説明

単結晶製造装置、単結晶及びその製造方法、並びに、ウェハ

【課題】加工コストや加工時間を増大させることなく、欠陥や割れの少ない長尺な単結晶を製造可能な単結晶製造装置及びこれを用いた単結晶の製造方法、並びに、このような方法を用いて製造された単結晶及びウェハを提供すること。
【解決手段】ガイド部材24の内底面に種結晶4を固定し、ガイド部材24の周囲に温度勾配調節部材26を配置する。単結晶6の成長過程において、単結晶6の成長面側近傍ではガイド部材24の外側から単結晶6に向かって熱が流入し、かつ、単結晶6の種結晶4側近傍では単結晶6からガイド部材24の外側に向かって熱が放出する温度勾配を生ずるように、ガイド部材24と温度勾配調節部材26の相対位置を調節しながら、原料2を加熱し、種結晶4上に単結晶6を成長させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶製造装置、単結晶及びその製造方法、並びに、ウェハに関し、さらに詳しくは、気相成長法を用いて長尺で欠陥の少ない単結晶(例えば、SiC単結晶)を製造可能な単結晶製造装置及びこれを用いた単結晶の製造方法、並びに、このような方法を用いて製造された単結晶及びウェハに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体の単結晶は、多結晶に比べて特性が高い。そのため、多くの半導体について単結晶の製造が試みられている。
例えば、SiC(炭化ケイ素)は、六方晶系の結晶構造を持つ高温型(α型)と、立方晶系の結晶構造を持つ低温型(β型)が知られている。SiCは、Siに比べて、耐熱性が高いだけでなく、広いバンドギャップを持ち、絶縁破壊電界強度が大きいという特徴がある。そのため、SiC単結晶からなる半導体は、Si半導体に代わる次世代パワーデバイスの候補材料として期待されている。特に、α型SiCは、β型SiCよりバンドギャップが広いので、超低電力損失パワーデバイスの半導体材料として注目されている。
【0003】
SiC単結晶は、一般に、昇華再析出法などの気相成長法により製造されている。昇華再析出法を用いたSiC単結晶の製造には、SiC原料粉末を保持する本体部と、SiC種結晶を保持するための台座が一体的に形成された上蓋とを備えた成長容器(黒鉛坩堝)が用いられる。このような成長容器内において、SiC種結晶は、単結晶を成長させるための成長面を原料粉末側に向けた状態で台座に固定される。そして、この状態で原料粉末を加熱して昇華させると、低温側の種結晶表面にSiCが堆積し、SiC単結晶を得ることができる。
【0004】
従来より、大口径かつ高品質のSiC単結晶ウェハを効率的かつ低コストに得るために、より長尺なSiC単結晶を成長可能な製造方法が望まれている。しかしながら、SiC単結晶の成長において、長尺な単結晶を得ることは容易ではない。これは、SiC種結晶上へのSiCの堆積を続けると、(1)成長速度の低下、(2)結晶品質の低下、及び、(3)結晶口径の縮小、の少なくとも1つが生じるためである。
【0005】
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、
(1)SiC原料粉末が充填された容器の上端にSiC単結晶の外周よりもわずかに口径の大きいガイドを固定し、
(2)先端にSiC種結晶を固定した種結晶保持具をガイド内に挿入し、
(3)SiC単結晶の成長に伴って、その成長方向とは逆方向に種結晶保持具とともにSiC単結晶を引き上げる
炭化珪素単結晶の製造方法が開示されている。
同文献には、わずかに口径の大きいガイドでSiC単結晶を囲うことにより、成長結晶の側面の炭化や多結晶化を防止できる点が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、
(1)SiC原料が供給される本体部と、その上部に配置される上蓋とを有する成長容器であって、上蓋に成長容器の外側に向けて凹んだ種収容部を形成したものを用い、
(2)成長方向に20mm以上の厚さを有するSiC種結晶を、その成長面とSiC原料とが対向するように種収容部に埋め込み、
(3)成長面と反対側の裏面を上蓋の内表面からSiC原料と離れる方向に後退させて配置し、
(4)SiC種結晶の成長面上にバルク状のSiC単結晶を成長させ、
(5)成長したSiC単結晶を種結晶に用いて、成長面上にSiC単結晶をさらに成長させる
SiC単結晶の製造方法が開示されている。
同文献には、
(イ)SiC種結晶の裏面を上蓋の内表面からSiC原料と離れる方向に後退させることにより、SiC種結晶上に成長するSiC単結晶の熱を裏面を介して効率的に放出することができる点、
(ロ)SiC種結晶の周囲に成長する多結晶の放熱性よりも、SiC種結晶上に成長するSiC単結晶の放熱性を高くすることができるので、SiC単結晶の成長速度の低下、及びSiC単結晶の先端に発生しうる先細りを防止することができる点、及び、
(ハ)成長させたSiC単結晶を種結晶として再び用いてSiC単結晶を成長させることを繰り返すと、SiC単結晶のさらなる大口径化及び長尺化が可能になる点、
が記載されている。
【0007】
特許文献1に記載された方法は、SiC単結晶の側面がガイドで囲まれているので、側面の炭化や多結晶化を防止することができる。しかしながら、同文献に記載された方法では、長時間の成長を続けると、種結晶や成長結晶の周囲とガイドとの間にSiCが析出し、両者が癒着しやすい。そのため、単結晶の成長に伴い、成長結晶の引き上げが困難になるという問題がある。
一方、特許文献2に記載された方法は、単結晶の成長面側から流入した熱を単結晶の裏面側から放出することができるので、単結晶の成長速度の低下及び単結晶先端部の先細りを抑制することができる。しかしながら、長尺の単結晶を製造するためには、成長結晶を坩堝から取り出し、外周面を加工した後、再度、種収容部に収容する必要がある。そのため、加工コストや加工時間が増大し、また加工に伴う単結晶の割れの危険性も増大するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−226197号公報
【特許文献2】特開2005−179155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、加工コストや加工時間を増大させることなく、欠陥や割れの少ない長尺な単結晶を製造可能な単結晶製造装置及びこれを用いた単結晶の製造方法、並びに、このような方法を用いて製造された単結晶及びウェハを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る単結晶製造装置は、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記単結晶製造装置は、
種結晶表面に単結晶を気相成長させるための原料を保持し、又は、外部から供給される原料ガスを保持するための成長容器と、
前記種結晶の側面と前記単結晶の成長空間とを取り囲むためのガイド部材と、
前記ガイド部材の周囲に設置された温度勾配調節部材と、
前記ガイド部材と前記温度勾配調節部材との相対位置を調節するための位置調節手段と
を備えている。
(2)前記ガイド部材は、有底筒状又は筒状であり、内底面又は端部に前記種結晶が固定され、かつ、開口した先端部が前記原料に対向し、又は前記開口した先端部から前記種結晶に向かって前記原料ガスが流入するように、前記成長容器に設置されている。
(3)前記温度勾配調節部材は、前記単結晶の成長過程を通じて、前記単結晶の成長面側近傍では前記ガイド部材の外側から前記単結晶に向かって熱が流入し、かつ、前記単結晶の前記種結晶側近傍では前記単結晶から前記ガイド部材の外側に向かって熱が放出する温度勾配が生ずるように、前記ガイド部材の周囲に配置されている。
(4)前記位置調節手段は、前記単結晶の成長過程を通じて前記温度勾配が維持されるように、前記ガイド部材と前記温度勾配調節部材の相対位置を調節するための手段である。
【0011】
本発明に係る単結晶の製造方法は、
本発明に係る単結晶製造装置を用いて、前記成長容器内の前記原料を加熱し、又は、外部から前記成長容器内に前記原料ガスを導入し、前記種結晶の表面に前記単結晶を気相成長させる成長工程と、
前記単結晶を成長させながら又は前記単結晶の成長を一時的に中断した状態で、前記単結晶の成長過程を通じて前記温度勾配が維持されるように、前記位置調節手段を用いて前記ガイド部材と前記温度勾配調節部材との相対位置を調節する位置調節工程と
を備えていることを要旨とする。
【0012】
本発明に係る単結晶は、
本発明に係る方法により得られ、
継ぎ足し界面を含まない領域の成長方向高さH1が30mm以上である
ことを要旨とする。
さらに、本発明に係るウェハは、本発明に係る単結晶から切り出されたものからなる。
【発明の効果】
【0013】
ガイド部材の内底面に種結晶を固定した状態で、ガイド部材の内部において結晶を成長させると、側面の炭化や多結晶の析出に起因する欠陥の生成を抑制することができる。また、ガイド部材の内底面又は端部に種結晶を固定することによって、単結晶を成長させながら又は単結晶の成長を一時的に中断した状態で、ガイド部材をスライドさせたり、あるいは、ガイド部材の継ぎ足しが可能となる。そのため、加工コストや加工時間を増大させることなく、比較的容易に長尺の単結晶を製造することができる。
さらに、ガイド部材の周囲に温度勾配調節部材を設け、成長結晶の成長高さに応じてガイド部材と温度勾配調節部材の相対位置を調節すると、単結晶の成長過程において、成長面側近傍ではではガイド部材の外側から単結晶に向かって熱が流入し、かつ、単結晶の種結晶側近傍では単結晶からガイド部材の外側に向かって熱が放出する温度勾配を維持することができる。そのため、単結晶の成長高さが増大した場合であっても、成長面の凹面化及びこれに起因する欠陥生成、あるいは割れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】昇華再析出法を用いた従来のSiC単結晶の製造方法を示す模式図である。
【図2】各種の成長法を用いてSiC単結晶を成長させたときの熱の流れを示す模式図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る単結晶製造装置、及びこれを用いた単結晶の製造方法を示す工程図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る単結晶製造装置、及びこれを用いた単結晶の製造方法を示す工程図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る単結晶製造装置、及びこれを用いた単結晶の製造方法を示す工程図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る単結晶製造装置、及びこれを用いた単結晶の製造方法を示す工程図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係る単結晶製造装置、及びこれを用いた単結晶の製造方法を示す工程図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態に係る単結晶製造装置、及びこれを用いた単結晶の製造方法を示す工程図である。
【図9】本発明の第7の実施の形態に係る単結晶製造装置、及びこれを用いた単結晶の製造方法を示す工程図である。
【図10】本発明の第8の実施の形態に係る単結晶製造装置、及びこれを用いた単結晶の製造方法を示す工程図である。
【図11】本発明の第9の実施の形態に係る単結晶製造装置、及びこれを用いた単結晶の製造方法を示す工程図である。
【図12】本発明の第10の実施の形態に係る単結晶製造装置、及びこれを用いた単結晶の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 適用対象]
以下の説明においては、SiC単結晶の成長について説明するが、本発明は、昇華再析法などの気相成長法を用いて製造可能な他の単結晶(例えば、GaN単結晶、AlN単結晶など)にも適用することができる。
また、以下の説明においては、昇華再析出法について主に説明するが、本発明は、外部から成長容器内に原料ガスを導入して種結晶表面に単結晶を気相成長させる方法(CVD法)などの他の気相成長法についても適用することができる。
【0016】
[2. 成長結晶の長尺化]
[2.1. 長尺化の問題点]
