説明

半田付け装置及びコテ先劣化防止方法

【課題】 高温での長時間使用に耐えることができ,従来と同等の半田接合性を保持しながら,酸化,銅食われによるコテ先の劣化を抑制できるコテ先劣化防止方法及びそれを用いた半田付け装置を提供すること。
【解決手段】 半田付けに使用される半田付け用糸半田50とは別に,半田付け用糸半田50より銅を1重量%以上含有するコテ先保護用糸半田60を用意する。稼動時には,半田付け用糸半田50を半田付け対象箇所に供給し,コテ先保護用糸半田60がコテ先31に接触しないような距離に位置するようにする。待機時には,コテ先31にコテ先保護用糸半田60を供給し,コテ先31の表面がコテ先保護用半田で覆われるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,基板と電子部品とを半田接合する半田付け装置及びコテ先劣化防止方法に関する。さらに詳細には,コテ先の劣化を防止しつつ半田接合も良好に行える半田付け装置及びコテ先劣化防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板と電子部品とを半田接合する場合に,半田付け装置のコテ先は反復使用により劣化し,形状が変化する。これにより,確実な半田付けを行うことが困難となり,電子製品の品質が低下する原因となっている。
【0003】
コテ先材質に含まれる銅が半田に溶出する銅食われは,コテ先の形状を変化させる要因となることが知られている。また,コテ先の酸化によってもコテ先の形状が変化する。このようなコテ先の劣化を防止するための従来技術として,以下のものが挙げられる。特許文献1では半田コテのコテ先の表面に使用する合金が開示されている。一方,特許文献2では半田コテのコテ先に圧縮エアを当て,コテ先から付着物を吹き飛ばすように構成された半田付け装置が開示されている。また,特許文献3ではコテ先の劣化を抑制する半田合金が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−317629
【特許文献2】特開2002−217534
【特許文献3】特開2006−061914
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようにコテ先の表面に合金を用いる方法では,半田接合時の高温での長時間使用に耐えることができない。また,特許文献2のようにコテ先に圧縮エアを当て付着物を吹き飛ばす方法では,半田の銅食われを防止することができない。特許文献3のような特殊な半田合金を用いることもできるが,半田付け自体の品質では従来の半田のほうが勝っている。
【0006】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,高温での長時間使用に耐えることができ,従来と同等の半田接合性を保持しながら,酸化,銅食われによるコテ先の劣化を抑制できるコテ先劣化防止方法及びそれを用いた半田付け装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の半田付け装置は,コテ先と,半田付け対象箇所に半田付け用半田を供給する半田付け用半田供給部と,前記コテ先にコテ先保護用半田を供給するコテ先保護用半田供給部とを有することを特徴とするものである。かかる半田付け装置は,コテ先保護用半田をコテ先に供給することができる。
【0008】
上記の半田付け装置において,半田接合時には,前記半田付け用半田供給部により半田付け用半田の供給を行わせるとともに,前記コテ先保護用半田供給部によるコテ先保護用半田の供給を行わせず,待機時には,前記コテ先保護用半田供給部によりコテ先保護用半田を供給させるとともに,前記半田付け用半田供給部による半田付け用半田の供給を行わせない制御部を有するとなおよい。稼動時には,通常の半田付けを行い,待機時には,コテ先保護用半田をコテ先に供給し,コテ先の劣化を防止することができるからである。
【0009】
また,上記の半田付け装置の代わりに,コテ先と,半田付け対象箇所に半田付け用半田を供給する半田付け用半田供給部と,前記コテ先を移動させる移動装置と,前記移動装置によるコテ先の移動範囲内に設けられ,溶融したコテ先保護用半田を収容するコテ先保護用半田容器とを有するものを用いてもよい。コテ先がコテ先保護用半田で覆われることに変わりはないからである。
【0010】
上記の半田付け装置において,半田接合時には,前記半田付け用半田供給部により半田付け用半田の供給を行わせ,待機時には,前記コテ先保護用半田容器内の溶融した前記コテ先保護用半田に前記コテ先を浸漬させる制御部を有するとなおよい。稼動時には,通常の半田付けを行い,待機時には,コテ先保護用半田をコテ先に供給し,コテ先の劣化を防止することができるからである。
【0011】
本発明のコテ先保護方法では,半田付け用半田と,前記半田付け用半田より1重量%以上銅の含有率が多いコテ先保護用半田とを用い,半田接合時に,前記半田付け用半田を半田付け対象箇所に供給し,前記コテ先保護用半田をコテ先に供給せず,待機時に,前記コテ先保護用半田を前記コテ先に供給し,前記半田付け用半田を半田付け対象箇所に供給しないようにする。これにより,コテ先が常にいずれかの半田で覆うことができ,酸化を防止できる。また,待機時には銅食われを防止できる。
【0012】
