説明

印刷物の製造方法およびその方法で得られる印刷物

【課題】樹脂等の材料面でも非常に幅広く、皮膜物性の他にも、粘度その他のニスとしての特性値を調整するのが簡単である水性オーバープリントニス組成物を利用して、凹凸模様を形成するエンボス加工方法を提供する。
【解決手段】基材の印刷面側に、離型剤を含有する活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物(A)を印刷または塗工し、さらにウエット状態のニス組成物(A)の印刷または塗工面上に、条件1(上記ニス組成物(A)40質量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート60質量部を加えて希釈した希釈物の表面張力より5mN/m以上高い表面張力を有する)を満足する水性オーバープリントニス組成物(B)を塗工した後、硬化乾燥させ、凹凸模様の水性オーバープリントニス組成物皮膜を形成することを特徴とする印刷物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の表面に凹凸模様を形成するためのエンボス加工方法、およびその方法を用いて得られる凹凸模様が形成された印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷物の表面に凹凸模様を形成することにより、立体感と深みのある意匠性に優れる印刷物が得られることが知られている。
【0003】
例えば、基材表面に撥液性インキで印刷を施し、次いで架橋性透明樹脂にてコーティングし硬化させた後、エンボス版を用いて熱エンボスを施し凹凸模様を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、基材に撥液性インキを用いて絵柄層を形成し、電離放射線重合性オリゴマー、電離放射線重合性モノマーおよび離型剤を含有する電離放射線硬化型塗料組成物を塗工し、絵柄層と塗工層との間の撥液作用によって絵柄層の上部の塗工層に凹部を形成させることにより、塗工層を電離放射線で硬化させた時に、絵柄層に同調した凹凸模様を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、基材に水性または油性インキを印刷し、次いで電子線または紫外線硬化型クリアー塗料を塗工し、電子線または紫外線照射し硬化してなる印刷物の形成において、インキの表面張力を電子線または紫外線硬化型クリアー塗料より小さくすることにより凹凸模様を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開昭59−132975号公報
【特許文献2】特開平5−086306号公報
【特許文献3】特開平6−278354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の方法で得られるエンボス形成皮膜は、架橋性樹脂や活性エネルギー線硬化性樹脂等で形成されており、利用できる材料の幅が限定されるために画一的な性能となりやすい。
【0008】
そこで、本発明の課題は、樹脂等の材料面でも非常に幅広く、皮膜物性の他にも、粘度その他のニスとしての特性値を調整するのが簡単である水性オーバープリントニス組成物を利用して、凹凸模様を形成する新規なエンボス加工方法およびその印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、印刷面の一部分または全面に、活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物と、水性オーバープリントニス組成物の皮膜を重ねて設け、その表面張力の差を特定の値以上とすることにより、水性オーバープリントニス組成物皮膜に凹凸模様を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、(1)インキを用いて情報を印刷した基材の印刷面側の一部分または全面に、光重合性化合物、離型剤、光重合性開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物(A)を印刷または塗工し、さらにウエット状態の活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物(A)の印刷または塗工面上に、下記の条件1を満足する水性オーバープリントニス組成物(B)を塗工した後、上記活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物(A)および水性オーバープリントニス組成物(B)を硬化乾燥させ、凹凸模様の水性オーバープリントニス組成物皮膜を形成することを特徴とする印刷物の製造方法に関する。
条件1:上記活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物(A)40質量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート60質量部を加えて希釈した希釈物の表面張力より5mN/m以上高い表面張力を有する。
【0011】
また、本発明は、(2)上記インキが、油性インキまたは活性エネルギー線硬化型インキ組成物である上記(1)項に記載の印刷物の製造方法に関する。
【0012】
また、本発明は、(3)上記(1)項または(2)項に記載の製造方法で得られる凹凸模様が形成された印刷物に関する。
【発明の効果】
【0013】
