説明

印刷方法

【課題】スキャナが正常に作用しない場合にも、濃度むらに対する正確な補正値を算出すること。
【解決手段】所定方向に沿ったラスタラインを媒体に形成する動作と、媒体を所定方向と交差する方向に所定搬送量で搬送する動作を交互に繰り返すことでパターンを形成し、パターンをスキャナに読み取らせ、画素列ごとに取得した複数の読取階調値の一部を計算範囲として算出した近似直線に基づいて、読取階調値を修正し、補正値を算出する際に、1回の形成動作によって、複数のラスタラインからなるバンドが形成され、パターンは、複数のバンドが交差方向に並ぶことにより形成され、バンドの境界に対応する画素列を境界画素列とし、計算範囲のうちの最下流側の画素列である下流画素列と、下流画素列よりも上流側に位置する第1境界画素列との間隔と、計算範囲のうちの最上流側の画素列である上流画素列と、上流画素列よりも下流側に位置する第2境界画素列との間隔が等しいこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドが移動方向に移動し、その移動中にノズルからインクを吐出させることで印刷画像を完成させるインクジェットプリンタが知られている。
このようなプリンタでは、ノズルの加工精度等の問題により、媒体上の正しい位置にインク滴が着弾しないことがある。そうすると、インク滴が着弾するはずであった領域付近に濃淡が生じ、印刷した画像に縞状の濃度むらが発生する。
【0003】
そこで、CCDセンサにより画像をサンプリングし、インクジェットプリンタで出力するデータをCCDセンサの利得むらの特性をもとに補正し、濃度むらを改善する方法が提案されている。(特許文献1参照)
他に、濃度むらテストパターンを印刷し、濃度むらテストパターンの濃度データに基づいて、濃度むらの補正を行う方法も提案されている。(特許文献2参照)
【特許文献1】特開平2−54676号公報
【特許文献2】特開平6−166247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スキャナが正常に作用しない場合、正確な測定値(読取階調値)を取得することが出来ず、濃度むらが改善されないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明では、スキャナが正常に作用しない場合にも、濃度むらに対する正確な補正値を算出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するための主たる発明は、ノズルを所定方向に移動させながら、前記所定方向に対応する方向に並ぶ複数の画素からなる画素列に基づいて形成されるラスタラインを媒体に形成する形成動作と、前記媒体を前記所定方向と交差する方向である交差方向に所定搬送量で搬送する搬送動作とを、印刷装置が交互に繰り返すことでパターンを形成するステップと、前記パターンをスキャナに読み取らせ、前記画素列ごとに読取階調値を取得するステップと、取得した複数の前記読取階調値のうちの少なくとも一部を計算範囲として、近似直線を算出するステップと、前記近似直線に基づいて、前記読取階調値を修正するステップと、修正された前記読取階調値に基づいて補正値を算出するステップと、前記補正値に基づいて印刷するステップと、を有する印刷方法であって、1回の前記形成動作によって、複数の前記ラスタラインからなるバンドが形成され、前記パターンは、複数の前記バンドが前記交差方向に並ぶことにより形成され、前記バンドの境界に対応する前記画素列を境界画素列とし、前記計算範囲のうちの最下流側の前記画素列である下流画素列と、前記下流画素列よりも上流側に位置する第1境界画素列との間隔と、前記計算範囲のうちの最上流側の前記画素列である上流画素列と、前記上流画素列よりも下流側に位置する第2境界画素列との間隔が等しいことを特徴とする。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0008】
すなわち、ノズルを所定方向に移動させながら、前記所定方向に対応する方向に並ぶ複数の画素からなる画素列に基づいて形成されるラスタラインを媒体に形成する形成動作と、前記媒体を前記所定方向と交差する方向である交差方向に所定搬送量で搬送する搬送動作とを、印刷装置が交互に繰り返すことでパターンを形成するステップと、前記パターンをスキャナに読み取らせ、前記画素列ごとに読取階調値を取得するステップと、取得した複数の前記読取階調値のうちの少なくとも一部を計算範囲として、近似直線を算出するステップと、前記近似直線に基づいて、前記読取階調値を修正するステップと、修正された前記読取階調値に基づいて補正値を算出するステップと、前記補正値に基づいて印刷するステップと、を有する印刷方法であって、1回の前記形成動作によって、複数の前記ラスタラインからなるバンドが形成され、前記パターンは、複数の前記バンドが前記交差方向に並ぶことにより形成され、前記バンドの境界に対応する前記画素列を境界画素列とし、前記計算範囲のうちの最下流側の前記画素列である下流画素列と、前記下流画素列よりも上流側に位置する第1境界画素列との間隔と、前記計算範囲のうちの最上流側の前記画素列である上流画素列と、前記上流画素列よりも下流側に位置する第2境界画素列との間隔が等しいこと、を特徴とする印刷方法。
このような印刷方法によれば、境界画素列付近の読取階調値の影響を受けずに近似直線を算出することが出来る。そのため、上流側か又は下流側に傾くことなく、読取階調値を示すグラフの傾きを正確に修正することが出来る。その結果、濃度むらに対する正確な補正値を算出することができる。
【0009】
かかる印刷方法であって、前記パターンが2つの前記バンドから構成される場合、前記第1境界画素列と前記第2境界画素列とが等しいこと。
このような印刷方法によれば、読取階調値を示すグラフの傾きを正確に修正することが出来る。
【0010】
かかる印刷方法であって、前記パターンが3つ以上の前記バンドから構成される場合、前記第1境界画素列は、前記パターンのうちの最下流側の前記境界画素列であり、前記第2境界画素列は、前記パターンのうちの最上流側の前記境界画素列であること。
このような印刷方法によれば、読取階調値を示すグラフの傾きを正確に修正することが出来る。また、近似直線を算出するための計算範囲が広く設定されるので、より正確な近似直線を算出することができる。
【0011】
かかる印刷方法であって、複数の前記ノズルが前記交差方向に並んでノズル列を構成する場合、前記第1境界画素列は、前記ノズル列のうちの最上流側のノズルが形成するラスタラインに対応する画素列であり、前記第2境界画素列は、前記ノズル列のうちの最下流側のノズルが形成するラスタラインに対応する画素列であること。
このような印刷方法によれば、読取階調値を示すグラフの傾きを正確に修正することが出来る。バンドの境界に対応しそうな画素列をもとに、近似直線を算出するための計算範囲を予め設定することが出来る。
【0012】
かかる印刷方法であって、複数の前記ノズルが前記交差方向に並んでノズル列を構成する場合、前記第1境界画素列と前記第2境界画素列は、前記ノズル列のうちの最上流側のノズルが形成するラスタラインに対応する画素列であるか又は、前記第1境界画素列と前記第2境界画素列は、前記ノズル列のうちの最下流側のノズルが形成するラスタラインに対応する画素列であること。
このような印刷方法によれば、読取階調値を示すグラフの傾きを正確に修正することが出来る。バンドの境界に対応しそうな画素列をもとに、近似直線を算出するための計算範囲を予め設定することが出来る。
【0013】
かかる印刷方法であって、前記補正値は、前記バンドを構成する複数の前記ラスタラインに対応する前記画素列ごとに算出され、前記補正値は、複数の前記バンドを印刷する際に繰り返し用いられること。
このような印刷方法によれば、読取階調値を示すグラフの傾きを正確に修正することが出来る。そうすると、補正値を示すグラフも傾くことがなくなり、バンドの境界の濃淡差がなくなる。
【0014】
かかる印刷方法であって、前記下流画素列に基づいて形成された下流ラスタラインは、前記下流ラスタラインが属する前記バンドの中央の前記ラスタラインよりも下流側に位置し、前記上流画素列に基づいて形成された上流ラスタラインは、前記上流ラスタラインが属する前記バンドの中央の前記ラスタラインよりも上流側に位置すること。
このような印刷方法によれば、第1境界画素列から離れた画素列を下流画素列とし、第2境界画素列から離れた画素列を上流画素列として、計算範囲が広く設定されるので、境界画素列の読取階調値の影響を受けずに、より正確な近似直線を算出することが出来る。
【0015】
===本実施形態のシステム構成===
図1は、本実施形態のシステム構成図である。プリンタ1とスキャナ70がコンピュータ60に接続されている。本実施形態では、プリンタ1の濃度むらの改善を行うために、製造工場等において完成したプリンタ1がテストパターンを印刷する。そして、そのテストパターンはスキャナ70で読み取られる。読み取られた画像データはコンピュータ60に送信され、コンピュータ60は画像データを基に濃度むらを改善するための補正値Hを算出する。補正値Hはプリンタ1のメモリ53に記憶される。なお、本実施形態では、プリンタ1をインクジェットプリンタとして説明する。
【0016】
〈インクジェットプリンタの構成〉
図2は、本実施形態のプリンタ1の全体構成ブロック図である。図3Aは、プリンタ1の全体構成の概略図である。図3Bは、プリンタ1の全体構成の断面図である。外部装置であるコンピュータ60から印刷データを受信したプリンタ1は、コントローラ50により、各ユニット(搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30)を制御し、媒体S(以下、紙Sとする)に画像を形成する。また、プリンタ1内の状況を検出器群40が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラ50は各ユニットを制御する。
【0017】
