説明

印刷装置

【要 約】
【課題】吐出液の溶存気体濃度を低コストで低下させることができる技術を提供する。
【解決手段】この印刷装置10では、インクジェットヘッド15に吐出液を供給する供給タンク14と、吐出液が蓄液されたメインタンク11との間を接続する主配管25aに脱気装置16を設け、脱気装置16で脱気された吐出液が供給タンク14に供給されており、切替バルブ30によって脱気された吐出液を補助タンク12に移動させる。メインタンク11の吐出液が補助タンク12に移動されると、補助タンク12の吐出液は、戻り配管25bを通してメインタンク11に戻す。吐出液は脱気装置16を通過するたびに溶存気体濃度を低下させることができる。メインタンク11に溶存気体濃度測定装置23を接続し、測定値が基準値以下になるまで繰り返し脱気装置16を通過させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置の技術分野に係り、特に、吐出液中の溶存気体を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のスペーサの散布やカラーフィルタの作成に、インクジェット方式の印刷装置が用いられている。
【0003】
図2の符号110は従来技術の印刷装置であり、メインタンク111内に吐出液105が蓄液されている。
メインタンク111は供給タンク114に接続されている。
メインタンク111と供給タンク114は、ガス供給系121と真空排気系131にそれぞれ接続されており、真空排気系131によって供給タンク114の内部を減圧しながら、ガス供給系121から供給される圧送ガスによってメインタンク111の内部を昇圧すると、メインタンク111内部の吐出液は、供給タンク114に圧送されるようになっている。
【0004】
供給タンク114は、インクジェットヘッド115に接続されており、供給タンク114からインクジェットヘッド115に吐出液が供給される。インクジェットヘッド115の底面には吐出孔が設けられており、インクジェットヘッド115の内部には、吐出孔毎に圧電素子が設けられている。
【0005】
インクジェットヘッド115を印刷対象物上に配置し、インクジェットヘッド115の内部に吐出液を流しながら圧電素子に電圧を印加すると、吐出孔から吐出液が吐出され、印刷対象物に着弾すると印刷が行なわれる。
【0006】
図中、符号134は廃液トレイであり、ノズル孔をクリーニングする際には、インクジェットヘッド115を廃液トレイ134上に配置し、ノズル孔から吐出液を吐出する。
廃液トレイ134に着弾した吐出液は廃液タンク113に蓄液される。
吐出液には気体が溶存しており、溶存濃度が高いとインクジェットヘッド115中で気泡が発生し、吐出液の正常な吐出が行なえなくなる。
【0007】
この印刷装置110ではメインタンク111と供給タンク114とを接続する主配管125に脱気装置116が設けられており、脱気ポンプ153によって脱気装置116内を真空排気すると、メインタンク111から供給タンク114に移動する吐出液が脱気装置116の内部を通過する際に溶存気体が真空脱泡され、供給タンク114に供給される吐出液の溶存気体濃度が低下するようになっている。
【0008】
しかし、メインタンク111の内部の吐出液が長時間蓄液されたままの状態であると、吐出液中の溶存気体濃度が上昇し、脱気装置116では十分脱気できなくなる。
脱気装置116を大型化したり、メインタンク111内部の吐出液を廃棄すれば上記問題は解決し得るが、コスト高になってしまう。
【特許文献1】特開2005−231351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は上記のような溶存気体濃度を低コストで低下させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、吐出液を蓄液するメインタンクと、インクジェットヘッドに前記吐出液を供給する供給タンクとを接続する主配管の途中に脱気装置を設けたインクジェット印刷装置であって、前記脱気装置と前記供給タンクの間に分岐配管を接続し、切替バルブの切替によって、前記脱気装置内を通過した前記吐出液を前記分岐配管内を流して補助タンクに移動可能に構成し、前記補助タンクと前記メインタンクの間に戻り配管を設けて、前記補助タンク内の前記吐出液を前記メインタンク内に移動できるように構成された印刷装置である。
