説明

印刷装置

【課題】印刷剤が付加されて形成される着色領域の印刷状態を正確に測定することができる印刷装置を提供すること。
【解決手段】
印刷後(S702)、表面測定領域のOD値を測定する前に(S711)、表面測定領域が測定地点に到達した場合には(S709:Yes)、印刷用紙の搬送を停止し、測定を開始するまで、所定時間待機させる(S710)。よって、印刷したインクを印刷用紙に十分に馴染ませた状態で、表面測定領域のOD値を測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、用紙に印字した印字結果の印字濃度を印字濃度センサ7で測定し、その測定結果から最適な印字条件を算出し、以後の印字は最適な印字条件により実施する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−103757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術において、印字直後に印字濃度を測定すると、印字剤が用紙に十分に馴染む前に測定が行われることになり、正確な印字濃度を測定できないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、印刷剤が付加されて形成される着色領域の印刷状態を正確に測定することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明の印刷装置は、印刷剤によって印刷用紙に画像を印刷する印刷部と、前記印刷部から排紙部に印刷用紙を搬送する搬送路を有する搬送部と、前記搬送部の搬送路上に設けられ、前記印刷部によって前記印刷用紙に前記印刷剤が付加されて形成される着色領域を、前記着色領域が形成された第1面と、前記第1面の反対面である第2面とのうち、少なくとも一方の面から測定する測定部と、前記測定部によって前記着色領域を測定する場合、前記着色領域が形成されてから所定時間経過後に、前記測定部が前記測定を行うための測定地点を前記着色領域が通過するように前記印刷用紙を搬送する第1搬送処理と、前記測定部によって前記着色領域を測定しない場合、前記着色領域が形成されてから前記所定時間経過前に、前記測定地点を前記着色領域が通過する第2搬送処理と、を実行する搬送制御部と、を備えている。
【0007】
なお、本発明は、印刷制御装置、該印刷制御装置を含む印刷装置、印刷制御方法、印刷制御装置を制御するコンピュータプログラム、該コンピュータプログラムを記録する記録媒体等の種々の態様で実現可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の印刷装置によれば、測定部によって着色領域を測定する場合、印刷用紙を第1搬送処理によって搬送させるので、印刷剤を印刷用紙に十分に馴染ませることができる。よって、着色領域の印刷状態を正確に測定することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態である複合機の外観斜視図である。
【図2】複合機のプリンタ部の構造を示す断面図である。
【図3】複合機の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】OD値を測定する測定対象を説明するための模式図である。
【図5】印刷処理を示すフローチャートである。
【図6】(a)はインク量調節条件確認処理を示すフローチャートであり、(b)は表面測定領域特定処理を示すフローチャートであり、(c)は暫定白地領域特定処理を示すフローチャートである。
【図7】表面印刷処理を示すフローチャートである。
【図8】(a)は第1インク量調節処理を示すフローチャートである。(b)は裏面測定領域特定処理を示すフローチャートである。
【図9】裏面印刷処理を示すフローチャートである。
【図10】第2インク量調節処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<複合機10の外観構成>
