説明

印刷システム、印刷プログラムおよび画像形成装置

【課題】プリンターの状況に応じて、適切に印刷することができる印刷システムを提供する。
【解決手段】プリンターは、画像データを入力されると(S12)、出力用の画像データの生成のタイミングおよび印刷が可能となるタイミングを算出し(S13〜S16)、印刷が可能となるタイミングに合うように、クロックの周波数を変更して出力用の画像データを生成し(S17、S18)、印刷を行なう(S19)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷システム、印刷プログラムおよび画像形成装置に関するものであり、特に、画像を用紙に定着させて印刷する印刷システム、印刷プログラムおよび画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、プリンターは、その外部に接続されたホスト装置であるパソコン等から入力されたPDL(Page Description Language:ページ記述言語)形式の画像データを基に出力用の画像データを生成し、感光体や定着ローラ等を備えた画像形成部で可視化した後、用紙に印刷する。昨今のプリンターにおいては、印刷要求がない場合、定着ローラの温度を下げる等、消費電力の低いスタンバイ状態となる。そして、印刷要求を受信すると、印刷が可能な状態になるように制御する。具体的には、印刷要求を受信すると、入力された画像データから出力用の画像データを生成すると共に、定着部における定着ローラが定着可能な温度となるよう加熱する。特に、高速化および高画質化を要求するプリンターにおいては、高速で、すなわち、高い消費電力で出力用データを生成すると共に、定着ローラを加熱する。
【0003】
ここで、低消費電力化に対応した画像形成装置に関する技術が、特開2007−108861号公報(特許文献1)や特開2000−296940号公報(特許文献2)、特開2002−86844号公報(特許文献3)に開示されている。特許文献1によると、処理効率の向上のため、求められる処理能力に応じて、複数のCPUを有するプリンター装置において、使用するCPUやその周波数を切り替えることとしている。特許文献2によると、プリンターの使用者の要求に応じてプリント速度を変更することにより、最大消費電力の低減を図ることにしている。また、特許文献3によると、プリンターの稼働率の低い時間等、指定された時刻にプリントを行なうと、CPU等のクロック信号を低速化してプリントを制御し、これにより消費電力を低減することにしている。
【特許文献1】特開2007−108861号公報
【特許文献2】特開2000−296940号公報
【特許文献3】特開2002−86844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2および3は、ユーザの設定に応じて低消費電力化を図るものであるが、ユーザの設定によっては、クロックの周波数を大きくして処理する場合等、高速な処理を行う場合もあり、このような場合には、プリンターの状況にかかわらず、かえって消費電力が大きくなってしまう。また、プリンターの複数のCPUを設けると、高価なシステムとなってしまう。
【0005】
この発明の目的は、プリンターの状況に応じて、適切に印刷することができる印刷システムを提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、プリンターの状況に応じて、適切に印刷することができる印刷プログラムを提供することである。
【0007】
この発明のさらに他の目的は、状況に応じて、適切に印刷することができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る印刷システムは、プリンターと、プリンターに画像データを入力するホスト装置とを含む印刷システムであって、プリンターは、ホスト装置からの画像データを入力させる入力手段と、入力手段により入力された画像データから出力用の画像データを生成する画像データ生成手段と、画像データ生成手段により生成された出力用の画像データを用いて印刷を行なう印刷手段と、印刷手段が作動可能となるタイミングに合うように、画像データ生成手段による出力用の画像データを生成するよう制御する制御手段とを備える。
【0009】
好ましくは、画像データ生成手段は、所定のクロックの周波数に応じて画像処理を行って出力用の画像データを生成する画像処理部を含み、制御手段は、クロックの周波数を変更することにより、画像処理部の動作を制御する。
【0010】
さらに好ましくは、プリンターは、入力された画像データの情報量を算出する情報量算出手段を備え、制御手段は、情報量算出手段によって算出された情報量に基づいてクロックの周波数を変更する。
【0011】
さらに好ましくは、印刷手段は、用紙に画像を定着させる定着手段を備え、印刷手段が作動可能となるタイミングは、定着手段が作動可能になったタイミングである。
【0012】