コントローラ50は、プリンタ1の制御を行うための制御ユニットであり、インターフェース部51と、CPU52と、メモリ53と、ユニット制御回路54とを有する。インターフェース部51は、外部装置であるコンピュータ60とプリンタ1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU52は、プリンタ1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリ53は、CPU52のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶手段を有する。CPU52は、メモリ53に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路を有して各ユニットを制御する。
【0018】
搬送ユニット10は、紙Sを印刷可能な位置に送り込み、印刷時、搬送方向に所定の搬送量で紙Sを搬送させるためのものであり、給紙ローラ11と、搬送モータ12と、搬送ローラ13と、プラテン14と、排紙ローラ15とを有する。
【0019】
ヘッドユニット30は、紙Sにインクを吐出するためのものであり、ヘッド31を有する。ヘッド31は、インク吐出部であるノズルを複数有する。そして、各ノズルには、各ノズルを駆動してインクを吐出させるための駆動素子であるピエゾ素子PZTとインクが入った圧力室(不図示)が設けられている。
【0020】
キャリッジユニット20は、ヘッド31を移動方向(所定方向)に移動させるためのものであり、キャリッジ21と、キャリッジモータ22とを有する。
【0021】
検出器群40には、リニア式エンコーダ41、ロータリー式エンコーダ42、紙検出センサ43、および光学センサ44等が含まれる。
【0022】
図4は、ヘッド31の下面(ノズル面)におけるノズルの配列を示す説明図である。ヘッド31の下面には、イエローインクノズル列Yと、ブラックインクノズル列Kと、シアンインクノズル列Cと、マゼンタインクノズル列Mとが形成されている。各ノズル列は、各色のインクを吐出するための吐出口であるノズルを180個備えている。180個のノズルのうち、下流側のノズルほど若い番号が付されている(#i=#1〜#180)。また、各ノズル列のノズルは搬送方向(交差方向)に沿って一定の間隔D(ノズルピッチ)でそれぞれ整列している。
【0023】
〈印刷手順〉
まず、コントローラ50は、コンピュータ60から印刷命令及び印刷データを受信する(印刷命令受信)。コントローラ50は、印刷データに含まれる各種コマンドの内容を解析し、各ユニットを用いて、以下の処理を行う。
【0024】
次に、コントローラ50は、給紙ローラ11を回転させ、印刷すべき紙Sを搬送ローラ13まで送る(給紙処理)。紙検出センサ43が、給紙ローラ11から送られてきた紙Sの先端の位置を検出すると、コントローラ50は搬送ローラ13を回転させ紙Sを印刷開始位置(頭出し位置)に位置決めする。紙Sが印刷開始位置に位置決めされたとき、ヘッド31の少なくとも一部のノズルは、紙Sと対向している。
【0025】
そして、コントローラ50は、キャリッジモータ22を駆動し、キャリッジ21を移動方向に移動させる。ヘッド31は、キャリッジ21に設けられているため、ヘッド31もキャリッジ21と共に移動方向に移動する。キャリッジ21の移動方向への1回の移動をパスという。そして、コントローラ50は、キャリッジ21の移動中に、印刷データに基づいてノズルからインクを吐出させる。ノズルから吐出されたインク滴が紙S上に着弾すれば、紙S上にドットが形成される(形成動作)。移動するヘッド31からインクが断続的に吐出されるので、紙S上には移動方向に沿ったドット列(ラスタライン)が形成される。なお、キャリッジ21の移動方向の位置をリニア式エンコーダ41が検出し、キャリッジ21(ヘッド31)に取り付けられている光学センサ44が紙Sの端部の位置を検出する。
【0026】
その後、コントローラ50は、搬送モータ12を駆動し、搬送ローラ13を回転させて、紙Sを搬送方向に所定の搬送量分だけ搬送する(搬送動作)。これにより、ヘッド31は、先ほどのドット形成処理によって形成されたドットの位置とは異なる位置に、ドットを形成することが可能になる。紙Sの搬送量は、搬送ローラ13の回転量に応じて定まり、搬送ローラ13の回転量はロータリー式エンコーダ42によって検出される。なお、印刷中の紙Sはプラテン14によって支持される。
【0027】
最後に、コントローラ50は、印刷中の紙Sの排紙の判断を行う(排紙処理)。印刷中の紙Sに印刷すべきデータが残っていれば、排紙は行われず、印刷すべきデータがなくなるまで、形成動作と搬送動作とを交互に繰り返し、画像を完成させる。印刷中の紙Sに印刷すべきデータがなくなったところで、排紙ローラ15の回転により紙Sは排紙される。
【0028】
〈印刷データについて〉
図5は、印刷データ作成処理のフロー図である。コンピュータ60からプリンタ1に送信される印刷データは、コンピュータ60のメモリに記憶されているプリンタドライバに従って作成される。つまり、プリンタドライバは、コンピュータ60に印刷データを作成させて、印刷データをプリンタ1へ送信させるためのプログラムである。
【0029】
解像度変換処理(S001)は、アプリケーションプログラムから出力された画像データを、紙Sに印刷する際の解像度に変換する処理である。紙Sに印刷する際の解像度が720×720dpiに指定されている場合、アプリケーションプログラムから受け取った画像データを720×720dpiの解像度の画像データに変換する。なお、解像度変換処理後の画像データは、RGB色空間により表される256階調のデータ(RGBデータ)である。
【0030】
ここで、画像データとは、画素データの集まりである。画素とは画像を構成する単位要素である。そして、画素が2次元的に並ぶことにより画像が構成される。画像データが256階調のデータということは、1つの画素が256階調で表現されることであり、1つの画素データは8ビットのデータとなる(2の8乗=256)。
【0031】
色変換処理(S002)は、RGBデータを、プリンタ1のインクに対応したCMYK色空間により表されるCMYKデータに変換する処理である。この色変換処理は、RGBデータの階調値とCMYKデータの階調値とを対応づけたテーブル(不図示)をプリンタドライバが参照することによって行われる。
【0032】
濃度補正処理(S003)は、各画素データの階調値を、その画素データが属する列領域に対応する補正値に基づいて、階調値を補正する処理である。詳細は後述する。
【0033】
ハーフトーン処理(S004)は、高階調数のデータ(256階調)を、プリンタが形成可能な階調数(4階調)のデータに変換する処理である。本実施形態では、プリンタ1が画素に「ドットを形成しない」、もしくは「小ドット」、「中ドット」、「大ドット」を形成することにより、画像が表現される。即ち、高階調数のデータが、本実施形態のプリンタ1が表現することが出来る4階調のデータに変換される。
【0034】
ラスタライズ処理(S005)は、マトリクス状の画像データを、プリンタ1に転送すべきデータ順に、画素データ毎に並べ替えられる処理である。これらの処理を経て生成された印刷データは、印刷方式に応じたコマンドデータ(搬送量など)と共に、プリンタドライバによりプリンタ1に送信される。
【0035】
〈スキャナの構成〉
図6Aは、スキャナ70の縦断面図である。図6Bは、上蓋71を外した状態のスキャナ70の上面図である。スキャナ70は、上蓋71と、原稿72が置かれる原稿台ガラス73と、この原稿台ガラス73を介して原稿72と対面しつつ副走査方向に移動する読取キャリッジ74と、読取キャリッジ74を副走査方向に案内する案内部75と、読取キャリッジ74を移動させるための移動機構76と、スキャナ70内の各部を制御するスキャナコントローラ(不図示)とを備えている。読取キャリッジ74には、原稿72に光を照射する露光ランプ77と、副走査方向と垂直な方向である主走査方向のラインの像を検出するラインセンサ78と、原稿72からの反射光をラインセンサ78へ導くための光学系79とが設けられている。図中の読取キャリッジ74の内部の破線は、光の軌跡を示している。
【0036】
原稿72の画像を読み取るとき、操作者は、上蓋71を開いて原稿72を原稿台ガラス73に置き、上蓋71を閉じる。そして、スキャナコントローラが、露光ランプ77を発光させた状態で読取キャリッジ74を副走査方向に沿って移動させ、ラインセンサ78により原稿72の表面の画像を読み取る。スキャナコントローラは、読み取った画像データをコンピュータ60のスキャナドライバへ送信し、これにより、コンピュータ60は、原稿72の画像データを取得する。
【0037】
===バンド印刷について===
図7は、バンド印刷の説明図である。ただし、説明の簡略のため、ヘッド31が有するノズル列のうちのシアンインクノズル列Cのみを示し、ノズル列のノズル数も8個に減らしている。図7では、パス1からパス3におけるシアンインクノズル列Cの位置とドットの形成の様子を示している。ここで、「パス」とは、キャリッジ21が移動方向に1回移動することをいう。また、パスの後ろの数字はパスが行われる順番を示す。図7では説明の便宜上、シアンインクノズル列Cが紙Sに対して搬送方向に移動しているように描かれているが、実際には紙Sが搬送方向に移動する。
【0038】
以下、バンド印刷の流れを説明する。まず、パス1で、キャリッジ21の移動方向への移動中に、各ノズルからインクが吐出される。そうすることで、各ノズルに対応したドット列が移動方向に沿って形成される。この移動方向に沿ったドット列をラスタラインとする。図7では、全てのノズルから所定間隔おきにインクが吐出された様子を示している。そのため、パス1では、8個のラスタラインが搬送方向に並んで形成される。このように1回のパスで印刷される画像を「バンド」とする。図7では、搬送方向に並ぶ8個のラスタラインを合わせた帯状の画像が「バンド」となる。
【0039】
また、本実施形態のノズル列は搬送方向に並ぶ180個のノズルから構成されるので、全てのノズルから所定間隔おきにインクが吐出された場合、180個のラスタラインが搬送方向に並んで形成される。そして、180個のラスタラインを合わせた画像が「バンド」となる。なお、実際の印刷では全てのノズルから所定間隔おきにインクが吐出されるわけではなく、印刷データに合わせて各ノズルからインクが吐出される。そのため、搬送方向に並ぶラスタラインの間隔や移動方向に並ぶドットの間隔は常に一定とは限らない。
【0040】
