説明

半導体装置

【課題】 半導体装置の放熱性を向上させる。
【解決手段】 半導体素子と、その半導体素子を搭載し側面および背面の一部に切り欠き部が形成された絶縁性基板と導電配線とから構成された配線基板とを備えており、上記導電配線が、上記絶縁性基板の上面に、上記半導体素子の外形よりも配置面積が大きく少なくとも銅を含む上面導電配線と、上記絶縁性基板の背面に、上記上面導電配線と電気的に接続された背面導電配線とを有する半導体装置であって、上記背面導電配線が、上記絶縁性基板の背面から上記切り欠き部に延長して配置され、少なくともタングステンを含む第一の金属膜と、その第一の金属膜の配置面積よりも広く、その一部が上記第一の金属膜の上に配置され、少なくとも銅を含む第二の金属膜とから構成されており、上記第二の金属膜が上記第一の金属膜の上から上記第一の金属膜が配置されていない上記絶縁性基板の背面上にかけて略均一な膜厚である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を配線基板に搭載した半導体装置に関し、より詳細には、半導体素子からの放熱性を向上させた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の配線基板は、例えば、セラミックスを材料とする絶縁性基板の表面に、金属材料で配線を施したものである。このような配線基板のうち、絶縁性基板の内部に内部配線が埋め込まれたものでは、その内部配線と絶縁性基板の上面および背面に配置された導電配線との導通をとるため、従来は、配線基板の厚さ方向に貫通されたビアによるのが一般であった。しかし、こうしたビアは、タングステンやモリブデン等の高融点金属からなり、銅と比較して放熱性が悪い。そのため、高温で焼成するセラミックスを材料として配線基板を形成するとき、上記の高融点金属は好適に利用できるが、熱伝導率が良い銅のような低融点金属が利用できなくなり、配線基板の放熱性を十分に確保することができない。
【0003】
つまり、図1に示したように配線基板101の背面(図示上)102に同時焼成により主にタングステンを材料とする導電配線(同拡大図中のダブルハッチング部)の下地層102aを形成すると共に、側面103に対して背面102に連なるキャスタレーション用切り欠き部104を設けてその内面にも背面102の導電配線102aと同様に同時焼成により導電配線(同拡大図中のダブルハッチング部)104aを形成している。そして、これらの導電配線の下地層の上にNi(ニッケル)鍍金及びAu(金)鍍金を施して、キャスタレーションとし、配線基板101の内部配線(図示せず。)と背面102の導電配線102aとの導通を確保するようにしている。
【0004】
このようなキャスタレーションを備えた配線基板101は、従来、次のようにして製造されていた。すなわち、セラミックの各グリーンシートに、必要なビアと共にキャスタレーション用スルーホールを穿孔、形成する。次いで、そのシートの主面にタングステンやモリブデンを含む高融点金属を成分とするメタライズ(導体)ペーストを印刷(塗布)すると共にスルーホールに充填し、真空引きすることによりそのスルーホール内面に同ペーストを塗布する。そして、各グリーンシートを積層して、熱圧着し、これらを同時焼成する。その後、背面102の導電配線102aやキャスタレーション用スルーホール104などの各導電配線104aにNi鍍金やAu鍍金をすることで、大判の配線基板とする。そして、半導体装置の製造工程の最終段階で、キャスタレーション用スルーホールの中心を通る基板区画用の境界線で大判の配線基板を切断して多数の配線基板とする。なお、この切断の際に、キャスタレーション用スルーホールが分割されることにより、キャスタレーション用切り欠き部が形成される。
【0005】
ところが、上述したような製法では焼成により配線基板101に大きな反りや変形が発生するため、導電配線のパターニングの精度を向上させることができない。また、半導体素子が搭載される上面の導電配線や、外部の電極端子と接続させるための背面の導電配線の平滑性ないし平面度が要請される配線基板を作ることはできない。
【0006】
このような問題に対しては、配線基板の上面および背面の導電配線について、同時焼成で形成することなく配線基板を焼成、形成した後でスパッタリングなどの蒸着法でその導電配線を形成する技術を提案できる。
【0007】
すなわち、配線基板の上面および背面をなすグリーンシートの導電配線形成面については導電配線下地層用のメタライズペーストを印刷せずにおき、このグリーンシートを含む各グリーンシートを積層、熱圧着して同時焼成する。
【0008】
