単一分子を撮像する装置
単一分子スキャナは、本質的に、優れた空間分解能(たとえば、130nm画素分解能で400nm回折限界分解能)で大面積(たとえば1cm2)を撮像するための顕微鏡である。本出願人の改良されたスキャナは、ほとんどの最先端の顕微鏡において存在するいくつかの代表的な設計特徴を使用してもよい。しかし、設計特徴の相互作用は、最終的に調節され(tune)、スキャナは、従来技術から知られていない、いくつかのさらなる特徴を組込む。特に、本発明の第1の態様は、単一分子を撮像し、倍率を有するスキャナであって、光学軸を規定し、かつ、0.4以上の開口数を有する乾式顕微鏡対物レンズを備えるスキャナを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で引用される全ての文章およびオンライン情報は、その全体が参照により組込まれる。
【0002】
本発明は、単一分子を撮像する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
撮像装置および方法は、分析されるサンプルの画像を取得するために世界中で使用される。これは、サンプルの小さなエリアに焦点を合わせ、これらの小さなエリアの画像を合成して、サンプルの全体のまたは大きな部分の単一詳細画像を取得することによって行われることが多い。これらの撮像技法の一部は、単一色素分子分光法、単一量子ドット分光法ならびに関連タイプの超高感度顕微鏡法および分光法を使用する。しかし、これらの技法をマイクロアレイ分析に適用する手法がほとんど存在しない。
【0004】
マイクロアレイ実験は、一般に、顕微鏡スライドの表面に固着するサンプルの蛍光顕微鏡法を含む。異なるタイプの実験的設計が存在し、最も一般的な方法は、スペクトル的に別個の2つの色素(たとえば、それぞれ、約570nmおよび670nmを放出するCy3およびCy5)の発光を撮像する。ほとんどの商用スキャナは単一点検出に基づくが、徐々に、CCDベースシステムも存在しつつある。代表的な直線画素分解能は約5〜10μmである。知られているほとんどの商用マイクロアレイスキャナは、データがデジタルで記憶され(16ビットTIFFファイルが通常である)処理されても、本質的にアナログ読取りモードで動作する。これは、解釈されるのが信号の強度だけであるからであり、たとえば、同じ顕微鏡スライド上で実施される実験間の強度が比較される。
【0005】
しかし、高分解能光学部品および低密度の蛍光分子を使用して、単一分子を空間的に弁別し撮像することが可能であり、その場合、これらの個々の分子が計数されることができる。これは、完全にデジタル的な方法を含み、絶対値ベースで(on absolute basis)異なるスライド間の比較を可能にする。この方法は、分子が凝集するときの場合に拡張されることができ、それは、CCDの考えられるオフセットカウント(ダークカウント、構成オフセットなど)とは別に、1つの分子が特定のCCDカウントをもたらし、一方、2つの分子が、1つの分子のカウントの2倍のカウントをもたらすからである。単一分子分光の重要な実験的考慮事項のうちの1つは、回折限界に近いか、またはさらに回折限界を超える高空間分解能の使用である。空間分解能を高めるのに現在使用される技法は、広視野顕微鏡光学部品、従来のならびに専用の共焦点顕微鏡法(たとえば、4PIおよび誘導放出制御顕微鏡法(stimulated emission depletion microscopy))、走査型近接場光顕微鏡法(scanning near-field optical microscopy)(SNOMまたはNSOM)、レーリー基準ではない新しい基本分解能尺度(Fundamental Resolution Measure)(FREM)を使用する方法(PNAS, March 21, 2006, vol.103 No.12 4457-4462)および光活性化限局顕微鏡法(Photoactivated Localization Microscopy)(PALM, Science Express online publication, 10 August 2006)を含む。
【0006】
単一点と対照的に広視野走査システムは、一般に、大面積をカバーするために連続画像を採取する。実際には、これは、サンプル配置、自動焦点合わせ、サンプル照明、信号検出およびCCD読出しのシーケンスに相当する。しばしば画像タイリングと呼ばれるこのプロセスが、特に、考えられる最高速度を制限するときに重大な欠点を有することを、多数の文書が確認している。たとえば、サンプル配置ステージの機械的動きが速度制限因子であることを述べる、米国特許第6,711,283B1号「Fully automated rapid slide scanner」およびSonnleitner等、Proc. SPIE 5699(2005):202-210「High-Throughput Scanning with Single Molecule Sensitivity」を参照されたい。スキャン結果(単一分子感度を有する1cm2および350nmより優れた画素分解能)の匹敵する特性についての走査時間のおよその推定は、単一点検出方法の場合3.8ヶ月、画像タイリング法の場合約10時間、そして、Sonnleitner等、Proc. SPIE 5699(2005):202-210に記載される方法を使用して約20分であるとして報告された。
【0007】
精密な自動焦点合わせシステムについての必要性は、主に、高空間分解能ならびに良好な光捕集(harvest)について必須である大きな開口数(NA)の顕微鏡対物レンズに関連する浅い被写界深度(DOF)による。自動焦点メカニズムの精度要件は、顕微鏡対物レンズのNA、CCDの物理的画素サイズおよび顕微鏡対物レンズの倍率すなわち
【0008】
【数1】
【0009】
によって設定され、式中、DはCCDの直線画素寸法であり、Mは倍率であり、λは結像される光の波長である。例として、顕微鏡スライドが、その全エリアにわたって十分に平坦でないため、800nmの被写界深度は、各画像についての焦点調整なしでは、全顕微鏡スライドにわたって維持されることができない。わずかなチルト角が、光学軸に平行なサンプルの移動を生じる可能性があり、焦点外れ画像をもたらす。
【0010】
米国特許第6,255,048号は、ビオチン標識プローブおよび蛍光強度測定法を使用いて単一分子を検出するために開発されたスキャナを開示する。国際公開第WO00/06770号は、配列決定用途のための単一分子検出を開示する。配列決定用途のために単一分子撮像を使用する2つの会社は、Solexa社およびHelicos社である。Solexa社の手法は、単一生体分子が同じスポットで増幅され、そのため、蛍光標識の量が複数の色素分子であることである。Helicos社は、一方、Helicos社の手法において単一色素分子の撮像を使用する。米国特許第7,169,560号によれば、各視野(120μm×60μm)は、それぞれ0.5秒の露出時間で8回撮像される。この方法の場合、1cm2のエリアを撮像することは、照明時間だけを考慮し、かつ、配置、画像転送などのような任意のオーバヘッドの時間を無視すると、15時間かかる。これらの手法は、液相の蛍光分子を撮像する。さらに、これらの手法は液浸光学部品を使用する。これは、以下で説明するように、マイクロアレイスキャナにおいて使用するのに望ましくない。
【0011】
高空間分解能を有するマイクロアレイスキャナとして使用されることができる機器が存在する。スキャナは、単一色素分子を高速に分解することが可能である。スキャナは、CytoScout(登録商標)と呼ばれ、オーストリア、リンツ(linz, Austria)に本拠を置くUpper Austrian Reserch(UAR)社によって作られる。CytoScout(登録商標)の当初の目的は、3Dまたは4Dにおける単一生体細胞(live-cell)の撮像である。しかし、CytoScout(登録商標)は、マイクロアレイスキャナとして使用されるとき、多数の(技術的およびその他の)弱点を有する。
【0012】
特に、CytoScout(登録商標)は、必須の光学コンポーネントとして油浸レンズを含む。これは複数の重大な結果をもたらす。第1に、機器は液浸油の適用について熟練したオペレータを必要とする。第2に、油浸光学部品を使用するために、従来のマイクロアレイをカバースリップで覆うか、または、従来使用される顕微鏡スライドの代わりにカバースリップを必要とする特別なタイプのマイクロアレイ支持体を使用することが必要である。しかし、カバースリップでマイクロアレイを覆うことは、アレイを損傷する可能性がある。これは、この機器に関して、標準的なマイクロアレイプラットフォームが使用されることができないことを意味する。Hesse等は、Genome Research 16:1041-1045(2006)「In conventional DNA microarray readout, the sensitivity is limited by standard formats of biochip substrates」において、感度が、標準的なフォーマットのバイオチップ支持体によって制限されることを述べる。約1mmのバイオチップ支持体の厚さは、検出効率を犠牲にして、長い作動距離を有する撮像光学部品の実装を要求する。さらに、支持体材料内の不純物は、通常、強い蛍光バックグラウンドを発生し、こうしたバイオチップ上での超高感度蛍光検出を妨げる。単一分子検出に必要とされる条件に関して、Hesse等は、「高い検出効率での撮像を可能にするために、DNAマイクロアレイは、低い自家蛍光について選択された、150μm厚アルデヒド官能化ガラスカバースリップを基にして確立された(Schlapak等2005)」と述べた。これらの陳述から、研究者等が、CytoScout(登録商標)に関する問題を確認したこと(すなわち、標準的なマイクロアレイスライドが、高い検出効率で走査されることができないこと)が明らかである。しかし、提供された解決策は、ユーザにとっての新たな実際上の問題、たとえば、とりわけ、脆いチップの使用および製造プロセスを変更する必要性をもたらす。
【0013】
それでも、油浸光学部品の使用は、多数のさらなる利点を提供する。特に、1より大きな開口数が可能であり、大きな開口数は小さい回折限界スポットをもたらし、複数の単一分子の互いからの空間的分離をより容易に可能にする。油浸光学部品の使用はまた、全反射蛍光(Total Internal Reflectance Fluorescence)(TIRF)が可能であることを意味する。TIRFが使用されて、蛍光に対する励起のバックグラウンドを低減することができ、よりよい信号対雑音比がもたらされる可能性がある。さらに、色素分子は、空気中の酸素などのフリーラジカルによって衝当されると、退色し始める。その結果、色素分子は、空気にさらされる場合、不安定になり、放出される光子の数が減少する。マイクロアレイを、たとえばカバースリップで覆うことによって、色素分子と反応する可能性があるフリーラジカルの数が減少し、検出される可能性がある光子の数が最大になる。その結果、単一分子撮像は、油浸光学部品の利点から著しく利益を受け、したがって、CytoScout(登録商標)内に存在するような油浸光学部品が、こうした単一分子撮像実験を可能にするために必要であることが過去に考えられた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
CytoScout(登録商標)の利点を失うことなく、CytoScout(登録商標)の欠点を克服する改良された単一分子スキャナが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
先に説明された、知られているスキャナに関する問題に鑑みて、本出願人は、改良された単一分子スキャナを開発した。図1は、例示的な新しいスキャナのコンポーネントを示す。単一分子スキャナは、本質的に、優れた空間分解能(たとえば、130nm画素分解能で400nm回折限界分解能)で大面積(たとえば1cm2)を撮像するための顕微鏡である。出願人の改良されたスキャナは、最先端のほとんどの顕微鏡において存在するいくつかの代表的な設計特徴を使用してもよい。しかし、設計特徴の相互作用は、微細に調節され、スキャナは、従来技術から知られていない、いくつかのさらなる特徴を組込む。例示的なスキャナの光学経路は図2に示される。
【0016】
特に、本発明の第1の態様は、単一分子を撮像し、倍率を有するスキャナを提供し、スキャナは、
光学軸を規定し、かつ、0.4以上の開口数を有する乾式顕微鏡対物レンズを備える。
【0017】
単一分子の撮像は、複数の単一分子の特定の形状を示すか、または、複数の単一分子を励起するのではなく、互いから分解された複数の単一分子を検出することを意味する。複数の分子を互いから分解することは、空間的区別手段、強度弁別手段または他の手段による可能性がある。
【0018】
光学システムの分解能にとって、0.4の最小NAが重要である。約570nmの波長(Cy3発光)について、また、NA=0.4の場合、回折限界(スパロー基準)は、約725nmであり、これは、単一分子検出について最大であると考えられる。
スキャナは、さらに、
光学軸上にサンプルを保持するサンプルホルダと、
サンプルがスキャナの焦点面に配置されるようにサンプルの相対位置およびスキャナの光学面を調整する焦点合わせメカニズムと、
励起ビームを放出し、サンプルの1つまたは複数の構成要素を励起して、蛍光発光を放出する光源と、
サンプルからの蛍光発光から励起ビームを分離する光学素子と、
サンプルからの蛍光発光を検出し、複数の画素エレメントを有する検出器とを備え、スキャナの倍率で除算された各画素エレメントの直線寸法が、可視光についての顕微鏡対物レンズの回折限界分解能より小さく、
検出器、焦点合わせメカニズムおよび光源の1つまたは複数の要素を制御するよう構成された制御ユニットを備えてもよい。
【0019】
回折限界分解能についての通常使用されるレーリー基準は、2つの物体間の分解可能距離が、d=0.61λ/NAであると述べる。スパロー基準は、d=0.47λ/NAをもたらす。これらの2つの基準は、MichaletおよびWeissによる注釈(PNAS, March 28, 2006, vol.103 No.13 4797-4798)において説明されるように、光学システムの分解能に関する絶対限界を示さない。しかし、レーリー基準とスパロー基準は共に、ルールオブサム推定について有用であることがわかった。
