説明

印刷システム、印刷装置および通信機器

【課題】 適切な時間管理を行なえる印刷システムを提供することを目的とする。
【解決手段】 印字ヘッドを用いて印刷を実行する印刷装置と、該印刷装置と所定データの通信を行なう通信機器とからなる印刷システムであって、前記通信機器は、内蔵した電池の電力を用いて、現在時刻を計時する時計部と、前記印刷装置と無線通信を行なう通信部と、所定のタイミングで、前記現在時刻を前記印刷装置に送信する通信制御部とを備え、前記印刷装置は、前記通信機器と無線通信を行なう無線通信部と、前記通信機器から受信した前記現在時刻を基準に前記印刷装置内の時間を管理する時間管理部と、前記印刷装置内の時間に基づいて、前記印刷装置の所定動作を制御する制御部とを備えた印刷システムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間の管理によってメンテナンスの動作を行なう印刷装置と、この印刷装置と通信を行なう通信機器とを備えた印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印字ヘッドのクリーニングなどのメンテナンスを、所定時間の経過と共に定期的に実行する印刷装置が知られている。この種の印刷装置には、現在時刻を管理する時計機能としてRTC(Real Time Controller)を備えている(下記特許文献1参照)。印刷装置は、RTCによる現在時刻を基に、クリーニングの実行時期を判断している。
【0003】
【特許文献1】特開平9−104121号公報
【0004】
こうした印刷装置では、図10に示すように、電源回路900は、電源プラグを介した電源からの電力を、CPU,ROM,RAM,EEPROMなどを備えた制御回路920と、RTC910とに供給する。電力供給を受けて、制御回路920は印刷装置の全体を制御し、RTC910は制御回路920に現在時刻を出力する。電源回路900は、こうした電力供給と共に、コンデンサ930にも電力供給を行なう。コンデンサ930は、供給電力を充電し、印刷装置の電源が切られた場合や、電源プラグが抜かれた場合に、RTC910へ充電した電力を供給する。こうしたコンデンサ930には、スーパーキャパシタと呼ばれる高性能なコンデンサが使用されている。RTC910は、こうした電力供給を受けて、継続的に動作するとされている。
【0005】
しかしながら、RTCの電力供給源がコンデンサであるため、長時間の放置によって放電してしまうことがあった。こうした放電によって、RTCへの電力供給は断たれ、印刷装置内では現在時刻が確認できないため、次の電源投入時に強制的にクリーニングを実行せざるを得なかった。すなわち、メンテナンスに必要な時間管理を適切に行なうことが困難であった。
【0006】
こうした問題は、印刷装置のメンテナンス動作のみならず、例えば、印刷装置から外部記憶装置にデータを保存する際の時刻表示など、時間管理に基づく印刷装置の種々の動作についても同様である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、こうした問題を踏まえて、適切な時間管理を行なえる印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の印刷システムは、上記課題の少なくとも一部を解決するため、以下の手法を採った。すなわち、印字ヘッドを用いて印刷を実行する印刷装置と、該印刷装置と所定データの通信を行なう通信機器とからなる印刷システムであって、前記通信機器は、内蔵した電池の電力を用いて、現在時刻を計時する時計部と、前記印刷装置と無線通信を行なう通信部と、所定のタイミングで、前記現在時刻を前記印刷装置に送信する通信制御部とを備え、前記印刷装置は、前記通信機器と無線通信を行なう無線通信部と、前記通信機器から受信した前記現在時刻を基準に前記印刷装置内の時間を管理する時間管理部と、前記印刷装置内の時間に基づいて、前記印刷装置の所定動作を制御する制御部とを備えることを要旨としている。
【0009】
本発明の印刷システムによれば、印刷装置と通信する通信機器は、所定のタイミングで現在時刻を印刷装置に送信し、印刷装置は受信した現在時刻を基準に内部の時間を管理する。すなわち、印刷装置自体の内部時間に基づく制御に用いる基準の時間(現在時刻)は、印刷装置の外部機器である通信機器側で管理し、印刷装置側では管理しない。印刷装置は、電池を備えた通信機器において継続的に管理される現在時刻を取得して、これを基に内部の時間を管理する。したがって、外部機器からの現在時刻の取得により、印刷装置は適切な時間管理を行なうことができる。
【0010】
上記の構成を有する印刷システムにおける所定動作は、前記印刷装置のメンテナンス動作であり、前記制御部は、前記印刷装置内の時間の経過に基づいてメンテナンス時期を判断するものとしても良い。
【0011】
かかる印刷システムによれば、印刷装置は、通信機器から受信した現在時刻を基準に印刷装置内部の時間を管理し、印刷装置のメンテナンス時期を判断する。例えば、所定の期間、印刷装置への供給電力が断たれていても、印刷装置の起動後、現在時刻を取得することができる。したがって、印刷装置は、適切にメンテナンス時期を判断することができる。
【0012】
上記の構成を有する印刷システムにおけるメンテナンス時期は、前記印字ヘッドのクリーニング時期であるものとしても良い。
【0013】
かかる印刷システムによれば、印字ヘッドのクリーニング時期の判断に、通信機器の現在時刻を利用する。印字ヘッドのクリーニング時期は、印刷装置の休止期間も加味して判断される。こうした経時変化を基準とするクリーニングの実行時期の判断に、外部機器で管理する現在時刻を用いることで、適切なクリーニングの実行時期を判断することができる。
【0014】
上記の構成を有する印刷システムにおける印刷装置は、更に、書換え可能な記憶部を備え、前記記憶部は、前記クリーニングを実行する度に時刻を記憶するものとしても良い。
【0015】