そして、パス1の後、搬送ユニット10により紙Sは所定搬送量Fで搬送される。所定搬送量Fは、F=N・Dより求められる。Nが1回のパスで使用可能なノズル数、Dがノズルピッチである。即ち、図7では、1回のパスで使用可能なノズル数は8つなので、所定搬送量F=8・Dとなる。本実施形態の所定搬送量FはF=180・Dとなる。また、バンド印刷では、あるパスで形成されたラスタラインの間に、他のパスで形成されるラスタラインが印刷されることはない。そのため、搬送方向の最小ドット間隔はノズルピッチDとなる。また、1つのラスタラインが、1つのノズルにより形成される。
【0041】
紙Sの搬送後は、再び、キャリッジ21の移動中に、各ノズルからインクが吐出される。そして、バンド(図7では8個のラスタライン)が形成される。このように、バンドの形成動作と紙Sの搬送動作を印刷すべきデータがなくなるまで続ける。その結果、複数のバンドが搬送方向に並ぶことで、印刷画像が完成する。つまり、バンド印刷とは、1回のパスで、「搬送方向の長さ×移動方向の長さ」が「ノズル列長×紙幅」である画像(バンド)を完成させる印刷方法である。
【0042】
===濃度むらについて===
ノズル不良と搬送誤差の2つの原因により、濃度むらが発生すると考えられる。濃度むらについての説明を行うため、まず、「画素領域」と「列領域」を設定する。画素領域とは、紙S上に仮想的に定められた矩形状の領域を指し、印刷解像度に応じて大きさや形が定められる。そして、1つの画素領域には、画像データを構成する1つの画素が対応している。例えば、印刷解像度が720dpi(移動方向)×720dpi(搬送方向)の場合、画素領域は、約35.28μm×35.28μm(≒1/720インチ×1/720インチ)の大きさの正方形状の領域になる。また、「列領域」とは、各画素列(移動方向に対応する方向に並ぶ複数の画素領域)に対応する紙S上の領域を指す。
【0043】
〈ノズル不良による濃度むらについて〉
図8Aは、理想的にドットが形成されたときの様子の説明図である。理想的にドットが形成されるとは、画素領域の中心位置にインク滴が着弾し、そのインク滴が紙S上に広がって、画素領域にドットが形成されることである。各ドットが各画素領域に正確に形成されるということは、ラスタラインが列領域に正確に形成されることである。
【0044】
図8Bは、ノズル不良により濃度むらが発生したときの説明図である。2番目の列領域に形成されたラスタラインは、ノズルから吐出されたインク滴の飛行方向のばらつきにより、3番目の列領域側(搬送方向上流側)に寄って形成されている。その結果、2番目の列領域は淡くなり、3列目の列領域は濃くなる。また、5番目の列領域に吐出されたインク滴のインク量は規定のインク量よりも少なく、5番目の列領域に形成されるドットが小さくなっている。その結果、5列目の列領域は淡くなる。
【0045】
このように、濃淡の違うラスタラインからなる印刷画像を巨視的に見ると、キャリッジの移動方向に沿う縞状の濃度むらが視認される。つまり、ノズルからインク滴が垂直方向に吐出されなかったり、ノズルから規定のインク量が吐出されなかったりすること等により、濃度むらが発生し、印刷画像の画質を低下させる。
【0046】
〈搬送誤差による濃度むらについて〉
次に、搬送誤差による濃度むらの発生について説明する。搬送ローラ13の製造誤差などにより、紙Sは所定搬送量Fを搬送されずに、搬送誤差が生じることがある。この場合、紙S上の正しい位置にドットが形成されずに、濃度むらの原因となる。以下、バンド印刷において搬送誤差が発生する場合について説明する。
【0047】
図9Aは、所定搬送量よりも多く搬送された場合のドットの形成の様子を示す図である。なお、説明の簡略のため、図9Aと後述の図10Aではノズル数を減らしている。また、全てのノズルから所定間隔おきにインクが吐出されるとする。
【0048】
パス1では、1番目から8番目の画素領域の中心に理想的にドットが形成されている。その後、図9Aでは、所定搬送量F=8・Dよりも1/2・D多く搬送されている。その結果、パス2では、搬送方向に隣り合う画素領域の境目を中心にドットが形成されてしまう。例えば、パス2におけるノズル#1は、9番目の列領域と10番目の列領域の境目を中心にラスタラインが形成される。即ち、ノズル#1が形成したラスタラインの半分は9番目の列領域に形成され、残り半分のラスタラインは10番目の列領域に形成される。
【0049】
図9Bは、図9Aの各列領域の濃度(測定値)を示す図である。9番目以外の列領域の濃度は、濃度Xの近傍の値となっている。これに対して、9番目の列領域の濃度は他の列領域の濃度に比べて大幅に小さい。なぜなら、9番目の列領域には半分のラスタラインのみしか形成されていないからである。即ち、9番目の列領域の半分は余白となっているので、9番目の列領域の濃度が小さくなる。
【0050】
ところで、10番目以降の列領域の濃度は濃度Xの近傍の値となっている。パス2におけるノズル#2は10番目と11番目の列領域の境目を中心にラスタラインを形成する。そのため、10番目の列領域には、ノズル#2が形成したラスタラインの半分しか形成されない。しかし、10番目の列領域には、ノズル#1が形成したラスタラインの半分も形成される。つまり、10番目の列領域には9番目の列領域ほどの余白がなく、10番目の列領域の濃度は、ラスタラインが一列形成されている列領域と同等の濃度となる。
【0051】
以上をまとめると、バンド印刷において所定搬送量よりも多く紙Sが搬送された場合、バンドとバンドの境目に余白ができ、移動方向にスジが生じて、濃度むらの原因となってしまう。また、他の列領域に比べて濃度の淡い列領域が発生する。この濃度の淡い列領域とは、あるパスで形成されるバンドと次のパスで形成されるバンドの境目に対応する列領域のことである。図9Aでは、9番目の列領域が、パス1で形成されるバンド(8個のラスタライン)とパス2で形成されるバンドの境目に対応する列領域となる。
【0052】
図10Aは、所定搬送量よりも少なく搬送された場合のドットの形成の様子を示す図である。図10Bは、図10Aの各列領域の濃度(測定値)を示す図である。
【0053】
パス1の後、図10Aでは、所定搬送量F=8・Dよりも1/2・D少なく搬送されている。そのため、パス2では、搬送方向に隣り合う画素領域の境目を中心にドットが形成されてしまう。そして、パス2におけるノズル#1は、8番目の列領域と9番目の列領域の境目を中心にラスタラインを形成する。その結果、8番目の列領域には、既にパス1においてノズル#8によりラスタラインが形成されているにも関わらず、更に、パス2においてノズル#1によりラスタラインの半分が形成される。
【0054】
ゆえに、図10Bに示すように、8番目の列領域の濃度だけが、濃度Xの近傍の値ではなく、濃度Xよりも大幅に大きな値となっている。つまり、バンド印刷において所定搬送量よりも少なく紙Sが搬送された場合、搬送方向に隣り合うバンドの端が重なってしまい、移動方向に濃いスジが生じ、濃度むらの原因となってしまう。また、他の列領域に比べて濃度の濃い列領域が発生する。この濃度の濃い列領域とは、あるパスで形成されるバンドの端と次のパスで形成されるバンドの端が重なる箇所に対応する列領域のことである。図10Aでは、8番目の列領域が、パス1で形成されるバンドの端とパス2で形成されるバンド端が重なる箇所に対応する列領域となる。
【0055】
〈濃度むらの補正〉
図8Cは、本実施形態の印刷方法によりドットが形成されたときの様子の説明図である。本実施形態では、濃く視認されやすい列領域に対しては、淡く画像片が形成されるように、その列領域に対応する画素の画素データの階調値を補正する。また、淡く視認されやすい列領域に対しては、濃く画像片が形成されるように、その列領域に対応する画素の画素データの階調値を補正する。
【0056】
例えば、図中では、淡く視認される2番目と5番目の列領域のドットの生成率が高くなり、濃く視認される3番目の列領域のドットの生成率が低くなり、各列領域に対応する画素の画素データの階調値が補正される。これにより、各列領域のラスタラインのドット生成率が変更され、列領域の画像片の濃度が補正されて、印刷画像全体の濃度むらが抑制される。
【0057】
ところで、図8Bにおいて、3番目の列領域に形成される画像片の濃度が濃くなる理由は、3番目の列領域にラスタラインを形成するノズルの影響によるものではなく、隣接する2番目の列領域にラスタラインを形成するノズルの影響によるものである。このため、3番目の列領域にラスタラインを形成するノズルが別の列領域にラスタラインを形成する場合、その列領域に形成される画像片が濃くなるとは限らない。つまり、同じノズルにより形成された画像片であっても、隣接する画像片を形成するノズルが異なれば、濃度が異なる場合がある。このような場合、単にノズルに対応付けた補正値では、濃度むらを抑制することができない。そこで、本実施形態では、列領域毎に設定される補正値に基づいて、画素データの階調値を補正している。
【0058】
<プリンタ製造工場での濃度むら補正処理について>
図11は、プリンタ製造後の検査工程で行われる補正値取得処理のフロー図である。検査のため、図1に示したように、濃度むらの検査対象となるプリンタ1と、スキャナ70はコンピュータ60に接続される。コンピュータ60には、予め、テストパターンをプリンタ1に印刷させるためのプリンタドライバと、スキャナ70を制御するためのスキャナドライバと、スキャナ70から読み取ったテストパターンの画像データに対して画像処理や解析等を行うための補正値取得プログラムがインストールされている。
【0059】
===S101:テストパターンの印刷===
まず、コンピュータ60のプリンタドライバは、プリンタ1にバンド印刷によりテストパターンを印刷させる。図12Aは、テストパターンの説明図である。図12Bは、補正用パターンの説明図である。
【0060】
テストパターンは、4つノズル列ごとに形成された4つの補正用パターンによって構成されている。各補正用パターンは、3種類の濃度の帯状パターンと、上罫線と、下罫線と、左罫線と、右罫線とにより構成されている。帯状パターンは、それぞれ一定の階調値の画像データから生成されたものであり、左の帯状パターンから順に、階調値76(濃度30%)、128(濃度50%)、179(濃度70%)となり、順に濃い濃度の帯状パターンとなっている。これらの3種類の階調値を「指令階調値」とし、記号でSa(=76)、Sb(=128)、Sc(=179)と表す。なお、テストパターンは、720dpi(移動方向)×720dpi(搬送方向)の解像度で印刷される。
【0061】
