説明

単一アンテナFM/CW船用レーダ

【課題】運河などの非常に限定された空間で使用されることになる新規に規定された、はしけ/河川レーダなどの用途で使用するための高解像度、低出力船用レーダを提供する。
【解決手段】レーダシステム20は、単一スロット導波管アンテナと、アンテナと信号通信するサーキュレータと、送信機および前記アンテナへのインターフェースとなる前記サーキュレータの出力部に直接接続された受信機ミキサと、送信機信号のサンプルを使用して局部発振器信号を供給するように構成された構成要素と、前記局部発振器信号の到着時を漏洩または反射電力信号の少なくとも一方に関連した信号の到着時と一致させ、それによって前記受信機ミキサで位相雑音キャンセルを行うように構成された構成要素を含む、前記アンテナと信号通信する送受信機とを含む。非常に低い送信機出力を使用し、約90センチメートルの特別に短い感知距離を有するFM/CWレーダを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]現今の船用レーダは、何キロワットものピーク電力を送出する非常に高出力のシステムであり、何キロメートル(何海里)もの範囲で精密距離分解能を提供するとともに河道および閘門の境界内で約90センチメートル(数フィート)の特別に短い距離に対処するのは極めて困難である。
【背景技術】
【0002】
[0002]Navicoは商用船用レーダ用途のための周波数変調/連続波(FM/CW)レーダを提供する。Navicoで使用される実際の波形は10%以上のデューティサイクルを有する単一鋸歯である。それらのシステムは、さらに、分離を行うために別々の送信アンテナおよび受信アンテナを使用する。Navicoシステムは、送信アンテナの後ろに送信機エレクトロニクスおよび受信機の後ろに受信機エレクトロニクスをもつ2つのアンテナを使用するので高価である。Navicoは特別に低い位相雑音をもつ超線形周波数変調を生成できていない。Navicoは、鋸歯状波が信号処理システムでいくつかの問題を引き起こすことになることを認識できていない。Navicoは、アンテナVSWRが動作周波数帯域にわたって1.2:1よりも良好でなければならないこと、および受信機ミキサにおける送信機の位相雑音を注意深く設計された回路タイミング遅延によってキャンセルする手段を提供することが必須であることも認識できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,239,266号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0003]本発明は、米国、フランス、ドイツ、またはオランダの運河などの非常に限定された空間で使用されることになる新規に規定された、はしけ/河川レーダを含むことができる用途で使用するための高分解能、低出力船用レーダを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0004]例示のレーダシステムは、非常に低い送信機出力(数分の1ワット)を使用し、約50キロメートル(数十海里)の動作範囲に加えて、約90センチメートル(数フィート)または必要に応じてさらに約8センチメートル(数インチ)の特別に短い感知距離を有する周波数変調/連続波(FM/CW)レーダを含む。このシステムは、
・非常に低い位相雑音の送信機
・優れた線形周波数変調
・送信機および受信機と単一アンテナとの直接統合
− アンテナ反射到着と局部発振器到着との間の整合遅延
・非常に低い電圧定在波比(VSWR)のアンテナ
・RF回路の優れた処理実行
− 回路中の非常に低いVSWR
− 送信機から受信機への非常に低い結合
という特徴を提供する。
【0006】
[0005]FM/CWレーダの周波数ダイバーシチは、海上での検出確率を改善するのに特別にも有用である。
[0006]本発明の好ましい実施形態および代替実施形態が以下の図面を参照しながら以下で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態により形成されたレーダシステムの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態のブロック図である。
【図3】送受信機をアンテナの入力端部に配置する本発明の一実施形態により形成されたアンテナレードーム構成要素の正面図である。
【図4】図3のアンテナレードーム構成要素の分解端面図である。
【図5】送受信機構成要素の1つとして含まれる回路基板の部分図である。
【図6】本発明の一実施形態による送受信機構成要素のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0013]図1は、例示的単一アンテナレーダデバイス20の斜視図である。レーダデバイス20は、モーターケース取付け基部30、アンテナレードーム24、および導波管回転継手26を含む。導波管回転継手26により、アンテナレードーム24は基部30のまわりを回転することができる。