こうして、配線基板の上面および背面には導電配線の下地層がないがキャスタレーション用スルーホールには導電配線の下地層を備えた配線基板を形成しておく。次いで、その上面および背面にスパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティングなどの物理蒸着法によりTiやCuなどの金属膜を被着、形成し、その際の金属膜の回り込み(たれ込み)を利用して、キャスタレーション用スルーホールの導電配線の下地層との導通を確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−321764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、物理蒸着法によるTiやCuなどの金属膜の回り込みが不十分な場合があり、配線基板の内部配線との電気的接続を十分に確保するため、キャスタレーション用のスルーホールの内部には、スパッタリングのような物理蒸着法ではなく、タングステンのような高融点金属を含有する導体ペーストにて導電配線の下地層を形成する必要がある。ここで、高温での焼成が必要な安価なセラミックスを絶縁性基板の材料とした場合、比較的低融点な銅などの金属をキャスタレーション用スルーホールの内面に配置することができない。そのため、キャスタレーション用スルーホールの内面およびその開口部周辺には、銅よりも熱伝導率が低いタングステンのような高融点金属を配置せざるを得ない。そのため、高出力の半導体素子を搭載した場合、銅と比較して熱伝導率が低い金属が配置された部位において、半導体素子からの放熱性を十分確保することができない。
【0011】
そこで、本発明は、半導体素子の熱を効率よく放熱させることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の目的を達成するために本発明に係る半導体装置は、半導体素子と、その半導体素子を搭載し、側面および背面の一部に切り欠き部が形成された絶縁性基板と上記半導体素子に接続する導電配線とから構成された配線基板と、を備えており、上記導電配線が、上記絶縁性基板の上面に、上記半導体素子の外形よりも配置面積が大きく少なくとも銅を含む上面導電配線と、上記絶縁性基板の背面に、上記上面導電配線と電気的に接続された背面導電配線と、を有する半導体装置であって、上記背面導電配線が、上記絶縁性基板の背面から上記切り欠き部に延長して配置され、少なくともタングステンまたはモリブデンを含む第一の金属膜と、その第一の金属膜の配置面積よりも広く、その一部が上記第一の金属膜の上に配置され、少なくとも銅を含む第二の金属膜と、から構成されており、上記第二の金属膜が、上記第一の金属膜の上から上記第一の金属膜が配置されていない上記絶縁性基板の背面上にかけて略均一な膜厚で配置されていることを特徴とする。
【0013】
上記第一の金属の膜厚が、10μm以上25μm以下であり、上記第二の金属の膜厚が、20μm以上80μm以下であることが好ましい。
【0014】
上記第二の金属膜が、上記切り欠き部の外側に配置されていることが好ましい。上記配線基板は、上記絶縁性基板の背面に、上記切り欠き部に連続して、上記第一の金属膜の厚みに相当する高低差の段差を有しており、その段差に上記第一の金属膜が配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
配線基板の切り欠き部周辺に、銅と比較して熱伝導性が余りよくない、タングステンを含む第一の金属膜が配置されていても、銅を含む第二の金属膜を、タングステンを含む第一の金属膜の上にも、タングステンを含む第一の金属膜が配置されていない絶縁性基板上と略均一な膜厚で積層させる。これにより、本発明の半導体装置は、配線基板の背面からの放熱を略均一にして効率の良い放熱を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、従来の配線基板を説明するための斜視図および部分的な拡大図である。
【図2】図2は、本発明の一実施例における半導体装置を示す模式的な斜視図である。
【図3】図3(a)は、本発明の一実施例における配線基板の背面を示す模式的な平面図であり、図3(b)は、本発明の一実施例における配線基板の一部を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施例における配線基板を製造する工程を示す模式的な平面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施例における配線基板を製造する工程を示す模式的な平面図である。
【図6】図6は、本発明の一実施例における配線基板を製造する工程を示す模式的な平面図である。
【図7】図7(a)は、本発明の別の実施例における配線基板の背面を示す模式的な平面図であり、図7(b)は、本発明の別の実施例における配線基板の一部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための半導体装置を例示するものであって、本発明は半導体装置を以下に限定するものではない。
