半導体装置
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は半導体装置に関し、特にシリコン基板を覆う絶縁層上に形成された薄膜トランジスタ(以下、TFTという)を有する半導体集積回路装置に関する。
【0002】
【従来の技術】TFTは絶縁体上に形成されたシリコン薄膜を基体領域として有する。一導電型の基体領域に対し反対導電型のソース,ドレイン領域が選択的に形成され、これら領域間の基体領域上にゲート絶縁膜を介してゲート電極が形成されている。
【0003】近年、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)セルの負荷素子としてTFTを用いる等、シリコン基板の一部を基体領域とするMISトランジスタとともにTFTを同一のシリコン基板上に有する集積回路装置が提案され、研究開発が進められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】TFTをMISトランジスタとともに単一のシリコン基板上に集積化して所望の特性を得るためには、TFTの特性をMISトランジスタ並みに向上させる必要がある。TFTが劣っている特性の一つはリーク電流が大きいことである。リーク電流を低下させる手段として、基体領域を非常に薄く、例えば500オングストローム以下に形成することが知られている。
【0005】しかしながら、基体領域を薄く形成することは、ソース,ドレイン領域の抵抗が増大することを意味する。そこで、金属のような低抵抗の導電膜で供電したり配線を施したりする必要があり、製造工程の増大をまねく。特に、SRAMセルの負荷素子としてTFTを用いると、TFTとMISトランジスタとを結線するために付加導電層を必要とし、記憶容量の向上は望めない。
【0006】したがって、本発明の目的は、改良されたTFTを有する半導体装置を提供することにある。
【0007】本発明の他の目的は、ソース,ドレインの抵抗を増大することなくリーク電流が小さいTFTを備えた半導体装置を提供することにある。
【0008】本発明のさらに他の目的は、MISトランジスタの負荷素子として用いるに適したTFTを有する半導体集積回路装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明による半導体装置は、絶縁体上に形成されたシリコン薄膜と、このシリコン薄膜の少なくとも一部を基体領域として当該領域にチャンネルを形成すべく設けられたゲート電極と、上記シリコン薄膜との間にショットキーバリアを形成する金属シリサイド膜とを有する薄膜トランジスタを含み、このトランジスタのソースおよびドレインの少なくとも一方と上記チャンネルが形成される基体領域との間の接合を上記ショットキーバリアで構成することを特徴としている。
【0010】すなわち、本発明は、ソースおよびドレインを共にPN接合で区画するのに対し、それらの少なくとも一方をショットキーバリアで区画している。ショトキーバリアを形成するための金属シリサイド膜はシリコン薄膜に対し良好なダイオード特性を有しかつその抵抗も充分に小さいので、同膜をそのまま配線として使用することができ、リーク電流低減のためにシリコン薄膜を薄く形成しても他に付加導電層を必要としない。
【0011】本発明の好ましい一実施例では、ソースおよびドレインが共にシリサイド膜で形成されている。すなわち、ソースおよびドレインが共にショットキーバリアで区画されている。
【0012】リーク電流のみに着目すれば、シリコン薄膜を薄くしかつショットキーバリアよりもPN接合を用いた方が好ましい。しかしながら、薄いシリコン膜は前述のように異積度を低下させる。そこで、本発明の他の実施例では、ソース・ドレインの一方(好ましくはソース)のみがシリサイド膜で形成されていてショットキーバリアで区画され、ソース・ドレインの他方(好ましくはドレイン)はシリコン薄膜の中に同膜と反対導電型をもって選択的に形成された不純物領域で構成されてPN接合で区画され、さらに当該不純物領域に接してシリサイド層が形成されている。このシリサイド層は不純物領域との間にショットキーバリアを形成しない。
【0013】かくして、本発明によれば、リーク電流が小さくかつソース,ドレインの抵抗も小さいTFTを有する半導体装置が提供される。
【0014】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を詳述する。各実施例において同一構成部は同一番号で示し説明の重複を避ける。また、各実施例における不純物導電型や材料等を適宜変更できることは無論である。