【0009】
[0014]一実施形態では、回転継手26は、基部30とアンテナレードーム24内の単一アンテナ(図示せず)との間のデータ接続および電力接続を行う。一実施形態では、データ伝達は、容量性、光ファイバ、または誘導性伝達を含む。回転継手26のサイズおよび歯車装置は十分な風および衝撃負荷防御を備えるように選択される。好ましい実施形態では、回転継手26は、図2に示されるように送信信号を(レードーム24内に設置された)アンテナに伝導し、アンテナからの信号を受信し、受信信号を受信機に供給する導波管回転継手である。
【0010】
[0015]単一アンテナが送信モードおよび受信モードの両方で使用される。単一アンテナの使用を可能にする例示的方法が米国特許第7,239,266号に記述されており、それは参照により本明細書に組み込まれる。本発明では、真に連続的な三角FM/CW波形が出力される。
【0011】
[0016]一実施形態では、アンテナレードーム24への電力移送は、誘導結合(すなわち回転継手26を横切る変成器結合)を使用して達成される。
[0017]一実施形態では、図2に示されるように、システム20−1は、導波管回転継手26−1、単一スロット導波管アンテナ32、およびモーターケース/取付け基部30−1の内部に設置される送信機および受信機(送受信機)34を含む。送受信機34はFM/CWレーダ(図示せず)を含む。一実施形態では、スロット導波管アンテナ32は導波管延長部(図示せず)によって導波管回転継手26−1の出力部に接続される。回転継手26−1は、回転のすべての角度にわたって1.2:1未満の安定したVSWRであるように設計される。
【0012】
[0018]単一スロット導波管アンテナ32中のスロットは、アンテナ32の狭い寸法上で垂直に延びる。スロットは、水平偏波を供給するために導波管アンテナの狭い側に、図3に示されるようにすべて同じ方向に配置することができる。
【0013】
[0019]図3〜5に示されるように、送受信機、基板電源、およびデジタル信号処理部(DSP)(図示せず)は、回路基板48を保持するボックス54内で回路基板48に取り付けられる。スロット導波管アンテナ32−1は、回路基板48に設置されたマイクロストリップ−導波管変換器50を介して送受信機に直接嵌合される。スロット導波管アンテナ32−1およびボックス54はアンテナレードーム52内に設置される。マイクロストリップ−導波管変換器50は導波管変換を行い、送受信機48のシャーシ/ボックス54に直接組み込まれ、マイクロストリップ回路である。図4は、アンテナレードーム52およびボックス54の端部を通したX線投影図である。
【0014】
[0020]一実施形態では、電力およびシリアルデータは回転継手を通過する。送受信機アンテナポートおよびアンテナの入力ポートは、マイクロストリップ−導波管変換器50を介して互いに直接接触して配置される。アンテナから受信機入力部まで反射される電力の量を最小にするために、アンテナは1.2:1またはそれより良好なVSWRを有する。この反射電力レベルは受信機感度を無効にすることがある。
【0015】
[0021]送受信機は、アンテナからの特別に短い距離のために位相雑音キャンセルが受信機ミキサで行われるように構成される。
[0022]送受信機は−120dBm未満の受信機感度および10KHz未満の受信機帯域幅を有する。送信機出力は約0.1ワット連続である。デジタル合成線形周波数変調が行われる。送受信機の別の特性は、100KHzオフセットで−100dBc/Hz未満である送信機位相雑音レベルである。
【0016】
本発明はドップラ測定および位相測定、ならびに高度化した海/雨クラッタ低減アルゴリズムを提供する。本発明は、事前プログラムされた電子利得対距離、および手動利得制御も提供する。本発明は、レーダの中間周波数(IF)サブシステムに配置されたハイパスフィルタを使用することによる即時電子利得対距離を提供する。ハイパスフィルタ上限周波数は、所与の変調速度で物標までの距離に対して予想される最大IF周波数である。最も高いIF周波数(Hz)=((線形FM帯域幅(Hz))/(変調周期(秒)))×((2×距離(メートル))/(c(光速、メートル/秒)))である。本発明では、その周波数は一般に2MHzである。本発明(FM/CWレーダシステム)は周波数領域で出力を生成し、物標までの距離は物標のIF周波数に直接比例する。したがって、特定のレーダの予想される変動に適合する利得対IF周波数傾斜をもつハイパスフィルタを使用することによって、距離変動に基づき物標ごとの即時利得補償を行うことが可能である。例えば、気象レーダシステムで使用されるFM/CWレーダはオクターブ当たり9dBの傾斜を必要とする。高度計はオクターブ当たり6dBを必要とするが、一方、航空機用および船用レーダシステムは周波数のオクターブ当たり12dBの傾斜を必要とする。レーダによって観察される物標の反射率によるダイナミックレンジは、10〜16ビット分解能をもつアナログ/デジタル変換器を介して調節される。
