説明

印刷用凹版及び積層型電子部品の製造方法

【課題】印刷のパターンの表面粗さを小さくできる印刷用凹版、及びこれを用いた積層型電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】印刷用凹版2では、互いに位相が揃った直交方向の波状の印刷ペースト流動経路P1と、互いに位相が揃った印刷方向の波状の印刷ペースト流動経路P2とが形成される。したがって、ドクターブレード21による掻き取りを行いながら印刷ペーストを各セル6に充填する際、セル6内での印刷ペーストの流れが均一化され、セル6内に充填される印刷ペーストの厚みのばらつきが抑えられる。したがって、この印刷用凹版2を用いて印刷ペーストの転写を行ったセラミックグリーンシートにおいて、内部電極層のパターンの表面粗さを小さくできる。また、グラビアロール1に円筒度や真円度による歪みなどが多少生じていたとしても、内部電極層のパターンの表面粗さのばらつきを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばグラビア印刷に用いられる印刷用凹版、及びこれを用いた積層型電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷用凹版として、例えば特許文献1に記載のグラビア印刷スクリーンがある。この従来の印刷用凹版では、印刷パターンを構成するセルを区画している畝目を1箇所または数箇所で切断している。これにより、印刷ペーストの流れの傾向が制御され、セルの深さを増すことなく被印刷面に高濃度の印刷を施すことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭39−16402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷用凹版においては、被印刷物に印刷されるパターンの表面粗さを小さくできる技術が望まれている。しかしながら、上述した従来の印刷用凹版では、畝目の一部が切断されているものの、畝目が切断されている箇所と畝目に囲まれている箇所とで印刷ペーストの流れやすさの差異が大きいと考えられる。したがって、セル内に充填される印刷ペーストに厚みのばらつきが生じ易く、表面粗さが小さいパターンを得るには不十分であった。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、印刷のパターンの表面粗さを小さくできる印刷用凹版、及びこれを用いた積層型電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決のため、本発明に係る印刷用凹版は、印刷すべき図形パターンに応じた複数の印刷パターンが表面に配列された印刷用凹版であって、印刷パターンは、印刷方向に伸びる印刷方向土手と印刷方向に直交する直交方向土手とによって区画された複数のセルを有し、印刷方向土手には、隣り合う前記セル同士を直交方向に連通させる第1の切欠部が設けられ、直交方向土手には、隣り合う前記セル同士を印刷方向に連通させる第2の切欠部が設けられ、印刷方向に隣り合う第1の切欠部は、セルに対する印刷方向の位置が略同一となっている一方で、直交方向に隣り合う第1の切欠部は、セルに対する印刷方向の位置が互いに異なっており、印刷方向に隣り合う第2の切欠部は、セルに対する直交方向の位置が互いに異なっている一方で、直交方向に隣り合う第2の切欠部は、セルに対する直交方向の位置が略同一となっていることを特徴としている。
【0007】
この印刷用凹版では、隣り合う第1の切欠部を結ぶようにしてセル間の直交方向の印刷ペースト流動経路が波状に形成され、隣り合う第2の切欠部を結ぶようにしてセル間の印刷方向の印刷ペースト流動経路が波状に形成される。また、隣り合う直交方向の印刷ペースト流動経路の位相が略同一となり、かつ隣り合う印刷方向の印刷ペースト流動経路の位相が略同一となる。これにより、セル内での印刷ペーストの流れが均一化され、セル内に充填される印刷ペーストの厚みのばらつきが抑えられる。したがって、この印刷用凹版を用いて印刷ペーストの転写を行った被印刷物において、印刷のパターンの表面粗さを小さくできる。
【0008】
また、第1の切欠部の幅が、第2の切欠部の幅よりも狭くなっていることが好ましい。これにより、セル内での印刷ペーストの流れが一層均一化され、セル内に充填される印刷ペーストの厚みのばらつきが更に効果的に抑えられる。
【0009】
また、第2の切欠部は、セルの隅部に対応して形成されていることが好ましい。この場合、被印刷物に印刷を行った際、印刷ペーストが直接付着しない部分、すなわち、印刷方向土手及び直交方向土手に対応する部分が周囲からの印刷ペーストによって速やかに埋められる。したがって、印刷ペーストが転写されない領域が発生することを抑制できる。