図1に、昇華再析出法を用いた従来のSiC単結晶の製造方法の模式図を示す。
図1において、成長容器22は、上部が開口した本体部22aと、本体部22aの開口部を覆うための上蓋22bとを備えている。本体部22aの内部には、原料(SiC粉末)2が充填されている。上蓋22bの内面には、種結晶台座22cが一体的に形成されており、種結晶台座22cには、SiC種結晶4が固定されている。SiC種結晶4は、SiC単結晶6を成長させるための成長面を原料2側に向けた状態で種結晶台座22cに固定される。この状態で、原料2を加熱して昇華させると、低温側のSiC種結晶4上にSiCが堆積し、SiC単結晶6を得ることができる。
【0017】
しかしながら、SiC単結晶6の成長を続けると、成長初期のSiC単結晶6a、成長中期のSiC単結晶6b、及び成長後期のSiC単結晶6cでそれぞれ成長速度が異なり、成長後期に近づくほど成長速度が低下する。また、SiC種結晶4の表面にSiC単結晶6が成長すると同時に、SiC単結晶6の周囲には多結晶(周辺多結晶)8が析出する。さらに、SiC単結晶6は、成長初期にはSiC種結晶4より口径が若干拡大するが、成長後期には口径が縮小し、表面が凹面化する。
SiC単結晶6の成長中に、周辺多結晶8の析出、口径の縮小、あるいは、表面の凹面化が生じると、SiC単結晶6中に、欠陥10や異種多形12が生成しやすくなり、結晶品質が低下する。
このような(1)成長速度の低下、(2)結晶品質の低下、及び(3)結晶口径の縮小を回避するためには、以下の要件を満たさなければならないと考えられる。
【0018】
[2.2. 長尺化の要件]
[2.2.1. 成長速度の低下の抑制(要件A、B)]
成長速度低下の原因は、ΔC2が時間の経過とともに低下するためである。ここで、ΔC2は、(1)式で表される成長表面近傍のSiCガスの過飽和度である。
ΔC2=C2−C1 ・・・(1)
但し、C2は、単結晶成長面のSiCガス濃度、
1は、単結晶成長面のSiCガスの飽和濃度。
成長面の過飽和度ΔC2を維持するためには、単結晶の成長面において、以下の双方の要件を満たす必要がある。
(A)成長面のSiCガス濃度C2を維持する。
(B)成長面の温度を維持する(成長面の飽和濃度C1を維持する)。
【0019】
[2.2.2. 結晶品質の低下の抑制(要件C〜F)]
結晶品質の低下の原因は、外的要因と内的要因に分けられる。
外的要因としては、
(1)単結晶端部−周辺多結晶間の癒着と欠陥流入(単結晶をガイドなどの周辺部材の内側に沿って成長させる場合には、周辺部材との癒着と欠陥流入)、あるいは、
(2)成長結晶側面部における昇華やマクロ欠陥の発生、
などがある。
内的要因としては、単結晶成長面の凹面化による欠陥集中・発生などが挙げられる。
【0020】
[2.2.2.1. 癒着と欠陥流入の抑制(要件C)]
単結晶端部−周辺多結晶間の癒着と欠陥流入を抑制するためには、以下の少なくとも一方の要件を満たす必要がある。
(C−1)周辺多結晶−単結晶間の距離を維持する。
(C−2)周辺多結晶の単結晶との対面部において、ΔC4<0(未飽和)となる状態を維持する。ここで、ΔC4は、(2)式で表される多結晶側の過飽和度である。
ΔC4=C4−C3 ・・・(2)
但し、C4は、多結晶側のSiCガス濃度、
3は、多結晶側のSiCガスの飽和濃度。
過飽和度ΔC4を未飽和に維持する方法としては、具体的には、多結晶側の対面部のSiCガス濃度C4の低下や、多結晶側の高温化(多結晶側の飽和濃度C3の上昇)がある。過飽和度ΔC4が未飽和の状態が維持されている場合、温度勾配は、周辺多結晶−単結晶対面部において、周辺多結晶側から単結晶側へ熱が流入するような成分を有する。
【0021】
[2.2.2.2. 周辺多結晶の析出の抑制(要件D)]
単結晶端部と周辺部材の癒着は、周辺部材上で多結晶が析出し、多結晶が単結晶と癒着することで起きる。逆に、周辺部材上に多結晶を析出させなければ、単結晶と周辺部材が接触していても癒着は起きず、欠陥の流入はほとんど起きない。周辺部材上での多結晶成長を抑制するには、以下の要件を満たす必要がある。
(D)周辺部材の単結晶との対面部において、ΔC6<0(未飽和)となる状態を維持する。ここで、ΔC6は、(3)式で表される周辺部材側の過飽和度である。
ΔC6=C6−C5 ・・・(3)
但し、C6は、周辺部材側のSiCガス濃度、
5は、周辺部材側のSiCガスの飽和濃度。
過飽和度ΔC6を未飽和に維持する方法としては、具体的には、周辺部材側の高温化(周辺部材側の飽和濃度C5の上昇)がある。過飽和度ΔC6が未飽和の状態が維持されている場合、温度勾配は、周辺部材−単結晶対面部において、周辺部材側から単結晶側へ熱が流入するような成分を有する。
【0022】
[2.2.2.3. 側面部における昇華やマクロ欠陥の発生の抑制(要件E)]
成長結晶側面部における昇華やマクロ欠陥の発生を抑制するには、以下の少なくとも一方の要件を満たしている必要がある。
(E−1)成長結晶側面部において、ΔC8の低下を抑制する。ここで、ΔC8は、(4)式で表される成長結晶側面部のSiCガスの過飽和度である。
ΔC8=C8−C7 ・・・(4)
但し、C8は、単結晶側面のSiCガス濃度、
5は、単結晶側面のSiCガスの飽和濃度。
過飽和度ΔC8の低下を抑制する方法としては、具体的には、側面部のSiCガス濃度C8の維持、成長結晶の側面部の温度低下による単結晶内部に向かう熱流成分を有する温度勾配の形成などがある。
(E−2)側面部を保護する。
【0023】
[2.2.2.4. 成長面の凹面化の抑制(要件F)]
単結晶成長面の凹面化を抑制するには、以下の要件を満たす必要がある。
(F)単結晶成長面近傍の水平面内において、ΔC10≧ΔC12>0となる状態を維持する。ここで、ΔC10は(5)式で表される単結晶成長面中央部側の過飽和度、ΔC12は(6)式で表される単結晶成長面端部側の過飽和度である。
ΔC10=C10−C9 ・・・(5)
但し、C10は、単結晶成長面中央部側のSiCガス濃度、
5は、単結晶成長面中央部側のSiCガスの飽和濃度。
ΔC12=C12−C11 ・・・(6)
但し、C12は、単結晶成長面端部側のSiCガス濃度、
11は、単結晶成長面端部側のSiCガスの飽和濃度。
単結晶成長面中央部の温度をT10、単結晶成長面端部の温度をT12とする時、ΔC10≧ΔC12>0とする方法には、具体的には、以下のような方法がある。
(1)T10≒T12の場合(近接部において温度に大きな違いがない場合)、成長面中央部のSiCガス濃度C10≧成長面端部のSiCガス濃度C12とする方法。
(2)C10≒C12の場合(近接部においてガス濃度に大きな違いがない場合、成長面中央部の温度T10≦成長面端部の温度T12とする方法。
【0024】
[2.2.3. 口径の縮小の抑制(要件G)]
口径の縮小の原因は、周辺多結晶の成長速度が単結晶の成長速度より大きくなり、多結晶部と単結晶部の成長表面の接近部において成長方向が成長容器中心軸方向に内向化するからである。成長方向の内向化を抑制するには、以下の要件を満たしている必要がある。
(G)多結晶部と単結晶部の成長面の接近部近傍の水平面内において、ΔC16≧ΔC14となる状態を維持する。ここで、ΔC14は(7)式で表される多結晶部側の過飽和度、ΔC16は(8)式で表される単結晶部側の過飽和度である。
ΔC14=C14−C13 ・・・(7)
但し、C14は、多結晶部と単結晶部の成長面の接近部における多結晶部側のSiCガス濃度、
13は、多結晶部と単結晶部の成長面の接近部における多結晶部側のSiCガスの飽和濃度。
ΔC16=C16−C15 ・・・(8)
但し、C16は、多結晶部と単結晶部の成長面の接近部における単結晶部側のSiCガス濃度、
15は、多結晶部と単結晶部の成長面の接近部における単結晶部側のSiCガスの飽和濃度。
【0025】
[2.3. 要件A〜Gを満たすための手段]
長尺で高品質な結晶を、口径縮小せずに成長させるためには、前述の要件A〜Gをすべて満たす必要があると考えられる。要件A〜Gを満たすための手段としては、具体的には、以下のようなものがある。
【0026】
要件A(SiCガス濃度の維持):
(1)原料ガスを連続的に供給する。
(2)原料を交換する。
(3)原料をムラなく効率的に昇華させる。
要件B(成長面の温度の維持):
(1)単結晶成長面と原料上面の距離を、成長中又は成長後に調整する。
(2)単結晶裏面を冷却する。
要件C−1(周辺多結晶−単結晶間の距離の維持):
(1)種結晶の固定位置を上蓋から原料方向に突出させる。
(2)多結晶を除去し、再成長させる。
【0027】
要件C−2(周辺多結晶と単結晶の対面部における多結晶側の未飽和の維持):
(1)周辺多結晶の析出部を種結晶台座部より高温化する。
(2)周辺多結晶と単結晶の間にガスが流れる経路を作る。
要件D(周辺部材上の未飽和の維持):
(1)周辺部材を種結晶台座部より高温化する。
(2)周辺部材と単結晶との間にガスが流れる経路を作る。
要件E−1(成長結晶側面部の過飽和の維持):
(1)単結晶部を成長の経過と共に冷却する。
要件E−2(単結晶側面部の保護):
(1)単結晶をガイド内で成長させる。
要件F(単結晶成長面近傍の水平面内における中心側の過飽和度の維持):
(1)熱遮蔽板の形状や材質を変化させる。
(2)炉内での成長容器の位置を調節する。
要件G(多結晶部と単結晶部の成長表面の接近部における単結晶側の過飽和度の維持):
(1)単結晶部を熱的に遮蔽し、冷却する。
【0028】
しかしながら、従来の方法では、成長が進行しても要件A〜Dを満たし続けることは可能であったが、要件E〜Gの制御の対象となる位置が成長の進行とともに上蓋から遠ざかるため、成長初期から成長後期に至るまでこれらの要件のすべてを満たし続けるのは困難であった。
【0029】
以下に、とりわけ制御が難しい要件E〜Gに着目した種々のるつぼ(成長容器)構造について説明する。
図2(a)に、ガイドなどの周辺部材を設けることなくSiC種結晶4の表面にSiC単結晶6を成長させたときの熱の流れ(矢印で表示)を示す。図2(a)に示すように、周辺部材を設けない構造において、要件Fや要件E−1を満たすためには、成長したSiC単結晶6の成長面と側面のすべてにおいて、SiC単結晶6の内部方向に熱を流入させ、熱をSiC単結晶6の裏面のみから放熱させなければならない。これは、SiCのような昇華性物質の場合、露出した単結晶の側面から放熱させると、側面部から昇華が起きるためである。なお、シリコンなどの液相成長の場合、単結晶側面部を自由表面として放熱させても劣化はしない。
この場合、成長高さが増すに従い、側面部からの熱の流入量が増すため、より一層単結晶裏面からの放熱が必要となる。ところが、実際には、裏面のみからの放熱量を成長の過程とともに増大させるのは容易ではない。その結果、要件Gを満たすことができなくなり、良質かつ長尺の成長結晶を得ることは困難であった。
【0030】
図2(b)に、ガイド24内でSiC種結晶4の表面にSiC単結晶6を成長させたときの熱の流れを示す。図2(b)に示すように、SiC単結晶6の成長空間を囲むようにガイド24を設け、SiC単結晶6をガイド24内で成長させると、成長したSiC単結晶6の側面部が必然的に保護されるので、要件Eが満たされる。この場合、単結晶の側面部を過飽和にして要件E−1を満たす(すなわち、単結晶内部方向に熱を流入させる)必要がない。ゆえに、側面全面から熱を放出させることができ、単結晶部を効率的に冷却することができる。ところが、成長面近傍においても、単結晶外部方向に放熱されるため、要件D、要件F及び要件Gを満たすことができなくなる。その結果、成長面の凹面化が生じ、同時にガイド24内に多結晶8が成長し、これがSiC単結晶6と癒着することで単結晶部の結晶品質が低下する。
【0031】
図2(c)に、SiC単結晶6の側面の上下方向に温度差を形成するための部材(温度勾配調節部材)26を設けた状態で、SiC種結晶4の表面にSiC単結晶6を成長させたときの熱の流れを示す。図2(c)に示すように、部材26を用いてSiC単結晶6の上下方向を断熱する(すなわち、SiC単結晶6の主成長方向を分断するように断熱する)と、SiC単結晶6の成長面側では、側面から内部に向かって熱が流入し、SiC種結晶4側では、内部から側面に向かって熱が流出する。この場合、断熱による温度勾配が最大となる箇所は、SiC単結晶6の成長面と裏面の間となる。その結果、要件Fと要件Gは満たされる。しかしながら、SiC単結晶6の側面部が保護されていないので、要件Eを満たすことはできない。その結果、側面の一部6a、4aにおいて昇華が起こる。
