説明

印刷方法および梱包材

【課題】梱包材等の印刷対象物に対してレーザ印刷によって印刷を行った際の印刷内容の視認性を高める。
【解決手段】印刷対象物1の表面に対して、当該表面の地色よりも明度が低いあるいは彩度が高い下地色の下地層3aを印刷する下地層印刷工程と、下地層の形成領域に対してレーザ光を照射して下地層あるいは下地層及び印刷対象物の表面の一部を除去することにより印刷を行うレーザ印刷工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷方法および梱包材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像形成装置のトナーなどの消耗品や部品等を梱包する段ボール等の梱包材に対しては、内部の商品や製造者等を示す情報が印刷されている。
そして、一般的には梱包材に対する印刷は、例えば特許文献1に示すように、版とインクとを用いたベタ印刷によって行われる。
【0003】
ところで、近年は、例え同一の商品であっても、多種多様な仕向地に送られる。そして、梱包材に印刷される内容は仕向地によって異なる場合がある。
このように梱包材に印刷される内容が異なる場合には、印刷内容ごとに版を取り替える必要があり、版の製造コストが増大すると共に作業負担が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−76794号公報
【特許文献2】特開平11−152117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような製造コストの増大及び作業負担の増大に対応するために、ソフトウェアの変更のみで印刷内容を変化させることができるレーザ印刷(特許文献2参照)を用いて梱包材に対して印刷することが提案されている。
具体的には、梱包材の表面に対してレーザ光を照射し、梱包材の表層をレーザ光によって溶融あるいは焼却することによって印刷を行うことが提案されている。
【0006】
ところが、画像形成装置の消耗品や部品を含め一般的な部品を梱包する梱包材は、梱包材の内部空間を断熱する必要がないことから特許文献2に示すような金属箔を有するものではない。このため、一般的な部品を梱包する梱包材に特許文献2に示された方法を応用することは考えられていなかった。
【0007】
一般的な部品を梱包する梱包材に対しても直接レーザ光を照射して印刷を行うことにより仕向地毎の版を不要にすることなどが考えられる。また、生産工程においてレーザ印刷を行うことにより、多種類の印刷物の作成を不要として効率を向上させることが考えられる。しかしながら、実際に梱包材の表面に対してレーザ光を直接照射して形成された印刷内容は、印刷内容と周りの領域とのコントラストが低く極めて視認性の悪いものであった。また、ベタ印刷に比べてレーザ印刷は印刷に時間がかかるという問題がある。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、梱包材等の印刷対象物に対してベタ印刷とレーザ印刷の組合せによって印刷を行うことによる印刷内容の視認性および印刷効率の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための印刷手段として、以下の構成を採用する。また、上記の課題を解決するための以下の特徴を有している梱包材を提供する。
【0010】
第1の発明は、印刷対象物に対して印刷を行う印刷方法であって、上記印刷対象物の表面に対して、当該表面の地色よりも明度が低いあるいは彩度が高い下地色の下地層を印刷する下地層印刷工程と、上記下地層の形成領域に対してレーザ光を照射して上記下地層あるいは上記下地層及び上記印刷対象物の表面の一部を除去することにより印刷を行うレーザ印刷工程とを有するという構成を採用する。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記印刷対象物が段ボールからなる梱包材であるという構成を採用する。
【0012】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記下地色が黒色であるという構成を採用する。
【0013】