印刷面の一部分または全面に、活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物と、水性オーバープリントニス組成物の皮膜を重ねて設け、その表面張力の差を特定の値以上とすることにより、水性オーバープリントニス組成物皮膜に良好な凹凸模様を形成できる。それにより、樹脂等の材料面でも非常に幅広く、皮膜物性の他にも、粘度その他のニスとしての特性値を調整するのが簡単である水性オーバープリントニス組成物を利用して、凹凸模様を有する印刷物を製造することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0015】
本発明の印刷物の製造方法は、インキを用いて情報を印刷した基材の印刷面上の一部分または全面に、光重合性化合物、離型剤、光重合性開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物(A)を印刷または塗工し、さらにウエット状態の活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物(A)の印刷または塗工面上に、条件1(上記活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物(A)40質量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート60質量部を加えて希釈した希釈物の表面張力より5mN/m以上高い表面張力を有する)を満足する水性オーバープリントニス組成物(B)を塗工した後、上記活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物(A)および水性オーバープリントニス組成物(B)を硬化乾燥させ、凹凸模様を形成させることを特徴とする。
【0016】
以下において、印刷物上に上記の方法により凹凸模様を形成する方法をエンボス加工方法という場合がある。
【0017】
まず、エンボス加工方法に使用する材料について説明する。
【0018】
本発明のエンボス加工方法は、インキを用いて情報を印刷した基材の印刷面側に、活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物と水性オーバープリントニス組成物を印刷、塗工して、印刷物表面にエンボス加工を施すものである。
【0019】
まず、エンボス加工を施す印刷物の基材としては、コート紙、コートボール紙、合成紙、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのフィルム類等が挙げられる。
【0020】
また、エンボス加工を施す印刷物のインキとしては、オフセット印刷インキ等の油性インキ、紫外線硬化型印刷インキ、電子線硬化型印刷インキ、紫外線硬化機構と酸化重合機構を併用したハイブリッド型の活性エネルギー線硬化型印刷インキ組成物等が挙げられる。
【0021】
また、エンボス加工方法に使用する活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物(A)としては、光重合性化合物、離型剤、光重合性開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物が挙げられる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等があげられる。
【0022】
ここで、光重合性化合物としては、(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有する光重合性化合物が好ましく、このよう光重合性化合物としては、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1つ有するモノマー、オリゴマー等が挙げられる。
【0023】
分子内に(メタ)アクリロイル基を1個有するモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類;ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレートなどのアラルキル(メタ)アクリレート類;ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル類;ヘキサエチレングリコールモノフェニルエーテルなどのポリアルキレングリコールモノアリールエーテルの(メタ)アクリル酸エステル類;イソボニル(メタ)アクリレート類;グリセロールモノ(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アルキレート類等が挙げられる。
【0024】
分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するモノマーとしては、例えば、ビスフェノールAジ(メタ)アククリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、およびこれらのアルキレンオキサイドで変性されたもの等が例示できる。
【0025】
分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有するオリゴマーとしては、上記モノマーの1種または2種以上を適宜重合させて得られたものを用いることができる。上記光重合性化合物は、1種または2種以上を用いることができる。
【0026】