【0032】
図2(d)に、SiC単結晶6の側面の上下方向に温度差を形成するための部材26を設けた状態で、成長方向の長さが相対的に短いガイド24内でSiC種結晶4の表面にSiC単結晶6を成長させたときの熱の流れを示す。図2(d)に示すように、SiC単結晶6をガイド24内で成長させ、かつ、SiC単結晶6の周囲に部材26を設けると、SiC単結晶6の成長面側では、側面から内部に向かって熱が流入し、SiC種結晶4側では、内部から側面に向かって熱が流出する。しかも、成長過程において、SiC単結晶6の側面は、ガイド24で保護される。その結果、要件E、要件F及び要件Gを、ある程度の期間は同時に満たすことができる。
しかしながら、ガイド部材24は、SiC単結晶6の成長空間のすべてを囲むのに十分な成長方向長さを有していない。そのため、SiC単結晶6の成長高さがガイド24の高さを超えると、SiC単結晶6の口径が拡大する。そのため、単結晶をるつぼ外に引き抜くことができず、さらに成長を続けると、やがて要件Fと要件Gを満たすのが困難となり、成長面が凹面化する。
【0033】
図2(e)に、SiC単結晶6の側面の上下方向に温度差を形成するための部材26を設けた状態で、成長方向の長さが相対的に長いガイド24内でSiC種結晶4の表面にSiC単結晶6を成長させたときの熱の流れを示す。図2(e)に示すように、SiC単結晶6をガイド内で成長させ、かつ、ガイド24の周囲に部材26を設けた場合において、ガイド24の成長方向の長さが相対的に長いときには、SiC単結晶の口径拡大を抑制できるため、単結晶部をるつぼ外に引き抜くことが可能となり、要件D、要件E、要件F及び要件Gを同時に満たし続けることができる。
よって、欠陥が少なく、かつ、より長尺の成長結晶を得るためには、成長過程の初期から終期に至るまで、図2(e)に示す状態を維持する必要がある。
【0034】
以上のことから、成長毎の加工をすることなく、欠陥の少ない長尺の単結晶を得るためには、単結晶製造装置は、十分な原料が存在し(要件A)、単結晶の成長面の温度を一定範囲内に維持できる構造(要件B)であるとともに、要件C〜Gを満たすために以下の追加の条件が必要となると考えられる。
(1)単結晶側面部が保護されていること。
(2)単結晶側面部の成長面近傍では、単結晶内部側に熱が流入し、かつ、側面の大部分では単結晶外部方向に放熱されること。つまり、側面部途中において上下方向を断熱し、単結晶の側面部の上下方向に温度差が形成されること。
(3)単結晶の口径の拡大が、ガイド部材により制限されていること。
(4)成長の初期から終期に至るまで、(1)〜(3)の条件が維持されること。
以下にこのような条件を備えた単結晶製造装置、及びこれを用いた単結晶の製造方法について具体的に説明する。
【0035】
[3. 単結晶製造装置及び単結晶の製造方法(1)]
[3.1. 単結晶製造装置(1)]
図3(a)に、本発明の第1の実施の形態に係る単結晶製造装置の断面図を示す。
図3(a)において、単結晶製造装置20aは、成長容器22と、ガイド部材24と、温度勾配調節部材26と、位置調節手段とを備えている。
【0036】
[3.1.1. 成長容器]
成長容器22は、種結晶(SiC種結晶)4の表面に単結晶(SiC単結晶)を気相成長させるための原料2を保持するためのものである。図3(a)に示す例において、成長容器22は、上部が開口した円筒状を呈している。SiC単結晶を製造する場合、成長容器22には、通常、黒鉛が用いられる。成長容器22の外側には、原料2を加熱するための加熱手段(図示せず)が設けられている。なお、例えばCVD法により結晶を成長させる場合、成長容器22内に原料2を保持することに代えて、外部から成長容器22内に原料ガスが導入される。この点は、後述する他の具体例においても同様である。
成長容器22内に設置される種結晶4の成長面の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適なものを選択することができる。例えば、SiC単結晶を成長させる場合、種結晶4は、{0001}面からのオフセット角が30°以内の面を成長面とするもの(すなわち、c面成長用種結晶)であっても良く、あるいは、{0001}面からのオフセット角が60〜90°である面を成長面とするもの(すなわち、a面成長用種結晶)であっても良い。
【0037】
[3.1.2. ガイド部材]
ガイド部材24は、種結晶4の側面と単結晶の成長空間とを取り囲むためのものである。ガイド部材24は、有底筒状であり、内底面に種結晶4が固定されている。また、ガイド部材24は、開口した先端部が原料2に対向するように、成長容器22に設置されている。なお、ガイド部材24は、底のない筒状であっても良い。この場合、種結晶4は、筒状のガイド部材の端部に固定される。また、例えば、CVD法を用いて単結晶を成長させる場合、種結晶が固定された有底筒状又は筒状のガイド部材は、開口した先端部から種結晶に向かって原料ガスが流入するように、成長容器22に設置される。これらの点は、後述する他の具体例においても同様である。
ここで、「単結晶の成長空間を取り囲む」とは、ガイド部材24が、単結晶の成長過程において、単結晶の側面全体を囲むのに十分な成長方向長さを有することをいう。従って、ガイド部材24の成長方向の初期長さが最終的な単結晶の総成長高さHtotalより短い場合は、ガイド部材24の先端には、適宜、継ぎ足し部材が接続される。
【0038】
ガイド部材24の成長方向の長さは、単結晶の成長過程において所定の温度勾配を形成可能な限りにおいて、特に限定されない。しかしながら、ガイド部材24に継ぎ足し部材を接続して単結晶を再成長させたり、あるいは、新原料を追加ながら単結晶を再成長させる場合、単結晶の成長を一時的に中断し、中断後に成長を再開させる必要がある。この場合、最終的に得られた単結晶には、成長を中断させた痕跡(継ぎ足し界面)が残る。
従って、継ぎ足し界面を含まない領域の成長方向高さH1が30mm以上である単結晶を製造するためには、ガイド部材24の成長方向の初期長さは、30mm以上が好ましい。初期長さは、さらに好ましくは50mm以上、さらに好ましくは100mm以上である。
【0039】
ガイド部材24の厚さは、特に限定されるものではなく、上述した温度勾配を形成可能な厚さであればよい。上述した温度勾配の形成及び維持を容易化するためには、ガイド部材24の厚さは、種結晶の口径の2分の1以下が好ましく、さらに好ましくは、種結晶の口径の5分の1以下である。
ガイド部材24の材質は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。例えば、SiC単結晶を製造する場合、ガイド部材24には、黒鉛、内壁面が炭化タンタルで保護された黒鉛などを用いるのが好ましい。
【0040】
さらに、図3(a)に示す例において、成長容器22内に挿入されたガイド部材24の先端には、遮蔽板28が着脱自在に取り付けられている。遮蔽板28は、ガイド部材24の外側にある空間と成長容器22内の空間とを遮断するためのものである。遮蔽板28には、ガイド部材24が取り付けられる位置に、ガイド部材24の内径とほぼ同一の内径を有する貫通孔が設けられている。「ガイド部材24の外側にある空間」とは、ガイド部材24の外表面側にある空間をいい、後述するようにガイド部材24を筒状部の内周面に沿って上下動させる場合には、筒状部の外表面側にある空間をいう。遮蔽板28は、必ずしも必要ではないが、ガイド部材24の先端に遮蔽板28を設けると、ガイド部材24の外側にある空間への周辺多結晶の析出を抑制することができる。
【0041】
[3.1.3. 温度勾配調節部材]
温度勾配調節部材26は、ガイド部材24の周囲に設置される。温度勾配調節部材26は、単結晶の成長過程を通じて、単結晶の成長面側近傍ではガイド部材24の外側から単結晶に向かって熱が流入し、かつ、単結晶の種結晶4側近傍では単結晶からガイド部材24の外側に向かって熱が放出するような温度勾配を生じさせるためのものである。温度勾配調節部材26は、単結晶の主成長方向を分断するように配置されているのが好ましい。また、温度勾配調節部材26は、断熱による温度勾配が最大となる箇所が、単結晶の成長面と裏面の間になるように配置されているのが好ましい。
【0042】
図3(a)に示す例において、温度勾配調節部材26は、ガイド部材24の外周面の内、種結晶4の表面又は単結晶の成長面から所定の範囲にある帯状領域を囲むように配置された有孔部材からなる。「種結晶4の表面又は単結晶の成長面から所定の範囲にある帯状領域」とは、温度勾配調節部材26を設置することによって、上述した温度勾配を発生させることが可能な所定の幅を有する領域をいう。
温度勾配調節部材26の中央部には、ガイド部材24の水平断面の外形と略同一形状を有する貫通孔が設けられている。また、温度勾配調節部材26は、成長容器22の上蓋を兼ねており、開口した成長容器22の上に設置されている。
【0043】
温度勾配調節部材26の材質、形状、配置等は、単結晶の成長に支障を来すことなく、上述した温度勾配を生じさせることが可能なものであれば良い。
例えば、温度勾配調節部材26が有孔部材である場合、有孔部材には、黒鉛、カーボン繊維からなるフェルト、黒鉛やフェルトの積層体などを用いるのが好ましい。
また、上述した温度勾配を生じさせるためには、温度勾配調節部材26の貫通孔の内径とガイド部材24の外径との差は、単結晶の口径の20%以下が好ましい。温度勾配調節部材26の貫通孔の内周面とガイド部材24の外周面は、位置調節が可能な限りにおいて、接していても良い。
温度勾配調節部材26の厚さは、単結晶の口径以下が好ましい。単結晶の成長方向に垂直な断面の形状が、円などの等方形状ではなく、楕円や長方形である場合、口径とは、長手方向の長さを言う。温度調節部材26の厚さは、さらに好ましくは、口径の半分以下である。これは、口径の小さい結晶に対しては、より狭い範囲内での細かい温度分布を形成する必要があり、そのためには、温度勾配調節部材26を薄くする必要があるためである。しかしながら、単結晶の口径が大きい場合に、温度勾配調節部材26を極端に薄くしすぎると、単結晶の上下方向の温度勾配が大きくなってしまい、単結晶の割れの原因になる。そのため、温度勾配調節部材の厚さは、口径の5%以上が好ましく、さらに好ましくは10%以上、さらに好ましくは20以上である。
また、温度勾配調節部材26は、厚さが均一である必要はない。例えば、ガイド部材24に近づくにつれて厚みを増し、あるいは、ガイド部材24に近い方にのみ追加の温度勾配調節部材を配置することで、単結晶の上下方向の温度勾配を小さくすることができ、割れを防ぎやすくなる。
さらに、温度勾配調節部材26は、必ずしも一体物である必要はなく、単結晶の成長に支障を来すことなく、上述した温度勾配を生じさせることが可能な限りにおいて、適当な数に分割された部品の集合体であっても良い。
【0044】
[3.1.4. 位置調節手段]
位置調節手段は、単結晶の成長過程を通じて、上述した温度勾配が維持されるように、ガイド部材24と温度勾配調節部材26の相対位置を調節するための手段である。
位置調節手段としては、具体的には、
(1)単結晶を成長させながら又は単結晶の成長を一時的に中断した状態で、ガイド部材24を単結晶の成長方向(例えば、原料2から遠ざかる方向)に沿って連続的又は段階的にスライドさせるガイド部材スライド手段、
(2)単結晶を成長させながら又は単結晶の成長を一時的に中断した状態で、温度勾配調節部材26を単結晶の成長方向(例えば、原料2に近づける方向)に沿って連続的又は段階的にスライドさせる温度勾配調節部材スライド手段、
(3)単結晶の成長を一時的に中断した状態で、ガイド部材24に継ぎ足し部材を接続し、ガイド部材24の成長方向長さを長くする継ぎ足し手段、
(4)(1)〜(3)の組み合わせ、
などがある。
【0045】
相対位置の調節は、位置調節手段の種類に応じて最適な段階で行うのが好ましい。
相対位置の調節は、具体的には、
(a)成長容器22内の温度や圧力を維持した状態のまま、
(b)単結晶の成長又は原料2が昇華が生ずる限界温度(例えば、SiCの場合は、1500℃)より低い温度まで降温した後、
(c)単結晶の成長又は原料2の昇華が生ずる限界圧力(例えば、SiCの場合は、500Torr(6.67×104Pa))より高い圧力まで昇圧した後、又は、
(d)部材の交換等が可能となる温度(通常は、室温近傍)まで降温した後、
のいずれの段階で行っても良い。
【0046】