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記レーザ印刷工程が、固定配置されたレーザ照射手段に対して上記印刷対象物を移動させて、印刷領域を上記レーザ照射手段に対向配置した状態で行われるという構成を採用する。
【0014】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記印刷物対象物が第1印刷領域と第2印刷領域とを有する場合に、上記レーザ印刷工程として、上記第1印刷領域を上記レーザ照射手段に対向配置して印刷する第1のレーザ印刷工程と、引き続いて上記第2印刷領域を上記レーザ照射手段に対向配置して印刷する第2のレーザ印刷工程を行うという構成を採用する。
【0015】
第6の発明は、上記第5の発明において、上記印刷対象物が底面と天面と複数の側面を有する箱体であり、上記側面の1つに含まれる上記第1印刷領域に対して印刷する上記第1のレーザ印刷工程を行い、引き続いて上記箱体を垂直軸周りに回転させて別の上記側面に含まれる上記第2印刷領域に対して印刷する上記第2のレーザ印刷工程を行なうという構成を採用する。
【0016】
第7の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記印刷対象物が第1印刷領域と第2印刷領域とを有する場合に、上記レーザ印刷工程にて、上記上記第1印刷領域と上記第2印刷領域との各々に対して固定配置されたレーザ照射手段を対向配置した状態で印刷を行うという構成を採用する。
【0017】
第8の発明は、上記第1〜第7いずれかの発明において、上記下地層印刷工程にて、上記印刷対象物の表面と直交する方向から見た場合の上記下地層の形成領域の姿勢を示すマークを印刷し、上記レーザ印刷工程にて、上記マークから上記下地層の形成領域の姿勢を検出して印刷を行うという構成を採用する。
【0018】
第9の発明は、上記第1〜第8いずれかの発明において、 上記印刷対象物に対して印刷する印刷内容が、上記印刷対象物によって異なる変化部分と、上記印刷対象物によって変化しない固定部分とを含む場合に、上記下地層形成工程にて、上記変化部分の上記下地層と上記固定部分の印刷内容とを印刷し、上記レーザ印刷工程にて、上記変化部分の印刷内容を印刷するという構成を採用する。
【0019】
第10の発明は、上記第1〜第9いずれかの発明において、上記レーザ印刷工程が、上記印刷対象物と一体化される部品の生産工程に合わせて行われているという構成を採用する。
【0020】
第11の発明は、上記第10の発明において、上記印刷対象物は画像形成装置に用いるトナーが充填されたトナー容器を有するトナーカートリッジを梱包するための梱包材であり、上記レーザ印刷工程は上記トナー容器にトナーを充填する生産工程に合わせて行われるという構成を採用する。
【0021】
第12の発明は、被梱包物を収容する梱包材であり、表面に対して形成されると共に上記表面の地色よりも明度が低いあるいは彩度が高い下地色の下地層と、上記下地層あるいは上記下地層及び上記表面の一部を除去することによって形成されるレーザ印刷領域とを有するという構成を採用する。
【0022】
第13の発明は、上記第12の発明において、段ボールからなるという構成を採用する。
【0023】
第14の発明は、上記第12の発明において、上記被梱包物が複数個収納可能であり、底面と天面と複数の側面を有する箱体形状であり、上記複数の側面の少なくとの1つの面に上記下地層と上記レーザ印刷領域とを有するという構成を採用する。
【0024】
第15の発明は、上記第14の発明において、上記複数の側面が互いに対向する側面を有し、上記互いに対向する側面に上記下地層と上記レーザ印刷領域が形成されているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、印刷対象物の表面の地色よりも明度が低いあるいは彩度が高い下地色の下地層を当該印刷対処物の表面に印刷し、この下地層が印刷された領域にレーザ光を照射してレーザ印刷を行う。
ここで、レーザ印刷によって描かれた印刷内容(文字や図形等)の色は、印刷対象物の表面の地色と同色あるいは近い色となる。このため、本発明によれば、レーザ印刷による印刷内容とその周囲との明度及び彩度の少なくとも一方に大きな差が生じ、この結果、レーザ印刷によって描かれた印刷内容をはっきりとさせることができる。