かかる印刷システムによれば、印刷装置はクリーニングを実行する度に、その時刻を記憶する。したがって、記憶した時刻と、取得した現在時刻とにより、以前のクリーニングの実行時期からの経過時間を判断することができる。
【0016】
上記の構成を有する印刷システムにおける印刷装置は、前記制御部として中央演算処理装置を有し、前記中央演算処理装置の内部に設けられた内部タイマによって、前記時間を管理するものとしても良い。
【0017】
かかる印刷システムによれば、印刷装置は、現在時刻を外部機器から取得するため、印刷装置内部での時間を管理するタイマ機能を備えていれば良い。こうしたタイマ機能に中央演算処理装置の内部タイマを用いることで、比較的容易に印刷システムを構築することができる。
【0018】
上記の構成を有する印刷システムにおける通信機器は、前記印刷装置を遠隔操作する操作ボタンを備えたリモコンであるものとしても良い。かかる印刷システムによれば、印刷装置の仕様に対応した専用のリモコンを通信機器として使用する。印刷装置用のリモコンは、予め、印刷装置との間での通信機能や供給電源としての電池などを備えている。こうしたリモコンに時計機能を付加する場合、その駆動電源を電池から供給することができる。したがって、印刷システムにおける通信機器を容易に構成することができる。
【0019】
上記の構成を有する印刷システムにおける所定のタイミングは、前記リモコンの操作ボタンによって前記印刷装置を起動するタイミングであるものとしても良い。
【0020】
かかる印刷システムによれば、リモコンの操作ボタンによる印刷装置の起動時に、リモコンから現在時刻を送信する。つまり、印刷装置は、起動と共に現在時刻を取得し、所定動作を制御する。したがって、印刷装置の起動中は、受信した現在時刻を基準とした内部時間の管理を行なうことができる。
【0021】
上記の構成を有する印刷システムにおける印刷装置は、更に、前記印刷装置を起動する電源操作部と、前記起動の操作の際に、現在時刻の要求信号を送信する無線通信制御部とを備え、前記所定のタイミングは、前記通信機器が前記印刷装置からの要求信号を受信したタイミングであるものとすることができる。
【0022】
かかる印刷システムによれば、印刷装置自体に設けた電源操作部により印刷装置を起動する場合に、印刷装置は通信機器に要求信号を送信する。通信機器は、この信号を受けて、現在時刻を送信する。したがって、印刷装置側での電源投入操作により印刷装置を起動しても、印刷装置は現在時刻を取得することができる。
【0023】
本発明の印刷装置は、現在時刻を管理するリモコンからの指令で、所定の動作を行なう印刷装置であって、前記リモコンと無線通信を行なう無線通信部と、前記リモコンから前記現在時刻を取得し、該取得した現在時刻を基準に前記印刷装置内の時間を管理する時間管理部と、前記印刷装置内の時間に基づいて、前記印刷装置の所定動作を制御する制御部とを備えたことを要旨としている。
【0024】
かかる印刷装置によれば、外部機器としてのリモコンから現在時刻を取得し、自信では現在時刻を直接的に管理しない。すなわち、印刷装置は、電力が供給されている間は取得した現在時刻に基づいて内部時間を管理するため現在時刻を認識することができるが、一端、電力供給が断たれると現在時刻を認識しない。再度の電源投入後、印刷装置は、リモコンから取得した現在時刻に基づいて、例えば休止期間を認識することができる。したがって、適切な時間管理を行なうことができると共に、印刷装置に現在時刻の管理のための時計機能やその電力供給源を設ける必要がない。
【0025】
本発明のリモコンは、印刷装置を操作する操作ボタンを備えたリモコンであって、内蔵した電池の電力を用いて、現在時刻を計時する時計部と、前記印刷装置と無線通信を行なう通信部と、所定のタイミングで、前記現在時刻を前記印刷装置に送信する通信制御部とを備えたことを要旨としている。
【0026】
かかるリモコンによれば、時計機能を備えて現在時刻を管理し、これを所定のタイミングで印刷装置に送信する。このリモコンは、電力の供給源である電池を備えるため、時計機能を継続して駆動することができる。
【0027】
本発明のクリーニング方法は、印字ヘッドを用いて印刷を実行する印刷装置と該印刷装置を遠隔操作するリモコンとを備えた印刷システムで、該印字ヘッドのクリーニング時期を判断するクリーニング方法であって、前記リモコンに内蔵した電池の電力を用いて、該リモコン側で現在時刻を計時し、所定のタイミングで、前記リモコンから前記印刷装置に前記現在時刻を送信し、送信された前記現在時刻を受信し、該現在時刻に基づいて前記印刷装置内の時間を管理し、前記印刷装置内の時間の経過に基づいて前記印字ヘッドのクリーニング時期を判断することを要旨としている。
【0028】
本発明のクリーニング方法によれば、電池を備えたリモコン側で継続的に管理される現在時刻を印刷装置に送信し、送信された現在時刻を用いた印刷装置内の時間管理に基づいて、印字ヘッドのクリーニング時期を判断する。したがって、印刷装置側で現在時刻を継続的に管理することなく、適切なクリーニング時期を判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき以下の順序で説明する。
A.第1実施例
A−1.印刷システムの構成:
A−2.初期化処理:
A−3.記憶処理:
A−4.クリーニング処理:
B.第2実施例:
B−1.印刷システムの構成:
B−2.初期化処理:
C.変形例:
【0030】
A.第1実施例:
A−1.印刷システムの構成:
図1は、本発明の第1実施例としての印刷システムを示す概略構成図である。図示するように、本実施例の印刷システム10は、放送を受信して表示するテレビ15と、カラー画像の印刷が可能なインクジェット方式のプリンタ20と、このプリンタ20を遠隔操作するリモコン50とから構成されている。この印刷システム10では、リモコン50を用いて、離れた場所からプリンタ20を操作する。例えば、ユーザは、リモコン50を用いて、プリンタ20が入力した画像データを、プリンタ20と接続されるテレビ15に表示し、あるいは、テレビ15の画面を見ながら印刷条件を設定し、印刷を実行することができる。つまり、テレビ15は、プリンタ20における各種操作を実行する際のモニタ、液晶ディスプレイといった表示部に相当する。この印刷システム10では、テレビ15の表示画面とリモコン50による操作により、プリンタ20の各種印刷動作を決定する。したがって、プリンタ20自体にはボタンが設けられていない。
【0031】
プリンタ20は、主に、デジタルスチルカメラ等の画像を記憶するメモリカードMCを装着するカードスロット18、パーソナルコンピュータや外部記憶装置等と接続するUSBポート19、リモコン50と無線通信を行なう通信部21等を備えている。
【0032】
カードスロット18は、例えば、SDメモリカード(登録商標)、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア(登録商標)などに対応したスロットを備えており、複数種類の記憶媒体を取扱うことができる。USBポート19には、例えば、外部記憶装置としてのハードディスクが接続され、必要に応じてメモリカードMC内の画像を記憶することができる。通信部21は、赤外光を発信する発行ダイオードと赤外光を受信するフォトダイオードとを備え、IrDA規格に準拠した赤外線通信により、リモコン50からの操作指令を受け付ける。リモコン50からの指令は、例えば、メモリカードMC内の画像表示や、印刷条件の設定に関する指示である。このプリンタ20は、こうしたリモコン50からの指令を受けて、プリンタ20側で印刷画像、印刷条件を設定し、コンピュータを介すことなく、メモリカードMC内の画像を直接的に印刷することができる。
【0033】
なお、カードスロット18は、プリンタ20から独立した機器として設け、ケーブル等でプリンタ20と接続して構成するものとしても良い。また、USBポート19には、MO,CD−ROM/RW,DVD/RWなどを接続して、画像を記憶するものとしても良い。
【0034】
リモコン50は、主に、ユーザインターフェースとしての操作部52と、現在時刻を表示する表示部54と、プリンタ20と無線通信を行なうリモコン通信部57等を備えている。
【0035】
操作部52は、プリンタ20の印刷動作、例えば、印刷の実行や印刷条件の設定を指示する各種ボタンを有し、主にプリンタ20の起動や動作指令に使用されている。表示部54は、液晶ディスプレイからなり、リモコン50内に装着される電池58(図3参照)を使って、常時、現在時刻を表示している。リモコン通信部57は、プリンタ20と同様、赤外光を発信する発行ダイオードと赤外光を受信するフォトダイオードとを備え、IrDA規格に準拠した赤外線通信を行なう。こうした構成のリモコン50で印刷条件などを設定することで、離れた場所からプリンタ20に動作指令を行なうことができる。なお、プリンタ20とリモコン50と通信には、赤外線通信に代えて、あるいは、これと併用して、例えば、無線LAN、ブルートゥース(登録商標)など種々の双方向の無線通信を用いるものとしても良い。
【0036】
こうした機器からなる本実施例の印刷システム10では、リモコン50によるプリンタ20の動作指令の操作の際に、リモコン50側での現在時刻をプリンタ20側へ送信する。つまり、プリンタ20側には、現在時刻を管理する機能を備えず、リモコン50側の内部に時計機能を備える。このリモコン50側の時計機能に基づいて、プリンタ20側の内部時間、特に所定動作の経過時間を管理している。こうした機能を有するプリンタ20とリモコン50とについて、以下に詳細に説明する。
【0037】
図2は、このプリンタ20の内部の概略構成を示したブロック図である。図示するように、プリンタ20は、用紙Pにインクを吐出する印字ヘッドユニット25を搭載したキャリッジ30、キャリッジ30を主走査方向に駆動するキャリッジモータ32、用紙Pを搬送する紙送りモータ33、印字ヘッドユニット25やキャリッジモータ32,紙送りモータ33の動作を制御するCPU41,ROM42,RAM43,EEPROM44等を備えた制御回路40などから構成されている。
【0038】
印字ヘッドユニット25は、ブラック,シアン,ライトシアン,マゼンタ,ライトマゼンタ,イエロの各色毎に計6個のインク吐出用ヘッドを備えている。キャリッジ30には、上記のインクを収納する黒インク用カートリッジ29a,カラーインク用カートリッジ29bが装着されており、各カートリッジからのインクは、図示しないピエゾ素子の電圧を調整することで用紙Pへ吐出される。プリンタ20は、こうして微小なドットを形成してカラー印刷を行なっている。
【0039】
キャリッジモータ32は、駆動ベルト36を回転させることで、プラテン28軸と並行な摺動軸34に設置されたキャリッジ30を往復運動させている。往復運動するキャリッジ30の原点位置は、位置検出センサ39により検出され、その検出値は制御回路40に出力されている。制御回路40は、この検出値等に基づいて、キャリッジモータ32の制御を行なう。
【0040】
紙送りモータ33は、プラテン28を回転させることで、プリンタ20に供給された用紙Pを搬送する。つまり、用紙Pは、プラテン28の回転角度に応じて所定量だけ送られる。制御回路40は、種々の印刷条件に応じて、この紙送りの所定量を、紙送りモータ33の回転角度を制御することで行なっている。
【0041】
制御回路40は、各種モータなどのアクチュエータに加え、前述のカードスロット18,USBポート19,通信部21、および電源回路48等と電気的に接続している。電源回路48は、電源コンセントに装着された電源プラブを介して電力を制御回路40に供給している。電源回路48は、通信部21と電気的に接続し、リモコン50側からの所定信号を受けて、省電力モードと起動モードとを切替える。例えば、リモコン50側から電源ONの起動信号を受信して、制御回路40に電力を供給する起動モードとなり、リモコン50側から電源OFFの停止信号を受信して、制御回路40への電力供給を断つ省電力モードとなる。なお、電源回路48は、省電力モード時には、所定のインターバルで通信部21に電力を供給している。