また、本発明は、ガス導入系と大気開放系とを有し、前記メインタンクと前記補助タンクはそれぞれ前記ガス導入系と前記大気開放系に接続され、内部を大気に接続する開放状態と、前記ガス導入系から内部に圧送気体を導入する昇圧状態にもできるように構成された印刷装置である。
また、本発明は、前記メインタンクには、溶存気体濃度測定装置が設けられた印刷装置である。
また、本発明は、前記溶存気体濃度測定装置の測定値が予め設定された基準値以下になるまで、前記吐出液は前記メインタンクから前記補助タンクに向けて、前記脱気装置を通って繰り返し移動するように構成された印刷装置である。
【発明の効果】
【0011】
溶存気体による気泡の発生を防止し、吐出液の吐出ミスを低コストで減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明の印刷装置10の、特に吐出液循環系の一例を示している。
この印刷装置10は、メインタンク11と、補助タンク12と、廃液タンク13と、供給タンク14とを有している。
印刷装置10の外部には、ガス供給系21と大気開放系31が配置されている。
【0013】
ガス供給系21には、ガス供給配管28の一端が接続されており、ガス供給配管28の他端は分岐され、メインタンク11と、補助タンク12と、廃液タンク13と、供給タンク14の天井にそれぞれ接続されている。
ガス供給配管28のガス供給系21と各タンク11〜14の間の位置には、開閉バルブがそれぞれ設けられている。
【0014】
ガス供給系21には、圧力ガスが充填されたガスボンベ36と流量制御装置37が配置されており、所望位置の開閉バルブを開けると、ガス供給系21から、所望のタンク11〜14に、流量制御しながら圧力ガス(ここではN2ガス)を供給できるように構成されている。
各タンク11〜14の内部は密閉されており、その状態圧力ガスが供給されると、各タンク11〜14の内部圧力は大気圧よりも高圧に昇圧される。
【0015】
供給タンク14の天井には真空排気系32も接続されており、ガス供給系21との間の開閉バルブを閉じた状態で真空排気系32内に配置された真空ポンプ34を動作させると、供給タンク14の内部は大気圧よりも低圧に減圧される。
【0016】
メインタンク11と、補助タンク12と、廃液タンク13には、底面付近まで主配管25aの一端と、戻り配管25bの一端と、回収配管25cの一端とがそれぞれ挿入されている。主配管25aと戻り配管25bの他端は、底面付近まで供給タンク14とメインタンク11の内部にそれぞれ挿入され、回収配管25cの他端は大気に開放されている。
【0017】
供給タンク14の内部に吐出液を配置し、吐出液の液面が主配管25aの端部よりも上方に位置させた状態で、供給タンク14内部を減圧しながらメインタンク11の内部を昇圧させ、主配管25aに設けられた開閉バルブを開けると、メインタンク11内部の吐出液は供給タンク14に移動される。
主配管25aのメインタンク11と供給タンク14の間の位置には脱気装置16が設けられている。
【0018】
脱気装置16は、筺体51と、筺体51の内部に配置された中空糸52を有しており、脱気装置16の内部を通過する吐出液は中空糸52の内部を流れるようにされている。
筺体51には脱気ポンプ(真空ポンプ)53が接続されており、脱気ポンプ53によって筺体51の内部を真空排気し、中空糸52の周囲を減圧雰囲気にすると、中空糸52内を流れる吐出液中の溶存気体が中空糸52の外部に放出され、脱気装置16内を通過した吐出液は脱気される。この脱気された吐出液が供給タンク14に供給される。
【0019】
供給タンク14の底面には供給配管26の一端が接続されている。供給配管26の他端はインクジェットヘッド15に接続されており、供給タンク14の内部に吐出液を配置し、供給配管26に設けられた開閉バルブを開けると、供給タンク14内部の吐出液は供給配管26を通ってインクジェットヘッド15に供給される。
【0020】
