説明

印刷装置

【課題】
予め設定された時間内に所定の数の印刷ジョブが印刷されると、印刷ジョブの受付と印刷を停止することで複数ユーザによる印刷ジョブの印刷結果が大量に排紙トレイに溜まることを軽減することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】
印刷装置200は、パーソナルコンピュータ100より受信した印刷ジョブを印刷することができ、所定の時間と回数とが予め記憶され、印刷が終了した印刷ジョブの数が計数され、そして、所定の時間内に印刷が終了して計数された印刷ジョブの数が所定の回数以上になると印刷が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、社内に張りめぐらされた通信網によって、1つの印刷装置を複数のパーソナルコンピュータ(印刷依頼装置)で共用するネットワークプリンタと呼ばれる技術が存在する。
【0003】
1つの印刷装置が共用されると、複数のパーソナルコンピュータから印刷ジョブが次々に送られ、図4に示すように、印刷装置の排紙トレイに排紙される印刷結果が大量に排紙され、ジョブ毎の印刷結果の区分けが困難となっていた。
【0004】
このような状態では、他人の印刷結果を間違って持って帰ってしまう問題も生じてしまう。
【0005】
これに対して、特許文献1では、前回印刷した印刷データのホストと異なるホストの印刷データを印刷する際には、印刷結果をオフセット出力するように制御して、複数ホストからの印刷結果の仕分け作業を容易にする印刷方法及びその装置が提案されている。
【特許文献1】特開平5−224842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術では、オフセット機能を備えた印刷装置にしか適用することができない。
【0007】
そして、他人の印刷結果を間違って持って帰ってしまう問題は、印刷装置の排紙トレイに大量の印刷結果が蓄積されることにその原因のひとつがあると想到できる。
【0008】
そこで、この発明は、予め設定された時間内に所定の量の印刷ジョブの印刷を行うと、印刷ジョブの受付と印刷を停止することで、複数ユーザの印刷結果が排紙トレイに蓄積されることを軽減することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する為、請求項1の発明は、印刷装置は、印刷依頼装置から受信した印刷依頼に基づき印刷を実行する印刷実行手段と、所定の時間と回数とを記憶する記憶手段と、前記印刷実行手段によって印刷が終了した印刷依頼の数を計数する計数手段と、前記記憶手段で記憶された前記所定の時間内に、前記計数手段により計数される計数値が前記記憶手段で記憶された前記回数以上になると、前記印刷依頼装置からの印刷依頼に基づく印刷を抑制する印刷抑制状態に制御する印刷制御手段とを備えるように構成される。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記印刷制御手段は、前記印刷抑制状態として前記印刷依頼装置からの印刷依頼の受信を禁止する受信禁止状態に制御する。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記印刷抑制状態の解除を受け付ける解除受付手段と、前記解除受付手段による前記解除の受け付けにより前記計数手段の計数値を初期値に戻して前記印刷制御手段による前記印刷抑制状態を解除する印刷抑制解除手段とを備える。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、複数ユーザの印刷ジョブの印刷結果が印刷装置の排紙トレイに大量に蓄積されることを軽減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係わる印刷装置の実施例について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係わる印刷装置200で構成される印刷システムの概略を示す構成図である。
【0015】
この印刷システムは、パーソナルコンピュータ100、印刷装置200が通信回線10によって接続されている。
【0016】
パーソナルコンピュータ(以下、PCという)100は通信回線10にPC100−1、PC100−2、・・・PC100−nというように複数のPC100が接続される。
【0017】
複数のPC100−1、PC100−2、・・・PC100−nは、それぞれ同じ構成と同じ機能とを有し、PC100はそれらを総称した名称である。
【0018】
