単結晶引上げ装置
【課題】単結晶引上げ装置において、ルツボからの湯漏れを高感度かつ高精度に検出できる単結晶引上げ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】原料融液を収容するルツボと、前記原料融液を加熱するヒータを格納するメインチャンバーと、該メインチャンバーの底部に設置され前記ルツボから漏れてくる融液を収容する湯漏れ受け皿と、該湯漏れ受け皿に配設され湯漏れを検出する湯漏れ検出器とを具備したチョクラルスキー法によって単結晶インゴットを製造する単結晶引上げ装置であって、少なくとも、前記湯漏れ検出器は、前記湯漏れ受け皿の上面に敷設された金属製部材と、該金属製部材の電気抵抗を測定する抵抗測定手段とを有し、該抵抗測定手段が測定した前記金属製部材の電気抵抗の変化により湯漏れを検出するものである単結晶引上げ装置。
【解決手段】原料融液を収容するルツボと、前記原料融液を加熱するヒータを格納するメインチャンバーと、該メインチャンバーの底部に設置され前記ルツボから漏れてくる融液を収容する湯漏れ受け皿と、該湯漏れ受け皿に配設され湯漏れを検出する湯漏れ検出器とを具備したチョクラルスキー法によって単結晶インゴットを製造する単結晶引上げ装置であって、少なくとも、前記湯漏れ検出器は、前記湯漏れ受け皿の上面に敷設された金属製部材と、該金属製部材の電気抵抗を測定する抵抗測定手段とを有し、該抵抗測定手段が測定した前記金属製部材の電気抵抗の変化により湯漏れを検出するものである単結晶引上げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョクラルスキー法により、単結晶棒を成長させる単結晶引上げ装置の湯漏れ検出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体シリコン単結晶棒製造に用いられる従来のチョクラルスキー法による単結晶引上げ装置の一例を図4により説明する。
図4に示すように、単結晶引上げ装置101は、メインチャンバー102と、メインチャンバー102中に設けられたルツボ103と、ルツボ103の周囲に配置されたヒータ106と、ルツボ103を回転させるルツボ保持軸110及びその回転機構(不図示)と、シリコンの種結晶113を保持するシードチャック114と、シードチャック114を引上げる引上げワイヤー115と、引上げワイヤー115を回転及び巻き取る巻き取り機構(不図示)を備えて構成されている。ルツボ103は、その内側の原料シリコン融液(湯)105を収容する側には石英ルツボ103aが設けられ、その外側には黒鉛ルツボ103bが設けられている。また、ヒータ106の外側周囲にはヒータ断熱材107が設置され、ルツボ103の下方には断熱板104が配置されている。
【0003】
次に、上記の単結晶引上げ装置101による単結晶育成方法について説明する。まず、ルツボ103内でシリコンの高純度多結晶原料を融点(約1420℃)以上に加熱して融解する。そして、引上げワイヤー115を巻き出すことにより湯面の略中心部に種結晶113の先端を接触または浸漬させる。その後、ルツボ保持軸110を適宜の方向に回転させるとともに、引上げワイヤー115を回転させながら巻き取り、種結晶113を引上げることにより、単結晶育成が開始される。以後、引上げ速度と温度を適切に調節することにより略円柱形状の単結晶112を得ることができる。
【0004】
上記した単結晶引上げ装置101における石英ルツボ103aおよび黒鉛ルツボ103bは、共に高い耐熱性を有しているが、石英ルツボ103aは、耐衝撃性に乏しいという欠点がある。そこで、単結晶引上げに際し、多結晶原料をルツボ103に投入すると、その衝撃によって石英ルツボ103aに亀裂が入ることがあり、そこから融液105が漏れる恐れがある。また、多結晶原料投入時にルツボ103内の湯がルツボ103の周囲に飛散することもある。さらに、使用により徐々に石英ルツボ103aが劣化したり、引上げ中の単結晶112が落下した場合には、石英ルツボ103a及び黒鉛ルツボ103bが破壊されて湯のほぼ全量が流出してしまう可能性もある。
【0005】
このように、高温の融液105がルツボ103外へ流出、飛散すると、ルツボ103の周りからメインチャンバー102の底部に至り、メインチャンバー102の底部やヒータ電極あるいはルツボ保持軸110等の金属部やルツボ駆動装置、下部冷却水配管等を侵食することになる。特に高温のシリコンは反応性が高く、金属に対する侵食作用が強いため、冷却水配管等が侵食されやすい。
【0006】
そこで、図4に示す装置では、全ての原料融液を収容することができる内容積を有する湯漏れ受け皿117をメインチャンバー102の底部に設置して、さらに、その湯漏れ受け皿117に、測定温度の変化により湯漏れを検出する湯漏れ検出器118を配設して、その上部の断熱板104に穴を開けて、湯漏れ検出器118の温度測定位置に融液が直接到達するような誘導構造116を設けている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−215126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような湯漏れ検出器により、大量の湯漏れが発生した場合には正しく異常を感知することができるようになったが、比較的少量の湯漏れでは、漏れた融液による温度上昇が少ないために検出不良を起こし易いことが判ってきた。また、上記のような湯漏れ検出のための構造を設けても、予期せぬ位置から湯漏れが生じた場合には、湯漏れの検出が遅れてしまうという問題があった。さらに、装置の大型化に伴い炉内底部のあるポイントのみの温度変化を測定する湯漏れ検出器では、炉内底部に対する検出範囲が限定される。しかし、装置の大型化で炉内底部の面積が増大しているにもかかわらず、検出範囲は変わらないので湯漏れを検出できる確率は低下している。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、単結晶引上げ装置において、ルツボからの湯漏れを高感度かつ高精度に検出できる単結晶引上げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも、原料融液を収容するルツボと、前記原料融液を加熱するヒータを格納するメインチャンバーと、該メインチャンバーの底部に設置され前記ルツボから漏れてくる融液を収容する湯漏れ受け皿と、該湯漏れ受け皿に配設され湯漏れを検出する湯漏れ検出器とを具備したチョクラルスキー法によって単結晶インゴットを製造する単結晶引上げ装置であって、少なくとも、前記湯漏れ検出器は、前記湯漏れ受け皿の上面に敷設された金属製部材と、該金属製部材の電気抵抗を測定する抵抗測定手段とを有し、該抵抗測定手段が測定した前記金属製部材の電気抵抗の変化により湯漏れを検出するものであることを特徴とする単結晶引上げ装置を提供する。
【0011】
このように、単結晶引上げ装置において、湯漏れ検出器は、湯漏れ受け皿の上面に敷設された金属製部材と、該金属製部材の電気抵抗(以下、単に抵抗ともいう)を測定する抵抗測定手段とを有し、抵抗測定手段が測定した金属製部材の電気抵抗の変化により湯漏れを検出するものであれば、湯漏れした融液の温度により金属製部材の抵抗が変化して、これを測定してその変化により湯漏れを検出することができるため、精度良く湯漏れを検出することができる。また、金属製部材を敷設するため、大型の装置であっても、装置に合わせた形状、大きさ等で金属製部材を敷設することができ、大型の装置でも湯漏れ検出の感度が落ちることを簡単かつ安価に防止できる装置となる。
【0012】
このとき、前記金属製部材の材質は、前記原料融液となる原料の融点より高い融点を有し、かつ抵抗率が5×10−8Ω・m以上で、温度係数が5×10−3/℃以上の金属とすることができる。
金属製部材の材質が、原料融液となる原料の融点より高い融点を有し、かつ抵抗率が5×10−8Ω・m以上で、温度係数が5×10−3/℃以上の金属であれば、金属製部材が湯漏れした原料融液と接触しても溶けないため複数回使用できてより安価にでき、また、湯漏れした融液による温度変化によって抵抗も大きく変化するため、少量の湯漏れでもより感度良く検出することができる装置となる。