また、離型剤としては、ジメチルシロキサン、変性ジメチルシロキサン等のシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。好ましいシリコーン系界面活性剤としては、Tego Rad2700(TegoRad社製)、EB350(ダイセルサイテック(株)製)等が例示できる。
【0027】
活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物中の離型剤の含有量は、0.1〜20質量%であり、好ましくは1〜10質量%である。離型剤の含有量が前記範囲未満であると、凹凸性が低下する傾向があり、一方離型剤の含有量が前記範囲を超えると、ニスの経時安定性が低下する傾向がある。
【0028】
また、光重合性開始剤としては、活性エネルギー線照射によって容易に開裂して2個のラジカルができる光開裂型および/または水素引き抜き型、あるいはこれらを混合して使用することができる。これらの化合物としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインジメチルケタール、チオキサントン、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1、2−ジフェニルエタノンなどが挙げられる。光重合性開始剤は、1種または2種以上を用いることができる。
【0029】
光重合性開始剤の使用量は、上記光重合性化合物と下記に記載する必要に応じて使用するイナートレジンの合計量100質量部に対して、2〜15質量部の範囲が好ましい。
【0030】
また、活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物には、必要に応じて、上記インキとの密着性を向上させるため、および/または、オフセット印刷適性を付与するために、イナートレジンを含有させることもできる。イナートレジンとしては、アクリル系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等が例示できる。
【0031】
活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物には、必要に応じて、上記成分以外に、炭酸カルシウム、タルク、シリカ等の体質顔料等の添加剤を加えてもよい。
【0032】
つぎに、本発明のエンボス加工方法に使用する水性オーバープリントニス組成物(B)としては、下記の条件1を満足するものであれば、通常の水性オーバープリントニス組成物が特に制限なく使用できる。
条件1:上記活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物(A)の希釈物(上記活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物(A)40質量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート60質量部を加えて希釈した希釈物)の表面張力より5mN/m以上高い表面張力を有するものである。水性オーバープリントニス組成物の表面張力が5mN/mより低い場合は、良好な凹凸模様が得られない。なお、水性オーバープリントニス組成物(B)の表面張力が前記希釈物の表面張力よりかなり高くてもとくに弊害はなく、むしろ差が大きいほど細かくはじき良好な凹凸模様が得られる。
【0033】
上記水性オーバープリントニス組成物としては、水分散型樹脂組成物、水溶性樹脂ワニス、表面調整剤、水性溶剤を含有するものが好ましいものとして挙げられる。
【0034】
水分散型樹脂組成物としては、特に制限はないが、アクリル系モノマーを含む2種以上の重合性モノマーを重合して得られるものが好ましい。なかでも、塗膜物性が良好な点から、アクリル系モノマーとスチレン系モノマーの共重合体が好ましい。
【0035】
上記アクリル系モノマーとしては、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸エステル類が好ましい。(メタ)アクリル酸エステル類しては、エステル部分が炭素数1〜20の炭化水素基からなるものが好ましく、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ラウリル等のアクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸アルキルエステル類、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート等のアラルキル(メタ)アルキレート類等が挙げられる。その他、メタクリル酸、アクリル酸等を挙げることができる。
【0036】
上記アクリル系モノマー以外のモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、シトコラン酸、シトコラン酸モノアルキルエステル等のカルボキシル基含有不飽和モノマー等を挙げることができる。
【0037】
上記水分散型樹脂組成物を製造するには、上記モノマーの2種以上を、過酸化アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素等の親水性触媒またはレドックス系触媒を用いて、通常用いられている条件下で乳化重合を行えばよい。共重合体を水中に安定に分散させるために、必要に応じて乳化剤を加えることが好ましい。
【0038】