【0015】図1は本発明の第1実施例を示す断面図である。P型シリコン基板10の表面に厚さ0.5μm程度のフィールドシリコン酸化膜11が形成されている。酸化膜11の表面には、TFTの基体としてのN型多結晶シリコン膜12が膜厚400オングストロームで約1×1015cm-3程度の不純物濃度で形成されている。多結晶シリコン膜12は、酸化膜11上にまず非晶質シリコン膜を形成し同膜のその後の熱処理による多結晶化により形成される。本発明に従って、ソースおよびドレイン領域としてチタンシリサイド膜15および16が多結晶シリコン膜12にこれとの間にショットキーバリア18および19をそれぞれ形成して選択的に設けられている。チタンシリサイド膜15,16はチタン層を多結晶シリコン膜12に選択的に形成し、その後熱処理することによって形成される。かくして、ソース15およびドレイン16はショットキーバリア18,19によりそれぞれ区画される。ソース15とドレイン16間の多結晶シリコン層12上には、約300オングストローム厚のゲート酸化膜13を介して1×1020cm-3程度の不純物濃度を有するN型多結晶シリコンゲート電極14が形成されている。ゲート電極14上にはこれとオーミック接触を提供するチタンシリサイド膜17が形成されている。
【0016】かかる構成によれば、シリサイド膜15,16をそれぞれソース,ドレインとしてTFTが構成される。ソース15,ドレイン16のショットキーバリア18,19は良好なダイオード特性を有し、また、TFTの基体領域としてのシリコン膜14が薄く形成されているので、充分に小さいリーク電流特性を得ることができる。しかも、チタンシリサイド膜15,16の層抵抗は5Ω/□程度であって充分に小さいので、そのまま電圧、信号供給用の配線として使用できる。
【0017】シリサイド膜15,16,17のためのチタン以外に、白金,タングステン,モリブデン等シリコンとショットキーバリアを形成する金属を用いることができる。
【0018】TFTのリーク電流はPN接合の利用によりさらに小さくできる。すなわち、図2に本発明の第2実施例と示すように、ドレイン側にP型領域20が形成され、基体領域12との間にPN接合22が形成されている。かくして、本実施例ではドレインが不純物領域20として形成されている。この領域20は1×1013cm2 のドーズ量をもってイオン注入で形成されるので、高ドーズ量注入に比してはるかに制御性,作業性が向上される。ドレイン領域20の表面部にはチタンシリサイド膜21が形成され、領域20との間にオーミック接触している。
【0019】リーク電流の低減はショットキーバリアの面積を小さくすることによっても達成できる。すなわち、図3に第3実施例として示すように、ソース,ドレインとしてのチタンシリサイド膜30,31はフィールド酸化膜11に到達するように形成されている。したがって、基体領域12はゲート電極14の直下のみとなり、ショットキーバリア35,36の面積が小さくなってリーク電流が低減される。
【0020】図7および図8に本実施例によるTFTのドレイン電流特性およびリーク電流特性を示す。チャンネル長Lおよび幅Wはそれぞれ1.0μm,0.8μmである。ドレイン電流のオン/オフ化は5桁を示し、リーク電流は10-13 (A)程度という優れた特性が実現された。
【0021】図4に第4実施例を示す。本実施例は、図2R>2と図3によるリーク電流低減のための構成を合わせもったものである。すなわち、図3のシリサイド膜31の代わりにP型領域40が形成されていて基体領域12と間にPN接合を形成している。さらに、P型領域40とオーミック接触43を形成してチタンシリサイド膜42が形成されている。この構成では、リーク電流はさらに小さくなり、前述と同一条件下で5×10-14 (A)のリーク電流が実現できた。
【0022】以上の実施例では所謂トップゲートとしてゲート電極14を基体領域12の上部に形成しているが、ボトムゲート構造も実現できる。すなわち、図5に第5実施例と示すように、フィールド酸化膜11上にN型多結晶シリコンゲート電極60が選択的に形成され、その表面はゲート酸化膜61で覆われている。N型多結晶シリコン膜による基体領域12はゲート酸化膜61上に形成され、ショットキーバリア67,68をもってソースとしてチタンシリサイド膜65,ドレインとしてのチタンシリサイド膜66がそれぞれ形成されている。本実施例においても、図7,図8とほぼ同一の特性が得らえた。
【0023】図6は第6実施例を示し、図4の実施例の構成をボトムゲートに適用したものである。すなわち、基体領域12との間でPN接合71を形成してP型領域70が形成されている。チタンシリサイド層72はP型領域70とオーミック接触73を構成する。これによって、リーク電流はさらに低減する。
【0024】図9を参照すると、Nチャンネル型MISトランジスタQM1とPチャンネル型TFTQT1によるインバータが第7実施例として示されている。本実施例で用いたTFTは図1の第1実施例のものと同一であるので、その説明は省略する。ただし、TFTの基体領域としての多結晶シリコン層12はフィールド酸化膜11上を延在形成されてトランジスタQM1のドレイン領域90に接触している。また、ドレインとしてのチタンシリサイド層16もシリコン層12とショットキーバリアを形成して延在形成され、ドレイン領域90に接触している。ドレイン領域90は高濃度であるので、シリサイド層16はオーミック接触を形成する。チタンシリサイド層16は、さらに本インバータの出力配線として、図示しない他の論理ゲートに接続されるように延在形成されている。TFTQT1のソースとしてのシリサイド層15には、本実施例ではアルミニウム配線97により、供電されているが、シリサイド層15を直接供電ラインとてもよい。
