説明

印刷装置およびその制御方法並びにプログラム

【課題】印刷をより迅速に行なうと共に記憶領域に記憶させるデータ容量を小さくする。
【解決手段】1部目を印刷する際には、1ライン分の画像データ毎に(S110)、GM2領域に空き領域がある場合には画像データをGM2データに変換してGM2領域に記憶させると共に印刷を行ない(S120〜S160,S230)、GM2領域に空き領域がない場合には画像データをJPEGデータに圧縮してJPEG領域に記憶させると共に記憶させたJPEGデータを解凍して印刷データに変換して印刷を行なう(S120,S190〜S230)。そして、2部目以降を印刷する際には、GM2領域にGM2データが記憶されている部分についてはGM2データに基づいて印刷を行ない(S250〜S270)、JPEG領域にJPEGデータが記憶されている部分についてはJPEGデータに基づいて印刷を行なう(S280〜S320)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置およびその制御方法並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置としては、複数部数のコピーを行なう際、原稿の1ページについての所定の領域の画像を読み取って取得したYUVデータをJPEGデータに圧縮してJPEGデータ用領域に溜め込み、JPEGデータ用領域からJPEGデータを取得して伸張や色変換,ハーフトーン処理を行なってCMYKデータを生成し、印刷を行なうと共にCMYKデータをCMYKデータ用領域に溜め込める場合にはCMYKデータをランレングス圧縮して溜め込む、処理を繰り返すことにより1部目の印刷を行ない、2部目以降については、CMYKデータ用領域に溜め込んだデータ部分についてはそのデータを読み出して伸張して印刷を行なうと共に残りの部分についてはJPEGデータ用領域に溜め込んだJPEGデータを読み出して伸張や色変換,ハーフトーン処理を行なってCMYKデータを生成して印刷を行なうものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、このように印刷を行なうことにより、2部目以降の印刷において、ページの全部についてJPEGデータを用いるものに比して印刷の迅速化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−218628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の印刷装置では、ページの全部分のYUVデータをJPEGデータに変換してJPEG用領域に溜め込むと共にページの少なくとも一部については更にCMYKデータをランレングス圧縮してCMYKデータ用領域に溜め込むため、CMYKデータを圧縮してCMYKデータ用領域に溜め込む部分について、印刷に直接用いないにも拘わらずYUVデータをJPEGデータに変換してJPEG用領域に溜め込む分、印刷に要する時間が長くなると共にJPEG用領域に溜め込むデータの容量が大きくなっている。
【0005】
本発明の印刷装置およびその制御方法並びにプログラムは、印刷をより迅速に行なうと共に記憶領域に記憶させるデータの容量を小さくすることを主目的とする。
【0006】
本発明の印刷装置およびその制御方法並びにプログラムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の印刷装置は、
原稿を読み取って画像データを取得する画像データ取得手段と、印刷媒体への印刷を行なう印刷手段と、を備える印刷装置であって、
第1圧縮形式により圧縮された第1圧縮データを記憶するための第1記憶手段と、
前記第1圧縮形式に比して圧縮および解凍が容易な第2圧縮形式により圧縮された第2圧縮データを記憶するための第2記憶手段と、
原稿を所定量ずつ読み取って画像データを前記所定量ずつ取得するよう前記画像データ取得手段を制御する取得制御手段と、
1部目の印刷を行なう際、前記所定量の画像データ毎に、前記第2記憶手段に空き領域がある場合には前記取得した所定量の画像データを変換した前記第2圧縮データを前記第2記憶手段に記憶させると共に前記取得した所定量の画像データに基づいて印刷を行なうよう前記印刷手段を制御し、前記第2記憶手段に空き領域がない場合には前記取得した所定量の画像データを変換した前記第1圧縮データを前記第1記憶手段に記憶させると共に該記憶させた第1圧縮データに基づいて印刷を行なうよう前記印刷手段を制御する1部目印刷制御手段と、
