説明

印刷装置及び印刷方法

【課題】印刷媒体のジャムが発生したときに、液体噴射ヘッドに対する不要なクリーニングの実施を抑えつつ、必要なクリーニングを行ってジャム解消後に液体の噴射ミスの発生頻度を低下させることができる印刷装置及び印刷方法を提供する。
【解決手段】紙ジャムを検出すると、その紙ジャム検出要因が、キャリッジの速度が紙ジャム発生時の負荷に応じた分だけ低下して設定速度以下となったCRモーターエラーである場合(S1)、印刷継続の指示があると(S6,S8で肯定判定)、印刷ヘッドのクリーニングを実施する(S10)。この場合、特に用紙位置が、印刷ヘッドの移動経路を挟んで用紙の搬送方向の上流側と下流側に設けられた一対の搬送ローラーのうち一方のみに用紙が支持される片支持範囲にあるか否かを判定する(S9)。そして、用紙位置が片支持範囲にある場合に限り、クリーニングを実施することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体のジャムが発生したときに記録媒体が液体噴射ヘッドに接触することが原因で起こる液体噴射ヘッドの噴射ミスを防止するための制御を行う印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばこの種の印刷装置として、キャリッジが主走査方向に移動しキャリッジに設けられた印刷ヘッド(液体噴射ヘッド)のノズルからインク滴を噴射して、用紙(印刷媒体)に印刷を施すシリアル式の印刷装置が知られている(例えば特許文献1、2等)。
【0003】
そして、特許文献1に記載のプリンターは、インク滴の噴射不能のノズルが存在するか否かを検出する検出装置を備え、検出の結果、インク滴の噴射不能のノズルが所定個数以上存在すると判定されると、複数のノズルからインクを強制的に排出させるクリーニングを実行する構成となっている。また、このプリンターでは、紙詰まりが検出されると、インク滴の噴射不能のノズルが所定個数以上存在すると判定されときに行うクリーニングの強さを変える制御が行われる。
【0004】
また、特許文献2に記載されたプリンターでは、印刷ヘッドをキャップするキャップ手段のキャップ状態を記憶し、エラー復帰時に、キャップ状態が未キャップ状態であれば、印刷ヘッドからインクを吸引し、一方、キャップ状態がキャップ済み状態であれば、印刷ヘッドからインクを吸引しないようインク吸引手段が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−079186号公報(例えば明細書段落[0062]〜[0066],[0078]等)
【特許文献2】特開2007−296663号公報(例えば明細書段落[0010],[0038]〜[0066],[0078]等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の噴射不能なノズルを検出可能な検出装置を備えていない印刷装置では、インク滴の噴射不能のノズルが存在するかどうかが分からないので、インク滴の噴射不能のノズルの存在に起因する噴射エラーの発生を確実に防止するためには、紙ジャム発生後は一律にクリーニングを実施する必要がある。
【0007】
しかし、紙ジャムであっても、搬送系で紙詰まりの場合は、液体噴射ヘッドのノズル形成面に接触していない場合がある。このような場合でも一律にクリーニングを実施すると、無駄にクリーニングが行われることになる。無駄に行われるクリーニング回数が増えると、インク消費量が徒に増え、インクカートリッジ交換の頻度が高くなってしまう。また、一律にクリーニングが実施される構成であると、印刷継続の指示を与えてから印刷を開始するまでに常にクリーニングのための待ち時間が発生するという別の問題も生ずる。
【0008】
また、特許文献2は、紙ジャムエラー等のエラーの復帰時に、キャップ状態が未キャップ状態であればインクを吸引し、キャップ状態がキャップ済み状態であればインクを吸引しないようインク吸引手段が制御される。このため、紙ジャムエラー状態に陥った場合に、キャップ状態がキャップ済み状態であれば、無駄なインクを吸引しなくて済む。しかし、キャップ状態を記憶するキャップ状態記憶部が必要であり、またキャップ状態を記憶するためのフラグ処理など余分な処理が必要になる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、印刷媒体のジャムが発生したときに、液体噴射ヘッドに対する不要なクリーニングの実施を抑えつつ、必要なクリーニングを行ってジャム解消後に液体の噴射ミスの発生頻度を低下させることができる印刷装置及び印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的の一つを達成するために、本発明の態様の一つは、印刷装置であって、印刷媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッドを有するキャリッジを移動させる駆動手段と、前記液体噴射ヘッドをクリーニングするクリーニング手段と、前記キャリッジの移動速度が印刷媒体のジャムが発生したと推定される設定速度以下に低下したことをもって前記ジャムを検出する検出手段と、前記駆動手段を制御して前記キャリッジを移動させるとともに、前記検出手段が前記ジャムを検出すると、前記駆動手段の駆動を停止させて前記キャリッジの移動を停止させる制御手段と、前記ジャムの解消後に印刷継続の指示を与えるために操作される指示手段と、前記指示手段から印刷継続の指示が与えられると、前記クリーニング手段に前記液体噴射ヘッドのクリーニングを実施させるクリーニング制御手段とを備えたことを要旨とする。
【0011】
本発明の一実施態様によれば、検出手段が、キャリッジの移動速度が記録媒体のジャムが発生したと推定される設定速度以下に低下したことをもって、印刷媒体のジャムを検出する。ジャムが検出されると、制御手段は、駆動手段の駆動を停止させることにより、移動中のキャリッジを停止させる。例えばユーザーは、ジャムが発生した印刷媒体を取り除くことによりジャムを解消し、続いて指示手段を操作することにより印刷継続を指示する。クリーニング制御手段は、指示手段から印刷継続の指示が与えられると、クリーニング手段に液体噴射ヘッドのクリーニングを実施させる。
【0012】
本発明の態様の一つである印刷装置では、前記印刷媒体を前記キャリッジの移動方向と交差する搬送方向に搬送するとともに、前記液体噴射ヘッドに対して前記搬送方向の上流側と下流側に一対の搬送ローラーを有する搬送手段と、前記検出手段が前記印刷媒体のジャムを検出した場合、前記印刷媒体が前記一対の搬送ローラーのうちの一方のみに支持された片支持状態にあるか、前記印刷媒体が前記一対の搬送ローラーの両方に支持された両支持状態にあるかを判定する判定手段とを、更に備え、前記指示手段から印刷継続の指示が与えられた場合、前記クリーニング制御手段は、前記判定手段により前記印刷媒体が前記片支持状態にあると判定された場合は前記クリーニング手段にクリーニングを実施させ、一方、前記両支持状態にあると判定された場合は前記クリーニング手段にクリーニングを実施させないことが好ましい。
【0013】
本発明の一実施態様によれば、印刷媒体のジャムを解消した後、指示手段から印刷継続の指示が与えられた場合、判定手段は、印刷媒体が一対の搬送ローラーのうちの一方のみに支持される片支持状態にあるか、印刷媒体が一対の搬送ローラーの両方に支持された両支持状態にあるかを判定する。そして、クリーニング制御手段は、判定手段により印刷媒体が片支持状態にあると判定された場合、クリーニング手段にクリーニングを実施させる。一方、両支持状態にあると判定された場合はクリーニング手段にクリーニングを実施させない。両支持状態にあるときには、印刷媒体が浮き上がることが少なくジャムでない可能性が高いので、クリーニングは実施されない。よって、無駄なクリーニングを行わなくて済む。
【0014】
本発明の態様の一つである印刷装置では、前記キャリッジの移動方向における位置を検出するキャリッジ位置検出手段と、前記印刷媒体におけるキャリッジ移動開始位置側の端位置から前記ジャムの検出時に停止した前記キャリッジの位置までの距離が閾値を超えるか否かを判定するキャリッジ位置判定手段と、を更に備え、前記指示手段から印刷継続の指示が与えられた場合、前記クリーニング制御手段は、前記距離が前記閾値を超えると判定された場合は前記クリーニング手段にクリーニングを実施させ、一方、前記距離が前記閾値以下であると判定された場合は前記クリーニング手段にクリーニングを実施させないことが好ましい。
【0015】
本発明の一実施態様によれば、キャリッジ位置判定手段は、印刷媒体のキャリッジ移動開始位置側の端位置から、ジャム検出で停止したキャリッジの位置(停止位置)までの距離が閾値を超えるか否かを判定する。ジャムの解消後に、指示手段から印刷継続の指示が与えられた場合、クリーニング制御手段は、前記距離が閾値を超えると判定された場合は、クリーニング手段にクリーニングを実施させる。一方、前記距離が前記閾値以下であると判定された場合は、クリーニング手段にクリーニングを実施させない。このようにキャリッジが印刷媒体の端から移動方向側へさほど移動していないときには、印刷媒体が液体噴射ヘッドの噴射口形成面(ノズル形成面)に噴射ミスを誘発するほどの接触をしていない可能性が高いので、クリーニングを実施しないことにより無駄なクリーニングの実施を低減できる。
【0016】