したがって本発明によれば、梱包材等の印刷対象物に対してレーザ印刷によって印刷を行った際の印刷内容の視認性を高めることが可能となる。
また、本発明によれば、被梱包物を収容する梱包材において、表面に対して形成されると共に上記表面の地色よりも明度が低いあるいは彩度が高い下地色の下地層と、上記下地層あるいは上記下地層及び上記梱包材の表面の一部を除去することによって形成されるレーザ印刷領域とを有する。したがって、仕向地毎に印刷の版を作り交換することが不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態における印刷方法によって予め決められた所定の印刷内容が印刷された梱包材の一部を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態における印刷方法におけるベタ印刷の工程を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態における印刷方法におけるレーザ印刷の工程を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態における印刷方法によって印刷された印刷内容の視認性を確認するための写真である。
【図5】本発明の一実施形態における印刷方法によるレーザ印刷装置の基本構成を模式的に示す説明図である。(a)は水平面に印刷する構成であり、(b)は垂直面に印刷する構成である。
【図6】本発明の一実施形態における印刷方法によるレーザ印刷装置の別の基本構成を模式的に示す説明図である。(a)は水平面に印刷する構成であり、(b)は垂直面に印刷する構成である。
【図7】トナーカートリッジの生産工程において本発明の印刷方法を実施する構成を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施形態における梱包材を示す説明図である。(a)はトナーカートリッジを収納する個装梱包材である。(b)はトナーカートリッジを収納した個装梱包品を複数収納する外箱の梱包材である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明に係る印刷方法の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
なお、以下の説明における印刷内容は、あくまでも一例であり、この他の印刷内容を印刷する際に、本発明の印刷方法を適用することも、勿論可能である。
【0028】
図1は、本実施形態の印刷方法によって予め決められた所定の印刷内容が印刷された梱包材の一部を示す平面図である。
この図に示すように、本実施形態の印刷方法では、段ボールからなる梱包材1の表面に対して、ロゴマーク2と、下地3と、商品型番4と、注意書き5と、バーコード6と、姿勢検出用マーク7(マーク)が印刷されている。
なお、姿勢検出用マーク7は、梱包材1の表面と直交する方向から見た場合の下地3(下地層の形成領域)の姿勢を示すものである。
【0029】
上述の印刷内容のうち、商品型番4及びバーコード6は、梱包材1によって梱包された商品(被梱包物)の仕向地等によって変化する変化部分である。
一方、上述の印刷内容のうち、ロゴマーク2と、下地3と、注意書き5と、姿勢検出用マーク7とは、梱包材1によって梱包された商品の仕向地等によって変化しない固定部分である。
【0030】
そして、本実施形態の印刷方法では、変化部分である商品型番4とバーコード6をレーザ印刷によって印刷し、固定部分であるロゴマーク2と、下地3と、注意書き5と、姿勢検出用マーク7とをインクと版とを用いるベタ印刷によって印刷する。
【0031】
なお、レーザ印刷は、ベタ印刷と比較して印刷に必要とされる時間が長い。このため、レーザ印刷によって印刷される内容、すなわち商品型番4は、梱包材1の1つ当たりの印刷時間を予め定められた範囲(例えば、被梱包物に対する作業に必要とされるタクトタイム内)に抑えるために、印刷時間が短縮されるようにデザインが工夫されている。
【0032】
まず、現在のところ、レーザ印刷装置が備える1つのレーザ照射ヘッドにおいて当該レーザ照射ヘッドを移動させることなく1度に印刷できる範囲は、300mm×300mmの範囲である。