【0017】
[0023]図6は上述の実施形態に共通する送信機、受信機、およびDSP構成要素80を示す。アンテナ反射の到着は、受信機ミキサで位相雑音キャンセルを行うように局部発振器信号の到着時に一致される。低雑音増幅器は、システム性能を著しく劣化させるのでサーキュレータと受信機ミキサとの間に配置しないことがあることに留意することが重要である。低雑音増幅器は、位相雑音、送信機から受信機への漏洩、およびミキサに達する前のアンテナから反射された電力を増幅することになる。したがって、一般的なマイクロ波低雑音増幅器は単一アンテナFM/CWレーダでは使用されないことがある。増幅器は送信機−受信機の分離を増幅器の利得と等しい量だけ低減するので、低雑音マイクロ波増幅器はデュアルアンテナFM/CWレーダでも勧められない。
【0018】
[0024]本発明は、任意のサイズまで拡大・縮小したアンテナを含むことができる。
[0025]独占権または特権が請求される本発明の実施形態は特許請求の範囲で規定される。
【符号の説明】
【0019】
20 単一アンテナレーダデバイス
20−1 システム
24 アンテナレードーム
26、26−1 導波管回転継手
30、30−1 基部
32 単一スロット導波管アンテナ
32−1 スロット導波管アンテナ
34 送受信機
48 回路基板、送受信機
50 マイクロストリップ−導波管変換器
52 アンテナレードーム
54 ボックス、シャーシ/ボックス
80 送信機、受信機、およびDSP構成要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一スロット導波管アンテナ(32、32−1)と、
前記アンテナと信号通信するサーキュレータと、
送信機および前記アンテナへのインターフェースとなる前記サーキュレータの出力部に直接接続された受信機ミキサと、
送信機信号のサンプルを使用して局部発振器信号を供給するように構成された構成要素と、
前記局部発振器信号の到着時を漏洩または反射電力信号の少なくとも一方に関連した信号の到着時と一致させ、それによって前記受信機ミキサで位相雑音キャンセルを行うように構成された構成要素を含む、前記アンテナと信号通信する送受信機(34)と、
を含み、
前記送受信機の位相雑音は100KHzのオフセットで−100dBc/Hz未満であり、
前記送受信機は三角波変調ならびに連続送信および受信を行い、
前記アンテナの電圧定在波比(VSWR)は動作周波数帯域にわたって1.2:1未満であり、
前記送受信機は中間周波数(IF)サブシステムを含み、前記IFサブシステムは物標に対する距離変動を即時に補償するように構成された利得をもつアクティブハイパスフィルタを含む、
レーダシステム(20)。
【請求項2】
前記送受信機、電源、およびデジタル信号プロセッサ(DSP)を収容するように構成された基部(30、30−1)と、
前記アンテナを収容するように構成されたアンテナレードーム(24)と、
前記送受信機と前記アンテナとの間に結合され、マイクロ波エネルギーを送出するように構成されている導波管回転継手(26−1)と、をさらに含み、
前記基部は前記送受信機を受ける回路基板を含み、前記回路基板は前記送受信機と前記導波管回転継手との間で信号を送信するように構成されているマイクロストリップ−導波管変換器構成要素を含み、
前記導波管回転継手のVSWRは1.2:1以下である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
DSPを収容するように構成された基部(30)と、
前記アンテナ、前記サーキュレータ、および前記送受信機を収容するように構成されたレードーム(52)と、
前記基部と前記レードームとの間に結合され、前記DSPと前記送受信機との間にデータ接続および電力接続を行うように構成される、電力およびデータの回転継手と、
をさらに含み、
前記アンテナレードームは回路基板(48)を含み、
前記送受信機および前記サーキュレータは前記回路基板に設置され、前記回路基板は前記送受信機と前記アンテナとの間で信号を送信するように構成されるマイクロストリップ−導波管変換器構成要素(50)を含む、請求項1に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−112648(P2011−112648A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−259912(P2010−259912)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】