説明

印刷物の品質検査装置、印刷物の品質検査方法及びその品質検査システム

【課題】 検査スピードの高速化を図り、大量の印刷物を短時間で仕上げられ、短期間での納入を希望する顧客の要求に応えられる印刷物の品質検査装置、印刷物の品質検査方法及びその品質検査システムを提供する。
【解決手段】 印刷物の印刷画像に対する良否判定を行う際に用いる基準値を記憶させるメモリを備え、良品印刷物から読み取った画像データと、被検査印刷物から読み取った画像データとに基づき、前記被検査印刷物の印刷画像の良否判定を行う方式の印刷物の品質検査装置において、前記良品印刷物から読み取った画像データからチェックサムを演算し、前記チェックサムを前記メモリに基準値として記憶させる基準値登録部と、被検査印刷物の画像から読み取った画像データのチェックサムを演算するチェックサム演算部と、前記チェックサム演算部で演算したチェックサムと、前記メモリに記憶されている基準値とを比較し良否判定を行う判定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の良否判定を行う際に用いる基準値を記憶させるメモリを備え、良品印刷物から読み取った画像データと、被検査印刷物から読み取った画像データとに基づいて、被検査印刷物の印刷の良否判定を行う方式の印刷物の品質検査装置、印刷物の品質検査方法及びその品質検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物に印刷された絵柄などの画像の良否を検査する場合に、検査員が目視により確認作業を行ったり、また、予めメモリに記憶させておいた基準画像データと、被検査印刷物から読み取った画像データとを機械的に比較して判定を行う場合などが知られている。
このような画像データに基づく検査では、判定の基準としてデジタルの画像を用いて、検査対象となる印刷物の画像と画素単位で比較して良否判定を行っている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特許第3374289号公報
【0003】
しかしながら、画像データにより機械的に比較して判定を行う場合には、画像そのものを処理して画像データを比較するために、比較処理により検査を行う際に時間がかかりすぎるという問題がある。
特に、大量の印刷物を短時間で仕上げる必要がある場合には、検査スピードが遅いことが、印刷物の生産工程管理上の支障になり、短期間での納入を希望する顧客の要求に応えられないという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、画像データにより機械的に比較して判定を行う場合でも、従来に比べて短時間に比較処理を行うことができるように検査スピードの高速化を図ることができ、大量の印刷物を短時間で仕上げられるように、短期間での納入を希望する顧客の要求に応えられる印刷物の品質検査装置、印刷物の品質検査方法及びその品質検査システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の印刷物の品質検査装置は、印刷物の印刷画像に対する良否判定を行う際に用いる基準値を記憶させるメモリを備え、良品印刷物から読み取った画像データと、被検査印刷物から読み取った画像データとに基づいて、前記被検査印刷物の印刷画像の良否判定を行う方式の印刷物の品質検査装置において、前記良品印刷物から読み取った画像データからチェックサムを演算し、前記チェックサムを前記メモリに基準値として記憶させる基準値登録部と、被検査印刷物の画像から読み取った画像データのチェックサムを演算するチェックサム演算部と、前記チェックサム演算部で演算したチェックサムと、前記メモリに記憶されている基準値とを比較し良否判定を行う判定部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の印刷物の品質検査方法は、良品印刷物から読み取った画像データと、被検査印刷物から読み取った画像データとに基づいて、前記被検査印刷物の印刷画像に対する良否判定を行う印刷物の品質検査方法であって、前記良品印刷物の印刷画像から画像データを読み取るステップと、前記画像データからチェックサムを演算するステップと、 前記チェックサムを基準値としてメモリに記憶させるステップと、被検査印刷物の印刷画像から検査用の画像データを読み取るステップと、前記検査用の画像データから検査用のチェックサムを演算するステップと、前記検査用のチェックサムと前記メモリに記憶されているチェックサムとを比較し良否判定を行うステップと、からなることを特徴とする。
【0007】
更に、本発明の印刷物の品質検査システムは、良品印刷物から読み取った画像データと、被検査印刷物から読み取った画像データとに基づいて、前記被検査印刷物の印刷画像に対する良否判定を行う印刷物の品質検査システムであって、良品印刷物の印刷画像と、被検査印刷物の印刷画像とから読み取った各々の画像データに基づいて算出した各々のチェックサムとを比較し、印刷画像の良否判定を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の印刷物の品質検査装置は、画像データから演算したチェックサムに基づいて、基準値と被検査印刷物の画像から読み取った画像データのチェックサムとを比較するので、従来に比べて短時間に比較処理を行うことができ、検査スピードの高速化を図ることができ、これにより大量の印刷物を短時間で仕上げられ、短期間での納入を希望する顧客の要求に応えられるという効果がある。