このため、本実施形態においては、商品型番4は、300mm×300mmの範囲に収まるように全体サイズに設定されている。
【0033】
また、レーザ印刷装置が備えるレーザ照射ヘッド(レーザ照射手段)は、1度に印刷できる範囲を印刷するに当たり、レーザ光を横方向に走査しながら、印刷を行う。この際、1走査ライン中には、印刷内容のデザインによって、レーザ光を照射する領域と照射しない領域とが存在することになる。そして、1走査ラインにおけるレーザ光を照射する距離が同一であるとするならば、レーザ光を照射する範囲ができるだけ纏まって配置されている方が、1走査ラインの印刷時間が短縮される。
このため、本実施形態においては、レーザ光を照射する範囲ができるだけ纏まるように、レーザ印刷におけるレーザ光の照射位置のレイアウト(すなわち商品型番4のデザイン)が設定されている。
【0034】
また、1走査ライン中におけるレーザ光を照射する領域が少ないほど、1走査ラインの印刷時間が短縮される。
このため、本実施形態においては、レーザ光を照射する範囲ができるだけ少なくなるように、商品型番4がハッチングをかけられたデザインに設定されている。
【0035】
つまり、本実施形態の印刷方法においては、変化部分である商品型番4のデザイン(大きさ、文字レイアウト及び文字デザイン)とバーコード6のサイズが、梱包材1に印刷を行う予め決められたタクトタイムに基づいて設定されている。
【0036】
次に、図2及び図3を参照して、本実施形態の印刷方法について、時系列的により詳細に説明する。
なお、図2及び図3において、(a)が梱包材1を表面と直交する方向から見た平面図であり、(b)が(a)のA−A線断面を模式的に示した断面図である。
【0037】
本実施形態の印刷方法では、まず図2に示すように、梱包材1に対して、ベタ印刷を行う。
このベタ印刷では、固定部分であるロゴマーク2と、下地3と、注意書き5と、姿勢検出用マーク7とを印刷する。
【0038】
なお、本実施形態の印刷方法においては、ベタ印刷にて用いられるインクとして、梱包材1の地色よりも明度が低くかつ彩度が高い色である黒色のインクを選択している。
このため、図2(b)に示すように、レーザ印刷がされる領域(すなわち下地3が印刷される領域)には、梱包材1の表面に対して、当該表面の地色よりも明度が低くかつ彩度が高い黒色(下地色)の下地層3aが印刷にて形成されることとなる。
つまり、本実施形態の印刷方法においては、ベタ印刷を行う工程が、本発明における印刷対象物の表面に対して、当該表面の地色よりも明度が低いあるいは彩度が高い下地色の下地層を印刷する下地層印刷工程に相当するものとなっている。
【0039】
続いて、本実施形態の印刷方法においては、下地3(下地層3aの形成領域)に対してレーザ光を照射して下地層3a(あるいは下地層3a及び梱包材1の表面)の一部を溶融あるいは焼却することで除去することによって、図3に示すように、商品型番4およびバーコード6を印刷する(レーザ印刷工程)。
【0040】
なお、レーザ印刷は、レーザ印刷装置によって行われる。このレーザ印刷装置は、レーザ光を射出するヘッドと、梱包材1に形成された姿勢検出用マーク7を検出するためのセンサを備えている。
そして、レーザ印刷装置は、センサによって梱包材1に形成された姿勢検出用マーク7の位置を検出し、この検出結果からから下地3の姿勢(下地層3aの形成領域の姿勢)を検出する。その後、レーザ印刷装置は、検出した下地3の姿勢から、ヘッドと梱包材1との位置関係やレーザ光の照射位置を調節することによって、下地3上の正確な位置に商品型番4を印刷する。
【0041】
以上のような本実施形態の印刷方法によれば、梱包材1の表面の地色よりも明度が低くかつ彩度が高い黒色の下地層3aを梱包材1の表面に印刷し、この下地層3aが印刷された領域にレーザ光を照射してレーザ印刷を行う。
ここで、レーザ印刷によって描かれた印刷内容(すなわち商品型番4)の色は、梱包材1の表面の地色と同色あるいは近い色となる。
【0042】
図4(a)は梱包材1の表面に下地層3aを形成することなくレーザ印刷を行った写真である。また、図4(b)は梱包材1の表面に下地層3aを形成してからレーザ印刷を行った写真である。
本実施形態の印刷方法によれば、レーザ印刷による印刷内容とその周囲との明度及び彩度に大きな差が生じ、この結果、レーザ印刷によって描かれた商品型番4を図4(b)に示すように、はっきりとさせることができる。
