前記第二の金属細線よりも長く配線したことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
スイッチング素子、前記スイッチング素子に形成された第一の電極と第二の電極、前記第一の電極と電気的に繋がる第一の配線部材、前記第一の電極と前記第一の配線部材を繋ぐ少なくとも1本の第一の金属細線、前記第二の電極と電気的に繋がる第二の配線部材、前記第二の電極と前記第二の配線部材を繋ぐ少なくとも1本の第二の金属細線、前記スイッチング素子、前記第一の配線部材、前記第二の配線部材、前記第一の金属細線および前記第二の金属細線を収納する外装ケース、前記外装ケースに封入する封入樹脂とを有する半導体装置であって、前記第一の金属細線は、前記第二の金属細線よりも線径が大きく、前記第一の金属細線の近傍に略並行に前記第二の金属細線を配線するとともに、前記第一の金属細線の高さは、前記第二の金属細線の高さより高くなるよう配線したことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記第二の金属細線は、前記第一の金属細線の間に挟まれるように配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第一の金属細線は複数本平行して設けられ、そのうち、少なくとも前記第二の金属細線に最も近い金属細線を前記第二の金属細線の高さよりも高くしたことを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第二の金属細線と接続される配線パターン部は、前記第一の金属細線の下をくぐって形成されていることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−267685(P2010−267685A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116030(P2009−116030)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】