【0009】
また、本発明の印刷物の品質検査方法は、画像データから演算したチェックサムに基づき、基準値と被検査印刷物の印刷画像から読み取った画像データのチェックサムとを比較して良否判定を行うので、従来の方法に比べて短時間で良否判定を行うことができるので、検査スピードの高速化を図ることができ、これにより大量の印刷物を短時間で仕上げられ、短期間での納入を希望する顧客の要求に応えられるという効果がある。
【0010】
更に、本発明の印刷物の品質検査システムは、良品印刷物の印刷画像と、被検査印刷物の印刷画像とから読み取った各々の画像データに基づいて算出した各々のチェックサムとを比較し、印刷画像の良否判定を行うので、従来の方法に比べて短時間で良否判定を行うことができるので、検査スピードの高速化を図ることができ、これにより大量の印刷物を短時間で仕上げられ、短期間での納入を希望する顧客の要求に応えられるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る印刷物の品質検査装置、印刷物の品質検査方法及びその品質検査システムについて、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る印刷物の品質検査装置に関する構成の概要を説明する図、図2は、本発明の実施形態に係る印刷物の品質検査装置のシステムブロック図、図3は、印刷物の印刷画像に関するチェックサムを説明する図、図4は、本発明の印刷物の品質検査方法に関するチェックサムの利用方法を説明する図、図5及び図6は、本発明の実施形態に係る印刷物の品質検査システムの処理手順を示すフローチャート図である。
【0012】
図1には、本発明の実施形態に係る印刷物の品質検査装置1を用いて、被検査印刷物2の印刷画像の品質検査を行っている状態が示されている。
図1に示す被検査印刷物2は、その一例として、連続用紙に複数の同一の印刷画像が印刷されたロール状の連続帳票が、長さ方向に搬送され、所定位置でその印刷画像に対する品質検査が行われている状態が示されている。
【0013】
図2に示すように、印刷物の品質検査装置1には、画像読取部3、デジタルデータ変換部4、チェックサム演算部5、メモリからなる基準値登録部6、判定部7、不良品警告処理部8、制御部9などが備えられている。
画像読取部3は、被検査印刷物2の印刷画像を読み取るカメラであり、デジタルデータ変換部4は、画像読取部3で読み取った印刷画像データをデジタルデータに変換する機能を有している。
また、チェックサム演算部5は、印刷画像データのデジタルデータからチェックサムを算出する機能を有している。
【0014】
また、メモリからなる基準値登録部6には、印刷物の品質検査を行う前の段階において、予め良品印刷物から読み取った画像データからチェックサムを演算し、このチェックサム値を基準値として記憶させてある。
判定部7は、被検査印刷物2の印刷画像から読み取られた印刷画像データのデジタルデータから算出されたチェックサム値と、基準値登録部6に予め登録されているチェックサム値とを比較処理して、良品か、または不良品かの判定を行う機能を有している。
【0015】
また、不良品警告処理部8は、判定部7で不良品と判定された場合に、品質検査を行った印刷物が不良品であることを知らせるための処理を行う機能を有している。
例えば、不良品警告処理部8では、判定部7で不良品と判定された場合に、印刷物の搬送をストップさせたり、警告音を発生させたり、不良品の印刷物を良品と区分けするための処理を行うなどの、予め設定された種々の処理が実行されるようにしてある。
【0016】
図3には、被検査印刷物の印刷画像2aを読み取り、デジタルデータに変換した後に、そのデジタルデータからチェックサム10を算出した状態を説明する図が示されている。
チェックサム演算部5で算出されたチェックサムは、被検査印刷物の印刷画像がどのような画像であっても、固定長のユニークな文字列として算出される。
つまり、同じ品質を有する印刷画像であれば、算出されたチェックサムも同じになるが、被検査印刷物の印刷画像の品質が悪いと、算出されるチェックサムが異なることになる。
【0017】
図4には、算出されるチェックサムに基づいて、基準印刷画像11と、被検査印刷物の印刷画像12とを比較した場合について示されている。
図4に示す場合は、被検査印刷物の印刷画像が良品であるので、算出されたチェックサム13,14も同じ値となっている。
いずれにしても、チェックサム演算部5で算出されたチェックサムは、被検査印刷物の印刷画像がどのような画像であっても、固定長のユニークな文字列として算出されるために、その比較処理も短時間に行うことができる。
【0018】
次に、本発明の実施形態に係る印刷物の品質検査システムの処理手順を、図5に示すフローチャート図に基づいて説明する。
まず、準備段階として、良品印刷物の印刷画像から画像データを読み取る。(ステップ1)
次に、画像読取部3で読み取った印刷画像データをデジタルデータに変換する。(ステップ2)
そして、チェックサム演算部5により、印刷画像データのデジタルデータからチェックサムを算出する。(ステップ3)
このチェックサムをメモリからなる基準値登録部6に記憶させて登録させておく。(ステップ4)
被検査印刷物の印刷画像の品質検査を実施する前に、以上の処理を行い品質検査の準備をしておく。
【0019】
そして、被検査印刷物の印刷画像の品質検査を実施する場合には、図6のフローチャート図に示す処理手順を行う。