本実施の形態において、位置調節手段には、継ぎ足し手段が用いられている。すなわち、ガイド部材24の先端部は、成長容器24内に設けられた遮蔽板28に着脱自在に取り付けられている。また、ガイド部材24を遮蔽板28から分離させた後、ガイド部材24の先端には、所定の成長方向長さを有する1個又は2個以上の筒状の継ぎ足し部材24’が接続可能になっている。継ぎ足し部材24’が接続された場合、ガイド部材24の外底面は、継ぎ足し部材24’の長さに相当する分だけ原料2から遠ざかる。また、継ぎ足し部材24’の長さ及び個数によっては、ガイド部材24の外底面は、温度勾配調節部材26の上面より上に突き出る。
【0047】
[3.2. 単結晶の製造方法(1)]
次に、図3に示す単結晶製造装置20aを用いた単結晶の製造方法について説明する。まず、図3(a)に示すように、成長容器22内に原料(SiC粉末)2を充填し、ガイド部材24の内底面に種結晶4を固定する。次いで、成長容器22内に設けられた遮蔽板28にガイド部材24の開口した先端部を接続する。さらに、温度勾配調節部材26を成長容器22の上に載せ、温度勾配調節部材26の中央に設けられた貫通孔にガイド部材24の底面部を挿入する。この時、種結晶4の表面に成長した単結晶の成長面側近傍ではガイド部材24の外側から内部に向かって熱が流入し、かつ、単結晶の種結晶側近傍ではガイド部材24の内部から外側に向かって熱が放出する温度勾配が生じるように、ガイド部材24の長さを設定する。図3(a)に示す例においては、種結晶4の成長面が温度勾配調節部材26の下面に対してほぼ同一水平面上又は若干原料2側に来るように、ガイド部材24の長さが定められている。
【0048】
次に、単結晶製造装置20aを用いて、原料2を加熱し、種結晶4の表面に単結晶6を気相成長させる(成長工程)。成長容器22内において原料2と種結晶4とを対向させた状態で原料2を加熱して昇華させると、図3(b)に示すように、ガイド24内において低温側の種結晶4上に原料物質が堆積し、単結晶6を得ることができる。
単結晶6がある程度成長すると、単結晶6の成長面が温度勾配調節部材26から離れ、上述した温度勾配を維持するのが難しくなる。このような状態となったところで、単結晶6の成長を一時的に中断する。
【0049】
次に、単結晶6を成長させながら又は単結晶6の成長を一時的に中断した状態で、単結晶の成長過程を通じて上述した温度勾配が維持されるように、位置調節手段を用いてガイド部材24と温度勾配調節部材26との相対位置を調節する(位置調節工程)。
本実施の形態においては、位置調節手段として継ぎ足し手段が用いられているので、単結晶6の成長を一時的に中断する必要がある。継ぎ足し部材24’の取り付け作業が可能となる温度(通常は、室温近傍)まで冷却した後、図3(c)に示すように、ガイド部材24の先端に継ぎ足し部材24’を接続する。継ぎ足しは、単結晶6がガイド部材24内に保持された状態のまま行われる。
【0050】
継ぎ足し部材24’の長さは、単結晶の成長を再開させたときに、上述した温度勾配が生じるように、その長さを設定する。図3(c)に示す例において、単結晶6の成長面が温度勾配調節部材26の下面に対してほぼ同一水平面上又は若干原料2側に来るように、継ぎ足し部材24’の長さが定められている。継ぎ足し後、ガイド部材24を成長容器22内に挿入し、継ぎ足し部材24’の先端を遮蔽板28に接続する。
【0051】
この時、必要に応じて、成長容器22内に原料2を追加し、あるいは、成長容器22内の原料2を新原料に交換しても良い(原料追加工程)。
ガイド部材24の長さを延長した後、成長を再開すると、図3(d)に示すように、低温側の単結晶6の上に原料物質が新たに堆積し、単結晶6の成長高さが増大する。
【0052】
以下同様にして、
(1)所定の成長高さに達したところで成長を一時的に中断し、新たな継ぎ足し部材24’の接続、及び必要に応じて原料2の追加又は交換を行う工程(図3(e))と、
(2)所定の成長高さに達するまで、ガイド部材24(+継ぎ足し部材24’)内において単結晶6を気相成長させる工程(図3(f))と
を必要な回数だけ繰り返す。
【0053】
[3.3. 効果]
本実施の形態に係る装置は、種結晶4の側面と単結晶6の成長空間を囲むようにガイド部材24が設けられているので、単結晶6の側面部が保護され、単結晶6の口径も一定に維持することができる。また、ガイド部材24の側面に温度勾配調節部材26が配置され、かつ両者の相対位置が段階的に調節可能となっているので、温度勾配を最適に維持することができ、成長面の凹面化も抑制することができる。
さらに、ガイド部材24は、そのまま単結晶6の側面保護部材として機能するので、成長を中断する毎に単結晶6の側面の平坦化加工や単結晶6の側面への保護材の接着が不要である。そのため、加工コストや加工時間が大幅に短縮され、欠陥の少ない長尺な単結晶を効率よく製造することができる。しかも、部材間の癒着が起きにくいので、単結晶の成長方向への継続的な相対移動が可能であり、単結晶6の成長高さに実質的に制限がない。
【0054】
[4. 単結晶製造装置及び単結晶の製造方法(2)]
[4.1. 単結晶製造装置(2)]
図4(a)に、本発明の第2の実施の形態に係る単結晶製造装置の断面図を示す。
図4(a)において、単結晶製造装置20bは、成長容器22と、ガイド部材24と、温度勾配調節部材26と、位置調節手段30とを備えている。
【0055】
[4.1.1. 成長容器]
成長容器22は、種結晶4の表面に単結晶を気相成長させるための原料2を保持するためのものである。成長容器22の底面は、支柱22aを介して図示しない土台に固定されている。成長容器22及び種結晶4に関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0056】
[4.1.2. ガイド部材]
ガイド部材24は、種結晶4の側面と単結晶の成長空間とを取り囲むためのものである。本実施の形態において、ガイド部材24は、ガイド部材スライド手段によって、単結晶の成長方向に沿って連続的又は段階的に上下動できるようになっている。
なお、ガイド部材24は、予め必要な成長方向長さを有するものでも良く、あるいは、上述した継ぎ足し部材が接続可能になっていても良い。
ガイド部材24に関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0057】
[4.1.3. 温度勾配調節部材]
温度勾配調節部材26は、有孔部材であり、ガイド部材24の周囲に設置される。温度勾配調節部材26は、成長容器22の蓋を兼ねており、その中央には、ガイド部材24を挿入するための貫通孔が設けられている。
温度勾配調節部材26の下方には、ガイド部材24の外径とほぼ同一内径を有する肉薄の筒状部26bが一体的に設けられている。ガイド部材24は、筒状部26bの内周面に沿って上下動可能になっている。筒状部26bの厚さは、上述した温度勾配の形成が可能な厚さであれば良い。
筒状部26bの先端には、内側に向かって折り返し部26cが設けられ、筒状部26bと折り返し部26cとの間の空間(袋部)内には、ガイド部材24の先端部分が挿入されている。袋部は、成長途中におけるガイド部材24と温度勾配調節部材26及び筒状部26bとの癒着を抑制するためのものである。さらに、筒状部26bの下端には、ガイド部材24(筒状部26b)の外側にある空間と成長容器22内の空間とを遮断するための遮蔽板28が一体的に設けられている。
温度勾配調節部材26に関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0058】
[4.1.4. 位置調節手段]
本実施の形態において、位置調節手段30は、ガイド部材スライド手段からなる。具体的には、位置調節手段30は、成長容器22の外周に沿って単結晶の成長方向に上下動が可能な枠部30aと、枠部30aを上下方向に駆動する駆動手段(図示せず)とを備えている。枠部30aの上端は、接続具30bを介して、ガイド部材24の外底面に固定されている。枠部30aの上端部は、温度勾配調節部材より上側に突出した単結晶部からの放熱を促進するために、有底筒状の閉空間ではなく、支持棒状などの開空間である方が好ましい。
位置調節手段に関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0059】
[4.2. 単結晶の製造方法(2)]
次に、図4に示す単結晶製造装置20bを用いた単結晶の製造方法について説明する。まず、図4(a)に示すように、成長容器22内に原料2を充填し、ガイド部材24の内底面に種結晶4を固定する。また、成長容器22の上に、温度勾配調節部材26−筒状部26b−遮蔽板28を載せる。次いで、ガイド部材24を接続具30bに固定し、位置調節手段30を用いてガイド部材24の先端部を袋部内に挿入する。この時、種結晶4の近傍において上述した温度勾配が生ずるように、ガイド部材24の先端の挿入位置を決める。図4(a)に示す例においては、種結晶4の成長面が温度勾配調節部材26の下面に対してほぼ同一水平面上又は若干原料2側に来るように、ガイド部材24の長さ及び挿入深さが定められている。
【0060】
次に、単結晶製造装置20bを用いて、原料2を加熱し、種結晶4の表面に単結晶6を気相成長させる(成長工程)。
次いで、単結晶6を成長させながら又は単結晶6の成長を一時的に中断した状態で、単結晶の成長過程を通じて上述した温度勾配が維持されるように、位置調節手段を用いてガイド部材24と温度勾配調節部材26との相対位置を調節する(位置調節工程)。本実施の形態では、位置調節手段30として、ガイド部材スライド手段が用いられているので、相対位置を調節する際に、必ずしも単結晶6の成長を一時的に中断する必要はない。ガイド部材24を連続的又は段階的に原料2から遠ざかる方向にスライドさせながら所定時間成長させると、図4(b)に示すように、所定の成長高さを有する単結晶6が得られる。
【0061】
ガイド部材24のスライド距離が限界に達したところで、成長を終了しても良く、あるいは、ガイド部材24の先端に継ぎ足し部材を接続して、成長を再開しても良い。
また、ガイド部材24のスライド距離が限界に達する前又は限界に達した後に、必要に応じて、成長を一時的に中断し、成長容器22内に原料2を追加し、あるいは、成長容器22内の原料2を新原料に交換しても良い(原料追加工程)。
【0062】
[4.3. 効果]
本実施の形態に係る装置は、種結晶4の側面と単結晶6の成長空間を囲むようにガイド部材24が設けられているので、単結晶6の側面部が保護され、単結晶6の口径を一定に維持することができる。また、ガイド部材24の側面に温度勾配調節部材26が配置され、かつ両者の相対位置が連続的又は段階的に調節可能となっているので、温度勾配を最適に維持することができ、成長面の凹面化も抑制することができる。
さらに、ガイド部材24は、そのまま単結晶6の側面保護部材として機能するので、成長を中断する毎に単結晶6の側面の平坦化加工や単結晶6の側面への保護材の接着が不要である。そのため、加工コストや加工時間が大幅に短縮され、欠陥の少ない長尺な単結晶を効率よく製造することができる。しかも、部材間の癒着が起きにくいので、単結晶の成長方向への継続的な相対移動が可能であり、実質的に単結晶6の成長高さに制限がない。
【0063】
また、単結晶6を成長させながらガイド部材24を連続的又は段階的にスライドさせることができるので、常に単結晶6の側面の温度勾配を最適に維持することができる。そのため、ガイド部材24のスライド距離が限界に達するまで成長を継続することができ、継ぎ足し界面を含まない領域の成長高さH1が大きい単結晶6を製造することができる。
【0064】
[5. 単結晶製造装置及び単結晶の製造方法(3)]
[5.1. 単結晶製造装置(3)]
図5(a)に、本発明の第3の実施の形態に係る単結晶製造装置の断面図を示す。
図5(a)において、単結晶製造装置20cは、成長容器22と、ガイド部材24と、温度勾配調節部材26と、位置調節手段30とを備えている。
【0065】
[5.1.1. 成長容器]
成長容器22は、種結晶4の表面に単結晶を気相成長させるための原料2を保持するためのものである。成長容器22の上部は、蓋を兼ねた遮蔽板28により覆われている。
成長容器22及び種結晶4に関するその他の点については、第1〜2の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0066】
[5.1.2. ガイド部材]