上記乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。塗膜の耐水性を向上させる場合には、高分子アニオン性界面活性剤が好ましい。上記アニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、シェラック、カルボキシル基を有するアクリル酸系共重合体、カルボキシル基を有するマレイン酸系共重合体等が挙げられる。上記乳化重合にあたっては、上記高分子アニオン界面活性剤そのものを用いてもよいが、上記高分子アニオン界面活性剤のアルカリ水溶液を用いてもよい。
【0039】
また、上記水溶性樹脂ワニスとしては、特に制限はないが、上記水分散型樹脂組成物で例示したモノマー(ただし、カルボキシル基含有アクリル系モノマー、および/または、その他のカルボキシル基含有不飽和単量体モノマーを必須成分として含有する)を共重合して得られるアルカリ可溶型共重合体を塩基性化合物を用いて中和または部分中和し水中に溶解したものが好ましい。なかでも、塗膜物性が良好な点からアルカリ可溶型スチレン−アクリル共重合体を塩基性化合物を用いて水中に溶解したのものが好ましい。
【0040】
アルカリ可溶型共重合体を中和または部分中和する塩基性化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属酸化物、アンモニア等が例示できる。
【0041】
上記水性オーバープリントニス組成物においては、光沢、耐摩擦性、耐ブロッキング性などの塗膜物性や印刷適性の点から、樹脂成分として、水分散型樹脂組成物と水溶性樹脂ワニスを併用するのが好ましい。この点から、上記水分散型樹脂組成物と水溶性樹脂ワニスの比率(固形物換算)は、両者の合計量100質量%に基づいて、前者70〜95質量%、後者5〜25質量%の範囲が好ましい。上記水溶性樹脂ワニスの合計量が5質量%未満では、レベリング性、光沢、耐摩擦性、耐ブロッキング適性などの塗膜物性や印刷適性が劣る傾向があり、一方25質量%を超えると、乾燥性や凹凸模様形成性能が劣る傾向がある。
【0042】
上記表面調整剤は、特にその表面張力の調整という機能に基づいて、上記水性オーバープリントニス組成物の凹凸模様の形成に寄与するものである。かかる表面調整剤としては、特に制限はないが、アセチレン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を用いることができる。なかでも、アセチレン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0043】
アセチレン系界面活性剤としては、アセチレングリコール類、アセチレンアルコール類等が挙げられ、好ましくは、アセチレン基とアルキレンオキサイド鎖を有する界面活性剤であり、例えば、サーフィノール系界面活性剤(日信化学工業(株)製)を挙げることができる。シリコーン系界面活性剤としては、ジメチルポリシロキサン等を挙げることができる。
【0044】
表面調整剤を使用する場合、表面調整剤の使用量は、水性オーバープリントニス組成物の固形物全量に基づいて10質量%以下であるのが好ましく、特に好ましくは0.1〜10質量%である。表面調整剤の含有量が10質量%を超えると、水性オーバープリントニス組成物の凹凸模様が形成されない可能性がある。
【0045】
上記水性溶剤としては、特に限定されないが、水と水混和性有機溶剤の混合物が好ましい。なお、上記水分散型樹脂組成物、水溶性樹脂ワニスに含有されている水分で充分なときは別途水を加える必要はない。水混和性有機溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール等の1価アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールメチルブチルエーテル、エチレングリコールエチルブチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノメチルエステル、エチレングリコールモノエチルエステル、エチレングリコールモノブチルエステル、エチレングリコールモノペンチルエステル、プロピレングリコールモノメチルエステル、プロピレングリコールモノエチルエステル、プロピレングリコールモノブチルエステル、プロピレングリコールモノヘキシルエステル等のアルキレングリコールモノアルキルエステル類等が挙げられる。
【0046】
本発明におけるエンボス形成方法では、水性オーバープリントニス組成物の皮膜が乾燥して流動性がなくなるまでの間に、活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物との表面張力の差によって、皮膜の凹凸(エンボス模様)を形成するものであり、使用する材料や塗工条件、特に皮膜の膜厚や表面張力の差などにしたがって、水性オーバープリントニス組成物の粘度や乾燥性等は適度に調整することが好ましい。しかし、一般的には水性オーバープリントニス組成物は、ザーンカップR#4を使用する25℃ での粘度が10〜35秒の範囲にあるのが好ましく、このような粘度のニスを乾燥後塗布量0.5〜8g/m2の範囲で塗布するのが好ましい。
【0047】
次に、エンボス加工方法について具体的に説明する。なお、本発明は、具体的に説明したエンボス加工方法に限定されるものではなく、本発明の概念にしたがって凹凸模様が形成されるエンボス加工方法は本発明の範囲に含まれる。
【0048】