【0013】
このとき、前記金属製部材の材質は、タングステン又はニッケルであることが好ましい。
このように、金属製部材の材質は、タングステン又はニッケルであれば、融点が高くかつ安価に感度良く湯漏れを検出することができる装置となる。
【0014】
また、前記金属製部材の材質は、前記原料融液となる原料の融点より低い融点を有する金属で、前記金属製部材の断線による前記抵抗測定手段の測定した電気抵抗の変化により湯漏れを検出するものとすることができる。
このように、金属製部材の材質は、原料融液となる原料の融点より低い融点を有する金属で、金属製部材の断線による抵抗測定手段の測定した電気抵抗の変化により湯漏れを検出するものであれば、湯漏れした原料融液により金属製部材が溶けて断線するため、抵抗が大きく変化して、より感度良く湯漏れを検出することができる装置となる。
【0015】
このとき、前記金属製部材の材質は、銅又はアルミニウムであることが好ましい。
このときの金属製部材の材質は、銅又はアルミニウムであれば、融点が低くかつより感度良く湯漏れを検出することができる装置となる。
【0016】
このとき、前記金属製部材は、金属製ワイヤーであることが好ましい。
このように、金属製部材が金属製ワイヤーであれば、多様な形状での敷設も容易で、温度による抵抗の変化も検出しやすい装置となる。
【0017】
このとき、前記金属製ワイヤーは、前記湯漏れ受け皿の上面に格子状に敷設されたものであることが好ましい。
このように、金属製ワイヤーは、湯漏れ受け皿の上面に格子状に敷設されたものであれば、湯漏れを精度良く検出でき、さらには、抵抗が変化した金属製ワイヤーの位置によって、湯漏れした位置も詳細に特定することができる装置となる。
【0018】
このとき、前記金属製ワイヤーは、前記湯漏れ受け皿の上面に30cm以下の間隔の格子状に敷設されたものであることが好ましい。
このように、金属製ワイヤーは、湯漏れ受け皿の上面に30cm以下の間隔の格子状に敷設されたものであれば、少量の融液が漏れた場合でも湯漏れを検出でき、より高感度、高精度に湯漏れを検出できる装置となる。
【0019】
このとき、前記金属製ワイヤーは、個々のワイヤーを前記湯漏れ受け皿の上面に折り返し方式、又は、単線方式で敷設して、全体で格子状に敷設されたものであることが好ましい。
このように、金属製ワイヤーが折り返し方式で格子状に敷設されたものであれば、その抵抗を測定するための抵抗測定手段を簡易にでき、また、金属製ワイヤーが単線方式で格子状に敷設されたものであれば、金属製ワイヤーの敷設が容易な装置となる。
【0020】
このとき、前記抵抗測定手段の前記金属製部材の電気抵抗の測定は、定電流式又は定電圧式で測定するものであることが好ましい。
このように、抵抗測定手段の金属製部材の電気抵抗の測定は、定電流式又は定電圧式で測定するものであれば、金属製部材の抵抗の変化をより感度良く測定することができ、より高感度な湯漏れ検出ができる装置となる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、例えば大型の単結晶引上げ装置においても、ルツボからの少量の湯漏れでも、湯漏れ検出器により高感度、高精度に検出することができる装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の単結晶引上げ装置の実施態様の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様の一例を示す上面概略図である。
【図3】単結晶引上げ装置の炉内底部の操業中の温度を示すグラフである。
【図4】従来の単結晶引上げ装置を示す概略図である。
【図5】金属の抵抗率と温度の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様の他の一例を示す上面概略図である。
【図7】(a)実施例1における本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様を示す上面概略図及び、(b)当該配設態様の装置で操業を行った際の金属製ワイヤーの電流の測定結果を示すグラフである。
【図8】(a)実施例2における本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様を示す上面概略図及び、(b)当該配設態様の装置で操業を行った際の金属製ワイヤーの電流の測定結果を示すグラフである。
【図9】本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様の他の一例を示す上面概略図である。
【図10】(a)実施例3における本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様を示す上面概略図及び、(b)当該配設態様の装置で操業を行った際の金属製ワイヤーの電圧の測定結果を示すグラフである。
【図11】本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様の他の一例を示す上面概略図である。
【図12】(a)実施例4における本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様を示す上面概略図及び、(b)当該配設態様の装置で操業を行った際の金属製ワイヤーの電圧の測定結果を示すグラフである。
【図13】本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様の他の一例を示す上面概略図である。
【図14】(a)実施例5における本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様を示す上面概略図及び、(b)当該配設態様の装置で操業を行った際の金属製ワイヤーの電流の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、本発明の単結晶引上げ装置の実施態様の一例を示す概略図である。図2、6、9、11、13は、本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様の一例を示す上面概略図である。図3は、単結晶引上げ装置の炉内底部の操業中の温度を示すグラフである。図5は、温度による金属の抵抗率の変化を示すグラフである。
【0024】
図1に示す本発明の単結晶引上げ装置11は、チョクラルスキー法により、ルツボ13内の原料融液15にシードチャック24に保持された種結晶23を浸漬させて、その後引上げワイヤー25により引き上げながら単結晶22を育成する装置である。
【0025】
このような本発明の単結晶引上げ装置11は、メインチャンバー12内に原料融液15を収容するルツボ13が設けられ、原料融液15を加熱するヒータ26と、ルツボ13を回転昇降動させるルツボ保持軸10及びその回転機構(不図示)を具備している。
ルツボ13は、その内側の原料融液(湯)15を収容する側には石英ルツボ13aが設けられ、その外側にはこれを保護する黒鉛ルツボ13bが設けられている。また、ルツボ13の外周には、ヒータ電極20で支持されたヒータ26が、ヒータ26の外側周囲にはヒータ26からの熱がメインチャンバー12内壁に直接輻射されるのを防止するためのヒータ断熱材19が配置されている。
【0026】
そして、メインチャンバー12の底部の内壁面に接して湯漏れ受け皿17が設置されている。この湯漏れ受け皿17をメインチャンバー12底部に嵌め込むことによって湯漏れ受け皿17はメインチャンバー12の底部内壁面のほぼ全面に密着する。また、湯漏れ受け皿17とルツボ13の間には、例えばCIP材(等方性黒鉛)で成形断熱材を挟むように構成した3層構造の断熱板14を配置することもできる。
【0027】
そして、湯漏れ受け皿17に配設される本発明の湯漏れ検出器18は、湯漏れ受け皿17の上面に敷設された金属製部材16と、金属製部材16の抵抗を測定する抵抗測定手段21とを有し、抵抗測定手段21が測定した金属製部材16の抵抗の変化により湯漏れを検出するものである。
