説明

半自律型無人車両の遠隔操縦システム

【課題】簡単な操作によって高速走行を行うことができるとともに、走行の可否判別できない領域と識別されたときにも必要に応じて進入走行することができるようにする。
【解決手段】半自律型無人車両Bにおいては、走行可否識別不能領域a2への進入の許可情報を受信したときには、走行可能領域a1及び進入が許可された走行可否識別不能領域a2内における走行経路を生成して走行するとともに、走行可否識別不能領域a2を含む走行領域の画像を遠隔操縦装置に向けて送信する。一方、遠隔操縦装置では、走行可否識別不能領域a2を含む走行領域の画像を表示部に表示するとともに、走行可否識別不能領域a2への進入が許可されたか否かを判定し、走行可否識別不能領域a2への進入を許可されたと判定したときには、走行可否識別不能領域a2への進入の許可情報を半自律型無人車両に向けて送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操縦装置と、測距データに基づく自律走行を行うとともに、遠隔操縦装置によって遠隔操縦される半自律型無人車両とを有する半自律型無人車両の遠隔操縦システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の半自律型無人車両の遠隔操縦システムとして、無人車両とした名称において特許文献1に記載された構成のものがある。
特許文献1に記載された無人車両は、予め与えられた節点を結んだ走行経路に従って自律走行する手段と、操舵角及び車速を遠隔操作する手段とを併せ持ち、自律走行モードと遠隔操縦モードとを切替可能な無人車両において、前記走行経路上の障害物を検出する手段と、検出した前記障害物を回避する複数の回避経路を生成する手段と、前記複数の回避経路と車両本体の状態とを遠隔操縦システムに提示する手段と、これらの回避経路の何れか一つを当該遠隔操縦システムで選択する手段と、前記自律走行モードで前記走行経路上に障害物を検出した場合に、前記車両本体を停止し、前記複数の回避経路を前記遠隔操縦システムに提示して当該複数の回避経路の何れか一つを選択して前記自律走行モードで前記障害物を回避するか或いは遠隔操縦モードに切り替えて操縦者の操作により回避を実行するかを選択する手段とを備えた構成のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007‐310698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、無人車両を自律移動させるものではあるが、走行方向の前方に障害物を検出した場合、その障害物を回避するための複数の回避経路を生成し、その後、走行を一旦停止して、生成した複数の複数の回避経路のいずれかを操作者に提示して選択させるようにしている。
【0005】
また、障害物を検出した場合のみならず、走行領域の環境をセンジングできないときにも、走行可否の判断を行うことができず、従って、危険を回避するための減速や停止を繰り返さざるを得ず、高速走行を行うことができないばかりか、その回避操作が煩雑であるという欠点がある。
【0006】
さらに、走行可否の判別ができない走行可否識別不能領域であっても、遠隔操縦システムに設けられているディスプレイに提示された当該走行可否識別不能領域を見れば、走行可能であると操作者が判断できたとしても、その走行可否識別不能領域への進入走行を行うことができないという問題もある。
【0007】
そこで本発明は、簡単な操作によって高速走行を行うことができるとともに、走行の可否判別できない領域と識別されたときにも、必要に応じて進入走行することができる半自律型無人車両の遠隔操縦システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、走行領域内の測距データを取得するための測距部、その走行領域の画像を取得するための撮像部及び走行するための走行機構を有し、取得した測距データに基づく自律走行を行うとともに、遠隔操縦装置よって遠隔操縦を行う半自律型無人車両と、上記撮像部によって撮像した走行領域の画像を表示する表示部、及びその表示部に表示された走行領域の画像に基づいて半自律型無人車両を遠隔操縦するための遠隔操縦装置とを、電気通信回線を通じて接続可能な半自律型無人車両の遠隔操縦システムにおいて、走行領域内の走行可否識別不能領域への進入の許可情報を受信したか否かを判定する許可情報受信判定手