【0042】
制御回路40内のROM42には、プリンタ20のデバイスドライバであるプリンタドライバや、プリンタ20のメンテナンスに関する各種プログラム、例えば、インク吐出用ヘッドのクリーニング処理のプログラムなどが記憶されている。
【0043】
プリンタドライバは、ラスタライズ、色補正、ハーフトニング、再配置等の各種処理を実行する機能を備え、入力したRGB形式のデータで表現される画像を、プリンタ20で印刷可能な形式であるCMY形式のデータ、実際にはC,M,Y,LC,LM,Kの各インクのドットデータに変換している。
【0044】
クリーニング処理は、各ノズルからインクを吐出してノズルの目詰まりを解消するフラッシングや、フラッシングのみではノズルの目詰まりが解消しない場合に行なう吸引クリーニングを実行する処理である。フラッシングとは、印刷データとは無関係にピエゾ素子に駆動信号を印加して各ノズルから強制的にインクを吐出することで、乾燥により粘度が増大したインクをノズルから排出する処理であり、原点位置に移動したキャリッジ30のインク吐出ヘッドにキャップ(図示せず)を装着して行なわれる。吸引クリーニングとは、インク吐出ヘッドに装着するキャップを利用し、キャップ装着時に吸引ポンプにより負圧を与え、ノズルから粘度の増加したインクを吸引する処理である。こうしたクリーニング処理は、前回の吸引クリーニングからの累積経過時間T1や、キャップの装着が実行されることなく印字動作を行なった累積印字時間T3に基づいて実行される。すなわち、プリンタ20は、クリーニング処理を実行するために時間を管理している。
【0045】
こうした時間の管理のうち、累積印字時間T3は、プリンタ20の起動中にのみ発生する時間であり、制御回路40に設けた図示しないタイマでカウントしている。このカウント値(つまり、累積印字時間T3)は、定期的にEEPROM44に記憶されている。他方、累積経過時間T1は、プリンタ20の起動時のみならず、プリンタ20が停止している時期をも計測する必要がある。そのため、累積経過時間T1は、現在時刻を基に計測される。本実施例では、累積経過時間T1は、制御回路40のCPU41内部に備えたCPUタイマ45を用いて管理、計測している。CPUタイマ45は、16ビットのカウンタであり、1時間単位で経過時間をカウントする。かかるCPUタイマ45に、リモコン50からの現在時刻を初期値として与えることで、累積経過時間T1を管理している。このCPUタイマ45の初期時刻の設定、およびクリーニング処理については、後に詳しく説明する。
【0046】
なお、本実施例ではピエゾ素子を利用したインクジェット方式のプリンタ20を用いているが、他のインクジェット方式のプリンタ(例えばバブルジェット(登録商標)),熱転写方式のプリンタ、昇華型プリンタ、レーザプリンタ、あるいは複合機など種々の方式のプリンタを採用するものとしても良い。
【0047】
図3は、リモコン50の内部の概略構成を示したブロック図である。図示するように、リモコン50は、前述の操作部52,表示部54,リモコン通信部57に加え、CPU60,ROM61,RAM62等を備え、リモコン50全体を制御するリモコン制御ユニット55、現在時刻を刻む時計回路56、電源管理回路59などを備えている。
【0048】
リモコン制御ユニット55は、リモコン通信部57,操作部52,時計回路56,電源管理回路59などと、バスにより電気的に接続されている。リモコン制御ユニット55のCPU60は、ROM61内から各種処理プログラムを呼び出し、RAM62に展開して処理を実行する。例えば、ROM61内には、操作部52の複数のボタン、例えば、電源ボタン52a,メニューボタン52b,OKボタン52c,方向ボタン52dなどの操作に対応して、プリンタ20への動作指示を決定する処理などが記憶されている。決定された動作指示は、リモコン通信部57を介して赤外線によりプリンタ20へ送信される。
【0049】
時計回路56は、電源管理回路59から、常時、電力の供給を受けて、現在時刻を刻み、これを表示部54へ表示する。また、所定の操作タイミングで、現在時刻をリモコン制御ユニット55に出力している。リモコン制御ユニット55は、入力した現在時刻を、赤外線でプリンタ20へ送信する。こうしてプリンタ20側へ送信された現在時刻は、プリンタ20でのクリーニング処理の実行時期の判断に用いられる。
【0050】
電源管理回路59は、リモコン50内部に装着される電池58からの電力を、リモコン制御ユニット55,時計回路56,表示部54に供給している。電源管理回路59は、操作部52、リモコン通信部57とも電気的に接続し、所定時間の間、操作部52からの信号入力がない場合には、リモコン制御ユニット55への電源供給を断つ省電力モードに設定する。この間も、電源管理回路59は、時計回路56と表示部54に電力を供給し続けている。この状態で、例えば、操作部52の電源ボタン52aが押下されると、電源管理回路59は、その信号を受信して省電力モードから起動モードに切り替え、リモコン制御ユニット55に電力を供給する。なお、電力の供給源である電池58として、ここでは乾電池を用いているが、例えば、一次電池、二次電池、燃料電池、あるいは、太陽電池とコンデンサの組合せなど、リモコン50に自律動作可能な電力を供給するものであればどのようなものでも良い。
【0051】
以下に、リモコン50からの時刻の送信によりプリンタ20側で実行する処理として、初期化処理、クリーニングの実行時期を記憶する記憶処理、およびクリーニング処理、について説明する。
【0052】
A−2.初期化処理:
図4は、CPUタイマ45の初期時刻を設定してプリンタ20の動作環境を整える初期化処理のフローチャートである。リモコン50の電源ボタン52aの押下操作によりプリンタ20への電源投入を指示すると、リモコン50は、電源投入信号に続いて、リモコン50側で管理する現在時刻の信号をプリンタ20へ送信する。図4に示す処理は、リモコン50からの電源投入信号を受信後のタイミングで、プリンタ20の制御回路40にて実行される。