【0018】
また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0019】
図2は、本形態の半導体装置を示す模式的な斜視図である。また、図3(a)は、本形態の配線基板の背面を示す模式的な平面図であり、図3(b)は、図3(a)に示される本形態の配線基板を、III−III線に沿って切断したときの断面の一部を模式的に示す図である。図4乃至図6は、図3(a)に示される本形態の半導体装置の配線基板を製造する工程を示す模式的な平面図である。
【0020】
本発明は、図2に示されるように、半導体素子203と、その半導体素子203を搭載するため、側面および背面の一部にかけて切り欠き部205が形成された絶縁性基板201と導電配線とから構成された配線基板と、を備えている。
【0021】
図2に示されるように、配線基板の導電配線のうち、絶縁性基板201の上面に配置された上面導電配線202は、半導体素子203の外形よりも金属材料の配置面積が大きくされており、導電配線の材料として少なくとも銅を含む。さらに、図3(a)に示されるように、配線基板の導電配線のうち、絶縁性基板201の背面に配置された背面導電配線302は、絶縁性基板201に形成されたビアや内部配線を介して上面導電配線202と電気的に接続されている。
【0022】
そして、背面導電配線302は、図3(b)に示されるように、少なくともタングステンまたはモリブデンを含む第一の金属膜301と、少なくとも銅を含む第二の金属膜302aと、から構成されている。ここで、第一の金属膜301は、絶縁性基板201の背面から切り欠き部205に延長して配置されている。一方、第二の金属膜302aは、その第一の金属膜が配置された面積よりも広く、その一部が第一の金属膜301の上に配置されている。
【0023】
さらに、本発明は、図3(b)に示されるように、第二の金属膜302aが、第一の金属膜301の上からその第一の金属膜301が配置されていない絶縁性基板の背面上にかけて略均一な膜厚で配置されていることを特徴とする。
【0024】
第一の金属膜301の膜厚が、10μm以上25μm以下であり、第二の金属膜302aの膜厚、特に、第二の金属膜302aを構成する銅の膜厚が20μm以上80μm以下であることが好ましい。これにより、半導体装置の放熱性を向上させることができる。
【0025】
また、第二の金属膜は、切り欠き部内には実質的に配置されることなく、切り欠き部の外側に配置されていることが好ましい。大判の配線基板切断後のキャスタレーション用切り欠き部における金属バリの形成を抑制するためである。
【0026】
このような配線基板は、次のようにして製造される。すなわち、配線基板の背面を形成するグリーンシートについては、穿設したスルーホールが切断後においてキャスタレーション用切り欠き形状とされ、その切り欠き部以外には導電配線下地層用の高融点金属ペーストは印刷しないが、キャスタレーション用スルーホールにはタングステン等の高融点金属ペーストを真空引き等により印刷(塗布)する。そして、その他のグリーンシートには、適宜スルーホールを穿設し、その主面にタングステンやモリブデン等の高融点金属ペーストを印刷し、同スルーホール内面に真空引き等により印刷(塗布)する。そして、これらのシートを積層、熱圧着し、その焼成後、高融点金属ペーストが焼成されてなる導電配線の下地層に接続するように、具体的には、キャスタレーション用スルーホールの開口部から食み出た、高融点金属ペーストが焼成されてなる導電配線の下地層に接続するように、Ti、Cuの金属を、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティングなどの物理蒸着法により、マスクを利用して背面の導電配線のパターンとなるように配置する。
【0027】
次に、このような配線基板の下地層に、銅鍍金を行う。この銅鍍金は、配線基板の放熱性を考慮して、Tiやタングステンの金属膜よりも、配線基板の下地層よりも厚膜に形成することができる。すなわち、配線基板の下地層を形成する第一の金属の膜厚が、10μm以上25μm以下であり、第二の金属の膜厚が、20μm以上80μm以下であることが好ましい。
【0028】
最後に、銅鍍金の上に、ニッケル、金を鍍金した後、キャスタレーション用スルーホールに沿って切断することにより、大判の配線基板とする。
【0029】
このようにして形成された配線基板は、タングステンを含む第一の金属膜を下地としてその上に形成された第二の金属の膜厚が、タングステンを含まない、上記物理的蒸着法により形成された下地の上に鍍金された第二の金属の膜厚と略均一な膜厚となっている。そのため、タングステンを含む第一の金属膜の上からも、タングステンを含まない、上記物理的蒸着法により形成させた下地層の上と略同様に放熱をすることができるので、本発明による配線基板は、効率の良い放熱をすることができる。