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態である複合機10の外観斜視図である。複合機10は、コピー機能、ファクシミリ機能、スキャン機能、プリンタ機能、などの各種機能を有し、特に、印刷剤が付加されて形成される着色領域の濃度を、正確に測定することができるものである。複合機10には、主に、下部に設けられるプリンタ部11と、上部に設けられるスキャナ部12と、正面上部に設けられる操作パネル部40と、正面に設けられるスロット部43とが設けられている。
【0011】
プリンタ部11は、正面に開口13が形成されており、開口13から一部が露呈するように給紙トレイ20及び排紙トレイ21が上下2段に設けられている。給紙トレイ20に積載された印刷用紙は、プリンタ部11の内部に給送され、画像が印刷された後、排紙トレイ21に排出される。尚、給紙トレイ20には、図示しないスライドトレイが着脱自在に構成されており、スライドトレイからは、例えば、葉書、封筒等、給紙トレイ20に積載される印刷用紙とは、別の印刷用紙が給紙される。スキャナ部12は、いわゆるフラットベッドスキャナとして構成されている。原稿カバー30は、複合機10の天板として設けられており、原稿カバー30の下には、図示しないプラテンガラスが配置されている。原稿は、プラテンガラス上に載置され、原稿カバー30に覆われた状態でスキャナ部12に読み取られる。
【0012】
操作パネル部40は、プリンタ部11やスキャナ部12を操作するものであって、各種操作ボタンや液晶表示部が設けられている。ユーザは、操作パネル部40を操作することで、各種機能の設定や動作を実行することができる。例えば、操作パネル部40を介して印刷用紙の種類(例えば、普通紙、光沢紙、厚紙、葉書等)の設定や、両面印刷の設定、解像度の設定等を、指示することができる。スロット部43は、記憶媒体である各種小型メモリカードが装填され得るように構成されている。例えば、スロット部43に小型メモリカードが装填された状態でユーザが操作パネル部40の操作を行うことにより、小型メモリカードに記憶された画像データを読み出し、その読み出した画像データを印刷用紙に印刷することができる。
【0013】
<プリンタ部11の構成>
図2は、プリンタ部11の構造を示す断面図である。プリンタ部11には、主に、給紙トレイ20と、給紙ローラ25と、分離傾斜壁22と、U字状の搬送路23と、搬送ローラ60と、キャリッジ38に搭載されている印刷ヘッド39と、排紙ローラ62と、一対の第1ローラ45および第2ローラ46と、一対の第3ローラ47および第4ローラ48とが設けられている。片面印刷の場合、給紙トレイ20に積載されている印刷用紙は、給紙ローラ25によって分離傾斜壁22、搬送路23に沿って給紙され、搬送ローラ60によって印刷ヘッド39と対向する位置に搬送される。そして、印刷ヘッド39から吐出されるインク(印刷剤)によって画像が印刷された後、排紙ローラ62、第1ローラ45および第2ローラ46、第3ローラ47および第4ローラ48によって、排紙トレイ21に排紙される。
【0014】
プリンタ部11には、更に、排紙ローラ62から下流側に延びる用紙ガイド面32と、第2ローラ46を一端側に支持して上流側に延び、第1ローラ45を中心に回動可能な経路切換アーム41と、経路切換アーム41の他端側から給紙ローラ25に向かって延びる反転経路16とが設けられている。
【0015】
両面印刷の場合、プリンタ部11は、印刷ヘッド39によって表面に画像が印刷された印刷用紙を、その下流端側が第1ローラ45および第2ローラ46と、第3ローラ47および第4ローラ48とに挟持され、上流端が排紙ローラ62を超え、用紙ガイド面32上に支持されている状態で、一旦停止させる。その状態で、プリンタ部11は、経路切換アーム41を図2に示す状態から第1ローラ45を中心に反時計回りに回動させ、経路切換アーム41によって、停止している印刷用紙の上流端側を下方に押し下げ、用紙ガイド面32に支持されている印刷用紙の上流端を、反転経路16内に進入させる。そして、第1ローラ45および第3ローラ47を反時計回りに回転させ、印刷用紙を反転経路16に沿って給紙ローラ25に向けて搬送すると、画像が印刷された表面が給紙ローラ25に当接する。その後は、片面印刷の場合と同様に、印刷用紙は、印刷ヘッド39まで搬送され、裏面に画像が印刷され、排紙トレイ21に排紙される。