【0020】
サンプルは、自家蛍光を示す細胞を備えてもよい。あるいは、サンプルは、さらなる蛍光分子で染色される(dye)か、または、標識されてもよい。たとえば、サンプルは、蛍光標識されたマイクロアレイを備えてもよい。サンプルは、蛍光分子または粒子を含んでもよい。こうした蛍光分子または粒子の例は、
・Cy3、Cy5、Alexa Fluorなどのような有機色素、
・バイオポリマーに連結した色素分子、
・無機色素、たとえば、CdSe量子ドット、II−VI族量子ドット、III−V族量子ドットなどのような量子ドット標識、
・臭化エチジウム、Hoechst色素などのようなインターカレーション色素、
・蛍光マイクロビーズ、蛍光微小球など、または、
・アミン修飾色素、標識核酸、共役量子ドット、ストレプトアビジン共役量子ドット、反応性量子ドットなどのような修飾蛍光粒子
である。
【0021】
本発明のスキャナは、限定はしないが、DNA、蛋白質または任意の他の単一カテゴリーの生体分子を分析するためのマイクロアレイ、細胞無し抽出物を分析することによるツールならびにマイクロ流体の原理、たとえば、「Sample Analyser」という名称の英国特許出願第0625595.4号に開示されるタイプのサンプルに基づくツールを含む、種々の異なるサンプル内での個々の/単一の分子の検出に適する。本文書のために、本発明者等は、この等級のサンプルを生体分析サンプルとして定義する。
【0022】
サンプルが細胞を含むとき、代替の照明方法は、有利には励起発光撮像用に使用される、顕微鏡対物レンズからサンプルに向けられる同軸照明ではなく、サンプルを通して顕微鏡光学部品に向けられる白色光または着色光の透過であってよい。この方法は、概してマイクロアレイスキャナでは実施されないが、細胞生物学用途について一般に使用される。光源は、サンプル保持メカニズム内に組込まれてもよく、または、光源は、サンプル保持メカニズムと独立であってもよい。サンプルが細胞を含むとき、本発明の使用は、本出願人によって2006年12月21日に出願され、また、「Sample Analyser」という名称の同時係属中の英国特許出願第0625595.4号(代理人参照番号:P045675GB)に記載される分析のタイプを含んでもよい。
【0023】
ゼロのカバースリップ厚を補正された乾式顕微鏡対物レンズの使用は、液浸液の使用も、カバースリップの使用も必要とされず、サンプルが損傷を受ける可能性が小さいことを意味する。
【0024】
顕微鏡対物レンズの開口数は、0.4より大きい、好ましくは0.6より大きい、より好ましくは0.8より大きい。NAの範囲は、好ましくは0.4<NA<1、より好ましくは0.6<NA≦1である。好ましい実施形態では、顕微鏡対物レンズは0.95の開口数を有する。ナイキスト基準は、距離dを分解するために、少なくともd/2の距離がサンプリングされなければならないことを述べる。NA=0.95であるとき、スパロー基準は、光学分解能を280nmとして与え、140nm未満の画素分解能を必要とする。したがって、好ましくは、140nm未満の有効画素エレメントを有する検出器が使用される。
【0025】
スキャナの倍率は、好ましくは、顕微鏡対物レンズによって提供される。好ましくは、対物レンズは、無限補正されたレンズであり、この場合、スキャナの倍率は、管レンズと組合せた顕微鏡対物レンズによって提供される。光学部品は、選択された管レンズの焦点長について最適化される(また、対物レンズの公称倍率が選択される)。異なる焦点長を有する管レンズの選択は、異なる倍率をもたらし、倍率は、管レンズの焦点長に正比例する。好ましい実施形態では、顕微鏡対物レンズの倍率は50×である。好ましい倍率は、使用される検出器の画素エレメントサイズに依存する。回折限界dは、光学分解能を制限し、ナイキスト基準は、回折限界のサイズのフィーチャを分解するために、その画素サイズが、このサイズのせいぜい半分でなければならないことを指示する。画素分解能は、CCD画素サイズと撮像サイズの横倍率の組合せによって、以下のように与えられる。すなわち、d=αλ/NAであり、式中、α=0.61(レーリー基準の場合)であるか、または、α=0.47(スパロー基準の場合)であり、λは光の波長であり、NAは光学部品の開口数であり;p<βdであり、式中、pは有効画素サイズである。これは、ナイキスト基準である。すなわち、有効画素サイズは、解像したいと思う長さの割合βより小さくなければならず;p=L/Mである、すなわち、有効画素サイズpは、検出器の物理的画素サイズL(直線寸法)と顕微鏡光学部品の横倍率Mに依存する。したがって、
【0026】
【数2】
【0027】
である。パラメータβは、0.1<β<2、好ましくは0.3<β<1であるように選択される。たとえば、6.45μmの画素サイズを有するCCDの場合、NA=0.95を有する対物レンズおよび570nmの波長を有する光を使用して、スパロー基準は280nmの光学分解能を与え、ナイキスト基準は<140nmの画素分解能を与える。したがって、必要とされる倍率は50×程度である。好ましくは、スキャナの倍率は、40×と100×との間である。画素サイズがf分の1に減少すると、走査速度が撮像される全面積に比例するため、機器の走査速度はf2分の1に減少する。
【0028】
スキャナの焦点面は顕微鏡対物レンズの焦点面に一致してもよい。あるいは、スキャナの焦点面は顕微鏡対物レンズの焦点面に一致してなくてもよい。
【0029】
検出器は、好ましくは、電荷結合素子(CCD)、より好ましくは冷却CCD、さらにより好ましくはペルチェ冷却CCDである。あるいは、CMOS検出器、電子増倍CCDまたはインテンシファイドCCDが使用されることができる。
【0030】
好ましくは、検出器の選択された露出詳細についてのダークカウントおよび雑音レベルは、少なくとも1つの蛍光分子または粒子からの発光がバックグラウンドと区別されることができるようなものである。信号対雑音比を計算するときに利用される、CCD撮像システムからの測定信号は、CCDフォトダイオードに入射する光子束(1秒当たりで1画素当たりの光子として表現される)、デバイスの量子効率(1が100%効率を表す)および信号がそれにわたって収集される積分時間(露出時間)に比例する。信号はまた、限定はしないが、利得段およびアナログ−デジタル変換器を含む、カメラの電子回路に依存する。望ましくない3つの主要な信号成分(雑音)が、通常、総合信号対雑音比を計算するときに考慮される。3つの主要な信号成分(雑音)とは、CCDに入射する光子の到来レートの固有の統計的変動から生じ、また、信号の平方根に等しい光子雑音、CCDの構造内で熱的に発生する電子の数の統計的変動から生じるダーク雑音、ならびに量子化のためにCCD電荷キャリアを電圧信号に変換するプロセスおよび後続の処理およびアナログ−デジタル変換に固有の読取り雑音である。信号対雑音比は、画像の採取中にCCDを冷却することによって改善される可能性がある。局所的バックグラウンド低減、単一分子の発光強度および空間プロファイルの知識などに基づく閾値処理、ならびに、個々の分子の計数などの採取後の画像処理技法は、雑音をほぼ完全に除去する可能性がある。たとえば、Muresan等、IEEE International Conference on Image Processing, 11-14 Sept 2005. Volume2:1274-1277およびHesse等、Genome Reserch 16:1041-1045(2006)を参照されたい。
【0031】
スキャナは、さらに、光学軸に実質的に垂直な平面内にある少なくとも2つの方向に移動可能な並進ステージを備えてもよく、サンプルホルダが並進ステージ上に搭載される。
【0032】
並進ステージは、サンプルが光学軸に実質的に垂直に配置されることを確保するためにチルト調整を設けられてもよい。
【0033】
さらに、並進ステージは、光学軸に実質的に平行な方向に移動可能であってよい。あるいは、または、付加的に、対物レンズは、光学軸に実質的に平行な方向に移動可能であってよい。無限補正された光学部品の場合、移動質量が通常小さく、並進ステップを容易にかつ速くさせるため、並進ステージではなく対物レンズを光学軸に沿って移動させることが好ましい。
【0034】
好ましくは、並進ステージは、位置情報を制御ユニットに提供する。好ましくは、位置情報は、顕微鏡対物レンズの倍率で除算された検出器の直線画素寸法に匹敵するか、または、直線画素寸法より優れた分解能を有する。より好ましくは、並進ステージの速度は、参照により本明細書に組込まれる英国特許出願第0618133.3号に記載されるスケジューリングメカニズムが実施されることができるようなものである。たとえば、並進ステージは、サンプルの第1エリアについて取得された画像データがメモリに転送されると同時に、ステージが、サンプルの第2エリアがそこで撮像される位置に移動することができるような速度で移動することが可能である。好ましくは、第1エリアについて取得された画像データをメモリに転送するのにかかる時間の間に、スキャナは、サンプルがスキャナの焦点面内にあるように焦点合わせされる。好ましくは、1つのステップおよび固定(step-and-settle)動作にかかる時間は<30ms、より好ましくは<20msである。
【0035】
好ましくは、サンプルホルダは、撮像される試験表面がそれに対して押付けられる基準表面を提供する。その結果、サンプルの前面と後面との間のウェジ角度またはサンプルの全面積にわたるサンプル厚変動は、サンプルが、たとえば一方の面上にマイクロアレイを有する顕微鏡スライドである場合、光学軸に対するサンプルの傾斜に影響を及ぼさないであろう。適切なサンプル保持メカニズムは図9に示される。
【0036】
試験表面は、スキャナ光学部品に面するように配置されてもよい。あるいは、試験表面は、顕微鏡スライドを通した撮像が起こるように、スキャナ光学部品から離れた方を向く顕微鏡スライドの表面上に配置されてもよい。
【0037】
焦点合わせメカニズムは、自動焦点メカニズムを備えてもよい。好ましくは、焦点合わせメカニズムは、参照により本明細書に組込まれる英国特許出願第0618131.7号に記載される自動焦点メカニズムを備える。特に、自動焦点メカニズムは、画像センサと、第1放射ビームが対物レンズを通過し、第1位置で試験表面に衝当し、試験表面から反射し、次に、画像センサに衝当するように第1放射ビームを誘導するよう配置された第1放射源と、第2放射ビームが対物レンズを通過し、第2位置で試験表面に衝当し、試験表面から反射し、次に、画像センサに衝当するように第2放射ビームを誘導するよう配置された第2放射源と、画像センサに衝当する、反射した第1放射ビームと第2放射ビームとの間の距離を計算する第1プロセッサと、画像センサに衝当する、反射した第1放射ビームと第2放射ビームとの間の計算された距離を、光学軸に交差する固定された任意の基準面と試験表面との間の距離に変換することによって、試験表面と光学システムの焦点面との間の距離を計算する第2プロセッサと、対物レンズの視野内にある試験表面の部分が対物レンズの焦点面に一致するように、光学軸に沿って、対物レンズおよび試験表面の少なくとも一方を、対物レンズおよび試験表面の他方に対して移動する運搬部とを備えてもよい。任意の基準点は、光学システムの焦点面に相当してもよい。
【0038】
サンプルが、平坦表面、たとえば、固体支持体として顕微鏡スライドを有するマイクロアレイを示すとき、焦点合わせ速度は、さらに、予測的焦点合わせ法の使用によって改善されてもよい。こうした方法によって、サンプルの再配置のために必要である顕微鏡対物レンズと試験表面との間の距離補正は、以前の補正要件から導出されてもよい。サンプルが移動している間に、この焦点合わせ補正が適用されると、後続の自動焦点動作は、より少ない補正を適用することを必要とし、そのため、自動焦点動作をより速くかつより精密にする。
【0039】
光源は、好ましくは、1つまたは複数のレーザ、たとえば、ダイオードレーザ、ダイオード励起固体レーザ(DPSS)、あるいはArイオンレーザ、Ar/KrイオンレーザまたはKrレーザなどのガスレーザである。好ましくは、光源は、電磁スペクトルの可視領域または近赤外領域の光を放出する。色素分子は、多くの場合、双極子モーメントの特性を有するものと考えられることができる。そのため、電磁放射は偏光異方性によって吸収される。レーザ放出は、通常、線形偏光し、消光比は、通常100:1の程度である。多くの場合、これは、レーザキャビティのデザインによっており、レーザキャビティのデザインは、ブリュースター角で配置された結晶および窓を含んでもよく、2つの直線偏光について、異なるキャビティ内損失によって好ましい偏光の選択をもたらす。そのため、実質的に全ての蛍光分子を撮像することを目的として色素分子の励起のためにレーザ光を使用するとき、たとえば偏光ビームスプリッタを使用することによって、たとえば2つの直交偏光したレーザビームを結合させることによって非偏光レーザビームを使用することが好ましい。場合によっては、円偏光光、ラジアル偏光光またはアジマス偏光光を使用することが好ましい。
【0040】
検出器上に結像されるサンプルエリアの照明は、好ましくは実質的に均質である。好ましくは、検出器上に結像されるサンプルエリアの単位面積当たりの光子束は実質的に一定である。これは、レーザビームをフラットトップ正方形ビームに整形するビーム整形モジュールの使用によって達成されてもよく、フラットトップ正方形ビームは、その後、焦点外れレンズまたはレンズの組合せを使用して発散させられる。たとえば、異なる焦点長を有する2つの直交円柱レンズが使用されて、正方形ビームを長方形にして、それにより、正方形ビームを長方形CCDに一致させることができる。照明は、検出器上に結像されるエリアに制限される。隣接エリアが同様に照明される場合、好ましくない光退色が生じる可能性がある。照明を検出器上に結像されるエリアに制限することによって、こうした好ましくない光退色が回避される。ビーム整形モジュールは、回折光学素子またはあるいは屈折光学部品に基づいてもよい(同様に、Laser Beam Shaping: theory and techniques; Dickey & Holswade 2000を参照されたい)。好ましくは、レーザの出力は、蛍光発光の検出器から制御ユニットによって受取られた信号によって直接制御される。あるいは、電気機械シャッター、電気光学シャッターまたは音響光学シャッターなどのシャッターメカニズムが使用されて、レーザビームを制御することができる。