PC100は、印刷ジョブを生成して、生成した印刷ジョブを印刷装置200に送信する。
【0019】
印刷装置200は、PC100から送信された印刷ジョブを受け付けて、その印刷ジョブを紙面に印刷する処理を行う。
【0020】
このように構成される印刷システムでは、PC100から印刷ジョブが印刷装置200に送信されると、印刷装置200で印刷ジョブの印刷が行なわれて排紙トレイに印刷結果が排紙されるのであるが、印刷装置200で予め設定されていた時間内に所定の数の印刷ジョブが印刷されると、印刷装置200はそれ以降印刷ジョブの受付をストップする等印刷を抑制して、排紙トレイに複数ユーザの印刷結果が溜まらないようにする。
【0021】
ただし、同じユーザから連続して送られる複数の印刷ジョブは、1つの印刷ジョブとして数えられる。
【0022】
その結果、排紙トレイに複数ユーザの印刷結果が大量に溜まることを軽減することができて、誤って他人の印刷結果を持って行く問題や、大量の印刷結果の中から自分の印刷結果を1枚1枚めくって探す手間が生じる問題の発生を低減することができる。
【0023】
次に、印刷装置200の構成と機能について図2を参照して説明を行なう。
【0024】
図2は、印刷装置200の構成と機能について示したブロック図である。
【0025】
印刷装置200は、通信インタフェース部(以下、図面と共に通信I/F部という)201、制御部202、メモリ203、操作/表示部204、プリントエンジン205を備える。
【0026】
通信I/F部201は、通信回線10と接続されて、PC100と様々な情報の授受を行なう。
【0027】
制御部202は、印刷装置200の統括的な制御を行い、印刷ジョブを受け付けた後、予め設定されていた時間内に所定の数の印刷ジョブが印刷されると、それ以降印刷ジョブの受付を停止する(ディセレクト状態)制御やメモリに蓄積した印刷待ちの印刷ジョブがある場合もその印刷待ちの印刷ジョブの印刷を停止する制御を行なう。
【0028】
制御部202は、その制御機能として、印刷ジョブ受付部206、ユーザID読取部207、ジョブカウント部208、ジョブ受付停止決定部209、時間計測部210を有する。
【0029】
制御部202内の印刷ジョブ受付部206は、印刷ジョブを受け付けると、印刷ジョブをプリントエンジン205に送り印刷を実行させ、また、ユーザID読取部207に印刷ジョブのユーザIDを読取らせ、印刷ジョブを受信した信号をジョブカウント部208に送り、該印刷ジョブが受信した印刷ジョブをカウントする最初の印刷ジョブである場合には時間計測部210にも印刷ジョブを受信した信号を送信する。
【0030】
制御部202内のユーザID読取部207は、印刷ジョブ受付部206が受け付けた印刷ジョブのユーザIDを読取る処理を行なう。
【0031】
制御部202内のジョブカウント部208は、印刷ジョブ受付部206から送られる信号を元に、印刷ジョブ受付部206が受け付けた印刷ジョブの数を計数する。
【0032】
制御部202内のジョブ受付停止決定部209は、時間計測部210で計測された時間内でジョブカウント部208で計数された印刷ジョブの数がメモリ203内の設定記憶部211内に設定された設定内容のジョブ数を超えたかどうかを確認して、印刷ジョブの受付の停止についての判断を行なう。
【0033】
制御部202内の時間計測部210は、設定記憶部211に設定が行われた後に最初に印刷ジョブを受信してからの時間を計測する。
【0034】
メモリ203は、情報を記憶する記憶装置であり、メモリ203内の設定記憶部211内にユーザより設定される内容を記憶し、また、プリンタエンジン205が印刷中で印刷ジョブ受付部206が受け付けた印刷ジョブを印刷待ちの為にメモリ203に一時記憶させる際にその印刷ジョブを記憶する。
【0035】
ユーザより設定される内容は、時間と印刷ジョブの数とであり、設定記憶部211内に設定された時間と印刷ジョブの数とに基づいて、ジョブ受付停止決定部209が印刷停止の判断を行なう。
【0036】
操作/表示部204は、印刷装置200の情報をユーザに表示しまたユーザの要求を受け付けるユーザインタフェースの役割を果たす。
【0037】
また、操作/表示部204は、解除スイッチ212を有し、印刷装置200が印刷ジョブの受付を停止して印刷停止状態になっているときに解除スイッチ212が押下されることで、印刷ジョブ受付停止と印刷停止との状態が解除される。
【0038】
このように構成される印刷装置200は、設定記憶部211に記憶された設定内容に基づいて、設定内容に記憶された時間内に印刷された印刷ジョブの数が設定内容に記憶された数より多くなった場合には、印刷装置200の印刷ジョブ受付停止と印刷停止とが行なわれ、印刷が抑制された状態となる。