湯漏れ受け皿17に敷設された金属製部材16に漏れた原料融液15が触れると、金属製部材16の抵抗が変化し、この変化により湯漏れを容易に検出することができる。金属製部材16を敷設するのみなので、設置も容易で、形状等も多様に敷設することができ、単結晶引上げ装置を大型化しても、簡易に湯漏れ検出の精度が落ちないようにすることができ、また、炉内構造に合わせて金属製部材16を敷設することができる装置となる。
【0028】
この金属製部材16の材質としては、原料融液15となる原料の融点(原料がシリコンの場合は約1420℃)より高い融点を有し、かつ温度による抵抗率の変化が大きい金属が本発明で用いるのに好適であり、具体的には抵抗率5×10−8Ω・m以上で、温度係数が5×10−3/℃以上の金属が望ましく、例えばタングステン又はニッケルが好ましい。
金属の抵抗率は、ρ(T)=ρ(T0){1+α(T−T0)}、α:抵抗率の温度係数、ρ:抵抗率、で表すことができ、上記のような金属であれば、温度の変化に対して検出される抵抗率の変化が大きく、湯漏れ検出の閾値の設定が容易である。また、金属製部材16は、湯漏れ受け皿17を清掃する時等は外す必要があるが、原料融液15より融点が高いタングステンやニッケルを使用した金属製部材16であれば、操業中に劣化をすることも少なく、繰り返しの使用が可能で安価な装置となる。
【0029】
また、一方で、金属製部材16の材質として、原料融液15となる原料の融点より低い融点を有する金属を用い、湯漏れに基づく金属製部材16の断線による抵抗測定手段21の測定した抵抗の変化により湯漏れを検出することも好ましく、このような金属として、例えば銅又はアルミニウムが好ましい。
金属製部材16が漏れた原料融液15の温度で溶けて断線することで、測定する抵抗は大きく変化するため、明確に湯漏れを検出することができる。なお、このときの金属として、湯漏れ以外の要因で断線しないように、図3に示すように、炉内底部の最高温度よりは融点が高い金属であることが必要である。従って400〜1420℃の範囲内の融点を有する金属であればよく、銅又はアルミニウムが好適である。
【0030】
上記した金属製部材16の材質の例として挙げたタングステン、ニッケル、銅、アルミニウムの特性を表1及び図5に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1に示すように、タングステン、ニッケルは、融点が1420℃より高いため原料融液15の温度では溶けず、さらには、抵抗率、温度係数が大きいことが分かる。一方、銅、アルミニウムは、融点が1420℃より低いため、シリコン等の原料融液15の温度で溶けてしまうことが分かる。図5に示すように、タングステン、ニッケルは、抵抗率、温度係数が本発明に好適な基準より大きく温度に依存した抵抗率変化が大きいことが分かる。一方、銅、アルミニウムは、抵抗率、温度係数が本発明に好適な基準より小さいが、その融点は400〜1420℃の範囲内であるため、断線による湯漏れ検出には好適な金属である。
また、上記の金属の中でもタングステン及びアルミニウムは、炉内への汚染の心配もほとんど無く、特に好ましい。
【0033】
このとき、金属製部材16の形状としては、特に限定されず、円板状等にすることができるが、例えば図2、6、9、11、13に示すような金属製ワイヤー16’であることが好ましい。
金属製ワイヤー16’であれば、敷設も容易で、敷設範囲、敷設形状(パターン)等も比較的自由であり、温度による抵抗の変化も高感度に検出することができる。
【0034】
また、図2、6、9、11、13に示すように、金属製ワイヤー16’は、湯漏れ受け皿17上面に格子状に敷設するものであることが好ましい。この場合、金属製ワイヤー16’は4本以上あれば格子状に敷設することができる。
このように、金属製ワイヤー16’が格子状に敷設されたものであれば、湯漏れ受け皿17上面全体を湯漏れ検出できるように効率的に敷設でき、また、抵抗の変化が生じた金属製ワイヤー16’(ワイヤー番号H1−4、V1−4)の配置によって、湯漏れ位置を容易に特定することができ、対処の緊急性の判断も可能になる。
なお、金属製ワイヤー16’を敷設する場合には、図2、6、9、11、13に示すように、湯漏れ受け皿17の上面で、ルツボ軸10やヒータ電極20のメインチャンバー12下部から炉内へ突き出る部分を迂回しながら敷設する。
【0035】
このとき、金属製ワイヤー16’は、湯漏れ受け皿17上面に30cm以下の間隔の格子状に敷設するものであることが好ましい。
30cm以下の間隔であれば、約1.0kgの原料融液(Si)が漏れた場合に相当する範囲を確実に検出でき、装置が大型化しても感度を落とすことなく湯漏れを検出することができる。
また、漏れた原料融液15が湯漏れ受け皿17の特定部分に誘導される構造の炉内構造物を持つ装置であれば、その漏れた原料融液15が誘導される部分に当たる位置の金属製ワイヤー16’の敷設間隔を短くする事で、検出感度をさらに向上させる事ができる。
【0036】
金属製ワイヤー16’は、個々のワイヤーを湯漏れ受け皿17の上面に折り返し方式(図6、9)で、又は、単線方式(図2、11、13)で敷設して、全体として格子状に敷設されたものであることが好ましい。それぞれのワイヤーを単線で敷設する際には、例えば、金属製ワイヤー16’を直線的に敷設してメインチャンバー12の両端から金属製ワイヤー16’を引き出し、同様に敷設間隔を開けて他の金属製ワイヤー16’を敷設できる。また、それぞれのワイヤーを折り返して敷設する際には、例えば、金属製ワイヤー16’をメインチャンバー12内に入線し、湯漏れ受け皿17の反対側まで敷設した後に、敷設間隔を空けて再び金属製ワイヤー16’の入線方向に折り返してメインチャンバー12内から引き出すことで敷設できる。これらの場合、メインチャンバー12の外で予め格子状に成形し、その後当該成形した金属製ワイヤー16’を、一括で敷設することもできる。
単線であれば、炉内の金属製ワイヤー16’の敷設は直線状に敷設するだけなので、敷設が容易である。また、折り返して敷設するものであれば、抵抗測定するための外部の検出回路の回路数が少なくて済み、一回折り返しの場合は、検出回路は単線に比べて半分で実施可能である。また、このとき金属製ワイヤー16’を2回以上折り返して敷設することもできる。
【0037】
また、上記のように、複数の金属製ワイヤー16’を敷設して、それぞれの抵抗を測定することで、炉内温度の変化の場合は、すべての金属製ワイヤー16’の抵抗が変化し、一方、湯漏れした融液による温度変化の場合は、金属製ワイヤー16’の中でも、融液と接触したものと接触していないものとの抵抗の変化が異なるため、この変化率を比較すれば、湯漏れの検出がより確実にでき、高精度の湯漏れ検出を行うことができる。
なお、上記のような本発明の金属製ワイヤー16’は、格子状以外にも、並列状、渦巻き状、蛇行、ジグザグ状等にして敷設することもできる。
【0038】
また、抵抗測定手段21の金属製部材16の抵抗の測定は、定電流式(図9、11)又は定電圧式(図6、13)で測定するものであることが好ましい。この場合、定電流式では、金属製ワイヤー16’に印加される電圧を測定して抵抗変化を求め、定電圧式では金属製ワイヤー16’に流れる電流を測定して抵抗変化を求める。
このような方法で抵抗を測定することで、抵抗の変化を明確に測定することができ、高精度な湯漏れ検出が可能な装置となる。なお、比較的回路を構成しやすいのは定電圧式である。
【0039】
以上のような本発明の単結晶引上げ装置によれば、単結晶の製造において、わずかな湯漏れでも高感度に検出することができ、安全で効率的な単結晶製造を実施することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示すような本発明の単結晶引上げ装置11を用いてルツボ13中にシリコン融液を保持させた。この際、図6に示すように、湯漏れ検出器18の金属製ワイヤー16’は、湯漏れ受け皿17上面に折り返し方式で格子状に敷設し、抵抗測定手段21により抵抗を定電圧式で測定した。金属製ワイヤー16’の材質はタングステンとした。なお、湯漏れ検出の閾値は、1000℃相当の抵抗の時に示す電流の値とした。