本発明の態様の一つは、印刷装置であって、印刷媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッドを有するキャリッジを移動させる駆動手段と、前記液体噴射ヘッドをクリーニングするクリーニング手段と、前記印刷媒体のジャムを検出するジャム検出手段と、前記キャリッジの移動方向を判定する方向判定手段と、前記駆動手段を制御して前記キャリッジを移動させるとともに前記ジャム検出手段が前記ジャムを検出すると、前記方向判定手段により判定されたジャム検出時における前記キャリッジの移動方向と逆方向へ前記キャリッジを退避させるキャリッジ制御手段と、前記キャリッジの移動経路の一端部に設けられて前記液体噴射ヘッドのキャッピングが可能なキャッピング手段と、前記ジャムの解消後に印刷継続の指示を与えるために操作される指示手段と、前記指示手段から印刷継続の指示が与えられると、前記キャリッジが前記キャッピング手段と反対側の位置に退避している場合は、前記クリーニング手段に前記液体噴射ヘッドのクリーニングを実施させ、一方、前記キャリッジが前記キャッピング手段側の位置に退避している場合は、前記クリーニング手段に前記液体噴射ヘッドのクリーニングを実施させないクリーニング制御手段とを備えたことを要旨とする。
【0017】
本発明の一実施態様によれば、ジャム検出手段がジャムを検出した場合、キャリッジ制御手段は、方向判定手段により判定されたジャム検出時におけるキャリッジの移動方向と逆方向へキャリッジを退避させる。キャリッジがキャッピング手段側に退避している場合、液体噴射ヘッドはキャッピング手段によりキャッピングされる。ジャムを解消したユーザーにより指示手段から印刷継続の指示が与えられると、クリーニング制御手段は、キャリッジがキャッピング手段側と反対側の位置に退避してキャッピングされていない液体噴射ヘッドへのクリーニングをクリーニング手段に実施させる。一方、キャリッジがキャッピング手段側の位置に退避している場合は、液体噴射ヘッドがキャッピングされているので、クリーニング制御手段はクリーニング手段にクリーニングを実施させない。すなわち、液体噴射ヘッドがキャッピングされることにより噴射口(ノズル)内の液体が乾燥しにくく噴射ミスの発生頻度が低い場合は、クリーニングを実施しないことにより無駄なクリーニングを行わなくて済む。
【0018】
本発明の態様の一つである印刷装置では、前記キャッピング手段と反対側の位置に退避した前記キャリッジの待機時間が、設定時間以上であるか否かを判定する時間判定手段を更に備え、前記クリーニング制御手段は、前記時間判定手段により前記待機時間が前記設定時間以上であると判定された場合、前記クリーニング手段に前記液体噴射ヘッドのクリーニングを実施させることが好ましい。
【0019】
本発明の一実施態様によれば、時間判定手段により、キャッピング手段と反対側の位置に退避したキャリッジの待機時間が設定時間以上であると判定されると、クリーニング制御手段は、クリーニング手段に前記液体噴射ヘッドのクリーニングを実施させる。一方、待機時間が設定時間未満である場合は、クリーニング制御手段は、クリーニング手段に液体噴射ヘッドのクリーニングを実施させない。このため、無駄なクリーニングを行わなくて済む。
【0020】
本発明の態様の一つである印刷装置では、前記クリーニング制御手段は、前記時間判定手段により前記待機時間が第1設定時間以上かつ第2設定時間未満であると判定された場合、前記クリーニング手段に第1クリーニングを実施させ、前記待機時間が前記第2設定時間以上であると判定された場合、前記クリーニング手段に前記第1クリーニングよりも強い第2クリーニングを実施させることが好ましい。
【0021】
本発明の一実施態様によれば、クリーニング制御手段は、時間判定手段により待機時間が第1設定時間以上かつ第2設定時間未満であると判定された場合、クリーニング手段に第1クリーニングを実施させる。また、クリーニング制御手段は、待機時間が第2設定時間以上であると判定された場合、クリーニング手段に第1クリーニングよりも強い第2クリーニングを実施させる。
【0022】
本発明の態様の一つは、キャリッジを往復移動させつつ液体噴射ヘッドから液体を印刷媒体に噴射して印刷を施す印刷方法であって、前記キャリッジの移動速度が印刷媒体のジャムが発生したと推定される設定速度以下に低下したことをもってジャムを検出する検出ステップと、前記検出ステップで前記ジャムが検出されると、前記キャリッジの移動を停止させる制御ステップと、前記ジャムの解消後に指示手段から印刷継続の指示が与えられると、クリーニング手段に前記液体噴射ヘッドのクリーニングを実施させるクリーニング制御ステップとを備えたことを要旨とする。本発明の一実施態様によれば、上記印刷装置の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0023】
本発明の態様の一つは、キャリッジを往復移動させつつ液体噴射ヘッドから液体を印刷媒体に噴射して印刷を施す印刷方法であって、前記印刷媒体のジャムを検出するジャム検出ステップと、前記キャリッジの移動方向を判定する方向判定ステップと、前記ジャム検出ステップで前記ジャムを検出すると、前記方向判定ステップで判定されたジャム検出時における前記キャリッジの移動方向と逆方向へ前記キャリッジを退避させるキャリッジ制御ステップと、前記ジャムの解消後に指示手段から印刷継続の指示が与えられると、前記キャリッジが、前記キャリッジの移動経路の一端部に設けられて前記液体噴射ヘッドのキャッピングが可能なキャッピング手段と反対側の位置に退避している場合は、クリーニング手段に前記液体噴射ヘッドのクリーニングを実施させ、一方、前記キャリッジが前記キャッピング手段側の位置に退避している場合は、前記クリーニング手段に前記液体噴射ヘッドのクリーニングを実施させないクリーニング制御ステップとを備えたことを要旨とする。本発明の一実施態様によれば、上記印刷装置の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態におけるプリンターの斜視図。
【図2】プリンターの概略構成を示す斜視図。
【図3】印刷ヘッドの模式底面図。
【図4】プリンターの電気的構成及びメンテナンス装置の昇降機構を示す模式図。
【図5】コンピューターの機能構成を示すブロック図。
【図6】(a),(b)紙ジャム検出時のキャリッジ制御を説明する模式図。
【図7】用紙の搬送位置が(a)片支持範囲にあるとき、(b)両支持範囲にあるときをそれぞれ示す模式側面図。
【図8】紙ジャム発生時の制御を示すフローチャート。
【図9】第2実施形態における紙ジャムで停止したキャリッジを示す模式平面図。
【図10】(a)〜(c)キャリッジ位置の判定方法を説明する模式側面図。
【図11】紙ジャム発生時の制御を示すフローチャート。
【図12】第3実施形態における紙ジャム発生時の制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明を印刷装置の一種であるインクジェット式プリンターに具体化した第1実施形態を図1〜図8を用いて説明する。
【0026】
図1に示すように、インクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター11」という。)は、略四角箱状の本体12を有し、本体12の前面上部には操作パネル13が設けられている。また、本体12における操作パネル13の下側には、複数枚の用紙Pを収容可能な給紙カセット14が挿抜可能な状態で装着されている。プリンター11は、給紙カセット14から1枚ずつ給送された用紙Pに印刷を施し、印刷後の用紙Pを本体12の前面中段位置に設けられたスライド式の排紙トレイ15上に排出する。
【0027】
操作パネル13は、プリンター11に対する各種操作を行うための操作部16と、各種メニューや画像などが表示される表示部17とを備えている。操作部16には、電源スイッチ16a、印刷開始スイッチ16b及び選択スイッチ16c等が設けられている。例えば用紙Pに印刷を施すときには、印刷開始スイッチ16bを押下することで行う。また、選択スイッチ16cを操作して表示部17に表示されるメニューにおいて各種の項目を選択できる。また、紙ジャム等のエラー発生時には表示部17にその旨が表示され、ユーザーはジャムの用紙Pを取り除くなどして紙ジャムを解消後、指示手段の一例としての操作部16のうち所定の1つを操作することにより、プリンター11に印刷継続を指示するようになっている。また、操作部16の操作で表示部17に表示されるメンテナンス系の項目の中からマニュアルクリーニングの実行を選択することにより、ユーザーがプリンター11にマニュアル操作でクリーニングを実施させることが可能となっている。
【0028】
次にプリンター11の内部構成について説明する。図2は外装ハウジングを取り外した状態のプリンターを示す。図2に示すように、プリンター11において上側と前側が開口する略四角箱状の本体フレーム20の図2におけるその左右の側壁間には所定長さを有するガイド軸21が架設され、キャリッジ22はこのガイド軸21に沿って主走査方向Xに往復移動可能に設けられている。キャリッジ22は、本体フレーム20の背板内面に取着された一対のプーリー23に巻き掛けられた無端状のタイミングベルト24に固定されている。図2における右側のプーリー23に駆動軸が取着された駆動手段の一例であるキャリッジモーター25が正逆転駆動されて、タイミングベルト24が正転・逆転することにより、キャリッジ22は主走査方向Xに往復移動する。1
キャリッジ22の下部には、液体噴射ヘッドの一例としてのインクジェット式の印刷ヘッド26が設けられている。この印刷ヘッド26の下面には、インクを噴射する複数のノズルが開口している。また、キャリッジ22の上部には複数個のインクカートリッジ27が装填されている。インクカートリッジ27は、例えば黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のインクがそれぞれ収容されている。もちろんインク色は4色に限らず、3色、5〜8色でもよい。印刷ヘッド26は、各インクカートリッジ27から供給されたインクを色別のノズルからそれぞれ噴射する。