したがって、本実施形態の印刷方法によれば、梱包材1に対してレーザ印刷によって印刷を行った際の印刷内容の視認性を高めることが可能となる。
【0043】
また、本実施形態の印刷方法においては、本発明の印刷対象物が段ボールからなる梱包材1となっている。
図4(a)に示すように、印刷対象物が段ボールからなる梱包材1では、下地層3aを形成することなくレーザ印刷を行った場合の印刷内容の視認性が特に悪い。
本発明によれば、このような段ボールからなる梱包材1に対してレーザ印刷による印刷を行った場合であっても、図4(b)に示すように、印刷内容の視認性を高めることができる。
【0044】
また、本実施形態の印刷方法においては、下地層3aの色である下地色が黒色とした。
段ボールからなる梱包材1の地色は、白に近い色であるため、下地色を黒色とすることによって、特にレーザ印刷による印刷内容の視認性を高めることが可能となる。
【0045】
また、本実施形態の印刷方法においては、ベタ印刷にて、下地層3aの形成領域の姿勢を示す姿勢検出用マーク7を印刷し、レーザ印刷の際に、姿勢検出用マーク7から下地層3aの形成領域の姿勢を検出して印刷を行う。
このため、下地3上の正確な位置に商品型番4を印刷することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態の印刷方法においては、梱包材1に対して印刷する印刷内容が、梱包材1の仕向地等によって異なる変化部分と、梱包材1の仕向地等によって変化しない固定部分とを含み、ベタ印刷にて、変化部分の下地層3aと固定部分の印刷内容とを印刷し、レーザ印刷にて、変化部分の印刷内容を印刷する。
つまり、本実施形態の印刷方法においては、ベタ印刷の際の型を変更する必要がない印刷内容についてはベタ印刷によって印刷し、ベタ印刷では型の変更を要する印刷内容についてはレーザ印刷によって印刷している。
このため、本実施形態の印刷方法によれば、型の変更を要さず、かつ、ベタ印刷よりも印刷時間を要するレーザ印刷による印刷箇所を最小限に抑えることができ、印刷時間の増加を抑制しつつ印刷コストを削減することができる。
【0047】
さらに、本実施形態の印刷方法においては、変化部分である商品型番4を印刷する広さ、及び商品型番4を印刷する際におけるレーザ光の照射位置のレイアウトが、予め決められたタクトタイムに基づいて設定されている。
このため、レーザ印刷を行うにも関わらず、梱包材1に印刷するタクトタイムを従来のベタ印刷のみを用いる場合と同程度にまで抑えることが可能となる。
【0048】
次に、上述のレーザ印刷装置および当該レーザ印刷装置を用いた印刷方法(レーザ印刷工程)について、図5〜図8を参照して、より詳細に説明する。ただし、以下の図5〜図8に示す印刷内容は、図面における視認性を向上させるために、適宜簡素化して示している。
【0049】
図5は本発明の一実施形態における印刷方法によるレーザ印刷装置の基本構成を模式的に示す説明図である。(a)は水平面に印刷する構成であり、(b)は垂直面に印刷する構成である。
レーザ印刷装置10は印刷対象物を位置決めして指示するための支持台11と、支持台11に支持された印刷対象物13の表面にレーザ光を照射するレーザ照射ヘッド12とを備えている。
【0050】
図5(a)の構成では、支持台11は水平な支持面で印刷対象物13をその端面13aを位置決め手段などに当接させて位置決めした状態で支持する。レーザ照射ヘッド12は支持台11の支持面に対向して上方に固定配置されている。そして、支持台11に載置された印刷対象物13の上面13b(水平面)に対して、点線で示す照射領域14の範囲内で印刷データに応じてレーザ光を照射して印刷を行う。この構成は、比較的小さな板状部材や梱包箱などに印刷する際に適している。印刷対象物を支持面に載置するだけで位置決めでき、印刷対象物を簡単な構成で容易に支持することが可能である。
【0051】
図5(b)の構成は比較的大きな梱包材(底面と天面と複数の側面を有する箱体)などに印刷する際に適した構成である。この構成では、支持台11は、支持面で箱体の印刷対象物13をその側面13cを位置決め手段などに当接させて位置決めした状態で支持する。レーザ照射ヘッド12は印刷対象物13の垂直に立った側面13c(垂直面)に対向した側方に固定配置されている。そして、支持台11に載置された印刷対象物13の側面13cに対して、印刷データに応じてレーザ光を照射して印刷を行う。