本発明のエンボス加工方法の具体例を説明すると、例えばまず、基材に、情報をオフセット印刷インキ組成物または活性エネルギー線硬化型インキ組成物をオフセット印刷機等を用いて印刷する。その基材の印刷面上の一部分または全面に上記活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物をオフセット印刷機等で印刷するか、またはロールコーター、フレキソコーター、グラビアコーター、エアナイフ等の塗工機を用いて塗工し、ウエット状態の活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物の印刷または塗工面上に上記水性オーバープリントニス組成物をロールコーター、フレキソコーター、グラビアコーター、エアナイフ等の塗工機を用いて塗工する。ついで、例えば、コンベア式光線照射装置を用いて活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物を硬化させ(例えば、通常の高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどを備えた紫外線照射装置を用いて、80〜280W/cmの照射強度で紫外線を照射させ活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物を硬化させる)、同時に、水性オーバープリントニス組成物の塗膜を乾燥させる(活性エネルギー線の照射時の熱で乾燥する)。必要により、その他の各種乾燥手段を用いてさらに水性オーバープリントニス組成物の塗膜を乾燥させてもよい。このようにして、凹凸模様を有する水性オーバープリントニス組成物の乾燥皮膜が形成される。
【実施例】
【0049】
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は質量部を意味する。
【0050】
実施例1
活性エネルギー線硬化型墨インキ組成物(東洋インキ(株)製のカルトンACE)を王子製紙製UFコートに0.15cc/204cm2となるようにRI展色機((株)明製作所製)により展色し、インラインで下記組成の活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物を下記水性オーバープリントニス組成物をはじきたい箇所に0.15cc/204cm2となるようにRI展色機((株)明製作所製)で展色し、さらにインラインでハンドプルーファー200線/inchにより下記組成の水性オーバープリントニス組成物を展色し、高圧水銀ランプを備えたコンベア式紫外線照射装置を用いて、160W/cmの照射強度で活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物を硬化させ、同時に水性オーバープリントニス組成物の塗膜を乾燥させて、印刷物1を得た。
【0051】
水性オーバープリントニス組成物の粘度は、(株)離合社製のザーンカップR#4を使用し、25℃で測定した。
【0052】
活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物
・エポキシアクリレート 50部
(ビスフェノールAジアクリレート)
・PO変性グリセロールプロポキシトリアクリレート 25部
・ジアリルフタレート樹脂 5部
・炭酸カルシウム 5部
・開始剤(ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン) 10部
・Rad2700 5部
【0053】
水性オーバープリントニス組成物(粘度:17秒)
・アクリルエマルジョン 60.5部
(ジョンソンポリマー製ジョンクリル352、固形分濃度45%)
・スチレン−アクリル樹脂溶解ワニス 30部
(ジョンソンポリマー製ジョンクリル354、固形分濃度35%)
・消泡剤(ジメチルシロキサン系) 0.3部
・エタノール 4部
・水 5部
・アセチレングリコール 0.2部
【0054】
実施例2
実施例1の活性エネルギー線硬化性オーバープリントニス組成物を下記組成の活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物に代えたほかは、実施例1と同様な加工方法で印刷物2を得た。
【0055】
活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物
・エポキシアクリレート 40部
(ビスフェノールAジアクリレート)
・PO変性グリセロールプロポキシトリアクリレート 25部
・ジアリルフタレート樹脂 5部
・炭酸カルシウム 5部
・開始剤(ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン) 10部
・Rad2700 15部
【0056】
実施例3
実施例1の水性オーバープリントニス組成物を下記組成の水性オーバープリントニス組成物に代えたほかは、実施例1と同様な加工方法で印刷物3を得た。
【0057】
水性オーバープリントニス組成物(粘度:17秒)
・アクリルエマルジョン 60.4部
(ジョンソンポリマー製ジョンクリル352、固形分濃度45%)
・スチレン−アクリル樹脂溶解ワニス 30部
(ジョンソンポリマー製ジョンクリル354、固形分濃度35%)
・消泡剤(ジメチルシロキサン系) 0.3部
・エタノール 4部
・水 5部
・アセチレングリコール 0.2部
・ジメチルポリシロキサン 0.1部
【0058】
実施例4
実施例1の水性オーバープリントニス組成物を下記組成の水性オーバープリントニス組成物に代えたほかは、実施例1と同様な加工方法で印刷物4を得た。
【0059】
水性オーバープリントニス(粘度:17秒)
・アクリルエマルジョン 61部
(ジョンソンポリマー製ジョンクリル352、固形分濃度45%)
・スチレン−アクリル樹脂溶解ワニス 30部