【0025】トランジスタQM1のドレイン領域90およびソース領域91はシリコン基板10に選択的に形成され、それらの間の基板上にはゲート酸化膜92を介してN型多結晶シリコンゲート電極93が形成されている。その上にはチタンシリサイド層94がオーミック接触している。ソース領域95の表面にもチタンシリサイド層95がオーミック接触して形成され、アルミニウム配線により接地電位が与えられている。なお、98は層間絶縁層としてのBPSGである。
【0026】TFTQT1のゲート電極14とトランジスタQM1のゲート電極93とは共通接続され、反転すべき入力信号が供給される。かくして、本インバータは、両方ともがMISトランジスタとして形成された通常のCMOSインバータと同等に動作する。
【0027】TFTQ1として図1で示したもの以外に図2から図6に示したTFTのいずれも用いることができる。例として図5に示したTFTを用いたインバータを第8実施例として図10に示す。すなわち、図5のTFTQT2のドレインシリサイド膜66はフィールド酸化膜11を延在形成されてMISトランジスタQM2のドレイン領域101にオーミック接触をもって接続されている。シリサイド膜66はさらにインバータの出力配線として導出されている。トランジスタQM2のドレイン領域101とソース領域102との間の基板10上にはゲート酸化膜105を介してN型多結晶シリコンゲート電極104が形成され、同電極104はTFTQT2のゲート電極60に共通接続され反転すべき信号を受ける。本実施例では、接地用配線96はソース領域102に直接接続されているが、シリサイド層を介在してもよい。
【0028】このように、図9,図10のインバータでは、シリサイド層16をTFTのドレインとするとともに、その層抵抗が小さいことからMISトランジスタのドレインへの配線としても使用しており、低リーク電流特性であって占有面積が非常に小さい相補型インバータが提供される。
【0029】ところで、SRAMセルは、図11(A)に示すように、夫々がPおよびNチャンネルトランジスタでなる二つのインバータ(QT11,QM11),(QT12,QM12)と二つのトランスファゲートトランジスタQM13,QM14とで構成される。したがって、図9,図10に示したインバータを用いてSRAMセルを構成することができる。しかしながら、これらの構成では、TFTとMISトランジスタとが平面的に離されて形成されているので、セル面積の縮少化に関し改良の余地がある。
【0030】そこで、セル面積をより小さくしたSRAMセルを第9実施例として図11に示す。なお、図11(B)はセルの平面図であり、(C)は(B)のI−I′線に沿った断面図である。
【0031】本SRAMセルでは、PチャンネルトランジスタQT11,QT12をTFTで構成し、NチャンネルトランジスタQM11−QM14をMISトランジスタで構成している。さらに、TFTとして、図5のボトムゲート型を用いることにより、TFTQT11,QT12のゲートをそれぞれトランジスタQM11,QM12のゲートと兼ねている。すなわち、図11(C)からわかるように、トランジスタQM12は、ソース領域122およびドレイン領域121間の基板10上にゲート酸化膜123を介してゲート電極126を有する。ゲート電極126はN型多結晶シリコン層124とその上に形成された、タングステンシリサイド層125とを有する。ゲート電極126上にシリコン酸化膜130を介してTFTQT12の基体領域127が形成されており、同領域との間でショッキバリアを形成してソース用チタンシリサイド膜128およびドレイン用チタンシリサイド膜129が設けられている。シリサイド膜128は、電源線115として電源を受けるとともに、TFTQT11のソースとしても働くように延在形成されている。ドレインシリサイド129はトランジスタQM11のゲート電極133(QM12のゲート電極126と同様に多結晶シリコン131およびタングステンシリサイド132からなる)に接続され、ゲート電極133はトランジスタQM12のドレイン領域121に接続されている。ゲート電極133はさらにトランスファゲートトランジスタQM14に接続されている(図11B参照)。トランジスタQM12のソース領域122はグランド配線用チタンシリサイド層116に接続されており、トランジスタQM11のソース領域138もシリサイド層116に接続されている。トランジスタQM11,TFTQT11の構造は図11(C)と同様であるので省略する。