【0052】
また、支持台11を回転可能な構成にすることにより、印刷対象物13を垂直軸周りに回転させてレーザ照射ヘッド12に対向する側面を切り替えることで、複数の側面に印刷することが可能である。支持台11を大きくすることなく、限られたスペースで簡単な構成により大きな印刷対象物へのレーザ印刷が可能である。
つまり、本構成では、固定配置されたレーザ照射ヘッド12に対して印刷対象物13を移動させて、レーザ印刷すべき領域(印刷領域)をレーザ照射ヘッド12に対向配置した状態でレーザ印刷が行われる。
また、本構成においては、印刷物対象物13が複数の印刷領域(第1印刷領域と第2印刷領域)を有しており、第1の側面に含まれる第1印刷領域をレーザ照射ヘッド12に対向配置してレーザ印刷を行い(第1のレーザ印刷工程)と、引き続いて第2の側面に含まれる第2印刷領域をレーザ照射装置12に対向配置してレーザ印刷を行う(第2のレーザ印刷工程)。
【0053】
図6は、本発明の一実施形態における印刷方法によるレーザ印刷装置の別の基本構成を模式的に示す説明図である。(a)は水平面に印刷する構成であり、(b)は垂直面に印刷する構成である。
【0054】
図6(a)の構成では、2台のレーザ照射ヘッド12が支持台11の支持面に対向して上方に固定配置されている。これにより、1回のレーザ印刷工程において1つのレーザ照射ヘッドの照射領域14の範囲内に限らずにレーザ印刷を行うことが可能になる。また、図5(a)のように1つのレーザ照射ヘッド12の装置において、支持台11を移動可能な構成として複数回のレーザ印刷工程を連続して行う構成も可能である。
【0055】
図6(b)の構成では、レーザ照射ヘッド12は印刷対象物13の垂直方向の対向する2の側面13c1、13c2の各々の側方に固定配置されている。これにより、1回のレーザ印刷工程において、2つの側面13c1、13c2にレーザ印刷を行うことが可能である。
つまり、本構成においては、印刷物対象物13が複数の印刷領域(第1印刷領域と第2印刷領域)を有しており、第1の側面に含まれる第1印刷領域と第2の側面に含まれる第2印刷領域との各々に対して固定配置されたレーザ照射ヘッド12を対向配置した状態でレーザ印刷を行う。
【0056】
また、図5(b)に示した支持台11が回転する構成と組み合わせて、2回のレーザ印刷工程において4つの側面13c全てにレーザ印刷を行うことも可能である。
【0057】
以上説明したように、図6(a)及び(b)に示す複数のレーザ照射ヘッドを設ける構成により、レーザ印刷の時間を短縮することが可能である。
【0058】
図7はトナーカートリッジの生産工程において本発明の印刷方法を実施する構成を模式的に示す説明図である。トナーカートリッジ30(図8(a)参照)は画像形成装置において使用されるものである。図7に示すように、トナーカートリッジ30の生産工程においては、トナー容器20にトナーを充填する工程、トナーが充填されたトナー容器を有するトナーカートリッジ30をそれぞれに梱包材21で個装梱包する工程、個装梱包されたトナーカートリッジ30を複数個まとめて梱包箱22に収納して出荷するための出荷梱包などの工程がある。
【0059】
そして、この生産工程の中において、梱包材21と梱包箱22の印刷において本発明のレーザ印刷手段を用いている。トナー容器20にトナーを充填する工程に併行して、梱包材21へのレーザ印刷を行う個装梱包の印刷工程が設けられている。そして、生産ラインの下流側では、トナーが充填されたトナー容器20を有するトナーカートリッジ30をレーザ印刷された梱包材21に収納する個装梱包の工程が行われる。また、その下流側では個装梱包されたトナーカートリッジ30を9つまとめて梱包箱22に収納する出荷梱包の工程が行われる。更に、トナーカートリッジ30を梱包した状態の梱包箱22に対してレーザ印刷を行う出荷梱包の印刷工程が行われている。
【0060】