段と、当該許可情報を受信したと判定したときには、走行可能領域及び進入が許可された走行可否識別不能領域内における自律走行のための走行経路を生成する走行経路生成手段と、生成した走行経路に従い、走行機構を介して半自律型無人車両を走行させる走行手段と、判別した走行可否識別不能領域を含む走行領域の画像を遠隔操縦装置に向けて送信する送信手段とを半自律型無人車両に設けたこと、走行可否識別不能領域を含む走行領域の画像を表示部に表示する画像表示手段と、走行可否識別不能領域への進入が許可されたか否かを判定する進入許否判定手段と、走行可否識別不能領域への進入を許可されたと判定したときには、走行可否識別不能領域への進入の許可情報を半自律型無人車両に向けて送出する許可情報送出手段とを遠隔操縦装置に設けたことを特徴としている。
【0009】
上記の半自律型無人車両側においては、走行領域内の走行可否識別不能領域への進入の許可情報を受信したか否かを判定し、当該許可情報を受信したと判定したときには、走行可能領域及び進入が許可された走行可否識別不能領域内における自律走行のための走行経路を生成するとともに、生成した走行経路に従い走行機構を介して走行し、判別した走行可否識別不能領域を含む走行領域の画像を遠隔操縦装置に向けて送信する。
【0010】
一方、遠隔操縦装置側では、走行可否識別不能領域を含む走行領域の画像を表示部に表示する。また、走行可否識別不能領域への進入が許可されたか否かを判定し、走行可否識別不能領域への進入を許可されたと判定したときには、走行可否識別不能領域への進入の許可情報を半自律型無人車両に向けて送出している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単な操作によって高速走行を行うことができるとともに、走行できるか否かを判別できないと識別された領域であっても、必要に応じて進入走行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る半自律型無人車両の遠隔操縦システムの全体構成を示す説明図である。
【図2】同上の半自律型無人車両の遠隔操縦システムの一部をなす半自律型無人車両の構成を概略的に示す説明図である。
【図3】同上の半自律型無人車両に設けた制御回路のブロック図である。
【図4】同上の半自律型無人車両に設けた車両制御用コンピュータが有する機能を示すブロック図である。
【図5】表示部に表示される走行可能領域、走行可否識別不能領域及び走行不可能領域の画像を示す説明図である。
【図6】走行可能領域内のみと、走行可能領域内及び走行可否識別不能領域内で走行経路を生成したときの走行速度を比較した説明図である。
【図7】走行速度の上限を決めるときの概念図である。
【図8】同上の半自律型無人車両の遠隔操縦システムの一部をなす半自律型無人車両の制御フローチャートである。
【図9】同上の半自律型無人車両の遠隔操縦システムの一部をなす遠隔操縦装置に設けた制御回路のブロック図である。
【図10】同上の半自律型無人車両の遠隔操縦システムの一部をなす遠隔操縦装置による遠隔操縦を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る半自律型無人車両の遠隔操縦システムの全体構成を示す説明図、図2は、その半自律型無人車両の遠隔操縦システムの一部をなす半自律型無人車両の構成を概略的に示す説明図である。また、図3は、その半自律型無人車両に設けた制御回路のブロック図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る半自律型無人車両の遠隔操縦システムA1は、半自律型無人車両Bと、遠隔操縦装置Cとを電気通信回線を通じて接続可能に構成されている。
【0015】
半自律型無人車両Bは、一般の乗用車両のハンドル/アクセル/ブレーキを、図2,3に示す車両制御用,走行用コンピュータ10,30によって操縦できるように、各種のアクチュエータを付加した構成のものであり、その詳細は次のとおりである。
【0016】
すなわち、半自律型無人車両Bは、CPU(Central Processing Unit)やインターフェース回路(いずれも図示しない)等からなる車両制御用コンピュータ10と、同じく走行用コンピュータ30とによって制御されるようになっている。
【0017】
車両制御用コンピュータ10と、走行用コンピュータ30とは、イーサネット(登録商標)11を介して互いに接続されている。
