説明

印刷装置、印刷再開方法及びプログラム

【課題】印刷エラーが発生した場合のオペレータの作業負荷を低減させることを目的とする。
【解決手段】印刷エラーが発生した場合、バッファに保持されている印刷エラーが発生したページのレコードの最初のページから印刷エラーが発生したページに係るページまでのデータを印刷エラーに係る出力物として排紙する排紙手段と、操作部に排紙手段によって排紙された出力物の除去を促すメッセージを表示する表示手段と、表示手段でのメッセージの表示後、印刷再開の指示を受け付けた場合、印刷エラーが発生したページのレコードの最初のページから印刷を再開する印刷再開手段と、を有することによって課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷再開方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷業界においては、印刷機からの出力物を利用してビジネスを行っているため、オフィスよりも高品質な出力を求められる。特に、保険の見積書やダイレクトメール、クレジットカードの明細書等、有価証券や個人情報に関わる印刷物を多く扱う印刷会社では、万が一にもページの重複や落丁があると、ビジネス上の信用に関わる非常に大きな問題となる。
近年、顧客一人ひとりのニーズにあったデータを印刷するバリアブル印刷の需要が拡大している。バリアブル印刷(VDP)は、一つのジョブに対して、登録されている顧客データを各レコード単位で印刷する。レコードとは、VDPの一連の処理単位であり、例えば顧客単位で印刷を行う場合には、1顧客分の印刷データにより1レコードが構成される。バリアブル印刷は、1つのジョブに多くのレコードを含む場合があり、例えば一つのジョブに数千〜数万程度のレコードが含まれる場合がある。また、VDPジョブでは、各レコードに対して、VDPオブジェクトが関連付けられ、背景となるマスターオブジェクトと合成されて印刷される。このようなVDPは複数のレコードが含まれていてもジョブ単位で管理されており、これをVDPジョブと呼ぶ。
【0003】
VDPを利用するような印刷会社では、出力物に対して、適切な後処理加工や仕分けを行い、顧客に納品するという形態をとることが多い。例えば、ダイレクトメールの印刷にあたっては、印刷後にステイプルや折り等の加工を行い、封筒に封入する。ここで、特にVDPジョブにおいては、データが顧客データごとにレコード単位で管理されているため、オペレータは出力物をレコード単位で加工や封入等の作業を行うことが多い。従来、主にオフィスで使用されてきた印刷機は、ジョブごとに一つのデータのまとまりとして扱われることが多かった。この点は従来の印刷処理とVDPとで大きく異なる点であり、レコード単位で処理を行うオペレータの使い勝手を考慮した印刷機の開発が強く求められている。
VDPにおいて、レコード単位での処理を想定してエラーリカバリーを行う技術としては、特許文献1に開示されている。特許文献1では、エラーの発生したレコードを予めデータ退避領域に退避しておき、印刷の際に前記レコードを除外して処理を行う。しかる後に、退避していたレコードをオペレータに提示し、オペレータによるエラーの修正を促す。特許文献1に開示された技術は、VDPにおいて、レコード単位で作業を行うオペレータの使い勝手を考慮している点でそれ以前の技術より優れている。しかし、エラーの生じたレコードを自動的に除外してしまうため、最終的な出力物の順序がオペレータの指示していた順序と異なってしまう問題があった。また、VDPの解釈時に発生するエラーを主な対象としているため、印刷処理時に発生するジャム等の印刷エラーには効果が限定的である問題があった。
【0004】
現在、主にオフィスで使用されている印刷機の多くで、ジャム等の印刷エラーが発生した場合に、印刷エラーの起きたページから印刷を再開するエラーリカバリーの機能が搭載されている。エラーリカバリーの機能に関連して、例えば、特許文献2では、リカバリー動作の実行可否を、中断されたジョブがインサータを使用するジョブであるか否かに基づいて決定する技術が開示されている。
ここで、印刷エラーが発生した際には、多くの出力途中のページが機器内に残存するため、一部のページは実際には複数枚印刷処理が行われることになる。そのため、印刷エラーの発生したタイミングやオペレータの作業ミス等により、可能性は低いながらも、印刷エラーの発生したページの前後で、ページの重複や落丁といった印刷不良が発生しているかもしれないという懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−75634号公報
