説明

半導体製造装置における冷却水供給装置の流量制御システム

【課題】自動的に流量を調整することができる流量制御システムを提供する。
【解決手段】共通管路16と、各半導体製造装置51〜53へ冷却水を供給する分岐管路と、分岐管用流量調整弁と、冷却水の流量の設定条件を入力する半導体製造装置用操作部と、分岐管用流量センサと、分岐管用流量調整弁の制御にかかる信号を出力する流量調整用の比較器を備えた半導体製造装置用命令処理部と、各半導体製造装置への冷却水の供給量の総和となる設定条件を自動的に入力する自動入力手段50と、自動入力手段50から設定条件が入力される操作部32と、共通管路16に設けられた流量調整弁34と、共通管路16内における冷却水の流量を検出する流量センサ26と、操作部32から入力される設定信号と流量センサ26による検出信号とを比較し、流量調整弁34の制御にかかる信号を出力する流量調整用の比較器36を備えた命令処理部40とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置における冷却水供給装置の流量制御システムに関し、さらに詳細には、所定の系を構成する複数の半導体製造装置の一部又は全部に選択的に冷却水を循環して供給する半導体製造装置における冷却水供給装置の流量制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、冷却水供給装置において、設定流量の冷却水を供給するには、流量計によって冷却水の流量を計測し、作業者がニードル弁を開閉することで調整していた。なお、ニードル弁の開閉自体については、作業者が自らノブ又はハンドルを回して操作する他、サーボモータ等の動力を利用して遠隔操作で開閉できるものがある。
【0003】
また、所定の系を構成する複数の半導体製造装置の一部又は全部に選択的に冷却水を供給する半導体製造装置における冷却水供給装置においても、一般的に上記のように各半導体製造装置にかかる流量の調整をしている。この冷却水供給装置には、例えば、半導体装置の製造工場において、所定の系を構成する複数の半導体製造装置の一部又は全部に選択的に冷却水を供給する冷却水供給装置がある。この冷却水供給装置は、一つの冷却水供給源から、複数の半導体製造装置に冷却水を供給するものであり、ライン配管によって、工場内のどこの場所でも容易に一定品質(例えば、20°Cの一定温度)の冷却水を得ることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の半導体製造装置における冷却水供給装置では、作業者による操作によって流量を調整することになり、手間がかかると共に、変動する冷却水の必要量に逐一対応することが困難であるという課題があった。また、半導体装置の製造工場では、各加工装置の厳しい温度管理条件に対応し、非常に高精度の冷却水にかかる流量管理が要求されてきている。特に所定の系を構成する複数の半導体製造装置の一部又は全部が選択的に稼働され、冷却水の必要量が連続的に変化するような場合、その変動する条件に好適に即応することが必要である。例えば、一度に多くの加工装置が稼働した際には、冷却水の供給圧が低下するため、所定の流量を流すことができず、逆に複数の加工装置のうち一つのみが稼働した際には、冷却水の供給圧が上昇するため、所定の流量以上の冷却水が流れて過度に冷却をすることになる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、変動する冷却水の必要量に好適に対応し、自動的に流量を調整することができる応答性のよい半導体製造装置における冷却水供給装置の流量制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は次の構成を備える。
すなわち、本発明は、所定の系を構成する複数の半導体製造装置の一部又は全部に選択的に冷却水を循環させて供給する半導体製造装置における冷却水供給装置の流量制御システムにおいて、前記複数の半導体製造装置へ冷却水を供給する共通管路と、該共通管路から分岐され、前記各半導体製造装置へ冷却水を供給する分岐管路と、該分岐管路のそれぞれに設けられ、外部からの信号によって開度を自動的に変える分岐管用流量調整弁と、前記各半導体製造装置へ供給する冷却水の流量の設定条件を入力する半導体製造装置用操作部と、前記分岐管用流量調整弁から各半導体製造装置へ供給されている冷却水の流量を検出する分岐管用流量センサと、前記半導体製造装置用操作部から出力される設定信号と前記分岐管用流量センサによる検出信号とを比較し、前記分岐管用流量調整弁の制御にかかる信号を出力する流量調整用の比較器を備えた半導体製造装置用命令処理部と、前記分岐管用流量調整弁により供給される各半導体製造装置への冷却水の供給量の総和となる設定条件を自動的に入力する自動入力手段と、該自動入力手段から前記設定条件が入力される操作部と、前記共通管路に設けられ、外部からの信号によって開度を自動的に変える流量調整弁と、該流量調整弁により供給される共通管路内における冷却水の流量を検出する流量センサと、前記操作部から入力される設定信号と前記流量センサによる検出信号とを比較し、前記流量調整弁の制御にかかる信号を出力する流量調整用の比較器を備えた命令処理部とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、半導体製造装置における冷却水供給装置において、流量調整用の比較器によって、操作部から出力される設定信号と流量センサによる検出信号とを比較し、流量調整弁の制御にかかる信号を出力して、冷却水の流量を逐一自動的に調整できる。従って、本発明によれば、変動する冷却水の必要量に好適に対応し、冷却水の流量を応答性よく好適に制御できるという著効を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