そして、補正用パターンは3回のパスにより形成される。即ち、補正用パターンは、3個のバンドが搬送方向に並ぶことにより構成される。本実施形態のノズル列が有するノズル数は180個であるので、1個のバンドは180個のラスタラインから構成される。ゆえに、補正用パターンは、パス1で形成される180個のラスタラインと、パス2で形成される180個のラスタラインと、パス3で形成される180個のラスタラインから成り、合計540個のラスタラインから構成される。
【0062】
===S102:補正用パターンの読み取り===
次に、印刷されたテストパターンをスキャナ70で読み取る。テストパターンが印刷された原稿をスキャナ70にセットする際に、ラスタラインの方向がスキャナ70の主走査方向になり、複数のラスタラインの並ぶ方向がスキャナ70の副走査方向になるようにセットする。図12Aの矢印のかっこ内にスキャナ70のセット方向を示す。
【0063】
そして、本実施形態では、テストパターンを主走査方向について720dpiの解像度で読み取らせ、副走査方向について2880dpiの解像度で読み取らせる。複数のラスタラインの並ぶ方向(副走査方向)は印刷解像度(720dpi)の4倍の解像度で読み取るのは、列領域の範囲の特定を容易にするためである。逆に、主走査方向が副走査方向に対して読み取り解像度を下げているのは、読み取るデータ量を削減し、読み取り速度を上げるためである。
【0064】
また、読み取ったテストパターンの画像の左上のスキャン原点を基準とし、読み取り範囲を特定する。図12Aに示すように、イエローの補正用パターンを囲む一点鎖線の範囲を、イエローの補正用パターンの読み取り範囲とする。なお、読み取り範囲を特定するためのパラメータSX1、SY1、SW1及びSH1は、補正値取得プログラムによって予めスキャナドライバに設定されている。また、補正用パターンよりも大きい範囲を読み取り範囲としているので、原稿が多少ずれてスキャナ70にセットされても、イエローの補正用パターンの全体を読み取ることができる。同様に、他のノズル列が形成した補正用パターンの読取範囲を特定する。
【0065】
===補正用パターンの傾き検出(S103)及び回転処理(S104)===
次に、補正値取得プログラムは、読み取った各ノズル列の画像データ(一点鎖線の読み取り範囲:SW1×SH1の長方形の画像)に含まれる補正用パターンの画像の傾きθを検出し、画像データに対して傾きθに応じた回転処理を行う。
【0066】
図13Aは、傾き検出の際の画像データの説明図である。以下、コンピュータ60内の座標系(x方向、y方向)を用いて説明する。そして、画像データの左上を原点とする。なお、実際には4つの補正用パターンがx方向に並んでいるので、読み取り範囲内には、他の補正用パターンの上罫線や下罫線などが含まれるが、図13Aでは省略する。図13Bは、上罫線の位置の検出の説明図である。図13Cは、回転処理後の画像データの説明図である。また、実際には、y方向(ラスタラインの並ぶ方向)のデータ量はx方向のデータ量の4倍であるため、補正用パターンの画像は、y方向に4倍引き伸ばされた画像となっている。しかし、ここでは、説明の容易のため、見た目が印刷時の補正用パターンと同じに見えるように補正用パターンのy方向を1/4に圧縮して図示してある。
【0067】
傾きθを算出するため、補正値取得プログラムは、読み取られた画像データの中から、左からKX1の画素であって上からKH個の画素の画素データと、左からKX2の画素であって上からKH個の画素の画素データと、を取り出す。このとき取り出される画素の中に上罫線が含まれ、右罫線及び左罫線が含まれないように、パラメータKX1、KX2、KHが定められている。そして、補正値取得プログラムは、上罫線の位置を検出するため、取り出されたKH個の画素データの階調値の重心位置KY1、KY2をそれぞれ求める。そして、補正値取得プログラムは、パラメータKX1、KX2と、重心位置KY1、KY2に基づいて、次式より補正用パターンの画像の傾きθを算出する。
θ=tan−1{(KY2−KY1)/(KX2−KX1)}
その後、算出された傾きθに基づいて、補正用パターンの画像の回転処理を行う。
【0068】
===S105:トリミング===
次に、コンピュータ60の補正値取得プログラムは、画像データの中から不要な画素をトリミングする。図14Aは、トリミングの際の画像データの説明図である。図14Bは、上罫線でのトリミング位置の説明図である。ここでも、図14Aと同様にy方向の補正用パターンを1/4に圧縮するように図示してある。
【0069】
補正値取得プログラムは、画像データの中から、左からKX1の画素であって上からKH個の画素の画素データと、左からKX2の画素であって上からKH個の画素の画素データを取り出す。そして、補正値取得プログラムは、上罫線の位置を検出するため、取り出されたKH個の画素データの階調値の重心位置をそれぞれ求め、2つの重心位置の平均値を算出する。そして、平均した重心位置から列領域の幅(4画素分)の1/2だけ上側の位置において最も近い画素の境界をトリミング位置に決定する。そして、補正値取得プログラムは、決定されたトリミング位置よりも上側の画素を切り取り、トリミングを行う。
【0070】
図14Cは、下罫線でのトリミング位置の説明図である。上罫線側と同様に、下罫線の重心位置を算出する。そして、重心位置から列領域の幅の1/2だけ下側の位置において最も近い画素の境界よりも下側の画素を切り取り、トリミングを行う。
【0071】
===S106:解像度変換===
次に、補正値取得プログラムは、y方向の画素数を、補正用パターンのラスタラインの数(列領域の数)と同数になるように、トリミングされた画像データを解像度変換する。つまり、x方向に沿った画素列と列領域が一対一で対応することになる。例えば、一番上に位置する画素列は1番目の列領域に対応し、その下に位置する画素列は2番目の列領域に対応する。
【0072】
720dpiで印刷されたラスタライン540個が、2880dpiの解像度で読み取られたので、トリミング後の画像データのy方向の画素数は2160個(=540×4)になる。つまり、ラスタラインの数と画素列の数を同数にするために、1/4の倍率で解像度変換(縮小処理)を行う。ここでは解像度変換にバイキュービック法が用いられる。なお、x方向のデータは720dpiで読み取られたので、解像度変換を行う必要がない。
【0073】
しかし、実際には補正用パターンの印刷時の誤差や、スキャナ70による読み取り誤差の影響により、画像データのy方向の画素数が2160個にならないこともある。この場合、例えば、y方向の画素数は2170個であったら、540/2170(=[ラスタラインの数]/[y方向の画素数])の倍率で解像度変換(縮小処理)を行う。そして、解像度変換後の画像データのy方向の画素列数は、540個となる。
【0074】
===S107:列領域の濃度を測定===
次に、補正値取得プログラムは、各列領域における3種類の帯状パターンの各列領域の測定値を算出する。以下、ダークインクノズル列が形成した補正用パターンのうちの濃度30%の左側の帯状パターンの1番目の列領域の測定値について説明する。なお、他の列領域、他の帯状パターンの濃度の測定も同様に行なわれる。
【0075】
図15Aは、左罫線の検出の際の画像データの説明図である。補正値取得プログラムは、解像度変換された画像データの中から、上からH2の画素であって、左からKX個の画素の画素データを取り出す。このとき取り出される画素の中に左罫線が含まれるように、パラメータKXが予め定められている。そして、補正値取得プログラムは、取り出されたKX個の画素の画素データから左罫線の重心位置を求める。
【0076】
図15Bは、1番目の列領域の濃度30%の帯状パターンの濃度の測定範囲の説明図である。左罫線の重心位置からX2だけ右側に、幅W3の濃度30%の帯状パターンが存在していることは、補正用パターンの形状から既知である。そこで、補正値取得プログラムは濃度30%の帯状パターンのうちの左右W4の範囲を除いた点線の範囲の画素データを列領域毎に抽出する。抽出した画素データの階調値の平均値が各列領域の濃度30%の測定値となる。このようにして、補正値取得プログラムは、3種類の帯状パターンの濃度を列領域毎にそれぞれ測定する。
【0077】
図16は、イエローの3種類の帯状パターンの濃度の測定結果をまとめた測定値テーブルである。このように、補正値取得プログラムは、列領域毎に、3種類の帯状パターンの濃度の測定値を対応付けて、測定値テーブルを作成する。なお、イエローの指令階調値Sa(=76)に対するn番目の測定値を測定値Ya_nとし、指令階調値Sb(=128)に対するn番目の測定値を測定値Yb_nとし、指令階調値Sc(=179)に対するn番目の測定値を測定値Yc_nとして、図16に示す。
【0078】
図17は、イエローの指令階調値Sa、Sb、Scの帯状パターンの測定値のグラフである。横軸が列領域番号であり、縦軸が測定値である。各帯状パターンは、それぞれの指令階調値で一様に形成されたにもかかわらず、測定値に、ばらつきが生じている。このばらつきが列領域毎の濃淡差であり、印刷画像の濃度むらの原因である。
【0079】
さて、濃度むらをなくすためには、同一の階調値における列領域ごとの測定値のばらつきをなくすことである。即ち、各列領域の測定値を一定の値に近づけることで、濃度むらが改善される。そこで、本実施形態では、同一の階調値において、全ての列領域の測定値の平均値を目標値とし、各列領域の測定値を目標値に近づけるように指令階調値を補正する。例えば、指令階調値Sb(濃度50%)のイエローインクノズル列の目標値をYbtとし、目標値Ybtよりも測定値が低い列領域iでは、指令階調値Sbの設定よりも濃く印刷されるように階調値を補正する。一方、目標値Ybtよりも測定値が高い列領域jでは、指令階調値Sbの設定よりも淡く印刷されるように階調値を補正する。
【0080】
===S108:補正値の算出===
ところで、本実施形態の補正用パターンはバンド印刷により3回のパスで形成され、3個のバンド(180個のラスタライン)から構成される。また、バンド印刷では、あるパスで形成されたラスタラインの間に、他のパスで形成されるラスタラインが記録されることはない。そのため、補正用パターンを構成する540個のラスタラインは、180個のラスタラインごとに規則性がある。例えば、1番目のラスタラインはノズル#1により形成され、隣接する2番目のラスタラインはノズル#2により形成される。そして、181番目のラスタラインもノズル#1により形成され、隣接する182番目のラスタラインはノズル#2により形成される。つまり、あるバンドを構成する180個のラスタラインのうちの下流側からn番目のラスタラインと、他のバンドを構成する180個のラスタラインのうちの下流側からn番目のラスタラインは、同じノズルで形成され、濃度むらに影響するノズルも同じである。そこで、本実施形態では、規則性のある列領域ごとに補正値を算出する。