ガイド部材24は、種結晶4の側面と単結晶の成長空間とを取り囲むためのものである。ガイド部材24の先端は、遮蔽板28に着脱自在に取り付けられている。
なお、ガイド部材24は、予め必要な成長方向長さを有するものでも良く、あるいは、上述した継ぎ足し部材が接続可能になっていても良い。
ガイド部材24に関するその他の点については、第1〜2の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0067】
[5.1.3. 温度勾配調節部材]
温度勾配調節部材26は、有孔部材であり、ガイド部材24の周囲に設置される。 本実施の形態において、温度勾配調節部材26は、温度勾配調節部材スライド手段によって、単結晶の成長方向に沿って連続的又は段階的に上下動できるようになっている。
温度勾配調節部材26に関するその他の点については、第1〜2の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0068】
[5.1.4. 位置調節手段]
本実施の形態において、位置調節手段30は、温度勾配調節部材スライド手段からなる。具体的には、位置調節手段30は、成長容器22の外周に沿って単結晶の成長方向に上下動が可能な枠部30aと、枠部30aを上下方向に駆動する駆動手段(図示せず)とを備えている。枠部30aの上端は、温度勾配調節部材26の外周面に固定されている。
位置調節手段に関するその他の点については、第1〜2の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0069】
[5.2. 単結晶の製造方法(3)]
次に、図5に示す単結晶製造装置20cを用いた単結晶の製造方法について説明する。まず、図5(a)に示すように、成長容器22内に原料2を充填し、ガイド部材24の内底面に種結晶4を固定する。次いで、成長容器22の上に遮蔽板28を載せ、遮蔽板28の上にガイド部材24を接続する。さらに、位置調節手段30を用いて、温度勾配調節部材26の貫通孔内にガイド部材24の底面部を挿入する。この時、種結晶4の近傍において上述した温度勾配が生ずるように、温度勾配調節部材26の位置を決める。図5(a)に示す例においては、種結晶4の成長面が温度勾配調節部材26の下面に対してほぼ同一水平面上又は若干原料2側に来るように、温度勾配調節部材26の位置が定められている。
【0070】
次に、単結晶製造装置20cを用いて、原料2を加熱し、種結晶4の表面に単結晶6を気相成長させる(成長工程)。
次いで、単結晶6を成長させながら又は単結晶6の成長を一時的に中断した状態で、単結晶の成長過程を通じて上述した温度勾配が維持されるように、位置調節手段を用いてガイド部材24と温度勾配調節部材26との相対位置を調節する(位置調節工程)。本実施の形態では、位置調節手段30として温度勾配調節部材スライド手段が用いられているので、相対位置を調節する際に、必ずしも単結晶6の成長を一時的に中断する必要はない。温度調節部材26を連続的又は段階的に原料2に近づく方向にスライドさせながら所定時間成長させると、図5(b)に示すように、所定の成長高さを有する単結晶6が得られる。
【0071】
温度勾配調節部材26のスライド距離が限界に達したところで、成長を終了しても良く、あるいは、ガイド部材24の先端に継ぎ足し部材を接続して、成長を再開しても良い。
また、温度勾配調節部材26のスライド距離が限界に達する前又は限界に達した後に、必要に応じて、成長を一時的に中断して、成長容器22内に原料2を追加し、あるいは、成長容器22内の原料2を新原料に交換しても良い(原料追加工程)。
【0072】
[5.3. 効果]
本実施の形態に係る装置は、種結晶4の側面と単結晶6の成長空間を囲むようにガイド部材24が設けられているので、単結晶6の側面部が保護され、単結晶6の口径を一定に維持することができる。また、ガイド部材24の側面に温度勾配調節部材26が配置され、かつ両者の相対位置が連続的又は段階的に調節可能となっているので、温度勾配を最適に維持することができ、成長面の凹面化も抑制することができる。
さらに、ガイド部材24は、そのまま単結晶6の側面保護部材として機能するので、成長を中断する毎に単結晶6の側面の平坦化加工や単結晶6の側面への保護材の接着が不要である。そのため、加工コストや加工時間が大幅に短縮され、欠陥の少ない長尺な単結晶を効率よく製造することができる。しかも、部材間の癒着が起きにくいので、単結晶の成長方向への継続的な相対移動が可能であり、実質的に単結晶6の成長高さに制限がない。
【0073】
また、単結晶6を成長させながら温度勾配調節部材26を連続的又は段階的にスライドさせることができるので、常に温度勾配を最適に維持することができる。そのため、温度勾配調節部材26のスライド距離が限界に達するまで成長を継続することができ、継ぎ足し界面を含まない領域の成長高さH1が大きい単結晶6を製造することができる。
【0074】
[6. 単結晶製造装置及び単結晶の製造方法(4)]
[6.1. 単結晶製造装置(4)]
図6(a)に、本発明の第4の実施の形態に係る単結晶製造装置の断面図を示す。
図6(a)において、単結晶製造装置20dは、成長容器22と、ガイド部材24と、温度勾配調節部材26と、位置調節手段30とを備えている。
【0075】
[6.1.1. 成長容器]
成長容器22は、種結晶4の表面に単結晶を気相成長させるための原料2を保持するためのものである。成長容器22の上部は、蓋を兼ねた遮蔽板28により覆われている。
成長容器22及び種結晶4に関するその他の点については、第1〜3の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0076】
[6.1.2. ガイド部材]
ガイド部材24は、種結晶4の側面と単結晶の成長空間とを取り囲むためのものである。ガイド部材24の先端は、遮蔽板28に着脱自在に取り付けられている。
なお、ガイド部材24は、予め必要な成長方向長さを有するものでも良く、あるいは、上述した継ぎ足し部材が接続可能になっていても良い。
ガイド部材24に関するその他の点については、第1〜3の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0077】
[6.1.3. 温度勾配調節部材]
温度勾配調節部材26は、有孔部材であり、ガイド部材24の周囲に設置される。本実施の形態において、温度勾配調節部材26は、温度勾配調節部材スライド手段によって、単結晶の成長方向に沿って連続的又は段階的に上下動できるようになっている。
温度勾配調節部材26に関するその他の点については、第1〜3の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0078】
[6.1.4. 位置調節手段]
本実施の形態において、位置調節手段30は、温度勾配調節部材スライド手段からなる。具体的には、位置調節手段30は、温度勾配調節部材26を単結晶の成長方向に沿って上下方向に誘導するための支柱30a、30aと、温度勾配調節部材26を支柱30a、30aに沿って上下方向に駆動する駆動手段(図示せず)とを備えている。温度勾配部材26には、支柱30a、30bを挿入するための貫通孔が設けられている。
位置調節手段に関するその他の点については、第1〜3の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0079】
[6.2. 単結晶の製造方法(4)]
次に、図6に示す単結晶製造装置20dを用いた単結晶の製造方法について説明する。まず、図6(a)に示すように、成長容器22内に原料2を充填し、ガイド部材24の内底面に種結晶4を固定する。次いで、成長容器22の上に遮蔽板28を載せ、遮蔽板28の上にガイド部材24を接続する。さらに、位置調節手段30を用いて、温度勾配調節部材26の貫通孔内にガイド部材24の底面部を挿入する。この時、種結晶4の近傍において上述した温度勾配が生ずるように、温度勾配調節部材26の位置を決める。図6(a)に示す例においては、種結晶4の成長面が温度勾配調節部材26の下面に対してほぼ同一水平面上又は若干原料2側に来るように、温度勾配調節部材26の位置が定められている。
【0080】
次に、単結晶製造装置20dを用いて、原料2を加熱し、種結晶4の表面に単結晶6を気相成長させる(成長工程)。温度勾配調節部材26の位置を固定したまま、所定時間成長させると、図6(b)に示すように、所定の成長高さを有する単結晶6が得られる。
単結晶6がある程度成長すると、単結晶6の成長面が温度勾配調節部材26から離れ、上述した温度勾配を維持するのが難しくなる。
【0081】
そこで、このような状態となったところで、位置調節手段30を用いて温度勾配調節部材26を所定の位置まで下げる(図6(c))(位置調節工程)。この場合、必ずしも単結晶6の成長を一時的に中断する必要はない。また、必要に応じて、単結晶6の成長を一時的に中断した後、成長容器22内に原料2を追加し、あるいは、成長容器22内の原料2を新原料に交換しても良い(原料追加工程)。
この状態で再度、所定時間成長させると、図6(d)に示すように、単結晶6の成長高さが増大する。以下、温度勾配調節部材26のスライド距離が限界に達するまで、これらの工程を繰り返す。
【0082】
あるいは、図6(b)の状態となったところで、単結晶6の成長を一時的に中断し、ガイド部材24の先端に継ぎ足し部材24’を接続しても良い(図6(e))(位置調節工程)。この場合、必要に応じて、成長容器22内に原料2を追加し、あるいは、成長容器22内の原料2を新原料に交換しても良い(原料追加工程)。また、温度調節部材26は固定されたままでも良く、あるいは、必要に応じて、位置調節手段30を用いて温度勾配調節部材26を最適位置に移動させても良い。
この状態で再度、所定時間成長させると、図6(f)に示すように、単結晶6の成長高さが増大する。以下、必要に応じて、これらの工程を繰り返す。
【0083】
[6.3. 効果]
本実施の形態に係る装置は、種結晶4の側面と単結晶6の成長空間を囲むようにガイド部材24が設けられているので、単結晶6の側面部が保護され、単結晶6の口径を一定に維持することができる。また、ガイド部材24の側面に温度勾配調節部材26が配置され、かつ両者の相対位置が連続的又は段階的に調整可能となっているので、温度勾配を最適に維持することができ、成長面の凹面化も抑制することができる。
さらに、ガイド部材24は、そのまま単結晶6の側面保護部材として機能するので、成長を中断する毎に単結晶6の側面の平坦化加工や単結晶6の側面への保護材の接着が不要である。そのため、加工コストや加工時間が大幅に短縮され、欠陥の少ない長尺な単結晶を効率よく製造することができる。しかも、部材間の癒着が起きにくいので、単結晶の成長方向への継続的な相対移動が可能であり、実質的に単結晶6の成長高さに制限がない。
【0084】
また、単結晶6を成長させながら温度勾配調節部材26を連続的又は段階的にスライドさせた場合には、常に温度勾配を最適に維持することができる。そのため、温度勾配調節部材26のスライド距離が限界に達するまで成長を継続することができ、継ぎ足し界面を含まない領域の成長高さH1が大きい単結晶6を製造することができる。
【0085】
[7. 単結晶製造装置及び単結晶の製造方法(5)]
[7.1. 単結晶製造装置(5)]
図7(a)に、本発明の第5の実施の形態に係る単結晶製造装置の断面図を示す。
図7(a)において、単結晶製造装置20eは、成長容器22と、ガイド部材24と、温度勾配調節部材26と、位置調節手段30とを備えている。
【0086】
[7.1.1. 成長容器]
成長容器22は、種結晶4の表面に単結晶を気相成長させるための原料2を保持するためのものである。成長容器22の上部は、蓋を兼ねた遮蔽板28により覆われている。
成長容器22及び種結晶4に関するその他の点については、第1〜4の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0087】
[7.1.2. ガイド部材]
ガイド部材24は、種結晶4の側面と単結晶の成長空間とを取り囲むためのものである。ガイド部材24の先端は、遮蔽板28に着脱自在に取り付けられている。
なお、ガイド部材24は、予め必要な成長方向長さを有するものでも良く、あるいは、上述した継ぎ足し部材が接続可能になっていても良い。