【0053】
処理が開始されると、制御回路40は、通信部21で受信したリモコン50からの現在時刻RTの信号を入力する(ステップS400)。ここでリモコン50から送信される現在時刻RTは時間単位である。
【0054】
続いて、制御回路40は、CPUタイマ45の初期値として、入力した現在時刻RTを設定する(ステップS410)。このステップで、CPUタイマ45は、リモコン50側で管理する現在時刻RTからの経過時間をカウントする。すなわち、リモコン50操作によるプリンタ20への電源投入と共に、プリンタ20側の現在時刻PT(以下、CPUタイマ時刻PTと呼ぶ)が設定される。
【0055】
制御回路40は、CPUタイマ時刻PTの設定に続いて、電源投入時の各種アクチュエータ等の初期化動作を実行し(ステップS420)、動作環境を整えて一連の初期化処理を終了する。
【0056】
以上の初期化処理によれば、プリンタ20は電源投入の度に、リモコン50側から現在時刻RTを受信し、これを基にプリンタ20内の現在時刻(CPUタイマ時刻PT)を改めて設定することができる。つまり、プリンタ20は、電源投入後の起動期間についてのみ時間を管理すればよく、現在時刻を継続して管理する必要がない。例えば、プリンタ20の電源コンセントが抜かれ、所定の期間、プリンタ20が完全に停止した状態にあっても、次に電源投入した際にはCPUタイマ時刻PTを設定することができる。したがって、プリンタ20の起動中に、ある時刻を記憶しておくことで、その時刻からの累積時間を判断することができる。
【0057】
A−3.記憶処理:
図5は、クリーニングの実行時期を記憶する記憶処理のフローチャートである。この処理は、吸引クリーニングが実行されるタイミングで、プリンタ20の制御回路40にて実行される。
【0058】
処理が開始されると、制御回路40は、吸引クリーニング動作の終了を判断する(ステップS500)。具体的には、ノズルに装着したキャップを介しての吸引動作の終了、つまり、吸引ポンプの駆動停止信号により終了を判断している。
【0059】
続いて、制御回路40は、吸引クリーニング動作の終了時刻、すなわち、現在のCPUタイマ時刻PTを最終クリーニング時刻NTとして設定し(ステップS520)、これをEEPROM44に記憶して処理を終了する。
【0060】
こうした記憶処理は、後述するクリーニング処理によって吸引クリーニングが行なわれる場合、ユーザがリモコン50を操作して自主的に吸引クリーニング(これをマニュアルクリーニングと呼ぶ)を行なう場合、あるいは、黒インク用カートリッジ29a,カラーインク用カートリッジ29bを交換した場合(これを交換クリーニングと呼ぶ)に、実行される。EEPROM44に記憶された最終クリーニング時刻NTは、後述するクリーニング処理で前回の吸引クリーニングの実行時期として利用される。
【0061】
A−4.クリーニング処理:
図6は、インク吐出用ヘッドのクリーニング処理のフローチャートである。この処理は、所定の印字動作を実行する前に、プリンタ20の制御回路40にて実行される。
【0062】
処理が開始されると、制御回路40は、所定の時刻を入力する入力処理を実行する(ステップS600)。具体的には、初期化処理により時間の設定を行なったCPUタイマ時刻PTを、EEPROM44から記憶処理によって記憶された前回のクリーニングの実行時刻である最終クリーニング時刻NTを、EEPROM44から累積印字時間T3を、それぞれ入力する。
【0063】
制御回路40は、入力したCPUタイマ時刻PTと最終クリーニング時刻NTとに基づいて、累積経過時間T1を算出する(ステップS610)。具体的には、CPUタイマ時刻PTと最終クリーニング時刻NTとの差分を求めることで、前回の吸引クリーニング時期からの経過時間を算出している。
【0064】
続いて、算出した累積経過時間T1と入力した累積印字時間T3とから、印刷開始前に行なうクリーニングの種類を決定する(ステップS620)。具体的には、横軸を累積経過時間T1、縦軸を累積印字時間T3とするクリーニング判定表を用いて、クリーニングの種類を選定している。なお、このクリーニング判定表は、ROM42内に予め記憶されている。
【0065】
図7は、クリーニング判定表の一例を示している。図示するように、累積経過時間T1と累積印字時間T3との組合せによって、実行するクリーニング処理が異なる。例えば、累積経過時間T1と累積印字時間T3とが共に短い場合には、クリーニング処理としてフラッシングを行なう。すなわち、比較的、インクの増粘の程度が低い領域では、吐出するインク量の少ない簡易なフラッシングを実行することで、ノズルの目詰まりを解消することができる。他方、累積経過時間T1、累積印字時間T3とが共に長い場合には、クリーニング処理として吸引クリーニング(以下、これをタイマークリーニングTCLと呼ぶ)を行なう。すなわち、インクの増粘が進行している領域では、インク吐出ヘッドにキャップを装着しタイマークリーニングTCLを実行することで、フラッシングでは十分でないノズルの目詰まりを解消することができる。
【0066】
こうしたクリーニングの種類は、上記のように、大きくフラッシングとタイマークリーニングTCLとに分類されるが、フラッシング、タイマークリーニングTCLは更に詳細に分類されている。図7に示すように、フラッシングは、インク吐出量に応じてフラッシング1から4までの4段階に分けられており、数字が増加するにつれてインク吐出量が増加することを示している。また、タイマークリーニングTCLは、TCL4とTCL4Dの2段階に分けられており、TCL4,TCL4Dの順に吸引量が増加することを示している。このようにクリーニング処理を詳細に分類することで、クリーニング処理で消費するインク量を適切な量とすることができる。
【0067】