【0041】
検出器上の信号レベルSは、サンプルの照明時間tおよび発光Eに依存する。線形検出器の場合、式はS=E・tである。第1の実施形態では、照明時間tは、一定に維持されることができ、そのため、信号は発光に比例する。その結果、信号レベルから、サンプルの発光(そのため、蛍光分子の数)が評価されることができる。あるいは、第2の実施形態では、照明時間は、変わる可能性があり、ユーザは、代わりに、たとえば、信号が閾値を横切るのを探し、照明時間を評価することができる。これは、たとえば信号が、通常、検出器を飽和させる場合に有用である可能性がある。この技術は、たとえば、Opteonのレンズを通した(through the lens)(TTL)トリガー技法を用いてエリア検出器(すなわち、全体のCCDについて1つの閾値)について使用されることができる。検出器が使用されて、こうした条件を画素ごとに評価することができる。
【0042】
好ましくは、サンプルからの蛍光発光から励起ビームを分離する前記光学素子は、1つまたは複数のフィルターおよび/またはダイクロイックビームスプリッターを備える。好ましくは、励起光の消光は、励起光が実質的に全く検出器に達しないようなものである。これは、ラマンフィルターと組合せてダイクロイックビームスプリッターを使用することによって達成されてもよい。
【0043】
制御ユニットは、好ましくは、いくつかのタスクの並列実行を可能にするよう構成される。より好ましくは、制御ユニットは、先に説明され、また、参照により本明細書に組込まれる英国特許出願第0618133.3号に記載されるスケジューリングメカニズムに従って構成される。
【0044】
制御ユニットは、さらに、以下の機能の部分集合または超集合を実施してもよい。以下の機能とは、
・コマンドおよびデータを検出ユニットに送出すること、
・検出ユニットからデータを受取ること、
・コマンドを並進ステージに送出すること、
・並進ステージからデータ(たとえば、位置情報)を受取ること、
・コマンドを自動焦点メカニズムに送出するか、または、データを受取り、データを処理し、コマンドをそのコンポーネントに送出することによって、そのコンポーネントの全てまたは一部を制御すること、
・データを不揮発性記憶ユニット(たとえば磁気ハードディスク)に書込むこと、
・データ、たとえば、画像を処理すること、
・異なるロケーションからの画像を合成すること、
・採取された画像の全てまたは一部の組合せのサムネールを生成すること
である。
【0045】
スキャナは、さらに、磁気ディスクドライブまたは取外し可能なハードドライブなどの不揮発性メモリに、制御ユニットによって取得されたデータを記憶するよう構成された記憶ユニットを備えてもよい。好ましくは、記憶ユニットは、少なくとも100MB、より好ましくは少なくとも1GB、より好ましくは少なくとも120GB、さらにより好ましくは少なくとも500GBの容量を有する。一実施形態では、25mm2(たとえば、(5mm)2)パッチの結果が、記録可能なデジタルビデオディスク(たとえば、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RWまたは同様なもの)上に記憶されることができる。
【0046】
スキャナは、好ましくは、単一励起波長帯が存在するように単一色使用のために実施され、検出器は、単一蛍光種の発光に関連する波長帯を検出するよう構成される。単一励起波長帯の放射は、波長選択器と組合せた光源によって供給されることができる。波長選択器は、たとえば、フィルター、フィルターセット、音響光学変調器、プリズムの組合せ、回折光学素子の組合せ、回折格子の組合せなどであることができる。しかし、スキャナは、2色サンプル、たとえば、2つの異なるサンプルの比較が、光学色空間または多色増強サンプル内に多重化されるマイクロアレイ、たとえば、標的分子またはあるいはプローブ−標的複合体が、2つ以上の色の蛍光色素分子で(おそらく、インターカレーション色素の使用によって)一緒に標識されたマイクロアレイを撮像するための、多色、たとえば、2色、4色または6色の構成で実施されることができる。後者の構成は、表面に対するプローブ分子の非特異的結合イベント、または、蛍光の汚染、または、自由蛍光タグ、標識、埃または他の粒子状汚染物質の非特異的結合などのバックグラウンドの、より効率的な除去のために使用されることができる。
【0047】
スキャナは、2つ以上の異なる空間分解能、すなわち、関心エリアを迅速に見出すのに有用な第1の低分解能および時間が長くかかる最適分解能スキャンを実施するのに有用な第2の高分解能で機能するよう構成されてもよい。この構成は、より意味のあるデータが取込まれることを可能にし、不必要と思われるスキャンエリアを削減する。こうした構成は、また、ディスクスペース、分析に費やされる時間およびスキャンに費やされる時間を低減するのに役立つ。
【0048】
本発明はまた、単一分子を撮像する方法を提供し、方法は、
本発明によるスキャナを設けること、
スキャナの光学軸上にサンプルを保持すること、
スキャナの焦点面にサンプルを配置すること、
励起ビームを放出し、サンプルの1つまたは複数の構成要素を励起することであって、それにより、蛍光発光を放出する、励起すること、
サンプルからの蛍光発光から励起ビームを分離すること、
サンプルからの蛍光発光を検出すること、および、
制御ユニットを使用することであって、それにより、検出器、焦点合わせメカニズムおよび光源の1つまたは複数の要素を制御する、制御ユニットを使用することを含む。
(概説)
「備える(comprising)」という用語は、「含む(including)」ならびに「からなる(consisting)」を包含し、たとえば、Xを「備える」組成物は、排他的にXからなってもよく、または、付加的な何かを含んでもよい、たとえば、X+Y。
【0049】
数値xに関する「約(about)」という用語は、たとえば、x±10%を意味する。必要である場合、「約」という用語は省略されることができる。
【0050】
「実質的に(substantially)」という語は、「完全に(completely)」を排除せず、たとえば、Yが「実質的に無い(substantially free)」組成物は、Yが完全に無くてもよい。必要である場合、「実質的に」という語は、本発明の定義から省略されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明による単一分子スキャナのコンポーネントを示す図である。
【図2】本発明によるスキャナの例示的な光学経路を示す図である。
【図3】本発明によるスキャナと共に使用するための自動焦点メカニズムの例示的な光学経路を示す図である。
【図4】本発明によるスキャナの一部分の例示的な光学経路を示す図である。
【図5】本発明によるスキャナの例示的な光学経路を示す図である。
【図6】本発明によるスキャナと共に使用するための励起ビームメカニズムの例示的な光学経路を示す図である。
【図7】本発明によるスキャナと共に使用するためのフィルタリング装置の例示的な光学経路を示す図である。
【図8】正方形フラットトップ励起ビームの例示的なビーム強度プロファイルを示す図である。
【図9】本発明の実施形態による単一分子スキャナと共に使用するためのサンプル搭載プラットフォームを示す図である。
【図10】本発明の実施形態による単一分子スキャナを使用して取得された、単一水平サンプル位置における画像取込みの2つの部分を示す図である。左手画像は、画像シリーズが取得される前に1回焦点合わせされた画像取込みの部分を示す。右手画像は、本発明の実施形態による単一分子スキャナを使用して、100画像が収集された後の色素分子の光退色を示す。
【図11】図10の画像上のいくつかの任意に選択された位置上の強度値の時間トレースを示す図である。
【図12】5μm空間分解能を有する従来のスキャナを使用して取得された画像である。
【図13】130nm空間分解能を有する、本発明の実施形態による単一分子スキャナを使用して取得された画像である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、本発明の実施形態による単一分子スキャナのコンポーネントを示す。特に、図1の単一分子スキャナは、画像記憶、スケジューリング、画像タイリング、画像処理および機器制御のためのソフトウェア10、画像検出ユニット20、フィルターユニット30、乾式顕微鏡対物レンズ40、サンプル配置ユニット50、励起コンポーネント60ならびに自動焦点メカニズム70を含む。画像検出ユニット20、サンプル配置ユニット50、励起コンポーネント60および自動焦点メカニズム70は、ソフトウェア10によって制御される。画像スケジューリングについてのソフトウェア10の動作は、参照により組込まれる同時係属中の英国特許出願第GB0618133.3号に記載される。スキャナはさらに、制御ユニットによって取得されたデータを、磁気ディスクドライブなどの不揮発性メモリに記憶するよう構成された記憶ユニットを備える。
【0053】
図2から見られることができように、自動焦点メカニズム70は、スキャナの蛍光励起および検出ユニット60、20から別個のビーム経路を使用する。さらに、自動焦点、励起および検出ユニットは、全て異なる波長の放射を使用する。3つのビーム経路は全て、顕微鏡スライド80の表面に配置されたサンプルに衝当する前に、同じ乾式顕微鏡対物レンズ40を通過する。サンプルは、カバースリップによって覆われていない蛍光標識されたマイクロアレイを備える。蛍光標識されたマイクロアレイは、バイオポリマー、量子ドット標識またはインターカレーション色素に連結したCy3色素分子で染色した蛍光分子を含むことができる。乾式顕微鏡対物レンズは、0.4の値を超える開口数を有する。特に、顕微鏡対物レンズは、0.95のNAおよび50×の倍率を有する。
【0054】
顕微鏡対物レンズの開口数は、全体としてシステムにいくつかの影響を及ぼす。第1に、NAは、システムの回折限界を決定し、そのため、検出ユニットの画素分解能と組合せて最良の倍率を決定するのに使用されることができる。第2に、NAは、
【0055】
【数3】
【0056】
であるような光収集効率ηを決定する。この式は、乾式(すなわち、非液浸タイプ)光学部品について有効であり、それぞれ、NA=0.95の場合34%、NA=0.8の場合20%の収集効率をもたらす。どのレベルの光収集効率で十分であるかについての判定は、色素、光源、検出システムの雑音レベルなどの選択に依存する。ある場合には、考えられる最高のNAが必要であることになり、一方、他の場合(たとえば、生体分子が、2つ以上の蛍光標識で標識されるとき)には、低いNAで十分である可能性がある。
【0057】
励起のために使用されるビームは、2つの2倍周波数ダイオード励起連続波(cw)Nd:YAG励起レーザ64、65によって発生される。あるいは、ダイオードレーザ、他のダイオード励起固体レーザ、あるいはArイオンレーザ、Ar/KrイオンレーザまたはKrレーザなどのガスレーザが使用されることができる。2つのレーザは同じ波長を有する。レーザが偏光出力ビームを有し、色素分子が双極子として働くため、実質的に直交偏光を有する2つのレーザビームは、1つのビームに合成され、そのビームは、その後、励起波長を吸収することが可能なマイクロアレイ上の実質的に全ての色素分子が励起されることを確保するために使用される。励起レーザのうちの1つのビーム操向タワーは、レーザの偏光をpからsへ、または、その逆に変更するミラーの特定の配置を有する。2つの励起レーザビームは、偏光ビームスプリッタキューブ66を使用して合成され、個々のレーザビームのパワーのほぼ100%が、合成ビームに結合される。回折光学素子(DOE)67に基づくビーム整形モジュールは、図8に示すように正方形フラットトップ強度プロファイルを有するように、合成励起ビームを整形するため、ビームは実質的に非発散性である。合成励起ビームは、視野内で検出器上に結像されるサンプルエリアの照明が、完全にかつ実質的に均質であるように選択された焦点長を有するレンズ68を通過する。合成励起ビームは、555nmダイクロイックビームスプリッター62によって反射され、サンプル80に衝当する前に、506nmダイクロイックビームスプリッター90を真直ぐに通過する。蛍光色素によって放出されたビームは、その後、506nmダイクロイックビームスプリッター90および555nmダイクロイックビームスプリッター62を真直ぐに通過し、励起および自動焦点ビームの残りが検出ユニット20に達するのを防止するために532nmラマンフィルター22によってフィルタリングされ、検出ユニット20によって検出される。管レンズと組合されて、顕微鏡対物レンズは、蛍光検出ユニット20上でのサンプルの倍率を提供する。
【0058】
レーザ出力は、蛍光検出ユニット20によって、電気信号(TTLパルス)によって制御され、蛍光検出ユニット20は、次に、制御ユニット10によって制御される。あるいは、電気機械シャッター、電気光学シャッターまたは音響光学シャッターなどのシャッターメカニズムが使用されて、レーザビームを制御することができる。
【0059】
蛍光検出ユニット20は、複数の画素エレメントを有する検出器を含む。顕微鏡対物レンズの倍率で除算された各画素エレメントの直線寸法は、可視光についての顕微鏡対物レンズの回折限界分解能より小さい。検出器の選択された露出詳細についてのダークカウントおよび雑音レベルは、単一のまたは少数の蛍光分子または粒子の発光がバックグラウンドおよび雑音と区別されることができるようなものである。検出器は、CCDであり、好ましくはペルチェ冷却CCDなどの冷却CCDである。あるいは、検出器は、CMOS検出器、電子増倍CCDまたはインテンシファイドCCDを備えることができる。例示的な実施形態では、検出器は、−30℃まで冷却され、1392×1040画素を有するPhotometric CoolSnapHQ検出器(Photometric CoolSnapHQ detector)を備える。
【0060】
適した顕微鏡スライドホルダは図9に示される。顕微鏡スライド80上のサンプルは、カバースリップによって覆われず、ばね90によって基準面88に押付けられる。基準面88は、並進ステージユニット92に対して固定される。したがって、顕微鏡スライドの厚さ変動は、まるでスライドがステージ上に直に配置されたのと同じ程度に、顕微鏡光学部品を基準にしてサンプル位置に影響を及ぼさない。前表面特性だけがこのタイプのスライドホルダに関連するため、スライドのウェッジングも問題にならない。