【0010】
また、印刷パターンは、直交方向の側端に位置する側端セルと、側端セルよりも中央側に位置する中央側セルとを有し、側端セルを区画する直交方向土手に形成された第2の切欠部は、側端セルの中央寄りに形成され、中央側セルを区画する直交方向土手に形成された第2の切欠部は、中央側セルの隅部に対応して形成されていることが好ましい。こうすると、側端セルを通る印刷方向の印刷ペーストの流れが中央側セルを通る印刷方向の印刷ペーストの流れに比べて速くなり、側端セルに充填される印刷ペーストの量が中央側セルに充填される印刷ペーストの量に比べて少なくなる。したがって、被印刷物に印刷を行った後、印刷ペーストが側方に滲むことによるパターン端部のダレを抑制できる。
【0011】
また、本発明に係る印刷用凹版は、印刷すべき図形パターンに応じた複数の印刷パターンが表面に配列された印刷用凹版であって、印刷パターンは、印刷方向に伸びる印刷方向土手と印刷方向に直交する直交方向土手とによって区画された複数のセルを有し、印刷方向土手には、隣り合うセル同士を直交方向に連通させる第1の切欠部が設けられ、直交方向土手には、隣り合うセル同士を印刷方向に連通させる第2の切欠部が設けられ、隣り合う第1の切欠部を結ぶようにしてセル間の直交方向の印刷ペースト流動経路が波状に形成され、隣り合う第2の切欠部を結ぶようにしてセル間の印刷方向の印刷ペースト流動経路が波状に形成され、隣り合う直交方向の印刷ペースト流動経路の位相が反転しておらず、かつ隣り合う印刷方向の印刷ペースト流動経路の位相が反転していないことを特徴としている。
【0012】
この印刷用凹版では、隣り合う第1の切欠部を結ぶようにしてセル間の直交方向の印刷ペースト流動経路が波状に形成され、隣り合う第2の切欠部を結ぶようにしてセル間の印刷方向の印刷ペースト流動経路が波状に形成される。また、隣り合う直交方向の印刷ペースト流動経路の位相が反転しておらず、かつ隣り合う印刷方向の印刷ペースト流動経路の位相が反転していない状態となっている。これにより、セル内での印刷ペーストの流れが均一化され、セル内に充填される印刷ペーストの厚みのばらつきが抑えられる。したがって、この印刷用凹版を用いて印刷ペーストの転写を行った被印刷物において、印刷のパターンの表面粗さを小さくできる。
また、本発明に係る積層型電子部品の製造方法は、上記印刷用凹版を用いて内部電極層又は段差吸収層を形成する工程を含むことを特徴としている。
この積層型電子部品の製造方法では、上記印刷用凹版を用いることにより、表面粗さの小さい内部電極層又は段差吸収層のパターンを形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る印刷用凹版によれば、印刷のパターンの表面粗さを小さくできる。また、本発明に係る積層型電子部品の製造方法によれば、表面粗さの小さい内部電極層又は段差吸収層のパターンを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る印刷用凹版の一実施形態を用いてなるグラビアロールを示す図である。
【図2】図1に示した印刷用凹版の印刷パターンを示す平面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】印刷ペースト流動経路を示す要部拡大図である。
【図5】側端セル周辺の印刷パターンを示す図である。
【図6】比較例における非転写部分への印刷ペーストの流れを示す図である。
【図7】実施例における非転写部分への印刷ペーストの流れを示す図である。
【図8】第1の切欠部及び第2の切欠部の変形例を示す図である。
【図9】第1の切欠部の幅と第2の切欠部の幅との関係に関する実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る印刷用凹版の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る印刷用凹版の一実施形態を用いてなるグラビアロールを示す図である。図1に示すグラビアロール1は、例えば積層セラミックコンデンサといった電子部品の製造工程において、積層体を構成する各セラミックグリーンシートに内部電極層のパターンを転写するために用いられる。内部電極層のパターンを形成する印刷ペーストとしては、例えば導電性金属粉末、樹脂、及び溶剤を含有する導電性ペーストが用いられる。
【0017】
図2は、印刷用凹版の印刷パターンを示す平面図である。また、図3は、図2の要部拡大図である。図2に示すように、印刷用凹版2は、例えば印刷方向(グラビアロール1の周方向に対応する方向)を長辺とし、印刷方向に直交する直交方向(グラビアロール1の軸方向に対応する方向)を短辺とする長方形状をなし、印刷すべき図形パターンに応じた複数の印刷パターン3が表面に配列されている。印刷パターン3は、図3に示すように、印刷方向に伸びる印刷方向土手4と印刷方向に直交する直交方向土手5とによって区画された複数の略正方形状のセル6を有している。