【0032】このように、本実施例によるSRAMセルは、TFTを負荷素子と使用するもリーク電流が小さくて良好なデータ保持特性を有し、しかもセル面積が非常に小さくて高記憶容量をもったSRAMが提供される。
【0033】
【発明の効果】以上のとおり、本発明によれば、リーク電流が小さくかつソース,ドレインの抵抗も小さいTFTが小さな素子面積をもって提供され、同TFTを用いた集積回路装置の特性を向上するとともに集積密度も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施例を示す断面図である。
【図3】本発明の第3実施例を示す断面図である。
【図4】本発明の第4実施例を示す断面図である。
【図5】本発明の第5実施例を示す断面図である。
【図6】本発明の第6実施例を示す断面図である。
【図7】第3,第5実施例によるTFTのドレイン電流特性グラフである。
【図8】第3,第5実施例によるTFTのリーク電流特性グラフである。
【図9】本発明の第7実施例を示す断面図である。
【図10】本発明の第8実施例を示す断面図である。
【図11】本発明の第9実施例を示すSRAMセルであり、(A)はその等価回路図、(B)は平面図、そして(C)は(B)のI−I′線に沿った断面図である。
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は半導体装置に関し、特にシリコン基板を覆う絶縁層上に形成された薄膜トランジスタ(以下、TFTという)を有する半導体集積回路装置に関する。
【0002】
【従来の技術】TFTは絶縁体上に形成されたシリコン薄膜を基体領域として有する。一導電型の基体領域に対し反対導電型のソース,ドレイン領域が選択的に形成され、これら領域間の基体領域上にゲート絶縁膜を介してゲート電極が形成されている。
【0003】近年、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)セルの負荷素子としてTFTを用いる等、シリコン基板の一部を基体領域とするMISトランジスタとともにTFTを同一のシリコン基板上に有する集積回路装置が提案され、研究開発が進められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】TFTをMISトランジスタとともに単一のシリコン基板上に集積化して所望の特性を得るためには、TFTの特性をMISトランジスタ並みに向上させる必要がある。TFTが劣っている特性の一つはリーク電流が大きいことである。リーク電流を低下させる手段として、基体領域を非常に薄く、例えば500オングストローム以下に形成することが知られている。
【0005】しかしながら、基体領域を薄く形成することは、ソース,ドレイン領域の抵抗が増大することを意味する。そこで、金属のような低抵抗の導電膜で供電したり配線を施したりする必要があり、製造工程の増大をまねく。特に、SRAMセルの負荷素子としてTFTを用いると、TFTとMISトランジスタとを結線するために付加導電層を必要とし、記憶容量の向上は望めない。
【0006】したがって、本発明の目的は、改良されたTFTを有する半導体装置を提供することにある。
【0007】本発明の他の目的は、ソース,ドレインの抵抗を増大することなくリーク電流が小さいTFTを備えた半導体装置を提供することにある。
【0008】本発明のさらに他の目的は、MISトランジスタの負荷素子として用いるに適したTFTを有する半導体集積回路装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明による半導体装置は、絶縁体上に形成されたシリコン薄膜と、このシリコン薄膜の少なくとも一部を基体領域として当該領域にチャンネルを形成すべく設けられたゲート電極と、上記シリコン薄膜との間にショットキーバリアを形成する金属シリサイド膜とを有する薄膜トランジスタを含み、このトランジスタのソースおよびドレインの少なくとも一方と上記チャンネルが形成される基体領域との間の接合を上記ショットキーバリアで構成することを特徴としている。
【0010】すなわち、本発明は、ソースおよびドレインを共にPN接合で区画するのに対し、それらの少なくとも一方をショットキーバリアで区画している。ショトキーバリアを形成するための金属シリサイド膜はシリコン薄膜に対し良好なダイオード特性を有しかつその抵抗も充分に小さいので、同膜をそのまま配線として使用することができ、リーク電流低減のためにシリコン薄膜を薄く形成しても他に付加導電層を必要としない。
【0011】本発明の好ましい一実施例では、ソースおよびドレインが共にシリサイド膜で形成されている。すなわち、ソースおよびドレインが共にショットキーバリアで区画されている。
