説明

半田付け方法及び錘並びに電子機器の製造方法

【課題】回路基板上にチップ部品を接合面全面で半田付けする際に、接合部における半田の厚さのむらを抑制する。
【解決手段】回路基板11上に設けられた金属回路13に半導体素子12を半田付けする際、半田の溶融時に半導体素子12を金属回路13側に押圧する錘30として、チップ部品加圧用凸部30bと、傾き規制用凸部30cとを備えた錘30を用いる。金属回路13上に半田シート33を介して半導体素子12を配置するとともに、錘30をチップ部品加圧用凸部30bが半導体素子12を押圧する状態に載置する。そして、錘30によって半導体素子12を加圧しながら半田シート33を溶融させるとともに傾き規制用凸部30cが金属回路13に当接することで半導体素子12を金属回路13と平行な状態に半田付けする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田付け方法及び錘並びに電子機器の製造方法に係り、詳しくは回路基板上への半導体素子等のチップ部品を接合面全面で接合する半田付け方法及び錘並びに電子機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属部材とセラミックス部材や、基板と電子部品とを接合する方法として、高周波誘導加熱を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、複数の熱電素子と基板とを接合して熱電変換モジュールを製作する接合装置が提案されている。この接合装置は、図10(a)に示すように、台61と、基板62に下端面を接し同基板62を加圧する加圧治具(錘)63と、同加圧治具63の周りに設けられる高周波加熱コイル64とを備える。そして、台61上に順次カーボンシート65、熱電素子66、基板62を配置するとともに、加圧治具63により基板62を加圧した状態で誘導加熱(高周波加熱)により加圧治具63を加熱する。すると、加圧治具63の熱が基板62に伝わり、熱電素子66が基板62に接合される。また、接合対象との間に半田やロウ材を配置しておけば半田付けやロウ付けが行える。
【0003】
また、回路基板上に半導体素子や電子部品を実装する場合、回路基板と半導体素子等とを半田を介して接合する方法が一般的である。回路基板上に半導体素子等を半田付けする場合、半導体素子等と回路基板との間に介在する半田の溶融時に、半導体素子等が溶融した半田の表面張力でその位置がずれたり、半導体素子等の接合面全体に半田が拡がらずに接合されたりする場合がある。
【0004】
従来、半田付けされる電子部品の傾斜や浮き上がり等の位置ずれを有効に防止する半田付け部品の浮き防止治具が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この浮き防止治具は、図10(b)に示すように、プリント基板71上に載置されたリレー72を跨いでプリント基板71上に載置可能とすべく、リレー72におけるプリント基板71上の高さに対応する深さの電子部品収容凹部75aを有する部品押さえ治具75を備える。部品押さえ治具75はその自重により、プリント基板71上の載置位置で保持される。電子部品収容凹部75aは、プリント基板71の載置面側に向かって漸次拡開するテーパ状に形成されている。そして、フローソルダ等の半田付け装置によって噴流される半田上を通過させることにより、プリント基板71側の回路と各リード72aとの半田付けがなされる。電子部品収容凹部75aの底面75bとリレー72の上面72bとの間には0.1mm程度のクリアランスを有する構造とされている。
【特許文献1】実開平5−13660号公報
【特許文献2】特開2002−261433公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半田付け時にチップ部品(半田付けする部品)上に錘を載置すると半田の拡がりを助ける。しかし、チップ部品の接合面全体と対応する半田を溶融させて半田付けを行う場合には、半田の種類によっては、溶融状態の半田の表面張力によって半田のチップ部品と対向する面が上に凸の曲面となる。そのため、半導体素子の上に載置された錘が傾き、半導体素子と半導体素子が接合される接合面との間に存在する半田の厚さが均一ではなくなる。
【0006】
そして、回路基板としてセラミック基板と金属製のヒートシンクとを一体化した冷却回路基板を用いた場合、半導体素子と基板とを接合する半田の厚さにばらつきがあると、厚さのばらつきが熱抵抗のばらつきとなる。その結果、半田が介在して接合されている半導体素子と配線層の線膨張率の差を吸収する応力緩和効果がばらつき、熱サイクルの疲労寿命がばらつくという問題がある。
【0007】
特許文献1では、前記のような半田溶融時の問題に関しては何ら配慮はされていない。一方、特許文献2では、半田付けされる電子部品の傾斜や浮き上がり等の位置ずれを有効に防止する目的で部品押さえ治具75を使用する。しかし、電子部品はリード72aを備えたリード部品であり、半田付けも噴流される半田上を、プリント基板71を透過させて行う方法に関してのみ記載されており、傾斜や浮き上がりも、プリント基板71の搬送中の振動や衝撃を主原因としている。即ち、チップ部品の接合面全体と対応する半田を溶融させて半田付けを行う場合に発生する前記問題に関しては何ら配慮されていない。
【0008】