【0039】
所定の時間内に所定の印刷ジョブの印刷が行なわれると印刷装置200の排紙トレイに印刷結果が排紙されるが、印刷装置200の印刷ジョブ受付停止と印刷停止とが行なわれることで、排紙トレイにそれ以上の印刷結果が排紙されることを防ぐことが行なわれ、排紙トレイに複数ユーザによる大量の印刷結果が蓄積されることを軽減することができる。
【0040】
次に、印刷装置200で行なわれる処理フローについて図3を参照して説明を行なう。
【0041】
図3は、印刷装置200で行なわれる処理フローを示すフローチャートである。
【0042】
まず、印刷装置200では、ユーザが操作/表示部204を操作して、何分以内にいくつの印刷ジョブを印刷すると印刷ジョブの受付停止と印刷停止とを行なうようにするかの設定が行われる(ステップ301)。
【0043】
操作/表示部204で操作されて入力された時間と印刷ジョブ数がメモリ203内の設定記憶部211に記憶される。
【0044】
そして、PC100から印刷ジョブが印刷装置200に送信されて、印刷装置200が印刷ジョブを受信すると(ステップ302)、制御部202内の時間計測部210が時間の計測を開始する(ステップ303)。
【0045】
受信した印刷ジョブは、制御部202内のユーザID読取部207によって印刷ジョブのユーザIDが読取られて、そして、印刷ジョブ受付部206からプリントエンジン205に送られ、プリントエンジン206で印刷が行なわれる(ステップ305)。
【0046】
プリントエンジン206で印刷が終わるとプリントエンジン205より制御部202に印刷終了信号が送信され、制御部202内のジョブカウント部208で印刷を終了した印刷ジョブの数が1カウントされる。
【0047】
カウントされた数は制御部202内の図示しないキャッシュメモリ或いはメモリ203に記憶され、また、印刷を終了した印刷ジョブのユーザIDが制御部202のキャッシュメモリ或いはメモリ203に記憶される。
【0048】
印刷ジョブの数がカウントされると、ジョブ受付停止決定部209が設定記憶部211に記憶された設定内容を確認して、設定された時間内に設定された印刷ジョブ数以上の印刷ジョブの印刷が行なわれたかにより印刷ジョブ受付停止と印刷停止とを実行するか否かの判断を行なう(ステップ307)。
【0049】
ジョブ受付停止決定部209によって、印刷ジョブ受付停止と判断されなかった場合には(ステップ307でNO)、次の印刷ジョブの受信を待つ(ステップ308でNO)。
【0050】
そして、次の印刷ジョブを受信すると(ステップ308でYES)、受信した印刷ジョブのユーザIDがユーザID読取部207で読取られ(ステップ309)、その印刷ジョブがプリントエンジン205に送られて印刷が行なわれる(ステップ310)。
【0051】
印刷が終了すると、プリントエンジン205から制御部202に印刷終了信号が送られるが、ステップ309で読取られたユーザIDが前回印刷された印刷ジョブのユーザIDと違う場合に(ステップ311でNO)、ジョブカウント部208で1カウントされて印刷完了済みの印刷ジョブの数が計数される(ステップ312)。
【0052】
前回印刷された印刷ジョブのユーザIDは、制御部202内のキャッシュメモリ或いはメモリ203に記憶されているので、それが読み出されて比較が行なわれる。
【0053】
また、ステップ309で読取られたユーザIDが前回印刷された印刷ジョブのユーザIDと同じ場合には(ステップ311でYES)、ジョブカウント部208でのカウントは行なわれず、この場合の印刷は、印刷完了済みの印刷ジョブの数に計数されない。
【0054】
このように制御されるのは、同じユーザIDからの印刷ジョブの印刷が連続して行なわれた場合には、排紙トレイには同じユーザの印刷結果が連続して排紙されて同じユーザの複数の印刷ジョブの印刷結果が重なって蓄積され他人の印刷結果と間違う可能性が少ないので、同じユーザIDの印刷ジョブが連続して続いた場合には印刷完了済みの印刷ジョブの数として計数されないようにされる。
【0055】
このように制御が行なわれて印刷ジョブの印刷が繰り返し行なわれた後に(ステップ307でNO、ステップ308でYES、ステップ309、ステップ310、ステップ311でNO、ステップ312、以上のステップの繰り返し)、設定記憶部211で設定された設定内容の時間以内にジョブカウント部208で計数された印刷ジョブの数が設定記憶部211で設定された印刷ジョブの数以上になると(ステップ307でYES)、設定内容以上の印刷ジョブが印刷されたとしてジョブ受付停止決定部209が印刷受付停止と印刷停止との印刷抑制状態することを決定し、印刷装置200は印刷ジョブを受け付けない状態(ディセレクト状態)となり、また、メモリ203に印刷待ちの為に蓄積された印刷ジョブがあったとしてもその印刷ジョブの印刷も行なわれない状態となる(ステップ313)。