【0012】リーク電流のみに着目すれば、シリコン薄膜を薄くしかつショットキーバリアよりもPN接合を用いた方が好ましい。しかしながら、薄いシリコン膜は前述のように異積度を低下させる。そこで、本発明の他の実施例では、ソース・ドレインの一方(好ましくはソース)のみがシリサイド膜で形成されていてショットキーバリアで区画され、ソース・ドレインの他方(好ましくはドレイン)はシリコン薄膜の中に同膜と反対導電型をもって選択的に形成された不純物領域で構成されてPN接合で区画され、さらに当該不純物領域に接してシリサイド層が形成されている。このシリサイド層は不純物領域との間にショットキーバリアを形成しない。
【0013】かくして、本発明によれば、リーク電流が小さくかつソース,ドレインの抵抗も小さいTFTを有する半導体装置が提供される。
【0014】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を詳述する。各実施例において同一構成部は同一番号で示し説明の重複を避ける。また、各実施例における不純物導電型や材料等を適宜変更できることは無論である。
【0015】図1は本発明の第1実施例を示す断面図である。P型シリコン基板10の表面に厚さ0.5μm程度のフィールドシリコン酸化膜11が形成されている。酸化膜11の表面には、TFTの基体としてのN型多結晶シリコン膜12が膜厚400オングストロームで約1×1015cm-3程度の不純物濃度で形成されている。多結晶シリコン膜12は、酸化膜11上にまず非晶質シリコン膜を形成し同膜のその後の熱処理による多結晶化により形成される。本発明に従って、ソースおよびドレイン領域としてチタンシリサイド膜15および16が多結晶シリコン膜12にこれとの間にショットキーバリア18および19をそれぞれ形成して選択的に設けられている。チタンシリサイド膜15,16はチタン層を多結晶シリコン膜12に選択的に形成し、その後熱処理することによって形成される。かくして、ソース15およびドレイン16はショットキーバリア18,19によりそれぞれ区画される。ソース15とドレイン16間の多結晶シリコン層12上には、約300オングストローム厚のゲート酸化膜13を介して1×1020cm-3程度の不純物濃度を有するN型多結晶シリコンゲート電極14が形成されている。ゲート電極14上にはこれとオーミック接触を提供するチタンシリサイド膜17が形成されている。
【0016】かかる構成によれば、シリサイド膜15,16をそれぞれソース,ドレインとしてTFTが構成される。ソース15,ドレイン16のショットキーバリア18,19は良好なダイオード特性を有し、また、TFTの基体領域としてのシリコン膜14が薄く形成されているので、充分に小さいリーク電流特性を得ることができる。しかも、チタンシリサイド膜15,16の層抵抗は5Ω/□程度であって充分に小さいので、そのまま電圧、信号供給用の配線として使用できる。
【0017】シリサイド膜15,16,17のためのチタン以外に、白金,タングステン,モリブデン等シリコンとショットキーバリアを形成する金属を用いることができる。
【0018】TFTのリーク電流はPN接合の利用によりさらに小さくできる。すなわち、図2に本発明の第2実施例と示すように、ドレイン側にP型領域20が形成され、基体領域12との間にPN接合22が形成されている。かくして、本実施例ではドレインが不純物領域20として形成されている。この領域20は1×1013cm2 のドーズ量をもってイオン注入で形成されるので、高ドーズ量注入に比してはるかに制御性,作業性が向上される。ドレイン領域20の表面部にはチタンシリサイド膜21が形成され、領域20との間にオーミック接触している。
【0019】リーク電流の低減はショットキーバリアの面積を小さくすることによっても達成できる。すなわち、図3に第3実施例として示すように、ソース,ドレインとしてのチタンシリサイド膜30,31はフィールド酸化膜11に到達するように形成されている。したがって、基体領域12はゲート電極14の直下のみとなり、ショットキーバリア35,36の面積が小さくなってリーク電流が低減される。
【0020】図7および図8に本実施例によるTFTのドレイン電流特性およびリーク電流特性を示す。チャンネル長Lおよび幅Wはそれぞれ1.0μm,0.8μmである。ドレイン電流のオン/オフ化は5桁を示し、リーク電流は10-13 (A)程度という優れた特性が実現された。
【0021】図4に第4実施例を示す。本実施例は、図2R>2と図3によるリーク電流低減のための構成を合わせもったものである。すなわち、図3のシリサイド膜31の代わりにP型領域40が形成されていて基体領域12と間にPN接合を形成している。さらに、P型領域40とオーミック接触43を形成してチタンシリサイド膜42が形成されている。この構成では、リーク電流はさらに小さくなり、前述と同一条件下で5×10-14 (A)のリーク電流が実現できた。