2部目以降の印刷を行なう際、前記第2圧縮データとして前記第2記憶手段に記憶されている部分については該第2圧縮データに基づいて印刷を行なうよう前記印刷手段を制御し、前記第1圧縮データとして前記第1記憶手段に記憶されている部分については該第1圧縮データに基づいて印刷を行なうよう前記印刷手段を制御する2部目以降印刷制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の印刷装置では、原稿を所定量ずつ読み取って画像データを所定量ずつ取得するよう画像データ取得手段を制御し、1部目の印刷を行なう際には、所定量の画像データ毎に、第1圧縮形式に比して圧縮および解凍が容易な第2圧縮形式により圧縮された第2圧縮データを記憶するための第2記憶手段に空き領域がある場合には取得した所定量の画像データを変換した第2圧縮データを第2記憶手段に記憶させると共に所定量の画像データに基づいて印刷を行なうよう印刷手段を制御し、第2記憶手段に空き領域がない場合には所定量の画像データを変換した第1圧縮データを第1圧縮形式により圧縮された第1圧縮データを記憶するための第1記憶手段に記憶させると共に記憶させた第1圧縮データに基づいて印刷を行なうよう印刷手段を制御する。したがって、1部目の印刷を行なう際において、第2記憶手段に空き領域がある場合には、第2圧縮形式に比して圧縮や解凍が容易でない(時間を要する)第1圧縮形式での圧縮などを行なわないから、1部目の印刷をより迅速に(短時間で)行なうことができる。また、第2圧縮データとして第2記憶手段に記憶させた分については、第1圧縮データとして第1記憶手段に記憶させる必要がないから、第1記憶手段に記憶させるデータの容量を小さくすることができる。そして、2部目以降の印刷を行なう際には、第2圧縮データとして第2記憶手段に記憶されている部分については第2圧縮データに基づいて印刷を行なうよう印刷手段を制御し、第1圧縮データとして第1記憶手段に記憶されている部分については第1圧縮データに基づいて印刷を行なうよう印刷手段を制御する。したがって、2部目以降の印刷を行なう際において、第2記憶手段に記憶されている部分については第1圧縮形式に比して圧縮や解凍が容易な第2圧縮形式で圧縮した第2圧縮データに基づいて印刷を行なうから、2部目以降の印刷も迅速に行なうことができる。これらより、複数部数の印刷をより迅速に行なうことができる。ここで、「第1圧縮形式」は、画質の劣化が少なく圧縮率が高い圧縮形式(例えば、JPEG圧縮形式など)であり、「第2圧縮形式」は、ランレングス圧縮形式である、ものとすることもできる。
【0009】
こうした本発明の印刷装置において、前記1部目印刷制御手段は、前記第2記憶手段に空き領域がない場合、前記第1記憶手段のうち前記第2記憶手段としての使用が許容される許容範囲内で該第1記憶手段の一部を前記第2記憶手段に設定し、前記第2圧縮データを前記第2記憶手段に記憶させる手段である、ものとすることもできる。こうすれば、第2記憶手段の領域を拡大することになるから、第1圧縮形式での圧縮などを行なう量をより少なくすることができ、1部目および2部目以降の印刷をより迅速に行なうことができる。この場合、前記1部目印刷制御手段は、前記第2記憶手段に空き領域がない場合、前記原稿全体のうち前記第2圧縮データとして前記第2記憶手段に記憶させた割合である記憶割合に応じて前記第1記憶手段の全領域のうち前記第2記憶手段に設定する領域の大きさを定める手段である、ものとすることもできるし、前記1部目印刷制御手段は、前記第2記憶手段に空き領域がない場合、前記許容範囲内で複数回に分けて前記第1記憶手段の一部を前記第2記憶手段に設定する手段である、ものとすることもできる。
【0010】
また、本発明の印刷装置において、前記1部目印刷制御手段は、前記第2記憶手段に空き領域がある場合には、前記画像データを印刷に用いる印刷データに変換し、該変換した印刷データを圧縮した前記第2圧縮データを前記第2記憶手段に記憶させると共に前記変換した印刷データを用いて印刷を行なうよう前記印刷手段を制御し、前記第2記憶手段に空き領域がない場合には、前記画像データを圧縮した前記第1圧縮データを前記第1記憶手段に記憶させると共に該記憶させた第1圧縮データを解凍してから前記印刷データに変換し、該変換した印刷データを用いて印刷を行なうよう前記印刷手段を制御する手段であり、前記2部目印刷制御手段は、前記第2圧縮データとして前記第2記憶手段に記憶されている部分については該第2圧縮データを解凍して得られる前記印刷データを用いて印刷を行なうよう前記印刷手段を制御し、前記第1圧縮データとして前記第1記憶手段に記憶されている部分については該第1圧縮データを解凍してから前記印刷データに変換し該変換した印刷データを用いて印刷を行なうよう前記印刷手段を制御する手段である、ものとすることもできる。