【0029】
印刷ヘッド26と対向する下方位置には、印刷ヘッド26と用紙Pとの間隔(ギャップ)を規定する支持台28が設けられている。支持台28は印刷ヘッド26による印刷が行われる印刷領域を含む範囲に亘って幅方向(図2におけるX方向)に延びている。印刷中は用紙Pのうち支持台28上の箇所に印刷ヘッド26から噴射されたインクが着弾する。
【0030】
また、キャリッジ22の背面側には、キャリッジ22の移動量に比例する数のパルスを出力するリニアエンコーダー29がガイド軸21に沿って延びるように設けられている。
また、本体フレーム20の図2における右側下部には、給送モーター31と、搬送モーター32とが配設されている。給送モーター31は、給紙カセット14内に複数枚セットされた用紙Pを1枚ずつ給送する不図示の給送ローラー(例えばピックアップローラー)を駆動する。
【0031】
搬送方向Y(副走査方向)に支持台28を挟んだその上流側と下流側には、それぞれ搬送ローラー対33と排出ローラー対34とが配置されている。搬送ローラー対33は、搬送モーター32の動力で回転駆動する搬送駆動ローラー33aと、搬送駆動ローラー33aに当接して連れ回りする搬送従動ローラー33bとから構成される。また、排出ローラー対34は、搬送モーター32の動力で回転駆動する排出駆動ローラー34aと、排出駆動ローラー34aに当接して連れ回りする排出従動ローラー34bとから構成される。搬送モーター32が回転駆動されることで搬送駆動ローラー33a及び排出駆動ローラー34aが駆動され、用紙Pは両ローラー対33,34に挟持(ニップ)された状態で副走査方向Yに搬送される。なお、本実施形態では、搬送モーター32、搬送ローラー対33(上流側の搬送ローラー)及び排出ローラー対34(下流側の搬送ローラー)により、搬送手段の一例が構成される。
【0032】
図2に示すように、キャリッジ22を主走査方向Xに往復動させながら印刷ヘッド26のノズルから用紙Pにインクを噴射する印字動作と、用紙Pを副走査方向Yに所定の搬送量で搬送する送り動作とを交互に繰り返すことで、用紙Pに文書や画像等の印刷が施される。
【0033】
図2においてキャリッジ22の移動経路上の一端位置(図2では右端位置)がホーム位置(ホームポジション)となっている。ホーム位置に配置されたキャリッジ22の直下には、印刷ヘッド26に対してクリーニングを含むメンテナンスを行うクリーニング手段の一例としてのメンテナンス装置35が配設されている。メンテナンス装置35は、キャップ36、ワイパー37及び吸引ポンプ38等を備え、ホーム位置に配置された印刷ヘッド26のノズル形成面26aにキャップ36を当接させた状態で、吸引ポンプ38を駆動して、印刷ヘッド26のノズルからインクを強制的に吸引排出することによりクリーニングを行う。メンテナンス装置35により印刷ヘッド26のノズルから吸引排出された廃インクは支持台28の下側に配置された廃液タンク39に排出されるようになっている。
【0034】
なお、本実施形態では、搬送モーター32は、搬送駆動ローラー33a及び排出駆動ローラー34aの他、メンテナンス装置35の共通の動力源となっている。キャリッジ22がホーム位置近傍の切換位置に配置されると、動力伝達切換装置40の接続が切断され、この切断状態で搬送モーター32が駆動されることで動力を出力すべき接続先(切り換え先)が選択される。キャリッジ22が切換位置から印刷領域側へ退避すると、選択された接続先へ動力伝達切換装置40が接続される構成となっている。
【0035】
図3に示すように、印刷ヘッド26のノズル形成面26aには、副走査方向(図2における上下方向)に一定のノズルピッチで配列された計180個のノズル♯1〜♯180が4列配置され、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の計4列のノズル26bが形成されている。本例では、4列のノズル26bを用いて、K,C,M,Yの4色の印刷を行う。なお、ノズル列を構成する各ノズル26bは千鳥配置でもよい。
【0036】
また、図3に示すように、印刷ヘッド26には、ノズル26bからインクを噴射させるための吐出駆動素子26c(噴射駆動素子)がノズル26b毎に設けられている(但し、図3では印刷ヘッド26の外側に模式的に1列分のみ描いている)。吐出駆動素子26cは、例えば圧電振動素子又は静電駆動素子からなり、所定駆動波形の電圧パルスが印加されると、電歪作用又は静電駆動作用により、ノズル26bに連通するインク室の内壁部(振動板)を振動させて、インク室を膨張・圧縮させることでノズル26bからインク滴を噴射する。もちろん吐出駆動素子26cはノズル通路内のインクを加熱するヒーターでもよく、ヒーターで加熱したインク内に沸騰により発生した気泡の膨張を利用してノズルからインク滴を吐出させる方式も採用できる。
【0037】
図4は、記録装置の電気的構成を示すブロック図である。以下、プリンター11の電気的構成を図4に基づいて説明する。
図4に示すように、プリンター11はコントローラー50を備える。コントローラー50は、コンピューター51、ヘッド駆動回路52、モーター駆動回路53〜55を備える。コンピューター51は、CPU61、ASIC62、RAM63及び不揮発性メモリー64を備える。
【0038】
不揮発性メモリー64には図8にフローチャートで示すプログラムが記憶されている。また、不揮発性メモリー64には、印刷ヘッド26、キャリッジモーター25、搬送モーター32を駆動制御する各種制御プログラム等が記憶されている。RAM63には、CPU61の演算結果が一時的に記憶されたり、印刷データ及びそれを展開した展開データなどが一時的に記憶されたりする。
【0039】
CPU61は、ヘッド駆動回路52を介して印刷ヘッド26に接続されている。CPU61は、ホスト装置100から受信した印刷データを展開して得られたビットマップデータと噴射制御信号とをヘッド駆動回路52に出力することにより、印刷ヘッド26にノズル26b毎に設けられた吐出駆動素子26cに吐出駆動パルス(電圧パルス)を印加する。吐出駆動素子26c(例えば振動素子)は、印加された吐出駆動パルスに応じた振動をノズル26bと連通するインク室に与えてインク室を膨張・圧縮させることによりノズル26bからインク滴を噴射する。
【0040】
また、CPU61は、モーター駆動回路53を介してキャリッジモーター25に接続されており、モーター駆動回路53に駆動指令信号を出力することによりキャリッジモーター25を駆動制御する。また、CPU61は、モーター駆動回路54を介して給送モーター31に接続されており、モーター駆動回路54に駆動指令信号を出力することにより給送モーター31を駆動制御する。また、CPU61は、モーター駆動回路55を介して搬送モーター32に接続されており、モーター駆動回路55に駆動指令信号を出力することにより搬送モーター32を駆動制御する。例えば給送モーター31及び搬送モーター32を正転駆動させることにより、給紙ローラー(図示せず)、搬送駆動ローラー33a、排出駆動ローラー34aが回転駆動されて、用紙Pの給送・搬送(紙送り)・排出(排紙)が行われるとともに、このとき吸引ポンプ38はレリース状態になる。一方、搬送モーター32を逆転駆動させることにより吸引ポンプ38のポンピング動作が行われる。
【0041】
CPU61は、クリーニング実施条件が成立すると、メンテナンス装置35を動作させて自動でクリーニング(インク吸引動作)を実施させる。クリーニングを実施する場合、CPU61は、キャリッジ22がホーム位置にある状態で、モーター駆動回路55に逆転駆動信号を出力することにより搬送モーター32を逆転駆動させ、吸引ポンプ38をポンピング動作させる。また、操作部16のうちマニュアルクリーニングを指示するスイッチからの操作信号を入力したときにも、CPU61はクリーニングを実施する。印刷ヘッド26のノズル形成面26aにキャップ36が当接(キャッピング)する状態で、吸引ポンプ38が駆動されると、キャップ36の内部にチューブ76を通じて吸引力が作用し、その吸引力(負圧)によりノズル26bからインクが強制的に吸引排出される。
【0042】
リニアエンコーダー29は、キャリッジ22の移動位置を例えば光学的に検知する機能を有し、キャリッジ22の軌道に沿って張設されたスリットテープ67と、スリットテープ67に形成された多数の光学的なスリットを検知するセンサー68とを備えている。リニアエンコーダー29は、キャリッジ22の走査に従って、前記各スリットを通過する光の断続数に応じた数のパルスをもつ検出信号(パルス信号)を出力する。CPU61は、リニアエンコーダー29からの検出信号に含まれる2種類(A相、B相)のパルス信号の位相を比較してキャリッジ22の移動方向を認識する。そして、CPU61は内部に備える図示しないカウンターに、前記光の断続数に応じたパルス数を、例えばキャリッジ往動時にインクリメント、キャリッジ復動時にデクリメントして計数することにより、その得られた計数値に基づきキャリッジ22の原点位置(例えばホーム位置)からの移動位置を検出している。CPU61はその計数値に基づいてキャリッジ22の位置制御および速度制御を行う。すなわち、速度制御は、キャリッジ22の移動位置に応じた速度を指示する駆動信号をモーター駆動回路53に出力してキャリッジモーター25を駆動制御することで行われる。また、コンピューター51は、リニアエンコーダー29からの検出信号(パルス信号)に基づき、印刷ヘッド26のノズル26bから噴射するインク滴の噴射タイミング信号を生成してヘッド駆動回路52に出力することにより、印刷ヘッド26のノズル26bからインク滴が噴射される噴射タイミングを制御している。
【0043】