また,半田付け用半田と,前記半田付け用半田より1重量%以上銅の含有率が多いコテ先保護用半田と,溶融した前記コテ先保護用半田を収容するコテ先保護用半田容器とを用い,半田接合時に,前記半田付け用半田を半田付け対象箇所に供給し,待機時に,前記コテ先保護用半田容器内の溶融した前記コテ先保護用半田にコテ先を浸漬するようにしてもよい。上記の方法と同様の効果を得ることができるからである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば,高温での長時間使用に耐えることができ,従来と同等の半田接合性を保持しながら,酸化,銅食われによるコテ先の劣化を抑制できるコテ先劣化防止方法及びそれを用いた半田付け装置が提供されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第1の形態]
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,基板のスルーホールに電子部品のリード端子を半田付けする半田付け装置とコテ先劣化防止方法について,本発明を具体化したものである。
【0015】
本形態に係る半田付け装置は,図1のように構成されている。半田付け装置70は,ロボットアーム41と,半田付け用糸半田供給部51と,半田付け用糸半田リール52と,コテ先保護用糸半田供給部61と,コテ先保護用糸半田リール62と,コテホルダ32と,コテ先31と,これらを統括する制御部80とを有している。ロボットアーム41は,コテ先31及びコテホルダ32を移動させるものである。これにより,半田付け装置70は所望の位置において半田付けを行うことができる。
【0016】
半田付け用糸半田供給部51は,半田付け用糸半田50を半田付け用糸半田リール52から引き出して半田付け対象箇所に半田を供給するものである。コテ先保護用糸半田供給部61は,コテ先保護用糸半田60をコテ先保護用糸半田リール62から引き出して,コテ先31に半田を供給するものである。
【0017】
ここで,コテ先保護用糸半田60は,半田付け用糸半田50に比べ銅を1重量%以上多く含んでいるものである。半田付け用糸半田50及びコテ先保護用糸半田60として,例えば,特許文献3に記載の半田合金を用いることができる。銅を0.3〜3重量%含有する半田合金であって,コテ先保護用糸半田60の銅の含有率を半田付け用糸半田50より1重量%以上多くなるように選んだものを用いてもよい。
【0018】
半田付け装置70は,搬入された基板11のランド13と電子部品のリード端子22とを半田付けすることにより,電子製品を製造するものである。
【0019】
ここで,半田付け装置70の動作について説明する。半田付け装置70とコテ先31の動作手順のフローチャートを図2に示す。まず,部品のリード端子22が挿入された基板11が搬入される(S21)。次に,コテ先以外の別の熱源により,搬入された基板の温度を上昇させる(S22)。次に,半田付けを行う(S23)。最後に,基板11を搬出する(S24)。
【0020】
上記において,コテ先31が実際に稼動しているのは,半田付けの工程(S23)のみである。それ以外においてコテ先31は待機中である。このような待機時間にコテ先31を放置すると,コテ先31の表面が酸化するため,これを防止する必要がある。しかし,半田付け用糸半田50によりコテ先31を覆うと,銅食われによりコテ先31が劣化する。このため,銅食われと,酸化とを同時に防止する必要がある。
【0021】
ここで,半田付け装置70の動作の詳細について,コテ先31の劣化防止方法と合わせて図3と図4により説明する。コテ先31の待機時(S21,S22)には,コテ先保護用糸半田供給部61によりコテ先保護用糸半田60をコテ先31に供給する。コテ先31に供給された半田は溶融し,コテ先31の表面を覆う。このとき,半田付け用糸半田50はコテ先31に接触しないような距離に位置している。
【0022】
これにより,コテ先31の表面は銅を含んだ半田に覆われるので,コテ先31からの銅の溶出がない。また,コテ先31が空気に接触していないため,表面の酸化も防止できる。これにより,コテ先31の形状の変化等の劣化を防止するのである。
【0023】
この後,コテ先31は待機状態を終了し,半田付けを行う。この半田付けの前に,エアブローでコテ先31のクリーニングを行うとよい。なぜならば,コテ先保護用糸半田60よりも半田付け用糸半田50のほうが半田接合に適しているからである。
【0024】
次に,図4のようにコテ先31をリード端子22とランド13に接触させる(S23)。半田付け用糸半田供給部51により半田付け用糸半田50が半田付け対象箇所に接触し,溶融する。こうして,半田付け対象箇所が接合される。このとき,コテ先保護用糸半田60はコテ先31に接触しないような距離に位置している。
【0025】
半田付けが終了した後,基板11は搬出される(S24)。このとき,コテ先31は再び待機状態に戻る。そのため,コテ先31のクリーニングを行った後,再びコテ先保護用糸半田60をコテ先に供給する。以上で,半田付け装置70の一連の動作が終了した。この一連の動作を統括しているのが制御部80である。
【0026】
つまり,半田接合時には半田付け用糸半田50を半田付け対象箇所に供給し,コテ先保護用糸半田60をコテ先31に供給しないようにするのである。待機時には,コテ先保護用糸半田60をコテ先31に供給し,半田付け用糸半田50を供給しないようにするのである。
【0027】
これにより,コテ先31が常にいずれかの半田に覆われているため,コテ先の酸化を防止できる。また,待機時にコテ先保護用糸半田60が溶融してコテ先31を覆うので,銅食われを防止できる。また,半田付け用糸半田50は通常用いられるものであるため,従来と同様の製品品質を保持できる。なお,高温での長時間使用も可能である。さらに,コテ先31の変形を抑えることができるため,歩留まりの向上を図ることができる。
【0028】
[第2の形態]