(基本形態)
図1は冷却水供給装置の流量制御システムの基本形態を模式的に示す説明図である。32は操作部であり、供給する冷却水の流量の設定条件を入力することができる。ここで入力された設定条件は、電気的な信号(設定信号)に変換されて、後述する比較器36へ出力される。
【0009】
26は流量センサであり、冷却水の管路(共通管路)16中に設けられ、その管路16に供給されて流れる冷却水の流量を計測し、その計測(検出)結果を出力する。その検出信号は、例えば、所定の範囲の電流値等の電気信号として好適に得ることができる。
【0010】
34はモータバルブであり、外部からの信号によって開度を自動的に変える流量調整弁の一例である。このモータバルブ34は、サーボモータ33の動力によって開閉する機能を備えるもので、例えば、サーボモータ33による回転動力を減速機を介してバルブのハンドルに伝え、自動的に開度を変えることのできる流量調整弁である。なお、冷却水の管路16の開度を制御信号によって自動的に調整する流量調整弁としては、上記のモータバルブ34に限らず、電磁バルブ(比例電磁弁)等の他の手段を用いることも可能である。
【0011】
40は命令処理部であり、操作部32から出力される設定信号と流量センサ26による検出信号とを比較し、モータバルブ34の制御にかかる信号を出力する流量調整用の比較器36を備え、モータバルブ34の開度を調整する。
【0012】
このように命令処理部40によってモータバルブ34を制御することで、流量計(流量センサ26)から出力された電気的な信号に基づいて好適にフィードバック制御が行なわれる。供給される冷却水の圧力が上昇して流量が所定の設定値よりも増加した場合はモータバルブ34の開度を下げ、供給される冷却水の圧力が低減して流量が所定の設定値よりも低下した場合はモータバルブ34の開度を上げて、所定の流量が持続的に流れるように制御する。これにより、冷却水の供給源の圧力が変動した場合でも、所定の流量を好適に供給できる。すなわち、完全自動の遠隔操作が可能であり、応答性のよい流量制御が可能になる。
【0013】
(実施例)
また、図2は半導体装置の製造工場における冷却水供給装置の流量制御システム(実施例)を模式的に示す説明図である。この実施例の流量制御システムは、所定の系を構成する複数の半導体製造装置の一部又は全部に選択的に冷却水を供給する冷却水供給装置にかかる一実施例であり、その冷却水供給装置が、冷却水を循環させて半導体装置の製造装置を冷却するように供給する循環型の冷却水供給装置になっている。
【0014】
32は操作部であり、所定の系へ供給する冷却水の総流量の設定条件を入力できる。26は流量センサであり、所定の系へ供給されている冷却水の総流量を検出する。34はモータバルブであり、外部からの信号によって開度を自動的に変える流量調整弁の一例である。また、40は命令処理部であり、操作部32から出力される設定信号と流量センサ26による検出信号とを比較し、モータバルブ34の制御にかかる信号を出力する流量調整用の比較器36を備えている。
【0015】
また、50は自動入力手段であり、操作部32へ設定条件を自動的に入力する。本実施例では、所定の系を構成する複数の半導体装置の製造装置51、52、53の一部又は全部に冷却水を供給するか否かについて、各製造装置に対応する開閉バルブ51a、52a、53aの開閉状態について検出し、操作部32へ設定条件を自動的に入力する。この自動入力手段50によって所定の系を構成する複数の半導体製造装置51、52、53へ供給する冷却水の総流量を、自動的に応答性よく好適に管理できる。
【0016】
また、本実施例の管路16は、ポンプ(図示せず)に連なり、複数の半導体装置の製造装置51、52、53を流れ出た冷却水を回収して循環させるよう、循環流路に形成されている。 さらに、冷却水は、温度調整手段(図示せず)によって、温度が一定に保たれている。温度調整手段は、公知の冷却装置及び/又は加熱装置から構成できる。冷却水は循環されるため、熱効率よく用いることができる。このように、実施例の半導体装置の製造工場における冷却水を供給する系では、循環系であり、ポンプの容量は限定的なものであるため、水道水のような供給圧の安定した水源の場合と異なり、供給水源の圧力変動が大きい。これに対して、本発明の流量制御システムによれば、供給水源の圧力の変動にかかわらず、所定の流量を流すことができ、その問題を好適に解消することができるのである。
【0017】
また、30は流量制御手段であり、冷却水の流量の設定条件を入力する操作部32と、モータ33の動力によって開閉するモータバルブ34と、操作部32へ設定条件を自動的に入力する自動入力手段50と、操作部32による設定信号と流量センサ26による検出信号とを比較して流量パラメータにかかる信号(モータバルブ34の制御にかかる信号)を出力する流量調整用の比較器36とを具備する。
【0018】