ここで、トナーカートリッジ30の生産工程のタクトタイムはトナー容器20にトナーを充填する工程に要する時間に設定される。よって、個装梱包の印刷はこのタクトタイム以内に行うことが必要である。また、出荷梱包の印刷は次の出荷梱包の作業が完了するまでの9タクトタイム以内に行うことが必要である。そして、図個装梱包の印刷においては図5(a)又は図6(a)に示すレーザ印刷の構成を用い、出荷梱包の印刷においては図5(b)又は図6(b)に示すレーザ印刷の構成を用いて、図3に示すレーザ印刷を行うことによりタクトタイム以内のレーザ印刷を行うことが可能である。
【0061】
図8は、本発明の一実施形態における梱包材を示す説明図である。(a)はトナーカートリッジ30(被梱包物)を収納する個装梱包材である。(b)はトナーカートリッジ30を収納した個装梱包品(被梱包物)を複数収納する外箱の梱包材である。
【0062】
図8(a)は、梱包材31はトナーカートリッジ30を個々に梱包するためのものである。梱包材31には隣接する2つの側面31a、31bにおいて、ベタ印刷31cの領域に商品型番31dあるいは、商品型番31dおよびバーコード31eがレーザ印刷により印刷されている。これにより、仕向地に対応する商品別に印刷の版を作成することなく梱包箱を作成することが可能である。また、商品型番31dと、バーコード31e以外に必要に応じた情報を追加して印刷することも容易である。
【0063】
図8(b)に示す梱包箱32は、個装梱包されたトナーカートリッジ30を出荷するために複数個まとめて梱包するものである。梱包箱32の4つの側面にそれぞれ、ベタ印刷された領域32aにレーザ印刷で商品型番32bや、バーコード32cがレーザ印刷されている。梱包箱32は比較的大きな形状であるが、複数の面に商品型番32bなどが印刷されているため、容易に識別することが可能である。
【0064】
このような本実施形態の梱包材31及び梱包箱32は、表面に対して形成されると共に表面の地色よりも明度が低いあるいは彩度が高い下地色の下地層と、下地層あるいは下地層及び表面の一部を除去することによって形成されるレーザ印刷領域とを備えたものとなる。
【0065】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0066】
例えば、上記実施形態においては、本発明の印刷対象物が、段ボールからなる梱包材1である構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、印刷対象物が段ボールによらない梱包材とすることもでき、また印刷対象物が梱包材でない構成を採用することも可能である。
【0067】
また、上記実施形態においては、本発明における下地色が黒色である構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、梱包材1の表面の地色よりも明度が低いあるいは彩度が高い下地色を用いることができ、下地色が緑色や紫色であっても良い。
【0068】
また、上記実施形態においては、ベタ印刷の際に、姿勢検出用マーク7を印刷する構成について説明した。
この姿勢検出用マーク7の形状や配置はあくまでも一例であり、これに限定されるものではない。
【0069】
また、上記実施形態においては、梱包材1の一面のみを図示しているが、画像形成装置の部品等に用いられる梱包材は、通常、箱形状を有している。このため、梱包材の各面に対して、本発明の印刷方法によって印刷することで、梱包材の全面の印刷を本発明の印刷方法にて印刷することができる。
【符号の説明】
【0070】
1……梱包材(印刷対象物)、2……ロゴマーク、3……下地、3a……下地層、4……商品型番、5……注意書き、6……バーコード、7……姿勢検出用マーク(マーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象物に対して印刷を行う印刷方法であって、
前記印刷対象物の表面に対して、当該表面の地色よりも明度が低いあるいは彩度が高い下地色の下地層を印刷する下地層印刷工程と、
前記下地層の形成領域に対してレーザ光を照射して前記下地層あるいは前記下地層及び前記印刷対象物の表面の一部を除去することにより印刷を行うレーザ印刷工程と
を有することを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記印刷対象物が段ボールからなる梱包材であることを特徴とする請求項1記載の印刷方法。
【請求項3】