インクジェットヘッド15の底面には微小な吐出孔が複数形成されており、インクジェットヘッドの内部は大気と連通されている。供給タンク14の内部圧力が大気圧であると、インクジェットヘッド15内部の吐出液は自重によって吐出孔から漏出するが、真空排気系32にはレギュレータ35が設けられており、供給タンク14内部は所定の減圧圧力に制御されており、供給タンク14の吸引力が重力と釣り合い、吐出孔から吐出液が漏出しないようになる。
【0021】
インクジェットヘッド15の内部には吐出用素子(ここでは圧電素子)が設けられており、吐出孔から吐出液が漏出しない状態で、供給タンク14からインクジェットヘッド15に吐出液を供給しながら吐出用素子を動作させると、所定体積の吐出液が吐出孔から吐出される。
このとき、インクジェットヘッド15を印刷対象物上に配置しておくと、吐出された吐出液は印刷対象物の表面に着弾し、印刷対象物への印刷が行なわれる。
【0022】
図1では、インクジェットヘッド15は廃液トレイ33の上方に配置されており、クリーニングのためにこの状態で吐出液を吐出させると廃液トレイ33上に着弾する。着弾した吐出液は廃液トレイ33から廃液タンク13に移動し、廃液タンク13に蓄液される。
また、インクジェットヘッド15の内部を流れた吐出液は廃液タンク13に流入し、廃液タンク13に蓄液される。
【0023】
蓄液された吐出液は、回収配管25cに設けられた開閉バルブを開け、廃液タンク13内部を昇圧させると、回収配管25cを通って廃液タンク13の外部に圧送され、他の容器で受液することで回収することができる。
【0024】
主配管25aの脱気装置16と供給タンク14との間の位置には分岐配管27の一端が接続されている。この分岐配管27の他端は補助タンク12の内部に挿入され、端部が底面付近に配置されている。
【0025】
他方、メインタンク11と、補助タンク12と、廃液タンク13の天井には、一端が大気開放系31に接続された開放配管29の他端がそれぞれ接続されている。
開放配管29の、各タンク11〜13と大気開放系31との間の位置には開閉バルブがそれぞれ設けられており、その開閉バルブを開けると、各タンク11〜13内部の吐出液の液面よりも上部の空間が、開放配管29によって大気に接続される。図中、符号38は、開放配管29を流れる気体の流量を制御する流量制御装置であり、符号39は大気への開放端を表わしている。
【0026】
主配管25aと分岐配管27の接続部分には切替バルブ30が設けられており、該切替バルブ30を切り替えることにより、主配管25aによるメインタンク11の接続先を、供給タンク14と補助タンク12のいずれか一方に選択でき、切替バルブ30と供給タンク14との間のバルブを閉鎖し、メインタンク11内部を密閉できるようにされている。
【0027】
メインタンク11の吐出液供給先を供給タンク14から補助タンク12に変更し、補助タンク12の内部を大気に開放し、メインタンク11の内部を昇圧すると、メインタンク11内部の吐出液は、主配管25aにより、脱気装置16を通って補助タンクに移動する。
【0028】
このとき、脱気装置16に接続された脱気ポンプ53を動作させておくと、メインタンク11の吐出液は脱気されて補助タンク12に移動し、補助タンク12の内部では、吐出液の液面が戻り配管25bの端部よりも上方に位置する。
【0029】
メインタンク11内の吐出液が補助タンク12に移動された後、次に、切替バルブ30によって主配管25aによるメインタンク11の接続先を閉鎖しておき、開放配管29によってメインタンク11の内部を大気に開放し、補助タンク12の内部を大気と遮断してガス導入系21に接続し、ガス導入系21によって補助タンク12の内部を昇圧すると、補助タンク12内部の吐出液は、戻り配管25bを通ってメインタンク11に移動する。
【0030】
補助タンク12内の吐出液がメインタンク11の内部に移動した後、次に、切替バルブ30によってメインタンク11の接続先を補助タンク12にし、上記と同じ手順で補助タンク12の内部を大気に開放し、メインタンク11の内部を昇圧すると、メインタンク11内部の吐出液は、脱気装置16で脱気されて補助タンク12に移動される。
【0031】