さらに好ましくは、定着手段は、加熱により用紙に画像を定着させる定着ローラを含み、制御手段は、少なくとも定着ローラの温度またはプリンターの機内温度のいずれか一方を基にして、印刷手段が作動可能となるタイミングを算出する。
【0013】
この発明の他の局面においては、印刷プログラムは、プリンターに接続されたコンピュータを、画像データを入力させる入力手段、入力手段により入力された画像データから出力用の画像データを生成する画像データ生成手段、画像データ生成手段により生成された出力用の画像データを用い、プリンターに印刷を行なわせる手段、プリンターが作動可能となるタイミングの情報を受け、このタイミングに合うように、画像データ生成手段による出力用の画像データを生成するよう制御する制御手段として機能させるための印刷プログラムである。
【0014】
この発明のさらに他の局面においては、画像形成装置は、画像データを入力させる入力手段と、入力手段により入力された画像データから出力用の画像データを生成する画像データ生成手段と、画像データ生成手段により生成された出力用の画像データを用いて印刷を行なう印刷手段と、印刷手段が作動可能となるタイミングに合うように、画像データ生成手段による出力用の画像データを生成するよう制御する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0015】
このような印刷システムおよび印刷プログラムによると、印刷が可能となるタイミングに合うように出力用の画像データの生成をするようにしたため、プリンターの状況に応じて、適切に印刷することができる。
【0016】
また、このような画像形成装置によると、印刷が可能となるタイミングに合うように出力用の画像データの生成をするようにしたため、適切に印刷することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1はこの発明の一実施形態に係る印刷システムを示すブロック図である。図1を参照して、印刷システム20は、プリンター10と、ネットワーク17を介してプリンター10の外部に配置され、プリンター10に画像データを入力するホスト装置としてのパソコン18とを含む。プリンター10は、プリンター10全体を制御する制御部11と、画像データ等の書込みや読出しを行うためのDRAM12と、プリンター10の有する情報を表示する表示画面を含み、プリンター10におけるユーザとのインターフェースとなる操作部13と、入力された画像データからその画像を形成し、加熱された定着ローラ19によって用紙に定着させて出力する画像形成部14と、画像データ等を格納するハードディスク15と、ネットワーク17と接続するためのネットワークIF(インターフェース)部16とを含む。ここで、画像形成部14等は、印刷手段として作動し、画像形成部14に含まれる定着ローラ19は、定着手段として作動する。なお、定着ローラ19の温度は、定着ローラ温度検知部(図示せず)によって検知され、プリンター10の機内温度は、機内温度検知部(図示せず)によって検知される。一般的な印刷可能温度は、150℃前後である。
【0018】
プリンター10は、ネットワークIF部16を通じて、ネットワーク17に接続されたパソコン18から入力された画像データを用いて、DRAM12を介して画像形成部14において画像を形成し、印刷を行なう。
【0019】
なお、図1において太線の矢印は画像データの流れを示しており、細線の矢印は制御信号または制御データの流れを示している。
【0020】
次に、制御部11周辺の詳細な構成について説明する。図2は、制御部11周辺の構成を示すブロック図である。図1および図2を参照して、制御部11は、定着ローラ温度検知部21a、および機内温度検知部21bからCPU22を介して定着ローラ19の温度およびプリンター10の機内温度の入力させるデータ判定部23と、パソコン18からの画像データの入力を受付けるデータ入力部24からの画像データをDRAM12に送るDMA(Direct Memory Access)25と、クロック27と、クロック27の分周を設定する分周設定部26と、画像処理により出力用の画像データの生成を行う画像処理部28とを含む。
【0021】
画像処理部28は、クロック27の周波数に応じて、画像処理を行う。具体的には、分周設定部26により設定された分周値によって、クロック27を分周する。そして、分周されたクロック27の周波数に応じて、処理を行う。ここで、画像処理部28における消費電力は、クロック27の周波数に依存する。
【0022】
次に、印刷システム20において、印刷を行う場合について説明する。図3は、この場合における制御部11の動作を示すフローチャートである。図1〜図3を参照して、まず、スタンバイ状態のプリンター10の制御部11が、ネットワークIF部16を介して、外部のホスト装置であるパソコン18からの印刷要求を受付ける(図3において、ステップS11、以下、ステップを省略する)。ここでは、PDLで画像データを入力される(S12)。入力された画像データは、DMA25を介してDRAM12に一時的に蓄積される。このとき、DMA25は、データ判定部23に、画像データの情報量を送信する(S13)。データの情報量は、データのサイズや種類等から導出される。その後、データ判定部23は、入力された画像データの情報量から、出力用の画像データを生成するタイミング、すなわち、画像処理部28によって画像データの情報量を元に出力用の画像データを生成し終える時間を算出する(S14)。なお、画像処理部28にて1命令当たり扱えるデータ量をdとし、入力された画像データのデータ量をDとすると、時間を算出する基礎となる命令実行回数は、D/dで表されることになる。