【0030】
以下、本形態の半導体装置における各構成部材について詳述する。
【0031】
(半導体素子)
本明細書では、例えば、LEDチップのような半導体発光素子について主に説明するが、このような半導体発光素子に限定されることなく、半導体発光素子とともに、受光素子その他の半導体素子、例えば、半導体発光素子を過電圧から保護するための、抵抗、トランジスタまたはコンデンサなど、あるいはそれらを少なくとも二種以上組み合わせたものを搭載することができる。なお、半導体発光素子その他の半導体素子は、1つでもよいし、複数でもよい。
【0032】
本形態における半導体装置は、蛍光体を備えることもでき、その場合、半導体発光素子は、その蛍光体を励起可能な波長を発光できる活性層を有する。このような半導体発光素子を構成する材料として、例えば、窒化ガリウムの半導体を挙げることができるが、蛍光体を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体(InAlGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に挙げられる。この半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。
【0033】
半導体素子の電極と、配線基板の正負一対の導電配線との接続は、導電性ワイヤにて行うこともできるし、半導体素子の電極が導電配線と向かい合うように半導体素子を配置させて、金や半田などの導電性材料により両部材を電気的および機械的に接合することもできる。半導体素子の電極に、予め、金や半田のバンプを鍍金または蒸着により形成させておくこともできるし、配線基板の導電配線上に配置させておいたバンプに半導体素子の電極を接合させることもできる。
【0034】
(配線基板)
本形態の配線基板は、半導体素子に電気的に接続する導電配線や外部の電極に接続するための電極端子が絶縁性基板に配置され、半導体素子を配置する搭載部を有する部材である。
【0035】
本形態の配線基板として、半導体素子は、配線基板の上面に配置させた導電配線の一部(搭載部)に配置される。この搭載部は、例えば、半導体発光素子の場合、半導体発光素子の外形よりも大きな外形を有する領域である。これにより、搭載部に配置させた半導体発光素子の外側の導電配線に、二酸化チタンのような白色系のフィラーを電気永動沈着法により配置させたり、半導体発光素子の外形面積よりも比較的広い領域に配置させた金属材料によって、半導体発光素子からの光を反射させたり、半導体発光素子からの放熱を向上させたりすることができる。さらに、配線基板の上に半導体素子を被覆する封止部材を配置することもできる。なお、半導体素子の搭載部は、半導体素子の外形よりも大きな外形を有する領域であり、その領域は、例えば、図3(a)において点線で示した円形の領域A1として示される。すなわち、半導体素子の搭載部である領域A1は、半導体素子の外形を点線で示す領域A2より大きく、配線基板を厚み方向に透過させて見て、配線基板背面において左右に形成された2つの第一の金属膜301の配置領域の内側に収まっており、かつ、その領域の一部が、第二の金属膜302aまたは金属膜302bが配置された領域にオーバーラップされていることが好ましい。半導体素子の搭載部から、比較的熱伝導度の低い第一の金属膜301を避けて、その先にある第二の金属膜302aの方へ熱の伝達を円滑に行うためである。
【0036】
なお、配線基板に設けられた導電配線および電極端子の形状および位置は、基板に配置される半導体素子の大きさ、形状、バンプの配置のし易さ、および導電性ワイヤの張り易さ等を考慮して適宜調整される。
【0037】
配線基板を構成する絶縁性基板の材料として、例えば、エポキシ樹脂にガラス成分が含有されてなるガラスエポキシ樹脂や、セラミックスを挙げることができる。
【0038】
特に、半導体装置の高耐熱性、高耐光性が望まれる場合、セラミックスを絶縁性部材の材料とすることが好ましい。セラミックスの主な材料は、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライトなどから選択することが好ましい。これらの主材料に焼結助剤などが加え、焼結することでセラミックスの基板が得られる。例えば、原料粉末の90〜96重量%がアルミナであり、焼結助剤として粘度、タルク、マグネシア、カルシア及びシリカ等が4〜10重量%添加され1500〜1700℃の温度範囲で焼結させたセラミックスや原料粉末の40〜60重量%がアルミナで焼結助剤として60〜40重量%の硼珪酸ガラス、コージュライト、フォルステライト、ムライトなどが添加され800〜1200℃の温度範囲で焼結させたセラミックス等が挙げられる。このようなセラミックス基板は、焼成前のグリーンシート段階で種々の形状をとることができる。また、焼成前のグリーンシートの段階で種々のパターン形状の導電配線(または、その下地層)を施すことができる。