また、メンテナンス装置35はキャップ36を昇降させる昇降装置70を備える。昇降装置70は、本実施形態では例えば図4に示す構造を有するスライダー方式のものである。すなわち、昇降装置70は、上側が開放された略箱状のフレーム71と、フレーム71に傾斜した経路に沿ってスライド可能に支持されたスライダー72とを備え、キャップ36及びワイパー37はスライダー72の上面に支持されている。スライダー72の両側面から突設された二対のガイドピン73,74はフレーム71に形成された斜状案内孔71aに移動自在に係入されている。また、スライダー72は下方へ向かう方向へ引張りバネ75により付勢されている。スライダー72には、キャリッジ22から下方へ延出する係合部22aと係合可能な係合レバー72aが上方へ突設されている。キャリッジ22がホーム位置に戻る途中で係合部22aが係合レバー72aを主走査方向X(図4では右方向)に押すことにより、スライダー72は、ガイドピン73,74が斜状案内孔71aに沿って案内されることによりフレーム71に対して図4における右方へスライドしつつ上昇する。一方、キャリッジ22がホーム位置から印刷領域側へ移動して、係合部22aが係合レバー72aから離れると、スライダー72が引張りバネ75の付勢力により図4における左方へスライドしつつ下降する。このスライダー72の上昇・下降により、キャップ36はキャリッジ22がホーム位置に戻ると上昇し、ホーム位置から離れると下降する構成となっている。なお、本実施形態では、キャップ36及び昇降装置70により、キャッピング手段の一例が構成される。
【0044】
また、搬送モーター32の回転はロータリーエンコーダー77により検出され、ロータリーエンコーダー77からコンピューター51へパルス信号が出力される。コンピューター51はロータリーエンコーダー77から入力したパルス信号の例えばパルスエッジを計数する図示しないカウンターを備え、カウンターの計数値に基づいて用紙の搬送位置を認識する。また、搬送ローラー対33よりも搬送方向Y上流側の位置には、用紙Pの先端及び後端を検出する紙検出器78が設けられている。なお、キャリッジ22には、用紙Pの幅方向(主走査方向X)の紙端を検出可能な紙幅センサー79(図5参照)が設けられている。
【0045】
図5は、コンピューター51内のCPU61が不揮発性メモリー64に記憶されたプログラムを実行することにより、コンピューター51内に構築される機能ブロックを示す。図5に示すように、コンピューター51は、主制御部80、用紙位置検出部81、キャリッジ位置検出部82(以下、「CR位置検出部82」とも記載する。)、ジャム検出部83、キャリッジ異常検出部84(「CR異常検出部84」とも記載する。)、ヘッド制御部85、キャリッジ制御部86(「CR制御部86」とも記載する。)、搬送制御部87及びクリーニング制御部88を備えている。なお、本実施形態では、CR位置検出部82によりキャリッジ位置検出手段の一例が構成され、ジャム検出部83によりジャム検出手段の一例が構成され、さらにクリーニング制御部88によりクリーニング制御手段の一例が構成される。
【0046】
主制御部80は、プリンター11の搬送系、印刷系、クリーニング系、エラー制御系などの各種制御を統括的に司る。
用紙位置検出部81は、印刷中の用紙Pの搬送方向Yにおける位置(搬送位置)を検出する。給送された用紙Pの先端を紙検出器78が検知し、その検知位置から一定量搬送されて基準位置(例えば印刷ヘッド26の最上流ノズルと対向する位置)に到達すると、カウンターの計数値をリセットする。そして、用紙位置検出部81は、用紙Pの先端が基準位置に達した時点を原点(計数値「0」)としてロータリーエンコーダー77から入力するパルス信号のエッジの数を計数し、その計数値から用紙Pの搬送位置を取得する。
【0047】
CR位置検出部82は、キャリッジ22の移動位置を検出する。CR位置検出部82は、リニアエンコーダー29から入力するA相・B相のパルス信号を比較してキャリッジ22の移動方向を認識する。そして、CR位置検出部82は、キャリッジ22が原点位置(例えばホーム位置)にあるときにリセットされたカウンター(図示せず)の計数値を、リニアエンコーダー29からのパルス信号のエッジを検出する度に、例えばキャリッジ往動時であればインクリメント、キャリッジ復動時であればデクリメントする。その得られた計数値に基づきキャリッジ22の原点位置に対する移動位置を検出する。
【0048】
ジャム検出部83、紙ジャムを検出する。ジャム検出部83は、図5に示すように、PF検出部97、紙端検出部98及び検出手段の一例としてのCR検出部99を備えている。
【0049】
PF検出部97は、搬送モーター32の負荷(トルク)を検出し、検出したトルクが所定値を超えたPFモーターエラーの発生をもって、紙ジャムを検出する。
紙端検出部98は、給送された用紙Pの先端が紙検出器78の検知域に十分到達しうる所定の給送量に応じた回転量だけ給送モーター31が駆動されたにも関わらず、用紙Pの先端が紙検出器78により検知されなかった紙端非検出をもって、紙ジャムを検出する。
【0050】
CR検出部99は、キャリッジ22の移動速度を検出し、そのキャリッジ移動速度が正常速度よりも、紙ジャム発生とみなしうる最低負荷に相当する所定速度降下量を超えて低下して、設定速度以下になったことをもって、紙ジャムを検出する。なお、キャリッジ22の移動速度は、リニアエンコーダー29からのパルス信号のエッジ周期(キャリッジ速度の逆数)を計時し、その計時したエッジ周期から求めている。
【0051】
CR異常検出部84は、キャリッジモーター25の負荷(例えばトルク)を検出し、その負荷が、キャリッジ22が異物に当たったとみなしうる負荷閾値を超えたことをもって、キャリッジ22の異常を検出する。このように本実施形態では、主走査方向Xに往復移動するキャリッジ22や印刷ヘッド26が用紙Pに接触して起こる紙ジャムは、CR検出部99によりキャリッジ22の速度(つまりキャリッジモーター25の回転速度)の落ち込みから早期に検出し、キャリッジ22が移動経路上で異物に当たった際の異常はキャリッジモーター25のトルクの変化から検出する。
【0052】
ヘッド制御部85は、ヘッド駆動回路52を介して印刷ヘッド26を制御する。詳しくは、ヘッド制御部85は、主制御部80の指示に従い、印刷データに含まれる印刷画像データと噴射制御データとをヘッド駆動回路52が扱える形式に変換したうえでヘッド駆動回路52に出力して印刷ヘッド26のインク噴射制御を行う。
【0053】
CR制御部86は、モーター駆動回路53を介してキャリッジモーター25を制御する。詳しくは、CR制御部86は、不揮発性メモリー64に記憶されたキャリッジ速度テーブルに従って、キャリッジ22の移動位置に応じた速度指令値(例えば)をモーター駆動回路53に逐次出力してキャリッジ22の主走査方向Xにおける位置制御及び速度制御を行う。
【0054】
搬送制御部87は、モーター駆動回路54を介して給送モーター31を制御するとともに、モーター駆動回路55を介して搬送モーター32を制御することにより用紙Pの給送を行い、搬送モーター32を制御することにより用紙Pの搬送(紙送り)及び排出(排紙)を行う。
【0055】
クリーニング制御部88は、所定のクリーニング時期になったなど所定のクリーニング実施条件が成立したときや、操作部16の操作によりマニュアルクリーニングの実行が指示されたときなどに、印刷ヘッド26のクリーニングを行う。クリーニング制御部88は、印刷ヘッド26のノズル形成面26aにキャップ36を当接させたキャッピング状態でクリーニングを行うので、このキャッピングのためにキャリッジモーター25を制御する。また、クリーニング制御部88は、印刷ヘッド26のノズル形成面26aに当接した状態のキャップ36内に吸引圧(負圧)を付与する吸引ポンプ38を駆動させるために搬送モーター32を駆動制御する。なお、キャリッジ22がクリーニング位置(ホーム位置)に配置されたときには、動力伝達切換装置40が搬送モーター32の動力を吸引ポンプ38へ伝達しうる切換位置に切り換えられる。
【0056】
さらにコンピューター51は、計時部90、第1判定部91、方向判定手段の一例としての第2判定部92、第3判定部93、判定手段の一例としての第4判定部94、第5判定部95及び第6判定部96を備えている。
【0057】
計時部90は、制御に必要な各種の経過時間を計時する。
第1判定部91は、紙ジャムが検出されたときに、その検出された紙ジャムの要因を判定する。すなわち、ジャム検出部83が検出した紙ジャムが、PF検出部97が検出したPFモーターエラーであるか、紙端検出部98が検出した紙端非検出であるか、さらにはCR検出部99が検出したCRモーターエラーであるかを判定する。
【0058】
第2判定部92は、紙ジャムが発生したときのキャリッジ22の移動方向を判定する。すなわち、第2判定部92は、紙ジャムが発生したときのキャリッジ22の移動方向が、1桁側から80桁側へ向かう方向(往動方向)であるか、それとも80桁側から1桁側へ向かう方向(復動方向)であるかを判定する。
【0059】
第3判定部93は、ユーザーが紙ジャムを解消した後に、印刷を継続(再開)させるために操作部16を操作したことによる印刷継続の指示があったか否かを判定する。
第4判定部94は、用紙位置、つまり用紙Pの搬送位置yが、用紙Pが印刷ヘッド26の移動経路に対して搬送方向Yの上流側の搬送ローラー対33と下流側の排出ローラー対34との2箇所で支持される両支持範囲にあるか、搬送ローラー対33と排出ローラー対34のうち片方のみによって支持される片支持範囲にあるか否かを判定する。本実施形態では、第3判定部93が印刷継続の指示を受け付けと判定すると、第4判定部94は、用紙位置の判定を行う。但し、その判定は、紙ジャム検出時点から印刷継続の指示受け付け時点までの期間内に行ってもよい。
【0060】