【0061】
並進ステージユニット92は、顕微鏡対物レンズの光学軸に実質的の垂直である少なくとも2つの方向に移動可能である。並進ステージは、同時係属中の英国特許出願第0618133.3号に記載されるスケジューリングメカニズムが実施されることができるような速度で移動することができる。並進ステージユニット92は、光学軸に実質的に垂直にサンプルを配置するチルト調整部を含む。並進ステージは、また、光学軸に平行な方向に移動可能である。好ましくは、光学軸に平行な方向への並進ステージの移動範囲は400μmである。並進ステージユニット92は、顕微鏡対物レンズの倍率で除算された検出器の直線画素寸法に匹敵するか、または、それより優れた分解能を有する位置情報を制御ユニット10に提供する。例示的な実施形態は、マイクロポジショニングステージM−663およびM−665と組合せたPIFOC並進ステージを使用し、それら全てが、Physik Instumente(PI)によって製造される。
【0062】
図3から見られるように、自動焦点のために使用される2つの光ビーム172、174は、透過回折格子74を使用して、1つのレーザビーム170を多数のビームに分割することによって生成される。自動焦点のために使用されるビーム172、174は、顕微鏡スライド80上に投影される前に、506nmダイクロイックビームスプリッター90から反射される。レーザビーム172、174は、顕微鏡スライド80から反射される。反射された自動焦点ビームは、元の自動焦点ビームと同じ波長を有し、自動焦点ユニット70内の特に高速なCCDカメラ78(たとえば、フルフレーム転送時間8ms)上に結像される前に、506nmダイクロイックビームスプリッター90によって反射される。CCDカメラ78は、検出ユニット20内の蛍光検出に使用されるCCDカメラとは別個である。50%透過および50%反射を有するペリクルビームスプリッタ76が使用されて、検出可能なゴーストビームを生成することなく、出て行くビーム176、178から入ってくるビーム172、174を分離する。自動焦点メカニズム70の動作は、参照により本明細書に組込まれる同時係属中の英国特許出願第0618131.7号に記載される。
【0063】
制御ユニット10は、検出器、自動焦点システム、光源および並進ステージを制御するよう構成され、また、同時係属中の英国特許出願第0618133.3号に記載されるスケジューリングメカニズムに従って、いくつかのスレッドの並列実行を可能にするよう構成される。スキャナは、また、制御ユニットによって取得されたデータを、1GBを越えるデータを記憶することが可能な取外し可能なハードドライブに記憶するよう構成された記憶ユニットを含む。
【0064】
図10〜13は、本発明の例示的な実施形態の実験結果を示す。
【0065】
本発明の単一分子スキャナを使用して、本出願人は、単一色素分子からの発光を測定した。これは、図10および11によって立証された。図10の左側は、画像シリーズが取得される前に1回焦点合わせされた、単一水平サンプル位置における画像取込みの部分を示す。
【0066】
図10の右側は、それぞれ最大レーザパワーで100ms露出時間を使用して100画像が収集された後に、色素分子の光退色が起こることを示す。図11は、画像上のいくつかの任意に選択された位置上の強度値の時間トレースを示す。これは、退色が、スムーズなアナログ的遷移では起こらないが、色素分子が退色するときはいつでも、または、色素分子が元に戻る(ブリンキング)ときに、量子化ステップが存在することを示す。スキャナのデジタルレベルは、図11の水平線で示される。
【0067】
図12および13は、回折限界より優れた空間分解能を有するスキャナが、5μm空間分解能を有する従来のスキャナに比べて同様な希釈シリーズ実験からより多くの情報を引出すことを可能にすることを示す。特に、従来のスキャナの電子雑音は、低濃度の蛍光分子の検出感度を制限する。これは、この場合、信号と雑音を区別する方法が存在しないからである。一方、画素分解能が光学システムの回折限界より優れるとき、信号は、空間相関のために雑音と比較して目立つ(霧雨状ではなくドット)。その結果、単一分子が雑音から区別されることができ、真の「ゼロ」結果さえも取得されることができる。図12は、5μm空間分解能を有する従来のスキャナの結果を示し、図13は、130nm空間分解能を有する本発明の単一分子スキャナの結果を示す。
【0068】
したがって、本出願人が改良された単一分子スキャナを開発したことが明らかである。本発明が例によってだけ述べられたこと、また、本発明の精神および範囲内で、詳細の変更が行われることができることが当業者にとって明らかになるであろう。
【技術分野】
【0001】
本明細書で引用される全ての文章およびオンライン情報は、その全体が参照により組込まれる。
【0002】
本発明は、単一分子を撮像する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
撮像装置および方法は、分析されるサンプルの画像を取得するために世界中で使用される。これは、サンプルの小さなエリアに焦点を合わせ、これらの小さなエリアの画像を合成して、サンプルの全体のまたは大きな部分の単一詳細画像を取得することによって行われることが多い。これらの撮像技法の一部は、単一色素分子分光法、単一量子ドット分光法ならびに関連タイプの超高感度顕微鏡法および分光法を使用する。しかし、これらの技法をマイクロアレイ分析に適用する手法がほとんど存在しない。
【0004】
マイクロアレイ実験は、一般に、顕微鏡スライドの表面に固着するサンプルの蛍光顕微鏡法を含む。異なるタイプの実験的設計が存在し、最も一般的な方法は、スペクトル的に別個の2つの色素(たとえば、それぞれ、約570nmおよび670nmを放出するCy3およびCy5)の発光を撮像する。ほとんどの商用スキャナは単一点検出に基づくが、徐々に、CCDベースシステムも存在しつつある。代表的な直線画素分解能は約5〜10μmである。知られているほとんどの商用マイクロアレイスキャナは、データがデジタルで記憶され(16ビットTIFFファイルが通常である)処理されても、本質的にアナログ読取りモードで動作する。これは、解釈されるのが信号の強度だけであるからであり、たとえば、同じ顕微鏡スライド上で実施される実験間の強度が比較される。
【0005】
しかし、高分解能光学部品および低密度の蛍光分子を使用して、単一分子を空間的に弁別し撮像することが可能であり、その場合、これらの個々の分子が計数されることができる。これは、完全にデジタル的な方法を含み、絶対値ベースで(on absolute basis)異なるスライド間の比較を可能にする。この方法は、分子が凝集するときの場合に拡張されることができ、それは、CCDの考えられるオフセットカウント(ダークカウント、構成オフセットなど)とは別に、1つの分子が特定のCCDカウントをもたらし、一方、2つの分子が、1つの分子のカウントの2倍のカウントをもたらすからである。単一分子分光の重要な実験的考慮事項のうちの1つは、回折限界に近いか、またはさらに回折限界を超える高空間分解能の使用である。空間分解能を高めるのに現在使用される技法は、広視野顕微鏡光学部品、従来のならびに専用の共焦点顕微鏡法(たとえば、4PIおよび誘導放出制御顕微鏡法(stimulated emission depletion microscopy))、走査型近接場光顕微鏡法(scanning near-field optical microscopy)(SNOMまたはNSOM)、レーリー基準ではない新しい基本分解能尺度(Fundamental Resolution Measure)(FREM)を使用する方法(PNAS, March 21, 2006, vol.103 No.12 4457-4462)および光活性化限局顕微鏡法(Photoactivated Localization Microscopy)(PALM, Science Express online publication, 10 August 2006)を含む。
【0006】
単一点と対照的に広視野走査システムは、一般に、大面積をカバーするために連続画像を採取する。実際には、これは、サンプル配置、自動焦点合わせ、サンプル照明、信号検出およびCCD読出しのシーケンスに相当する。しばしば画像タイリングと呼ばれるこのプロセスが、特に、考えられる最高速度を制限するときに重大な欠点を有することを、多数の文書が確認している。たとえば、サンプル配置ステージの機械的動きが速度制限因子であることを述べる、米国特許第6,711,283B1号「Fully automated rapid slide scanner」およびSonnleitner等、Proc. SPIE 5699(2005):202-210「High-Throughput Scanning with Single Molecule Sensitivity」を参照されたい。スキャン結果(単一分子感度を有する1cm2および350nmより優れた画素分解能)の匹敵する特性についての走査時間のおよその推定は、単一点検出方法の場合3.8ヶ月、画像タイリング法の場合約10時間、そして、Sonnleitner等、Proc. SPIE 5699(2005):202-210に記載される方法を使用して約20分であるとして報告された。
【0007】
精密な自動焦点合わせシステムについての必要性は、主に、高空間分解能ならびに良好な光捕集(harvest)について必須である大きな開口数(NA)の顕微鏡対物レンズに関連する浅い被写界深度(DOF)による。自動焦点メカニズムの精度要件は、顕微鏡対物レンズのNA、CCDの物理的画素サイズおよび顕微鏡対物レンズの倍率すなわち
【0008】
【数1】
【0009】
によって設定され、式中、DはCCDの直線画素寸法であり、Mは倍率であり、λは結像される光の波長である。例として、顕微鏡スライドが、その全エリアにわたって十分に平坦でないため、800nmの被写界深度は、各画像についての焦点調整なしでは、全顕微鏡スライドにわたって維持されることができない。わずかなチルト角が、光学軸に平行なサンプルの移動を生じる可能性があり、焦点外れ画像をもたらす。
【0010】
米国特許第6,255,048号は、ビオチン標識プローブおよび蛍光強度測定法を使用いて単一分子を検出するために開発されたスキャナを開示する。国際公開第WO00/06770号は、配列決定用途のための単一分子検出を開示する。配列決定用途のために単一分子撮像を使用する2つの会社は、Solexa社およびHelicos社である。Solexa社の手法は、単一生体分子が同じスポットで増幅され、そのため、蛍光標識の量が複数の色素分子であることである。Helicos社は、一方、Helicos社の手法において単一色素分子の撮像を使用する。米国特許第7,169,560号によれば、各視野(120μm×60μm)は、それぞれ0.5秒の露出時間で8回撮像される。この方法の場合、1cm2のエリアを撮像することは、照明時間だけを考慮し、かつ、配置、画像転送などのような任意のオーバヘッドの時間を無視すると、15時間かかる。これらの手法は、液相の蛍光分子を撮像する。さらに、これらの手法は液浸光学部品を使用する。これは、以下で説明するように、マイクロアレイスキャナにおいて使用するのに望ましくない。
【0011】
高空間分解能を有するマイクロアレイスキャナとして使用されることができる機器が存在する。スキャナは、単一色素分子を高速に分解することが可能である。スキャナは、CytoScout(登録商標)と呼ばれ、オーストリア、リンツ(linz, Austria)に本拠を置くUpper Austrian Reserch(UAR)社によって作られる。CytoScout(登録商標)の当初の目的は、3Dまたは4Dにおける単一生体細胞(live-cell)の撮像である。しかし、CytoScout(登録商標)は、マイクロアレイスキャナとして使用されるとき、多数の(技術的およびその他の)弱点を有する。
【0012】
特に、CytoScout(登録商標)は、必須の光学コンポーネントとして油浸レンズを含む。これは複数の重大な結果をもたらす。第1に、機器は液浸油の適用について熟練したオペレータを必要とする。第2に、油浸光学部品を使用するために、従来のマイクロアレイをカバースリップで覆うか、または、従来使用される顕微鏡スライドの代わりにカバースリップを必要とする特別なタイプのマイクロアレイ支持体を使用することが必要である。しかし、カバースリップでマイクロアレイを覆うことは、アレイを損傷する可能性がある。これは、この機器に関して、標準的なマイクロアレイプラットフォームが使用されることができないことを意味する。Hesse等は、Genome Research 16:1041-1045(2006)「In conventional DNA microarray readout, the sensitivity is limited by standard formats of biochip substrates」において、感度が、標準的なフォーマットのバイオチップ支持体によって制限されることを述べる。約1mmのバイオチップ支持体の厚さは、検出効率を犠牲にして、長い作動距離を有する撮像光学部品の実装を要求する。さらに、支持体材料内の不純物は、通常、強い蛍光バックグラウンドを発生し、こうしたバイオチップ上での超高感度蛍光検出を妨げる。単一分子検出に必要とされる条件に関して、Hesse等は、「高い検出効率での撮像を可能にするために、DNAマイクロアレイは、低い自家蛍光について選択された、150μm厚アルデヒド官能化ガラスカバースリップを基にして確立された(Schlapak等2005)」と述べた。これらの陳述から、研究者等が、CytoScout(登録商標)に関する問題を確認したこと(すなわち、標準的なマイクロアレイスライドが、高い検出効率で走査されることができないこと)が明らかである。しかし、提供された解決策は、ユーザにとっての新たな実際上の問題、たとえば、とりわけ、脆いチップの使用および製造プロセスを変更する必要性をもたらす。
【0013】