【0039】
セラミックスの材料を焼成した後、図4乃至図6に示されるように、導電配線の下地層に、金、銀、銅あるいはアルミニウムを材料とする鍍金やスパッタリングにより金属材料が配置される。なお、導電配線の最表面は、半導体発光素子からの光に対して高い反射率を有する金属材料にて被覆されていることが好ましい。このような金属材料として、例えば、銀やアルミニウムを挙げることができる。
【0040】
(封止部材)
封止部材は、少なくとも半導体素子を被覆するように配線基板に設けられ、例えば、半導体発光素子からの光を透過させることができる透光性の部材である。封止部材は、半導体発光素子を被覆するように配線基板に配置される。配線基板への封止部材の形成方法として、圧縮成型、射出成型またはトランスファーモールドなど種々の公知の成型技術を利用することができる。
【0041】
封止部材の材料は、特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂、および、それらの樹脂が少なくとも一種以上含有されたハイブリッド樹脂等、耐候性に優れた透光性樹脂を用いることができる。
【0042】
封止部材を所望の形状にすることによって種々のレンズ機能を持たせることができる。具体的には、凸レンズ形状、凹レンズ形状さらには、発光観測面から見て楕円形状やそれらを複数組み合わせた形状にすることができる。
【0043】
(蛍光体)
本形態の半導体装置は、半導体発光素子の表面または導電配線の表面に蛍光体を配置させることができる。これらの蛍光体は、樹脂のような他の材料に蛍光体を混合して基板の表面に印刷する方法の他、電気泳動沈着により基板の導電配線の表面に形成させることもできる。
【0044】
以下、本発明に係る実施例について詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0045】
図2は、本実施例の半導体装置を示す模式的な斜視図である。また、図3(a)は、本実施例の配線基板の背面を示す模式的な平面図であり、図3(b)は、図3(a)に示される本実施例の配線基板を、III−III線に沿って切断したときの断面の一部を模式的に示す図である。図4乃至図6は、図3(a)に示される本実施例の半導体装置の配線基板を製造する工程を示す模式的な平面図である。
【0046】
図示されるように、本実施例の配線基板は、アルミナを主成分とするセラミックスを絶縁性基板(厚さ0.4mm)の材料としており、セラミックスグリーンシートの段階で、配線基板のキャスタレーション用切り欠き部205に相当する個所にタングステンを含む導体ペーストを印刷する。なお、キャスタレーション用切り欠き部205は、図3(a)に示されるように、その略直方体形状を形作る内面のうちの少なくとも一部、特に角部において曲面を有することが好ましい。導体ペーストを印刷し易くするとともに、金属膜を鍍金し易くするためである。
【0047】
さらに、別途種々の形状に形成させておいた複数のセラミックスグリーンシートとともに積層した後、焼成することにより、キャスタレーション用切り欠き部205の内面から絶縁性基板201の背面にかけて導電配線の下地層となる第一の金属膜301を形成させる。この第一の金属膜301の膜厚は、10μmである。
【0048】
次に、鍍金の下地層となるタングステンを含む第一の金属膜301の一部、特に、切り欠き部205の内面から絶縁性基板201の背面に延長している部分を被覆するように、第一の金属膜301の配置面積よりも広い面積で、予定の配線パターンとなるようなマスクを形成させた後、TiまたはCuを材料とするスパッタリングを行う。これらの金属の膜厚は、0.1μmである。
【0049】
そして、図5に示されるように、キャスタレーション用切り欠き部205内をマスクした後、第一の金属膜301の一部およびスパッタリングした金属膜の上に、第二の金属膜302aとして銅を鍍金する。このマスクによって、キャスタレーション用切り欠き部205内には銅が鍍金されない。そのため、大判の配線基板をキャスタレーション用切り欠き部205の予定線に沿って切断することにより複数の配線基板としたとき、厚膜の銅鍍金が切断されることによるバリの発生を抑えることができる。
【0050】