【0023】
これと共に、すなわち、印刷要求を受付けると、印刷要求を受付けたときの定着ローラ19の温度およびプリンター10の機内温度を検知する(S15)。そして、検知された定着ローラ19の温度およびプリンター10の機内温度から定着ローラ19が印刷可能となるタイミング、すなわち、定着ローラ19が定着可能となる温度まで上昇する時間を算出する(S16)。
【0024】
ここで、算出方法について簡単に説明する。図4は、印刷が可能となる時間とデータ受信時の定着ローラ19の温度との関係を示す図である。図4中、縦軸は温度を示し、横軸は時間を示す。図4中、点線で、データ受信時における定着ローラ19の温度を示し、一点鎖線で印刷可能温度を示す。また、図4中、線29aは、機内温度が50℃の場合の温度上昇率、線29bは、機内温度が25℃の場合の温度上昇率、線29cは、機内温度が0℃の場合の温度上昇率を示す。温度上昇率は、機内温度が低くなるに従い、その傾きが小さくなる。すなわち、機内温度が低くなるに従い、定着ローラ19を印刷可能温度とするまでに長時間を要することになる。なお、制御部11は、各機内温度について図4に対応する表を格納している。
【0025】
図4を参照して、機内温度が50℃であった場合には、定着ローラ19が印刷可能温度となるまで、時間Tを要する。機内温度が25℃であった場合には、定着ローラ19が印刷可能温度となるまで、時間Tよりも長い時間Tを要する。機内温度が0℃であった場合には、定着ローラ19が印刷可能温度となるまで、時間Tよりも長い時間Tを要する。このようにして、定着ローラ19が印刷可能となるタイミングを算出する。
【0026】
次に、定着ローラ19が印刷可能となるタイミングに合うように、出力用の画像データを生成するようクロック27の周波数を変更する(S17)。
【0027】
具体的には、定着ローラ19が印刷可能となるタイミングに合うように分周設定部26によって最適な分周値を設定し、設定された分周設定に応じて、クロック27を分周する。ここでは、消費電力が低くなるよう分周値が設定されている。その後、画像処理部28は、DRAM12から画像データを受信し、分周されたクロック27の周波数に応じて、画像処理を行って出力用の画像データを生成する(S18)。そして、生成された出力用の画像データにより印刷を行なう(S19)。一方、すでにタイミングが合っていると判断した場合には、DRAM12から画像データを受信し、分周せずに、そのままのクロック27の周波数で画像処理を行って出力用の画像データを生成し、印刷する。
【0028】
このように、印刷が可能となるタイミングに合うように出力用の画像データの生成をするようにしたため、プリンター10の状況に応じて、適切に印刷することができる。この場合、いわゆるプリンター10のパフォーマンスを落とさずに、出力用の画像データを生成する際の低消費電力化を図ることができる。
【0029】
なお、上記の実施の形態においては、プリンターの制御部が上記動作を行うこととしたが、これに限らず、プリンターに接続されたコンピュータを、画像データを入力させる入力手段、入力手段により入力された画像データから出力用の画像データを生成する画像データ生成手段、画像データ生成手段により生成された出力用の画像データを用い、プリンターに印刷を行なわせる手段、プリンターが作動可能となるタイミングの情報を受け、このタイミングに合うように、画像データ生成手段による出力用の画像データを生成するよう制御する制御手段として機能させる印刷プログラムを用いることにしてもよい。
【0030】
さらに、上記の実施の形態においては、外部のホスト装置であるパソコンから画像データを入力させることにしたが、これに限らず、画像形成装置が、画像データを入力させる入力手段と、入力手段により入力された画像データから出力用の画像データを生成する画像データ生成手段と、画像データ生成手段により生成された出力用の画像データを用いて印刷を行なう印刷手段と、印刷手段が作動可能となるタイミングに合うように、画像データ生成手段による出力用の画像データを生成するよう制御する制御手段とを備える構成としてもよい。具体的には、例えば、画像形成装置に含まれる画像読取り部により読取った画像データを、入力された画像データとする。
【0031】
なお、上記の実施の形態において、プリンターの状況に応じて、画像処理の速度を早くするようクロックの周波数を変更するようにしてもよい。
【0032】