接続方式には、イーサネット(登録商標)以外にもCAN(Controller Area Network)等の車内ネットワークを用いることができる。
【0018】
走行用コンピュータ30は、CPU(Central Processing Unit)やインターフェース回路(いずれも図示しない)等からなるものであり、これの入力ポートには、走行領域内の測距データを取得するための測距部33が接続されている。
測距部33は、走行用カメラ14,31と、レーザーセンサ(以下、「LRF」という。)32a,32bを有して構成されている(図3参照)。
【0019】
LRF32a,32bは、レーザ光の投光から受光までの時間を計測するタイムオブフライト方式による測距を行うものであり、本実施形態において示すものは、1つのレーザ光源を用い、光軸を光学的又は機械的に掃引することにより、物体の3次元的な形状を取得するスキャンタイプのものである。
本実施形態においては、一方のLRF32aが遠距離用のものであり、他方のLRF32bが近距離用のものであり、遠近を問わず走行領域をカバーできるようにしている。
【0020】
走行用カメラ14,31は、自律走行を行うときに必要な画像データを取得するためのものであり、走行方向に向け、かつ、車幅方向において左右対称に配列されている。
【0021】
車両制御用コンピュータ10は、CPU(Central Processing Unit)、インターフェース回路及びメモリ(いずれも図示しない)等からなるものである。
この車両制御用コンピュータ10の入力ポートには、イーサネット(登録商標)12を介して無線LAN13と撮像部である遠隔操縦用カメラ19が、また、GPS(Global Positioning System)15、バーチカルジャイロ16、車速パルス17及びオドメトリ18がそれぞれシリアル回線を介して接続されている。なお、符号20は、無線LAN13に接続されているアンテナを示している。
なお、無線LAN以外にも携帯電話、PHS、衛星回線等を用いることができることは勿論である。
【0022】
また、出力ポートには、モータドライバ21を介して、ステアリング用アクチュエータ22、ブレーキ/アクセル用アクチュエータ23がそれぞれ接続されている。
なお、図1に示す9は走行輪であり、それらの走行輪9とともに、モータドライバ21、ステアリング用アクチュエータ22、ブレーキ/アクセル用アクチュエータ23により走行機構Dを構成している。
【0023】
バーチカルジャイロ16は、半自律型無人車両Bの鉛直面内における傾斜姿勢、従ってまた、上記した走行用カメラ14,31、及びLRF32a,32bの光軸姿勢(向き)情報を取得するものである。
【0024】
オドメトリ18は、半自律型無人車両Bの走行輪9の各回転量に基づいて、自己の位置情報を取得するためのセンサである。
GPS15は、半自律型無人車両Bの測位情報を取得するためのものである。
車速パルス17は、半自律型無人車両Bの走行速度を測定するためのものであり、その走行速度をパルス情報として出力するものである。
【0025】
車両制御用コンピュータ10は、イーサネット(登録商標)11,無線LAN13及びアンテナ20を通じて、GPS15、バーチカルジャイロ16で取得した各種の情報を、後述する遠隔操縦装置Cに向けて送信する機能の他、その遠隔操縦装置Cから送信される操縦情報に基づき、ステアリング用アクチュエータ22、ブレーキ/アクセル用アクチュエータ23をモータドライバ21を介して駆動制御する機能を有している。
すなわち、遠隔操縦装置Cから送信される半自律型無人車両Bに対する操縦情報に基づいて、ステアリング用アクチュエータ22及びブレーキ/アクセル用アクチュエータ23を駆動する機能を有している。
【0026】
車両制御用コンピュータ10は、図示しないメモリに記憶されている所要のプログラムの実行により、次の各機能を発揮する。図4は、半自律型無人車両に設けた車両制御用コンピュータが有する機能を示すブロック図、図5は、表示部に表示される走行可能領域、走行可否識別不能領域及び走行不可能領域の画像を示す説明図である。また、図6は、走行可能領域内のみと、走行可能領域内及び走行可否識別不能領域内で走行経路を生成したときの走行速度を比較した説明図、図7は、走行速度の上限を決めるときの概念図である。
【0027】
(1)半自律走行コマンドが受信されたか否かを判定する機能。この機能を「コマンド判定手段10a」という。