【特許文献2】特開2005−210754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来実現されてきたように、従来実現されてきた印刷機の多くは、印刷エラーが発生したページからリカバリー処理を行っている。このリカバリー処理の信頼性は一般に十分に高く、ページの重複や落丁が発生する可能性は低い。しかし、既に述べたように、印刷業界では非常に高品質な出力が求められるため、万が一の可能性を避けるため、オペレータは印刷完了後に、出力物をチェックする必要があり、このことがオペレータの大きな負荷となっている。
特に、VDPのように大量の出力を伴う場合には、オペレータが印刷完了後に大量の出力物からエラーの発生した箇所を特定することが難しく、ページの重複や落丁が発生しているかどうかを確認することは非常に困難である。このことにより、印刷完了後のチェック作業がオペレータの大きな作業負荷となっていた。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、印刷エラーが発生した場合のオペレータの作業負荷を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明の印刷装置は、複数のページのデータを含むレコードを複数、含むジョブを受信する受信手段と、前記受信手段で受信されたジョブに基づいて印刷を制御する印刷制御手段と、印刷エラーが発生した場合、バッファに保持されている印刷エラーが発生したページのレコードの最初のページから印刷エラーが発生したページに係るページまでのデータを印刷エラーに係る出力物として排紙する排紙手段と、操作部に前記排紙手段によって排紙された出力物の除去を促すメッセージを表示する表示手段と、前記表示手段での前記メッセージの表示後、印刷再開の指示を受け付けた場合、印刷エラーが発生したページのレコードの最初のページから印刷を再開する印刷再開手段と、を有する。
かかる構成とすることにより、印刷エラーが発生した場合に、重複や落丁が発生する可能性があるレコードを印刷再開前にオペレータが特定し、予め処分することができる。これにより、印刷完了後に印刷エラーの発生したレコードを特定して、ページの重複や落丁が発生しているかどうかを確認する作業が不要となる。そのため、印刷エラーが発生した場合のオペレータの作業負荷を低減させることができる。
また、本発明の印刷装置は、複数のページのデータを含むレコードを複数、含むジョブを受信する受信手段と、前記受信手段で受信されたジョブに基づいて印刷を制御する印刷制御手段と、印刷エラーが発生した場合、印刷エラーが発生したページのレコードの最初のページから印刷を再開する印刷再開手段と、を有する。
かかる構成とすることにより、正常に印刷が完了したレコードと印刷エラーが発生したページが含まれるレコードとをオペレータが容易に区別することができる。そのため、印刷エラーが発生した場合のオペレータの作業負荷を低減させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、印刷エラーが発生した場合のオペレータの作業負荷を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】画像形成システムのシステム構成の一例を示す図である。
【図2】画像形成装置のハードウェア構成を模式的に示す図である。
【図3】画像形成システムの機能構成等の一例を示す図である。
【図4】ファイルサーバに記憶されているレコードデータベースから読み出されたスプレッドシートデータの最初の部分を例示的に示す図である。
【図5】VDPジョブ、レコード及びページの関係を階層的に示す図である。
【図6】レコード単位のリカバリーの処理の一例を示したフローチャートである。
【図7】図6のS513で印刷障害が発生したことをオペレータに通知するメッセージの一例を示す図である。
【図8】図6のS517で印刷エラーの詳細をオペレータに通知するエラーレポートの一例を示す図である。
【図9】図6のS518で不適正な出力物をオペレータに除去するようオペレータに通知するメッセージの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0012】
<実施形態1>
まず、以下に説明する実施形態を適用可能な画像形成システムについて説明する。
図1は、画像形成システムのシステム構成の一例を示す図である。本実施形態に係る画像形成システムは、画像形成装置10、プリントサーバ20、ファイルサーバ30及びクライアントPC40を有する。画像形成装置10、プリントサーバ20、ファイルサーバ30及びクライアントPC40は、LAN、WAN等のネットワーク50を介して通信可能に接続されている。
画像形成装置10は、スキャン、プリント、コピー等の様々な機能を有する。画像形成装置10は、印刷装置の一例である。