また、流量調整用の比較器36を含む構成によってフィードバック制御系である命令処理部40が構成されている。流量センサ26及び自動入力手段50からの検出又は入力信号は、例えば、適宜所定の範囲の電流値に変換され、演算装置等(図示せず)によって処理されることにより、モータバルブ34を制御する所定の範囲の電流値の制御信号として出力される。上記の命令処理部40は、公知の回路によって構成でき、シーケンス制御を行う。なお、流量制御手段30は、単なるシーケンス制御の他に、プログラムによって作動する命令処理部40によって、経験的に設定される条件付けで制御してもよいのは勿論である。その条件付けには、例えば、流量と温度差の積によって算出される熱容量の値、或いは経時的な要素等があり、これらの要素に基づいて演算処理を行い制御することでより正確な温度管理が可能となる。すなわち、いわゆるPID制御(比例、積分、微分の動作の組み合わせが可能)、ファジー制御等を行うように構成してもよい。
【0019】
本実施例によれば、流量センサ26によって流量パラメータについて連続的にモニタしており、その検出データに基づいて、前述したように冷却水の流量制御を行っている。これにより、タイムリー且つ応答性よく半導体装置の製造装置の温度制御ができ、例えば、その温度を一定に維持して均一な条件で半導体装置を加工・製造できる。すなわち、各半導体装置の製造装置の温度管理を高精度に行うことができ、ひいては半導体装置を製造する際の加工精度を向上させることができる。
【0020】
本発明にかかる半導体製造装置における冷却水供給装置の流量制御システムは、基本形態と実施例にかかる流量制御システムを併用してもよいのは勿論である。例えば、実施例の開閉バルブ51a、52a、53aの各開閉の制御について、基本形態にかかる冷却水供給装置の流量制御システムを用いることができるのは勿論である。以上、本発明の好適な実施例について種々述べてきたが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内でさらに多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
本発明によれば、半導体製造装置における冷却水供給装置において、流量調整用の比較器によって、操作部から出力される設定信号と流量センサによる検出信号とを比較し、流量調整弁の制御にかかる信号を出力して、冷却水の流量を逐一自動的に調整できる。従って、本発明によれば、変動する冷却水の必要量に好適に対応し、冷却水の流量を応答性よく好適に制御できるという著効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】冷却水供給装置の流量制御システムの基本形態を説明する説明図である。
【図2】本発明にかかる半導体製造装置における冷却水供給装置の流量制御システムの実施例を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0022】
16 管路
26 流量センサ
30 流量制御手段
32 操作部
34 モータバルブ
36 流量調整用の比較器
40 命令処理部
50 自動入力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の系を構成する複数の半導体製造装置の一部又は全部に選択的に冷却水を循環させて供給する半導体製造装置における冷却水供給装置の流量制御システムにおいて、
前記複数の半導体製造装置へ冷却水を供給する共通管路と、
該共通管路から分岐され、前記各半導体製造装置へ冷却水を供給する分岐管路と、
該分岐管路のそれぞれに設けられ、外部からの信号によって開度を自動的に変える分岐管用流量調整弁と、
前記各半導体製造装置へ供給する冷却水の流量の設定条件を入力する半導体製造装置用操作部と、
前記分岐管用流量調整弁から各半導体製造装置へ供給されている冷却水の流量を検出する分岐管用流量センサと、
前記半導体製造装置用操作部から出力される設定信号と前記分岐管用流量センサによる検出信号とを比較し、前記分岐管用流量調整弁の制御にかかる信号を出力する流量調整用の比較器を備えた半導体製造装置用命令処理部と、
前記分岐管用流量調整弁により供給される各半導体製造装置への冷却水の供給量の総和となる設定条件を自動的に入力する自動入力手段と、
該自動入力手段から前記設定条件が入力される操作部と、
前記共通管路に設けられ、外部からの信号によって開度を自動的に変える流量調整弁と、
該流量調整弁により供給される共通管路内における冷却水の流量を検出する流量センサと、
前記操作部から入力される設定信号と前記流量センサによる検出信号とを比較し、前記流量調整弁の制御にかかる信号を出力する流量調整用の比較器を備えた命令処理部とを具備することを特徴とする半導体製造装置における冷却水供給装置の流量制御システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−157169(P2007−157169A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4811(P2007−4811)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【分割の表示】特願平9−357321の分割
【原出願日】平成9年12月25日(1997.12.25)
【出願人】(000236687)不二越機械工業株式会社 (48)
【Fターム(参考)】