【0011】
本発明の印刷装置の制御方法は、
原稿を読み取って画像データを取得する画像データ取得手段と、印刷媒体への印刷を行なう印刷手段と、第1圧縮形式により圧縮された第1圧縮データを記憶するための第1記憶手段と、前記第1圧縮形式に比して圧縮および解凍が容易な第2圧縮形式により圧縮された第2圧縮データを記憶するための第2記憶手段と、を備える印刷装置の制御方法であって、
(a)原稿を所定量ずつ読み取って画像データを前記所定量ずつ取得するよう前記画像データ取得手段を制御し、
(b)1部目の印刷を行なう際、前記所定量の画像データ毎に、前記第2記憶手段に空き領域がある場合には前記取得した所定量の画像データを変換した前記第2圧縮データを前記第2記憶手段に記憶させると共に前記取得した所定量の画像データに基づいて印刷を行なうよう前記印刷手段を制御し、前記第2記憶手段に空き領域がない場合には前記取得した所定量の画像データを変換した前記第1圧縮データを前記第1記憶手段に記憶させると共に該記憶させた第1圧縮データに基づいて印刷を行なうよう前記印刷手段を制御し、
(c)2部目以降の印刷を行なう際、前記第2圧縮データとして前記第2記憶手段に記憶されている部分については該第2圧縮データに基づいて印刷を行なうよう前記印刷手段を制御し、前記第1圧縮データとして前記第1記憶手段に記憶されている部分については該第1圧縮データに基づいて印刷を行なうよう前記印刷手段を制御する、
ことを要旨とする。
【0012】
この本発明の印刷装置の制御方法では、原稿を所定量ずつ読み取って画像データを所定量ずつ取得するよう画像データ取得手段を制御し、1部目の印刷を行なう際には、所定量の画像データ毎に、第1圧縮形式に比して圧縮および解凍が容易な第2圧縮形式により圧縮された第2圧縮データを記憶するための第2記憶手段に空き領域がある場合には取得した所定量の画像データを変換した第2圧縮データを第2記憶手段に記憶させると共に所定量の画像データに基づいて印刷を行なうよう印刷手段を制御し、第2記憶手段に空き領域がない場合には所定量の画像データを変換した第1圧縮データを第1圧縮形式により圧縮された第1圧縮データを記憶するための第1記憶手段に記憶させると共に記憶させた第1圧縮データに基づいて印刷を行なうよう印刷手段を制御する。したがって、1部目の印刷を行なう際において、第2記憶手段に空き領域がある場合には、第2圧縮形式に比して圧縮や解凍が容易でない(時間を要する)第1圧縮形式での圧縮などを行なわないから、1部目の印刷をより迅速に(短時間で)行なうことができる。また、第2圧縮データとして第2記憶手段に記憶させた分については、第1圧縮データとして第1記憶手段に記憶させる必要がないから、第1記憶手段に記憶させるデータの容量を小さくすることができる。そして、2部目以降の印刷を行なう際には、第2圧縮データとして第2記憶手段に記憶されている部分については第2圧縮データに基づいて印刷を行なうよう印刷手段を制御し、第1圧縮データとして第1記憶手段に記憶されている部分については第1圧縮データに基づいて印刷を行なうよう印刷手段を制御する。したがって、2部目以降の印刷を行なう際において、第2記憶手段に記憶されている部分については第1圧縮形式に比して圧縮や解凍が容易な第2圧縮形式で圧縮した第2圧縮データに基づいて印刷を行なうから、2部目以降の印刷も迅速に行なうことができる。これらより、複数部数の印刷をより迅速に行なうことができる。
【0013】
本発明のプログラムは、上述した印刷装置の制御方法の各ステップをコンピューターに実現させるためのものである。このプログラムは、コンピューターが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピューターから別のコンピューターへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムを1つのコンピューターに実行させるか又は複数のコンピューターに各ステップを分担して実行させれば、本発明の印刷装置の制御方法の各ステップが実行されるため、本発明の印刷装置の制御方法と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】マルチファンクションプリンター10の構成の概略を示す構成図。
【図2】RAM66の記憶領域の説明図。
【図3】複写処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図4】流用処理の様子を示す説明図。