【0016】
プリンタ部11には、更に、一対の第1ローラ45および第2ローラ46と、一対の第3ローラ47および第4ローラ48との間に挟む位置に、濃度測定部50と、測定プレート51と、が設けられている。濃度測定部50は、印刷ヘッド39によって印刷用紙に印刷がされる印刷面側に配置され、印刷ヘッド39から吐出されたインクによって印刷用紙に形成される着色領域の光学反射濃度(以下、「OD値」と称す)を測定する装置である。濃度測定部50には、複数個の発光素子を並べた発光素子列と、複数個の受光素子を並べた受光素子列とが対向して、主走査方向(印刷用紙の搬送方向と直交する方向)に沿って配置されている。発光素子から測定対象に光を照射し、その反射光を受光素子で受光し、その反射光をRGB値に変換し、そのRGB値から、測定対象の濃度を測定する。
【0017】
濃度測定部50には、測定可能サイズと、測定可能濃度とが設定されており、測定対象のサイズが測定可能サイズよりも小さかったり、測定可能濃度よりも薄い場合には正確に濃度を測定できない可能性がある。例えば、測定サイズが6mm四方サイズよりも小さい場合、測定濃度としてRGB値の平均値が所定値以上であって薄い場合には、正確に濃度を測定できない可能性がある。そのため、測定対象は、濃度測定部50によって測定可能なサイズ以上、測定可能な濃度以上である濃着色領域が特定される。換言すれば、濃度測定部50によって測定可能なサイズ以上、測定可能な濃度以上である着色領域が測定対象として特定されるので、正確に測定できる。
【0018】
測定プレート51は、濃度測定部50と対向配置され、白色または黒色の板状に構成されている。測定プレート51は、濃度測定部50とは反対側から印刷用紙を支持し、測定時には、濃度測定部50と測定プレート51との間に停止した印刷用紙を挟んで測定対象である着色領域を測定する。濃度測定部50と、測定プレート51とは、図示しないボールネジ機構により、主走査方向に往復移動可能に構成され、主走査方向における任意の位置で測定可能に構成されている。また、濃度測定部50と、測定プレート51とは、非測定時には、印刷用紙の搬送路から外れた位置に待避するように構成されている。尚、ボールネジ機構自体を上下に移動可能なリフト機構を設け、非測定時には、濃度測定部50を上方、測定プレート51を下方に待避するように構成しても良い。
【0019】
なお、一対の第1ローラ45および第2ローラ46と、一対の第3ローラ47および第4ローラ48との間隔は、搬送される印刷用紙の搬送方向の長さよりも短い間隔に設定されている。よって、一対の第1ローラ45および第2ローラ46によって印刷用紙の上流側、一対の第3ローラ47および第4ローラ48によって印刷用紙の下流側を挟持した安定した状態で、濃度測定部50による測定ができる。また、一対の第3ローラ47および第4ローラ48は、一対の第1ローラ45および第2ローラ46との間に、濃度測定部50を挟む位置に配置されているので、一対の第3ローラ47および第4ローラ48と、一対の第1ローラ45および第2ローラ46とによって、濃度測定部50を遮光でき、正確な測定をすることができる。
【0020】
<複合機10の内部構成>
図3は、複合機10の電気的構成を示すブロック図である。複合機10には、CPU88、ROM89、RAM90、フラッシュメモリ91が設けられ、これらは、バス92を介してASIC93に接続されている。
【0021】
CPU88は、ROM89やフラッシュメモリ91に記憶される固定値やプログラム、RAM90に記憶されているデータ、或いは、ネットワークインタフェース(I/F)98、USBインタフェース(I/F)99、又はNCU100を介して送受信される各種信号に従って、複合機が有している各機能を制御する。ROM89は、印刷プログラム89aが記憶された書換不能なメモリである。CPU88は、印刷プログラム89aに従い、後述する印刷処理(図5)を実行する。RAM90は、書換可能な揮発性のメモリであり、表面測定フラグ90a、裏面測定フラグ90b、暫定白地測定フラグ90c、白地測定フラグ90d、インク量調節フラグ90e、OD値メモリ90f、測定領域メモリ90gが設けられている。