図6に戻って、クリーニング判定表から選定したクリーニングの種類が、タイマークリーニングTCLであるか否かを判断する(ステップS630)。ステップS630で、選定されたクリーニングの種類がタイマークリーニングTCLである(Yes)場合には、キャリッジ30を原点位置に移動し、キャップをインク吐出ヘッドに装着して吸引クリーニングを実行する(ステップS640)。例えば、累積経過時間T1が480時間以上、600時間未満であればタイマークリーニングTCL4を実行し、600時間以上であればタイマークリーニングTCL4Dを実行する。
【0068】
他方、ステップS630で、選定されたクリーニングの種類がタイマークリーニングTCLではない(No)場合、および、ステップS640においてタイマークリーニングTCLの実行後は、印字開始前のフラッシングを実行して(ステップS650)、一連のクリーニング処理を終了し、印字動作に移行する。具体的には、ステップS630での判断がタイマークリーニングTCLではない(No)場合には、ステップS620で選択されたフラッシング1ないしフラッシング4のいずれかを実行する。また、ステップS640においてタイマークリーニングTCLを実行した後は、図7に示したフラッシング1相当のフラッシングを実行する。タイマークリーニングTCL後にも、フラッシングを実行することで、クリーニング時にノズル内へ入り込んだ混色インクを吐出することができる。
【0069】
以上のクリーニング処理によれば、累積経過時間T1、累積印字時間T3といった時間管理に基づいて、適性なノズルのクリーニングを実行する。特に、累積経過時間T1は、リモコン50から送信される現在時刻RTに基づいて、容易に算出することができる。また、プリンタ20は、プリンタ20内での相対的な時間を管理するだけで、現在時刻を管理する必要がない。したがって、プリンタ20内に、現在時刻を計時する時計機能を備える必要がなく、時計機能を備える場合に必要となるRTC(図10参照)などの補助電源も必要ない。また、一般的にリモコンは、もともと電池を有するため、容易に時計機能を追加でき、現在時刻を管理することができる。こうした印刷システム10を構築することで、クリーニングなどのメンテナンスにおける時間管理を適切に行なうことができる。さらには、高価なRTC等が不要となるため、印刷システム10全体で部品点数を低減し、製造コストを抑えることができる。
【0070】
B.第2実施例:
B−1.印刷システムの構成:
本発明の第2実施例としての印刷システムは、第1実施例の印刷システム10と同様、テレビ15,プリンタ200,リモコン51から構成される。第2実施例の印刷システムは、リモコン51とプリンタ200との通信に、ブルートゥース(登録商標)を用いている。つまり、第2実施例のプリンタ200,リモコン51は、第1実施例のプリンタ20の通信部21,リモコン50のリモコン通信部57における赤外線通信機能に代えて、ブルートゥース(登録商標)に対応する機能を備えている。図8は、こうしたプリンタ200の内部の概略構成を示すブロック図である。図示するように、第2実施例のプリンタ200は、上述の通信部202に加え、操作パネル201の部分が、図2に示した第1実施例のプリンタ20とは異なる。したがって、その他の部分は符号を同一とし、説明を省略する。
【0071】
プリンタ200は、図3に示したリモコン50の操作部52と同様の操作用ボタンを有する操作パネル201を備えている。すなわち、操作パネル201は、電源ボタン201a,メニューボタン201b,OKボタン201c,方向ボタン201d等を備え、リモコン50を用いることなく、印刷対象となる画像の選択や、印刷条件の設定等を行なうことができる。
【0072】
操作パネル201は、電源回路48と電気的に接続しており、操作パネル201上の電源ボタン201aが押下されると、電源ONまたは電源OFFの信号が電源回路48に出力される。電源回路48は、これを受けて制御回路40へ電力の供給し、あるいは、供給を断つ。また、操作パネル201は、制御回路40とも電気的に接続しており、操作パネル201上のメニューボタン201b,OKボタン201c,方向ボタン201d等のユーザ操作の指令を制御回路40に出力する。制御回路40は、これを受けて種々の動作を実行する。つまり、第2実施例のプリンタ200は、コンピュータを介すことなく所定画像の印刷を実行することができるスタンドアロンタイプのプリンタであり、かつ、リモコン51でも操作ができるプリンタである。なお、第2実施例では、画像や印刷条件の選択などはテレビ15に表示するものとしているが、プリンタ200自体に独自の表示部を備えていても良い。
【0073】
こうした構成の第2実施例の印刷システムは、第1実施例と同様、プリンタ200側では現在時刻の管理を行なわず、リモコン51側からの現在時刻RTを受信してCPUタイマ45の初期時刻を設定する。設定したCPUタイマ時刻PTを用いて、クリーニング処理を実行している。以下に、リモコン51からの現在時刻RTを用いた初期化処理について説明する。なお、クリーニング処理、および、記憶処理については、第1実施例と同様であるため説明を省略する。
【0074】
B−2.初期化処理:
図9は、CPUタイマ45の初期時刻を設定してプリンタ20の動作環境を整える初期化処理のフローチャートである。図9(a)には、プリンタ200側で実行される処理を、図9(b)には、リモコン51側で実行される処理を、それぞれ示している。図9(a)に示す処理は、プリンタ200側の操作パネル201上で電源ボタン201aを押下操作するタイミングで、プリンタ200の制御回路40にて実行され、図9(b)に示す処理は、プリンタ200からの所定の送信信号を受けて、リモコン51のリモコン制御ユニット55にて実行される。
【0075】
処理が開始されると、プリンタ200の制御回路40は、現在時刻RTの要求信号をリモコン51に送信する(ステップS900)。具体的には、電源ボタン201aの押下の信号により、電源回路48は省電力モードの制御回路40を起動させる。起動した制御回路40は通信部202を介して信号を出力し、通信相手であるリモコン51を特定し、現在時刻RTの要求信号を出力する。