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、回路基板上にチップ部品を接合面全面で半田付けする際に、接合部における半田の厚さのむらを抑制することができる半田付け方法及び錘並びに電子機器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため請求項1に記載の発明は、回路基板上に設けられた接合部にチップ部品を半田付けする半田付け方法である。半田の溶融時に前記チップ部品を前記接合部側に押圧する錘として、チップ部品加圧部と、傾き規制用凸部とを備えた錘を用い、前記接合部上に半田を介して前記チップ部品を配置するとともに、前記錘を前記チップ部品加圧部が前記チップ部品を押圧する状態に載置する。そして、前記錘によって前記チップ部品を加圧しながら前記半田を溶融させるとともに傾き規制用凸部が前記回路基板に当接することで前記チップ部品を前記接合部と平行な状態に半田付けする。
【0010】
この発明では、回路基板上に設けられた接合部上に半田を介してチップ部品が配置される。そして、錘は、チップ部品加圧部がチップ部品を押圧する状態に回路基板上に載置された状態で半田が溶融される。溶融された半田は表面張力により、球に近づく形状に成ろうとするため、チップ部品及び錘を持ち上げる力が作用する。この力と、チップ部品及び錘の重さ(以下、錘等の重さと称す場合もある。)とがバランスした状態で半田が冷却されて固化することにより半田付けが完了する。単にチップ部品の上に錘を載せた場合には、バランスによって回路基板の接合部とチップ部品の接合面が平行にならずに傾いた状態で半田が固化する場合がある。しかし、この発明では、錘はチップ部品加圧部と傾き規制用凸部とを備えているため、半田が溶融された状態において、傾き規制用凸部の先端が回路基板と当接して、錘は、水平状態又はほぼ水平状態で各チップ部品を接合面側へ加圧する状態となる。その結果、半田がその溶融温度以下に冷却した状態では、各接合部における半田の厚さむらが抑制された状態で半田付けが行われる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記錘は、前記チップ部品加圧部が前記チップ部品を押圧する状態に載置されたときに、前記チップ部品加圧部の中心と、前記傾き規制用凸部の中心又は端とを結ぶ仮想線で囲まれる範囲の中に前記錘の重心が存在するように形成されている。この発明では、チップ部品加圧部及び傾き規制用凸部の合計数が3以上の場合は、それらの中心を結ぶ仮想線で囲まれる範囲の中に錘の重心が存在するように錘が形成されるため、半田が溶融された状態において、傾き規制用凸部の先端が回路基板と当接して、錘は、水平状態又はほぼ水平状態で各チップ部品を接合面側へ加圧する状態となる。また、チップ部品加圧部及び傾き規制用凸部の数がそれぞれ1個の場合、チップ部品加圧部の中心と、傾き規制用凸部の両端とを結ぶ仮想線で囲まれる範囲の中に錘の重心が存在するように錘が形成される。半田の溶融状態においてチップ部品加圧部の先端面は自由に角度が変わるが、傾き規制用凸部は回路基板に面で接触するため、その両端の位置と、チップ部品加圧部の中心位置とで3点が決定されるため、接合部における半田の厚さむらが抑制された状態で半田付けが行われる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記チップ部品加圧部は、前記チップ部品をその中心を含む半分以上の面積で押圧可能に形成されている。傾き規制用凸部の数及び錘の重さによっては、チップ部品加圧部はチップ部品をその全面で押圧する必要はない。しかし、この発明では、半田の溶融状態において、チップ部品加圧部はチップ部品をその中心を含む半分以上の面積で接合部側へ押圧するため、接合部における半田の厚さむらが抑制された状態で半田付けが容易に行われる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記錘を介して前記半田に熱を伝達して半田を溶融させる。この発明では、例えば、錘が誘導加熱やヒータで加熱され、その熱が半田に伝達されて半田が溶融される。半田付けは非酸化状態で行うのが好ましいため、回路基板を容器内に収容して不活性ガス中あるいは還元性ガスの雰囲気で行う場合、回路基板全体や容器全体を加熱する場合に比べて効率的な加熱を実現することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記回路基板、半田層、前記チップ部品の順に積層された状態で半田付けが行われる。この発明では、錘による加圧が良好に行われる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の半田付け方法に使用する錘であって、少なくとも1個の加圧面を備え、前記加圧面より先端が突出している凸部が形成されている。この発明の錘は加圧面を前記チップ部品加圧部とし、加圧面より先端が突出している凸部を前記傾き規制用凸部として用いることにより、前記請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の半田付け方法に好適に用いることができる。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の半田付け方法を半田付け工程に使用する電子機器の製造方法である。この発明では、電子機器の製造方法において、対応する前記請求項に記載の発明の作用、効果を奏する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、回路基板上にチップ部品を接合面全面で半田付けする際に、接合部における半田の厚さのむらを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明を電子機器の部品となる半導体モジュールの製造方法の一工程である半導体素子の半田付け方法に具体化した第1の実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。