【0022】以上の実施例では所謂トップゲートとしてゲート電極14を基体領域12の上部に形成しているが、ボトムゲート構造も実現できる。すなわち、図5に第5実施例と示すように、フィールド酸化膜11上にN型多結晶シリコンゲート電極60が選択的に形成され、その表面はゲート酸化膜61で覆われている。N型多結晶シリコン膜による基体領域12はゲート酸化膜61上に形成され、ショットキーバリア67,68をもってソースとしてチタンシリサイド膜65,ドレインとしてのチタンシリサイド膜66がそれぞれ形成されている。本実施例においても、図7,図8とほぼ同一の特性が得らえた。
【0023】図6は第6実施例を示し、図4の実施例の構成をボトムゲートに適用したものである。すなわち、基体領域12との間でPN接合71を形成してP型領域70が形成されている。チタンシリサイド層72はP型領域70とオーミック接触73を構成する。これによって、リーク電流はさらに低減する。
【0024】図9を参照すると、Nチャンネル型MISトランジスタQM1とPチャンネル型TFTQT1によるインバータが第7実施例として示されている。本実施例で用いたTFTは図1の第1実施例のものと同一であるので、その説明は省略する。ただし、TFTの基体領域としての多結晶シリコン層12はフィールド酸化膜11上を延在形成されてトランジスタQM1のドレイン領域90に接触している。また、ドレインとしてのチタンシリサイド層16もシリコン層12とショットキーバリアを形成して延在形成され、ドレイン領域90に接触している。ドレイン領域90は高濃度であるので、シリサイド層16はオーミック接触を形成する。チタンシリサイド層16は、さらに本インバータの出力配線として、図示しない他の論理ゲートに接続されるように延在形成されている。TFTQT1のソースとしてのシリサイド層15には、本実施例ではアルミニウム配線97により、供電されているが、シリサイド層15を直接供電ラインとてもよい。
【0025】トランジスタQM1のドレイン領域90およびソース領域91はシリコン基板10に選択的に形成され、それらの間の基板上にはゲート酸化膜92を介してN型多結晶シリコンゲート電極93が形成されている。その上にはチタンシリサイド層94がオーミック接触している。ソース領域95の表面にもチタンシリサイド層95がオーミック接触して形成され、アルミニウム配線により接地電位が与えられている。なお、98は層間絶縁層としてのBPSGである。
【0026】TFTQT1のゲート電極14とトランジスタQM1のゲート電極93とは共通接続され、反転すべき入力信号が供給される。かくして、本インバータは、両方ともがMISトランジスタとして形成された通常のCMOSインバータと同等に動作する。
【0027】TFTQ1として図1で示したもの以外に図2から図6に示したTFTのいずれも用いることができる。例として図5に示したTFTを用いたインバータを第8実施例として図10に示す。すなわち、図5のTFTQT2のドレインシリサイド膜66はフィールド酸化膜11を延在形成されてMISトランジスタQM2のドレイン領域101にオーミック接触をもって接続されている。シリサイド膜66はさらにインバータの出力配線として導出されている。トランジスタQM2のドレイン領域101とソース領域102との間の基板10上にはゲート酸化膜105を介してN型多結晶シリコンゲート電極104が形成され、同電極104はTFTQT2のゲート電極60に共通接続され反転すべき信号を受ける。本実施例では、接地用配線96はソース領域102に直接接続されているが、シリサイド層を介在してもよい。
【0028】このように、図9,図10のインバータでは、シリサイド層16をTFTのドレインとするとともに、その層抵抗が小さいことからMISトランジスタのドレインへの配線としても使用しており、低リーク電流特性であって占有面積が非常に小さい相補型インバータが提供される。
【0029】ところで、SRAMセルは、図11(A)に示すように、夫々がPおよびNチャンネルトランジスタでなる二つのインバータ(QT11,QM11),(QT12,QM12)と二つのトランスファゲートトランジスタQM13,QM14とで構成される。したがって、図9,図10に示したインバータを用いてSRAMセルを構成することができる。しかしながら、これらの構成では、TFTとMISトランジスタとが平面的に離されて形成されているので、セル面積の縮少化に関し改良の余地がある。
【0030】そこで、セル面積をより小さくしたSRAMセルを第9実施例として図11に示す。なお、図11(B)はセルの平面図であり、(C)は(B)のI−I′線に沿った断面図である。