プリントサーバ20は、クライアントPC40から入力されたVDPジョブやネットワーク50を介して接続されている画像形成装置10を管理する。プリントサーバ20は、接続されている画像形成装置10と全てのVDPジョブの状況を監視できると共に、VDPジョブの一時停止、設定変更、印刷再開、或いはVDPジョブの複製、異動、削除等の制御を行うことができる。
ファイルサーバ30は、バリアブル印刷に使用するバリアブルデータに係るデータベース、例えば宛先、住所、氏名等の顧客データからなる顧客データベースを保管する。クライアントPC40は、アプリケーションファイルの編集や印刷指示を行う機能を有する。また、クライアントPC40は、プリントサーバ20内で管理されている画像形成装置10やVDPジョブの監視や制御を補佐する機能を有する。オペレータは、クライアントPC40を利用してVDPジョブのステータス等を確認することができる。
【0013】
図2は、画像形成装置のハードウェア構成を模式的に示す図である。
スキャナ部9200は、原稿給紙ユニット9250を有する。原稿給紙ユニット9250は、原稿を先頭から順に1枚ずつプラテンガラス9211上へ給送する。スキャナ部9200は、各原稿の読取動作が終了する毎にその原稿をプラテンガラス9211から排出トレイに排出する。スキャナ部9200は、原稿がプラテンガラス9211上に給送されると、ランプ9212を点灯し、移動ユニット9213の移動を開始する。この移動ユニット9213の移動によりプラテンガラス9211上の原稿に対する読取走査が行われる。この読取走査中、原稿からの反射光は、各ミラー9214、9215、9216及びレンズ9217を経てCCDイメージセンサ(以下、CCDという)9218に導かれ、原稿上の画像がCCD9218の撮像面上に結像される。CCD9218は、撮像面に結像された画像を電気信号に変換し、この電気信号は所定の処理施された後に後述するCPU200に入力される。
プリンタ部9300は、レーザドライバ9321を有し、レーザドライバ9321は、CPU200から入力された画像データに基づきレーザ発光部9322を駆動する。これにより、レーザ発光部9322からは画像データに応じたレーザ光が発光され、このレーザ光は走査されながら感光ドラム9323上に照射される。感光ドラム9323上には、照射されたレーザ光により静電潜像が形成され、この静電潜像は現像器9324から供給されたトナーによりトナー像として可視像化される。レーザ光の照射タイミングに同期して、各カセット9311、9312から記録紙が搬送路を介して感光ドラム9323と転写部9325との間に給紙され、感光ドラム9323上のトナー像は転写部9325により給紙された記録紙上に転写される。
【0014】
トナー像が転写された記録紙は搬送ベルトを介して定着ローラ対(加熱ローラと加圧ローラ)9326に送られ、定着ローラ対9326は、記録紙を熱圧し、記録紙上のトナー像を記録紙上に定着させる。この定着ローラ対9326を通過した記録紙は、排紙ローラ対9327により排紙ユニット9330に排紙される。両面記録モードが設定されている場合には、記録紙を排紙ローラ対9327まで搬送した後に、排紙ローラ対9327の回転方向を逆転させ、フラッパ9328によって再給紙搬送路9339へ導く。再給紙搬送路9339に導かれた記録紙は、上述したタイミングで感光ドラム9323と転写部9325との間に再給紙され、この記録紙の裏面にトナー像が転写される。
排紙ユニット9330は、ソート、パンチ、ステイプル等の後処理を施すことが可能なシート処理装置からなる。バッファ9331は、排紙部9332及び排紙部9333へ排紙する前に一時的に記録紙を保持する。排紙部9332及び排紙部9333は上下に稼動することができ、バッファ9331に保持された記録紙は何れかの排紙部に排紙される。
【0015】
図3は、画像形成システムの機能構成等の一例を示す図である。
CPU200は、画像形成装置10が具備する各種ユニットの処理や動作等を統括的に制御する。
操作部211は、オペレータが各種入力を行うためのものであり、各種キー等により構成される。
ROM212は、読み出し専用のメモリで、各種プログラムが予め記憶されている。
RAM213は、読み出し及び書き込み可能なメモリで、外部I/F215を介して送られてきた画像データや、各種プログラムや設定情報を記憶する。
HDD214は、画像データ等を記憶する大容量の記憶装置で処理対象となるVDPジョブのプリントデータやプログラム等、複数のデータを保持可能に構成されている。
外部I/F215は、ネットワーク50と接続し、ファクシミリ、ネットワーク接続機器、外部専用装置と画像データ等を送受する。
スキャナ部216は、原稿給紙ユニット9250上の原稿を読取り、画像データを生成する。スキャナ部216は、図2のスキャナ部9200に対応する。
プリンタ部217は、スキャナ部216や外部I/F215等から受付けた画像データを印刷する。プリンタ部217は、図2のプリンタ部9300に対応する。
【0016】