第5判定部95は、紙ジャム検出時に停止したキャリッジ22が、用紙Pのキャリッジ起動位置側の端より設定距離LX以上、キャリッジ移動先側に位置するか否かを判定する。なお、この第5判定部95は、後述する第2実施形態で用いるものであるため、その詳細は第2実施形態で説明する。
【0061】
第6判定部96は、紙ジャム検出時に80桁側の位置で待機しているキャリッジ22の待機時間が、設定時間以上になったか否かを判定する。なお、この第6判定部96は、後述する第3実施形態で用いるものであるため、その詳細は第3実施形態で説明する。
【0062】
図6に示すように、キャリッジ22は1桁側(ホーム位置)から80桁側(反ホーム位置)までの間の移動経路上を往復移動可能となっている。用紙Pがキャリッジ22の移動エリアに存在するときには、図6に示すようにキャリッジ22又は印刷ヘッド26が用紙Pの側端部に接触して紙ジャムが発生する場合がある。
【0063】
本実施形態では、キャリッジ22が紙ジャム発生後、その紙ジャムが発生したときの移動方向と逆方向へ移動させてその移動経路上の端部位置(エンド位置)で待機させる。すなわち、図6(a)に示すように、紙ジャム発生時のキャリッジ22の移動方向(紙ジャム検出方向)が、1桁側から80桁側へ向かう方向である場合は、紙ジャム発生時に停止したキャリッジ22を、1桁側へ移動させて1桁側のホーム位置に待機させる。一方、紙ジャム発生時のキャリッジ22の移動方向(紙ジャム検出方向)が、80桁側から1桁側へ向かう方向である場合は、紙ジャム発生時に停止したキャリッジ22を、80桁側へ移動させて80桁側の反ホーム位置に待機させる。
【0064】
また、用紙Pの搬送過程では、図7(a)に示すように用紙Pが搬送方向において搬送ローラー対33と排出ローラー対34との二箇所で支持(挟持)される両支持範囲と、図7(b)に示すように搬送ローラー対33と排出ローラー対34のうち片方のみにより一箇所で支持(挟持)される片支持範囲とがある。本実施形態では、用紙Pの先端が基準位置(例えば印刷ヘッド26の最上流ノズルに対向する位置)に達したときの用紙位置を原点「0」とし、原点からの搬送距離を計数した計数値を用紙Pの搬送位置yとしている。
【0065】
図7(a)に示すように、搬送位置yが、用紙Pの先端が排出ローラー対34に達したときの搬送位置Y1に達するまでは、搬送位置yは片支持範囲にある。そして、搬送位置yが、用紙Pの後端が搬送ローラー対33に達したときの搬送位置Y2に達すると、搬送位置yは、再び片支持範囲に入る。つまり、搬送位置yが、片支持範囲(y≦Y1,y≧Y2)にあるときは、用紙Pは一箇所で支持される。
【0066】
一方、図7(b)に示すように、搬送位置yが、用紙Pの先端が排出ローラー対34に達したときの搬送位置Y1を超えると、搬送位置yは両支持範囲に入る。そして、搬送位置yが、用紙Pの後端が搬送ローラー対33に達したときの搬送位置Y2を超えると、搬送位置yは両支持範囲を出る。つまり、搬送位置yが、両支持範囲(Y1<y<Y2)にあるときは、用紙Pは二箇所で支持される。
【0067】
図7(b)に示すように、搬送位置yが、キャリッジ22の移動エリアを搬送方向Yに挟む両側二箇所で用紙Pが挟持されている両支持範囲にあるときは、用紙Pの端部が浮き上がることがないので、キャリッジ22又は印刷ヘッド26との干渉に起因する紙ジャムは発生しないとみなすことができる。一方、図7(a)に示すように、搬送位置yが、キャリッジ22の移動エリアを搬送方向Yに挟む両側のうち一箇所のみで用紙Pが支持されている片支持範囲にあるときは、用紙Pの端部が同図に二点鎖線で示すように浮き上がる可能性があるので、キャリッジ22又は印刷ヘッド26との干渉に起因する紙ジャムが発生しうる。このため、ジャム検出部83におけるCR検出部99がCRモーターエラーを要因とする紙ジャムが検出した際に、第4判定部94が、搬送位置yが片支持範囲(y≦Y1,y≧Y2)にあると判定したときは、紙ジャムである可能性が高いが、搬送位置yが両支持範囲(Y1<y<Y2)にあると判定したときは、紙ジャムではない可能性が高い。
<作用>
以下、プリンター11における紙ジャム発生時の制御を、図8に示すフローチャートに従って説明する。
【0068】
プリンター11の動作中に発生した紙ジャムは、ジャム検出部83により検出される。紙ジャムが検出されると、図8にフローチャートで示される制御が行われる。
ステップS1では、紙ジャム要因を判定する。この判定は第1判定部91が行う。すなわち、ジャム検出部83が有する3つの検出部97〜99のうちどの検出部が紙ジャムを検出したか否かを判定する。詳しくは、PF検出部97が検出したPFモーターエラー、紙端検出部98が検出した紙端非検出エラー(紙詰まりエラー)、CR検出部99が検出したCRモーターエラーのうちいずれであるかを判定する。PFモーターエラーであればステップS2に進み、紙端非検出エラーであればステップS3に進み、さらにCRモーターエラーであればステップS4に進む。
【0069】
ステップS2及びS3では、印刷継続の指示があったか否かを判定する。印刷継続の指示がなければその指示があるまで待機し、印刷継続の指示があれば当該ルーチンを終了する。この場合、印刷継続の指示に従い、例えば次の用紙Pを給送して紙ジャムで失敗した印刷を再開する。
【0070】
ステップS4では、紙ジャム発生時のキャリッジ移動方向を判定する。キャリッジ移動方向が1桁側から80桁側へ向かう方向(往動方向)である場合はステップS5に進み、一方、キャリッジ移動方向が80桁側から1桁側へ向かう方向(復動方向)である場合はステップS7に進む。
【0071】
ステップS5では、キャリッジ22を1桁側へ向かって逆方向へ移動させてホーム位置に待機させる。このとき、キャリッジ22のホーム位置への移動に伴い上昇したキャップ36が印刷ヘッド26のノズル形成面26aに当接することで、印刷ヘッド26がキャッピングされる。
【0072】
ステップS6では、印刷継続の指示があったか否かを判定する。印刷継続の指示がなければその指示があるまで待機し、印刷継続の指示があればステップS9に進む。
一方、ステップS7では、キャリッジ22を80桁側へ向かって逆方向へ移動させて反ホーム位置に待機させる。この反ホーム位置では印刷ヘッド26はキャッピングされない。
【0073】
ステップS8では、印刷継続の指示があったか否かを判定する。印刷継続の指示がなければその指示があるまで待機し、印刷継続の指示があればステップS9に進む。
ステップS9では、用紙位置が片支持範囲であるか否かを判定する。用紙位置が片支持範囲であればステップS10に進み、一方、用紙位置が片支持範囲でなければ、つまり両支持範囲にあれば当該ルーチンを終了する。
【0074】
ステップS10では、クリーニングを実施する。つまり、CRモーターエラーを要因とする紙ジャムが検出されたときは、さらにそのときの用紙位置(搬送位置y)が片支持範囲(y≦Y1,y≧Y2)にあるときに限り、クリーニングが実施される。そして、クリーニングを終えると、例えば次の用紙Pを給送して紙ジャムで失敗した印刷を開始する。
【0075】
このように、本実施形態では、キャリッジ22又は印刷ヘッド26が用紙Pと接触して起きた紙ジャムを、キャリッジ速度が正常速度よりも紙ジャムによる負荷分落ち込んで、設定速度以下に低下したことをもって検出し、この種の紙ジャムが検出された場合には、用紙Pが片支持範囲にあるときに限り、クリーニングを実施する。このため、印刷ヘッド26のノズル形成面26aに紙ジャムとなった用紙Pが接触した際にノズル26b内のインクのメニスカスが破壊されたり、ノズル26b内のインクが用紙Pに吸い取られたり、さらにはノズル26b内に気泡が混入したりしても、その後のクリーニングでノズル26b内にはメニスカスが整えられた適量のインクが充填される。この結果、噴射ミスが発生することもなくノズルから適切サイズのインク滴を噴射することができる。よって、品質の高い印刷を実現できる。
【0076】
以上詳述したように、この第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)キャリッジ22が主走査方向Xに移動する途中で用紙Pと接触して起きた紙ジャムを検出し、この種の紙ジャムが検出された場合にはクリーニングを実施する。よって、紙ジャム解消後の最初の印刷におけるインクの噴射ミスを低減し、品質の高い印刷を実現できる。また、PFモーターエラー及び紙端非検出エラーが要因の紙ジャム検出時には、給紙途中の紙詰まりや排紙途中の紙詰まりなどを要因とし、用紙Pが印刷ヘッド26のノズル形成面26aに接触しない可能性が高いため、クリーニングを実施しない。このため、紙ジャム発生時に、必要なクリーニングを実施しつつ不要なクリーニングは実施しないので、クリーニングによるインク消費量を少なく抑えることができる。
【0077】
(2)キャリッジ22の移動速度が、正常速度よりも紙ジャム発生時の最低負荷に相当する所定値分落ち込んだ設定速度以下に低下したことをもって、キャリッジ22又は印刷ヘッド26が用紙Pと干渉したことによる紙ジャムを検出する。よって、キャリッジ22が移動経路上の異物と干渉しただけでノズル26bに悪影響のないCR異常と区別し、クリーニングが必要な紙ジャムのみを適切に検出できる。よって、紙ジャム以外の要因でキャリッジ22が移動不能になったエラーの場合に、噴射ミスの心配がないにも拘わらず無駄なクリーニングを実施することを回避できる。
【0078】
(3)キャリッジ22の速度異常が検出されたCRモーターエラーを要因とする紙ジャム検出時は、その紙ジャム発生時の用紙Pの搬送位置yを調べ、搬送位置yが、搬送ローラー対33と排出ローラー対34のうち片方のみに用紙Pが支持される片支持範囲にある場合にクリーニングを実施する。よって、搬送位置yが、搬送ローラー対33と排出ローラー対34の両方に用紙Pが支持される両支持範囲にある場合であって、紙ジャムでない可能性が高い場合はクリーニングを実施しないので、無駄なクリーニングを極力回避できる。このため、例えばクリーニングによるインク消費量を極力増やさずに済む。