このように、吐出液をメインタンク11から補助タンク12に移動させ、次いで、補助タンク12からメインタンク11に戻す工程を繰り返し行なうことで、同じ吐出液に対して複数回の脱気処理が行なわれ、脱気処理を行なう毎に吐出液の溶存気体濃度を低下させることができる。
【0032】
メインタンク11には溶存気体濃度測定装置23が設けられており、メインタンク11内部の吐出液の溶存気体を測定できるように構成されている(特に、溶存酸素濃度を測定できるようにされている)。
溶存気体濃度測定装置23は制御装置24に接続されている。
【0033】
真空排気系32、脱気ポンプ53、切替バルブ30、各開閉バルブやインクジェットヘッド15の動作は制御装置24によって制御されており、脱気しながら吐出液をメインタンク11と補助タンク12の間で繰り返し移動させる際に、溶存気体濃度測定装置23によって吐出液の溶存気体濃度を測定し、測定値が制御装置24内に予め設定された基準値以下になったところで移動を終了させ、メインタンク11から供給タンク14に吐出液を供給する。
【0034】
従って、供給タンク14に溶存気体が高濃度で含有される吐出液は供給されず、インクジェットヘッド15の内部で溶存気体による気泡が発生を抑制することができる。
なお、本発明で用いられる吐出液は主成分が有機溶剤であり、顔料や微小粒子(スペーサ)が分散されている。吐出液は、モータを使用しない圧送で移動されるので、スペーサ等が圧砕される恐れはない。
【0035】
上記実施例では、吐出用素子として圧電素子を用いたが、発熱素子を用いて熱膨張した気泡で吐出液を吐出しても良い。
上記実施例では基準値よりも溶存気体濃度が低下したところで吐出液を供給タンク14に供給したが、基準値以下であっても溶存気体濃度が最低値(最低値<基準値)よりも低下した場合には、供給タンク14に吐出液が供給されないようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の印刷装置を説明するための図
【図2】従来技術の印刷装置を説明するための図
【符号の説明】
【0037】
10……印刷装置
11……メインタンク
12……補助タンク
14……供給タンク
15……インクジェットヘッド
16……脱気装置
21……ガス供給系
23……溶存気体濃度測定装置
25a……主配管
25b……戻り配管
27……分岐配管
30……切替バルブ
31……大気開放系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出液を蓄液するメインタンクと、インクジェットヘッドに前記吐出液を供給する供給タンクとを接続する主配管の途中に脱気装置を設けたインクジェット印刷装置であって、
前記脱気装置と前記供給タンクの間に分岐配管を接続し、切替バルブの切替によって、前記脱気装置内を通過した前記吐出液を前記分岐配管内を流して補助タンクに移動可能に構成し、
前記補助タンクと前記メインタンクの間に戻り配管を設けて、前記補助タンク内の前記吐出液を前記メインタンク内に移動できるように構成された印刷装置。
【請求項2】
ガス導入系と大気開放系とを有し、
前記メインタンクと前記補助タンクはそれぞれ前記ガス導入系と前記大気開放系に接続され、内部を大気に接続する開放状態と、前記ガス導入系から内部に圧送気体を導入する昇圧状態にもできるように構成された請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記メインタンクには、溶存気体濃度測定装置が設けられた請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の印刷装置。
【請求項4】
前記溶存気体濃度測定装置の測定値が予め設定された基準値以下になるまで、前記吐出液は前記メインタンクから前記補助タンクに向けて、前記脱気装置を通って繰り返し移動するように構成された請求項3記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−248513(P2009−248513A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101690(P2008−101690)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】