【図5】他の複写処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の印刷装置の一実施形態であるマルチファンクションプリンター10の構成の概略を示す構成図である。マルチファンクションプリンター10は、図示するように、印刷ジョブに基づいて記録紙Sに印刷を実行するプリンターユニット20と、原稿台31に載置された書類を読み取るスキャナーユニット30と、各種情報を表示部52に表示したりユーザーの指示をボタン群54の操作を介して入力したりする操作パネル50と、装置全体の制御を司るメインコントローラー60とを備えている。このマルチファンクションプリンター10では、プリンターユニット20やスキャナーユニット30,メインコントローラー60がバス12を介して互いに各種制御信号やデータのやり取りをすることができるよう構成されている。
【0016】
プリンターユニット20は、プリンターASIC22とプリンターエンジン24とを備えている。プリンターASIC22は、プリンターエンジン24を制御する集積回路であり、メインコントローラー60から印刷指令を受けると、その印刷指令の対象となる印刷データに基づいて記録紙Sに印刷するようプリンターエンジン24を制御する。また、プリンターエンジン24は、印刷ヘッドから記録紙Sへインクを吐出することにより印刷を行なう周知のインクジェット方式のカラープリンター機構として構成されている。なお、ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略である。
【0017】
スキャナーユニット30は、いわゆるフラットベッド型のフルカラースキャナーとして構成されており、スキャナーASIC32とスキャナーエンジン34とを備えている。スキャナーASIC32は、スキャナーエンジン34を制御する集積回路であり、メインコントローラー60からのスキャン指令を受けると、原稿台31に載置された書類を画像データとして読み取るようスキャナーエンジン34を制御する。また、スキャナーエンジン34は、書類に向かって発光した後の反射光をレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の各色に分解してスキャンデータとする周知のカラーイメージセンサーを備えている。このスキャナーユニット30は、実施形態では、スキャンデータ(RGBデータ)を輝度信号(Y),輝度信号と青色成分との差(U),輝度信号と赤色成分との差(V)で表わされる画像データ(YUVデータ)に変換してメインコントローラー60とやりとりするものとした。
【0018】
メインコントローラー60は、CPU62を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、各種処理プログラムや各種データ、各種テーブルなどを記憶したROM64と、一時的に画像データ(YUVデータ)や印刷に用いる印刷データなどを記憶するRAM66と、電源を切ってもデータを保持可能なフラッシュメモリー68と、操作パネル50との通信を可能とする内部通信インターフェース(I/F)69とを備えている。このメインコントローラー60は、プリンターユニット20やスキャナーユニット30からの各種動作信号や各種検出信号を入力したり、操作パネル50のボタン群54の操作に応じて発生する操作信号を入力したりする。また、印刷データの印刷を実行するようプリンターユニット20に印刷指令を出力したり、操作パネル50のボタン群54のスキャン指令に基づいて原稿台31に載置された書類を画像データとして読み取るようスキャナーユニット30にスキャン指令を出力したり、操作パネル50に表示部52の制御指令を出力したりする。RAM66には、図2に示すように、画質の劣化が少なく圧縮率が高いJPEG圧縮形式で圧縮されたJPEGデータを記憶するためのJPEG領域66a(例えば、4Mbyteなど)と、JPEG圧縮形式よりも圧縮や解凍が容易な(圧縮や解凍に要する時間が短い)圧縮形式(例えばランレングス圧縮形式など、以下、GM2圧縮形式という)で圧縮されたGM2データを記憶するためのGM2領域66b(例えば、2Mbyteなど)と、が確保されている。なお、画質の劣化が少なく圧縮率が高い圧縮形式はJPEG圧縮形式に限定されるものではなく、GM2圧縮形式はランレングス圧縮形式に限定されるものではない。
【0019】