この際、図7(a)に示すように、少量のSi融液を故意に漏らし、ワイヤー番号H3−H4とV3−V4の交点に落下させた。
【0041】
図7(b)に、このとき測定された電流を示す。図7(b)に示すように、ワイヤー番号H3−H4とV3−V4の電流が大きく変化しているため、当該金属製ワイヤー16’の抵抗が変化していることが分かる。その他のワイヤー番号の金属製ワイヤー16’の測定された電流は変化は見られない。この結果より、湯漏れが発生し、ワイヤー番号H3−H4とV3−V4の交点に漏れた融液が落下したことが分かる。
【0042】
(実施例2)
図1に示すような本発明の単結晶引上げ装置11を用いてルツボ13中にシリコン融液を保持させた。この際、図6に示すように、湯漏れ検出器18の金属製ワイヤー16’は、湯漏れ受け皿17上面に折り返し方式で格子状に敷設し、抵抗測定手段21により抵抗を定電圧式で測定した。金属製ワイヤー16’の材質はアルミニウムとした。
この際、図8(a)に示すように、少量のSi融液を故意に漏らし、ワイヤー番号H3−H4とV3−V4の交点に落下させた。
【0043】
図8(b)に、このとき測定された電流を示す。図8(b)に示すように、ワイヤー番号H3−H4とV3−V4の電流が大きく変化し、電流が0になっているため、当該金属製ワイヤー16’の抵抗が変化して、その後断線していることが分かる。その他のワイヤー番号の金属製ワイヤー16’の測定された電流は変化は見られない。この結果より、湯漏れが発生し、ワイヤー番号H3−H4とV3−V4の交点に漏れた融液が落下したことが分かる。
【0044】
(実施例3)
図1に示すような本発明の単結晶引上げ装置11を用いてルツボ13中にシリコン融液を保持させた。この際、図9に示すように、湯漏れ検出器18の金属製ワイヤー16’は、湯漏れ受け皿17上面に折り返し方式で格子状に敷設し、抵抗測定手段21により抵抗を定電流式で測定した。金属製ワイヤー16’の材質はタングステンとした。なお、湯漏れ検出の閾値は、1000℃相当の抵抗の時に示す電圧の値とした。
この際、図10(a)に示すように、少量のSi融液を故意に漏らし、ワイヤー番号H3−H4とV3−V4の交点に落下させた。
【0045】
図10(b)に、このとき測定された電圧を示す。図10(b)に示すように、ワイヤー番号H3−H4とV3−V4の電圧が大きく変化しているため、当該金属製ワイヤー16’の抵抗が変化していることが分かる。その他のワイヤー番号の金属製ワイヤー16’の測定された電圧は変化は見られない。この結果より、湯漏れが発生し、ワイヤー番号H3−H4とV3−V4の交点に漏れた融液が落下したことが分かる。
【0046】
(実施例4)
図1に示すような本発明の単結晶引上げ装置11を用いてルツボ13中にシリコン融液を保持させた。この際、図11に示すように、湯漏れ検出器18の金属製ワイヤー16’は、湯漏れ受け皿17上面に単線方式で格子状に敷設し、抵抗測定手段21により抵抗を定電流式で測定した。金属製ワイヤー16’の材質はタングステンとした。なお、湯漏れ検出の閾値は、1000℃相当の抵抗の時に示す電圧の値とした。
この際、図12(a)に示すように、少量のSi融液を故意に漏らし、ワイヤー番号H4とV3の交点に落下させた。
【0047】
図12(b)に、このとき測定された電圧を示す。図12(b)に示すように、ワイヤー番号H4とV3の電圧が大きく変化しているため、当該金属製ワイヤー16’の抵抗が変化していることが分かる。その他のワイヤー番号の金属製ワイヤー16’の測定された電圧は変化は見られない。この結果より、湯漏れが発生し、ワイヤー番号H4とV3の交点に漏れた融液が落下したことが分かる。
【0048】
(実施例5)
図1に示すような本発明の単結晶引上げ装置11を用いてルツボ13中にシリコン融液を保持させた。この際、図13に示すように、湯漏れ検出器18の金属製ワイヤー16’は、湯漏れ受け皿17上面に単線方式で格子状に敷設し、抵抗測定手段21により抵抗を定電圧式で測定した。金属製ワイヤー16’の材質はタングステンとした。なお、湯漏れ検出の閾値は、1000℃相当の抵抗の時に示す電流の値とした。
この際、図14(a)に示すように、少量のSi融液を故意に漏らし、ワイヤー番号H4とV3の交点に落下させた。
【0049】
図14(b)に、このとき測定された電流を示す。図14(b)に示すように、ワイヤー番号H4とV3の電流が大きく変化しているため、当該金属製ワイヤー16’の抵抗が変化していることが分かる。その他のワイヤー番号の金属製ワイヤー16’の測定された電流は変化は見られない。この結果より、湯漏れが発生し、ワイヤー番号H4とV3の交点に漏れた融液が落下したことが分かる。
【0050】
上記のように、本発明の単結晶引上げ装置であれば、高感度、高精度に湯漏れを検出できることが分かる。また、金属製ワイヤーの断線による抵抗変化で湯漏れを検出する場合は、湯漏れが少量でも断線さえ発生すれば検出することができ、高感度であった。一方、融点の高いタングステンを用いた金属製ワイヤーは、上記の湯漏れ検出後にも、複数回の製造において用いることができ、より安価な装置にできた。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0052】
10…ルツボ保持軸、 11…単結晶引上げ装置、 12…メインチャンバー、
13…ルツボ、 13a…石英ルツボ、 13b…黒鉛ルツボ、 14…断熱板、
15…融液、 16…金属製部材、 16’…金属製ワイヤー、
17…湯漏れ受け皿、 18…湯漏れ検出器、 19…ヒータ断熱材、
20…ヒータ電極、 21…抵抗測定手段、 22…単結晶、 23…種結晶、
24…シードチャック、 25…引上げワイヤー、 26…ヒータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョクラルスキー法により、単結晶棒を成長させる単結晶引上げ装置の湯漏れ検出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体シリコン単結晶棒製造に用いられる従来のチョクラルスキー法による単結晶引上げ装置の一例を図4により説明する。
図4に示すように、単結晶引上げ装置101は、メインチャンバー102と、メインチャンバー102中に設けられたルツボ103と、ルツボ103の周囲に配置されたヒータ106と、ルツボ103を回転させるルツボ保持軸110及びその回転機構(不図示)と、シリコンの種結晶113を保持するシードチャック114と、シードチャック114を引上げる引上げワイヤー115と、引上げワイヤー115を回転及び巻き取る巻き取り機構(不図示)を備えて構成されている。ルツボ103は、その内側の原料シリコン融液(湯)105を収容する側には石英ルツボ103aが設けられ、その外側には黒鉛ルツボ103bが設けられている。また、ヒータ106の外側周囲にはヒータ断熱材107が設置され、ルツボ103の下方には断熱板104が配置されている。
【0003】
次に、上記の単結晶引上げ装置101による単結晶育成方法について説明する。まず、ルツボ103内でシリコンの高純度多結晶原料を融点(約1420℃)以上に加熱して融解する。そして、引上げワイヤー115を巻き出すことにより湯面の略中心部に種結晶113の先端を接触または浸漬させる。その後、ルツボ保持軸110を適宜の方向に回転させるとともに、引上げワイヤー115を回転させながら巻き取り、種結晶113を引上げることにより、単結晶育成が開始される。以後、引上げ速度と温度を適切に調節することにより略円柱形状の単結晶112を得ることができる。
【0004】