【0019】
図1(a),(b)に示すように、半導体モジュール10は、回路基板11と、回路基板11上に半田付けにより接合されたチップ部品としての複数(2個)の半導体素子12とを備えている。回路基板11は、表面に金属回路13を有する絶縁体としてのセラミック基板14が金属製のヒートシンク15と金属板16を介して一体化された冷却回路基板(ヒートシンク付き基板)である。ヒートシンク15は冷却媒体が流れる冷媒流路15aを備えている。ヒートシンク15は、アルミニウム系金属や銅等で形成されている。アルミニウム系金属とはアルミニウム又はアルミニウム合金を意味する。金属板16は、セラミック基板14とヒートシンク15とを接合する接合層として機能し、例えば、アルミニウムや銅等で形成されている。
【0020】
金属回路13は、例えば、アルミニウムや銅等で形成されている。セラミック基板14は、例えば、窒化アルミニウム、アルミナ、窒化ケイ素等により形成されている。半導体素子12は、金属回路13に接合(半田付け)されている。即ち、金属回路13は半導体素子12を回路基板11上に接合するための接合部を構成する。図2における符号「H」は、半田層を示している。半導体素子12としては、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor )やダイオードが用いられている。
【0021】
次に半導体モジュールの製造方法を説明する。
図2は、半田付け装置の構成を概略的に示している。図2に示すように、半導体モジュール10の製造に使用する半田付け装置HKは、密閉可能な容器(チャンバ)17を備え、当該容器17は開口部18aを有する箱型の本体18と、当該本体18の開口部18aを開放及び閉鎖する蓋体19とから構成されている。本体18には、半導体モジュール10を位置決めして支持する支持台20が設置されている。また、本体18には、蓋体19の装着部位にパッキン21が配設されている。
【0022】
蓋体19は、本体18の開口部18aを閉鎖可能な大きさで形成されており、本体18に蓋体19を装着することにより容器17内には密閉空間Sが形成されるようになっている。また、蓋体19において、密閉空間Sと対向する部位は、磁力線(磁束)を通す電気的絶縁材で形成されている。この実施形態では、電気的絶縁材としてガラスが用いられており、蓋体19にはガラス板22が組み付けられている。
【0023】
また、本体18には、容器17内に還元性ガス(この実施形態では水素)を供給するための還元ガス供給部23が接続されている。還元ガス供給部23は、配管23aと、当該配管23aの開閉バルブ23bと、水素タンク23cとを備えている。また、本体18には、容器17内に不活性ガス(この実施形態では窒素)を供給するための不活性ガス供給部24が接続されている。不活性ガス供給部24は、配管24aと、当該配管24aの開閉バルブ24bと、窒素タンク24cとを備えている。また、本体18には、容器17内に充満したガスを外部に排出するためのガス排出部25が接続されている。ガス排出部25は、配管25aと、当該配管25aの開閉バルブ25bと、真空ポンプ25cとを備えている。半田付け装置HKは、還元ガス供給部23、不活性ガス供給部24及びガス排出部25を備えることにより、密閉空間S内の圧力を調整可能な構成とされており、密閉空間S内の圧力は、圧力調整によって加圧されたり、減圧されたりする。
【0024】
また、本体18には、半田付け後の容器17内に熱媒体(冷却用ガス)を供給するための供給手段としての熱媒供給部(図示せず)が接続されている。
半田付け装置HKの上部(蓋体19の上方)には、高周波加熱コイル26が設置されている。この実施形態の高周波加熱コイル26は、1枚のセラミック基板14を覆う大きさに形成されている。高周波加熱コイル26は、渦巻き状(角形渦巻き状)に形成されており、平面的に展開されている。また、高周波加熱コイル26は、蓋体19(ガラス板22の装着部位)に対向するように配置されている。高周波加熱コイル26は、半田付け装置HKが備える高周波発生装置27に電気的に接続されているとともに、容器17内に設置された温度センサ(図示せず)の計測結果に基づき、高周波発生装置27の出力が制御されるようになっている。また、高周波加熱コイル26には、コイル内部に冷却水を通すための冷却路28が形成されているとともに、半田付け装置HKが備える冷却水タンク29に接続されている。
【0025】
蓋体19には、半田付けを行う際に、半導体素子12を加圧する錘30を支持可能な支持プレート31が水平に取り付けられている。支持プレート31は磁力線を通す絶縁材料(例えば、セラミックス)で形成されるとともに、錘30のフランジ部30aより下側が嵌挿可能な孔31aを備えている。錘30は孔31aに嵌挿された状態で支持プレート31に装備されている。そして、図2に示すように、蓋体19が閉鎖位置に配置された状態では、錘30が半導体素子12の接合面と反対側の面(非接合面)に当接するとともに、フランジ部30aが支持プレート31の上面から浮き上がった状態となって、錘30が半導体素子12を錘30の自重で加圧するようになっている。
【0026】
錘30は、チップ部品加圧部としてのチップ部品加圧用凸部30bと、傾き規制用凸部30cとを備えている。チップ部品加圧用凸部30bは、図2に示すように、半田付け時において半導体素子12の上面全体に当接可能な大きさに形成されており、傾き規制用凸部30cは、半田付け時において金属回路13の一部に当接可能な大きさに形成されている。錘30は、半田が溶融された状態でチップ部品加圧用凸部30bが半導体素子12を押圧し、かつ傾き規制用凸部30cが回路基板11に当接することで半導体素子12の接合面が金属回路13と平行な状態に保持可能な形状及び重さに形成されている。この実施形態では、半導体素子12は正方形状のセラミック基板14の対角線上の二隅に位置するように配置されているため、図3(a),(b)に示すように、チップ部品加圧用凸部30bは、平面正方形状の錘30の対角線上の二隅に位置するように配置され、傾き規制用凸部30cは別の対角線上の二隅に位置するように配置されている。なお、図3(a)において、フランジ部30aの外形を二点鎖線で示している。