以下,第2の形態について説明する。本形態に係る半田付け装置71の構成を図5に示す。第1の形態からコテ先保護用糸半田供給部61とコテ先保護用糸半田リール62とを取り除いたものである。その代わりに図5にあるコテ先保護用半田容器63を有している。ここで,コテ先保護用半田容器63は,ロボットアーム41の移動範囲内にある。その他の構成は第1の形態と同様である。
【0029】
また,半田付け装置71の動作手順は,半田付けの対象物を基準にすると第1の形態と同様である。コテ先31の動作も第1の形態と同様,半田接合時と待機時とに区別される。S23は第1の形態と同様である。待機時(S21,S22,S24)に,図6にあるようにコテ先31をコテ先保護用半田容器63内の溶融したコテ先保護用半田に浸漬する。この半田として,第1の実施の形態におけるコテ先保護用糸半田60と同じものを用いることができる。このように,本形態では第1の形態と同様コテ先31の劣化を防止することができる。
【0030】
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係るコテ先劣化防止方法とそれを用いた半田付け装置は,半田付けに用いられる半田の他に,コテ先を保護するための半田を備えるように構成したので,待機時にコテ先保護用半田によりコテ先を覆うことができるようになった。これにより,銅食われ,酸化によるコテ先の劣化を防止するコテ先劣化防止方法及びそれを用いた半田付け装置が実現されている。
【0031】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,半田接合時と待機時との間に行うコテ先のクリーニングとして,エアブロー以外の方法を用いてもよい。また,クリーニングを省略することもできる。また,用いる半田は糸半田に限らない。半田でコテ先を覆うことができれば充分であるからである。また,コテ先保護用半田容器は半田付け装置から独立して設けても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1の実施の形態に係る設備の構成を示す図である。
【図2】第1の実施の形態に係る半田付け装置及びコテ先の動作を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施の形態に係るコテ先の待機時を説明する図である。
【図4】第1の実施の形態に係るコテ先の稼動時を説明する図である。
【図5】第2の実施の形態に係る設備の構成を示す図である。
【図6】第2の実施の形態に係るコテ先の待機時を説明する図である。
【符号の説明】
【0033】
31…コテ先
41…ロボットアーム
50…半田付け用糸半田
51…半田付け用糸半田供給部
60…コテ先保護用糸半田
61…コテ先保護用糸半田供給部
63…コテ先保護用半田容器
70…半田付け装置
71…半田付け装置
80…制御部
81…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コテ先と,
半田付け対象箇所に半田付け用半田を供給する半田付け用半田供給部と,
前記コテ先にコテ先保護用半田を供給するコテ先保護用半田供給部とを有することを特徴とする半田付け装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半田付け装置であって,
半田接合時には,前記半田付け用半田供給部により半田付け用半田の供給を行わせるとともに,前記コテ先保護用半田供給部によるコテ先保護用半田の供給を行わせず,
待機時には,前記コテ先保護用半田供給部によりコテ先保護用半田を供給させるとともに,前記半田付け用半田供給部による半田付け用半田の供給を行わせない制御部を有することを特徴とする半田付け装置。
【請求項3】
コテ先と,
半田付け対象箇所に半田付け用半田を供給する半田付け用半田供給部と,
前記コテ先を移動させる移動装置と,
前記移動装置によるコテ先の移動範囲内に設けられ,溶融したコテ先保護用半田を収容するコテ先保護用半田容器とを有することを特徴とする半田付け装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半田付け装置であって,
半田接合時には,前記半田付け用半田供給部により半田付け用半田の供給を行わせ,
待機時には,前記コテ先保護用半田容器内の溶融した前記コテ先保護用半田に前記コテ先を浸漬させる制御部を有することを特徴とする半田付け装置。
【請求項5】
半田付け用半田と,前記半田付け用半田より1重量%以上銅の含有率が多いコテ先保護用半田とを用い,
半田接合時に,前記半田付け用半田を半田付け対象箇所に供給し,前記コテ先保護用半田をコテ先に供給せず,
待機時に,前記コテ先保護用半田を前記コテ先に供給し,前記半田付け用半田を半田付け対象箇所に供給しないことを特徴とするコテ先劣化防止方法。
【請求項6】
半田付け用半田と,前記半田付け用半田より1重量%以上銅の含有率が多いコテ先保護用半田と,溶融した前記コテ先保護用半田を収容するコテ先保護用半田容器とを用い,
半田接合時に,前記半田付け用半田を半田付け対象箇所に供給し,
待機時に,前記コテ先保護用半田容器内の溶融した前記コテ先保護用半田にコテ先を浸漬することを特徴とするコテ先劣化防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−66636(P2009−66636A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239286(P2007−239286)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】