上記した単結晶引上げ装置101における石英ルツボ103aおよび黒鉛ルツボ103bは、共に高い耐熱性を有しているが、石英ルツボ103aは、耐衝撃性に乏しいという欠点がある。そこで、単結晶引上げに際し、多結晶原料をルツボ103に投入すると、その衝撃によって石英ルツボ103aに亀裂が入ることがあり、そこから融液105が漏れる恐れがある。また、多結晶原料投入時にルツボ103内の湯がルツボ103の周囲に飛散することもある。さらに、使用により徐々に石英ルツボ103aが劣化したり、引上げ中の単結晶112が落下した場合には、石英ルツボ103a及び黒鉛ルツボ103bが破壊されて湯のほぼ全量が流出してしまう可能性もある。
【0005】
このように、高温の融液105がルツボ103外へ流出、飛散すると、ルツボ103の周りからメインチャンバー102の底部に至り、メインチャンバー102の底部やヒータ電極あるいはルツボ保持軸110等の金属部やルツボ駆動装置、下部冷却水配管等を侵食することになる。特に高温のシリコンは反応性が高く、金属に対する侵食作用が強いため、冷却水配管等が侵食されやすい。
【0006】
そこで、図4に示す装置では、全ての原料融液を収容することができる内容積を有する湯漏れ受け皿117をメインチャンバー102の底部に設置して、さらに、その湯漏れ受け皿117に、測定温度の変化により湯漏れを検出する湯漏れ検出器118を配設して、その上部の断熱板104に穴を開けて、湯漏れ検出器118の温度測定位置に融液が直接到達するような誘導構造116を設けている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−215126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような湯漏れ検出器により、大量の湯漏れが発生した場合には正しく異常を感知することができるようになったが、比較的少量の湯漏れでは、漏れた融液による温度上昇が少ないために検出不良を起こし易いことが判ってきた。また、上記のような湯漏れ検出のための構造を設けても、予期せぬ位置から湯漏れが生じた場合には、湯漏れの検出が遅れてしまうという問題があった。さらに、装置の大型化に伴い炉内底部のあるポイントのみの温度変化を測定する湯漏れ検出器では、炉内底部に対する検出範囲が限定される。しかし、装置の大型化で炉内底部の面積が増大しているにもかかわらず、検出範囲は変わらないので湯漏れを検出できる確率は低下している。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、単結晶引上げ装置において、ルツボからの湯漏れを高感度かつ高精度に検出できる単結晶引上げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも、原料融液を収容するルツボと、前記原料融液を加熱するヒータを格納するメインチャンバーと、該メインチャンバーの底部に設置され前記ルツボから漏れてくる融液を収容する湯漏れ受け皿と、該湯漏れ受け皿に配設され湯漏れを検出する湯漏れ検出器とを具備したチョクラルスキー法によって単結晶インゴットを製造する単結晶引上げ装置であって、少なくとも、前記湯漏れ検出器は、前記湯漏れ受け皿の上面に敷設された金属製部材と、該金属製部材の電気抵抗を測定する抵抗測定手段とを有し、該抵抗測定手段が測定した前記金属製部材の電気抵抗の変化により湯漏れを検出するものであることを特徴とする単結晶引上げ装置を提供する。
【0011】
このように、単結晶引上げ装置において、湯漏れ検出器は、湯漏れ受け皿の上面に敷設された金属製部材と、該金属製部材の電気抵抗(以下、単に抵抗ともいう)を測定する抵抗測定手段とを有し、抵抗測定手段が測定した金属製部材の電気抵抗の変化により湯漏れを検出するものであれば、湯漏れした融液の温度により金属製部材の抵抗が変化して、これを測定してその変化により湯漏れを検出することができるため、精度良く湯漏れを検出することができる。また、金属製部材を敷設するため、大型の装置であっても、装置に合わせた形状、大きさ等で金属製部材を敷設することができ、大型の装置でも湯漏れ検出の感度が落ちることを簡単かつ安価に防止できる装置となる。
【0012】
このとき、前記金属製部材の材質は、前記原料融液となる原料の融点より高い融点を有し、かつ抵抗率が5×10−8Ω・m以上で、温度係数が5×10−3/℃以上の金属とすることができる。
金属製部材の材質が、原料融液となる原料の融点より高い融点を有し、かつ抵抗率が5×10−8Ω・m以上で、温度係数が5×10−3/℃以上の金属であれば、金属製部材が湯漏れした原料融液と接触しても溶けないため複数回使用できてより安価にでき、また、湯漏れした融液による温度変化によって抵抗も大きく変化するため、少量の湯漏れでもより感度良く検出することができる装置となる。
【0013】
このとき、前記金属製部材の材質は、タングステン又はニッケルであることが好ましい。
このように、金属製部材の材質は、タングステン又はニッケルであれば、融点が高くかつ安価に感度良く湯漏れを検出することができる装置となる。
【0014】
また、前記金属製部材の材質は、前記原料融液となる原料の融点より低い融点を有する金属で、前記金属製部材の断線による前記抵抗測定手段の測定した電気抵抗の変化により湯漏れを検出するものとすることができる。
このように、金属製部材の材質は、原料融液となる原料の融点より低い融点を有する金属で、金属製部材の断線による抵抗測定手段の測定した電気抵抗の変化により湯漏れを検出するものであれば、湯漏れした原料融液により金属製部材が溶けて断線するため、抵抗が大きく変化して、より感度良く湯漏れを検出することができる装置となる。
【0015】
このとき、前記金属製部材の材質は、銅又はアルミニウムであることが好ましい。
このときの金属製部材の材質は、銅又はアルミニウムであれば、融点が低くかつより感度良く湯漏れを検出することができる装置となる。
【0016】
このとき、前記金属製部材は、金属製ワイヤーであることが好ましい。
このように、金属製部材が金属製ワイヤーであれば、多様な形状での敷設も容易で、温度による抵抗の変化も検出しやすい装置となる。
【0017】
このとき、前記金属製ワイヤーは、前記湯漏れ受け皿の上面に格子状に敷設されたものであることが好ましい。
このように、金属製ワイヤーは、湯漏れ受け皿の上面に格子状に敷設されたものであれば、湯漏れを精度良く検出でき、さらには、抵抗が変化した金属製ワイヤーの位置によって、湯漏れした位置も詳細に特定することができる装置となる。
【0018】
このとき、前記金属製ワイヤーは、前記湯漏れ受け皿の上面に30cm以下の間隔の格子状に敷設されたものであることが好ましい。
このように、金属製ワイヤーは、湯漏れ受け皿の上面に30cm以下の間隔の格子状に敷設されたものであれば、少量の融液が漏れた場合でも湯漏れを検出でき、より高感度、高精度に湯漏れを検出できる装置となる。
【0019】
このとき、前記金属製ワイヤーは、個々のワイヤーを前記湯漏れ受け皿の上面に折り返し方式、又は、単線方式で敷設して、全体で格子状に敷設されたものであることが好ましい。
このように、金属製ワイヤーが折り返し方式で格子状に敷設されたものであれば、その抵抗を測定するための抵抗測定手段を簡易にでき、また、金属製ワイヤーが単線方式で格子状に敷設されたものであれば、金属製ワイヤーの敷設が容易な装置となる。
【0020】
このとき、前記抵抗測定手段の前記金属製部材の電気抵抗の測定は、定電流式又は定電圧式で測定するものであることが好ましい。
このように、抵抗測定手段の金属製部材の電気抵抗の測定は、定電流式又は定電圧式で測定するものであれば、金属製部材の抵抗の変化をより感度良く測定することができ、より高感度な湯漏れ検出ができる装置となる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、例えば大型の単結晶引上げ装置においても、ルツボからの少量の湯漏れでも、湯漏れ検出器により高感度、高精度に検出することができる装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の単結晶引上げ装置の実施態様の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様の一例を示す上面概略図である。
【図3】単結晶引上げ装置の炉内底部の操業中の温度を示すグラフである。