CPU200が、画像形成装置10上のHDD214等からプログラムを読み出し、RAM213上に格納し、前記プログラムに基づき処理を実行することによって、以下で説明する各機能及びフローチャートに係る処理等が実現される。
制御部201は、画像形成装置10の各機能部202〜210を制御し、画像形成装置10全体の動作を制御する。
操作制御部210は、操作部211上の各種キーの入力を受け付ける。操作制御部210は、各種キー等の入力の内容を制御部201に通知する。制御部201は、操作制御部210から通知された内容に従って、各機能部201〜210に対して再印刷やVDPジョブのキャンセル等の処理を行う。
表示制御部205は、各種表示を行うものであり、操作部211上のLCDやLED等の表示デバイスを制御する。
VDPジョブ受信部202は、クライアントPC40から外部I/F215経由で入力されたVDPジョブを受信し、HDD214に記憶する。上記処理が完了すると、VDPジョブ受信部202は、制御部201に処理の完了を通知する。制御部201は、前記通知を受けて、VDPジョブ解析部206にVDPジョブの解析処理を指示する。
VDPジョブ解析部206は、制御部201の指示に従い、VDPジョブ受信部202から受信したVDPジョブとファイルサーバ30に格納されているレコードデータベース218とを参照し、順次解析する。その際、VDPジョブ解析部206は、レコードが参照するマスターオブジェクトとVDP(バリアブルデータ)オブジェクト219とを参照し、それらを関連付ける。そして、VDPジョブ解析部206は、解析済みのレコードを解析後データ記憶部207に送信する。解析後データ記憶部207は、VDPジョブ解析部206から受け取ったレコードをHDD214に記憶する。上記処理が完了すると、解析後データ記憶部207は、制御部201に処理の完了を通知する。制御部201は、前記通知を受けて、RIP部208に解析後データのRIP処理を指示する。
【0017】
RIP部208は、制御部201の指示に従い、解析後データ記憶部207から解析後データを受け取り、RIP(Raster Image Processor)処理を行う。そして、RIP部208は、RIP後データをRIP後データ記憶部203に送信する。RIP後データ記憶部203は、RIP部208から受け取ったRIP後データをHDD214に記憶する。上記処理が完了すると、RIP後データ記憶部203は、制御部201に処理の完了を通知する。制御部201は、前記通知を受けて、印刷制御部209にRIP後データの印刷処理を指示する。
印刷制御部209は、制御部201の指示に従い、RIP後データ記憶部203から受け取ったRIP後データを受け取り、印刷処理を行う。印刷制御部209は、印刷情報に基づいて必要なメディアを給紙し、図2に示した各種ハードウェアを制御して、指定された仕上がり設定や指定された出力方式で印刷処理する。上記処理が完了すると、印刷制御部209は、制御部201に処理の完了を通知する。また、上記処理の過程で印刷エラーが生じた場合、印刷制御部209は、制御部201に印刷エラーの発生を通知する。制御部201は、前記通知を受けて、エラーリカバリー制御部204にエラーリカバリー処理を指示する。また、印刷エラーが解消した場合、印刷制御部209は、制御部201に印刷エラーの解消を通知する。制御部201は、前記通知を受けて、エラーリカバリー制御部204に印刷再開処理を指示する。
エラーリカバリー制御部204は、制御部201の指示に従い、印刷制御部209エラーリカバリー処理の制御を行う。エラーリカバリー制御部204は、表示制御部205に指示を出し、印刷エラーが発生したことをオペレータに通知する。また、エラーリカバリー制御部204は、制御部201の指示に従い、印刷再開処理の制御を行う。エラーリカバリー制御部204は、印刷制御部209に指示を出し、印刷処理を再開する。
【0018】
図4は、ファイルサーバに記憶されているレコードデータベースから読み出されたスプレッドシートデータの最初の部分を例示的に示す図である。
参照番号301から307までは、レコードデータ又はデータベースにおけるデータフィールドである。301には顧客番号、302には名前、303には住所、304には年齢、305にはマスターファイルのリンク先、306にはオブジェクト1のリンク先、307にはオブジェクト2のリンク先情報が格納されている。
【0019】
図5は、VDPジョブ、レコード及びページの関係を階層的に示す図である。VDP(バリアブルデータ)ジョブ401は、複数のレコード402を持つ。このレコード402の基となるレコード情報はファイルサーバ30に格納されている。本実施形態ではレコードデータベースに登録されている顧客の数が、印刷対象となるレコード402の数(レコード数)となる。各レコード402は、一枚以上のページ403を含む。ここで各レコード402に含まれるページ数は必ずしも同一ページ数である必要はなく、各レコード402で指示される印刷内容によって異なる場合もある。