(2)測距部33により取得した測距データに基づいて、環境地図を作成する機能。この機能を「地図作成手段10b」という。
本実施形態においては、LRF32a,32bにより取得したレーザー光データに基づいて環境地図を作成している。
また、作成した環境地図は、自律走行制御コンピュータ10内のメモリ(図示しない)に順次記憶されていくようになっている。
【0028】
(3)半自律型無人車両Bの走行状態を取得する機能。これを「走行状態取得手段10c」という。
本実施形態において示す「走行状態」は、半自律型無人車両Bの走行速度、操舵角及び傾き(水平面に対する)である。
これらのデータは、上記した車速パルス17、オドメトリ18及びバーチカルジャイロ16によって取得している。
【0029】
(4)上記環境地図に基づいて、走行領域内の少なくとも走行可否識別不能領域を判別する機能。この機能を「領域判別手段10d」という。
本実施形態においては、図5に示すように、半自律型無人車両Bの走行が可能な走行可能領域a1、当該走行の可否識別が不能な走行可否識別不能領域a2及び当該走行が不可能な走行不可能領域a3を判別している。
走行可否識別不能領域a2の抽出は、LRF32a,32bにより取得したレーザー光が反射しないことによる。換言すると、レーザー光データの取得ができない領域のことである。
【0030】
(5)判別した走行可否識別不能領域a3への進入の許可情報を受信したか否かを判定する機能。この機能を「許可情報受信判定手段10e」という。
(6)当該許可情報を受信したと判定したときには、走行可能領域a1及び進入が許可された走行可否識別不能領域a2内における自律走行のための走行経路を生成する機能。この機能を「走行経路生成手段10f」という。
また、許可情報を受信していないと判定したときには、走行可能領域a1内における自律走行のための走行経路を生成する。
すなわち、「走行経路」は、走行可能領域a1内又は走行可能領域a1及び進入が許可された走行可否識別不能領域a2内における半自律型無人車両Bの走行ルートであり、本実施形態においてはポテンシャル法を用いて生成している。
また、走行可能領域a1内又は走行可能領域a1及び進入が許可された走行可否識別不能領域a2内の自律移動の妨げとなる障害物を検出したときには、その障害物を回避するための走行経路を作成する。
【0031】
(7)生成した走行経路に応じて走行速度を増減計画する機能。この機能を「速度計画手段10g」という。
「走行経路に応じた半自律型無人車両Bの走行速度」は、走行可能領域a1内において走行経路を生成した場合、図6に(ア)で示す上限速度で制限された走行速度になる。
また、詳細を後述する進入許否スイッチ65をオン操作したときには、走行可否識別不能領域a3への進入が許されるので、(イ)で示すように、その分だけ上限速度が高くなって走行速度を増加させることができる。
【0032】
詳細に説明すると、図7に示すとおりである。
Bk(v+aδt)<L
Bk():停止可能距離
(通常を警戒領域/急停止を危険領域)
δt:通信・制御等の時間遅れ分
v:走行速度
L:半自律型無人車両Bの走行方向における走行不可能領域a1まで、又は進入が許可された走行可否識別不能領域a2までの距離
上記式を満たす「a」を警戒/危険加速度と定義
【0033】
(8)判別された走行可否識別不能領域a2を遠隔操縦装置Cに向けて送信する機能。この機能を「送信手段10h」という。
(9)遠隔操縦装置Cによる遠隔操縦又は生成した走行経路及び計画速度に従い、走行機構Dを介して半自律型無人車両Bを走行させる機能。これを「走行手段10i」という。
「操縦情報」は、少なくとも走行方向、走行速度及び半自律型無人車両Bの加減速データを含むものである。
【0034】
(10)走行可否識別不能領域a2を識別するための識別化処理を行う機能。この機能を「識別化手段10j」という。
具体的には、少なくとも走行可否識別不能領域a2を他の移動領域とは異なる視覚効果処理を行うものであり、走行可否識別不能領域a2に色彩を付する等である。これにより、走行可否識別不能領域a2を視覚的に強調することができ、識別を容易に行うことができる。
なお、本実施形態においては、走行可能領域a1、走行可否識別不能領域a2及び走行不可能領域a3をそれぞれ互いに識別できるように色彩を付している。
【0035】
(11)撮像部33により撮像した走行領域の画像に識別化処理した走行可否識別不能領域a2の画像を重畳処理する機能。この機能を「重畳処理手段10k」という。