【図4】従来の単結晶引上げ装置を示す概略図である。
【図5】金属の抵抗率と温度の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様の他の一例を示す上面概略図である。
【図7】(a)実施例1における本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様を示す上面概略図及び、(b)当該配設態様の装置で操業を行った際の金属製ワイヤーの電流の測定結果を示すグラフである。
【図8】(a)実施例2における本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様を示す上面概略図及び、(b)当該配設態様の装置で操業を行った際の金属製ワイヤーの電流の測定結果を示すグラフである。
【図9】本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様の他の一例を示す上面概略図である。
【図10】(a)実施例3における本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様を示す上面概略図及び、(b)当該配設態様の装置で操業を行った際の金属製ワイヤーの電圧の測定結果を示すグラフである。
【図11】本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様の他の一例を示す上面概略図である。
【図12】(a)実施例4における本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様を示す上面概略図及び、(b)当該配設態様の装置で操業を行った際の金属製ワイヤーの電圧の測定結果を示すグラフである。
【図13】本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様の他の一例を示す上面概略図である。
【図14】(a)実施例5における本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様を示す上面概略図及び、(b)当該配設態様の装置で操業を行った際の金属製ワイヤーの電流の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、本発明の単結晶引上げ装置の実施態様の一例を示す概略図である。図2、6、9、11、13は、本発明の単結晶引上げ装置の湯漏れ検出器の配設態様の一例を示す上面概略図である。図3は、単結晶引上げ装置の炉内底部の操業中の温度を示すグラフである。図5は、温度による金属の抵抗率の変化を示すグラフである。
【0024】
図1に示す本発明の単結晶引上げ装置11は、チョクラルスキー法により、ルツボ13内の原料融液15にシードチャック24に保持された種結晶23を浸漬させて、その後引上げワイヤー25により引き上げながら単結晶22を育成する装置である。
【0025】
このような本発明の単結晶引上げ装置11は、メインチャンバー12内に原料融液15を収容するルツボ13が設けられ、原料融液15を加熱するヒータ26と、ルツボ13を回転昇降動させるルツボ保持軸10及びその回転機構(不図示)を具備している。
ルツボ13は、その内側の原料融液(湯)15を収容する側には石英ルツボ13aが設けられ、その外側にはこれを保護する黒鉛ルツボ13bが設けられている。また、ルツボ13の外周には、ヒータ電極20で支持されたヒータ26が、ヒータ26の外側周囲にはヒータ26からの熱がメインチャンバー12内壁に直接輻射されるのを防止するためのヒータ断熱材19が配置されている。
【0026】
そして、メインチャンバー12の底部の内壁面に接して湯漏れ受け皿17が設置されている。この湯漏れ受け皿17をメインチャンバー12底部に嵌め込むことによって湯漏れ受け皿17はメインチャンバー12の底部内壁面のほぼ全面に密着する。また、湯漏れ受け皿17とルツボ13の間には、例えばCIP材(等方性黒鉛)で成形断熱材を挟むように構成した3層構造の断熱板14を配置することもできる。
【0027】
そして、湯漏れ受け皿17に配設される本発明の湯漏れ検出器18は、湯漏れ受け皿17の上面に敷設された金属製部材16と、金属製部材16の抵抗を測定する抵抗測定手段21とを有し、抵抗測定手段21が測定した金属製部材16の抵抗の変化により湯漏れを検出するものである。
湯漏れ受け皿17に敷設された金属製部材16に漏れた原料融液15が触れると、金属製部材16の抵抗が変化し、この変化により湯漏れを容易に検出することができる。金属製部材16を敷設するのみなので、設置も容易で、形状等も多様に敷設することができ、単結晶引上げ装置を大型化しても、簡易に湯漏れ検出の精度が落ちないようにすることができ、また、炉内構造に合わせて金属製部材16を敷設することができる装置となる。
【0028】
この金属製部材16の材質としては、原料融液15となる原料の融点(原料がシリコンの場合は約1420℃)より高い融点を有し、かつ温度による抵抗率の変化が大きい金属が本発明で用いるのに好適であり、具体的には抵抗率5×10−8Ω・m以上で、温度係数が5×10−3/℃以上の金属が望ましく、例えばタングステン又はニッケルが好ましい。
金属の抵抗率は、ρ(T)=ρ(T0){1+α(T−T0)}、α:抵抗率の温度係数、ρ:抵抗率、で表すことができ、上記のような金属であれば、温度の変化に対して検出される抵抗率の変化が大きく、湯漏れ検出の閾値の設定が容易である。また、金属製部材16は、湯漏れ受け皿17を清掃する時等は外す必要があるが、原料融液15より融点が高いタングステンやニッケルを使用した金属製部材16であれば、操業中に劣化をすることも少なく、繰り返しの使用が可能で安価な装置となる。
【0029】
また、一方で、金属製部材16の材質として、原料融液15となる原料の融点より低い融点を有する金属を用い、湯漏れに基づく金属製部材16の断線による抵抗測定手段21の測定した抵抗の変化により湯漏れを検出することも好ましく、このような金属として、例えば銅又はアルミニウムが好ましい。
金属製部材16が漏れた原料融液15の温度で溶けて断線することで、測定する抵抗は大きく変化するため、明確に湯漏れを検出することができる。なお、このときの金属として、湯漏れ以外の要因で断線しないように、図3に示すように、炉内底部の最高温度よりは融点が高い金属であることが必要である。従って400〜1420℃の範囲内の融点を有する金属であればよく、銅又はアルミニウムが好適である。
【0030】
上記した金属製部材16の材質の例として挙げたタングステン、ニッケル、銅、アルミニウムの特性を表1及び図5に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1に示すように、タングステン、ニッケルは、融点が1420℃より高いため原料融液15の温度では溶けず、さらには、抵抗率、温度係数が大きいことが分かる。一方、銅、アルミニウムは、融点が1420℃より低いため、シリコン等の原料融液15の温度で溶けてしまうことが分かる。図5に示すように、タングステン、ニッケルは、抵抗率、温度係数が本発明に好適な基準より大きく温度に依存した抵抗率変化が大きいことが分かる。一方、銅、アルミニウムは、抵抗率、温度係数が本発明に好適な基準より小さいが、その融点は400〜1420℃の範囲内であるため、断線による湯漏れ検出には好適な金属である。
また、上記の金属の中でもタングステン及びアルミニウムは、炉内への汚染の心配もほとんど無く、特に好ましい。
【0033】
このとき、金属製部材16の形状としては、特に限定されず、円板状等にすることができるが、例えば図2、6、9、11、13に示すような金属製ワイヤー16’であることが好ましい。
金属製ワイヤー16’であれば、敷設も容易で、敷設範囲、敷設形状(パターン)等も比較的自由であり、温度による抵抗の変化も高感度に検出することができる。
【0034】
また、図2、6、9、11、13に示すように、金属製ワイヤー16’は、湯漏れ受け皿17上面に格子状に敷設するものであることが好ましい。この場合、金属製ワイヤー16’は4本以上あれば格子状に敷設することができる。