【0027】
傾き規制用凸部30cはチップ部品加圧用凸部30bより長く形成されている。チップ部品加圧用凸部30b及び傾き規制用凸部30cの長さは、半田の溶融状態において、傾き規制用凸部30cの先端面が金属回路13に当接した状態でチップ部品加圧用凸部30bが半導体素子12を水平状態で押圧可能な長さに設定されている。半田は溶融状態において錘30の重さにより、溶融前の状態より拡がった状態で半導体素子12を半田付けするため、チップ部品加圧用凸部30bの長さと規制用凸部30cの長さの差は、溶融前の半田シート33の厚さと半導体素子12の厚さとの和より小さく設定されている。また、錘30は、チップ部品加圧用凸部30b及び傾き規制用凸部30cの中心と、傾き規制用凸部30cの中心とを結ぶ仮想線L1で囲まれる範囲の中に錘30の重心Gが存在するように形成されている。
【0028】
錘30は、錘30を介して半田に熱を伝達して半田を溶融させることが可能な材料で形成されている。この実施形態では、錘30は、磁束の変化により電流が発生し、自身の電気抵抗によって発熱する材料、即ち誘導加熱可能な材料を用いて形成されている。この実施形態の錘30は、ステンレスで形成されている。
【0029】
また、半田付けを行う際には、位置決め用の治具32を用いて、セラミック基板14上に半田シート33と、半導体素子12と、錘30とを位置決めするようになっている。図3(c)に示すように、治具32は平面正方形状に形成されている。図2及び図3(c)に示すように、治具32には、その裏面に金属回路13の外周部と係合可能な正方形状の凹部32aが形成されるとともに、半導体素子12のサイズに応じた大きさで形成された位置決め用の孔32bと、規制用凸部30cのサイズに応じた大きさで形成された位置決め用の孔32cとが形成されている。この実施形態においては、両孔32b,32cはそれぞれ2個形成されている。なお、図3(c)において、フランジ部30aの外形及び金属回路13の外形を二点鎖線で示しており、金属回路13の外形を示す二点鎖線の一部は凹部32aを示す点線と重なっている。
【0030】
次に、前記半田付け装置HKを用いて半導体モジュール10の製造方法の一工程である半田付け工程において、回路基板11に対する半導体素子12の半田付けを行う方法について説明する。なお、半田付け装置HKを用いて半田付けを行うのに先立って、金属回路13を有するセラミック基板14をヒートシンク15と一体化した回路基板11を予め作製しておく。
【0031】
半田付けを行う際には、最初に、本体18から蓋体19を外し、開口部18aを開放する。そして、図2に示すように本体18の支持台20上に回路基板11を置き、位置決めする。次に、回路基板11のセラミック基板14上に治具32を置き、治具32の各孔32b内に半田シート33と半導体素子12を配置する。治具32は、凹部32aが金属回路13の周縁部と係合して位置決めされた状態でセラミック基板14上に載置される。半田シート33は、金属回路13と半導体素子12との間に配置する。
【0032】
次に蓋体19を本体18に取り付け、開口部18aを閉鎖して、容器17内に密閉空間Sを形成する。蓋体19を本体18に取り付けると、図2に示すように、錘30のチップ部品加圧用凸部30b側が治具32の孔32bに嵌挿され、規制用凸部30cが孔32cに嵌挿される。そして、錘30のチップ部品加圧用凸部30bの先端が半導体素子12の非接合面(上面)に当接するとともに、フランジ部30aが支持プレート31の上面から離間した状態になり、各錘30は2個の半導体素子12に跨った状態で、錘30の自重によって半導体素子12を加圧する状態に配置される。この状態において、セラミック基板14上には、金属回路13側から順に半田シート33、半導体素子12、錘30が重なった状態で配置される。
【0033】
次に、ガス排出部25を操作して容器17内を真空引きするとともに、不活性ガス供給部24を操作して容器17内に窒素を供給し、密閉空間S内を不活性ガスで充満させる。この真空引きと窒素の供給を数回繰り返した後、還元ガス供給部23を操作して容器17内に水素を供給し、密閉空間S内を還元ガス雰囲気とする。
【0034】
次に、高周波発生装置27を作動させ、高周波加熱コイル26に高周波電流を流す。すると、高周波加熱コイル26には、対応する錘30を通る高周波の磁束が発生し、錘30には磁束の通過によって渦電流が発生する。高周波加熱コイル26の磁束内に置かれた錘30は、電磁誘導作用によって発熱し、その熱が錘30のチップ部品加圧用凸部30bから半導体素子12に伝わる。そして、回路基板11の各接合部上に載置された半田シート33には、錘30に生じた熱が当該錘30のチップ部品加圧用凸部30b及び半導体素子12を介して集中的(局所的)に伝わり、加熱される。この結果、半田シート33は、半導体素子12を介して伝わる熱で溶融温度以上の温度になることにより溶融する。
【0035】