【0056】
新たな印刷ジョブを受け付けないで印刷待ちの印刷ジョブの印刷も行なわれない印刷抑制状態となったら(ステップ313)、解除スイッチ212が押下されるまで(ステップ314でYES)印刷ジョブの受付停止と印刷停止とが継続される(ステップ314でNO)。
【0057】
解除スイッチ212が押下されるタイミングは、印刷ジョブを送信したユーザが印刷結果を排紙トレイに取りにきて、印刷結果を排紙トレイから持ち出した後である。
【0058】
ユーザによって排紙トレイに蓄積された印刷結果が持ち出されて解除スイッチ212の押下が行なわれると(ステップ314でYES)、印刷装置200は、ジョブカウント部208でカウントされる印刷ジョブの数を0にリセットして時間計測部210で計測される時間を0にリセットして、操作/表示部204で最初の設定が行なわれるステップ301の処理から再スタートする。
【0059】
なお、ユーザによって解除スイッチ212の押下が行なわれたときに、メモリ203に印刷待ちの印刷ジョブが存在していた場合には、解除スイッチ212の押下と同時にジョブカウント部208でカウントされる印刷ジョブの数が0にリセットされてまた時間計測部210で計測される時間が0にリセットされた後に印刷待ちの印刷ジョブの印刷が開始される。
【0060】
印刷が開始されると同時に時間計測部210で時間の計測が開始される。
【0061】
そして、その印刷ジョブの完了とともにプリントエンジン205から制御部202に印刷終了信号が送信されるので、その時点でジョブカウント部208が1カウントを行い、印刷完了済みの印刷ジョブの数の計数が行なわれる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
この発明は、複数の印刷依頼装置から印刷依頼を受け付ける印刷装置において利用可能である。
【0063】
この発明によれば、印刷装置の排紙トレイに複数ユーザによる大量の印刷結果が蓄積されないように、設定された所定の時間内に所定の印刷ジョブ数の印刷が行なわれると新たな印刷ジョブの受付の停止と印刷待ちの印刷ジョブの印刷も停止されて、排紙トレイへの印刷結果の排紙が行なわれない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】印刷装置200で構成される印刷システムの概略を示す構成図。
【図2】印刷装置200の構成と機能について示したブロック図。
【図3】印刷装置200で行なわれる処理フローを示したフローチャート。
【図4】従来の印刷装置の排紙トレイに蓄積される複数ユーザによる印刷結果。
【符号の説明】
【0065】
10 通信回線
100、100−1、100−2、・・・100−n パーソナルコンピュータ
200 印刷装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷依頼装置から受信した印刷依頼に基づき印刷を実行する印刷実行手段と、
所定の時間と回数とを記憶する記憶手段と、
前記印刷実行手段によって印刷が終了した印刷依頼の数を計数する計数手段と、
前記記憶手段で記憶された前記所定の時間内に、前記計数手段により計数される計数値が前記記憶手段で記憶された前記回数以上になると、前記印刷依頼装置からの印刷依頼に基づく印刷を抑制する印刷抑制状態に制御する印刷制御手段と
を備える印刷装置。
【請求項2】
前記印刷制御手段は、
前記印刷抑制状態として前記印刷依頼装置からの印刷依頼の受信を禁止する受信禁止状態に制御する請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷抑制状態の解除を受け付ける解除受付手段と、
前記解除受付手段による前記解除の受け付けにより前記計数手段の計数値を初期値に戻して前記印刷制御手段による前記印刷抑制状態を解除する印刷抑制解除手段と
を備える請求項1記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−55766(P2008−55766A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235548(P2006−235548)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】