具体的には、遠隔操縦用カメラ19によって取得した走行領域の画像に、本実施形態においては、それぞれ識別化処理した走行可能領域a1、走行可否識別不能領域a2、走行不可能領域a3及び生成した走行経路等を重畳処理している。
【0036】
次に、図8を参照して半自律型無人車両の制御フローチャートについて説明する。図8は、半自律型無人車両の制御フローチャートである。
<半自律型無人車両側の制御フローチャート>
ステップ1(図中、「S1」と略記する。以下、同様。):各部の初期化処理を行ってステップ2に進む。
【0037】
ステップ2:遠隔操縦装置Cから送信された操縦者Qによる操縦情報(操縦コマンド)を受信して、ステップ3に進む。
ステップ3:終了コマンドを受信したか否かを判定し、終了コマンドを受信すればステップ00に進んで、そうでなければステップ4に進む。
【0038】
ステップ4:LRF32a,32bによって測距データを取得する。
ステップ5:取得した測距データに基づいて、環境地図を作成する。
ステップ6:半自律型無人車両Bの走行状態を取得する。
【0039】
ステップ7:作成した環境地図に基づいて、走行可能領域、走行可否識別不能領域及び走行不可能領域を判別する。
ステップ8:許可情報を受信したか否かを判定し、その許可情報を受信したと判定されればステップ9に進み、そうでなければステップ14に進む。
【0040】
ステップ9:走行可能領域及び走行可否識別不能領域において走行経路を生成する。
ステップ10:生成した走行経路に応じた走行速度を生成する。
ステップ11:走行可能領域a1、走行可否識別不能領域a2及び走行不可能領域a3を識別化処理する。
ステップ12:識別化した走行可能領域a1、走行可否識別不能領域a2及び走行不可能領域a3とともに、生成した走行経路を走行領域に重畳処理する。
【0041】
ステップ13:重畳処理した画像や走行状態を遠隔操縦装置に向けて送信し、ステップ2に戻る。
ステップ14:走行可能領域のみにおいて走行経路を生成する。
ステップ15:終了処理を行う。
【0042】
次に、遠隔操縦装置について、図9,10を参照して説明する。図9は、遠隔操縦装置に設けた制御回路のブロック図、図10は、遠隔操縦装置による遠隔操縦を示すフローチャートである。
本実施形態において示す遠隔操縦装置Cは、図1に示すように、装置本体50上に表示部60を配設した外観構成になっている。以下、表示部をディスプレイという。
【0043】
装置本体50は、基台62の一端部に操作盤63が起立して配設されており、その操作盤63の上部にステアリングホイール56が、また、その下部にアクセルペダル57がそれぞれ配設されている。
【0044】
操作盤63には、図9に示すように、走行可否識別不能領域a3への進入の許否を設定するための進入許否スイッチ65が配設されている。
操縦者Qは、基台62に配設された椅子64に腰掛けた状態で、ステアリングホイール56、アクセルペダル57及び進入許否スイッチ65の操作を行えるようにしている。
【0045】
装置本体50内には、CPU(Central Processing Unit)やインターフェース回路(いずれも図示しない)等からなる入力ポートに、無線LAN52、回転角センサ53、ステアリングホイール56、アクセルペダル57、進入許否スイッチ65、また、出力ポートにステアリング加重機構54、アクセル加重機構55、ディスプレイ60を接続した制御装置51が配設されている。なお、符号58で示すものはアンテナである。
【0046】
ステアリングホイール56は、半自律型無人車両Bの走行方向を操縦するためのものであり、これには、上記ステアリング加重機構54と回転角センサ53とが取り付けられている。
本実施形態において示すステアリング加重機構54は、ステアリング56の上記した操縦警戒角度範囲において、そのステアリングホイール56の操縦力を増減加重するものであり、本実施形態においては、図示しないアクチュエータを有する構成になっている。
【0047】
アクセルペダル57は、半自律型無人車両Bの加減速を操縦するためのものであり、これには、上記したアクセル加重機構55が取り付けられている。
アクセル加重機構55は、アクセルペダル57の操縦力を加重するものであり、図示しない仮想バネの挙動を示すようにしている。
【0048】
ディスプレイ60には、上記したカメラ14,31によって取得した走行領域の画像に、識別化した走行可能領域a1、走行可否識別不能領域a2及び走行不可能領域a3等が重畳表示されるようになっている。