【0018】
印刷方向土手4のそれぞれには、隣り合うセル6,6同士を直交方向に連通させる第1の切欠部11が設けられている。第1の切欠部11は、いずれもセル6の隅部に対応する位置に形成されている。印刷方向に隣り合う第1の切欠部11,11は、セル6の同一の隅部に対応して形成されている一方で、直交方向に隣り合う第1の切欠部11,11は、前述の隅部の対角線上にある隅部にそれぞれ対応して形成されている。
【0019】
また、直交方向土手5のそれぞれには、隣り合うセル6,6同士を印刷方向に連通させる第2の切欠部12が設けられている。第2の切欠部12は、第1の切欠部11と略等幅で、いずれもセル6の隅部に対応する位置に形成されている。直交方向に隣り合う第2の切欠部12,12は、セル6の同一の隅部に対応して形成されている一方で、印刷方向に隣り合う第2の切欠部12,12は、前述の隅部の対角線上にある隅部にそれぞれ対応して形成されている。
【0020】
第1の切欠部11により、図4に示すように、印刷用凹版2には、隣り合う第1の切欠部11,11を結ぶようにしてセル6,6間の直交方向の印刷ペースト流動経路P1が波状に形成されている。隣り合う印刷ペースト流動経路P1,P1間の位相は略同一の状態となっている。また、第2の切欠部12により、印刷用凹版2には、隣り合う第2の切欠部12,12を結ぶようにしてセル6,6間の印刷方向の印刷ペースト流動経路P2が波状に形成されている。隣り合う印刷ペースト流動経路P2,P2間の位相は略同一の状態となっている。
【0021】
また、印刷パターン3は、図2に示すように、直交方向の側端に位置する側端セル6Aと、側端セル6Aよりも中央側に位置する中央側セル6Bとを有している。ここで、図5に示すように、中央側セル6Bを区画する直交方向土手5に形成された第2の切欠部12は、上述のようにセル6の隅部に対応する位置に形成されているのに対し、側端セル6Aを区画する直交方向土手5に形成された第2の切欠部12は、側端セル6Aの中央寄りに形成されている。
【0022】
したがって、側端セル6A,6A間の印刷方向の印刷ペースト流動経路P2の位相は、中央側セル6B,6B間の印刷方向の印刷ペースト流動経路P2の位相と略同一であるものの、側端セル6A,6A間の印刷方向の印刷ペースト流動経路P2の振幅は、中央側セル6B,6B間の印刷方向の印刷ペースト流動経路P2の振幅に比べて半分程度に小さくなっている。
【0023】
この印刷用凹版2を用いて印刷を行う場合、まず、グラビアロール1をタンク内に充填した印刷ペーストに浸漬させることによって印刷用凹版2に印刷ペーストを付着させる。次に、グラビアロール1を回転させると共に、タンクから引き上げられた印刷用凹版2にドクターブレード21を左右に揺動させながら当てる(図1参照)。これにより、印刷用凹版2に付着した余分な印刷ペーストが掻き取られ、各セル6に印刷ペーストが充填される。
【0024】
印刷用凹版2の各セル6に印刷ペーストを充填させた後、グラビアロール1と圧胴とによってセラミックグリーンシートを挟み、所定の圧力を加えながらグラビアロール1と圧胴とを回転させる。これにより、セラミックグリーンシート上には、印刷用凹版2の印刷パターン3に応じたパターンで印刷ペーストが転写される。この転写の際、セラミックグリーンシートにおいて印刷方向土手4及び直交方向土手5が押し当てられた部分には印刷ペーストの転写はされないが、時間の経過と共に周囲の印刷ペーストによって非転写部分が埋められ、最終的には略長方形状の内部電極層のパターンがセラミックグリーンシート上に形成される。
【0025】
以上のような構成を有する印刷用凹版2では、互いに位相が揃った直交方向の波状の印刷ペースト流動経路P1と、互いに位相が揃った印刷方向の波状の印刷ペースト流動経路P2とが形成される。したがって、ドクターブレード21による掻き取りを行いながら印刷ペーストを各セル6に充填する際、セル6内での印刷ペーストの流れが均一化され、セル6内に充填される印刷ペーストの厚みのばらつきが抑えられる。したがって、この印刷用凹版2を用いて印刷ペーストの転写を行ったセラミックグリーンシートにおいて、内部電極層のパターンの表面粗さを小さくできる。また、グラビアロール1に円筒度・真円度による歪みや製版過程におけるセル形状のばらつきが多少生じていたとしても、内部電極層のパターンの表面粗さの増大を抑制できる。
【0026】