また、本実施形態では、VDPジョブに含まれるレコードごとに、レコード単位でリカバリー処理を行うか(レコード単位で印刷エラーからの復帰を行うか)否かの設定を保持している。これにより、例えば請求書等の機密性の高いレコードではレコード単位リカバリーを行い、広告等の機密性の低いレコードではレコード単位リカバリーを行わない等、レコードごとに設定可能となり、より柔軟な運用を行うことができる。レコード単位でリカバリー処理を行うか否かの設定は、例えば、クライアントPC40等が、画面を介したユーザの設定操作等に基づいて行ってもよいし、クライアントPC40又はプリントサーバ20がレコードのデータに応じて自動的に行ってもよい。
【0020】
図6は、レコード単位のリカバリーの処理の一例を示したフローチャートである。
S501では、VDPジョブ受信部202が、プリントサーバ20から送信されたVDPジョブを受信し、HDD214に記憶する。ここで受信したVDPジョブは、例えばPPML(Personalized Printer Marked Language)形式のジョブである。上記処理が完了すると、VDPジョブ受信部202は、制御部201に処理の完了を通知する。
S502では、VDPジョブ解析部206が、制御部201の指示に従い、VDPジョブを解析する。解析する際にファイルサーバ30が格納するレコードデータベース218を読取り、指定されたVDPオブジェクトとマスターレコードとを関連付ける。解析後のデータは解析後データ記憶部207が記憶する。また、VDPジョブに含まれるレコード単位リカバリー処理の設定も本ステップで解析され、解析後データ記憶部207が前記設定を記憶する。上記処理が完了すると、解析後データ記憶部207は、制御部201に処理の完了を通知する。
S503では、制御部201が、処理ページを1に初期化する。処理ページは、現在RIP及び印刷処理の対象としているページを示す、RAM213上の変数である。
S504では、制御部201が、レコード先頭ページを処理ページに設定する。レコード先頭ページは、現在RIP及び印刷処理の対象としているレコードの先頭ページを示すRAM213上の変数である
S505では、RIP部208が、VDPジョブの処理ページをRIP処理(RasterImage Process)する。RIP処理後のデータは、RIP後データ記憶部203が記憶する。
【0021】
S506では、印刷制御部209が、RIP処理されたページを印刷処理し、バッファ9331に出力する。上記処理が完了すると、RIP後データ記憶部203は、制御部201に処理の完了を通知する。
S507では、印刷制御部209が、前記印刷処理の結果、印刷エラーが発生したか否かを判定する。印刷処理の結果、印刷エラーが発生したと判定した場合には、印刷制御部209は、制御部201に印刷エラーの発生を通知し、S513へ移行する。印刷エラーが発生せず、正常に印刷処理が完了したと半値地された場合には、印刷制御部209は、制御部201に処理の完了を通知し、S508へ移行する。
S508では、制御部201が、処理ページを1だけ増加させる。
S509では、解析後データ記憶部207が、制御部201の指示に従い、VDPジョブの全てのページの処理が終了したかを判定する。全てのページの処理が終了したと判定した場合には、解析後データ記憶部207は、全てのページの処理が終了した旨を制御部201に通知し、処理を終了する。まだ処理されていないページが残っていると判定した場合には、解析後データ記憶部207は、まだ処理されていないページが残っている旨を制御部201に通知し、S508へ移行する。
【0022】
S510では、解析後データ記憶部207が、制御部201の指示に従い、処理ページが次のレコードの先頭であるか否かを判定する。処理ページがレコードの先頭でないと判定した場合には、解析後データ記憶部207は、処理中のレコードに未処理のページが残っているので、処理中のレコードに未処理のページが残っている旨を制御部201に通知し、S505へ移行し処理を継続する。処理ページがレコードの先頭であると判定した場合には、解析後データ記憶部207は、処理ページがレコードの先頭である旨を制御部201に通知し、S511へ移行する。
S511では、印刷制御部209が、制御部201の指示に従い、バッファ9331に保持された出力物を排紙部9332に排紙する。S501からS510までの処理により、本ステップで排紙される出力物は、印刷処理中にエラーが発生しなかった適正な出力物であることが保証される。
S512では、RIP後データ記憶部203が、制御部201の指示に従い、記憶しているRIP後データを削除する。本ステップの処理により、印刷処理中にエラーが発生しなかったレコードのRIP後データを削除することで、HDD214上のRIP後データ記憶部203が使用している記憶領域の効率的な使用が可能となる。