このように、金属製ワイヤー16’が格子状に敷設されたものであれば、湯漏れ受け皿17上面全体を湯漏れ検出できるように効率的に敷設でき、また、抵抗の変化が生じた金属製ワイヤー16’(ワイヤー番号H1−4、V1−4)の配置によって、湯漏れ位置を容易に特定することができ、対処の緊急性の判断も可能になる。
なお、金属製ワイヤー16’を敷設する場合には、図2、6、9、11、13に示すように、湯漏れ受け皿17の上面で、ルツボ軸10やヒータ電極20のメインチャンバー12下部から炉内へ突き出る部分を迂回しながら敷設する。
【0035】
このとき、金属製ワイヤー16’は、湯漏れ受け皿17上面に30cm以下の間隔の格子状に敷設するものであることが好ましい。
30cm以下の間隔であれば、約1.0kgの原料融液(Si)が漏れた場合に相当する範囲を確実に検出でき、装置が大型化しても感度を落とすことなく湯漏れを検出することができる。
また、漏れた原料融液15が湯漏れ受け皿17の特定部分に誘導される構造の炉内構造物を持つ装置であれば、その漏れた原料融液15が誘導される部分に当たる位置の金属製ワイヤー16’の敷設間隔を短くする事で、検出感度をさらに向上させる事ができる。
【0036】
金属製ワイヤー16’は、個々のワイヤーを湯漏れ受け皿17の上面に折り返し方式(図6、9)で、又は、単線方式(図2、11、13)で敷設して、全体として格子状に敷設されたものであることが好ましい。それぞれのワイヤーを単線で敷設する際には、例えば、金属製ワイヤー16’を直線的に敷設してメインチャンバー12の両端から金属製ワイヤー16’を引き出し、同様に敷設間隔を開けて他の金属製ワイヤー16’を敷設できる。また、それぞれのワイヤーを折り返して敷設する際には、例えば、金属製ワイヤー16’をメインチャンバー12内に入線し、湯漏れ受け皿17の反対側まで敷設した後に、敷設間隔を空けて再び金属製ワイヤー16’の入線方向に折り返してメインチャンバー12内から引き出すことで敷設できる。これらの場合、メインチャンバー12の外で予め格子状に成形し、その後当該成形した金属製ワイヤー16’を、一括で敷設することもできる。
単線であれば、炉内の金属製ワイヤー16’の敷設は直線状に敷設するだけなので、敷設が容易である。また、折り返して敷設するものであれば、抵抗測定するための外部の検出回路の回路数が少なくて済み、一回折り返しの場合は、検出回路は単線に比べて半分で実施可能である。また、このとき金属製ワイヤー16’を2回以上折り返して敷設することもできる。
【0037】
また、上記のように、複数の金属製ワイヤー16’を敷設して、それぞれの抵抗を測定することで、炉内温度の変化の場合は、すべての金属製ワイヤー16’の抵抗が変化し、一方、湯漏れした融液による温度変化の場合は、金属製ワイヤー16’の中でも、融液と接触したものと接触していないものとの抵抗の変化が異なるため、この変化率を比較すれば、湯漏れの検出がより確実にでき、高精度の湯漏れ検出を行うことができる。
なお、上記のような本発明の金属製ワイヤー16’は、格子状以外にも、並列状、渦巻き状、蛇行、ジグザグ状等にして敷設することもできる。
【0038】
また、抵抗測定手段21の金属製部材16の抵抗の測定は、定電流式(図9、11)又は定電圧式(図6、13)で測定するものであることが好ましい。この場合、定電流式では、金属製ワイヤー16’に印加される電圧を測定して抵抗変化を求め、定電圧式では金属製ワイヤー16’に流れる電流を測定して抵抗変化を求める。
このような方法で抵抗を測定することで、抵抗の変化を明確に測定することができ、高精度な湯漏れ検出が可能な装置となる。なお、比較的回路を構成しやすいのは定電圧式である。
【0039】
以上のような本発明の単結晶引上げ装置によれば、単結晶の製造において、わずかな湯漏れでも高感度に検出することができ、安全で効率的な単結晶製造を実施することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示すような本発明の単結晶引上げ装置11を用いてルツボ13中にシリコン融液を保持させた。この際、図6に示すように、湯漏れ検出器18の金属製ワイヤー16’は、湯漏れ受け皿17上面に折り返し方式で格子状に敷設し、抵抗測定手段21により抵抗を定電圧式で測定した。金属製ワイヤー16’の材質はタングステンとした。なお、湯漏れ検出の閾値は、1000℃相当の抵抗の時に示す電流の値とした。
この際、図7(a)に示すように、少量のSi融液を故意に漏らし、ワイヤー番号H3−H4とV3−V4の交点に落下させた。
【0041】
図7(b)に、このとき測定された電流を示す。図7(b)に示すように、ワイヤー番号H3−H4とV3−V4の電流が大きく変化しているため、当該金属製ワイヤー16’の抵抗が変化していることが分かる。その他のワイヤー番号の金属製ワイヤー16’の測定された電流は変化は見られない。この結果より、湯漏れが発生し、ワイヤー番号H3−H4とV3−V4の交点に漏れた融液が落下したことが分かる。
【0042】
(実施例2)
図1に示すような本発明の単結晶引上げ装置11を用いてルツボ13中にシリコン融液を保持させた。この際、図6に示すように、湯漏れ検出器18の金属製ワイヤー16’は、湯漏れ受け皿17上面に折り返し方式で格子状に敷設し、抵抗測定手段21により抵抗を定電圧式で測定した。金属製ワイヤー16’の材質はアルミニウムとした。
この際、図8(a)に示すように、少量のSi融液を故意に漏らし、ワイヤー番号H3−H4とV3−V4の交点に落下させた。
【0043】
図8(b)に、このとき測定された電流を示す。図8(b)に示すように、ワイヤー番号H3−H4とV3−V4の電流が大きく変化し、電流が0になっているため、当該金属製ワイヤー16’の抵抗が変化して、その後断線していることが分かる。その他のワイヤー番号の金属製ワイヤー16’の測定された電流は変化は見られない。この結果より、湯漏れが発生し、ワイヤー番号H3−H4とV3−V4の交点に漏れた融液が落下したことが分かる。
【0044】
(実施例3)
図1に示すような本発明の単結晶引上げ装置11を用いてルツボ13中にシリコン融液を保持させた。この際、図9に示すように、湯漏れ検出器18の金属製ワイヤー16’は、湯漏れ受け皿17上面に折り返し方式で格子状に敷設し、抵抗測定手段21により抵抗を定電流式で測定した。金属製ワイヤー16’の材質はタングステンとした。なお、湯漏れ検出の閾値は、1000℃相当の抵抗の時に示す電圧の値とした。
この際、図10(a)に示すように、少量のSi融液を故意に漏らし、ワイヤー番号H3−H4とV3−V4の交点に落下させた。
【0045】
図10(b)に、このとき測定された電圧を示す。図10(b)に示すように、ワイヤー番号H3−H4とV3−V4の電圧が大きく変化しているため、当該金属製ワイヤー16’の抵抗が変化していることが分かる。その他のワイヤー番号の金属製ワイヤー16’の測定された電圧は変化は見られない。この結果より、湯漏れが発生し、ワイヤー番号H3−H4とV3−V4の交点に漏れた融液が落下したことが分かる。
【0046】
(実施例4)
図1に示すような本発明の単結晶引上げ装置11を用いてルツボ13中にシリコン融液を保持させた。この際、図11に示すように、湯漏れ検出器18の金属製ワイヤー16’は、湯漏れ受け皿17上面に単線方式で格子状に敷設し、抵抗測定手段21により抵抗を定電流式で測定した。金属製ワイヤー16’の材質はタングステンとした。なお、湯漏れ検出の閾値は、1000℃相当の抵抗の時に示す電圧の値とした。
この際、図12(a)に示すように、少量のSi融液を故意に漏らし、ワイヤー番号H4とV3の交点に落下させた。
【0047】
図12(b)に、このとき測定された電圧を示す。図12(b)に示すように、ワイヤー番号H4とV3の電圧が大きく変化しているため、当該金属製ワイヤー16’の抵抗が変化していることが分かる。その他のワイヤー番号の金属製ワイヤー16’の測定された電圧は変化は見られない。この結果より、湯漏れが発生し、ワイヤー番号H4とV3の交点に漏れた融液が落下したことが分かる。