また、印刷方向土手4及び直交方向土手5が交差する部分において周囲に印刷ペーストが直接付着しない非転写部分が多く、セラミックグリーンシート上において非転写部分が印刷ペーストで埋められるまでに時間がかかる傾向にあることを考慮し、印刷用凹版2では、第1の切欠部11及び第2の切欠部12がセル6の隅部に対応して形成されている。例えば第2の切欠部12がセル6の中央寄りに形成されている場合には、図6(a)に示すように、印刷方向土手4及び直交方向土手5が交差する部分に対して1方向からしか印刷ペーストが流れ込まない。このため、図6(b)に示すように、この交差部分に対応する非転写部分Sが印刷ペーストで埋められるまでに時間がかかり、非転写部分Sにおいて内部電極層のパターンの表面粗さの増大が生じることが考えられる。
【0027】
これに対し、本実施形態では、第1の切欠部11及び第2の切欠部12がセル6の隅部に対応して形成されている。したがって、図7(a)に示すように、印刷方向土手4及び直交方向土手5が交差する部分に対して少なくとも2方向から印刷ペーストが流れ込むこととなる。これにより、非転写部分が印刷ペーストで埋められるまでの時間を短縮でき、図7(b)に示すように、非転写部分において内部電極層のパターンの表面粗さの増大が生じることを抑制できる。
【0028】
また、印刷用凹版2では、印刷パターン3が直交方向の側端に位置する側端セル6Aと、側端セル6Aよりも中央側に位置する中央側セル6Bとを有している。そして、側端セル6Aを区画する直交方向土手5に形成された第2の切欠部12は、側端セル6Aの中央寄りに形成され、中央側セル6Bを区画する直交方向土手5に形成された第2の切欠部12は、中央側セル6Bの隅部に対応して形成されている。
【0029】
これにより、側端セル6Aを通る印刷方向の印刷ペーストの流れが中央側セル6Bを通る印刷方向の印刷ペーストの流れに比べて速くなり、側端セル6Aに充填される印刷ペーストの量を中央側セル6Bに充填される印刷ペーストの量に比べて少なくすることができる。したがって、セラミックグリーンシートに内部電極層の印刷を行った場合に、内部電極層のパターンの中央部の厚さに比べて側端部の厚さが抑えられ、印刷ペーストが側方に滲むことによるパターン側端部のダレを抑制できる。
【0030】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上述した実施形態では、隣り合う直交方向の印刷ペースト流動経路P1,P1間の位相は略同一の状態となっているが、これらの印刷ペースト流動経路P1,P1間の位相が完全に反転していない限りは、セル6内での印刷ペーストの流れを均一化できる効果が奏される。隣り合う印刷方向の印刷ペースト流動経路P2,P2についても同様である。
【0031】
また、上述した実施形態では、側端セル6A,6A間の印刷方向の印刷ペースト流動経路P2の振幅が中央側セル6B,6B間の印刷方向の印刷ペースト流動経路P2の振幅に比べて半分程度に小さくなるように、側端セル6Aを区画する直交方向土手5に形成された第2の切欠部12が側端セル6Aの中央寄りに形成されている。しかしながら、使用する印刷ペーストの種類によっては、側端セル6Aを区画する直交方向土手5に第2の切欠部12を全く設けなくてもよく、中央側セル6Bと同様に、側端セル6Aの隅部に対応して第2の切欠部12を設けてもよい。
【0032】
また、上述した実施形態では、第1の切欠部11の幅と第2の切欠部12の幅とが略等幅となっているが、図8に示すように、第1の切欠部11の幅W1を第2の切欠部12の幅W2よりも狭くしてもよい。印刷ペーストを印刷用凹版2に充填する際、ドクターブレード21によって印刷方向に掻き取られる印刷ペーストの流れが直交方向に掻き取られる印刷ペーストの流れよりも大きい場合がある。このような場合に第1の切欠部11の幅W1を第2の切欠部12の幅W2よりも狭くすることで、セル6内での印刷ペーストの流れを一層均一化できる。これにより、セル6内に充填される印刷ペーストの厚みのばらつきを効果的に抑えることができ、印刷のパターンの表面粗さを小さくできる。
【0033】
図9は、第1の切欠部11の幅W1と第2の切欠部12の幅W2との関係に関する実験結果を示す図である。この実験は、W1<W2の関係を有する印刷用凹版のサンプル(実施例1)、W1=W2の関係を有する印刷用凹版のサンプル(実施例2)、W1>W2の関係を有するサンプル(実施例3)、第1の切欠部11及び第2の切欠部12を設けないサンプル(比較例)をそれぞれ用意し、ドクターブレードを用いてセル内に充填した印刷ペーストをセラミックグリーンシートに転写したときの内部電極層のパターンの表面粗さRaを測定したものである。
【0034】