ガイド部材24に関するその他の点については、第1〜4の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0088】
[7.1.3. 温度勾配調節部材]
温度勾配調節部材26は、有孔部材であり、ガイド部材24の周囲に設置される。本実施の形態において、温度勾配調節部材26は、温度勾配調節部材スライド手段によって、単結晶の成長方向に沿って段階的に上下動できるようになっている。
温度勾配調節部材26に関するその他の点については、第1〜4の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0089】
[7.1.4. 位置調節手段]
本実施の形態において、位置調節手段30は、温度勾配調節部材スライド手段からなる。具体的には、位置調節手段30は、成長容器22上に載せた遮蔽板28の上面と温度勾配調節部材26の下面の間に挿入された、複数個のスペーサ30a、30a…を備えている。スペーサ30a、30a…の厚さ及び個数は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な厚さ及び個数を選択することができる。
位置調節手段に関するその他の点については、第1〜4の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0090】
[7.2. 単結晶の製造方法(5)]
次に、図7に示す単結晶製造装置20eを用いた単結晶の製造方法について説明する。まず、図7(a)に示すように、成長容器22内に原料2を充填し、ガイド部材24の内底面に種結晶4を固定する。次いで、成長容器22の上に遮蔽板28を載せ、遮蔽板28の上にガイド部材24を接続し、遮蔽板28の上に所定個数のスペーサ30a、30a…を載せる。さらに、その上に温度勾配調節部材26を載せ、温度勾配調節部材26の貫通孔内にガイド部材24の底面部を挿入する。この時、種結晶4の近傍において上述した温度勾配が生ずるように、スペーサ30a、30a…の厚さ及び個数を決める。図6(a)に示す例においては、種結晶4の成長面が温度勾配調節部材26の下面に対してほぼ同一水平面上又は若干原料2側に来るように、スペーサ30a、30a…の厚さ及び個数が定められている。
【0091】
次に、単結晶製造装置20eを用いて、原料2を加熱し、種結晶4の表面に単結晶6を気相成長させる(成長工程)。温度勾配調節部材26の位置を固定したまま、所定時間成長させると、図7(b)に示すように、所定の成長高さを有する単結晶6が得られる。
単結晶6がある程度成長すると、単結晶6の成長面が温度勾配調節部材26から離れ、上述した温度勾配を維持するのが難しくなる。
このような状態となったところで、成長を一時的に中断し、上述した温度勾配が維持されるように、スペーサ30a、30a…の一部を取り除く(図7(c))(位置調節工程)。この時、必要に応じて、成長容器22内に原料2を追加し、あるいは、成長容器22内の原料2を新原料に交換しても良い(原料追加工程)。あるいは、必要に応じて、ガイド部材24に継ぎ足し部材を接続しても良い。
この状態で再度、所定時間成長させると、図7(d)に示すように、単結晶6の成長高さが増大する。以下、スペーサ30a、30a…による位置調節が限界に達するまで、これらの工程を繰り返す。
【0092】
[7.3. 効果]
本実施の形態に係る装置は、種結晶4の側面と単結晶6の成長空間を囲むようにガイド部材24が設けられているので、単結晶6の側面が保護され、単結晶6の口径を一定に維持することができる。また、ガイド部材24の側面に温度勾配調節部材26が配置され、かつ両者の相対位置が段階的に調節可能となっているので、温度勾配を最適に維持することができ、成長面の凹面化も抑制することができる。
さらに、ガイド部材24は、そのまま単結晶6の側面保護部材として機能するので、成長を中断する毎に単結晶6の側面の平坦化加工や単結晶6の側面への保護材の接着が不要である。そのため、加工コストや加工時間が大幅に短縮され、欠陥の少ない長尺な単結晶を効率よく製造することができる。しかも、部材間の癒着が起きにくいので、単結晶の成長方向への継続的な相対移動が可能であり、実質的に単結晶6の成長高さに制限がない。
【0093】
[8. 単結晶製造装置及び単結晶の製造方法(6)]
[8.1. 単結晶製造装置(6)]
図8(a)に、本発明の第6の実施の形態に係る単結晶製造装置の断面図を示す。
図8(a)において、単結晶製造装置20fは、成長容器22と、ガイド部材24と、温度勾配調節部材26と、位置調節手段とを備えている。
【0094】
[8.1.1. 成長容器]
成長容器22は、種結晶4の表面に単結晶を気相成長させるための原料2を保持するためのものである。
成長容器22及び種結晶4に関するその他の点については、第1〜5の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0095】
[8.1.2. ガイド部材]
ガイド部材24は、種結晶4の側面と単結晶の成長空間とを取り囲むためのものである。本実施の形態において、ガイド部材24は、ガイド部材スライド手段によって、単結晶の成長方向に沿って段階的に上下動できるようになっている。
なお、ガイド部材24は、予め必要な成長方向長さを有するものでも良く、あるいは、上述した継ぎ足し部材が接続可能になっていても良い。
ガイド部材24に関するその他の点については、第1〜5の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0096】
[8.1.3. 温度勾配調節部材]
温度勾配調節部材26は、有孔部材であり、ガイド部材24の周囲に設置される。温度勾配調節部材26は、成長容器22の蓋を兼ねており、その中央には、ガイド部材24を挿入するための貫通孔が形成されている。
温度勾配調節部材26の下方には、ガイド部材24の外径とほぼ同一内径を有する肉薄の筒状部26bが一体的に設けられている。ガイド部材24は、筒状部26b内に挿入されている。さらに、筒状部26bの下端には、ガイド部材24の先端を載置し、かつ、ガイド部材24(筒状部26b)の外側にある空間と成長容器22内の空間とを遮断するための遮蔽板28が一体的に設けられている。
温度勾配調節部材26に関するその他の点については、第1〜5の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0097】
[8.1.4. 位置調節手段]
本実施の形態において、位置調節手段は、ガイド部材スライド手段からなる。具体的には、位置調節手段は、一体的に形成された温度勾配調節部材26−筒状部26b−遮蔽板28を、成長方向長さがより短い筒状部26b’を備えた温度勾配調節部材26−筒状部26b’−遮蔽板28に交換する手段からなる。
位置調節手段に関するその他の点については、第1〜5の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0098】
[8.2. 単結晶の製造方法(6)]
次に、図8に示す単結晶製造装置20fを用いた単結晶の製造方法について説明する。まず、図8(a)に示すように、成長容器22内に原料2を充填し、ガイド部材24の内底面に種結晶4を固定する。次いで、成長容器22に、温度調節部材26−筒状部26b−遮蔽板28を載せる。さらに、温度勾配調節部材26の貫通孔内にガイド部材24を挿入する。この時、種結晶4の近傍において上述した温度勾配が生ずるように、ガイド部材24及び筒状部26bの長さを定める。図8(a)に示す例においては、種結晶4の成長面が温度勾配調節部材26の下面に対してほぼ同一水平面上又は若干原料2側に来るように、ガイド部材24及び筒状部26bの長さが定められている。
【0099】
次に、単結晶製造装置20fを用いて、原料2を加熱し、種結晶4の表面に単結晶6を気相成長させる(成長工程)。ガイド部材24の位置を固定したまま、所定時間成長させると、図8(b)に示すように、所定の成長高さを有する単結晶6が得られる。
単結晶6がある程度成長すると、単結晶6の成長面が温度勾配調節部材26から離れ、上述した温度勾配を維持するのが難しくなる。
このような状態となったところで、成長を一時的に中断し、温度勾配調節部材26−筒状部26b−遮蔽板28を、成長方向長さがより短い筒状部26b’を備えた温度勾配調節部材26−筒状部26b’−遮蔽板28に交換する(図8(c))(位置調節工程)。この時、必要に応じて、成長容器22内に原料2を追加し、あるいは、成長容器22内の原料2を新原料に交換しても良い(原料追加工程)。あるいは、必要に応じて、ガイド部材24に継ぎ足し部材を接続しても良い。
この状態で再度、所定時間成長させると、図8(d)に示すように、単結晶6の成長高さが増大する。以下、筒状部26b(26b’)の交換による位置調節が限界に達するまで、これらの工程を繰り返す。
【0100】
[8.3. 効果]
本実施の形態に係る装置は、種結晶4の側面と単結晶6の成長空間を囲むようにガイド部材24が設けられているので、単結晶6の側面部が保護され、単結晶6の口径を一定に維持することができる。また、ガイド部材24の側面に温度勾配調節部材26が配置され、かつ両者の相対位置が段階的に調節可能となっているので、温度勾配を最適に維持することができ、成長面の凹面化も抑制することができる。
さらに、ガイド部材24は、そのまま単結晶6の側面保護部材として機能するので、成長を中断する毎に単結晶6の側面の平坦化加工や単結晶6の側面への保護材の接着が不要である。そのため、加工コストや加工時間が大幅に短縮され、欠陥の少ない長尺な単結晶を効率よく製造することができる。しかも、部材間の癒着が起きにくいので、単結晶の成長方向への継続的な相対移動が可能であり、実質的に単結晶6の成長高さに制限がない。
【0101】
[9. 単結晶製造装置及び単結晶の製造方法(7)]
[9.1. 単結晶製造装置(7)]
図9(a)に、本発明の第7の実施の形態に係る単結晶製造装置の断面図を示す。
図9(a)において、単結晶製造装置20gは、成長容器22と、ガイド部材24と、温度勾配調節部材26と、位置調節手段とを備えている。
【0102】
[9.1.1. 成長容器]
成長容器22は、種結晶4の表面に単結晶を気相成長させるための原料2を保持するためのものである。
成長容器22及び種結晶4に関するその他の点については、第1〜6の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0103】
[9.1.2. ガイド部材]
ガイド部材24は、種結晶4の側面と単結晶6の成長空間とを取り囲むためのものである。本実施の形態において、ガイド部材24は、上述した継ぎ足し部材24’が接続可能になっている。
ガイド部材24に関するその他の点については、第1〜6の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0104】
[9.1.3. 温度勾配調節部材]
温度勾配調節部材26は、有孔部材であり、ガイド部材24の周囲に設置される。温度勾配調節部材26は、成長容器22の蓋を兼ねており、その中央には、ガイド部材24を挿入するための貫通孔が形成されている。
温度勾配調節部材26の下方には、ガイド部材24の外径とほぼ同一内径を有する肉薄の筒状部26bが一体的に設けられている。ガイド部材24は、筒状部26b内に挿入されている。筒状部26bの下端は、ガイド部材24の先端を載せるために、断面が内側に向かって折れ曲がったL字形を呈している。さらに、筒状部26bの下端には、遮蔽板が設けられておらず、ガイド部材24(筒状部26b)の外周にある空間が成長容器22内に開放されている。
温度勾配調節部材26に関するその他の点については、第1〜6の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0105】
[9.1.4. 位置調節手段]
本実施の形態において、位置調節手段は、継ぎ足し手段からなる。
位置調節手段に関するその他の点については、第1〜6の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0106】
[9.2. 単結晶の製造方法(7)]