前記下地色が黒色であることを特徴とする請求項2記載の印刷方法。
【請求項4】
前記レーザ印刷工程は、固定配置されたレーザ照射手段に対して前記印刷対象物を移動させて、印刷領域を前記レーザ照射手段に対向配置した状態で行われることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の印刷方法。
【請求項5】
前記印刷物対象物が第1印刷領域と第2印刷領域とを有する場合に、前記レーザ印刷工程として、前記第1印刷領域を前記レーザ照射手段に対向配置して印刷する第1のレーザ印刷工程と、引き続いて前記第2印刷領域を前記レーザ照射手段に対向配置して印刷する第2のレーザ印刷工程を行うことを特徴とする請求項4に記載の印刷方法。
【請求項6】
前記印刷対象物が底面と天面と複数の側面を有する箱体であり、前記側面の1つに含まれる前記第1印刷領域に対して印刷する前記第1のレーザ印刷工程を行い、引き続いて前記箱体を垂直軸周りに回転させて別の前記側面に含まれる前記第2印刷領域に対して印刷する前記第2のレーザ印刷工程を行なうことを特徴とする請求項5に記載の印刷方法。
【請求項7】
前記印刷対象物が第1印刷領域と第2印刷領域とを有する場合に、前記レーザ印刷工程にて、前記前記第1印刷領域と前記第2印刷領域との各々に対して固定配置されたレーザ照射手段を対向配置した状態で印刷を行うことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の印刷方法。
【請求項8】
前記下地層印刷工程にて、前記印刷対象物の表面と直交する方向から見た場合の前記下地層の形成領域の姿勢を示すマークを印刷し、
前記レーザ印刷工程にて、前記マークから前記下地層の形成領域の姿勢を検出して印刷を行う
ことを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の印刷方法。
【請求項9】
前記印刷対象物に対して印刷する印刷内容が、前記印刷対象物によって異なる変化部分と、前記印刷対象物によって変化しない固定部分とを含む場合に、
前記下地層形成工程にて、前記変化部分の前記下地層と前記固定部分の印刷内容とを印刷し、
前記レーザ印刷工程にて、前記変化部分の印刷内容を印刷する
ことを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の印刷方法。
【請求項10】
前記レーザ印刷工程が、前記印刷対象物と一体化される部品の生産工程に合わせて行われていることを特徴とする請求項1〜9いずれかに記載の印刷方法。
【請求項11】
前記印刷対象物は画像形成装置に用いるトナーが充填されたトナー容器を有するトナーカートリッジを梱包するための梱包材であり、前記レーザ印刷工程は前記トナー容器にトナーを充填する生産工程に合わせて行われることを特徴とする請求項10に記載の印刷方法。
【請求項12】
被梱包物を収容する梱包材であり、
表面に対して形成されると共に前記表面の地色よりも明度が低いあるいは彩度が高い下地色の下地層と、
前記下地層あるいは前記下地層及び前記表面の一部を除去することによって形成されるレーザ印刷領域と
を有することを特徴とする梱包材。
【請求項13】
段ボールからなることを特徴とする請求項12記載の梱包材。
【請求項14】
前記被梱包物が複数個収納可能であり、底面と天面と複数の側面を有する箱体形状であり、前記複数の側面の少なくとの1つの面に前記下地層と前記レーザ印刷領域とを有することを特徴とする請求項12記載の梱包材。
【請求項15】
前記複数の側面が互いに対向する側面を有し、前記互いに対向する側面に前記下地層と前記レーザ印刷領域が形成されていることを特徴とする請求項14記載の梱包材。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−131034(P2012−131034A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282360(P2010−282360)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリュ−ションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】