次に、こうして構成された本実施形態のマルチファンクションプリンター10の動作、特に、複数部数の印刷を行なう際の動作について説明する。図2は、メインコントローラー60のCPU62により実行される複写処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、原稿台31に原稿Pがセットされた状態でボタン群54の操作によって所望の枚数(以下、設定部数という)が設定されて複写指示がなされたときに実行される。なお、設定部数は、実施形態では、2以上の値とした。
【0020】
複写処理ルーチンが実行されると、メインコントローラー60のCPU62は、まず、設定部数を入力し(ステップS100)、スキャナーユニット30にスキャン指令を出力し、スキャナーユニット30から、原稿Pの1ラインを読み取って変換した1ライン分の画像データ(YUVデータ)を取得する(ステップS110)。
【0021】
続いて、RAM66のうちGM2領域66bに空き領域があるか否かを判定し(ステップS120)、GM2領域66bに空き領域があると判定された場合には、1ライン分の画像データ(YUVデータ)に対して表色系をNRGBを介してCMYKに変換すると共にハーフトーン処理を行なうことによって画像データを印刷に用いる印刷データに変換し(ステップS130〜S150)、変換した印刷データをGM2圧縮形式で圧縮して得られるGM2データをGM2領域66bに記憶させるGM2溜め込み処理を行なうと共に(ステップS160)、プリンターユニット20に印刷指令を出力する(ステップS230)。ここで、ステップS120の判定は、印刷データを圧縮したGM2データを記憶させるための空き領域がGM2領域にあるか否かを判定する処理である。また、印刷指令を受けたプリンターユニット20は、印刷指令の対象となる印刷データを用いて印刷を行なう。そして、原稿の全ラインについて処理が終了したか否かを判定し(ステップS240)、原稿の全ラインについて処理が終了していないと判定された場合には、ステップS110に戻る。こうしてステップS110〜S160,S230,S240の処理を繰り返し実行し、ステップS240で原稿の全ラインについて処理が終了したと判定されると、1部目の印刷についての処理が終了したと判断する。なお、原稿の全ラインについて処理が終了したか否かは、例えば、予め定められたライン数(移動距離)のスキャンがスキャナーユニット30によって行なわれたか否かなどにより判定することができる。
【0022】
一方、ステップS110〜S160,S230,S240の処理を繰り返し実行している最中にGM2領域66bの空き領域が少なくなり、ステップS120でGM2領域66bに空き領域がないと判定された場合には、JPEG領域66aのうちGM2領域66bとしての使用が許容される許容範囲内でJPEG領域66aの一部をGM2領域66bに設定する流用処理を既に行なったか否かを判定し(ステップS170)、流用処理を行なっていないと判定された場合には、流用処理を行なって(ステップS180)、ステップS130以降の処理を実行する。ここで、流用処理は、実施形態では、JPEG領域66a全体のうちGM2領域66bに設定する領域(以下、流用領域という)を、原稿全体のうちGM2データとしてGM2領域66bに記憶させた割合(以下、GM2記憶割合という)に基づいて定めてGM2領域66bに設定するものとし、例えば、GM2記憶割合が60%の場合(残りが40%の場合)にはJPEG領域66a全体のうち60%の領域を流用領域として定めてGM2領域に設定するものとした。この様子の一例を図4に示す。このように流用処理を行なうと、次以降のラインの画像データを取得したときに、ステップS120でGM2領域66bに空き領域があると判定される間はステップS130以降の処理を実行することになる。なお、GM2記憶割合は、例えば、スキャナーユニット20によってスキャンされたライン数などによって求めることができる。
【0023】
ステップS170で流用処理を既に行なったと判定された場合には、ステップS110で取得した1ライン分の画像データ(YUVデータ)をJPEG圧縮形式で圧縮して得られるJPEGデータをJPEG領域66aに記憶させるJPEG溜め込み処理を行なう(ステップS190)。そして、JPEG領域66aに記憶させたJPEGデータを読み出して解凍してその表色系をNRGBに変換し(ステップS200)、さらに表色系をCMYKに変換すると共にハーフトーン処理を行なう(ステップS210,S220)、ことによってJPEGデータを印刷データに変換して印刷指令をプリンターユニット20に出力する(ステップS230)。そして、原稿の全ラインについて処理が終了したか否かを判定し(ステップS240)、原稿の全ラインについて処理が終了していないと判定された場合には、ステップS110に戻り、原稿の全ラインについて処理が終了したと判定された場合には、1部目の印刷についての処理が終了したと判断する。