【0022】
表面測定フラグ90aは、先に印刷される表面から表面に形成された着色領域のOD値を測定するかを示すフラグ、裏面測定フラグ90bは、表面の反対面である裏面から、表面に形成された着色領域のOD値を測定するかを示すフラグ、暫定白地測定フラグ90cは、表面から表面の下地のOD値を測定するかを示すフラグ、白地測定フラグ90dは、裏面から裏面の下地のOD値を測定するかを示すフラグ、インク量調節フラグ90eは、インク量を調節するかを示すフラグであり、OD値メモリ90fには、測定されたOD値が記憶され、測定領域メモリ90gには、OD値を測定する測定領域(測定領域の位置)が記憶されている。
【0023】
フラッシュメモリ91は、書換可能な不揮発性のメモリであり、インク量調節値メモリ91a、トレイ開閉フラグ91b、用紙種別メモリ91c、トレイ変更メモリ91dが設けられている。インク量調節値メモリ91aには、インク量調節値が記憶されている。インク量調節値は、OD値の測定結果から算出されるインク量を調節するための補正値である。印刷を実行する場合、インク量調節値メモリ91aに記憶されているインク量調節値に従ってインク量が補正され、適切な濃度で印刷できる。トレイ開閉フラグ91bは、直前に指示された印刷が終了してから次の印刷が指示されるまでの間に、給紙トレイ20が抜き差しされたかを示すフラグである。CPU88は、給紙トレイ20が抜き差しされた場合にオン、指示された印刷が終了した場合にオフに設定する。用紙種別メモリ91cには、直前に指示された印刷において使用した印刷用紙の種別が記憶されている。トレイ変更メモリ91dには、直前に指示された印刷で使用したトレイが記憶されている。
【0024】
ASIC93には、駆動回路94、95,97、スキャナ部12、操作パネル部40、スロット部43、濃度測定部50、ネットワークI/F98、USBI/F99、NCU100が接続され、ASIC93は、バス92を介してCPU88に接続されている。
【0025】
駆動回路94は、印刷ヘッド39と接続され、印刷ヘッド39から所定のタイミングでインクを印刷用紙に対して選択的に吐出させる。CPU88から出力される駆動制御手順に基づいてASIC93で生成された出力信号を受け、印刷ヘッド39を駆動制御する。駆動回路95は、キャリッジ38に接続されたCRモータ96を駆動させ、ASIC93からの出力信号を受けて、CRモータ96を駆動するための電気信号を生成する。駆動回路97は、給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62、第1ローラ45、第3ローラ47に接続されたLFモータ71を駆動させ、ASIC93からの出力信号を受けて、LFモータ71を駆動するための電気信号を生成する。
【0026】
ネットワークI/F98は、複合機10を図示しないインターネットやLAN回線に接続するためのインタフェースである。USBI/F99は、複合機10を図示しないUSB装置と接続するためのインタフェースである。NCU100は、モデム101と接続され、電話回線の制御を行うものである。モデム101は、ファクシミリ送信時には送信信号を電話回線での伝送に適した形態に変調し、一方、ファクシミリ受信時には電話回線から送られてきた変調信号を復調する。
【0027】
<測定領域の説明>
図4は、OD値を測定する測定領域を説明するための模式図であり、図4(a)は、表面に着色領域61〜65が印刷された印刷用紙を表面から見た状態を示し、図4(b)は、図4(a)に示す印刷用紙を反転して裏面から見た状態を示している。尚、図4(b)に示す着色領域61’〜65’は、表面に印刷された着色領域61〜65がそれぞれ裏面から透けて見えている状態(裏抜け)を示している。
【0028】