【0049】
制御装置51は、所要のプログラムの実行により次の各機能を発揮する。
(12)半自律型無人車両Bと遠隔操縦装置Cとの間における通信遅延時間を算出する機能。この機能を「遅延時間算出手段51a」という。
本実施形態においては、半自律型無人車両Bと遠隔操縦装置Cの間において、pingの要領でデータの往復時間を推定している。
また、半自律型無人車両Bと遠隔操縦装置C双方にGPSを搭載しておき、そのGPSを用いて双方のコンピュータによって精度の高い時刻同期を行い、受信したデータのタイムスタンプに基づいて遅延時間を推定するようにしてもよい。
(13)半自律型無人車両Bから送信された画像をディスプレイ60に表示する機能。この機能を「画像表示手段51b」という。
【0050】
(14)走行領域の画像を撮像した時刻から所要時間経過後までの半自律型無人車両Bの走行予定経路及び算出した推定遅延時間に基づいて、その半自律型無人車両Bが遠隔操縦装置Cによって遠隔操縦される時刻における車両位置を推定する機能。この機能を「車両位置推定手段51c」という。
【0051】
(15)進入許否スイッチ65の操作に従って、走行可否識別不能領域a2への進入の許否を判定する機能。この機能を「進入許否判定手段51d」という。
「進入許否スイッチ65の操作」は、操縦者Qがディスプレイ60に表示されている画像を見て、例えば走行可否識別不能領域a3が走行可能であると判断したときに、その進入許否スイッチ65をオン操作する。これにより、走行可否識別不能領域a2への進入ができるようになる。
【0052】
(16)ステアリングホイール56の上記した操縦警戒角度に応じて、ステアリング加重機構54によってステアリングホイール56の操縦力を増減加重する機能。この機能を「ステアリング増減加重手段51e」という。
具体的には、ステアリングホイール56の操縦角度が大きくなるに従って大きな力が必要となるようにしている。
【0053】
(17)アクセルペダル57の操縦警戒角度に応じて、アクセル加重機構55によってアクセル57の操縦力を増減加重する機能。この機能を「アクセル増減加重手段51h」という。
具体的には、アクセルペダル57の踏込み角度が大きくなるに従って大きな力が必要となるようにしている。
【0054】
(18)ステアリングホイール56やアクセルペダル57の操縦情報を生成する機能。この機能を「操縦情報生成手段51f」という。
(19)走行可否識別不能領域への進入を許可されたと判定したときには、走行可否識別不能領域への進入の許可情報を半自律型無人車両に向けて送出する機能。この機能を「許可情報送出手段51g」という。
なお、遠隔操縦装置Cからは、上記許可情報の他、生成した操縦情報等が半自律型無人車両Bに向けて送信されるようになっている。
【0055】
次に、図10を参照して、遠隔操縦装置による遠隔操縦について説明する。
ステップ1(図中、「S1」と略記する。以下、同様。):各部の初期化処理を行ってステップ2に進む。
ステップ2:半自律型無人車両Bから送信された画像や車両情報(速度等)及びコマンドを受信して、ステップ3に進む。
ステップ3:通信遅延時間を算出して、ステップ4に進む。
【0056】
ステップ4:カメラ14,31で撮像した画像に、算出した通信遅延時間による半自律型半自律型無人車両Bの走行量を補正した上で、カメラ14,31で撮像した画像に、識別化した走行可能領域a1、走行可否識別不能領域a2及び走行不可能領域a3を重畳処理した画像、及び受信した車両情報を重畳表示してステップ5に進む。
【0057】
ステップ5:ディスプレイ60に表示されている、識別化した走行可否判別不能領域を含む画像及び受信した車両情報を参照しながら、アクセルペダル57、ステアリングホイール56を操縦するとともに、必要に応じて進入許否スイッチ65を操作する。
【0058】
ステップ6:進入許否スイッチ65の操作に従って走行可否識別不能領域a2への進入の許否を判定し、進入許否スイッチ65がオン操作されて走行可否識別不能領域a2への進入が許可されていると判定したときにはステップ7に進み、そうでなければステップ2に戻る。
【0059】
ステップ7:許可情報とともに生成した操縦情報を半自律型無人車両に向けて送信する。
ステップ8:アクセルへダル57と、ステアリングホイール56の操縦力を増減加重する。
【0060】