【0024】
実施形態では、1部目を印刷する際において、1ライン分の画像データ毎に、GM2領域66bに空き領域がある場合には、画像データを印刷データに変換し、その印刷データをGM2圧縮形式で圧縮してGM2領域66bに記憶させると共に印刷データを用いて印刷を行なうから、GM2領域66bに空き領域があるか否かに拘わらずJPEG圧縮形式での圧縮や解凍(ステップS190〜S220に相当する処理)を伴って印刷を行なうものに比して1部目の印刷をより迅速に行なうことができる。しかも、GM2データとしてGM2領域66bに記憶させた分についてはJPEGデータとしてJPEG領域66aに記憶させないから、全ラインの画像データをJPEGデータとしてJPEG領域66aに記憶させるものに比してJPEG領域66aに記憶させるデータの容量を小さくすることができる。さらに、1部目を印刷する際において、GM2領域に空き領域がない場合には、許容範囲内でJPEG領域66aの一部をGM2領域66bに設定するから、JPEG圧縮形式での圧縮や解凍を行なう量をより少なくすることができ、1部目の印刷をより迅速に行なうことができる。
【0025】
こうして1部目の印刷についての処理が終了すると、2部目以降については、GM2領域66bに記憶されているGM2データのうち今回の部数目の印刷に用いていない未印刷GM2データがあるか否かを判定し(ステップS250)、未印刷GM2データがあると判定された場合には未印刷GM2データを読み出して解凍することによって未印刷GM2データを印刷データに変換して印刷指令をプリンターユニット20に出力し(ステップS260,S270)、未印刷GM2データがないと判定された場合には、JPEGデータのうち今回の部数目の印刷に用いていない未印刷JPEGデータがあるか否かを判定し(ステップS280)、未印刷JPEGデータがあると判定された場合には、前述したステップS200〜S230の処理と同様に、未印刷JPEGデータを読み出して解凍して表色系の変換やハーフトーン処理を行なうことによって未印刷JPEGデータを印刷データに変換して印刷指令をプリンターユニット20に出力し(ステップS290〜S320)、未印刷データがないと判定された場合には、今回の部数目の印刷についての処理が終了したと判断する。そして、現在までに印刷を行なった印刷部数が設定部数に至ったか否かを判定し(ステップS330)、印刷部数が設定部数に至っていない場合にはステップS250に戻り、印刷部数が設定部数に至った場合に本ルーチンを終了する。このように2部目以降の印刷を行なうことにより、GM2領域66bにGM2データが記憶されている部分については、GM2データの解凍に比して時間を要するJPEGデータの解凍や、表色系の変換,ハーフトーン処理を行なう必要がないため、迅速に印刷することができる。
【0026】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のスキャナーユニット30が本発明の「画像データ取得手段」に相当し、プリンターユニット20が「印刷手段」に相当し、JPEG領域66aが「第1記憶手段」に相当し、GM2領域66bが「第2記憶手段」に相当し、図3の複写処理ルーチンのステップS110の処理が「取得制御手段」に相当し、ステップS120〜S240の処理が「1部目印刷制御手段」に相当し、ステップS250〜S330の処理が「2部目以降印刷制御手段」に相当する。なお、本実施形態では、印刷装置としてのマルチファンクションプリンター10の動作を説明することにより、本発明の印刷装置の制御方法やプログラムの一例も明らかにしている。
【0027】
以上説明した実施例のマルチファンクションプリンター10によれば、1部目を印刷する際には、1ライン分の画像データ毎に、GM2領域66bに空き領域がある場合には、画像データを印刷データに変換し、その印刷データをGM2データに圧縮してGM2領域66bに記憶させると共に印刷データを用いて印刷を行ない、GM2領域66bに空き領域がない場合には画像データをJPEGデータに圧縮してJPEG領域に記憶させると共に記憶させたJPEGデータを解凍して印刷データに変換して印刷を行なうから、1部目の印刷をより迅速に行なうことができると共にJPEG領域66aに記憶させるデータの容量が必要以上に大きくなるのを抑制することができる。もとより、2部目以降を印刷する際には、GM2領域66bにGM2データが記憶されている部分についてはGM2データに基づいて印刷を行ない、JPEG領域66aにJPEGデータが記憶されている部分についてはJPEGデータに基づいて印刷を行なうから、迅速に印刷することができる。