まず、画像読取部3により、被検査印刷物2の印刷画像から画像データを読み取る。(ステップ5)
次に、画像読取部3で読み取った印刷画像データをデジタルデータに変換する。(ステップ6)
そして、チェックサム演算部5により、印刷画像データのデジタルデータからチェックサムを算出する。(ステップ7)
【0020】
次に、判定部7において、チェックサム演算部5で算出したチェックサムと、予めメモリからなる基準値登録部6に登録されている基準印刷画像のチェックサムとを比較し、良品か、または不良品かの判定を行う。(ステップ8)
この判定で、不良品と判定された場合に、不良品警告処理部8の警告用の処理が行われる。(ステップ9)
以上の処理により、チェックサムに基づいた判定は短時間でスピーディーに行なわれることになる。
【0021】
また、本発明の印刷物の品質検査方法も、上記印刷物の品質検査システムの処理手順と同様の方法を行うものである。
つまり、良品印刷物の印刷画像から画像データを読み取り、前記画像データからチェックサムを演算し、前記チェックサムを基準値としてメモリに記憶させ、被検査印刷物の印刷画像から検査用の画像データを読み取り、前記検査用の画像データから検査用のチェックサムを演算し、前記検査用のチェックサムと前記メモリに記憶されているチェックサムとを比較し良否判定を行うという方法である。
【0022】
本発明は、いずれも基準印刷物の印刷画像と、被検査印刷物の印刷画像とのデジタルデータからチェックサムを算出した後に、それらのチェックサム値を比較することで良品か不良品かの判定処理を行うものであり、従来の基準印刷物の印刷画像と、被検査印刷物の印刷画像とのデジタルデータによる比較に比べて、比較用のデータが少なくてすむので、処理スピードが速く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷物の品質検査装置に関する構成の概要を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態に係る印刷物の品質検査装置のシステムブロック図である。
【図3】印刷物の印刷画像に関するチェックサムを説明する図である。
【図4】本発明の印刷物の品質検査方法に関するチェックサムの利用方法を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態に係る印刷物の品質検査装置の処理手順を示すフローチャート図である。
【図6】本発明の実施形態に係る印刷物の品質検査システムの処理手順を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0024】
1 印刷物の品質検査装置
2 被検査印刷物
3 画像読取部
4 デジタルデータ変換部
5 チェックサム演算部
6 メモリからなる基準値登録部
7 判定部
8 不良品警告処理部
9 制御部
10,13,14 チェックサム
11 基準印刷画像
12 被検査印刷物の印刷画像


【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物の印刷画像に対する良否判定を行う際に用いる基準値を記憶させるメモリを備え、良品印刷物から読み取った画像データと、被検査印刷物から読み取った画像データとに基づいて、前記被検査印刷物の印刷画像の良否判定を行う方式の印刷物の品質検査装置において、
前記良品印刷物から読み取った画像データからチェックサムを演算し、前記チェックサムを前記メモリに基準値として記憶させる基準値登録部と、被検査印刷物の画像から読み取った画像データのチェックサムを演算するチェックサム演算部と、前記チェックサム演算部で演算したチェックサムと、前記メモリに記憶されている基準値とを比較し良否判定を行う判定部と、を備えることを特徴とする印刷物の品質検査装置。
【請求項2】
良品印刷物から読み取った画像データと、被検査印刷物から読み取った画像データとに基づいて、前記被検査印刷物の印刷画像に対する良否判定を行う印刷物の品質検査方法であって、
前記良品印刷物の印刷画像から画像データを読み取るステップと、
前記画像データからチェックサムを演算するステップと、
前記チェックサムを基準値としてメモリに記憶させるステップと、
被検査印刷物の印刷画像から検査用の画像データを読み取るステップと、
前記検査用の画像データから検査用のチェックサムを演算するステップと、
前記検査用のチェックサムと前記メモリに記憶されているチェックサムとを比較し良否判定を行うステップと、
からなることを特徴とする印刷物の品質検査方法。
【請求項3】
良品印刷物から読み取った画像データと、被検査印刷物から読み取った画像データとに基づいて、前記被検査印刷物の印刷画像に対する良否判定を行う印刷物の品質検査システムであって、
良品印刷物の印刷画像と、被検査印刷物の印刷画像とから読み取った各々の画像データに基づいて算出した各々のチェックサムとを比較し、印刷画像の良否判定を行うことを特徴とする印刷物の品質検査システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−44896(P2007−44896A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229107(P2005−229107)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】