【0079】
(第2実施形態)
次に第2実施形態を、図9〜図11を用いて説明する。この第2実施形態では、紙ジャムを検出して停止したときのキャリッジ22の位置に応じてクリーニングを行うか否かを決めるキャリッジ制御を行う点が、前記第1実施形態と異なる。なお、プリンター11の構成は基本的に第1実施形態と同様なので、特に異なる構成についてのみ説明する。
【0080】
本実施形態では、図9に示すように、紙ジャムで停止したキャリッジ22が、用紙Pにおけるキャリッジ起動位置側の端(図9では用紙Pの1桁側の紙端(1桁側端E1))から、どの程度キャリッジ移動方向側(図9における実線矢印方向側)に位置しているかを判定する。本例では、図9及び図10(a)に示すように、用紙Pにおけるキャリッジ起動位置側の端(1桁側端E1)からキャリッジ移動方向へ設定距離LXを設定している。そして、図5に示すキャリッジ位置判定手段の一例としての第5判定部95は、CRモーターエラーを要因とする紙ジャムでキャリッジ22が停止したとき、用紙Pにおけるキャリッジ起動位置側の端(1桁側端E1)からその停止したキャリッジ22の移動方向側の端面までの距離Lが、設定距離LX以上であるか否かを判定する。
【0081】
詳しくは、キャリッジ22が1桁側から移動を開始(起動)した場合、第5判定部95は、紙ジャム検出時に停止したキャリッジ22が、用紙Pの1桁側端E1より設定距離LX以上、移動方向側(80桁側)に位置しているか否かを判定する。また、キャリッジ22が80桁側から移動を開始(起動)した場合、第5判定部95は、紙ジャム検出時に停止したキャリッジ22が、用紙Pの80桁側端E2(図9参照)より設定距離LX以上、移動方向側(1桁側)に位置しているか否かを判定する。
【0082】
本実施形態では、用紙Pの端E1,E2の位置は、紙幅センサー79により検出する。例えば用紙Pが給送(頭出し)された後にキャリッジ22を最初に主走査方向Xへ移動するときに、紙幅センサー79が用紙Pの端E1,E2を検出する。紙幅センサー79は例えば反射型のセンサーであり、その発光器から出射した光が用紙Pに当たらず受光器が反射光を受光しないOFF状態と、出射した光が用紙Pに当たって反射した反射光を受光したON状態との間で切り換わると、その切り換わり時点におけるキャリッジ位置から用紙Pの端E1,E2を検出する。
【0083】
図10(b)に示すように、紙ジャムでキャリッジ22が停止したとき、用紙Pにおけるキャリッジ起動位置側の端(1桁側端E1)からその停止したキャリッジ22の移動方向側の端面(図10では左端面)までの距離Lが、設定距離LX未満のL1である(L1<LX)ときは、紙ジャムが発生するものの、用紙Pの紙ジャムとなった部分が印刷ヘッド26のノズル形成面26aに接触していない可能性が高い。この場合、印刷ヘッド26のノズル26bにおけるインクメニスカスの破壊、ノズル26b内のインクの一部除去、ノズル26b内のインクへの紙粉や気泡等の異物の混入などが発生しないため、印刷継続の指示を受け付けたときに、クリーニングは実施しないようにしている。
【0084】
一方、図10(c)に示すように、紙ジャムでキャリッジ22が停止したとき、用紙Pにおけるキャリッジ起動位置側の端(1桁側端E1)からその停止したキャリッジ22の移動方向側の端面までの距離Lが、設定距離LX以上のL2である(L2≧LX)ときは、用紙Pの紙ジャムとなった部分が印刷ヘッド26のノズル形成面26aに接触している可能性が比較的高い。この場合、印刷ヘッド26のノズル26bにおけるインクメニスカスの破壊、ノズル26b内のインクの一部除去、ノズル26b内のインクへの紙粉や気泡等の異物の混入などが発生する虞がある。このため、これらのうち少なくとも1つが原因で印刷ヘッド26の噴射エラーを招く虞があるので、印刷継続の指示を受け付けたときに、クリーニングを実施するようにしている。
【0085】
以下、図11に示すフローチャートに従ってプリンター11の作用を説明する。ジャム検出部83が紙ジャムを検出すると、CPU61が図11のフローチャートで示されるプログラムを実行する。
【0086】
図11におけるステップS11〜ステップS18の各処理は、図8におけるステップS1〜ステップS8の各処理と同様である。このため、まずステップS11で判定した紙ジャム要因がCRモーターエラーである場合はステップS14に進む。
【0087】
ステップS14において、紙ジャム発生時のキャリッジ移動方向が、1桁側から80桁側へ向かう方向(往動方向)であると判定された場合は、ステップS15に進む。そして、ステップS15において、キャリッジ22を紙ジャム発生時の移動方向と逆方向の1桁側へ移動させてホーム位置に待機させる。このとき、キャリッジ22のホーム位置への移動に伴い上昇したキャップ36が印刷ヘッド26のノズル形成面26aに当接することで、印刷ヘッド26がキャッピングされる。そして、ステップS16において、印刷継続の指示があるとステップS19に進む。
【0088】
一方、ステップS14において、紙ジャム発生時のキャリッジ移動方向が、80桁側から1桁側へ向かう方向(復動方向)であると判定された場合は、ステップS17に進む。そして、ステップS17において、キャリッジ22を紙ジャム発生時の移動方向と逆方向の80桁側へ移動させて反ホーム位置に待機させる。そして、ステップS18において、印刷継続の指示があるとステップS21に進む。
【0089】
キャリッジ22が1桁側のホーム位置に待機している場合は、ステップS19において、ジャム検出時のキャリッジ位置が用紙Pの1桁側端E1より設定距離LX以上80桁側にあるか否かを判定する。このステップS19で否定判定の場合は当該ルーチンを終了する。すなわち、図10(b)に示すように、ジャム検出時のキャリッジ位置が用紙Pの1桁側端E1より設定距離LX以上80桁側にない場合は、用紙Pのジャムとなった部分が印刷ヘッド26のノズル形成面26aに接触していない可能性が高いので、クリーニングは実施しない。つまり、用紙Pの1桁側端E1からキャリッジ22の80桁側端面までの平面視における距離Lが設定距離LX未満のL1(L1<LX)である場合は、クリーニングを実施しない。
【0090】
一方、このステップS19で肯定判定の場合はステップS20に進んでクリーニングを実施する。すなわち、図10(c)に示すように、ジャム検出時のキャリッジ位置が用紙Pの1桁側端E1より設定距離LX以上80桁側にある場合は、用紙Pのジャムとなった部分が印刷ヘッド26のノズル形成面26aに接触している可能性が高いので、クリーニングを実施する。つまり、用紙Pの1桁側端E1からキャリッジ22の80桁側端面までの平面視における距離Lが設定距離LX以上のL2(L2≧LX)である場合は、クリーニングを実施する。
【0091】
また、キャリッジ22が80桁側の反ホーム位置に待機している場合は、ステップS21において、ジャム検出時のキャリッジ位置が用紙Pの80桁側端E2より設定距離LX以上1桁側にあるか否かを判定する。このステップS21で肯定判定の場合はステップS22に進んでクリーニングを実施する。一方、このステップS21で否定判定の場合は当該ルーチンを終了する。
【0092】
よって、紙ジャム検出で停止したキャリッジ位置が用紙Pの80桁側端E2より設定距離LX以上1桁側にあって、用紙Pのジャムとなった部分が印刷ヘッド26のノズル形成面26aに接触している可能性が高い場合は、クリーニングが実施される。一方、紙ジャム検出で停止したキャリッジ位置が用紙Pの80桁側端E2より設定距離LX以上1桁側にはなく、用紙Pのジャムとなった部分が印刷ヘッド26のノズル形成面26aに接触していない可能性が高い場合は、クリーニングは実施されない。
【0093】
以上、詳述したように、第2実施形態によれば、第1実施形態における効果(1),(2)が同様に得られる他、以下の効果を得ることができる。
(4)紙ジャム検出時に停止したキャリッジ22が、用紙Pのキャリッジ起動位置側の端より設定距離LX以上、移動方向側に位置する場合に、クリーニングを実施するが、設定距離LX未満の位置である場合はクリーニングを実施しない。よって、用紙Pのジャムになった部分が印刷ヘッド26のノズル形成面26aに接触していない可能性が高い場合はクリーニングが実施されないので、無駄なクリーニングの実施を極力回避できる。よって、クリーニングによるインク消費量が不要に増えることを回避できる。
【0094】
(第3実施形態)
次に第3実施形態を、図12を用いて説明する。この第3実施形態では、紙ジャム検出時にキャリッジ22がキャッピングされない反ホーム位置で待機したときをクリーニング実施条件とし、かつその待機時間に応じてクリーニング実施の可否を決めるとともに、実施する場合のクリーニングのレベルを待機時間に応じて変化させる点が、前記各実施形態と異なる。なお、プリンター11の構成は基本的に第1実施形態と同様なので、特に異なる構成のみ説明する。
【0095】
紙ジャム検出時にキャリッジ22が反ホーム位置で待機する場合、図5に示す計時部90は、キャリッジ22が反ホーム位置で待機する待機時間Tを計時する。そして、図5に示す時間判定手段の一例としての第6判定部96は、キャリッジ22の反ホーム位置での待機時間Tが、設定時間以上になったか否かを判定する。本実施形態では、複数の設定時間T1,T2を設定している。第6判定部96は、待機時間Tが第1設定時間T1以上(T≧T1)であるか否かを判定し、T≧T1である場合にはさらに待機時間Tが第2設定時間T2以上(T≧T2)であるか否かを判定する。つまり、第6判定部96は、待機時間Tが、第1設定時間T1未満か(T<T1)、第1設定時間T1以上かつ第2設定時間T2未満か(T1≦T<T2)、第2設定時間T2以上(T≧T2)かの3つの設定時間範囲のいずれに属するかを判定する。