【0028】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0029】
上述した実施形態では、1部目を印刷する際において、GM2領域66bに空き領域がある場合には、画像データ(YUVデータ)の表色系をYUVからNRGBを介してCMYKに変換してハーフトーン処理を行なうことによって印刷データに変換するものとしたが、表色系の変換は、YUVからCMYKに直接変換するものとしてもよい。
【0030】
上述した実施形態では、1部目を印刷する際において、GM2領域66bに空き領域がない場合には、流用処理を未だ行なっていないことを条件として流用処理を行なう即ち流用処理を1回だけ行なうものとしたが、流用処理を複数回(例えば、2回や3回)行なうものとしてもよい。この場合の複写処理ルーチンの一例の一部を図5に示す。このルーチンは、図3の複写処理ルーチンのステップS170の処理に代えてステップS400,S410の処理を行なう点を除いて図3の複写処理ルーチンと同一である。図5の複写処理ルーチンでは、ステップS120でGM2領域66bに空き領域がないと判定された場合には、このルーチンの実行開始時に値0が設定されGM2領域66bに空き領域がないと判定される毎にインクリメントされるカウンタNをインクリメントすると共に(ステップS400)、インクリメントしたカウンタNを流用処理の許容回数Nmax(例えば、値2や値3など)と比較し(ステップS410)、カウンタNが許容回数Nmax以下である場合には、流用処理を行なって(ステップS180)、ステップS130以降の処理を実行し、カウンタNが許容回数Nmaxより大きいときには、ステップS190以降の処理を実行する。この場合の流用処理では、流用処理を1回だけ行なう場合に比して1回当たりの流用領域を小さくする(例えば、1回だけ流用処理を行なう場合と同一の流用領域を複数回に分けて流用する)ことが好ましい。こうすれば、流用領域の大きさをより必要に応じた大きさにすることができる。
【0031】
上述した実施形態では、流用処理を行なう際には、GM2記憶割合に応じて流用領域を定めるものとしたが、予め定められた所定領域(例えば、1Mなど)を流用領域として定めるものとしてもよい。この場合も、上述したのと同様に、1回だけ流用処理を行なうものとしてもよいし、複数回に亘って流用処理を行なうものとしてもよい。
【0032】
上述した実施形態では、1部目を印刷する際において、GM2領域66bに空き領域がない場合には、許容範囲内でJPEG領域66aの一部をGM2領域66bに設定する流用処理を行なうものとしたが、こうした流用処理を行なわないものとしてもよいし、GM2領域66bに空き領域がなくなった時点での状態(例えば、GM2記憶割合など)に基づいて流用処理を行なうか否かを判定するものとしてもよい。後者の場合、例えば、GM2領域66bに空き領域がなくなった時点でのGM2記憶割合が所定割合(例えば、50%など)未満の場合に流用処理を行なわないものとしてもよい。
【0033】
上述した実施形態では、JPEG領域66aとGM2領域66bとが同一のRAM66に確保されるものとしたが、異なるRAMに確保されるものとしてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、本発明をマルチファンクションプリンター10に適用するものとして説明したが、これに限られず、例えば、複写機能を備えたFAXやレーザー複合機などに適用するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、印刷装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 マルチファンクションプリンター、12 バス、20 プリンターユニット、22 プリンターASIC、24 プリンターエンジン、30 スキャナーユニット、31 原稿台、32 スキャナーASIC、34 スキャナーエンジン、50 操作パネル、52 表示部、54 ボタン群、60 メインコントローラー、62 CPU、64 ROM、66 RAM、66a JPEG領域、66b GM2領域、68 フラッシュメモリー、69 内部通信インターフェース(I/F)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を読み取って画像データを取得する画像データ取得手段と、印刷媒体への印刷を行なう印刷手段と、を備える印刷装置であって、
第1圧縮形式により圧縮された第1圧縮データを記憶するための第1記憶手段と、