【0081】
まず、180個おきの3つの列領域の各測定値の平均値を180個算出する。そして、この測定値の平均値から算出する180個の補正値を規則性に基づいて使用する。例えば、バンドを構成するラスタラインのうちの1番目の(下流側の)ラスタラインに対応する1番目の列領域には、補正用パターンの1番目、181番目、361番目の3個の列領域の各測定値の平均値から算出した補正値が用いられる。
【0082】
次に、補正値の算出方法について具体的に説明する。例えば、イエローが形成した濃度50%(指令階調値Sb=128)の帯状パターンの5番目と185番目と365番目の各列領域の測定値の平均値を5番目の列領域の測定値Y´b_5とする。また、6番目と186番目と366番目の各列領域の測定値の平均値を6番目の列領域の測定値Y´b_6とする。そして、5番目の列領域の測定値Y´b_5は目標値Ybtよりも低く、6番目の列領域の測定値Y´b_6は目標値Ybtよりも高いとする。
【0083】
図18Aは、5番目の列領域における指令階調値Sbに対する目標指令階調値Sbtの説明図である。5番目の列領域では、目標値Ybtの濃度のパターンを印刷させるために、プリンタドライバは、次式(直線BCに基づく直線補間)により算出される目標指令階調値Sbtに基づいて指令すればよい。
Sbt=Sb+(Sc−Sb)×
{(Ybt−Y´b_5)/(Y´c_5−Y´b_5)}
【0084】
図18Bは、6番目の列領域における指令階調値Sbに対する目標指令階調値Sbtの説明図である。6番目の列領域では、目標値Ybtの濃度のパターンを印刷させるために、プリンタドライバは、次式(直線ABに基づく直線補間)により算出される目標指令階調値Sbtに基づいて指令すればよい。
Sbt=Sb−(Sb−Sa)×
{(Ybt−Y´b_6)/(Y´a_6−Y´b_6)}
【0085】
このようにして目標指令階調値Sbtを算出した後、補正値取得プログラムは、次式により、その列領域における指令階調値Sbに対する補正値Hbを算出する。
Hb=(Sbt−Sb)/Sb
そして、補正値取得プログラムは、180個の列領域ごとに、階調値Sbに対する補正値Hbを算出する。
【0086】
また、補正値取得プログラムは、最低階調値(=0)に対する測定値を0(点D)、最高階調値255に対する測定値を255(点E)として、他の指令階調値(Sa及びSc)に対する補正値(Ha及びHc)を算出する。点D(0,0)と点Aと点Bに基づいて(直線DAまたは直線ABに基づく直線補間)、指令階調値Saに対する補正値Haを列領域毎に算出する。そして、点Bと点Cと点E(255,255)に基づいて(直線BCまたは直線CEに基づく直線補間)、指令階調値Scに対する補正値Hcを算出する。そして、全てのノズル列について、列領域毎に、3つの補正値(Ha、Hb、Hc)が算出される。
【0087】
===S109:補正値の記憶===
図19は、イエローの補正値テーブルの説明図である。次に、補正値取得プログラムは、補正値をプリンタ1のメモリ53に記憶する。各ノズル列の補正値テーブルには、3つの補正値(Ha、Hb、Hc)が、列領域毎に対応付けられている。例えば、n番目の列領域には、3つの補正値(Ha_n、Hb_n、Hc_n)が対応付けられている。そして、メモリ53には、各ノズル列の補正値テーブルが記憶される。
【0088】
プリンタ1のメモリ53に補正値を記憶させた後、補正値取得処理は終了する。そして、プリンタドライバを記憶したCD−ROMがプリンタ1に同梱され、プリンタ1が工場から出荷される。
【0089】
===ユーザー下での処理について===
プリンタ1を購入したユーザーは、所有するコンピュータ60(プリンタ製造工場のコンピュータとは別のコンピュータ)に、プリンタ1を接続する。
【0090】
次に、ユーザーは、同梱されているCD−ROMを記録再生装置80にセットし、プリンタドライバをインストールする。コンピュータ60にインストールされたプリンタドライバは、プリンタ1に対して、メモリ53に記憶されている補正値をコンピュータ60に送信するように要求する。プリンタ1は、要求に応じて、補正値テーブルをコンピュータ60へ送信する。プリンタドライバは、プリンタ1から送られてくる補正値をコンピュータ60内のメモリに記憶する。これにより、このコンピュータ60で作成された画像データをプリンタ1で印刷することが可能となる。
【0091】
そして、プリンタドライバは、ユーザーからの印刷命令を受けると、印刷データを生成し、印刷データをプリンタ1に送信する。プリンタ1は、印刷データに従って、印刷処理を行う。なお、印刷データの作成方法は前述の通りである(図5)。
【0092】
===濃度補正処理について===
以下、濃度補正処理について詳しく説明する。濃度補正処理とは、各画素データに対する階調値(補正前の階調値S_in)を、その画素データが属する列領域に対応する補正値Hに基づいて階調値を補正する(補正後の階調値S_out)処理である。以下、イエローインクノズル列の濃度補正処理について説明する。
【0093】
補正前の階調値S_inがイエローインクノズル列の指令階調値のいずれか(Sa、Sb、Sc)と同じであれば、階調値S_inをコンピュータ60のメモリに記憶されている補正値Ha、Hb、Hcをそのまま用いることができる。例えば、補正前の階調値S_in=Scであれば、補正後の階調値S_outは次式により求められる。
S_out=Sc×(1+Hc)
【0094】
図20は、イエローインクノズル列のn番目の列領域の濃度補正処理の説明図である。横軸を補正前の階調値S_inとし、縦軸を補正後の階調値S_outとする。同図は、補正前の階調値S_inが指令階調値(Sa、Sb、Sc)とは異なる場合の補正方法を示す図である。なお、図中の点線は、階調値を補正する必要がない場合であり、補正値Hが0のときのグラフである。階調値S_inに対する補正後の階調値S_outを、指令階調値Saの補正値Haと指令階調値Sbの補正値Hbを基に線形補間によって次式により算出する。
S_out=Sat+(Sbt−Sat)×{(S_in−Sa)/(Sb−Sa)}
【0095】
他に、各指令階調値に対応する各補正値(Ha、Hb、Hc)の間を線形補間して階調値S_inに対応する補正値H_outを算出し、算出された補正値H_outに基づいて補正後の階調値S_outを次式により算出してもよい。
S_out=S_in×(1+H_out)
【0096】
バンド印刷では180個の列領域毎に規則性があるため、プリンタドライバは、およそ数千ある列領域を180個の列領域毎に、180個の補正値Hを順に繰り返し用いて濃度補正処理を行う。これにより、記憶すべき補正値Hのデータ量を削減することができる。そして、プリンタドライバは、イエローインクノズル列だけでなく他のノズル列の画素データの階調値に対しても、同様に濃度補正処理を行う。
【0097】
以上の濃度補正処理により、濃く視認されやすい列領域に対しては、その列領域に対応する画素の画素データの階調値が低くなるように補正される。逆に、淡く視認されやすい列領域に対しては、その列領域に対応する画素の画素データの階調値が高くなるように補正される。言い換えると、図8Cに示したように、濃く視認されやすい列領域では、その列領域の画素データの階調値が低くなるように補正されているので、その列領域のラスタラインを構成するドットのドット生成率が低くなる。逆に、淡く視認されやすい列領域では、ドット生成率が高くなる。そして、印刷画像全体の濃度むらが改善される。
【0098】
以下、本実施形態の特徴部について説明する。
【0099】
===測定値の傾きについて===
図21は、スキャナ70が正常な場合の、帯状パターンの各列領域の濃度の測定値(読取階調値)のグラフである。図17と同様のグラフであり、横軸が列領域番号を示し、縦軸が各列領域の測定値を示す。なお、説明の簡略のため、図21にはイエローの濃度50%の帯状パターンの各列領域における測定値のみが示される。スキャナ70が正常な場合には、全列領域の測定値の平均値Ybtの近傍に各列領域の測定値が分布する。
【0100】
図22は、スキャナ70が異常な場合の各列領域の濃度の測定値のグラフである。スキャナ70が異常であるとは、例えば、スキャナ70の案内部75が斜めに取り付けられていたり、上蓋71の閉じ方が不十分で原稿72が浮いていたりして、読取キャリッジ74の副走査方向の位置に応じて原稿72とラインセンサ78との光学的な距離が変動してしまうことである。そうすると、ラインセンサ78の出力結果が読取キャリッジ74の副走査方向の位置に応じて変化する。即ち、スキャナ70に異常があった場合に、列領域の位置に応じて測定値が変化し、測定値が全体的に傾いてしまう。図22では、スキャナ70に異常があった場合の読み取り結果の一例として、測定値のグラフが全体的に右肩下がりとなっている様子を示す。この場合、各列領域の測定値は、全列領域の測定値の平均値Ybtの近傍に分布していない。列領域番号が小さい方(以下、下流側とする)の測定値は平均値Ybtに比べて大幅に大きい値となっている。逆に、列領域番号が大きい方(以下、上流側とする)の測定値は平均値Ybtに比べて大幅に小さい値となっている。
【0101】
図23Aは、測定値のグラフの傾きを修正せずに補正値Hを算出した場合の参考図である。測定値が列領域の位置に応じて傾くと、測定値に基づいて算出される補正値Hも列領域の位置に応じて傾くことになる。図23Bは、測定値の傾きを修正せずに算出した補正値Hをもとに、補正用パターンを形成する様子を示す参考図である。
【0102】
本実施形態では、180個の列領域ごとに3つの測定値の平均値から補正値Hを算出する。図22のグラフにおいて、例えば、1番目から180番目の列領域の中で測定値が比較的高い1番目の列領域と、181番目から360番目の列領域の中で測定値が比較的高い181番目の列領域と、361番目から540番目の列領域の中で測定値が比較的高い361番目の列領域の各測定値の平均値から、1番目の列領域の補正値Hb_1が算出される。逆に、1番目から180番目の列領域の中で測定値が比較的低い180番目の列領域と、181番目から360番目の列領域の中で測定値が比較的低い360番目の列領域と、361番目から540番目の列領域の中で測定値が比較的低い540番目の列領域の各測定値の平均値から、180番目の列領域の補正値Hb_180が算出される。