実験の結果、比較例ではパターンの表面粗さRaが120nmであったのに対し、実施例1では100nm、実施例2では111nm、実施例3では108nmといずれも表面粗さが小さく抑えられていることが分かった。また、各サンプルで得られたセラミックグリーンシートを積層・焼成して得られた積層セラミックコンデンサの破壊電圧を測定したところ、その値は、実施例1(優)>実施例3(良)>実施例2(可)>比較例(不可)であった。
【0035】
その他、上述した実施形態では、印刷用凹版2は、積層セラミックコンデンサの内部電極層を形成するグラビア印刷用の版として例示されているが、内部電極層のみならず、段差吸収層の形成に用いることもできる。段差吸収層は、内部電極層が形成されたセラミックグリーンシートを積層する際の内部電極層の厚さ分のシート間の段差を埋めるために、例えば内部電極層と同等の厚さで内部電極層の周囲に印刷される層である。また、本発明に係る印刷用凹版は、グラビア印刷以外の方式の印刷に適用することも可能であり、ディスプレイ等の他の電子機器の回路や電極の形成に用いることもできる。
【符号の説明】
【0036】
2…印刷用凹版、3…印刷パターン、4…印刷方向土手、5…直交方向土手、6…セル、6A…側端セル、6B…中央側セル、11…第1の切欠部、12…第2の切欠部12、P1…直交方向の印刷ペースト流動経路、P2…印刷方向の印刷ペースト流動経路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷すべき図形パターンに応じた複数の印刷パターンが表面に配列された印刷用凹版であって、
前記印刷パターンは、印刷方向に伸びる印刷方向土手と前記印刷方向に直交する直交方向土手とによって区画された複数のセルを有し、
前記印刷方向土手には、隣り合う前記セル同士を前記直交方向に連通させる第1の切欠部が設けられ、
前記直交方向土手には、隣り合う前記セル同士を前記印刷方向に連通させる第2の切欠部が設けられ、
前記印刷方向に隣り合う前記第1の切欠部は、前記セルに対する前記印刷方向の位置が略同一となっている一方で、前記直交方向に隣り合う前記第1の切欠部は、前記セルに対する前記印刷方向の位置が互いに異なっており、
前記印刷方向に隣り合う前記第2の切欠部は、前記セルに対する前記直交方向の位置が互いに異なっている一方で、前記直交方向に隣り合う前記第2の切欠部は、前記セルに対する前記直交方向の位置が略同一となっていることを特徴とする印刷用凹版。
【請求項2】
前記第1の切欠部の幅が、前記第2の切欠部の幅よりも狭くなっていることを特徴とする請求項1記載の印刷用凹版。
【請求項3】
前記第2の切欠部は、前記セルの隅部に対応して形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の印刷用凹版。
【請求項4】
前記印刷パターンは、前記直交方向の側端に位置する側端セルと、前記側端セルよりも中央側に位置する中央側セルとを有し、
前記側端セルを区画する前記直交方向土手に形成された前記第2の切欠部は、前記側端セルの中央寄りに形成され、
前記中央側セルを区画する前記直交方向土手に形成された前記第2の切欠部は、前記中央側セルの隅部に対応して形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の印刷用凹版。
【請求項5】
印刷すべき図形パターンに応じた複数の印刷パターンが表面に配列された印刷用凹版であって、
前記印刷パターンは、印刷方向に伸びる印刷方向土手と前記印刷方向に直交する直交方向土手とによって区画された複数のセルを有し、
前記印刷方向土手には、隣り合う前記セル同士を前記直交方向に連通させる第1の切欠部が設けられ、
前記直交方向土手には、隣り合う前記セル同士を前記印刷方向に連通させる第2の切欠部が設けられ、
隣り合う前記第1の切欠部を結ぶようにして前記セル間の前記直交方向の印刷ペースト流動経路が波状に形成され、
隣り合う前記第2の切欠部を結ぶようにして前記セル間の前記印刷方向の印刷ペースト流動経路が波状に形成され、
隣り合う前記直交方向の印刷ペースト流動経路の位相が反転しておらず、かつ隣り合う前記印刷方向の印刷ペースト流動経路の位相が反転していないことを特徴とする印刷用凹版。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項記載の印刷用凹版を用いて内部電極層又は段差吸収層を形成する工程を含むことを特徴とする積層型電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−71533(P2012−71533A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219334(P2010−219334)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】