前記第1圧縮形式に比して圧縮および解凍が容易な第2圧縮形式により圧縮された第2圧縮データを記憶するための第2記憶手段と、
原稿を所定量ずつ読み取って画像データを前記所定量ずつ取得するよう前記画像データ取得手段を制御する取得制御手段と、
1部目の印刷を行なう際、前記所定量の画像データ毎に、前記第2記憶手段に空き領域がある場合には前記取得した所定量の画像データを変換した前記第2圧縮データを前記第2記憶手段に記憶させると共に前記取得した所定量の画像データに基づいて印刷を行なうよう前記印刷手段を制御し、前記第2記憶手段に空き領域がない場合には前記取得した所定量の画像データを変換した前記第1圧縮データを前記第1記憶手段に記憶させると共に該記憶させた第1圧縮データに基づいて印刷を行なうよう前記印刷手段を制御する1部目印刷制御手段と、
2部目以降の印刷を行なう際、前記第2圧縮データとして前記第2記憶手段に記憶されている部分については該第2圧縮データに基づいて印刷を行なうよう前記印刷手段を制御し、前記第1圧縮データとして前記第1記憶手段に記憶されている部分については該第1圧縮データに基づいて印刷を行なうよう前記印刷手段を制御する2部目以降印刷制御手段と、
を備える印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置であって、
前記1部目印刷制御手段は、前記第2記憶手段に空き領域がない場合、前記第1記憶手段のうち前記第2記憶手段としての使用が許容される許容範囲内で該第1記憶手段の一部を前記第2記憶手段に設定し、前記第2圧縮データを前記第2記憶手段に記憶させる手段である、
印刷装置。
【請求項3】
請求項2記載の印刷装置であって、
前記1部目印刷制御手段は、前記第2記憶手段に空き領域がない場合、前記原稿全体のうち前記第2圧縮データとして前記第2記憶手段に記憶させた割合である記憶割合に応じて前記第1記憶手段の全領域のうち前記第2記憶手段に設定する領域の大きさを定める手段である、
印刷装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の印刷装置であって、
前記1部目印刷制御手段は、前記第2記憶手段に空き領域がない場合、前記許容範囲内で複数回に分けて前記第1記憶手段の一部を前記第2記憶手段に設定する手段である、
印刷装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つの請求項に記載の印刷装置であって、
前記第1圧縮形式は、JPEG圧縮形式であり、
前記第2圧縮形式は、ランレングス圧縮形式である、
印刷装置。
【請求項6】
原稿を読み取って画像データを取得する画像データ取得手段と、印刷媒体への印刷を行なう印刷手段と、第1圧縮形式により圧縮された第1圧縮データを記憶するための第1記憶手段と、前記第1圧縮形式に比して圧縮および解凍が容易な第2圧縮形式により圧縮された第2圧縮データを記憶するための第2記憶手段と、を備える印刷装置の制御方法であって、
(a)原稿を所定量ずつ読み取って画像データを前記所定量ずつ取得するよう前記画像データ取得手段を制御し、
(b)1部目の印刷を行なう際、前記所定量の画像データ毎に、前記第2記憶手段に空き領域がある場合には前記取得した所定量の画像データを変換した前記第2圧縮データを前記第2記憶手段に記憶させると共に前記取得した所定量の画像データに基づいて印刷を行なうよう前記印刷手段を制御し、前記第2記憶手段に空き領域がない場合には前記取得した所定量の画像データを変換した前記第1圧縮データを前記第1記憶手段に記憶させると共に該記憶させた第1圧縮データに基づいて印刷を行なうよう前記印刷手段を制御し、
(c)2部目以降の印刷を行なう際、前記第2圧縮データとして前記第2記憶手段に記憶されている部分については該第2圧縮データに基づいて印刷を行なうよう前記印刷手段を制御し、前記第1圧縮データとして前記第1記憶手段に記憶されている部分については該第1圧縮データに基づいて印刷を行なうよう前記印刷手段を制御する、
印刷装置の制御方法。
【請求項7】
請求項6記載の印刷装置の制御方法の各ステップをコンピューターに実現させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−146838(P2011−146838A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4636(P2010−4636)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】