半田シート33が溶融すると、溶融した半田の表面張力と半導体素子12の重心とのバランスによっては、半導体素子12が傾こうとする場合がある。しかし、錘30は、チップ部品加圧用凸部30bの他に規制用凸部30cを備えており、半田が溶融された状態において、傾き規制用凸部30cの先端が回路基板11上の金属回路13と当接して、錘30は、水平状態又はほぼ水平状態で各半導体素子12を接合面側へ加圧する状態となる。その結果、半田がその溶融温度以下に冷却した状態では、各接合部における半田の厚さむらが抑制された状態で半田付けが行われる。そして、例えば、後工程においてワイヤボンディングで配線を行って回路基板11上の各半導体素子12間及び半導体素子12と配線との間を接続する際に、ワイヤボンディングに支障を来すことが回避される。
【0036】
半田が完全に溶融した後、高周波発生装置27を停止させる。なお、容器17内に設置した温度センサ(図示せず)の検出結果に基づき、高周波加熱コイル26に流れる高周波電流の大きさが制御される。また、容器17内(密閉空間S)の圧力は、半田付け作業の進行状況に合わせて加圧及び減圧され、雰囲気調整が行われる。
【0037】
そして、半田シート33が完全に溶融した後、冷却用の熱媒供給部を操作して容器17内に冷却用ガスを供給する。冷却用ガスは、ヒートシンク15の冷媒流路15aの入口又は出口に向かって吹き込まれるとともに、容器17内に供給された冷却用ガスは、冷媒流路15a及びヒートシンク15の周囲を流れて、半田付け対象物(半導体モジュール10)を冷却する。この結果、溶融した半田は、溶融温度未満に冷却されることによって凝固し、金属回路13と半導体素子12とを接合する。この状態において、半田付けが終了し、半導体モジュール10が完成する。そして、蓋体19を本体18から取り外し、治具32を外した後に容器17内から半導体モジュール10を取り出す。
【0038】
したがって、この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)回路基板11上に設けられた金属回路13に半導体素子12を接合面全面で半田付けする半田付け方法において、半田の溶融時に半導体素子12を金属回路13側に押圧する錘30として、チップ部品加圧用凸部30bと、傾き規制用凸部30cとを備えた錘30を用いる。金属回路13上に半田を介して半導体素子12を配置するとともに、錘30をチップ部品加圧用凸部30bが半導体素子12を押圧する状態に載置する。そして、錘30によって半導体素子12を加圧しながら半田を溶融させるとともに傾き規制用凸部30cが回路基板11(正確には金属回路13)に当接することで半導体素子12を金属回路13と平行な状態に半田付けする。したがって、半田がその溶融温度以下に冷却された状態では、各接合部における半田の厚さむらが抑制された状態で半田付けが行われる。
【0039】
(2)錘30は、チップ部品加圧用凸部30bが半導体素子12を押圧する状態に載置されたときに、チップ部品加圧用凸部30bの中心と、傾き規制用凸部30cの中心とを結ぶ仮想線L1で囲まれる範囲の中に錘30の重心Gが存在するように形成されている。したがって、半田の溶融状態において、2個の傾き規制用凸部30cの先端面が回路基板11と当接して、錘30は、水平状態又はほぼ水平状態で各半導体素子12を接合面側へ加圧する状態となる。その結果、回路基板11上に半導体素子12を接合面全面で半田付けする際に、確実に接合部における半田の厚さむらが抑制された状態で半田付けが行われる。
【0040】
(3)チップ部品加圧用凸部30bは、半導体素子12をその中心を含む半分以上の面積で押圧可能に形成されている。傾き規制用凸部30cの数及び錘30の重さによっては、チップ部品加圧用凸部30bは半導体素子12をその全面で押圧する必要はない。しかし、半田の溶融状態において、チップ部品加圧用凸部30bは半導体素子12をその中心を含む半分以上の面積で接合部側へ押圧するため、接合部における半田の厚さむらが抑制された状態で半田付けが容易に行われる。
【0041】
(4)半田付けは非酸化状態で行うのが好ましいため、回路基板11を容器17内に収容して不活性ガス中あるいは還元性ガスの雰囲気で行われるが、錘30を介して半田に熱を伝達して半田を溶融させるため、回路基板11全体や容器17全体を加熱する場合に比べて効率的な加熱を実現することができる。
【0042】
(5)錘30を誘導加熱で発熱させるとともに、半導体素子12を介して半導体素子12と金属回路13との間に配置された半田シート33を加熱するため、半田シート33に対して集中的に熱を伝えることができる。したがって、回路基板11全体や容器17全体を加熱する場合に比べて効率的な加熱を実現できる。
【0043】
(6)回路基板11、半田シート33(半田層)、半導体素子12の順に積層され、その上に錘30を載置した状態で半田付けが行われる。したがって、錘30による加圧が良好に行われる。
【0044】
(7)錘30は、一つの面に複数の凸部、即ちチップ部品加圧用凸部30b及び規制用凸部30cが形成されるとともに、チップ部品加圧用凸部30bは長さが規制用凸部30cより短く形成されている。即ち、複数の凸部のうち少なくとも1個の凸部は他の凸部より短く形成されている。
【0045】
(8)錘30はフランジ部30a(掛止部)を備えている。そして、錘30は、蓋体19に取り付けられるとともに、所定位置に孔31aが形成された支持プレート31の孔31aに嵌挿されて、フランジ部30aの下面が支持プレート31の上面と係合する状態で支持プレート31に支持される。したがって、蓋体19を本体18に取り付けると、錘30が自動的に半導体素子12と対向する所定位置に配置されるとともに、蓋体19を本体18から取り外すと、錘30が自動的に半導体素子12と離間する位置へ配置される。
【0046】
(9)半田シート33及び半導体素子12は、治具32を介してセラミック基板14上の所定位置に位置決めされた状態で配置される。したがって、錘30を前記構成で支持プレート31に取り付ける構成を採用した場合、錘30を精度良く、各半導体素子12と当接する位置に効率良く配置することができる。