それでも、油浸光学部品の使用は、多数のさらなる利点を提供する。特に、1より大きな開口数が可能であり、大きな開口数は小さい回折限界スポットをもたらし、複数の単一分子の互いからの空間的分離をより容易に可能にする。油浸光学部品の使用はまた、全反射蛍光(Total Internal Reflectance Fluorescence)(TIRF)が可能であることを意味する。TIRFが使用されて、蛍光に対する励起のバックグラウンドを低減することができ、よりよい信号対雑音比がもたらされる可能性がある。さらに、色素分子は、空気中の酸素などのフリーラジカルによって衝当されると、退色し始める。その結果、色素分子は、空気にさらされる場合、不安定になり、放出される光子の数が減少する。マイクロアレイを、たとえばカバースリップで覆うことによって、色素分子と反応する可能性があるフリーラジカルの数が減少し、検出される可能性がある光子の数が最大になる。その結果、単一分子撮像は、油浸光学部品の利点から著しく利益を受け、したがって、CytoScout(登録商標)内に存在するような油浸光学部品が、こうした単一分子撮像実験を可能にするために必要であることが過去に考えられた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
CytoScout(登録商標)の利点を失うことなく、CytoScout(登録商標)の欠点を克服する改良された単一分子スキャナが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
先に説明された、知られているスキャナに関する問題に鑑みて、本出願人は、改良された単一分子スキャナを開発した。図1は、例示的な新しいスキャナのコンポーネントを示す。単一分子スキャナは、本質的に、優れた空間分解能(たとえば、130nm画素分解能で400nm回折限界分解能)で大面積(たとえば1cm2)を撮像するための顕微鏡である。出願人の改良されたスキャナは、最先端のほとんどの顕微鏡において存在するいくつかの代表的な設計特徴を使用してもよい。しかし、設計特徴の相互作用は、微細に調節され、スキャナは、従来技術から知られていない、いくつかのさらなる特徴を組込む。例示的なスキャナの光学経路は図2に示される。
【0016】
特に、本発明の第1の態様は、単一分子を撮像し、倍率を有するスキャナを提供し、スキャナは、
光学軸を規定し、かつ、0.4以上の開口数を有する乾式顕微鏡対物レンズを備える。
【0017】
単一分子の撮像は、複数の単一分子の特定の形状を示すか、または、複数の単一分子を励起するのではなく、互いから分解された複数の単一分子を検出することを意味する。複数の分子を互いから分解することは、空間的区別手段、強度弁別手段または他の手段による可能性がある。
【0018】
光学システムの分解能にとって、0.4の最小NAが重要である。約570nmの波長(Cy3発光)について、また、NA=0.4の場合、回折限界(スパロー基準)は、約725nmであり、これは、単一分子検出について最大であると考えられる。
スキャナは、さらに、
光学軸上にサンプルを保持するサンプルホルダと、
サンプルがスキャナの焦点面に配置されるようにサンプルの相対位置およびスキャナの光学面を調整する焦点合わせメカニズムと、
励起ビームを放出し、サンプルの1つまたは複数の構成要素を励起して、蛍光発光を放出する光源と、
サンプルからの蛍光発光から励起ビームを分離する光学素子と、
サンプルからの蛍光発光を検出し、複数の画素エレメントを有する検出器とを備え、スキャナの倍率で除算された各画素エレメントの直線寸法が、可視光についての顕微鏡対物レンズの回折限界分解能より小さく、
検出器、焦点合わせメカニズムおよび光源の1つまたは複数の要素を制御するよう構成された制御ユニットを備えてもよい。
【0019】
回折限界分解能についての通常使用されるレーリー基準は、2つの物体間の分解可能距離が、d=0.61λ/NAであると述べる。スパロー基準は、d=0.47λ/NAをもたらす。これらの2つの基準は、MichaletおよびWeissによる注釈(PNAS, March 28, 2006, vol.103 No.13 4797-4798)において説明されるように、光学システムの分解能に関する絶対限界を示さない。しかし、レーリー基準とスパロー基準は共に、ルールオブサム推定について有用であることがわかった。
【0020】
サンプルは、自家蛍光を示す細胞を備えてもよい。あるいは、サンプルは、さらなる蛍光分子で染色される(dye)か、または、標識されてもよい。たとえば、サンプルは、蛍光標識されたマイクロアレイを備えてもよい。サンプルは、蛍光分子または粒子を含んでもよい。こうした蛍光分子または粒子の例は、
・Cy3、Cy5、Alexa Fluorなどのような有機色素、
・バイオポリマーに連結した色素分子、
・無機色素、たとえば、CdSe量子ドット、II−VI族量子ドット、III−V族量子ドットなどのような量子ドット標識、
・臭化エチジウム、Hoechst色素などのようなインターカレーション色素、
・蛍光マイクロビーズ、蛍光微小球など、または、
・アミン修飾色素、標識核酸、共役量子ドット、ストレプトアビジン共役量子ドット、反応性量子ドットなどのような修飾蛍光粒子
である。
【0021】
本発明のスキャナは、限定はしないが、DNA、蛋白質または任意の他の単一カテゴリーの生体分子を分析するためのマイクロアレイ、細胞無し抽出物を分析することによるツールならびにマイクロ流体の原理、たとえば、「Sample Analyser」という名称の英国特許出願第0625595.4号に開示されるタイプのサンプルに基づくツールを含む、種々の異なるサンプル内での個々の/単一の分子の検出に適する。本文書のために、本発明者等は、この等級のサンプルを生体分析サンプルとして定義する。
【0022】
サンプルが細胞を含むとき、代替の照明方法は、有利には励起発光撮像用に使用される、顕微鏡対物レンズからサンプルに向けられる同軸照明ではなく、サンプルを通して顕微鏡光学部品に向けられる白色光または着色光の透過であってよい。この方法は、概してマイクロアレイスキャナでは実施されないが、細胞生物学用途について一般に使用される。光源は、サンプル保持メカニズム内に組込まれてもよく、または、光源は、サンプル保持メカニズムと独立であってもよい。サンプルが細胞を含むとき、本発明の使用は、本出願人によって2006年12月21日に出願され、また、「Sample Analyser」という名称の同時係属中の英国特許出願第0625595.4号(代理人参照番号:P045675GB)に記載される分析のタイプを含んでもよい。
【0023】
ゼロのカバースリップ厚を補正された乾式顕微鏡対物レンズの使用は、液浸液の使用も、カバースリップの使用も必要とされず、サンプルが損傷を受ける可能性が小さいことを意味する。
【0024】
顕微鏡対物レンズの開口数は、0.4より大きい、好ましくは0.6より大きい、より好ましくは0.8より大きい。NAの範囲は、好ましくは0.4<NA<1、より好ましくは0.6<NA≦1である。好ましい実施形態では、顕微鏡対物レンズは0.95の開口数を有する。ナイキスト基準は、距離dを分解するために、少なくともd/2の距離がサンプリングされなければならないことを述べる。NA=0.95であるとき、スパロー基準は、光学分解能を280nmとして与え、140nm未満の画素分解能を必要とする。したがって、好ましくは、140nm未満の有効画素エレメントを有する検出器が使用される。
【0025】
スキャナの倍率は、好ましくは、顕微鏡対物レンズによって提供される。好ましくは、対物レンズは、無限補正されたレンズであり、この場合、スキャナの倍率は、管レンズと組合せた顕微鏡対物レンズによって提供される。光学部品は、選択された管レンズの焦点長について最適化される(また、対物レンズの公称倍率が選択される)。異なる焦点長を有する管レンズの選択は、異なる倍率をもたらし、倍率は、管レンズの焦点長に正比例する。好ましい実施形態では、顕微鏡対物レンズの倍率は50×である。好ましい倍率は、使用される検出器の画素エレメントサイズに依存する。回折限界dは、光学分解能を制限し、ナイキスト基準は、回折限界のサイズのフィーチャを分解するために、その画素サイズが、このサイズのせいぜい半分でなければならないことを指示する。画素分解能は、CCD画素サイズと撮像サイズの横倍率の組合せによって、以下のように与えられる。すなわち、d=αλ/NAであり、式中、α=0.61(レーリー基準の場合)であるか、または、α=0.47(スパロー基準の場合)であり、λは光の波長であり、NAは光学部品の開口数であり;p<βdであり、式中、pは有効画素サイズである。これは、ナイキスト基準である。すなわち、有効画素サイズは、解像したいと思う長さの割合βより小さくなければならず;p=L/Mである、すなわち、有効画素サイズpは、検出器の物理的画素サイズL(直線寸法)と顕微鏡光学部品の横倍率Mに依存する。したがって、
【0026】
【数2】
【0027】
である。パラメータβは、0.1<β<2、好ましくは0.3<β<1であるように選択される。たとえば、6.45μmの画素サイズを有するCCDの場合、NA=0.95を有する対物レンズおよび570nmの波長を有する光を使用して、スパロー基準は280nmの光学分解能を与え、ナイキスト基準は<140nmの画素分解能を与える。したがって、必要とされる倍率は50×程度である。好ましくは、スキャナの倍率は、40×と100×との間である。画素サイズがf分の1に減少すると、走査速度が撮像される全面積に比例するため、機器の走査速度はf2分の1に減少する。
【0028】
スキャナの焦点面は顕微鏡対物レンズの焦点面に一致してもよい。あるいは、スキャナの焦点面は顕微鏡対物レンズの焦点面に一致してなくてもよい。
【0029】
検出器は、好ましくは、電荷結合素子(CCD)、より好ましくは冷却CCD、さらにより好ましくはペルチェ冷却CCDである。あるいは、CMOS検出器、電子増倍CCDまたはインテンシファイドCCDが使用されることができる。
【0030】
好ましくは、検出器の選択された露出詳細についてのダークカウントおよび雑音レベルは、少なくとも1つの蛍光分子または粒子からの発光がバックグラウンドと区別されることができるようなものである。信号対雑音比を計算するときに利用される、CCD撮像システムからの測定信号は、CCDフォトダイオードに入射する光子束(1秒当たりで1画素当たりの光子として表現される)、デバイスの量子効率(1が100%効率を表す)および信号がそれにわたって収集される積分時間(露出時間)に比例する。信号はまた、限定はしないが、利得段およびアナログ−デジタル変換器を含む、カメラの電子回路に依存する。望ましくない3つの主要な信号成分(雑音)が、通常、総合信号対雑音比を計算するときに考慮される。3つの主要な信号成分(雑音)とは、CCDに入射する光子の到来レートの固有の統計的変動から生じ、また、信号の平方根に等しい光子雑音、CCDの構造内で熱的に発生する電子の数の統計的変動から生じるダーク雑音、ならびに量子化のためにCCD電荷キャリアを電圧信号に変換するプロセスおよび後続の処理およびアナログ−デジタル変換に固有の読取り雑音である。信号対雑音比は、画像の採取中にCCDを冷却することによって改善される可能性がある。局所的バックグラウンド低減、単一分子の発光強度および空間プロファイルの知識などに基づく閾値処理、ならびに、個々の分子の計数などの採取後の画像処理技法は、雑音をほぼ完全に除去する可能性がある。たとえば、Muresan等、IEEE International Conference on Image Processing, 11-14 Sept 2005. Volume2:1274-1277およびHesse等、Genome Reserch 16:1041-1045(2006)を参照されたい。
【0031】
スキャナは、さらに、光学軸に実質的に垂直な平面内にある少なくとも2つの方向に移動可能な並進ステージを備えてもよく、サンプルホルダが並進ステージ上に搭載される。
【0032】
並進ステージは、サンプルが光学軸に実質的に垂直に配置されることを確保するためにチルト調整を設けられてもよい。
【0033】
さらに、並進ステージは、光学軸に実質的に平行な方向に移動可能であってよい。あるいは、または、付加的に、対物レンズは、光学軸に実質的に平行な方向に移動可能であってよい。無限補正された光学部品の場合、移動質量が通常小さく、並進ステップを容易にかつ速くさせるため、並進ステージではなく対物レンズを光学軸に沿って移動させることが好ましい。
【0034】
好ましくは、並進ステージは、位置情報を制御ユニットに提供する。好ましくは、位置情報は、顕微鏡対物レンズの倍率で除算された検出器の直線画素寸法に匹敵するか、または、直線画素寸法より優れた分解能を有する。より好ましくは、並進ステージの速度は、参照により本明細書に組込まれる英国特許出願第0618133.3号に記載されるスケジューリングメカニズムが実施されることができるようなものである。たとえば、並進ステージは、サンプルの第1エリアについて取得された画像データがメモリに転送されると同時に、ステージが、サンプルの第2エリアがそこで撮像される位置に移動することができるような速度で移動することが可能である。好ましくは、第1エリアについて取得された画像データをメモリに転送するのにかかる時間の間に、スキャナは、サンプルがスキャナの焦点面内にあるように焦点合わせされる。好ましくは、1つのステップおよび固定(step-and-settle)動作にかかる時間は<30ms、より好ましくは<20msである。
【0035】
好ましくは、サンプルホルダは、撮像される試験表面がそれに対して押付けられる基準表面を提供する。その結果、サンプルの前面と後面との間のウェジ角度またはサンプルの全面積にわたるサンプル厚変動は、サンプルが、たとえば一方の面上にマイクロアレイを有する顕微鏡スライドである場合、光学軸に対するサンプルの傾斜に影響を及ぼさないであろう。適切なサンプル保持メカニズムは図9に示される。
【0036】
試験表面は、スキャナ光学部品に面するように配置されてもよい。あるいは、試験表面は、顕微鏡スライドを通した撮像が起こるように、スキャナ光学部品から離れた方を向く顕微鏡スライドの表面上に配置されてもよい。
【0037】