【0023】
S513では、表示制御部205が、エラーリカバリー制御部204の指示に従い、印刷障害が発生したことをオペレータに通知する。ここで表示されるメッセージの例を後述する図7に示す。
S514では、印刷制御部209が、印刷エラーが解消されたか否かを判定する。印刷エラーが解消されていないと判定した場合には、印刷制御部209は、本ステップに戻り、オペレータが印刷エラーを解除するまで待機する。オペレータによる処理の結果、印刷エラーが解消されたと判定した場合には、印刷制御部209は、印刷エラーが解消した旨を制御部201に通知する。制御部201は、前記通知を受けてエラーリカバリー制御部に印刷再開処理を指示し、S515に移行する。
S515では、解析後データ記憶部207が、エラーリカバリー制御部204の指示に従い、処理中のレコードでレコード単位リカバリー処理を行う指示がされているか否かを判定する。処理中のレコードに対してレコード単位でリカバリー処理をする設定がされていないと判定した場合、解析後データ記憶部207は、前記設定がされていない旨をエラーリカバリー制御部204に通知する。前記通知を受け取ったエラーリカバリー制御部204は、制御部201に印刷再開処理の完了を通知し、S506に移行する。S506以降の処理では、印刷エラーが発生したページから印刷処理が再開される。
処理中のレコードに対してレコード単位でリカバリー処理をする設定がされていると判定した場合、解析後データ記憶部207は、前記設定がされている旨をエラーリカバリー制御部204に通知し、S516に移行する。
【0024】
S516では、印刷制御部209が、エラーリカバリー制御部204の指示に従い、バッファ9331が保持している出力物に対し、後処理加工して排紙部9333に排紙する。S501からS515までの処理により、本ステップで排紙される出力物は、印刷処理中にエラーが発生した不適正な出力物である。つまり、バッファに保持されている印刷エラーが発生したページのレコードの最初のページから印刷エラーが発生したページに係るページ(印刷エラーが発生したページの一つ前のページ又は印刷エラーが発生したページ)までのデータが印刷エラーに係る出力物である。後処理加工の例としては、ステイプル、パンチ、シフト処理等がある。なお、本実施形態においては、本ステップにおける不適正な出力物の排紙先である排紙部9333はS511で排紙した適正な出力物の排紙先である排紙部9332と異なるよう構成しているが、両者が同じ排紙部であってもよい。また、後処理加工は上記の例に限らず、不適正な出力物であることが適正な出力物と区別できる処理であれば何でもよい。本ステップの処理により、オペレータが適正な出力物と不適正な出力物とを容易に区別し、不適正な出力物を容易に除去することが可能となる。
S517では、印刷制御部209が、エラーリカバリー制御部204の指示に従い、印刷エラーの詳細をオペレータに通知するエラーレポートを排紙部9333に出力する。エラーレポートの例は、後述する図8に示す。本ステップの処理により、オペレータがエラーの発生した箇所や回数等を特定し、出力物のチェックや再印刷等の作業が容易になる。
S518では、表示制御部205が、エラーリカバリー制御部204の指示に従い、印刷障害が解消し、不適正な出力物を後処理加工して排紙部9333に排紙したことをオペレータに通知する。更に、表示制御部205は、前記出力物をオペレータに除去及び廃棄するように促すと共に、印刷処理の再開指示を入力する手段をオペレータに提示する。ここで表示されるメッセージの例は、後述する図9に示す。
S519では、制御部201が、処理ページをレコード先頭ページに設定する。つまり、画像形成装置10は、後述する図9に示すようなメッセージの表示後、印刷再開の指示を受け付けた場合、印刷エラーが発生したページのレコードの最初のページから印刷を再開する。
【0025】
S520では、操作制御部210が、オペレータによる印刷処理の再開指示が行われたか否かを判定する。印刷処理の再開指示が行われていないと判定した場合には、操作制御部210は、本ステップに戻り、オペレータが印刷処理の再開指示を行うまで待機する。オペレータによる印刷処理の再開指示が行われたと判定した場合には、操作制御部210制御部201に印刷再開処理の終了を通知し、S506に移行する。本ステップの処理により、オペレータの不適正な出力物の除去や印刷物のチェック等の作業が完了する前にオペレータの意図に反して印刷が再開されるのを防ぐことができ、オペレータの作業を容易にすることができる。
S506以降の処理で、印刷処理中のレコードの先頭から印刷処理が再開される。本ステップの処理により、HDD214に記憶されているRIP後データを用いて印刷が再開されるため、再度処理ページのRIP処理を行う場合(S505に移行する場合)に比較して印刷再開処理を高速化することができる。