【0047】
(10)高周波加熱コイル26を容器17の外部に配置した。したがって、錘30を支持する支持プレート31を蓋体19に支持する構成が簡単になる。
(11)電子機器の部品となる半導体モジュール10の製造方法の一工程である半導体素子12の半田付け工程において前記の方法で半田付けを行っている。したがって、電子機器の製造方法において、前記各効果を得ることができる。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2の実施形態を図4(a),(b)を参照しながら説明する。なお、第2の実施形態は、錘30及び治具32の構成が異なりその他の構成は第1の実施形態と基本的に同様であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0049】
この実施形態では、錘30は、1個の半導体素子12毎に設けられている。図4(b)に示すように、錘30は1個のチップ部品加圧用凸部30bと2個の規制用凸部30cとを備えている。錘30は、平面形状が金属回路13の検出に対応した略L字状に形成されるとともに、Lのコーナ部にチップ部品加圧用凸部30bが形成され、端部に規制用凸部30cが形成されている。また、治具32にはチップ部品加圧用凸部30bを挿通するための孔32bが2個と、規制用凸部30cを挿通するための孔32cが4個形成されている。
【0050】
この実施形態の錘30及び治具32を用いて半導体素子12を回路基板11に半田付けする場合も前記第1の実施形態と同様に、容器17内に回路基板11を配置し、回路基板11のセラミック基板14上に治具32を置き、治具32の各孔32b内に半田シート33と半導体素子12を配置する。そして、蓋体19を閉じると、図4(a)に示すように、各錘30によって半導体素子12が押圧される状態となる。そして、高周波発生装置27が作動されて錘30が高周波加熱されて半田の溶融が行われる。
【0051】
各錘30のチップ部品加圧用凸部30b及び規制用凸部30cの中心は一直線上になく、チップ部品加圧用凸部30b及び規制用凸部30cの中心を結ぶ仮想線L1で囲まれる範囲の中に錘30の重心が存在する。したがって、半田の溶融状態において、錘30は、水平状態又はほぼ水平状態で各半導体素子12を接合面側へ加圧する状態となる。その結果、半田がその溶融温度以下に冷却した状態では、各接合部における半田の厚さむらが抑制された状態で半田付けが行われる。
【0052】
この実施形態においては、前記第1の実施形態における効果(1)〜(11)と同様な効果の他に次の効果を得ることができる。
(12)錘30が複数設けられているため、1個の錘30で両半導体素子12を押圧する構成に比べて錘30の合計重量を軽くすることができる。回路基板11はセラミック基板14が1個とは限らず、複数のセラミック基板14をヒートシンク15と一体化した回路基板11上に半導体素子12が半田付けされて構成される半導体モジュール10もある。したがって、同じ能力であれば、合計重量が軽い方が有利となる。
【0053】
(第3の実施形態)
次に、本発明を具体化した第3の実施形態を図5及び図6を参照しながら説明する。この実施形態は、複数の規制用凸部30cの先端面が金属回路13に当接してチップ部品加圧用凸部30bの先端面の位置が設定されて、溶融後の半田層Hと半導体素子12の厚さの合計が設定される点が前記第1及び第2の実施形態と大きく異なっている。
【0054】
図6に示すように、錘30は、平面正方形状に形成されるとともに、4個の規制用凸部30cが錘30の四隅に形成され、2個のチップ部品加圧用凸部30bが各規制用凸部30cの外側を結ぶ仮想線(図示せず)で囲まれる範囲に形成されている。チップ部品加圧用凸部30b及び規制用凸部30cの長さの差は、溶融状態の半田を錘30がその重さで押圧して各規制用凸部30cの先端面が全て金属回路13に当接する状態になるように設定されている。使用される半田シート33の厚さ及び面積により、チップ部品加圧用凸部30b及び規制用凸部30cの長さの差の適切な値が異なる。そのため、実験でチップ部品加圧用凸部30b及び規制用凸部30cの長さの差の適切な値を求めて、設定するのが好ましい。
【0055】
この実施形態では、半田シート33の溶融前は規制用凸部30cは、金属回路13から若干離れた状態に配置される。そして、半田が溶融されると、錘30の重さによって各規制用凸部30cの先端面が金属回路13に当接する状態となり、錘30は、水平状態で各半導体素子12を接合面側へ加圧する状態となる。その結果、半田がその溶融温度以下に冷却した状態では、各接合部における半田の厚さむらが抑制された状態で半田付けが行われる。
【0056】
この実施形態においては、前記第1の実施形態における効果(1)、(3)〜(11)と同様な効果の他に次の効果を得ることができる。
(13)冷却後の半田層Hの厚さが、規制用凸部30c及びチップ部品加圧用凸部30bの長さの差で決まるため、第1及び第2の実施形態のように溶融状態における半田の厚さと、規制用凸部30c及びチップ部品加圧用凸部30bの長さの差とのバランスで決める場合より、錘30の重さの自由度が高くなる。