【0096】
図5に示すクリーニング制御部88は、そのメモリーにクリーニングテーブルCT(図5参照)を記憶している。クリーニングテーブルCTは、3つの設定時間範囲とクリーニングのレベルとの対応関係を示すテーブルデータである。例えば待機時間TがT<T1を満たす設定時間範囲にあるときは、クリーニング非実施が設定されている。また、待機時間TがT1≦T<T2を満たす設定時間範囲にあるときは、弱めのクリーニングレベルである第1クリーニングが設定されている。さらに待機時間TがT≧T2を満たす設定時間範囲にあるときは、強めのクリーニングレベルである第2クリーニングが設定されている。
【0097】
以下、図12に示すフローチャートに従ってプリンター11の作用を説明する。ジャム検出部83が紙ジャムを検出すると、CPU61が図12のフローチャートで示されるプログラムを実行する。
【0098】
図12におけるステップS31〜ステップS35の各処理は、図8におけるステップS4〜ステップS8の各処理と同様である。本実施形態では、紙ジャム要因の判定はしておらず、紙ジャム発生時は、まずステップS31において、紙ジャム発生時のキャリッジ移動方向を判定する。紙ジャム発生時のキャリッジ移動方向が、1桁側から80桁側へ向かう方向(往動方向)であると判定された場合は、ステップS32に進む。そして、ステップS32において、キャリッジ22を紙ジャム発生時の移動方向と逆方向である1桁側へ移動させてホーム位置に待機させる。このとき、キャリッジ22のホーム位置への移動に伴いキャップ36が上昇して印刷ヘッド26のノズル形成面26aに当接することで、印刷ヘッド26がキャッピングされる。そして、ステップS33において、印刷継続の指示があると、当該ルーチンを終了する。つまり、1桁側へ移動してホーム位置で待機し印刷ヘッド26がキャッピングされている場合は、ノズル26b内のインクが噴射ミスを誘発するほど乾燥する心配はないので、クリーニングを実施しない。
【0099】
一方、ステップS31において、紙ジャム発生時のキャリッジ移動方向が、80桁側から1桁側へ向かう方向(復動方向)であると判定された場合は、ステップS34に進む。そして、ステップS34において、キャリッジ22を紙ジャム発生時の移動方向と逆方向である80桁側へ移動させて反ホーム位置に待機させる。このとき、印刷ヘッド26はキャッピングされない。非キャッピング状態の印刷ヘッド26では、ノズル26b内のインクが時間の経過と共に徐々に乾燥する。このため、反ホーム位置で印刷ヘッド26が非キャッピング状態で待機する待機時間Tが、ある閾値を超えると、ノズル26b内のインクが噴射ミスを誘発するほど乾燥する虞がある。そして、紙ジャムを解消したユーザーが操作部16を操作して印刷の継続を指示することにより、ステップS35において印刷継続の指示があると、ステップS36に進む。
【0100】
本実施形態では、キャリッジ22が反ホーム位置に到達してからの待機時間T(つまりキャリッジ退避後における非キャッピング状態での経過時間)を計時部90が計時している。ステップS36では、待機時間Tが設定時間T1以上(T≧T1)であるか否かを判定する。T≧T1が不成立である場合、つまりT<T1である場合は当該ルーチンを終了する。つまり、待機時間Tが設定時間T1未満の範囲にある場合は、ノズル26b内のインクが噴射ミスを誘発するほど乾燥していないので、クリーニングは実施しない。一方、T≧T1が成立する場合はステップS37に進む。
【0101】
ステップS37では、待機時間Tが設定時間T2以上(T≧T2)であるか否かを判定する。T≧T2が不成立である場合、つまり待機時間Tが設定時間T1以上かつ設定時間T2未満の範囲(T1≦T<T2)にある場合はステップS38に進んで、弱いレベルの第1クリーニングを実施する。一方、ステップS37においてT≧T2が成立する場合、つまり待機時間Tが設定時間T2以上の範囲にある場合はステップS39に進んで、強いレベルの第2クリーニングを実施する。
【0102】
以上、詳述したように、第3実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(5)紙ジャム検出時に、キャリッジ22が、印刷ヘッド26がキャッピングされない反ホーム位置で待機したときにクリーニングを実施し、キャリッジ22が、印刷ヘッド26がキャッピングされるホーム位置で待機したときにクリーニングを実施しない。よって、印刷ヘッド26がキャッピングされてノズル26b内のインクの乾燥の心配がないホーム位置でキャリッジ22が待機する際は、不要なクリーニングの実施を回避し、クリーニングによるインク消費量の不要な増加を回避できる。
【0103】
(6)紙ジャム検出時に、キャリッジ22が、反ホーム位置(非キャッピング位置)で待機するときでも、その待機時間Tが設定時間T1未満であるときには、クリーニングを実施しない。よって、クリーニングの実施回数を極力減らし、クリーニングによるインク消費量を極力少なく抑えることができる。
【0104】
(7)紙ジャム検出時に、キャリッジ22が、反ホーム位置で待機するとき、その待機時間Tが設定時間T1以上かつ設定時間T2未満の範囲(T1≦T<T2)にあるときは、弱いレベルの第1クリーニングを実施し、その待機時間Tが設定時間T2以上の範囲(T≧T2)にあるときには、強いレベルの第2クリーニングを実施する。よって、クリーニング実施時に適切なインク吸引量で適切なクリーニングを実施できるうえ、インク消費量が無駄に増える事態を回避しつつ、ノズル26b内のインクの乾燥に起因する噴射ミスの誘発をより効果的に防止できる。
【0105】
前記各実施形態に限定されず、以下の態様で実施することもできる。
・前記第1実施形態では、用紙の搬送位置が片支持範囲か両支持範囲かに応じてクリーニングを実施するか否かを決めたが、搬送位置yに関係なくCRモーターエラーによる紙ジャム発生時には常にクリーニングを実施する構成としてもよい。この構成によっても、PFモーターエラー及び紙端非検出が要因の紙ジャム検出時には、無駄なクリーニングを実施しないので、クリーニングによるインク消費量をなるべく少なく抑えることができる。
【0106】
・第2実施形態において、ステップS16とS19の間、ステップS18とS21の間に、第1実施形態におけるステップS9と同様の処理を行う構成も採用できる。この場合、用紙位置が片支持範囲にあって(S9と同様の処理で工程判定)、ジャム検出時のキャリッジ位置が用紙の1桁側端より設定距離LX以上80桁側にある場合(S19で肯定判定)と、ジャム検出時のキャリッジ位置が用紙の80桁側端より設定距離LX以上1桁側にある場合(S21で肯定判定)に、クリーニングが実施される。よって、用紙位置が両支持範囲にあるときにはクリーニングは実施されず、さらに用紙位置が片支持範囲にあっても、ジャム検出時のキャリッジ位置が用紙の1桁側端より設定距離LX以上80桁側にない場合(S19で否定判定)と、ジャム検出時のキャリッジ位置が用紙の80桁側端より設定距離LX以上1桁側にない場合(S21で否定判定)には、クリーニングが実施されない。
【0107】
・第2実施形態では、設定距離を「LX」1つのみとしたが、設定距離を複数設定し、用紙の端からの紙ジャムで停止したキャリッジ位置までの距離が設定距離以上となるキャリッジ位置に応じて、クリーニングのレベルを変更してもよい。
【0108】
・第3実施形態において、設定時間の設定数や設定時間範囲の設定数は、適宜変更できる。例えば設定時間を1つだけ設定して2つの設定時間範囲を設定し、待機時間Tに応じてクリーニング実施の可否を決め、実施する場合に1つのレベルのクリーニングを実施する構成や、設定時間を3つ以上設定して、待機時間Tが属する設定時間範囲に応じて、クリーニング実施の可否を決め、実施する場合のクリーニングのレベルを3段階以上のうちから選択する構成も採用できる。
【0109】
・前記第3実施形態において、キャリッジモーターの負荷(例えばトルク)を監視し、紙ジャムの発生と推定される余分な負荷が加わったことをもって、紙ジャムを検出する構成も採用できる。
【0110】
・第2実施形態において紙幅センサー79を備えないプリンターでは、印刷データに印刷条件情報の1つとして含まれる用紙サイズの情報を用いて用紙Pの端E1,E2の位置を取得してもよい。すなわち、用紙サイズが決まれば用紙Pの端E1,E2の位置は一義的に決まるので、用紙サイズの情報を基にテーブルの参照、あるいは計算により、用紙Pの端E1,E2の位置を取得すればよい。
【0111】
・前記各実施形態では、コンピューター内に構築される機能ブロック(図5)を、CPUがプログラムを実行することによるソフトウェアで実現したが、これに限定されず、例えばコンピューター内の電子回路によるハードウェアで実現してもよい。さらにソフトウェアとハードウェアとの協働により実現してもよい。
【0112】
・印刷媒体は、単票紙(カット紙)に限らず、ロール紙でもよい。また、印刷媒体は、紙に限定されず、フィルム、シート、金属、布などでもよい。