【0031】本SRAMセルでは、PチャンネルトランジスタQT11,QT12をTFTで構成し、NチャンネルトランジスタQM11−QM14をMISトランジスタで構成している。さらに、TFTとして、図5のボトムゲート型を用いることにより、TFTQT11,QT12のゲートをそれぞれトランジスタQM11,QM12のゲートと兼ねている。すなわち、図11(C)からわかるように、トランジスタQM12は、ソース領域122およびドレイン領域121間の基板10上にゲート酸化膜123を介してゲート電極126を有する。ゲート電極126はN型多結晶シリコン層124とその上に形成された、タングステンシリサイド層125とを有する。ゲート電極126上にシリコン酸化膜130を介してTFTQT12の基体領域127が形成されており、同領域との間でショッキバリアを形成してソース用チタンシリサイド膜128およびドレイン用チタンシリサイド膜129が設けられている。シリサイド膜128は、電源線115として電源を受けるとともに、TFTQT11のソースとしても働くように延在形成されている。ドレインシリサイド129はトランジスタQM11のゲート電極133(QM12のゲート電極126と同様に多結晶シリコン131およびタングステンシリサイド132からなる)に接続され、ゲート電極133はトランジスタQM12のドレイン領域121に接続されている。ゲート電極133はさらにトランスファゲートトランジスタQM14に接続されている(図11B参照)。トランジスタQM12のソース領域122はグランド配線用チタンシリサイド層116に接続されており、トランジスタQM11のソース領域138もシリサイド層116に接続されている。トランジスタQM11,TFTQT11の構造は図11(C)と同様であるので省略する。
【0032】このように、本実施例によるSRAMセルは、TFTを負荷素子と使用するもリーク電流が小さくて良好なデータ保持特性を有し、しかもセル面積が非常に小さくて高記憶容量をもったSRAMが提供される。
【0033】
【発明の効果】以上のとおり、本発明によれば、リーク電流が小さくかつソース,ドレインの抵抗も小さいTFTが小さな素子面積をもって提供され、同TFTを用いた集積回路装置の特性を向上するとともに集積密度も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施例を示す断面図である。
【図3】本発明の第3実施例を示す断面図である。
【図4】本発明の第4実施例を示す断面図である。
【図5】本発明の第5実施例を示す断面図である。
【図6】本発明の第6実施例を示す断面図である。
【図7】第3,第5実施例によるTFTのドレイン電流特性グラフである。
【図8】第3,第5実施例によるTFTのリーク電流特性グラフである。
【図9】本発明の第7実施例を示す断面図である。
【図10】本発明の第8実施例を示す断面図である。
【図11】本発明の第9実施例を示すSRAMセルであり、(A)はその等価回路図、(B)は平面図、そして(C)は(B)のI−I′線に沿った断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 絶縁層上に形成されたシリコン薄膜と、このシリコン薄膜の少なくとも一部を基体領域として当該基体領域にチャネルを形成すべく設けられたゲートと、前記シリコン薄膜との間にショットキーバリアを形成するシリサイド膜とを有する薄膜トランジスタを含み、前記薄膜トランジスタのソースおよびドレインの少なくとも一方と前記基体領域との間の接合を前記ショットキーバリアで構成し、前記ショットキーバリアは、前記絶縁層に達していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】 請求項1記載の半導体装置において、前記ソースおよびドレインは両方とも前記基体領域との間に前記ショットキーバリアを形成することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】絶縁層上に形成されたシリコン薄膜と、このシリコン薄膜の少なくとも一部を基体領域として当該基体領域にチャネルを形成すべく設けられたゲートと、前記シリコン薄膜との間にショットキーバリアを形成するシリサイド膜と前記基体領域との間でPN接合を形成する不純物領域と当該不純物領域にオーミック接触する他のシリサイド膜とを有する薄膜トランジスタを含み、前記薄膜トランジスタのソースおよびドレインの一方は前記基体領域との間に前記ショットキーバリアを形成し、前記ソースおよびドレインの他方は前記不純物領域を含んで前記基体領域との間に前記PN接合を形成し、且つ前記ショットキーバリア及び前記PN接合は共に前記絶縁層に達していることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】同一の半導体基板上に形成された薄膜トランジスタと絶縁ゲートトランジスタとを含み、前記薄膜トランジスタは、前記半導体基板を覆う絶縁層上に形成されたシリコン薄膜の少なくとも一部を基体領域として当該基体領域にチャネルを形成すべく設けられたゲートと、前記シリコン薄膜との間にショットキーバリアを形成する第1のシリサイド膜でなるソースと、第2のシリサイド膜を有するドレインとを備え、前記絶縁ゲートトランジスタは、前記半導体基板に選択的に形成された不純物領域でなるソースおよびドレインとこれらソースおよびドレイン間の基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲートとを備え、前記薄膜トランジスタの前記ドレインは前記基体領域との間にPN接合を形成する半導体領域をさらに有し、前記第2のシリサイド膜は前記半導体領域にオーミック接触すると共に延在形成されて前記絶縁ゲートトランジスタの前記不純物領域にオーミック接触していることを特徴とする半導体装置。