【0103】
つまり、図22では、列領域番号が大きくなるほど、実際に印刷された濃度よりも淡く印刷されたとスキャナ70に誤って読み取られる。そして、列領域番号が大きくなるほど、濃く印刷されるように補正値Hが大きくなる。そのため、もし、測定値のグラフが図22のように右肩下がりに傾いていた場合に、グラフの傾きを修正せずに補正値Hを算出すると、各列領域の補正値Hを示すグラフは図23Aのような右肩上がりのグラフとなる。即ち、測定値のグラフの傾きと補正値Hのグラフの傾きが逆となる。
【0104】
このように、スキャナ70が正常であった場合の読み取り結果(図21)ではなく、スキャナ70が異常であった場合の読み取り結果(図22)から補正値Hを算出しても濃度むらは改善されない。スキャナ70の異常が原因で、列領域番号が大きくなるにつれて補正値Hが大きくなると(図23A)、同じ濃度のバンドを印刷しようとしても、1つのバンドにおいて上流から下流に向かって徐々に濃く印刷されてしまう(図23B)。つまり、同じ濃度の帯状パターンを印刷する場合に、ノズル#1が下流側に印刷するラスタラインよりもノズル#180が上流側に印刷するラスタラインの方が濃く印刷されてしまう。また、隣接する列領域同士の濃淡差はわずかであるため画質の劣化は目立ちにくいが、巨視的に見るとバンドごとに濃淡が段階的に変化して見えてしまう。
【0105】
図23Cは、図23Bの帯状パターンを形成する様子を示す図の一部を拡大した参考図である。バンド印刷においては、ノズル#180により比較的濃く印刷されるラスタラインと、ノズル#1により比較的淡く印刷されるラスタラインが隣り合うことになる。つまり、濃淡差が目立つ部分がバンド毎に発生し、濃度むらが目立ってしまう。
【0106】
このように、スキャナ70の異常により、読み取り結果である測定値のグラフが傾いているにも関わらず、傾きを修正せずに補正値Hを算出すると、バンドは上流側から下流側にかけて段階的に濃淡が変化し、且つ、濃淡差の目立つ部分がバンドのつなぎ目ごとに発生してしまう。そこで、本実施形態では、S107において列領域の濃度を測定した後に、測定値のグラフの傾きの修正が行われる。
【0107】
===傾きの修正について(S107のつづき)===
まず、補正値取得プログラムは予め設定されている近似直線計算範囲内の列領域の測定値を取り出す。そして、補正値取得プログラムは、近似直線計算範囲内の各列領域の測定値を直線で近似し、近似直線に基づいて測定値のグラフの傾きを修正する。
【0108】
以下、所定搬送量よりも多く搬送されて印刷されたイエローの濃度50%の帯状パターンの測定結果を示すグラフが、スキャナ70の異常により傾いてしまった場合を例に挙げて説明する。
【0109】
図24Aは、本実施形態の近似直線計算範囲を示す図である。図24Bは、測定値のグラフの傾きを修正した後の図である。図24Aと図24Bは、横軸が列領域番号を示し、縦軸が各列領域の測定値を示すグラフである。本実施形態の近似直線計算範囲は、20番目から522番目の列領域とする(詳細は後述する)。そして、補正値取得プログラムは、近似直線計算範囲内の列領域の測定値から最小2乗法により近似直線を算出する。なお、図24A中の太い実線の直線が近似直線である。
【0110】
その後、補正値取得プログラムは、各列領域における近似直線が示す値と平均値Ybtとの差である修正値を列領域ごとに算出する。そして、各列領域の測定値から各列領域に対応する修正値が引かれて、図24Bのようにグラフの傾きが修正される。例えば、図24Aの1番目の列領域における近似直線が示す値をA_1とする。なお、1番目の列領域は近似直線計算範囲外であるが、近似直線を延長して修正値が算出される。そして、近似直線が示すA_1と平均値Ybtの差が、1番目の列領域の修正値R_1となる。そして、1番目の列領域の測定値Yb_1から修正値R_1を引く。この修正作業が全列領域に対して行われることにより、グラフの傾きが修正される。
【0111】
ところで、バンド印刷の場合、所定搬送量よりも多く搬送されると、図9に示すように、バンドのつなぎ目に対応する列領域の測定値は、平均値Xに比べ、大幅に小さい値となる。逆に、図10に示すように、所定搬送量Fよりも少なく搬送される場合、バンドの端が重なる箇所に対応する列領域の測定値は平均値Xに比べ、大幅に大きい値となる。
【0112】
図24Aは、所定搬送量よりも多く搬送されて、帯状パターンが印刷された場合の測定結果を示すグラフである。そのため、バンドのつなぎ目に対応する181番目と361番目の列領域の測定値は、平均値Ybtの近傍に位置せず、他の列領域の測定値に比べて大幅に小さい値となる。
【0113】
このように、バンドのつなぎ目に対応する列領域の測定値が平均値Ybtから大幅に離れた値であると、近似直線計算範囲の取り方によっては、正確に近似直線を算出できないおそれがある。以下に、正確に近似直線を算出できない場合の近似直線計算範囲の取り方について、比較例を挙げて説明する。
【0114】
〈第1比較例の近似直線計算範囲〉
図25は、第1比較例の近似直線計算範囲を示す図である。なお、近似直線計算範囲以外は、図24Aと図25は同じグラフである(図26、図27も同様)。この第1比較例では、160番目から522番目の列領域を近似直線計算範囲とする。即ち、160番目から522番目の各列領域の測定値に基づいて、第1比較例の近似直線を算出する。図25中に第1比較例の近似直線を太い実線の直線で示す。また、図25中には、本実施形態の近似直線計算範囲から算出した理想的な近似直線も点線の直線で示している。
【0115】
さて、第1比較例の近似直線計算範囲(以下、計算範囲とする)内では、バンドのつなぎ目に対応する列領域である181番目と361番目の列領域が均等に配置されていない。具体的に説明すると、361番目の列領域と計算範囲内で最大の列領域である522番目の列領域の間には160個の列領域が含まれるのに対して(361番目と522番目は含まない)、181番目の列領域と計算範囲内で最小の列領域である160番目の列領域の間には20個の列領域しか含まれない。即ち、バンドのつなぎ目に対応する列領域(181番目と361番目)が計算範囲内の下流側に寄って位置している。
【0116】
そのため、第1比較例の近似直線を算出する際に、計算範囲内のうちの下流側の近似直線は、181番目の列領域の測定値の結果の影響を受けやすくなる。つまり、181番目列領域の測定値が平均値Ybtよりも大幅に小さいため、第1比較例の近似直線が示す値も小さくなってしまう。グラフ上で説明すると、下流側になるほど、本実施形態の近似直線(点線)に比べて、第1比較例の近似直線(実線)は下の方に位置する。このようなバンドのつなぎ目に対応する列領域の影響を受けて算出された近似直線では、正確に測定値のグラフの傾きを修正することは出来ない。その結果、濃度むらに対する補正値Hを示すグラフも傾き、バンドは上流側から下流側にかけて段階的に濃淡が変化してしまう。
【0117】
測定値のグラフの傾きが修正されない原因として、まず、本実施形態の近似直線から算出される修正値と、第1比較例の近似直線から算出される修正値が異なることが挙げられる。例えば、図25の1番目の列領域において、第1比較例の近似直線が示す値の方が本実施形態の近似直線が示す値よりも小さい。そのため、1番目の列領域に対する本実施形態の修正値R_1よりも第1比較例の修正値R’_1の方が小さい値となる。そうすると、1番目の列領域の測定値Yb_1から第1比較例の修正値R’_1を引いても、修正後の1番目の列領域の測定値が平均値Ybtよりもまだ大きい値のままである。即ち、本実施形態の修正値と第1比較例の修正値が異なることにより、列領域によっては修正後の測定値が平均値Ybtの近傍に位置しないことになる。
【0118】
他に、各列領域の測定値を修正する際に、修正方向(グラフ上の上下方向)が列領域によって第1比較例と本実施形態とで異なることも、グラフの傾きが修正されない原因である。即ち、測定値の値が大きくなるように修正するのか、または小さくなるように修正するのかが、第1比較例と本実施形態とで異なっている。
【0119】
本実施形態では、270番目の列領域における近似直線が示す値が平均値Ybtとなっている。そして、270番目の列領域よりも下流側(1〜269番目)の列領域の測定値は平均値Ybtよりも大きい傾向にあり、270番目の列領域よりも上流側(271番目〜540番目)の列領域の測定値は平均値Ybtよりも小さい傾向にある。そのため、測定値を平均値Ybtに近付けるために、270番目より下流側の列領域の測定値は、値が小さくなるように修正される。グラフ上でいうと、270番目より下流側の列領域の測定値は下方向に修正される。逆に、270番目から上流側の列領域の測定値は、値が大きくなるように修正される。
【0120】
ところが、第1比較例では、195番目の列領域における近似直線の示す値が平均値Ybtとなる。即ち、第1比較例では、195番目よりも下流側の列領域の測定値は、値が小さくなるように修正され、195番目よりも上流側の列領域の測定値は、値が大きくなるように修正される。その結果、195番目から270番目の列領域の測定値は平均値Ybtよりも大きい傾向であるにも関わらず、更に値が大きくなるように修正される。即ち、本実施形態の修正値方向と第1比較例の修正方向が異なるため、列領域によっては平均値Ybtから遠ざかるように測定値が修正されてしまう。
【0121】
このように第1比較例の近似直線計算範囲の設定の仕方では、本実施形態の近似直線とは異なる傾きの近似直線が算出され、測定値のグラフの傾きが修正されない。そこで、第1比較例では、バンドのつなぎ目に対応する列領域の影響を受けることで、近似直線が上流側か下流側かのどちらかに傾いてしまわないようにすることが課題となる。
【0122】
〈第2比較例の近似直線計算範囲〉
図26は、第2比較例の近似直線計算範囲を示す図である。第2比較例では、20番目から382番目の列領域を近似直線計算範囲とし、近似直線を算出する。図26中に、第2比較例の近似直線を太い実線の直線で示し、本実施形態の近似直線を点線で示す。
【0123】