さらに、図6に示されるように、銅の鍍金により形成させた第二の金属膜302aの上に、ニッケルと金の金属膜302bを鍍金することにより、背面導電配線302を形成し、配線基板を完成させる。なお、図3(b)に示されるように、キャスタレーション用切り欠き部205内では、タングステンを含む第一の金属膜301の上に、ニッケルと金の金属膜302bが配置される。また、同じく図3(b)に示されるように、キャスタレーション用切り欠き部205の外であり、絶縁性基板201の最も後方に位置する背面上に配置された第一の金属膜301の上では、キャスタレーション用切り欠き部205の側から、ニッケルと金の金属膜302bが配置され、その金属膜302bに連続して、銅の鍍金により形成させた第二の金属膜302aおよびその上のニッケルと金の金属膜302bが配置される。よって、本実施例の配線基板は、図3(b)に示されるように、第一の金属膜301の膜厚がその上に形成される金属膜に反映されるので、その背面側の導電配線全体の形状としては、第二の金属膜302aまたはニッケルと金の金属膜302bにより形成された、第一の金属膜301の膜厚に相当する高さを有する凸部303を有することとなる。
【0051】
本実施例において、銅の鍍金により形成させた第二の金属膜302aの膜厚は、30μmであり、ニッケルおよび金の金属膜302bの膜厚は、それぞれ1.0μmである。ここで、金属膜の膜厚は、銅を含む第二の金属膜302aのほうが他の金属膜の厚みと比較して十分大きいので、配線基板の放熱性を十分確保することができる。
【0052】
なお、絶縁性基板201の上面にも、背面と同様に、タングステンを含む下地層の上に銅鍍金、ニッケル鍍金および金鍍金をすることにより上面導電配線202を形成させる。この上面導電配線202は、配置させるLEDチップ203の外形よりも大きくなるように形成させている。そのため、LEDチップ203からの熱を広範囲に拡散させて、配線基板の背面の導電配線への熱の伝達を良好に行うことができる。また、配線基板の背面の銅鍍金は、他の金属鍍金よりも厚膜に、しかも、配線基板の背面で、図3(b)中に両矢印で示されるように、略均一な膜厚で形成させているので、キャスタレーション用切り欠き部205の周辺で余り熱伝導性が余り良くない金属が介在されていても、配線基板の背面からの放熱性を効率よく行うことができる。
【0053】
図2に示されるように、同一面側に正負一対の電極が形成されたLEDチップ203は、絶縁性基板201の上面に配置された上面導電配線202に、LEDチップ203の各電極が正負一対の導電配線202に向かい合うようにしてAuバンプで接続されている。
【0054】
さらに、LEDチップ203の表面には蛍光体が電気泳動沈着により配置されており、さらに二酸化チタンの白色系のフィラーがLEDチップ203表面の蛍光体の配置領域を除く、導電配線上に配置されている。
【0055】
そして、図2に示されるように、LEDチップ203およびフィラーを被覆するようにシリコーン樹脂からなる凸レンズ形状の封止部材204が成型されている。
【実施例2】
【0056】
図7(a)は、本実施例の配線基板の背面を示す模式的な平面図であり、図7(b)は、図7(a)に示される本実施例の配線基板を、VII−VII線に沿って切断したときの断面の一部を模式的に示す図である。
【0057】
本実施例の配線基板は、図7(b)に示されるように、配線基板の側面から背面にかけて形成されたキャスタレーション用切り欠き部205’に連続して、絶縁性基板201’の背面側に、第一の金属膜301’の厚みに略相当する高低差を有する段差304を有する。
【0058】
このような段差304は、絶縁性基板201’の背面を形成するセラミックスグリーンシートの一部の厚みが、第一の金属膜301’と略同じくなるように、焼成前のグリーンシートの段階で形成される。つまり、例えば、セラミックスグリーンシートの表面に印刷された第一の金属膜301’の導体ペーストを、セラミックスグリーンシートの上面と、第一の金属膜301’の上面が略同一面となるように、加圧することにより形成することができる。これにより、形成された段差304の内面に、キャスタレーション用切り欠き部205’から延長させた第一の金属膜301’の一部を配置する。その他は、上述の実施例1と同様に形成する。
【0059】
本実施例により、配線基板の背面側で、第二の金属膜302a’およびニッケルまたは金の鍍金302b’の膜厚は実施例1と同様に一定に保ちつつ(つまり、実施例1で得られたような放熱性向上の効果は維持しつつ)、図3(b)に示されるような、第一の金属膜301の厚みに相当する高さを有する凸部303が形成されることがなくなる。したがって、本実施例の配線基板は、半導体装置200の製造工程において、その背面から半導体素子の実装面までの熱の出入りを均一に行うことができる。以下、本実施例の特有の効果を詳細に説明する。
【0060】
一般的に、半導体装置の製造工程において、半導体素子の電極を配線基板上面の導電配線にバンプや導電性ワイヤによって接続する際に、バンプボンディングやワイヤボンディングが用いられており、それらの接合性を高めるために、配線基板を、例えば、ヒータープレートで加熱することにより、各部材に熱エネルギーを付加している。