【請求項1】 絶縁層上に形成されたシリコン薄膜と、このシリコン薄膜の少なくとも一部を基体領域として当該基体領域にチャネルを形成すべく設けられたゲートと、前記シリコン薄膜との間にショットキーバリアを形成するシリサイド膜とを有する薄膜トランジスタを含み、前記薄膜トランジスタのソースおよびドレインの少なくとも一方と前記基体領域との間の接合を前記ショットキーバリアで構成し、前記ショットキーバリアは、前記絶縁層に達していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】 請求項1記載の半導体装置において、前記ソースおよびドレインは両方とも前記基体領域との間に前記ショットキーバリアを形成することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】絶縁層上に形成されたシリコン薄膜と、このシリコン薄膜の少なくとも一部を基体領域として当該基体領域にチャネルを形成すべく設けられたゲートと、前記シリコン薄膜との間にショットキーバリアを形成するシリサイド膜と前記基体領域との間でPN接合を形成する不純物領域と当該不純物領域にオーミック接触する他のシリサイド膜とを有する薄膜トランジスタを含み、前記薄膜トランジスタのソースおよびドレインの一方は前記基体領域との間に前記ショットキーバリアを形成し、前記ソースおよびドレインの他方は前記不純物領域を含んで前記基体領域との間に前記PN接合を形成し、且つ前記ショットキーバリア及び前記PN接合は共に前記絶縁層に達していることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】同一の半導体基板上に形成された薄膜トランジスタと絶縁ゲートトランジスタとを含み、前記薄膜トランジスタは、前記半導体基板を覆う絶縁層上に形成されたシリコン薄膜の少なくとも一部を基体領域として当該基体領域にチャネルを形成すべく設けられたゲートと、前記シリコン薄膜との間にショットキーバリアを形成する第1のシリサイド膜でなるソースと、第2のシリサイド膜を有するドレインとを備え、前記絶縁ゲートトランジスタは、前記半導体基板に選択的に形成された不純物領域でなるソースおよびドレインとこれらソースおよびドレイン間の基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲートとを備え、前記薄膜トランジスタの前記ドレインは前記基体領域との間にPN接合を形成する半導体領域をさらに有し、前記第2のシリサイド膜は前記半導体領域にオーミック接触すると共に延在形成されて前記絶縁ゲートトランジスタの前記不純物領域にオーミック接触していることを特徴とする半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【特許番号】第2751658号
【登録日】平成10年(1998)2月27日
【発行日】平成10年(1998)5月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−95278
【出願日】平成3年(1991)4月25日
【公開番号】特開平4−226081
【公開日】平成4年(1992)8月14日
【審査請求日】平成7年(1995)7月3日
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【参考文献】
【文献】特開 昭63−70576(JP,A)
【文献】特開 昭59−181669(JP,A)
【文献】特開 平1−248555(JP,A)
【文献】特開 昭61−129852(JP,A)
【文献】特開 平4−91480(JP,A)
【登録日】平成10年(1998)2月27日
【発行日】平成10年(1998)5月18日
【国際特許分類】
【出願日】平成3年(1991)4月25日
【公開番号】特開平4−226081
【公開日】平成4年(1992)8月14日
【審査請求日】平成7年(1995)7月3日
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【参考文献】
【文献】特開 昭63−70576(JP,A)
【文献】特開 昭59−181669(JP,A)
【文献】特開 平1−248555(JP,A)
【文献】特開 昭61−129852(JP,A)
【文献】特開 平4−91480(JP,A)
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