・前記各実施形態では、インクジェット式のプリンター11(印刷装置)が採用されているが、印刷装置として、インク以外の他の液体(液状体)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置を採用してもよい。ここでいう「印刷」とは、インク等の液体を噴射して印刷画素を形成する画像や文書などの印刷に限定されず、広く「液体を噴射してその噴射された液体を媒体に付着させること」、を広く「印刷」と定義する。この意味において、印刷装置は、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置を広く含む。この場合、液滴とは、上記液体噴射装置から噴射される液体の状態を言い、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。液体の代表的な例としてはインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置が挙げられる。また、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板(印刷媒体)などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0113】
11…印刷装置(液体噴射装置)としてのプリンター、16…指示手段の一例としての操作部、22…キャリッジ、25…駆動手段の一例であるキャリッジモーター、26…液体噴射ヘッドの一例である印刷ヘッド、26a…ノズル形成面、26b…ノズル、29…リニアエンコーダー、31…給送モーター、32…搬送手段の一例を構成する搬送モーター、33…搬送手段の一例を構成するとともに上流側の搬送ローラーの一例である搬送ローラー対、34…搬送手段の一例を構成するとともに下流側の搬送ローラーの一例である排出ローラー対、35…クリーニング手段の一例であるメンテナンス装置、36…キャッピング手段の一例を構成するキャップ、キャッピング手段の一例が構成される、38…吸引ポンプ、50…コントローラー、52…ヘッド駆動回路、53〜55…モーター駆動回路、61…CPU、62…ASIC、64…不揮発性メモリー、70…キャッピング手段の一例を構成する昇降装置、72…スライダー、77…ロータリーエンコーダー、78…紙検出器、79…紙幅センサー、80…主制御部、81…用紙位置検出部、82…キャリッジ位置検出手段の一例であるCR位置検出部、83…ジャム検出手段の一例であるジャム検出部、85…ヘッド制御部、86…キャリッジ制御手段の一例であるCR制御部、87…搬送制御部、88…クリーニング制御手段の一例としてのクリーニング制御部、90…計時部、91…第1判定部、92…方向判定手段の一例としての第2判定部、93…第3判定部、94…判定手段の一例としての第4判定部、95…キャリッジ位置判定手段の一例としての第5判定部、96…時間判定手段の一例としての第6判定部、97…PF検出部、98…紙端検出部、99…検出手段の一例としてのCR検出部、100…ホスト装置、P…印刷媒体の一例である用紙、X…主走査方向、Y…搬送方向(副走査方向)、y…搬送位置、Y1,Y2…搬送位置、L,L1,L2…距離、LX…設定距離、T…待機時間、T1…設定時間の一例である第1設定時間、T2…設定時間、E1…1桁側端、E2…80桁側端。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッドを有するキャリッジを移動させる駆動手段と、
前記液体噴射ヘッドをクリーニングするクリーニング手段と、
前記キャリッジの移動速度が印刷媒体のジャムが発生したと推定される設定速度以下に低下したことをもって前記ジャムを検出する検出手段と、
前記駆動手段を制御して前記キャリッジを移動させるとともに、前記検出手段が前記ジャムを検出すると、前記駆動手段の駆動を停止させて前記キャリッジの移動を停止させる制御手段と、
前記ジャムの解消後に印刷継続の指示を与えるために操作される指示手段と、
前記指示手段から印刷継続の指示が与えられると、前記クリーニング手段に前記液体噴射ヘッドのクリーニングを実施させるクリーニング制御手段と
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記印刷媒体を前記キャリッジの移動方向と交差する搬送方向に搬送するとともに、前記液体噴射ヘッドに対して前記搬送方向の上流側と下流側に一対の搬送ローラーを有する搬送手段と、
前記検出手段が前記印刷媒体のジャムを検出した場合、前記印刷媒体が前記一対の搬送ローラーのうちの一方のみに支持された片支持状態にあるか、前記印刷媒体が前記一対の搬送ローラーの両方に支持された両支持状態にあるかを判定する判定手段とを、更に備え、
前記指示手段から印刷継続の指示が与えられた場合、前記クリーニング制御手段は、前記判定手段により前記印刷媒体が前記片支持状態にあると判定された場合は前記クリーニング手段にクリーニングを実施させ、一方、前記両支持状態にあると判定された場合は前記クリーニング手段にクリーニングを実施させないことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記キャリッジの移動方向における位置を検出するキャリッジ位置検出手段と、
前記印刷媒体におけるキャリッジ移動開始位置側の端位置から前記ジャムの検出時に停止した前記キャリッジの位置までの距離が閾値を超えるか否かを判定するキャリッジ位置判定手段と、を更に備え、
前記指示手段から印刷継続の指示が与えられた場合、前記クリーニング制御手段は、前記距離が前記閾値を超えると判定された場合は前記クリーニング手段にクリーニングを実施させ、一方、前記距離が前記閾値以下であると判定された場合は前記クリーニング手段にクリーニングを実施させないことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
印刷媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッドを有するキャリッジを移動させる駆動手段と、
前記液体噴射ヘッドをクリーニングするクリーニング手段と、
前記印刷媒体のジャムを検出するジャム検出手段と、
前記キャリッジの移動方向を判定する方向判定手段と、
前記駆動手段を制御して前記キャリッジを移動させるとともに前記ジャム検出手段が前記ジャムを検出すると、前記方向判定手段により判定されたジャム検出時における前記キャリッジの移動方向と逆方向へ前記キャリッジを退避させるキャリッジ制御手段と、
前記キャリッジの移動経路の一端部に設けられて前記液体噴射ヘッドのキャッピングが可能なキャッピング手段と、
前記ジャムの解消後に印刷継続の指示を与えるために操作される指示手段と、
前記指示手段から印刷継続の指示が与えられると、前記キャリッジが前記キャッピング手段と反対側の位置に退避している場合は、前記クリーニング手段に前記液体噴射ヘッドのクリーニングを実施させ、一方、前記キャリッジが前記キャッピング手段側の位置に退避している場合は、前記クリーニング手段に前記液体噴射ヘッドのクリーニングを実施させないクリーニング制御手段と
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
前記キャッピング手段と反対側の位置に退避した前記キャリッジの待機時間が、設定時間以上であるか否かを判定する時間判定手段を更に備え、
前記クリーニング制御手段は、前記時間判定手段により前記待機時間が前記設定時間以上であると判定された場合、前記クリーニング手段に前記液体噴射ヘッドのクリーニングを実施させることを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記クリーニング制御手段は、前記時間判定手段により前記待機時間が第1設定時間以上かつ第2設定時間未満であると判定された場合、前記クリーニング手段に第1クリーニングを実施させ、前記待機時間が前記第2設定時間以上であると判定された場合、前記クリーニング手段に前記第1クリーニングよりも強い第2クリーニングを実施させることを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
キャリッジを往復移動させつつ液体噴射ヘッドから液体を印刷媒体に噴射して印刷を施す印刷方法であって、
前記キャリッジの移動速度が印刷媒体のジャムが発生したと推定される設定速度以下に低下したことをもってジャムを検出する検出ステップと、
前記検出ステップで前記ジャムが検出されると、前記キャリッジの移動を停止させる制御ステップと、
前記ジャムの解消後に指示手段から印刷継続の指示が与えられると、クリーニング手段に前記液体噴射ヘッドのクリーニングを実施させるクリーニング制御ステップと
を備えたことを特徴とする印刷方法。
【請求項8】
キャリッジを往復移動させつつ液体噴射ヘッドから液体を印刷媒体に噴射して印刷を施す印刷方法であって、
前記印刷媒体のジャムを検出するジャム検出ステップと、
前記キャリッジの移動方向を判定する方向判定ステップと、
前記ジャム検出ステップで前記ジャムを検出すると、前記方向判定ステップで判定されたジャム検出時における前記キャリッジの移動方向と逆方向へ前記キャリッジを退避させるキャリッジ制御ステップと、
前記ジャムの解消後に指示手段から印刷継続の指示が与えられると、前記キャリッジが、前記キャリッジの移動経路の一端部に設けられて前記液体噴射ヘッドのキャッピングが可能なキャッピング手段と反対側の位置に退避している場合は、クリーニング手段に前記液体噴射ヘッドのクリーニングを実施させ、一方、前記キャリッジが前記キャッピング手段側の位置に退避している場合は、前記クリーニング手段に前記液体噴射ヘッドのクリーニングを実施させないクリーニング制御ステップと
を備えたことを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−67085(P2013−67085A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207469(P2011−207469)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】