焦点合わせメカニズムは、自動焦点メカニズムを備えてもよい。好ましくは、焦点合わせメカニズムは、参照により本明細書に組込まれる英国特許出願第0618131.7号に記載される自動焦点メカニズムを備える。特に、自動焦点メカニズムは、画像センサと、第1放射ビームが対物レンズを通過し、第1位置で試験表面に衝当し、試験表面から反射し、次に、画像センサに衝当するように第1放射ビームを誘導するよう配置された第1放射源と、第2放射ビームが対物レンズを通過し、第2位置で試験表面に衝当し、試験表面から反射し、次に、画像センサに衝当するように第2放射ビームを誘導するよう配置された第2放射源と、画像センサに衝当する、反射した第1放射ビームと第2放射ビームとの間の距離を計算する第1プロセッサと、画像センサに衝当する、反射した第1放射ビームと第2放射ビームとの間の計算された距離を、光学軸に交差する固定された任意の基準面と試験表面との間の距離に変換することによって、試験表面と光学システムの焦点面との間の距離を計算する第2プロセッサと、対物レンズの視野内にある試験表面の部分が対物レンズの焦点面に一致するように、光学軸に沿って、対物レンズおよび試験表面の少なくとも一方を、対物レンズおよび試験表面の他方に対して移動する運搬部とを備えてもよい。任意の基準点は、光学システムの焦点面に相当してもよい。
【0038】
サンプルが、平坦表面、たとえば、固体支持体として顕微鏡スライドを有するマイクロアレイを示すとき、焦点合わせ速度は、さらに、予測的焦点合わせ法の使用によって改善されてもよい。こうした方法によって、サンプルの再配置のために必要である顕微鏡対物レンズと試験表面との間の距離補正は、以前の補正要件から導出されてもよい。サンプルが移動している間に、この焦点合わせ補正が適用されると、後続の自動焦点動作は、より少ない補正を適用することを必要とし、そのため、自動焦点動作をより速くかつより精密にする。
【0039】
光源は、好ましくは、1つまたは複数のレーザ、たとえば、ダイオードレーザ、ダイオード励起固体レーザ(DPSS)、あるいはArイオンレーザ、Ar/KrイオンレーザまたはKrレーザなどのガスレーザである。好ましくは、光源は、電磁スペクトルの可視領域または近赤外領域の光を放出する。色素分子は、多くの場合、双極子モーメントの特性を有するものと考えられることができる。そのため、電磁放射は偏光異方性によって吸収される。レーザ放出は、通常、線形偏光し、消光比は、通常100:1の程度である。多くの場合、これは、レーザキャビティのデザインによっており、レーザキャビティのデザインは、ブリュースター角で配置された結晶および窓を含んでもよく、2つの直線偏光について、異なるキャビティ内損失によって好ましい偏光の選択をもたらす。そのため、実質的に全ての蛍光分子を撮像することを目的として色素分子の励起のためにレーザ光を使用するとき、たとえば偏光ビームスプリッタを使用することによって、たとえば2つの直交偏光したレーザビームを結合させることによって非偏光レーザビームを使用することが好ましい。場合によっては、円偏光光、ラジアル偏光光またはアジマス偏光光を使用することが好ましい。
【0040】
検出器上に結像されるサンプルエリアの照明は、好ましくは実質的に均質である。好ましくは、検出器上に結像されるサンプルエリアの単位面積当たりの光子束は実質的に一定である。これは、レーザビームをフラットトップ正方形ビームに整形するビーム整形モジュールの使用によって達成されてもよく、フラットトップ正方形ビームは、その後、焦点外れレンズまたはレンズの組合せを使用して発散させられる。たとえば、異なる焦点長を有する2つの直交円柱レンズが使用されて、正方形ビームを長方形にして、それにより、正方形ビームを長方形CCDに一致させることができる。照明は、検出器上に結像されるエリアに制限される。隣接エリアが同様に照明される場合、好ましくない光退色が生じる可能性がある。照明を検出器上に結像されるエリアに制限することによって、こうした好ましくない光退色が回避される。ビーム整形モジュールは、回折光学素子またはあるいは屈折光学部品に基づいてもよい(同様に、Laser Beam Shaping: theory and techniques; Dickey & Holswade 2000を参照されたい)。好ましくは、レーザの出力は、蛍光発光の検出器から制御ユニットによって受取られた信号によって直接制御される。あるいは、電気機械シャッター、電気光学シャッターまたは音響光学シャッターなどのシャッターメカニズムが使用されて、レーザビームを制御することができる。
【0041】
検出器上の信号レベルSは、サンプルの照明時間tおよび発光Eに依存する。線形検出器の場合、式はS=E・tである。第1の実施形態では、照明時間tは、一定に維持されることができ、そのため、信号は発光に比例する。その結果、信号レベルから、サンプルの発光(そのため、蛍光分子の数)が評価されることができる。あるいは、第2の実施形態では、照明時間は、変わる可能性があり、ユーザは、代わりに、たとえば、信号が閾値を横切るのを探し、照明時間を評価することができる。これは、たとえば信号が、通常、検出器を飽和させる場合に有用である可能性がある。この技術は、たとえば、Opteonのレンズを通した(through the lens)(TTL)トリガー技法を用いてエリア検出器(すなわち、全体のCCDについて1つの閾値)について使用されることができる。検出器が使用されて、こうした条件を画素ごとに評価することができる。
【0042】
好ましくは、サンプルからの蛍光発光から励起ビームを分離する前記光学素子は、1つまたは複数のフィルターおよび/またはダイクロイックビームスプリッターを備える。好ましくは、励起光の消光は、励起光が実質的に全く検出器に達しないようなものである。これは、ラマンフィルターと組合せてダイクロイックビームスプリッターを使用することによって達成されてもよい。
【0043】
制御ユニットは、好ましくは、いくつかのタスクの並列実行を可能にするよう構成される。より好ましくは、制御ユニットは、先に説明され、また、参照により本明細書に組込まれる英国特許出願第0618133.3号に記載されるスケジューリングメカニズムに従って構成される。
【0044】
制御ユニットは、さらに、以下の機能の部分集合または超集合を実施してもよい。以下の機能とは、
・コマンドおよびデータを検出ユニットに送出すること、
・検出ユニットからデータを受取ること、
・コマンドを並進ステージに送出すること、
・並進ステージからデータ(たとえば、位置情報)を受取ること、
・コマンドを自動焦点メカニズムに送出するか、または、データを受取り、データを処理し、コマンドをそのコンポーネントに送出することによって、そのコンポーネントの全てまたは一部を制御すること、
・データを不揮発性記憶ユニット(たとえば磁気ハードディスク)に書込むこと、
・データ、たとえば、画像を処理すること、
・異なるロケーションからの画像を合成すること、
・採取された画像の全てまたは一部の組合せのサムネールを生成すること
である。
【0045】
スキャナは、さらに、磁気ディスクドライブまたは取外し可能なハードドライブなどの不揮発性メモリに、制御ユニットによって取得されたデータを記憶するよう構成された記憶ユニットを備えてもよい。好ましくは、記憶ユニットは、少なくとも100MB、より好ましくは少なくとも1GB、より好ましくは少なくとも120GB、さらにより好ましくは少なくとも500GBの容量を有する。一実施形態では、25mm2(たとえば、(5mm)2)パッチの結果が、記録可能なデジタルビデオディスク(たとえば、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RWまたは同様なもの)上に記憶されることができる。
【0046】
スキャナは、好ましくは、単一励起波長帯が存在するように単一色使用のために実施され、検出器は、単一蛍光種の発光に関連する波長帯を検出するよう構成される。単一励起波長帯の放射は、波長選択器と組合せた光源によって供給されることができる。波長選択器は、たとえば、フィルター、フィルターセット、音響光学変調器、プリズムの組合せ、回折光学素子の組合せ、回折格子の組合せなどであることができる。しかし、スキャナは、2色サンプル、たとえば、2つの異なるサンプルの比較が、光学色空間または多色増強サンプル内に多重化されるマイクロアレイ、たとえば、標的分子またはあるいはプローブ−標的複合体が、2つ以上の色の蛍光色素分子で(おそらく、インターカレーション色素の使用によって)一緒に標識されたマイクロアレイを撮像するための、多色、たとえば、2色、4色または6色の構成で実施されることができる。後者の構成は、表面に対するプローブ分子の非特異的結合イベント、または、蛍光の汚染、または、自由蛍光タグ、標識、埃または他の粒子状汚染物質の非特異的結合などのバックグラウンドの、より効率的な除去のために使用されることができる。
【0047】
スキャナは、2つ以上の異なる空間分解能、すなわち、関心エリアを迅速に見出すのに有用な第1の低分解能および時間が長くかかる最適分解能スキャンを実施するのに有用な第2の高分解能で機能するよう構成されてもよい。この構成は、より意味のあるデータが取込まれることを可能にし、不必要と思われるスキャンエリアを削減する。こうした構成は、また、ディスクスペース、分析に費やされる時間およびスキャンに費やされる時間を低減するのに役立つ。
【0048】
本発明はまた、単一分子を撮像する方法を提供し、方法は、
本発明によるスキャナを設けること、
スキャナの光学軸上にサンプルを保持すること、
スキャナの焦点面にサンプルを配置すること、
励起ビームを放出し、サンプルの1つまたは複数の構成要素を励起することであって、それにより、蛍光発光を放出する、励起すること、
サンプルからの蛍光発光から励起ビームを分離すること、
サンプルからの蛍光発光を検出すること、および、
制御ユニットを使用することであって、それにより、検出器、焦点合わせメカニズムおよび光源の1つまたは複数の要素を制御する、制御ユニットを使用することを含む。
(概説)
「備える(comprising)」という用語は、「含む(including)」ならびに「からなる(consisting)」を包含し、たとえば、Xを「備える」組成物は、排他的にXからなってもよく、または、付加的な何かを含んでもよい、たとえば、X+Y。
【0049】
数値xに関する「約(about)」という用語は、たとえば、x±10%を意味する。必要である場合、「約」という用語は省略されることができる。
【0050】
「実質的に(substantially)」という語は、「完全に(completely)」を排除せず、たとえば、Yが「実質的に無い(substantially free)」組成物は、Yが完全に無くてもよい。必要である場合、「実質的に」という語は、本発明の定義から省略されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明による単一分子スキャナのコンポーネントを示す図である。
【図2】本発明によるスキャナの例示的な光学経路を示す図である。
【図3】本発明によるスキャナと共に使用するための自動焦点メカニズムの例示的な光学経路を示す図である。
【図4】本発明によるスキャナの一部分の例示的な光学経路を示す図である。
【図5】本発明によるスキャナの例示的な光学経路を示す図である。
【図6】本発明によるスキャナと共に使用するための励起ビームメカニズムの例示的な光学経路を示す図である。
【図7】本発明によるスキャナと共に使用するためのフィルタリング装置の例示的な光学経路を示す図である。
【図8】正方形フラットトップ励起ビームの例示的なビーム強度プロファイルを示す図である。
【図9】本発明の実施形態による単一分子スキャナと共に使用するためのサンプル搭載プラットフォームを示す図である。
【図10】本発明の実施形態による単一分子スキャナを使用して取得された、単一水平サンプル位置における画像取込みの2つの部分を示す図である。左手画像は、画像シリーズが取得される前に1回焦点合わせされた画像取込みの部分を示す。右手画像は、本発明の実施形態による単一分子スキャナを使用して、100画像が収集された後の色素分子の光退色を示す。
【図11】図10の画像上のいくつかの任意に選択された位置上の強度値の時間トレースを示す図である。
【図12】5μm空間分解能を有する従来のスキャナを使用して取得された画像である。
【図13】130nm空間分解能を有する、本発明の実施形態による単一分子スキャナを使用して取得された画像である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、本発明の実施形態による単一分子スキャナのコンポーネントを示す。特に、図1の単一分子スキャナは、画像記憶、スケジューリング、画像タイリング、画像処理および機器制御のためのソフトウェア10、画像検出ユニット20、フィルターユニット30、乾式顕微鏡対物レンズ40、サンプル配置ユニット50、励起コンポーネント60ならびに自動焦点メカニズム70を含む。画像検出ユニット20、サンプル配置ユニット50、励起コンポーネント60および自動焦点メカニズム70は、ソフトウェア10によって制御される。画像スケジューリングについてのソフトウェア10の動作は、参照により組込まれる同時係属中の英国特許出願第GB0618133.3号に記載される。スキャナはさらに、制御ユニットによって取得されたデータを、磁気ディスクドライブなどの不揮発性メモリに記憶するよう構成された記憶ユニットを備える。
【0053】
図2から見られることができように、自動焦点メカニズム70は、スキャナの蛍光励起および検出ユニット60、20から別個のビーム経路を使用する。さらに、自動焦点、励起および検出ユニットは、全て異なる波長の放射を使用する。3つのビーム経路は全て、顕微鏡スライド80の表面に配置されたサンプルに衝当する前に、同じ乾式顕微鏡対物レンズ40を通過する。サンプルは、カバースリップによって覆われていない蛍光標識されたマイクロアレイを備える。蛍光標識されたマイクロアレイは、バイオポリマー、量子ドット標識またはインターカレーション色素に連結したCy3色素分子で染色した蛍光分子を含むことができる。乾式顕微鏡対物レンズは、0.4の値を超える開口数を有する。特に、顕微鏡対物レンズは、0.95のNAおよび50×の倍率を有する。
【0054】
顕微鏡対物レンズの開口数は、全体としてシステムにいくつかの影響を及ぼす。第1に、NAは、システムの回折限界を決定し、そのため、検出ユニットの画素分解能と組合せて最良の倍率を決定するのに使用されることができる。第2に、NAは、
【0055】
【数3】
【0056】