【0026】
図7は、図6のS513で印刷障害が発生したことをオペレータに通知するメッセージの一例を示す図である。
701は、メッセージの内容を表すタイトルであり、本メッセージが紙づまりの処理に関するメッセージであることを表している。
702は、エラーが発生している箇所を表しており、感光ドラム9323、排紙ユニット9330の付近で紙づまりが発生していることを表している。
703は、画像形成装置10の状態を表すステータスバーであり、画像形成装置10で紙づまりが発生していることを表している。
704は、オペレータに対してエラー解除のための作業指示を表している。
705は、704の作業指示の作業イメージである。
706は、本メッセージの画面を閉じて、他の画面へ移行するオペレータの指示の入力を受け付けるためのボタンである。ボタン706を押された場合に表示される画面については、本実施形態中では説明しない。
【0027】
図8は、図6のS517で印刷エラーの詳細をオペレータに通知するエラーレポートの一例を示す図である。本実施形態では、図8に示すように、エラーの内容、ジョブ名、部番、レコード番号、レコード内ページ番号、通算ページ番号をオペレータに通知する。オペレータはエラーレポートを参照することにより、エラーの発生した箇所や回数等を特定し、出力物のチェックや再印刷等の作業が容易になる。
図9は、図6のS518で不適正な出力物をオペレータに除去するようオペレータに通知するメッセージの一例を示す図である。
901は、オペレータに対して不適正な出力物を除去するようにオペレータに通知する作業指示を表している。
902は、不適正な出力物が存在する箇所を表しており、排紙部9333に不適正な出力物が存在することを表している。
903は、オペレータの印刷中止指示の入力を付けつけるためのボタンである。ボタン903が押された場合、制御部201は、このジョブに対する印刷処理を中止する。ボタン903が押された場合の処理の詳細については、本実施形態では説明しない。
904は、オペレータの印刷再開指示の入力を受け付けるためのボタンである。ボタン904が押された場合、操作制御部210は、本メッセージの画面を閉じ、図6のS506以降の印刷処理を再開する(S520でYES)。オペレータによる印刷再開指示が行われるまで待機することで、オペレータの不適正な出力物の除去や印刷物のチェック等の作業が完了する前にオペレータの意図に反して印刷が再開されるのを防ぐことができ、オペレータの作業を容易にすることができる。
905は、画像形成装置10の状態を表すステータスバーであり、画像形成装置10に不適正な出力物が存在していることを表している。
【0028】
<その他の実施形態>
また、上述した各実施形態は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【0029】
以上、上述した各実施形態によれば、印刷エラーが発生した場合のオペレータの作業負荷を低減させることができる。
また、上述した各実施形態によれば、印刷エラーが発生した場合に、レコード単位でリカバリー処理を行うことによって、重複や落丁が発生する可能性があるレコードを印刷再開前にオペレータが特定し、予め処分することができる。これにより、印刷完了後に印刷エラーの発生したレコードを特定して、ページの重複や落丁が発生しているかどうかを確認する作業が不要となる。そのため、特に、VDPのように大量の出力を伴う場合におけるオペレータの作業負荷を大きく軽減することができる。
【0030】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0031】
10 画像形成装置、200 CPU、201 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のページのデータを含むレコードを複数、含むジョブを受信する受信手段と、
前記受信手段で受信されたジョブに基づいて印刷を制御する印刷制御手段と、
印刷エラーが発生した場合、バッファに保持されている印刷エラーが発生したページのレコードの最初のページから印刷エラーが発生したページに係るページまでのデータを印刷エラーに係る出力物として排紙する排紙手段と、
操作部に前記排紙手段によって排紙された出力物の除去を促すメッセージを表示する表示手段と、
前記表示手段での前記メッセージの表示後、印刷再開の指示を受け付けた場合、印刷エラーが発生したページのレコードの最初のページから印刷を再開する印刷再開手段と、
を有する印刷装置。
【請求項2】
印刷エラーが発生した場合、印刷エラーが発生したページのレコードにレコード単位で印刷エラーからの復帰を行う旨の設定がなされているか否かを判定する判定手段を更に有し、