【0057】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 錘30は、チップ部品加圧部及び傾き規制用凸部30cを備え、金属回路13上に半田を介して配置された半導体素子12をチップ部品加圧用凸部30bが押圧する状態に錘30を載置して半田を溶融させたとき、傾き規制用凸部30cが回路基板11に当接することで半導体素子12を金属回路13と平行な状態に半田付けできればよい。例えば、セラミック基板14上に半導体素子12を2個半田付けする場合、図7(a)に示すように、チップ部品加圧用凸部30b及び規制用凸部30cを1個ずつ備えた錘30を2個用いてもよい。錘30は、チップ部品加圧用凸部30bの中心と、傾き規制用凸部30cの両端とを結ぶ仮想線L1で囲まれる範囲の中に錘30の重心が存在するように形成されている。例えば、規制用凸部30cは、チップ部品加圧用凸部30b及び規制用凸部30cの中心を結ぶ仮想線L1と直交する方向の長さが、半導体素子12の同方向の長さと同程度に形成される。この場合、半田の溶融状態においてチップ部品加圧用凸部30bの先端面は自由に角度が変わるが、傾き規制用凸部30cは回路基板11(正確には金属回路13)に面で接触するため、その両端の位置と、チップ部品加圧用凸部の中心位置との3点を結ぶ仮想線L1の範囲の中に錘30の重心が存在する状態となる。その結果、錘30が傾くことが抑制され、接合部における半田の厚さむらが抑制された状態で半田付けが行われる。
【0058】
○ 第3の実施形態のように、溶融状態の半田を錘30の重さで押し付けるとともに、規制用凸部30cとチップ部品加圧用凸部30bの長さの差で半田の厚さ(高さ)を決める構成において、半導体素子12の数は1個であってもよい。例えば、図7(b)に示すように、錘30は、平面正方形状に形成されるとともに、下面中央にチップ部品加圧用凸部30bが1個形成され、四隅に規制用凸部30cがそれぞれ1個形成されていてもよい。
【0059】
○ 治具32は、凹部32aが金属回路13の周縁部と係合して位置決めされた状態でセラミック基板14上に載置される構成に限らない。例えば、図8に示すように、凹部32aの周面がセラミック基板14の周面14aと係合可能な形状にしてもよい、金属回路13の厚さはセラミック基板14の厚さに比較して薄いため、周面14aと係合可能に形成する方が凹部32aの形成が容易になる。
【0060】
○ 錘30は、チップ部品加圧部として機能する少なくとも1個の加圧面を備え、傾き規制用凸部として前記加圧面より先端が突出している凸部が形成されていればよい。即ち、チップ部品加圧部はチップ部品加圧用凸部30bに限らない。例えば、図9に示すように、チップ部品加圧用凸部30bに代えて加圧面30dを備え、加圧面30dより先端が突出している規制用凸部30cが形成されている錘30を使用してもよい。なお、チップ部品加圧部としてチップ部品加圧用凸部30bを備えている場合は、チップ部品加圧用凸部30bの先端面が加圧面となる。
【0061】
○ 回路基板11上に設けられるセラミック基板14の数は1個に限らず複数であってもよい。また、回路基板11上に設けられるセラミック基板14の数が1個の場合、複数の回路基板11を容器17に収容して同時に半田付けをするようにしてもよい。
【0062】
○ 錘30は、フランジ部30aを備えずに1個ずつ回路基板11上に載置する構成であってもよい。しかし、フランジ部30aにより支持プレート31に支持された状態で載置位置と離間位置とに移動される構成の方が、錘30を所定の位置に配置するのが容易になる。特に、一回の半田付けにおいて、複数個の錘30を回路基板11上に載置する必要がある場合、錘30の載置を同時に、かつ容易に行うことができる。
【0063】
○ 半導体素子12(チップ部品)は、例えば、トランジスタとダイオードでは一般に厚さが異なるため、錘30としてチップ部品加圧用凸部30b及び規制用凸部30cの長さの差が異なるものを準備しておき、半田付けすべきチップ部品に対応して最適な錘30を使用するようにしてもよい。
【0064】
○ 傾き規制用凸部30cの数及び錘30の重さによっては、チップ部品加圧用凸部30bはチップ部品(半導体素子12)をその全面で押圧する必要はないため、チップ部品加圧用凸部30bはその先端面が必ずしも押圧すべき半導体素子12の非接合面と同じ大きさである必要はない。しかし、第1及び第2の実施形態のように規制用凸部30cと、溶融状態の半田とのバランスで半田の厚さが規制される半田付け方法の場合は、チップ部品加圧用凸部30bはチップ部品をその中心を含む半分以上の面積で接合部側へ押圧する大きさに形成されているのが好ましい。チップ部品加圧用凸部30bの先端面がチップ部品をその中心を含む半分以上の面積で接合部側へ押圧すると、接合部における半田の厚さむらが抑制された状態で半田付けが容易に行われる。
【0065】
○ 錘30を支持プレート31の孔31aに嵌挿した状態で移動させる場合、錘30を支持プレート31に掛止するための構成はフランジ部30aに限らず、錘30の上部の側面に掛止部として複数の凸部を設けてもよい。
【0066】
○ 治具32は、半田シート33、半導体素子12及び錘30の位置決め機能を有する構成に限らず、半田シート33及び半導体素子12の位置決め機能のみを有する構成でもよい。
【0067】
○ 誘導加熱で錘30を加熱してその熱で半田を溶融させる構成において、錘30はステンレス製に限らず、誘導加熱可能な材料であればよく、例えば、ステンレスに代えて、鉄やグラファイトで形成したり、熱伝導率の異なる2種類の導体材料を用いて構成してもよい。
【0068】
○ 半田は半田シート33として金属回路13の接合部と対応する箇所に配置する方法に限らず、半田ペーストを接合部と対応する箇所に塗布するようにしてもよい。
○ 半田を溶融温度以上に加熱する加熱方法は誘導加熱以外の方法であってもよい。例えば、容器17内に電気ヒータを設けて半田を加熱するようにしてもよい。
【0069】
○ 回路基板11は、セラミック基板14が冷媒流路15aを有しないヒートシンク15と一体化された構成や、ヒートシンク15を有しない構成であってもよい。
○ 蓋体19は、本体18に対して取り外し不能な構成、例えば、開閉式でもよい。