であるような光収集効率ηを決定する。この式は、乾式(すなわち、非液浸タイプ)光学部品について有効であり、それぞれ、NA=0.95の場合34%、NA=0.8の場合20%の収集効率をもたらす。どのレベルの光収集効率で十分であるかについての判定は、色素、光源、検出システムの雑音レベルなどの選択に依存する。ある場合には、考えられる最高のNAが必要であることになり、一方、他の場合(たとえば、生体分子が、2つ以上の蛍光標識で標識されるとき)には、低いNAで十分である可能性がある。
【0057】
励起のために使用されるビームは、2つの2倍周波数ダイオード励起連続波(cw)Nd:YAG励起レーザ64、65によって発生される。あるいは、ダイオードレーザ、他のダイオード励起固体レーザ、あるいはArイオンレーザ、Ar/KrイオンレーザまたはKrレーザなどのガスレーザが使用されることができる。2つのレーザは同じ波長を有する。レーザが偏光出力ビームを有し、色素分子が双極子として働くため、実質的に直交偏光を有する2つのレーザビームは、1つのビームに合成され、そのビームは、その後、励起波長を吸収することが可能なマイクロアレイ上の実質的に全ての色素分子が励起されることを確保するために使用される。励起レーザのうちの1つのビーム操向タワーは、レーザの偏光をpからsへ、または、その逆に変更するミラーの特定の配置を有する。2つの励起レーザビームは、偏光ビームスプリッタキューブ66を使用して合成され、個々のレーザビームのパワーのほぼ100%が、合成ビームに結合される。回折光学素子(DOE)67に基づくビーム整形モジュールは、図8に示すように正方形フラットトップ強度プロファイルを有するように、合成励起ビームを整形するため、ビームは実質的に非発散性である。合成励起ビームは、視野内で検出器上に結像されるサンプルエリアの照明が、完全にかつ実質的に均質であるように選択された焦点長を有するレンズ68を通過する。合成励起ビームは、555nmダイクロイックビームスプリッター62によって反射され、サンプル80に衝当する前に、506nmダイクロイックビームスプリッター90を真直ぐに通過する。蛍光色素によって放出されたビームは、その後、506nmダイクロイックビームスプリッター90および555nmダイクロイックビームスプリッター62を真直ぐに通過し、励起および自動焦点ビームの残りが検出ユニット20に達するのを防止するために532nmラマンフィルター22によってフィルタリングされ、検出ユニット20によって検出される。管レンズと組合されて、顕微鏡対物レンズは、蛍光検出ユニット20上でのサンプルの倍率を提供する。
【0058】
レーザ出力は、蛍光検出ユニット20によって、電気信号(TTLパルス)によって制御され、蛍光検出ユニット20は、次に、制御ユニット10によって制御される。あるいは、電気機械シャッター、電気光学シャッターまたは音響光学シャッターなどのシャッターメカニズムが使用されて、レーザビームを制御することができる。
【0059】
蛍光検出ユニット20は、複数の画素エレメントを有する検出器を含む。顕微鏡対物レンズの倍率で除算された各画素エレメントの直線寸法は、可視光についての顕微鏡対物レンズの回折限界分解能より小さい。検出器の選択された露出詳細についてのダークカウントおよび雑音レベルは、単一のまたは少数の蛍光分子または粒子の発光がバックグラウンドおよび雑音と区別されることができるようなものである。検出器は、CCDであり、好ましくはペルチェ冷却CCDなどの冷却CCDである。あるいは、検出器は、CMOS検出器、電子増倍CCDまたはインテンシファイドCCDを備えることができる。例示的な実施形態では、検出器は、−30℃まで冷却され、1392×1040画素を有するPhotometric CoolSnapHQ検出器(Photometric CoolSnapHQ detector)を備える。
【0060】
適した顕微鏡スライドホルダは図9に示される。顕微鏡スライド80上のサンプルは、カバースリップによって覆われず、ばね90によって基準面88に押付けられる。基準面88は、並進ステージユニット92に対して固定される。したがって、顕微鏡スライドの厚さ変動は、まるでスライドがステージ上に直に配置されたのと同じ程度に、顕微鏡光学部品を基準にしてサンプル位置に影響を及ぼさない。前表面特性だけがこのタイプのスライドホルダに関連するため、スライドのウェッジングも問題にならない。
【0061】
並進ステージユニット92は、顕微鏡対物レンズの光学軸に実質的の垂直である少なくとも2つの方向に移動可能である。並進ステージは、同時係属中の英国特許出願第0618133.3号に記載されるスケジューリングメカニズムが実施されることができるような速度で移動することができる。並進ステージユニット92は、光学軸に実質的に垂直にサンプルを配置するチルト調整部を含む。並進ステージは、また、光学軸に平行な方向に移動可能である。好ましくは、光学軸に平行な方向への並進ステージの移動範囲は400μmである。並進ステージユニット92は、顕微鏡対物レンズの倍率で除算された検出器の直線画素寸法に匹敵するか、または、それより優れた分解能を有する位置情報を制御ユニット10に提供する。例示的な実施形態は、マイクロポジショニングステージM−663およびM−665と組合せたPIFOC並進ステージを使用し、それら全てが、Physik Instumente(PI)によって製造される。
【0062】
図3から見られるように、自動焦点のために使用される2つの光ビーム172、174は、透過回折格子74を使用して、1つのレーザビーム170を多数のビームに分割することによって生成される。自動焦点のために使用されるビーム172、174は、顕微鏡スライド80上に投影される前に、506nmダイクロイックビームスプリッター90から反射される。レーザビーム172、174は、顕微鏡スライド80から反射される。反射された自動焦点ビームは、元の自動焦点ビームと同じ波長を有し、自動焦点ユニット70内の特に高速なCCDカメラ78(たとえば、フルフレーム転送時間8ms)上に結像される前に、506nmダイクロイックビームスプリッター90によって反射される。CCDカメラ78は、検出ユニット20内の蛍光検出に使用されるCCDカメラとは別個である。50%透過および50%反射を有するペリクルビームスプリッタ76が使用されて、検出可能なゴーストビームを生成することなく、出て行くビーム176、178から入ってくるビーム172、174を分離する。自動焦点メカニズム70の動作は、参照により本明細書に組込まれる同時係属中の英国特許出願第0618131.7号に記載される。
【0063】
制御ユニット10は、検出器、自動焦点システム、光源および並進ステージを制御するよう構成され、また、同時係属中の英国特許出願第0618133.3号に記載されるスケジューリングメカニズムに従って、いくつかのスレッドの並列実行を可能にするよう構成される。スキャナは、また、制御ユニットによって取得されたデータを、1GBを越えるデータを記憶することが可能な取外し可能なハードドライブに記憶するよう構成された記憶ユニットを含む。
【0064】
図10〜13は、本発明の例示的な実施形態の実験結果を示す。
【0065】
本発明の単一分子スキャナを使用して、本出願人は、単一色素分子からの発光を測定した。これは、図10および11によって立証された。図10の左側は、画像シリーズが取得される前に1回焦点合わせされた、単一水平サンプル位置における画像取込みの部分を示す。
【0066】
図10の右側は、それぞれ最大レーザパワーで100ms露出時間を使用して100画像が収集された後に、色素分子の光退色が起こることを示す。図11は、画像上のいくつかの任意に選択された位置上の強度値の時間トレースを示す。これは、退色が、スムーズなアナログ的遷移では起こらないが、色素分子が退色するときはいつでも、または、色素分子が元に戻る(ブリンキング)ときに、量子化ステップが存在することを示す。スキャナのデジタルレベルは、図11の水平線で示される。
【0067】
図12および13は、回折限界より優れた空間分解能を有するスキャナが、5μm空間分解能を有する従来のスキャナに比べて同様な希釈シリーズ実験からより多くの情報を引出すことを可能にすることを示す。特に、従来のスキャナの電子雑音は、低濃度の蛍光分子の検出感度を制限する。これは、この場合、信号と雑音を区別する方法が存在しないからである。一方、画素分解能が光学システムの回折限界より優れるとき、信号は、空間相関のために雑音と比較して目立つ(霧雨状ではなくドット)。その結果、単一分子が雑音から区別されることができ、真の「ゼロ」結果さえも取得されることができる。図12は、5μm空間分解能を有する従来のスキャナの結果を示し、図13は、130nm空間分解能を有する本発明の単一分子スキャナの結果を示す。
【0068】
したがって、本出願人が改良された単一分子スキャナを開発したことが明らかである。本発明が例によってだけ述べられたこと、また、本発明の精神および範囲内で、詳細の変更が行われることができることが当業者にとって明らかになるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一分子を撮像し、倍率を有するスキャナであって、光学軸を規定し、かつ、0.4以上の開口数を有する乾式顕微鏡対物レンズを備えるスキャナ。
【請求項2】
前記光学軸上にサンプルを保持するサンプルホルダと、
前記サンプルがスキャナの焦点面に配置されるように前記サンプルの相対位置およびスキャナの光学面を調整する焦点合わせメカニズムと、
励起ビームを放出し、前記サンプルの1つまたは複数の構成要素を励起して、蛍光発光を放出する光源と、
前記サンプルからの蛍光発光から前記励起ビームを分離する光学素子と、
前記サンプルからの蛍光発光を検出し、複数の画素エレメントを有する検出器であって、スキャナの倍率で除算された各画素エレメントの直線寸法は、可視光についての前記顕微鏡対物レンズの回折限界分解能より小さい、検出器と、
前記検出器、前記焦点合わせメカニズムおよび前記光源の1つまたは複数の要素を制御するよう構成された制御ユニットと、
を備える請求項1に記載のスキャナ。
【請求項3】
前記サンプルは蛍光標識されたマイクロアレイである請求項2に記載のスキャナ。
【請求項4】
前記サンプルは生体分析サンプルである請求項2に記載のスキャナ。
【請求項5】
前記サンプルは、蛍光分子または粒子を含む請求項3または4に記載のスキャナ。
【請求項6】
前記蛍光分子または粒子は、有機色素、無機色素、インターカレーション色素または修飾蛍光粒子の1つまたは複数を含む請求項5に記載のスキャナ。
【請求項7】
前記顕微鏡対物レンズは、0.6より大きな開口数を有する請求項1から6のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項8】
前記顕微鏡対物レンズは、0.8より大きな開口数を有する請求項1から7のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項9】
前記顕微鏡対物レンズは、0.6より大きいが1より小さい開口数を有する請求項1から8のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項10】
前記顕微鏡光学部品は、第1対物レンズおよび管レンズを備える無限補正された光学部品である請求項1から9のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項11】
スキャナの前記倍率は、前記管レンズと組合せた前記第1対物レンズによって提供される請求項10に記載のスキャナ。
【請求項12】
前記顕微鏡光学部品は、第1対物レンズを備える無限補正されていない顕微鏡対物レンズである請求項1から9のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項13】
前記顕微鏡光学部品の横倍率Mは、式
【数1】
を満たすように選択され、式中、Lは、直線寸法における検出器素子の物理的な画素サイズであって、レーリー基準でα=0.61、または、スパロー基準でα=0.47であり、λは光の波長であり、NAは前記光学部品の開口数であり、βは0.1<β<1であるように選択される請求項1から12のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項14】
前記検出器は、CCD、冷却CCD、ペルチェ冷却CCD、CMOS検出器、電子増倍CCDまたはインテンシファイドCCDを備える請求項2から13のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項15】
前記検出器の選択された露出詳細についてのダークカウントおよび雑音レベルは、少なくとも1つの蛍光分子からの発光がバックグラウンドと区別されることができるようなものである請求項2から14のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項16】
前記光学軸に実質的に垂直な平面内にある少なくとも2つの方向に移動可能な並進ステージをさらに備え、前記サンプルホルダは前記並進ステージ上に搭載される請求項2から15のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項17】
前記並進ステージは、スキャナの視野内の前記サンプルの部分を前記光学軸に実質的に垂直な平面内に配置するチルト調整部を備える請求項16に記載のスキャナ。
【請求項18】
前記並進ステージは、前記光学軸に実質的に垂直な方向に移動可能である請求項16または17に記載のスキャナ。
【請求項19】
前記対物レンズは、前記光学軸に実質的に垂直な方向に移動可能である請求項1から18のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項20】
前記制御ユニットは前記並進ステージを制御するよう構成され、前記並進ステージは前記制御ユニットに位置情報を提供する請求項16から18のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項21】
前記位置情報は、前記顕微鏡対物レンズの倍率で除算された前記検出器の直線画素寸法に匹敵するか、または、直線画素寸法より優れた分解能を有する請求項20に記載のスキャナ。
【請求項22】