【0061】
しかしながら、上述した実施例1にかかる図3(b)に示されるような凸部303が形成された配線基板では、半導体装置の上記製造工程において、ヒータープレートの加熱面に配線基板の背面全体が接触することなく、その一部である凸部303の上面のみが接触することとなる。そのため、ヒータープレートから配線基板の半導体素子を実装する個所への熱の伝達効率が悪くなり、バンプや導電性ワイヤ、そして導電配線に十分に熱が伝わらず、半導体素子や導電性ワイヤと配線基板との接合強度が低下する虞がある。
【0062】
また、バンプボンディングやワイヤボンディングの際に、超音波のエネルギーを加えて各部材の接合性を高めることがある。この場合、ヒータープレートと配線基板背面との接触面積が小さいと、各部材に超音波が伝わり難くなるため、半導体素子や導電性ワイヤと配線基板との接合強度が低下する虞がある。
【0063】
そこで、本実施例のように、配線基板の背面に実施例1のような凸部303が形成されないよう、絶縁性基板201’の背面側に、段差304を有する。これにより、配線基板の背面側導電配線の表面が略平坦となるので、半導体装置の製造工程において、その背面から半導体素子の実装面まで、背面全体にわたって略均一に熱の出入りを行うことができる。したがって、本実施例により、半導体素子や導電性ワイヤと配線基板との接合強度を低下させることなく、信頼性が高い半導体装置とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の半導体装置は、半導体発光素子を搭載する、種々の装置、具体的には、ファクシミリ、コピー機、ハンドスキャナ等における画像読取装置に利用される照明装置のみならず、懐中電灯、照明用光源、LEDディスプレイ、携帯電話機等のバックライト光源、信号機、照明式スイッチ、車載用ストップランプ、各種センサおよび各種インジケータ等の種々の照明装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
101・・・配線基板、102・・・配線基板の背面、102a・・・背面の導電配線、104・・・キャスタレーション用スルーホール(切り欠き部)、104a・・・導電配線、200・・・半導体装置、201、201’・・・絶縁性基板、202・・・上面導電配線、203・・・半導体素子、204・・・封止部材、205、205’・・・キャスタレーション用切り欠き部、301、301’・・・第一の金属膜、302・・・背面導電配線、302a、302a’・・・第二の金属膜(銅鍍金)、302b、302b’・・・ニッケルまたは金の鍍金、303・・・凸部、304・・・段差。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、その半導体素子を搭載する配線基板と、を備えており、
前記配線基板は、側面および背面の一部に切り欠き部を有する絶縁性基板と、その絶縁性基板に配置され、前記半導体素子と電気的に接続する導電配線とから構成されており、
前記導電配線は、前記絶縁性基板の上面に、前記半導体素子の外形よりも配置面積が大きく少なくとも銅を含む上面導電配線と、前記絶縁性基板の背面に、前記上面導電配線と電気的に接続された背面導電配線と、を有する半導体装置であって、
前記背面導電配線は、
前記絶縁性基板の背面から前記切り欠き部に延長して配置され、少なくともタングステンまたはモリブデンを含む第一の金属膜と、
その第一の金属膜の配置面積よりも広く、その一部が前記第一の金属膜の上に配置され、少なくとも銅を含む第二の金属膜と、から構成されており、
前記第二の金属膜は、前記第一の金属膜の上から前記第一の金属膜が配置されていない絶縁性基板の背面上にかけて略均一な膜厚で配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記配線基板は、前記絶縁性基板の背面に、前記切り欠き部に連続して、前記第一の金属膜の厚みに相当する高低差の段差を有しており、その段差に前記第一の金属膜が配置されている請求項1項に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第二の金属膜が、前記切り欠き部の外側に配置されている請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第一の金属の膜厚が、10μm以上25μm以下であり、
前記第二の金属の膜厚が、20μm以上80μm以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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