【0076】
リモコン51は、プリンタ200からの現在時刻RTの要求信号を受信する(ステップS920)。通常、省電力モードに設定されているリモコン51は、プリンタ200からの信号を受け、電源管理回路59の電力供給により、省電力モードのリモコン制御ユニット55を起動させる。起動したリモコン制御ユニット55は、プリンタ20との通信を確立し、プリンタ20からの現在時刻RTの要求信号を認識する。
【0077】
続いて、リモコン制御ユニット55は、時計回路56から現在時刻RTを入力し、これをプリンタ200側へ送信し(ステップS940)、リモコン51側での処理を終了する。
【0078】
プリンタ200の制御回路40は、リモコン51からの現在時刻RTを受信する(ステップS960)。制御回路40は、CPUタイマ45の初期値として、入力した現在時刻RTを設定する(ステップS970)。こうしてリモコン51の管理する現在時刻RTを用いて、プリンタ200側の現在時刻PT(CPUタイマ時刻PT)が設定される。
【0079】
続いて、プリンタ200の制御回路40は、電源投入時の各種アクチュエータ等の初期化動作を実行し(ステップS980)、動作環境を整えて一連の初期化処理を終了する。こうして設定されたプリンタ200の現在時刻、つまり、CPUタイマ時刻PTに基づいて、クリーニング等のメンテナンスが実行される。
【0080】
なお、初期化処理において、プリンタ200、リモコン51のそれぞれの受信時には、相手側に受信完了の信号を送信している。相手側は、受信完了の信号を受けて、次の処理に移り、あるいは、処理を終了している。
【0081】
以上の初期化処理を含む第2実施例の印刷システムによれば、プリンタ200側に設けた電源ボタン201aの操作により、プリンタ200が起動する際に、外部(リモコン51)から現在時刻を取得する。例えば、プリンタ200が長期間放置され、電源供給が断たれた状態にあっても、電源投入時に改めて現在時刻を設定することができる。したがって、プリンタ200で適切な時間管理を実行することができる。なお、第2実施例の初期化処理では、プリンタ200側の電源ボタン201aが操作された場合について説明したが、第1実施例と同様、リモコン51側の電源ボタン52a操作により、プリンタ200を起動する場合には、そのタイミングで、双方向の通信を確立し、リモコン51からプリンタ200へ現在時刻RTを送信するものとすれば良い。
【0082】
C.変形例:
本実施例の印刷システムでは、プリンタと通信する外部機器として、プリンタ専用のリモコンを例に説明したが、例えば、家電用リモコンや携帯電話であっても良い。この場合、家電用リモコンや携帯電話等に、プリンタの通信機能と、現在時刻の管理機能を備え、所定のタイミングでプリンタからの要求に応じて、現在時刻を送信するものとすれば良い。特に、既存の通信機能や時計機能を備えた携帯電話を用いれば、比較的容易に印刷システムを構築することができる。また、現在時刻を管理している各種機器とプリンタとをブルートゥース等の通信で結ぶことで、プリンタは機器が置いてある場所を問わず、通信相手を特定し、容易に現在時刻を取得することができる。
【0083】
また、本発明の印刷システムによる時間管理は、プリンタのノズルのクリーニングのみならず、種々のプリンタ動作にも利用できる。例えば、クリーニング時期の判断以外のメンテナンス処理として、廃液蒸発計算にも利用できる。インクジェット方式のプリンタでは、クリーニング時にノズルから排出、吸引したインク(これを廃液と呼ぶ)を廃液タンクに収容している。廃液タンク内に溜まった廃液は、時間経過と共に一部が蒸発するため、残存する廃液量を正確に計算するためには、時間のパラメータが用いられる。こうした廃液蒸発計算に、本印刷システムにより管理される時間を用いることで、より一層正確に廃液量を計算でき、その量に応じて、適切な処理を実行することができる。
【0084】
さらに、メンテナンス以外の動作、例えば、メモリカードMC内の画像データを記憶する際の時刻表示にも利用できる。この場合、USBポート19に、外部記憶装置としてハードディスクを接続し、メモリカードMC内の画像データをハードディスクに記憶する。記憶の際に、プリンタが取得した現在時刻を付すことができる。勿論、メモリカードMCの画像データに代えて、デジタルスチルカメラから直接取込んだ画像データを記憶する際にも利用できる。
【0085】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。第2実施例では、プリンタを起動するタイミングで、現在時刻を取得するものとして説明したが、これに限るものではない。例えば、プリンタ起動後のタイミングであっても良いし、あるインターバル毎に現在時刻を設定するものとしても良い。また、予めプリンタの電源投入後、所定時間の経過時、クリーニングを実行するか否かの判断を行なうものとし、その判断タイミングで現在時刻を取得するなど、プリンタ側で現在時刻が必要となるタイミングであっても良い。こうした場合にも、容易に現在時刻を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1実施例としての印刷システムを示す概略構成図である。
【図2】プリンタの内部の概略構成を示したブロック図である。
【図3】リモコンの内部の概略構成を示したブロック図である。
【図4】CPUタイマの初期時刻を設定してプリンタの動作環境を整える初期化処理のフローチャートである。
【図5】クリーニングの実行時期を記憶する記憶処理のフローチャートである。
【図6】インク吐出用ヘッドのクリーニング処理のフローチャートである。
【図7】クリーニング判定表の一例である。
【図8】プリンタの内部の概略構成を示すブロック図である。
【図9】CPUタイマの初期時刻を設定してプリンタの動作環境を整える初期化処理のフローチャートである。