第2比較例においても第1比較例と同様に、近似直線計算範囲(以下、計算範囲とする)内では、バンドのつなぎ目に対応する列領域である181番目と361番目の列領域が均等に配置されていない。但し、第1比較例とは逆に、バンドのつなぎ目に対応する列領域(181番目と361番目)が計算範囲内の上流側に寄って位置する。
【0124】
第2比較例の近似直線を算出する際に、計算範囲内のうちの上流側の近似直線は、361番目の列領域の測定値の結果の影響を受けやすくなる。その結果、第2比較例の近似直線が示す値は本実施形態の近似直線が示す値よりも小さくなってしまう。
【0125】
そうすると、第2比較例の修正値と本実施形態の修正値が異なるため、グラフの傾きが修正されない。特に、上流側の列領域では、第2比較例と本実施形態の修正値の差が大きくなりグラフの傾きが補正されない。また、本実施形態では270番目の列領域における近似直線の測定値が平均値Ybt示すのに対して、第2比較例ではi番目の列領域における近似直線の測定値が平均値Ybtを示す。そのため、i番目から270番目の列領域においては、測定値の修正する方向(測定値を大きくするか小さくするか)が本実施形態と第2比較例で異なる。その結果、列領域によっては平均値Ybtから遠ざかるように測定値が修正され、グラフの傾きが修正されない。その結果、濃度むらに対する補正値Hを示すグラフの傾きも完全には修正されずに、バンドは上流側から下流側にかけて段階的に濃淡が変化してしまう。
【0126】
そこで、第2比較例では、バンドのつなぎ目に対応する列領域の影響を受けることで、近似直線が上流側か下流側かのどちらかに傾いてしまわないようにすることが課題となる。
【0127】
〈本実施形態の近似直線計算範囲〉
そこで、本実施形態では(図24A)、バンドのつなぎ目に対応する列領域(境界画素列/なお、解像度変換により列領域と画素列は1対1の対応関係となっている)の影響を受けないように、バンドのつなぎ目に対応する列領域が均等に配置されるように、近似直線計算範囲(以下、計算範囲とする)を設定する。
【0128】
まず、バンドのつなぎ目に対応しそうな列領域のうちの最上流側の列領域(第2境界画素列)と最下流側の列領域(第1境界画素列)を基準とする。本実施形態では、補正用パターンが3つのバンドから構成されるためバンドのつなぎ目に対応しそうな列領域は2個である。そして、本実施形態では、下流側の基準を181番目の列領域(第1境界画素列)とし、上流側の基準を361番目の列領域(第2境界画素列)とする。
【0129】
そして、下流側の基準となる列領域と計算範囲内の最下流の列領域(下流画素列)の間に含まれる列領域の数と、上流側の基準となる列領域と計算範囲内の最上流の列領域(上流画素列)の間に含まれる列領域の数が等しくなるように、最下流の列領域と最上流の列領域を決定する。つまり、下流画素列と第1境界画素列との間隔は、上流画素列と第2境界画素列との間隔と等しい。
【0130】
また、全列領域のうちの最下流の列領域(1番目の列領域)より上流側の20個前後の列領域と、全列領域のうちの最上流側の列領域(540番目の列領域)より下流側の20個前後の列領域は、近似直線計算範囲から外す。なぜなら、1番目の列領域から20個前後の列領域と、540番目の列領域から20個前後の列領域は、補正用パターンが印刷された紙Sの余白に近いため、スキャナ70で読み取られる際に、余白の影響を受けて濃度が実際よりも淡く測定された可能性があるからである。言い換えると、計算範囲内の最下流の列領域(20番目の列領域)は、その列領域が属するバンド(1から180番目の列領域)の中央の列領域(90番目の列領域)よりも下流側に位置し、計算範囲内の最上流の列領域(522番目の列領域)は、その列領域が属するバンド(361から540番目の列領域)の中央の列領域(450番目の列領域)よりも上流側に位置する。
【0131】
以上をまとめると、本実施形態では、下流側の基準である181番目の列領域から下流側に数えて161個目の列領域を計算範囲内の最下流側の列領域(20番目の列領域)とする。そして、上流側の基準である361番目から上流側に数えて161個目の列領域を計算範囲内の最上流側の列領域(522番目の列領域)とする。つまり、本実施形態の近似直線計算範囲は、20番目から522番目の列領域とする。
【0132】
そして、本実施形態の近似直線計算範囲内では、バンドのつなぎ目に対応する列領域が均等に配置されるので、測定値を示すグラフ上の上流側か下流側かのどちらかに近似直線が傾いてしまうことはない。また、余白の影響を受けて淡く印刷されている可能性のある列領域以外の列領域を本実施形態の近似直線計算範囲とし、広い計算範囲から近似直線を算出する。そのため、バンドのつなぎ目に対応する列領域の影響を受けずに、近似直線が示す値が必要以上に大き過ぎたり、または小さ過ぎたりすることはない。つまり、バンドのつなぎ目に対応する列領域の影響を受けていない本実施形態の近似直線により、測定値のグラフの傾きは正確に修正される。その結果、濃度むらに対する補正値Hを示すグラフも傾くことがなく、バンドが上流側から下流側にかけて段階的に濃淡が変化することもなくなる。また、バンドの境目に濃淡差が発生してしまうこともなくなる。
【0133】
ところで、計算範囲内において、バンドのつなぎ目に対応する列領域(以下、境界列領域とする)が均等に配置されるということは、言い換えると、計算範囲内の最下流側の列領域と計算範囲内の中央に位置する列領域(以下、中央列領域とする)との間隔が、計算範囲内の最上流側の列領域と中央列領域との間隔と等しくなるといこうとである。例えば、本実施形態(図24A)では、271番目の列領域が中央列領域となり、計算範囲内の最下流側の列領域(20番目の列領域)と271番目の列領域の間に含まれる列領域の数は、計算範囲内の最上流側の列領域(522番目の列領域)と271番目の列領域の間に含まれる列領域の数と等しい。
【0134】
そして、計算範囲内に境界列領域が3つ以上含まれ、最下流側と最上流側の境界列領域以外の境界列領域数が偶数個である場合、中央列領域から上流側最も近い境界列領域と中央列領域の間隔は、中央列領域から下流側最も近い境界列領域と中央列領域の間隔と等しくなる。また、計算範囲内において、最下流側と最上流側の境界列領域以外の境界列領域数が奇数個である場合、その奇数個の境界列領域のうちの真ん中の境界列領域が中央列領域となる。
【0135】
また、バンドのつなぎ目に対応しそうな列領域は、どのような補正用パターンを印刷させるかによって、予め予測することができる。そのため、補正値取得プログラムには、印刷する補正用パターンに合わせて、予め、近似直線計算範囲が設定されている。
【0136】
本実施形態では、所定搬送量よりも多く搬送されて、帯状パターンが印刷された場合を例に挙げ、181番目と361番目の列領域がバンドのつなぎ目に対応するとしているが、これに限らない。例えば、所定搬送量よりも少なく搬送されれば、180番目や360番目の列領域がバンドのつなぎ目に対応することがある。また、搬送誤差量が多く、バンドのつなぎ目に対応する列領域が複数となる場合もある。このような場合においても、近似直線計算範囲は予め設定されているので、バンドのつなぎ目に対応する列領域が必ずしも均等に配置されるとは限らない。例えば、180番目と360番目の列領域がバンドのつなぎ目に対応する場合、180番目の列領域と20番目の列領域の間の列領域の数(159個)と、360番目の列領域と522番目の列領域の間の列領域の数(161個)は異なっている。但し、近似直線計算範囲内におけるバンドのつなぎ目に対応する列領域の位置が、数百個の列領域のうちの2個の列領域分だけ上流側に傾いたとしても、近似直線の傾きには影響しない。そのため、バンドのつなぎ目に対応しそうな列領域を基準として、予め近似直線計算範囲を設定しても問題はない。
【0137】
===その他の実施形態===
上記の各実施形態は、主としてインクジェット方式のプリンタを有する印刷システムについて記載されているが、グラフの傾きを修正する近似直線を算出する際の近似直線計算範囲の設定方法等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0138】
〈近似直線計算範囲を設定する基準について〉
前述の実施形態では、バンドのつなぎ目に対応しそうな列領域を基準として、近似直線計算範囲を設定すると説明しているがこれに限らない。例えば、バンド印刷のように、あるバンドの最上流側のラスタラインをノズル列の最上流側のノズル(#180)が形成し、次のバンドの最下流側のラスタラインをノズル列の最下流側のノズル(#1)が形成するような印刷方法の場合、ノズル#180(ノズル列の最上流側のノズル)またはノズル#1(ノズル列の最下流側のノズル)が形成するラスタラインに対応する列領域を基準として、近似直線計算範囲を設定するとも言い換えられる。
また、ノズル列のうちの最上流側のノズル#180が形成するラスタラインに対応する列領域をバンドのつなぎ目に対応しそうな列領域と設定してもよい。または、ノズル列のうちの最下流側のノズル#1が形成するラスタラインに対応する列領域をバンドのつなぎ目に対応しそうな列領域としてもよい。
【0139】
〈バンドのつなぎ目について〉
前述の実施形態では、3つのバンドから構成される補正用パターンを例に挙げたため、バンドのつなぎ目が2つであった。しかし、パターンの大きさにより、バンドのつなぎ目の数が2つとは限らなくなる。
例えば、補正用パターンが2つのバンドから構成され、バンドのつなぎ目に対応しそうな列領域が1つの場合、その列領域(第1境界画素列=第2境界画素列)から下流側に数えてn個目の列領域を近似直線計算範囲内の最下流列領域とし、その列領域から上流側に数えてn個目の列領域を近似直線計算範囲内の最上流側列領域とする。
【0140】
また、バンドのつなぎ目に対応しそうな列領域が3つ以上の場合等は、その3つ以上の列領域のうちの最下流側の列領域(第1境界画素列)を下流側の基準とし、最上流側の列領域(第2境界画素列)を上流側の基準として、近似直線計算範囲を設定する。
【0141】
〈近似直線計算範囲について〉
前述の実施形態では、余白の影響を受けて濃度が淡く測定された可能性がある列領域以外の列領域を近似直線計算範囲としていたが、これに限らない。例えば、バンドのつなぎ目に対応する列領域が均等に配置されるように近似直線計算範囲が設定されていれば、余白の影響を受けていない列領域も近似直線計算範囲外として、近似直線計算範囲を狭く設定(第1範囲例)してもよい。