また、上記の実施の形態においては、定着ローラの温度およびプリンターの機内温度の両方から印刷が可能となるタイミングを算出することとしたが、これに限らず、少なくとも定着ローラの温度またはプリンターの機内温度のいずれか一方を基にして、印刷が可能となるタイミングを算出するようにしてもよい。
【0033】
なお、上記の実施の形態においては、定着ローラの温度を基に印刷が可能となるタイミングを算出することにしたが、これに限らず、他の定着手段、例えば、インクにより印刷をする場合には、インクを噴射する準備が整ったタイミングを印刷が可能となるタイミングとして算出することにしてもよい。
【0034】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の一実施形態に係る印刷システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】制御部周辺の具体的な構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の一実施形態に係る印刷システムで印刷する場合の制御部の動作を示すフローチャートである。
【図4】印刷が可能となる時間とデータ受信時の定着ローラの温度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
10 プリンター、11 制御部、12 DRAM、13 操作部、14 画像形成部、15 ハードディスク、16 ネットワークIF部、17 ネットワーク、18 パソコン、19 定着ローラ、20 印刷システム、21a 定着ローラ温度検知部、21b 機内温度検知部、22 CPU、23 データ判定部、24 データ入力部、25 DMA、26 分周設定部、27 クロック、28 画像処理部、29a,29b,29c 線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンターと、前記プリンターに画像データを入力するホスト装置とを含む印刷システムであって、
前記プリンターは、前記ホスト装置からの画像データを入力させる入力手段と、
前記入力手段により入力された画像データから出力用の画像データを生成する画像データ生成手段と、
前記画像データ生成手段により生成された出力用の画像データを用いて印刷を行なう印刷手段と、
前記印刷手段が作動可能となるタイミングに合うように、前記画像データ生成手段による出力用の画像データを生成するよう制御する制御手段とを備える、印刷システム。
【請求項2】
前記画像データ生成手段は、所定のクロックの周波数に応じて画像処理を行って出力用の画像データを生成する画像処理部を含み、
前記制御手段は、前記クロックの周波数を変更することにより、前記画像処理部の動作を制御する、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記プリンターは、入力された画像データの情報量を算出する情報量算出手段を備え、
前記制御手段は、前記情報量算出手段によって算出された情報量に基づいて前記クロックの周波数を変更する、請求項2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記印刷手段は、用紙に画像を定着させる定着手段を備え、
前記印刷手段が作動可能となるタイミングは、前記定着手段が作動可能になったタイミングである、請求項1〜3のいずれかに記載の印刷システム。
【請求項5】
前記定着手段は、加熱により用紙に画像を定着させる定着ローラを含み、
前記制御手段は、少なくとも前記定着ローラの温度または前記プリンターの機内温度のいずれか一方を基にして、前記印刷手段が作動可能となるタイミングを算出する、請求項4に記載の印刷システム。
【請求項6】
プリンターに接続されたコンピュータを、画像データを入力させる入力手段、
前記入力手段により入力された画像データから出力用の画像データを生成する画像データ生成手段、
前記画像データ生成手段により生成された出力用の画像データを用い、前記プリンターに印刷を行なわせる手段、
前記プリンターが作動可能となるタイミングの情報を受け、このタイミングに合うように、前記画像データ生成手段による出力用の画像データを生成するよう制御する制御手段として機能させるための印刷プログラム。
【請求項7】
画像データを入力させる入力手段と、
前記入力手段により入力された画像データから出力用の画像データを生成する画像データ生成手段と、
前記画像データ生成手段により生成された出力用の画像データを用いて印刷を行なう印刷手段と、
前記印刷手段が作動可能となるタイミングに合うように、前記画像データ生成手段による出力用の画像データを生成するよう制御する制御手段とを備える、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−172910(P2009−172910A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15046(P2008−15046)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】