なお、本発明は上述した実施形態に限るものではなく、次のような変形実施が可能である。
・精度を補完する機能を付加する場合、次のようにすることができる。
車速パルスの補完として、車両の速度(積分して)/車両の傾き(重力を検出して)を測定するための加速度センサ、車両の速度を算出するためのタコメータを設けた構成にしてもよい。
・バーチカルジャイロの補完として、車両の傾き(水平面に対する)を検出するための傾斜角センサを配設してもよい。
【0061】
・上述した実施形態においては、車両制御用コンピュータと、走行用コンピュータの2つのコンピュータにより、半自律型無人車両全体を制御するものを例として説明したが、それら2つのコンピュータに分担させることなく、単一のコンピュータで制御するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10b 地図作成手段
10d 領域判別手段
10e 許可情報受信判定手段
10f 走行経路生成手段
10g 速度計画手段
10h 送信手段
10i 走行手段
10j 識別化手段
10k 重畳処理手段
14 撮像部
33 測距部
51a 遅延時間算出手段
51b 画像表示手段
51c 車両位置推定手段
51d 進入許否判定手段
51g 許可情報送出手段
60 表示部(ディスプレイ)
65 進入許否スイッチ
a1 走行可能領域
a2 走行可否識別不能領域
a3 走行不可能領域
A 半自律型無人車両の遠隔操縦システム
B 半自律型無人車両
C 遠隔操縦装置
D 走行機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行領域内の測距データを取得するための測距部、その走行領域の画像を取得するための撮像部及び走行するための走行機構を有し、取得した測距データに基づく自律走行を行うとともに、遠隔操縦装置よって遠隔操縦を行う半自律型無人車両と、上記撮像部によって撮像した走行領域の画像を表示する表示部、及びその表示部に表示された走行領域の画像に基づいて半自律型無人車両を遠隔操縦するための遠隔操縦装置とを、電気通信回線を通じて接続可能な半自律型無人車両の遠隔操縦システムにおいて、
走行領域内の走行可否識別不能領域への進入の許可情報を受信したか否かを判定する許可情報受信判定手段と、
当該許可情報を受信したと判定したときには、走行可能領域及び進入が許可された走行可否識別不能領域内における自律走行のための走行経路を生成する走行経路生成手段と、
生成した走行経路に従い、走行機構を介して半自律型無人車両を走行させる走行手段と、
判別した走行可否識別不能領域を含む走行領域の画像を遠隔操縦装置に向けて送信する送信手段とを半自律型無人車両に設けたこと、
走行可否識別不能領域を含む走行領域の画像を表示部に表示する画像表示手段と、
走行可否識別不能領域への進入が許可されたか否かを判定する進入許否判定手段と、
走行可否識別不能領域への進入を許可されたと判定したときには、走行可否識別不能領域への進入の許可情報を半自律型無人車両に向けて送出する許可情報送出手段とを遠隔操縦装置に設けたことを特徴とする半自律型無人車両の遠隔操縦システム。
【請求項2】
走行領域内の測距データを取得するための測距部、その走行領域の画像を取得するための撮像部及び走行するための走行機構を有し、取得した測距データに基づく自律走行を行うとともに、遠隔操縦装置よって遠隔操縦を行う半自律型無人車両と、上記撮像部によって撮像した走行領域の画像を表示する表示部、及びその表示部に表示された走行領域の画像に基づいて半自律型無人車両を遠隔操縦するための遠隔操縦装置とを、電気通信回線を通じて接続可能な半自律型無人車両の遠隔操縦システムにおいて、
走行領域内の少なくとも走行可否識別不能領域を判別する領域判別手段と、
判別した走行可否識別不能領域への進入の許可情報を受信したか否かを判定する許可情報受信判定手段と、
当該許可情報を受信したと判定したときには、走行可能領域及び進入が許可された走行可否識別不能領域内における自律走行のための走行経路を生成する走行経路生成手段と、
判別された走行可否識別不能領域を遠隔操縦装置に向けて送信する送信手段とを半自律型無人車両に設けたこと、
生成した走行経路に応じて走行速度を増減計画する速度計画手段と、
遠隔操縦装置による遠隔操縦又は生成した走行経路及び計画速度に従い、走行機構を介して半自律型無人車両を走行させる走行手段と、
走行可否識別不能領域を表示部上に視覚的に識別表示するための識別化処理を行う識別化手段と、