次に、図9に示す単結晶製造装置20eを用いた単結晶の製造方法について説明する。まず、成長容器22内に原料2を充填し、ガイド部材24の内底面に種結晶4を固定する。温度勾配調節部材26を成長容器22の上に載せ、筒状部26bにガイド部材24を挿入する。この状態で、原料2を加熱し、種結晶4の表面に単結晶6を気相成長させる(成長工程)。単結晶6がある程度成長したところで、成長を一時的に中断し、ガイド部材24の先端に継ぎ足し部材24’を接続する(位置調節工程)。さらに、必要に応じて、周辺多結晶8が析出した温度勾配調節部材26−筒状部26bを交換する(図9(a))。また、必要に応じて、原料2の追加又は交換を行っても良い。
継ぎ足し部材24’を接続した後、再度、原料2を加熱すると、単結晶6がさらに成長する(図9(b))。これと同時に、筒状部26bの周囲には周辺多結晶8が析出する。
以下、
(a)ガイド部材24の継ぎ足し、並びに、必要に応じて、温度勾配調節部材26−筒状部26bの交換及び原料2の交換を行う工程(図9(a))と、
(b)原料2を加熱する工程(図9(b))と
を必要な回数だけ繰り返す。
【0107】
[9.3. 効果]
本実施の形態に係る装置は、種結晶4の側面と単結晶6の成長空間を囲むようにガイド部材24が設けられているので、単結晶6の側面が保護され、単結晶6の口径を一定に維持することができる。また、ガイド部材24の側面に温度勾配調節部材26が配置され、かつ両者の相対位置が段階的に調節可能となっているので、温度勾配を最適に維持することができ、成長面の凹面化も抑制することができる。
さらに、ガイド部材24は、そのまま単結晶6の側面保護部材として機能するので、成長を中断する毎に単結晶6の側面の平坦化加工や単結晶6の側面への保護材の接着が不要である。そのため、加工コストや加工時間が大幅に短縮され、欠陥の少ない長尺な単結晶を効率よく製造することができる。しかも、部材間の癒着が起きにくいので、単結晶の成長方向への継続的な相対移動が可能であり、実質的に単結晶6の成長高さに制限がない。
【0108】
また、温度勾配調節部材26の下面、及びガイド部材24(筒状部26b)の外側を成長容器22内に開放すると、筒状部26bの周囲に周辺多結晶8が析出しやすくなる。そのため、成長を継続するためには、周辺多結晶8がある程度析出したところで、温度勾配調節部材26を交換する必要がある。しかしながら、筒状部26bの外周を開放することによって、温度勾配調節部材26の下面の空間がより高温化する。その結果、単結晶6の表面の凸形状がさらに維持しやすくなる。
【0109】
[10. 単結晶製造装置及び単結晶の製造方法(8)]
[10.1. 単結晶製造装置(8)]
図10(a)に、本発明の第8の実施の形態に係る単結晶製造装置の断面図を示す。
図10(a)において、単結晶製造装置20hは、成長容器22と、ガイド部材24と、温度勾配調節部材26と、位置調節手段とを備えている。
【0110】
[10.1.1. 成長容器]
成長容器22は、種結晶4の表面に単結晶6を気相成長させるための原料2を保持するためのものである。
成長容器22及び種結晶4に関するその他の点については、第1〜7の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0111】
[10.1.2. ガイド部材]
ガイド部材24は、種結晶4の側面と単結晶6の成長空間とを取り囲むためのものである。本実施の形態において、ガイド部材24は、上述した継ぎ足し部材24’が接続可能になっている。
ガイド部材24に関するその他の点については、第1〜7の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0112】
[10.1.3. 温度勾配調節部材]
温度勾配調節部材26は、有孔部材であり、ガイド部材24の周囲に設置される。温度勾配調節部材26は、成長容器22の蓋を兼ねており、その中央には、ガイド部材24を挿入するための貫通孔が形成されている。
温度勾配調節部材26の下方には、ガイド部材24の外径とほぼ同一内径を有する肉薄の筒状部26bと、筒状部26bの外径より大きい内径を有する筒状部26cとが一体的に設けられている。ガイド部材24は、筒状部26b内に挿入されている。筒状部26bの下端は、ガイド部材24の先端を載せるために、断面が内側に向かって折れ曲がったL字形を呈している。さらに、筒状部26cの下端には、筒状部26cの外周と成長容器22との間の空間を原料2から遮断する遮蔽板28が設けられている。一方、筒状部26bと筒状部26cとの間の空間は、成長容器22内に開放されている。
温度勾配調節部材26に関するその他の点については、第1〜7の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0113】
[10.1.4. 位置調節手段]
本実施の形態において、位置調節手段は、継ぎ足し手段からなる。
位置調節手段に関するその他の点については、第1〜7の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0114】
[10.2. 単結晶の製造方法(8)]
次に、図10に示す単結晶製造装置20hを用いた単結晶の製造方法について説明する。まず、成長容器22内に原料2を充填し、ガイド部材24の内底面に種結晶4を固定する。温度勾配調節部材26を成長容器22の上に載せ、筒状部26b内にガイド部材24を挿入する。この状態で、原料2を加熱し、種結晶4の表面に単結晶6を気相成長させる(成長工程)。単結晶6がある程度成長したところで、成長を一時的に中断し、ガイド部材24の先端に継ぎ足し部材24’を接続する(位置調節工程)。さらに、必要に応じて、周辺多結晶8が析出した温度勾配調節部材26を交換する(図10(a))。また、必要に応じて、原料2の追加又は交換を行っても良い。
継ぎ足し部材24’を継ぎ足した後、再度、原料2を加熱すると、単結晶6がさらに成長する(図10(b))。これと同時に、筒状部26bと筒状部26cの間の空間には、周辺多結晶8が析出する。
以下、
(a)ガイド部材24の継ぎ足し、並びに、必要に応じて、温度勾配調節部材26の交換及び原料2の交換を行う工程(図10(a))と、
(b)原料2を加熱する工程(図10(b))と
を必要な回数だけ繰り返す。
【0115】
[10.3. 効果]
本実施の形態に係る装置は、種結晶4の側面と単結晶6の成長空間を囲むようにガイド部材24が設けられているので、単結晶6の側面部が保護され、単結晶6の口径を一定に維持することができる。また、ガイド部材24の側面に温度勾配調節部材26が配置され、かつ両者の相対位置が段階的に調節可能となっているので、温度勾配を最適に維持することができ、成長面の凹面化も抑制することができる。
さらに、ガイド部材24は、そのまま単結晶6の側面保護部材として機能するので、成長を中断する毎に単結晶6の側面の平坦化加工や単結晶6の側面への保護材の接着が不要である。そのため、加工コストや加工時間が大幅に短縮され、欠陥の少ない長尺な単結晶を効率よく製造することができる。しかも、部材間の癒着が起きにくいので、単結晶の成長方向への継続的な相対移動が可能であり、実質的に単結晶6の成長高さに制限がない。
【0116】
また、温度勾配調節部材26の下面、及びガイド部材24(筒状部26b)の外側を成長容器22内に開放すると、単結晶6の表面の凸形状を維持しやすくなるが、筒状部26bの周囲に周辺多結晶8が析出しやすくなる。これに対し、筒状部26cをさらに設け、筒状部26bの外側の空間を小さくすると、原料ガスがガイド部材24内に優先的に導入される。その結果、周辺多結晶8の析出が抑制され、温度勾配調節部材26の交換頻度が少なくなり、単結晶6を効率よく成長させることができる。
【0117】
[11. 単結晶製造装置及び単結晶の製造方法(9)]
[11.1. 単結晶製造装置(9)]
図11(a)に、本発明の第9の実施の形態に係る単結晶製造装置の断面図を示す。
図11(a)において、単結晶製造装置20iは、成長容器22と、ガイド部材24と、温度勾配調節部材26と、位置調節手段とを備えている。
【0118】
[11.1.1. 成長容器]
成長容器22は、種結晶4の表面に単結晶を気相成長させるための原料2を保持するためのものである。本実施の形態において、成長容器22は、本体部22aと、蓋22bとを備え、蓋22bが交換可能になっている。蓋22bの中央には、ガイド部材24を挿入するための貫通孔が設けられ、蓋22bの下方には、ガイド部材24の外径とほぼ同一内径を有する肉薄の筒状部22cとが一体的に設けられている。筒状部22cの下端には、ガイド部材24の先端を載せるために、断面が内側に向かって折れ曲がったL字形を呈している。蓋22bは、所定の高さを有し、蓋22bの内周面と筒状部22bの外周面との間に、所定量の周辺多結晶が析出できるようになっている。
成長容器22及び種結晶4に関するその他の点については、第1〜8の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0119】
[11.1.2. ガイド部材]
ガイド部材24は、種結晶4の側面と単結晶の成長空間とを取り囲むためのものである。本実施の形態において、ガイド部材24は、上述した継ぎ足し部材24’が接続可能になっている。
ガイド部材24に関するその他の点については、第1〜8の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0120】
[11.1.3. 温度勾配調節部材]
温度勾配調節部材26は、有孔部材であり、ガイド部材24の周囲に配置される。温度勾配調節部材26は、蓋22bの上に載置される。温度勾配調節部材26の中央には、ガイド部材24を挿入するための貫通孔が設けられている。
温度勾配調節部材26の上には、中央に貫通孔を有する1個以上の追加部材26b、26c…が載置できるようになっている。温度勾配調節部材26、及び、追加部材26b、26c…の中央にある貫通孔の内径は、下から上に向かって段階的に大きくなっている。
温度勾配調節部材26に関するその他の点については、第1〜8の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0121】
[11.1.4. 位置調節手段]
本実施の形態において、位置調節手段は、継ぎ足し手段からなる。
位置調節手段に関するその他の点については、第1〜8の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0122】
[11.2. 単結晶の製造方法(9)]
次に、図11に示す単結晶製造装置20iを用いた単結晶の製造方法について説明する。まず、成長容器22内に原料2を充填し、ガイド部材24の内底面に種結晶4を固定する。蓋22bの筒状部22cにガイド部材24を挿入し、さらに蓋22bの上に温度勾配調節部材26を載せる(図11(a))。この状態で、原料2を加熱すると、種結晶4の表面に単結晶6が成長する(成長工程)。これと同時に、蓋22bの内周面と筒状部22cの外周面の間に周辺多結晶8が析出する(図11(b))。
単結晶6がある程度成長したところで、成長を一時的に中断する。次いで、ガイド部材24の先端に継ぎ足し部材24’を接続し(位置調節工程)、蓋22bを交換し、さらに温度勾配調節部材26の上に貫通孔の内径が大きい追加部材26bを載置する(図11(c))。この時、必要に応じて、原料2の追加又は交換を行っても良い。
【0123】
この状態で、原料2を再加熱すると、単結晶6がさらに成長する。これと同時に、蓋22bの内周面と筒状部22cの外周面の間に周辺多結晶8が析出する(図11(d))。
以下同様にして、
(1)蓋22bの交換、継ぎ足し部材24’の接続、及び、追加部材26cの載置(図11(e))、及び、
(2)原料2の再加熱(図11(f))、
を必要な回数だけ繰り返す。
【0124】
[11.3. 効果]
本実施の形態に係る装置は、種結晶4の側面と単結晶6の成長空間を囲むようにガイド部材24が設けられているので、単結晶6の側面部が保護され、単結晶6の口径を一定に維持することができる。また、ガイド部材24の側面に温度勾配調節部材26が配置され、かつ両者の相対位置が段階的に調節可能となっているので、温度勾配を最適に維持することができ、成長面の凹面化も抑制することができる。
さらに、ガイド部材24は、そのまま単結晶6の側面保護部材として機能するので、成長を中断する毎に単結晶6の側面の平坦化加工や単結晶6の側面への保護材の接着が不要である。そのため、加工コストや加工時間が大幅に短縮され、欠陥の少ない長尺な単結晶を効率よく製造することができる。しかも、部材間の癒着が起きにくいので、単結晶の成長方向への継続的な相対移動が可能であり、実質的に単結晶6の成長高さに制限がない。