【0048】
(実施例5)
図1に示すような本発明の単結晶引上げ装置11を用いてルツボ13中にシリコン融液を保持させた。この際、図13に示すように、湯漏れ検出器18の金属製ワイヤー16’は、湯漏れ受け皿17上面に単線方式で格子状に敷設し、抵抗測定手段21により抵抗を定電圧式で測定した。金属製ワイヤー16’の材質はタングステンとした。なお、湯漏れ検出の閾値は、1000℃相当の抵抗の時に示す電流の値とした。
この際、図14(a)に示すように、少量のSi融液を故意に漏らし、ワイヤー番号H4とV3の交点に落下させた。
【0049】
図14(b)に、このとき測定された電流を示す。図14(b)に示すように、ワイヤー番号H4とV3の電流が大きく変化しているため、当該金属製ワイヤー16’の抵抗が変化していることが分かる。その他のワイヤー番号の金属製ワイヤー16’の測定された電流は変化は見られない。この結果より、湯漏れが発生し、ワイヤー番号H4とV3の交点に漏れた融液が落下したことが分かる。
【0050】
上記のように、本発明の単結晶引上げ装置であれば、高感度、高精度に湯漏れを検出できることが分かる。また、金属製ワイヤーの断線による抵抗変化で湯漏れを検出する場合は、湯漏れが少量でも断線さえ発生すれば検出することができ、高感度であった。一方、融点の高いタングステンを用いた金属製ワイヤーは、上記の湯漏れ検出後にも、複数回の製造において用いることができ、より安価な装置にできた。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0052】
10…ルツボ保持軸、 11…単結晶引上げ装置、 12…メインチャンバー、
13…ルツボ、 13a…石英ルツボ、 13b…黒鉛ルツボ、 14…断熱板、
15…融液、 16…金属製部材、 16’…金属製ワイヤー、
17…湯漏れ受け皿、 18…湯漏れ検出器、 19…ヒータ断熱材、
20…ヒータ電極、 21…抵抗測定手段、 22…単結晶、 23…種結晶、
24…シードチャック、 25…引上げワイヤー、 26…ヒータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、原料融液を収容するルツボと、前記原料融液を加熱するヒータを格納するメインチャンバーと、該メインチャンバーの底部に設置され前記ルツボから漏れてくる融液を収容する湯漏れ受け皿と、該湯漏れ受け皿に配設され湯漏れを検出する湯漏れ検出器とを具備したチョクラルスキー法によって単結晶インゴットを製造する単結晶引上げ装置であって、少なくとも、
前記湯漏れ検出器は、前記湯漏れ受け皿の上面に敷設された金属製部材と、該金属製部材の電気抵抗を測定する抵抗測定手段とを有し、該抵抗測定手段が測定した前記金属製部材の電気抵抗の変化により湯漏れを検出するものであることを特徴とする単結晶引上げ装置。
【請求項2】
前記金属製部材の材質は、前記原料融液となる原料の融点より高い融点を有し、かつ抵抗率が5×10−8Ω・m以上で、温度係数が5×10−3/℃以上の金属であることを特徴とする請求項1に記載の単結晶引上げ装置。
【請求項3】
前記金属製部材の材質は、タングステン又はニッケルであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の単結晶引上げ装置。
【請求項4】
前記金属製部材の材質は、前記原料融液となる原料の融点より低い融点を有する金属で、前記金属製部材の断線による前記抵抗測定手段の測定した電気抵抗の変化により湯漏れを検出するものであることを特徴とする請求項1に記載の単結晶引上げ装置。
【請求項5】
前記金属製部材の材質は、銅又はアルミニウムであることを特徴とする請求項4に記載の単結晶引上げ装置。
【請求項6】
前記金属製部材は、金属製ワイヤーであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の単結晶引上げ装置。
【請求項7】
前記金属製ワイヤーは、前記湯漏れ受け皿の上面に格子状に敷設されたものであることを特徴とする請求項6に記載の単結晶引上げ装置。
【請求項8】
前記金属製ワイヤーは、前記湯漏れ受け皿の上面に30cm以下の間隔の格子状に敷設されたものであることを特徴とする請求項7に記載の単結晶引上げ装置。
【請求項9】
前記金属製ワイヤーは、個々のワイヤーを前記湯漏れ受け皿の上面に折り返し方式、又は、単線方式で敷設して、全体で格子状に敷設されたものであることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の単結晶引上げ装置。
【請求項10】
前記抵抗測定手段の前記金属製部材の電気抵抗の測定は、定電流式又は定電圧式で測定するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の単結晶引上げ装置。
【請求項1】
少なくとも、原料融液を収容するルツボと、前記原料融液を加熱するヒータを格納するメインチャンバーと、該メインチャンバーの底部に設置され前記ルツボから漏れてくる融液を収容する湯漏れ受け皿と、該湯漏れ受け皿に配設され湯漏れを検出する湯漏れ検出器とを具備したチョクラルスキー法によって単結晶インゴットを製造する単結晶引上げ装置であって、少なくとも、
前記湯漏れ検出器は、前記湯漏れ受け皿の上面に敷設された金属製部材と、該金属製部材の電気抵抗を測定する抵抗測定手段とを有し、該抵抗測定手段が測定した前記金属製部材の電気抵抗の変化により湯漏れを検出するものであることを特徴とする単結晶引上げ装置。
【請求項2】
前記金属製部材の材質は、前記原料融液となる原料の融点より高い融点を有し、かつ抵抗率が5×10−8Ω・m以上で、温度係数が5×10−3/℃以上の金属であることを特徴とする請求項1に記載の単結晶引上げ装置。
【請求項3】
前記金属製部材の材質は、タングステン又はニッケルであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の単結晶引上げ装置。
【請求項4】
前記金属製部材の材質は、前記原料融液となる原料の融点より低い融点を有する金属で、前記金属製部材の断線による前記抵抗測定手段の測定した電気抵抗の変化により湯漏れを検出するものであることを特徴とする請求項1に記載の単結晶引上げ装置。
【請求項5】
前記金属製部材の材質は、銅又はアルミニウムであることを特徴とする請求項4に記載の単結晶引上げ装置。
【請求項6】
前記金属製部材は、金属製ワイヤーであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の単結晶引上げ装置。
【請求項7】
前記金属製ワイヤーは、前記湯漏れ受け皿の上面に格子状に敷設されたものであることを特徴とする請求項6に記載の単結晶引上げ装置。
【請求項8】
前記金属製ワイヤーは、前記湯漏れ受け皿の上面に30cm以下の間隔の格子状に敷設されたものであることを特徴とする請求項7に記載の単結晶引上げ装置。
【請求項9】
前記金属製ワイヤーは、個々のワイヤーを前記湯漏れ受け皿の上面に折り返し方式、又は、単線方式で敷設して、全体で格子状に敷設されたものであることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の単結晶引上げ装置。
【請求項10】
前記抵抗測定手段の前記金属製部材の電気抵抗の測定は、定電流式又は定電圧式で測定するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の単結晶引上げ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−184238(P2011−184238A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51261(P2010−51261)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】
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