前記サンプルホルダは、撮像される試験表面がそれに対して押付けられる基準表面を提供する請求項2から21のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項23】
前記光源は、少なくとも1つのレーザ、ダイオードレーザ、ダイオード励起固体レーザ(DPSS)またはガスレーザを備える請求項2から22のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項24】
前記検出器上に結像されるサンプルエリアの単位面積当たりの光子束は実質的に一定である請求項2から23のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項25】
照明は、前記検出器上に結像される前記サンプルエリアに制限される請求項24に記載のスキャナ。
【請求項26】
レーザビームをフラットトップ正方形ビームに整形するビーム整形モジュールをさらに備える請求項24に記載のスキャナ。
【請求項27】
焦点外れレンズをさらに備える請求項26に記載のスキャナ。
【請求項28】
前記レーザ放出は、前記蛍光発光の前記検出器から前記制御ユニットによって受取られた信号によって制御される請求項23に記載のスキャナ。
【請求項29】
前記レーザビームを制御するシャッターメカニズムをさらに備える請求項23に記載のスキャナ。
【請求項30】
前記シャッターメカニズムは、電気機械シャッター、電気光学シャッターまたは音響光学シャッターを備える請求項29に記載のスキャナ。
【請求項31】
前記サンプルからの前記蛍光発光から前記励起ビームを分離する前記光学素子は、1つまたは複数のフィルターおよび/またはダイクロイックビームスプリッターを備える請求項2から30のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項32】
前記制御ユニットは、いくつかのタスクの並列実行を可能にするよう構成される請求項2から31のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項33】
前記制御ユニットによって取得されたデータを不揮発性メモリに記憶するよう構成された記憶ユニットをさらに備える請求項2から32のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項34】
前記光源は、単一励起波長帯の光を供給し、前記検出器は、単一蛍光種の発光に関連する波長帯を検出するよう構成される請求項2から33のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項35】
波長選択器と組合された前記光源は、単一励起波長帯の光を供給し、前記検出器は、単一蛍光種の発光に関連する波長帯を検出するよう構成される請求項2から33のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項36】
前記光源は、複数の励起波長の光を放出し、前記検出器は、複数の蛍光種からの発光に関連する複数の波長帯を検出するよう構成される請求項2から33のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項37】
単一分子を撮像する方法であって、
請求項1から36のいずれかによるスキャナを設けるステップと、
前記スキャナの光学軸上にサンプルを保持するステップと、
前記スキャナの焦点面に前記サンプルを配置するステップと、
励起ビームを放出し、前記サンプルの1つまたは複数の構成要素を励起するステップであって、それにより、蛍光発光を放出する、励起するステップと、
前記サンプルからの蛍光発光から前記励起ビームを分離するステップと、
前記サンプルからの前記蛍光発光を検出するステップと、
制御ユニットを使用するステップであって、それにより、前記検出器、前記焦点合わせメカニズムおよび前記光源の1つまたは複数の要素を制御する、制御ユニットを使用するステップと。
を含む方法。
【請求項1】
単一分子を撮像し、倍率を有するスキャナであって、光学軸を規定し、かつ、0.4以上の開口数を有する乾式顕微鏡対物レンズを備えるスキャナ。
【請求項2】
前記光学軸上にサンプルを保持するサンプルホルダと、
前記サンプルがスキャナの焦点面に配置されるように前記サンプルの相対位置およびスキャナの光学面を調整する焦点合わせメカニズムと、
励起ビームを放出し、前記サンプルの1つまたは複数の構成要素を励起して、蛍光発光を放出する光源と、
前記サンプルからの蛍光発光から前記励起ビームを分離する光学素子と、
前記サンプルからの蛍光発光を検出し、複数の画素エレメントを有する検出器であって、スキャナの倍率で除算された各画素エレメントの直線寸法は、可視光についての前記顕微鏡対物レンズの回折限界分解能より小さい、検出器と、
前記検出器、前記焦点合わせメカニズムおよび前記光源の1つまたは複数の要素を制御するよう構成された制御ユニットと、
を備える請求項1に記載のスキャナ。
【請求項3】
前記サンプルは蛍光標識されたマイクロアレイである請求項2に記載のスキャナ。
【請求項4】
前記サンプルは生体分析サンプルである請求項2に記載のスキャナ。
【請求項5】
前記サンプルは、蛍光分子または粒子を含む請求項3または4に記載のスキャナ。
【請求項6】
前記蛍光分子または粒子は、有機色素、無機色素、インターカレーション色素または修飾蛍光粒子の1つまたは複数を含む請求項5に記載のスキャナ。
【請求項7】
前記顕微鏡対物レンズは、0.6より大きな開口数を有する請求項1から6のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項8】
前記顕微鏡対物レンズは、0.8より大きな開口数を有する請求項1から7のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項9】
前記顕微鏡対物レンズは、0.6より大きいが1より小さい開口数を有する請求項1から8のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項10】
前記顕微鏡光学部品は、第1対物レンズおよび管レンズを備える無限補正された光学部品である請求項1から9のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項11】
スキャナの前記倍率は、前記管レンズと組合せた前記第1対物レンズによって提供される請求項10に記載のスキャナ。
【請求項12】
前記顕微鏡光学部品は、第1対物レンズを備える無限補正されていない顕微鏡対物レンズである請求項1から9のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項13】
前記顕微鏡光学部品の横倍率Mは、式
【数1】
を満たすように選択され、式中、Lは、直線寸法における検出器素子の物理的な画素サイズであって、レーリー基準でα=0.61、または、スパロー基準でα=0.47であり、λは光の波長であり、NAは前記光学部品の開口数であり、βは0.1<β<1であるように選択される請求項1から12のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項14】
前記検出器は、CCD、冷却CCD、ペルチェ冷却CCD、CMOS検出器、電子増倍CCDまたはインテンシファイドCCDを備える請求項2から13のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項15】
前記検出器の選択された露出詳細についてのダークカウントおよび雑音レベルは、少なくとも1つの蛍光分子からの発光がバックグラウンドと区別されることができるようなものである請求項2から14のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項16】
前記光学軸に実質的に垂直な平面内にある少なくとも2つの方向に移動可能な並進ステージをさらに備え、前記サンプルホルダは前記並進ステージ上に搭載される請求項2から15のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項17】
前記並進ステージは、スキャナの視野内の前記サンプルの部分を前記光学軸に実質的に垂直な平面内に配置するチルト調整部を備える請求項16に記載のスキャナ。
【請求項18】
前記並進ステージは、前記光学軸に実質的に垂直な方向に移動可能である請求項16または17に記載のスキャナ。
【請求項19】
前記対物レンズは、前記光学軸に実質的に垂直な方向に移動可能である請求項1から18のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項20】
前記制御ユニットは前記並進ステージを制御するよう構成され、前記並進ステージは前記制御ユニットに位置情報を提供する請求項16から18のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項21】
前記位置情報は、前記顕微鏡対物レンズの倍率で除算された前記検出器の直線画素寸法に匹敵するか、または、直線画素寸法より優れた分解能を有する請求項20に記載のスキャナ。
【請求項22】
前記サンプルホルダは、撮像される試験表面がそれに対して押付けられる基準表面を提供する請求項2から21のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項23】
前記光源は、少なくとも1つのレーザ、ダイオードレーザ、ダイオード励起固体レーザ(DPSS)またはガスレーザを備える請求項2から22のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項24】
前記検出器上に結像されるサンプルエリアの単位面積当たりの光子束は実質的に一定である請求項2から23のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項25】
照明は、前記検出器上に結像される前記サンプルエリアに制限される請求項24に記載のスキャナ。
【請求項26】
レーザビームをフラットトップ正方形ビームに整形するビーム整形モジュールをさらに備える請求項24に記載のスキャナ。
【請求項27】
焦点外れレンズをさらに備える請求項26に記載のスキャナ。
【請求項28】
前記レーザ放出は、前記蛍光発光の前記検出器から前記制御ユニットによって受取られた信号によって制御される請求項23に記載のスキャナ。
【請求項29】
前記レーザビームを制御するシャッターメカニズムをさらに備える請求項23に記載のスキャナ。
【請求項30】
前記シャッターメカニズムは、電気機械シャッター、電気光学シャッターまたは音響光学シャッターを備える請求項29に記載のスキャナ。
【請求項31】
前記サンプルからの前記蛍光発光から前記励起ビームを分離する前記光学素子は、1つまたは複数のフィルターおよび/またはダイクロイックビームスプリッターを備える請求項2から30のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項32】
前記制御ユニットは、いくつかのタスクの並列実行を可能にするよう構成される請求項2から31のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項33】
前記制御ユニットによって取得されたデータを不揮発性メモリに記憶するよう構成された記憶ユニットをさらに備える請求項2から32のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項34】
前記光源は、単一励起波長帯の光を供給し、前記検出器は、単一蛍光種の発光に関連する波長帯を検出するよう構成される請求項2から33のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項35】
波長選択器と組合された前記光源は、単一励起波長帯の光を供給し、前記検出器は、単一蛍光種の発光に関連する波長帯を検出するよう構成される請求項2から33のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項36】
前記光源は、複数の励起波長の光を放出し、前記検出器は、複数の蛍光種からの発光に関連する複数の波長帯を検出するよう構成される請求項2から33のいずれかに記載のスキャナ。
【請求項37】
単一分子を撮像する方法であって、
請求項1から36のいずれかによるスキャナを設けるステップと、
前記スキャナの光学軸上にサンプルを保持するステップと、
前記スキャナの焦点面に前記サンプルを配置するステップと、
励起ビームを放出し、前記サンプルの1つまたは複数の構成要素を励起するステップであって、それにより、蛍光発光を放出する、励起するステップと、
前記サンプルからの蛍光発光から前記励起ビームを分離するステップと、
前記サンプルからの前記蛍光発光を検出するステップと、
制御ユニットを使用するステップであって、それにより、前記検出器、前記焦点合わせメカニズムおよび前記光源の1つまたは複数の要素を制御する、制御ユニットを使用するステップと。
を含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2010−503847(P2010−503847A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527894(P2009−527894)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003506
【国際公開番号】WO2008/032096
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(506128466)オックスフォード・ジーン・テクノロジー・アイピー・リミテッド (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003506
【国際公開番号】WO2008/032096
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(506128466)オックスフォード・ジーン・テクノロジー・アイピー・リミテッド (7)
【Fターム(参考)】
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