【0070】
○ 蓋体19は、少なくとも高周波加熱コイル26と対向する部位が電気的絶縁材で形成されているのが好ましく、当該部位をガラスに代えて、例えば、セラミックスや樹脂で形成してもよい。また、蓋体19全体を同じ電気的絶縁材で形成してもよい。
【0071】
○ 高周波加熱コイル26は、複数の錘30の上方に跨って配置する構成としてもよい。この場合、高周波加熱コイル26に対する高周波電流の供給経路や冷却水の供給経路を少なくすることができ、半田付け装置HKの構造をさらに簡素化できる。
【0072】
○ 回路基板11上に設けられた接合部(金属回路23)に接合される電子部品は、接合部と対向する面全体が接合されるものに限らず、チップ抵抗やチップコンデンサ等のように電子部品の両端に端子を有し、各端子が異なる接合部に接合されるものであってもよい。
【0073】
○ 半田付けの際に規制用凸部30cが回路基板11の上面に当接して錘30の傾きを規制する構成であればよく、金属回路13に当接して錘30の傾きを規制する構成に限らない。例えば、規制用凸部30cがセラミック基板14の上面に当接する構成であってもよい。
【0074】
○ 規制用凸部30cは、先端が面接触する形状に限らず、点接触や線接触する形状であってもよい。例えば、規制用凸部30cの先端に線状の凸部が形成された形状や、規制用凸部30cの先端に小さな凸部が形成された形状としてもよい。
【0075】
○ 高周波加熱コイル26を、容器17(密閉空間S)内に配置してもよい。
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の発明において、前記錘は誘導加熱可能な導電材料により形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】(a)はセラミック基板が1枚の半導体モジュールの平面図、(b)は(a)のA−A線断面図。
【図2】第1の実施形態の半田付け方法に用いる半田付け装置の概略縦断面図。
【図3】(a)は金属回路、チップ部品加圧用凸部、規制用凸部等の関係を示す模式図、(b)は錘の模式斜視図、(c)は治具の模式平面図。
【図4】第2の実施形態を示し、(a)は半田付け時の状態を示す模式断面図、(b)は金属回路、チップ部品加圧用凸部、規制用凸部等の関係を示す模式図。
【図5】第3の実施形態における半田付け時の状態を示す模式断面図。
【図6】同じく金属回路、チップ部品加圧用凸部、規制用凸部等の関係を示す模式図。
【図7】(a)は別の実施形態における錘とチップ部品との関係を示す模式図、(b)は別の実施形態における錘とチップ部品との関係を示す模式図。
【図8】別の実施形態の治具の形状を示す模式断面図。
【図9】別の実施形態の錘を示す模式斜視図。
【図10】(a)は従来技術を示す断面図、(b)は別の従来技術を示す模式断面図。
【符号の説明】
【0077】
H…半田層、G…重心、L1…仮想線、11…回路基板、12…チップ部品としての半導体素子、13…接合部としての金属回路、30…錘、30b…チップ部品加圧部としてのチップ部品加圧用凸部、30c…規制用凸部、30d…チップ部品加圧部としての加圧面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上に設けられた接合部にチップ部品を半田付けする半田付け方法であって、
半田の溶融時に前記チップ部品を前記接合部側に押圧する錘として、チップ部品加圧部と、傾き規制用凸部とを備えた錘を用い、前記接合部上に半田を介して前記チップ部品を配置するとともに、前記錘を前記チップ部品加圧部が前記チップ部品を押圧する状態に載置し、前記錘によって前記チップ部品を加圧しながら前記半田を溶融させるとともに傾き規制用凸部が前記回路基板に当接することで前記チップ部品を前記接合部と平行な状態に半田付けすることを特徴とする半田付け方法。
【請求項2】
前記錘は、前記チップ部品加圧部が前記チップ部品を押圧する状態に載置されたときに、前記チップ部品加圧部の中心と、前記傾き規制用凸部の中心又は端とを結ぶ仮想線で囲まれる範囲の中に前記錘の重心が存在するように形成されている請求項1に記載の半田付け方法。
【請求項3】
前記チップ部品加圧部は、前記チップ部品をその中心を含む半分以上の面積で押圧可能に形成されている請求項1又は請求項2に記載の半田付け方法。
【請求項4】
前記錘を介して前記半田に熱を伝達して半田を溶融させる請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の半田付け方法。
【請求項5】
前記回路基板、半田層、前記チップ部品の順に積層された状態で半田付けが行われる請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の半田付け方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の半田付け方法に使用する錘であって、少なくとも1個の加圧面を備え、前記加圧面より先端が突出している凸部が形成されていることを特徴とする錘。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の半田付け方法を半田付け工程に使用することを特徴とする電子機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−147555(P2008−147555A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335648(P2006−335648)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】