【図10】従来のプリンタの一部を示す説明図である。
【符号の説明】
【0087】
10...印刷システム
15...テレビ
18...カードスロット
19...USBポート
20...プリンタ
21...通信部
25...印字ヘッドユニット
28...プラテン
29a...黒インク用カートリッジ
29b...カラーインク用カートリッジ
30...キャリッジ
32...キャリッジモータ
33...モータ
34...摺動軸
36...駆動ベルト
39...位置検出センサ
40...制御回路
41...CPU
42...ROM
43...RAM
44...EEPROM
48...電源回路
50...リモコン
51...リモコン
52...操作部
52a...電源ボタン
52b...メニューボタン
52c...OKボタン
52d...方向ボタン
54...表示部
55...リモコン制御ユニット
56...時計回路
57...リモコン通信部
58...電池
59...電源管理回路
60...CPU
61...ROM
62...RAM
200...プリンタ
201...操作パネル
201a...電源ボタン
201b...メニューボタン
201c...OKボタン
201d...方向ボタン
202...通信部
MC...メモリカード
NT...最終クリーニング時刻
P...用紙
PT...CPUタイマ時刻
RT...現在時刻
T1...累積経過時間
T3...累積印字時間
TCL...タイマークリーニング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字ヘッドを用いて印刷を実行する印刷装置と、該印刷装置と所定データの通信を行なう通信機器とからなる印刷システムであって、
前記通信機器は、
内蔵した電池の電力を用いて、現在時刻を計時する時計部と、
前記印刷装置と無線通信を行なう通信部と、
所定のタイミングで、前記現在時刻を前記印刷装置に送信する通信制御部とを備え、
前記印刷装置は、
前記通信機器と無線通信を行なう無線通信部と、
前記通信機器から受信した前記現在時刻を基準に前記印刷装置内の時間を管理する時間管理部と、
前記印刷装置内の時間に基づいて、前記印刷装置の所定動作を制御する制御部と
を備えた印刷システム。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷システムであって、
前記所定動作は、前記印刷装置のメンテナンス動作であり、
前記制御部は、前記印刷装置内の時間の経過に基づいてメンテナンス時期を判断する印刷システム。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷システムであって、
前記メンテナンス時期は、前記印字ヘッドのクリーニング時期である印刷システム。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷システムであって、
前記印刷装置は、更に、書換え可能な記憶部を備え、
前記記憶部は、前記クリーニングを実行する度に時刻を記憶する印刷システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷システムであって、
前記印刷装置は、前記制御部として中央演算処理装置を有し、
前記中央演算処理装置の内部に設けられた内部タイマによって、前記時間を管理する印刷システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の印刷システムであって、
前記通信機器は、前記印刷装置を遠隔操作する操作ボタンを備えたリモコンである印刷システム。
【請求項7】
請求項6に記載の印刷システムであって、
前記所定のタイミングは、前記リモコンの操作ボタンによって前記印刷装置を起動するタイミングである印刷システム。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の印刷システムであって、
前記印刷装置は、更に、
前記印刷装置を起動する電源操作部と、
前記起動の操作の際に、現在時刻の要求信号を送信する無線通信制御部とを備え、
前記所定のタイミングは、前記通信機器が前記印刷装置からの要求信号を受信したタイミングである印刷システム。
【請求項9】
現在時刻を管理するリモコンからの指令で、所定の動作を行なう印刷装置であって、
前記リモコンと無線通信を行なう無線通信部と、
前記リモコンから前記現在時刻を取得し、該取得した現在時刻を基準に前記印刷装置内の時間を管理する時間管理部と、
前記印刷装置内の時間に基づいて、前記印刷装置の所定動作を制御する制御部と
を備えた印刷装置。
【請求項10】
印刷装置を操作する操作ボタンを備えたリモコンであって、
内蔵した電池の電力を用いて、現在時刻を計時する時計部と、
前記印刷装置と無線通信を行なう通信部と、
所定のタイミングで、前記現在時刻を前記印刷装置に送信する通信制御部と
を備えたリモコン。
【請求項11】
印字ヘッドを用いて印刷を実行する印刷装置と該印刷装置を遠隔操作するリモコンとを備えた印刷システムで、該印字ヘッドのクリーニング時期を判断するクリーニング方法であって、
前記リモコンに内蔵した電池の電力を用いて、該リモコン側で現在時刻を計時し、
所定のタイミングで、前記リモコンから前記印刷装置に前記現在時刻を送信し、
送信された前記現在時刻を受信し、該現在時刻に基づいて前記印刷装置内の時間を管理し、
前記印刷装置内の時間の経過に基づいて前記印字ヘッドのクリーニング時期を判断する
クリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−167987(P2006−167987A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360173(P2004−360173)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】