前記排紙手段は、前記判定手段で印刷エラーが発生したレコードにレコード単位で印刷エラーからの復帰を行う旨の設定がなされていると判定された場合、バッファに保持されている印刷エラーが発生したページのレコードの最初のページから印刷エラーが発生したページに係るページまでのデータを印刷エラーに係る出力物として排紙する、請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷再開手段は、前記判定手段で印刷エラーが発生したレコードにレコード単位で印刷エラーからの復帰を行う旨の設定がなされていないと判定された場合、印刷エラーが発生したページから印刷を再開する、請求項2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記排紙手段は、バッファに保持されている印刷エラーが発生したページのレコードの最初のページから印刷エラーが発生したページに係るページまでのデータを印刷エラーに係る出力物として後処理加工し、排紙部に排紙する、請求項1乃至3何れか1項記載の印刷装置。
【請求項5】
複数のページのデータを含むレコードを複数、含むジョブを受信する受信手段と、
前記受信手段で受信されたジョブに基づいて印刷を制御する印刷制御手段と、
印刷エラーが発生した場合、印刷エラーが発生したページのレコードの最初のページから印刷を再開する印刷再開手段と、
を有する印刷装置。
【請求項6】
印刷エラーが発生した場合、印刷エラーが発生したページのレコードにレコード単位で印刷エラーからの復帰を行う旨の設定がなされているか否かを判定する判定手段を更に有し、
前記印刷再開手段は、前記判定手段で印刷エラーが発生したページのレコードにレコード単位で印刷エラーからの復帰を行う旨の設定がなされていると判定された場合、印刷エラーが発生したページのレコードの最初のページから印刷を再開する、請求項5記載の印刷装置。
【請求項7】
印刷装置が実行する印刷再開方法であって、
複数のページのデータを含むレコードを複数、含むジョブを受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信されたジョブに基づいて印刷を制御する印刷制御ステップと、
印刷エラーが発生した場合、バッファに保持されている印刷エラーが発生したページのレコードの最初のページから印刷エラーが発生したページに係るページまでのデータを印刷エラーに係る出力物として排紙する排紙ステップと、
操作部に前記排紙ステップによって排紙された出力物の除去を促すメッセージを表示する表示ステップと、
前記表示ステップでの前記メッセージの表示後、印刷再開の指示を受け付けた場合、印刷エラーが発生したページのレコードの最初のページから印刷を再開する印刷再開ステップと、
を含む印刷再開方法。
【請求項8】
印刷装置が実行する印刷再開方法であって、
複数のページのデータを含むレコードを複数、含むジョブを受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信されたジョブに基づいて印刷を制御する印刷制御ステップと、
印刷エラーが発生した場合、印刷エラーが発生したページのレコードの最初のページから印刷を再開する印刷再開ステップと、
を含む印刷再開方法。
【請求項9】
コンピュータを、
複数のページのデータを含むレコードを複数、含むジョブを受信する受信手段と、
前記受信手段で受信されたジョブに基づいて印刷を制御する印刷制御手段と、
印刷エラーが発生した場合、バッファに保持されている印刷エラーが発生したページのレコードの最初のページから印刷エラーが発生したページに係るページまでのデータを印刷エラーに係る出力物として排紙する排紙手段と、
操作部に前記排紙手段によって排紙された出力物の除去を促すメッセージを表示する表示手段と、
前記表示手段での前記メッセージの表示後、印刷再開の指示を受け付けた場合、印刷エラーが発生したページのレコードの最初のページから印刷を再開する印刷再開手段と、
して機能させるプログラム。
【請求項10】
コンピュータを、
複数のページのデータを含むレコードを複数、含むジョブを受信する受信手段と、
前記受信手段で受信されたジョブに基づいて印刷を制御する印刷制御手段と、
印刷エラーが発生した場合、印刷エラーが発生したページのレコードの最初のページから印刷を再開する印刷再開手段と、
して機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−121229(P2011−121229A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279425(P2009−279425)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】