【0142】
図27は、第1範囲例の狭い近似直線計算範囲を示す図である。第1範囲例では、160番目から382番目の列領域を近似直線計算範囲とし、近似直線を算出する。図27に、第1範囲例の近似直線を太い実直線で示し、本実施形態の近似直線を点線で示す。
【0143】
第1範囲例の近似直線計算範囲(以下、計算範囲とする)内には、バンドのつなぎ目に対応する2つの列領域である181番目と361番目の列領域が均等に配置されている。181番目の列領域と計算範囲内で最小の列領域である160番目の列領域の間の列領域の数(20個、160番目と181番目は含まない)と、361番目の列領域と計算範囲内で最大の列領域である382番目の列領域の間の列領域の数(20個)は等しい。そのため、第1比較例や第2比較例のように、第1範囲例の近似直線が本実施形態の近似直線に対して、上流側か、若しくは下流側に傾くことはない。その結果、完全ではないが、測定値を示すグラフの傾きが修正され、バンドが上流側から下流側にかけて段階的に濃淡が変化することもなくなる。また、バンドの境目に濃淡差が発生してしまうこともなくなる。
【0144】
しかし、図27に示すように、第1範囲例の近似直線が示す値は本実施形態の近似直線が示す値よりも小さくなっている。即ち、第1範囲例の近似直線(点線)の方が、本実施形態の近似直線(実線)よりも下の方に位置する。
【0145】
これは、第1範囲例では、近似直線計算範囲の取り方が狭いため、バンドのつなぎ目に対応する列領域(181番目と361番目)の影響が大きくなるからである。つまり、近似直線計算範囲の取り方が狭いと、近似直線を算出するための測定値の数が少ないため、平均値Ybtに比べて極端に値が小さい181番目と361番目の列領域の測定値が影響し、近似直線の位置が下の方に下がってしまう。
【0146】
つまり、バンドのつなぎ目に対応する列領域が均等に配置されるように、近似直線計算範囲が設定されていても、近似直線計算範囲を狭く設定すると、バンドのつなぎ目に対応する列領域の影響を受けて、近似直線が示す値が必要以上に大き過ぎたり、または小さ過ぎたりしてしまうおそれがある。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本実施形態のシステム構成図である。
【図2】本実施形態のプリンタの全体構成ブロック図である。
【図3】図3Aはプリンタの全体構成の概略図であり、図3Bはプリンタの全体構成の断面図である。
【図4】ヘッドの下面(ノズル面)におけるノズルの配列を示す説明図である。
【図5】印刷データ作成処理のフロー図である。
【図6】図6Aはスキャナの縦断面図であり、図6Bは上蓋を外した状態のスキャナの上面図である。
【図7】バンド印刷の説明図である。
【図8】図8Aは理想的にドットが形成されたときの様子の説明図であり、図8Bは濃度むらが発生したときの説明図であり、図8Cは本実施形態の印刷方法によりドットが形成されたときの様子の説明図である。
【図9】図9Aは所定搬送量よりも多く搬送された場合のドットの形成の様子を示す図であり、図9Bは図9Aの各列領域の濃度(測定値)を示す図である。
【図10】図10Aは所定搬送量よりも少なく搬送された場合のドットの形成の様子を示す図であり、図10Bは図10Aの各列領域の濃度(測定値)を示す図である。
【図11】プリンタ製造後の検査工程で行われる補正値取得処理のフロー図である。
【図12A】テストパターンの説明図である。
【図12B】補正用パターンの説明図である。
【図13】図13Aは傾き検出の際の画像データの説明図であり、図13Bは上罫線の位置の検出の説明図であり、図13Cは回転処理後の画像データの説明図である。
【図14】図14Aはトリミングの際の画像データの説明図であり、図14Bは上罫線でのトリミング位置の説明図であり、図14Cは下罫線でのトリミング位置の説明図である。
【図15】図15Aは左罫線の検出の際の画像データの説明図であり、図15Bは1番目の列領域の濃度30%の帯状パターンの濃度の測定範囲の説明図である。
【図16】イエローの3種類の帯状パターンの濃度の測定結果をまとめた測定値テーブルである。
【図17】イエローの指令階調値Sa、Sb、Scの帯状パターンの測定値のグラフである。
【図18】図18Aは5番目の列領域における指令階調値Sbに対する目標指令階調値Sbtの説明図であり、図18Bは6番目の列領域における指令階調値Sbに対する目標指令階調値Sbtの説明図である。
【図19】イエローの補正値テーブルの説明図である。
【図20】イエローインクノズル列のn番目の列領域の濃度補正処理の説明図である。
【図21】スキャナが正常な場合の帯状パターンの各列領域の濃度の測定値のグラフである。
【図22】スキャナが異常な場合の各列領域の濃度の測定値のグラフである。
【図23】図23Aは測定値のグラフの傾きを修正せずに補正値を算出した場合の参考図であり、図23Bは測定値の傾きを修正せずに算出した補正値をもとに補正用パターンを形成する様子を示す参考図であり、図23Cは図23Bの帯状パターンを形成する様子を示す図の一部を拡大した参考図である。
【図24】図24Aは本実施形態の近似直線計算範囲を示す図であり、図24Bは測定値のグラフの傾きを修正した後の図である。
【図25】第1比較例の近似直線計算範囲を示す図である。
【図26】第2比較例の近似直線計算範囲を示す図である。
【図27】第1範囲例の狭い近似直線計算範囲を示す図である。
【符号の説明】
【0148】
1 プリンタ、
10 搬送ユニット、11 給紙ローラ、12 搬送モータ、13 搬送ローラ、
14 プラテン、15 排紙ローラ、
20 キャリッジユニット、21 キャリッジ、22 キャリッジモータ、
30 ヘッドユニット、31 ヘッド、
40 検出器群、41 リニア式エンコーダ、42 ロータリー式エンコーダ、
43 紙検出センサ、44 光学センサ、
50 コントローラ、51インターフェース部、52 CPU、53 メモリ、
60 コンピュータ、
70 スキャナ、71 上蓋、72 原稿、73 原稿台ガラス、
74 読取キャリッジ、75 案内部、76 移動機構、77 露光ランプ、
78 ラインセンサ、79 光学系、
80 記録再生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを所定方向に移動させながら、前記所定方向に対応する方向に並ぶ複数の画素からなる画素列に基づいて形成されるラスタラインを媒体に形成する形成動作と、前記媒体を前記所定方向と交差する方向である交差方向に所定搬送量で搬送する搬送動作とを、印刷装置が交互に繰り返すことでパターンを形成するステップと、
前記パターンをスキャナに読み取らせ、前記画素列ごとに読取階調値を取得するステップと、
取得した複数の前記読取階調値のうちの少なくとも一部を計算範囲として、近似直線を算出するステップと、
前記近似直線に基づいて、前記読取階調値を修正するステップと、
修正された前記読取階調値に基づいて補正値を算出するステップと、
前記補正値に基づいて印刷するステップと、
を有する印刷方法であって、
1回の前記形成動作によって、複数の前記ラスタラインからなるバンドが形成され、
前記パターンは、複数の前記バンドが前記交差方向に並ぶことにより形成され、前記バンドの境界に対応する前記画素列を境界画素列とし、
前記計算範囲のうちの最下流側の前記画素列である下流画素列と、前記下流画素列よりも上流側に位置する第1境界画素列との間隔と、
前記計算範囲のうちの最上流側の前記画素列である上流画素列と、前記上流画素列よりも下流側に位置する第2境界画素列との間隔が等しいこと、
を特徴とする印刷方法。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷方法であって、
前記パターンが2つの前記バンドから構成される場合、
前記第1境界画素列と前記第2境界画素列とが等しい、
印刷方法。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷方法であって、
前記パターンが3つ以上の前記バンドから構成される場合、
前記第1境界画素列は、前記パターンのうちの最下流側の前記境界画素列であり、
前記第2境界画素列は、前記パターンのうちの最上流側の前記境界画素列である、
印刷方法。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷方法であって、
複数の前記ノズルが前記交差方向に並んでノズル列を構成する場合、
前記第1境界画素列は、前記ノズル列のうちの最上流側のノズルが形成するラスタラインに対応する画素列であり、
前記第2境界画素列は、前記ノズル列のうちの最下流側のノズルが形成するラスタラインに対応する画素列である、
印刷方法。
【請求項5】
請求項3に記載の印刷方法であって、
複数の前記ノズルが前記交差方向に並んでノズル列を構成する場合、
前記第1境界画素列と前記第2境界画素列は、前記ノズル列のうちの最上流側のノズルが形成するラスタラインに対応する画素列であるか又は、
前記第1境界画素列と前記第2境界画素列は、前記ノズル列のうちの最下流側のノズルが形成するラスタラインに対応する画素列である、
印刷方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の印刷方法であって、
前記補正値は、前記バンドを構成する複数の前記ラスタラインに対応する前記画素列ごとに算出され、
前記補正値は、複数の前記バンドを印刷する際に繰り返し用いられる、
印刷方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の印刷方法であって、
前記下流画素列に基づいて形成された下流ラスタラインは、前記下流ラスタラインが属する前記バンドの中央の前記ラスタラインよりも下流側に位置し、
前記上流画素列に基づいて形成された上流ラスタラインは、前記上流ラスタラインが属する前記バンドの中央の前記ラスタラインよりも上流側に位置する、
印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−93907(P2008−93907A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276749(P2006−276749)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】