【0125】
また、成長容器22の蓋22bが交換可能になっているので、周辺多結晶8の析出に起因する成長速度の低下、口径の縮小、凹面化、欠陥生成などが抑制される。さらに、成長高さの増大に伴い、温度勾配調節部材26の上に追加部材26b、26c…を積層し、かつ中央の貫通孔を下から上に向かって段階的に大きくすると、単結晶部の上下方向の温度差をより付けやすくなり、前述の温度勾配を形成しやすいという効果が得られる。また、追加部材26bの下に位置する成長容器22の蓋22bの下面側が高温化するため、周辺多結晶8が析出しにくい効果もある。周辺多結晶8が少ないと、周辺多結晶8の下部が低温になりづらく、ガイド部材24の外側面から単結晶の成長方向への熱の流入を保つことができる。
【0126】
[12. 単結晶製造装置及び単結晶の製造方法(10)]
[12.1. 単結晶製造装置(10)]
図12(a)に、本発明の第10の実施の形態に係る単結晶製造装置の断面図を示す。
図12(a)において、単結晶製造装置20jは、成長容器22と、ガイド部材24と、温度勾配調節部材26と、位置調節手段とを備えている。
【0127】
[12.1.1. 成長容器]
成長容器22は、種結晶4の表面に単結晶6を気相成長させるための原料2を保持するためのものである。
成長容器22及び種結晶4に関するその他の点については、第1〜9の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0128】
[12.1.2. ガイド部材]
ガイド部材24は、種結晶4の側面と単結晶6の成長空間とを取り囲むためのものである。本実施の形態において、ガイド部材24は、複数の筒状部24a、24a…を備えており、各筒状部24a、24a…の内底面には、それぞれ種結晶4、4…が固定されている。各筒状部24a、24a…の開口した先端部は、それぞれ、遮蔽板を兼ねた底板24bに接続されている。
ガイド部材24に関するその他の点については、第1〜9の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0129】
[12.1.3. 温度勾配調節部材]
温度勾配調節部材26は、有孔部材であり、ガイド部材24の周囲に配置される。本実施の形態において、温度勾配調節部材26は、ガイド部材24の各筒状部24a、24a…に対応する位置に、それぞれ、筒状部24a、24a…を挿入するための複数個の貫通孔が設けられている。
温度勾配調節部材26に関するその他の点については、第1〜9の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0130】
[12.1.4. 位置調節手段]
本実施の形態において、位置調節手段は、ガイド部材スライド手段からなる。ガイド部材24は、図示しない駆動手段によって、単結晶6の成長方向に沿って上下動可能になっている。
位置調節手段に関するその他の点については、第1〜9の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0131】
[12.2. 単結晶の製造方法(10)]
次に、図12に示す単結晶製造装置20jを用いた単結晶の製造方法について説明する。まず、成長容器22内に原料2を充填し、ガイド部材24の筒状部24a、24a…内底面に、それぞれ種結晶4を固定する。次いで、ガイド部材24を成長容器22にセットし、筒状部24a、24a…の周囲に温度勾配調節部材26を配置する。この状態で、ガイド部材24を段階的又は連続的にスライドさせながら原料2を加熱すると、種結晶4の表面に単結晶6が成長する(図12(a))。必要に応じて、成長の中断及び原料2の追加を繰り返しながら、ガイド部材24のスライド距離が限界に達するまで再加熱を繰り返すと、単結晶6がさらに成長する(図12(b))。
【0132】
[12.3. 効果]
本実施の形態に係る装置は、種結晶4の側面と単結晶6の成長空間を囲むようにガイド部材24が設けられているので、単結晶6の側面部が保護され、単結晶6の口径を一定に維持することができる。また、ガイド部材24の側面に温度勾配調節部材26が配置され、かつ両者の相対位置が連続的又は段階的に調節可能となっているので、温度勾配を最適に維持することができ、成長面の凹面化も抑制することができる。
さらに、ガイド部材24は、そのまま単結晶6の側面保護部材として機能するので、成長を再開する毎に単結晶6の側面の平坦化加工や単結晶6の側面への保護材の接着が不要である。そのため、加工コストや加工時間が大幅に短縮され、欠陥の少ない長尺な単結晶を効率よく製造することができる。しかも、部材間の癒着が起きにくいので、単結晶の成長方向への継続的な相対移動が可能であり、実質的に単結晶6の成長高さに制限がない。
【0133】
また、ガイド24に複数の筒状部24a、24a…を設けると、1回の加熱で複数個の単結晶を製造することができる。
一般的には、複数個の単結晶を同一坩堝で成長する場合には、各結晶の成長面の温度分布を均一になるように制御するのが難しいと考えられている。本実施の形態では、温度勾配調節部材26により、その下面に閉じた空間が形成されるため、均熱化しやすくなる。
【0134】
[13. 単結晶及びウェハ]
本発明に係る単結晶は、上述したいずれかの方法により得られ、継ぎ足し界面を含まない領域の成長高さH1が30mm以上であることを特徴とする。
本発明に係る単結晶製造装置は、ガイド部材24の内底面に種結晶4が固定され、ガイド部材24ごと種結晶4を移動させるので、原料物質の析出に起因する部材間の癒着が起きにくい。そのため、ガイド部材24の長さ及び位置調節手段を最適化すると、継ぎ足し界面を含まない領域の成長高さH1が30mm以上である単結晶が得られる。
【0135】
ガイド部材24の長さ、位置調節手段等の製造条件をさらに最適化すると、継ぎ足し界面を含まない領域の成長高さH1が50mm以上、あるいは、100mm以上である単結晶が得られる。
同様に、成長方向に対して垂直方向の長さの最大値Lmaxが30mm以上、50mm以上、あるいは、100mm以上である単結晶が得られる。
同様に、アスペクト比(=総成長高さHtotal/成長方向に対して垂直方向の長さの最大値Lmax)が1以上である単結晶が得られる。
【0136】
このようにして得られた単結晶を所定の厚さにスライスすると、ウェハが得られる。得られたウェハは、半導体部品の製造、大口径基板用の種結晶などの各種の用途に用いることができる。
【0137】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明に係る単結晶製造装置及び単結晶の製造方法は、超低電力損失パワーデバイスの半導体材料として使用することが可能なSiC単結晶の製造装置及び製造方法として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成を備えた単結晶製造装置。
(1)前記単結晶製造装置は、
種結晶表面に単結晶を気相成長させるための原料を保持し、又は、外部から供給される原料ガスを保持するための成長容器と、
前記種結晶の側面と前記単結晶の成長空間とを取り囲むためのガイド部材と、
前記ガイド部材の周囲に設置された温度勾配調節部材と、
前記ガイド部材と前記温度勾配調節部材との相対位置を調節するための位置調節手段と
を備えている。
(2)前記ガイド部材は、有底筒状又は筒状であり、内底面又は端部に前記種結晶が固定され、かつ、開口した先端部が前記原料に対向し、又は前記開口した先端部から前記種結晶に向かって前記原料ガスが流入するように、前記成長容器に設置されている。
(3)前記温度勾配調節部材は、前記単結晶の成長過程を通じて、前記単結晶の成長面側近傍では前記ガイド部材の外側から前記単結晶に向かって熱が流入し、かつ、前記単結晶の前記種結晶側近傍では前記単結晶から前記ガイド部材の外側に向かって熱が放出する温度勾配が生ずるように、前記ガイド部材の周囲に配置されている。
(4)前記位置調節手段は、前記単結晶の成長過程を通じて前記温度勾配が維持されるように、前記ガイド部材と前記温度勾配調節部材の相対位置を調節するための手段である。
【請求項2】
前記位置調節手段は、前記単結晶を成長させながら又は前記単結晶の成長を一時的に中断した状態で、前記ガイド部材を前記単結晶の成長方向に沿って連続的又は段階的にスライドさせるガイド部材スライド手段である請求項1に記載の単結晶製造装置。
【請求項3】
前記位置調節手段は、前記単結晶を成長させながら又は前記単結晶の成長を一時的に中断した状態で、前記温度勾配調節部材を前記単結晶の成長方向に沿って連続的又は段階的にスライドさせる温度勾配調節部材スライド手段である請求項1又は2に記載の単結晶製造装置。
【請求項4】
前記位置調節手段は、前記単結晶の成長を一時的に中断した状態で、前記ガイド部材に継ぎ足し部材を接続し、前記ガイド部材の成長方向長さを長くする継ぎ足し手段である請求項1から3までのいずれかに記載の単結晶製造装置。
【請求項5】
前記温度勾配調節部材は、前記ガイド部材の外周面の内、前記種結晶の表面又は前記単結晶の成長面から所定の範囲にある帯状領域を囲むように配置された有孔部材である請求項1から4までのいずれかに記載の単結晶製造装置。
【請求項6】
前記温度勾配調節部材の内径と前記ガイド部材の外径との差は、前記単結晶の口径の20%以下である請求項1から5までのいずれかに記載の単結晶製造装置。
【請求項7】
前記温度勾配調節部材の上に、さらに、中央に貫通孔を有する1個以上の追加部材が載置され、
前記温度勾配調節部材の内径及び前記追加部材の貫通孔の内径は、下から上に向かって段階的に大きくなっている請求項1から6までのいずれかに記載の単結晶製造装置。
【請求項8】
継ぎ足し界面を含まない領域の成長方向高さH1が30mm以上である前記単結晶の製造に用いられる請求項1から7までのいずれかに記載の単結晶製造装置。
【請求項9】
前記ガイド部材の外側にある空間が前記成長容器内に開放されている請求項1から8までのいずれかに記載の単結晶製造装置。
【請求項10】
前記ガイド部材の外側にある空間と前記成長容器内の空間とを遮断する遮蔽板をさらに備えている請求項1から8までのいずれかに記載の単結晶製造装置。
【請求項11】
SiC単結晶の製造に用いられる請求項1から10までのいずれかに記載の単結晶製造装置。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれかに記載の単結晶製造装置を用いて、前記成長容器内の前記原料を加熱し、又は、外部から前記成長容器内に前記原料ガスを導入し、前記種結晶の表面に前記単結晶を気相成長させる成長工程と、
前記単結晶を成長させながら又は前記単結晶の成長を一時的に中断した状態で、前記単結晶の成長過程を通じて前記温度勾配が維持されるように、前記位置調節手段を用いて前記ガイド部材と前記温度勾配調節部材との相対位置を調節する位置調節工程と
を備えた単結晶の製造方法。
【請求項13】
前記単結晶の成長を一時的に中断した状態で、前記成長容器内に前記原料を追加し、又は前記原料を新原料に交換する原料追加工程をさらに備えた請求項12に記載の単結晶の製造方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の方法により得られ、
継ぎ足し界面を含まない領域の成長方向高さH1が30mm以上である単結晶。
【請求項15】
成長方向に対して垂直方向の長さの最大値Lmaxが30mm以上である請求項14に記載の単結晶。
【請求項16】
アスペクト比(=総成長高さHtotal/成長方向に対して垂直方向の長さの最大値Lmax)が1以上である請求項14又は15に記載の単結晶。
【請求項17】
請求項14から16までのいずれかに記載の単結晶から切り出されたウェハ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−240894(P2012−240894A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114006(P2011−114006)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度経済産業省「低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト」委託研究)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】