上記撮像部により撮像した走行領域の画像に識別化処理した走行可否識別不能領域の画像を重畳処理する重畳処理手段と、
重畳処理された画像を遠隔操縦装置に向けて送信する送信手段とを半自律型無人車両に設けたこと、
半自律型無人車両から送信された画像を表示部に表示する画像表示手段と、
走行可否識別不能領域への進入が許可されたか否かを判定する進入許否判定手段と、
走行可否識別不能領域への進入を許可されたと判定したときには、走行可否識別不能領域への進入の許可情報を半自律型無人車両に向けて送出する許可情報送出手段とを遠隔操縦装置に設けたことを特徴とする半自律型無人車両の遠隔操縦システム。
【請求項3】
走行領域内の測距データを取得するための測距部、その走行領域の画像を取得するための撮像部及び走行するための走行機構を有し、取得した測距データに基づく自律走行を行うとともに、遠隔操縦装置よって遠隔操縦を行う半自律型無人車両と、上記撮像部によって撮像した走行領域の画像を表示する表示部、及びその表示部に表示された走行領域の画像に基づいて半自律型無人車両を遠隔操縦するための遠隔操縦装置とを、電気通信回線を通じて接続可能な半自律型無人車両の遠隔操縦システムにおいて、
測距部により取得した測距データに基づいて環境地図を作成する地図作成手段と、
作成した環境地図に基づいて、半自律型無人車両の走行が可能な走行可能領域、当該走行の可否判別が不能な走行可否識別不能領域及び当該走行が不可能な走行不可能領域を判別する領域判別手段と、
判別した走行可否識別不能領域への進入の許可情報を受信したか否かを判定する許可情報受信判定手段と、
当該許可情報を受信したと判定したときには、走行可能領域及び進入が許可された走行可否識別不能領域内における自律走行のための走行経路を生成する走行経路生成手段と、
生成した走行経路に応じて走行速度を増減計画する速度計画手段と、
遠隔操縦装置による遠隔操縦又は生成した走行経路及び計画速度に従い、走行機構を介して半自律型無人車両を走行させる走行手段と、
走行可否識別不能領域を表示部上に視覚的に識別表示するための識別化処理を行う識別化手段と、
上記撮像部により撮像した走行領域の画像に識別化処理した走行可否識別不能領域の画像を重畳処理する重畳処理手段と、
重畳処理された画像を遠隔操縦装置に向けて送信する送信手段とを半自律型無人車両に設けたこと、
半自律型無人車両から送信された画像を表示部に表示する画像表示手段と、
走行可否識別不能領域への進入が許可されたか否かを判定する進入許否判定手段と、
走行可否識別不能領域への進入を許可されたと判定したときには、走行可否識別不能領域への進入の許可情報を半自律型無人車両に向けて送出する許可情報送出手段とを遠隔操縦装置に設けたことを特徴とする半自律型無人車両の遠隔操縦システム。
【請求項4】
遠隔操縦装置に、走行可否識別不能領域への進入の許否を設定するための進入許否スイッチが配設されており、
進入許否判定手段は、進入許否スイッチの操作に従って走行可否識別不能領域への進入の許否を判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半自律型無人車両の遠隔操縦システム。
【請求項5】
半自律型無人車両と遠隔操縦装置との間における通信遅延時間を算出する遅延時間算出手段を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半自律型無人車両の遠隔操縦システム。
【請求項6】
走行領域の画像を撮像した時刻から所要時間経過後までの半自律型無人車両の走行予定経路及び推定遅延時間に基づいて、その半自律型無人車両が遠隔操縦装置によって遠隔操縦される時刻における車両位置を推定する車両位置推定手段を設けたことを特徴とする請求項4に記載の半自律型無人車両の遠隔操縦システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−48565(P2011−48565A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195625(P2009−195625)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(500302552)株式会社IHIエアロスペース (298)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】