(ジョンソンポリマー製ジョンクリル354、固形分濃度35%)
・エタノール 4部
・水 5部
【0060】
比較例1
実施例1の活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物を下記組成の活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物に代えたほかは、実施例1と同様な加工方法で印刷物5を得た。
【0061】
活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物
・エポキシアクリレート 50部
(ビスフェノールAジアクリレート)
・PO変性グリセロールプロポキシトリアクリレート 29.95部
・ジアリルフタレート樹脂 5部
・炭酸カルシウム 5部
・開始剤(ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン) 10部
・Rad2700 0.05部
【0062】
比較例2
実施例1の水性オーバープリントニス組成物を下記組成の水性オーバープリントニス組成物に代えたほかは、実施例1と同様な加工方法で印刷物6を得た。
【0063】
水性オーバープリントニス組成物(粘度:17秒)
・アクリルエマルジョン 57部
(ジョンソンポリマー製ジョンクリル352、固形分濃度45%)
・スチレン−アクリル樹脂溶解ワニス 30.7部
(ジョンソンポリマー製ジョンクリル354、固形分濃度35%)
・消泡剤(ジメチルシロキサン系) 0.3部
・エタノール 4部
・水 5部
・アセチレングリコール 3部
【0064】
比較例3
実施例1の水性オーバープリントニス組成物を下記組成の水性オーバープリントニス組成物に代えたほかは、実施例1と同様な加工方法で印刷物7を得た。
【0065】
水性オーバープリントニス組成物(粘度:17秒)
・アクリルエマルジョン 60部
(ジョンソンポリマー製ジョンクリル352、固形分濃度45%)
・スチレン−アクリル樹脂溶解ワニス 29.7部
(ジョンソンポリマー製ジョンクリル354、固形分濃度35%)
・消泡剤(ジメチルシロキサン系) 0.3部
・エタノール 4部
・水 5部
・ジメチルポリシロキサン 1部
【0066】
<評価>
(表面張力)
活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物(A)の希釈物(活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物(A)をトリメチロールプロパントリアクリレートで、活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物/トリメチロールプロパントリアクリレート=40/60質量比となるように希釈した希釈物)の表面張力、水性オーバープリントニス組成物(B)の表面張力を、表面張力計((株)協和科学製、型式A3)により白金プレートを使用して25℃で測定し、それらの差を求めた。その結果を表1に示す。
【0067】
(印刷物1〜7の凹凸性評価)
実施例1〜4、比較例1〜3のエンボス加工方法で得られた印刷物1〜7の凹凸性を目視にて評価した。評価結果を表1に示す。
【0068】
評価基準
○:凹凸模様が明確で、良好なエンボス調の表面が得られる。
△:凹凸模様が不明確で、良好なエンボス調の表面が得られていない。
×:ほとんど凹凸模様が得られていない。
【0069】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキを用いて情報を印刷した基材の印刷面側の一部分または全面に、光重合性化合物、離型剤、光重合性開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物(A)を印刷または塗工し、さらにウエット状態の活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物(A)の印刷または塗工面上に、下記の条件1を満足する水性オーバープリントニス組成物(B)を塗工した後、上記活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物(A)および水性オーバープリントニス組成物(B)を硬化乾燥させ、凹凸模様の水性オーバープリントニス組成物皮膜を形成することを特徴とする印刷物の製造方法。
条件1:上記活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス組成物(A)40質量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート60質量部を加えて希釈した希釈物の表面張力より5mN/m以上高い表面張力を有する。
【請求項2】
上記インキが、油性インキまたは活性エネルギー線硬化型インキ組成物である請求項1記載の印刷物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の製造方法で得られる凹凸模様が形成された印刷物。

【公開番号】特開2007−168191(P2007−168191A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366914(P2005−366914)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000105947)サカタインクス株式会社 (123)
【Fターム(参考)】