CPU88は、表面に印刷された着色領域61〜65のうちから、次の第1条件〜第3条件を満たす着色領域を表面測定領域として特定し、その表面測定領域についてOD値を測定する。その後、裏面に着色領域73を印刷した後、先に特定した表面測定領域に対応する裏面の領域が次の第4条件を満たす場合、その表面測定領域に対応する裏面の領域を裏面測定領域として特定し、その裏面測定領域についてOD値を測定する。第1条件は「印刷用紙の中央領域に印刷されていること」、第2条件は「濃度測定部50によって測定可能な濃度であること」、第3条件は「濃度測定部50によって測定可能な大きさであること」、第4条件は「表面測定領域に対応する裏面の領域に着色領域が無いこと」である。尚、第1条件〜第3条件については、第1条件〜第3条件のうち、いずれか一つ以上の条件を満たす着色領域を表面測定領域として特定するように構成しても良い。
【0029】
図4(a)に示す着色領域61は、第1条件「印刷用紙の中央領域に印刷されていること」を満たさないので、表面測定領域として特定されない。本実施形態では、図4(a)に示す縦幅L、横幅Wの矩形状の中央領域72(破線)が、印刷用紙の中央領域72として設定され、着色領域61は、中央領域72の範囲外に印刷されるので、第1条件を満たさない。
【0030】
中央領域72の縦幅Lは、印刷用紙の搬送方向の長さであり、図2に示す一対の第1ローラ45および第2ローラ46と、一対の第3ローラ47および第4ローラ48との間隔よりも短く設定されている。また、中央領域72の横幅Wは、印刷用紙の搬送方向と直交する方向の長さであり、濃度測定部50と、測定プレート51との最大測定範囲よりも短く設定されている。よって、印刷用紙が、一対の第1ローラ45および第2ローラ46と、一対の第3ローラ47および第4ローラ48との両方に挟持されない状態で測定される着色領域や、濃度測定部50の測定範囲外に位置し、正確に濃度を測定できない着色領域が、表面測定領域として特定されるのを防止できる。
【0031】
図4(a)に示す着色領域62は、第2条件「濃度測定部50によって測定可能な濃度であること」を満たさず、図4(a)に示す着色領域63は、第3条件「濃度測定部50によって測定可能な大きさであること」を満たさないので、表面測定領域として特定されない。よって、濃度測定部50によって測定可能な濃度よりも薄い着色領域や、濃度測定部50によって測定可能な大きさよりも小さい着色領域が、測定領域として特定されるのを防止できる。
【0032】
しかしながら、図4(a)に示す着色領域64、または、着色領域65は、第1条件〜第3条件を満たすので、表面測定領域として特定され、OD値が測定されるが、図4(b)に示す通り、表面の着色領域64に対応する裏面の領域64’には、裏面印刷によって、着色領域73が印刷され、第4条件「表面測定領域に対応する裏面の領域に着色領域が無いこと」を満たさない。よって、表面の着色領域64に対応する裏面の領域64’は、裏面測定領域として特定されない。一方、図4(b)に示す通り、表面の着色領域65に対応する裏面の領域65’は、第4条件を満たすので、表面の着色領域65に対応する裏面の領域65’は、裏面測定領域として特定され、OD値が測定される。
【0033】
また、CPU88は、裏面において着色領域が形成されていない無着色領域のうち、次の3つの条件を満たす領域を、白地領域として特定し、その白地領域についてもOD値も測定する。第1条件は「印刷用紙の中央領域であること」、第2条件は「測定可能な大きさの白地であること」、第3条件は「真裏(表面)に着色領域がないこと」であり、図4(b)に示す白地領域75を特定し、白地領域75のOD値を測定する。このように、白地領域75のOD値も測定することで、印刷用紙の下地の状態を、裏面から測定した裏面測定領域の測定結果に反映させることができる。
【0034】
但し、白地領域の第2条件「測定可能な大きさの白地であること」は、裏面印刷によって、裏面の全部に着色(印刷)がされると、白地領域を特定できないので、CPU88は、暫定的に、表面において着色領域が形成されていない無着色領域のうち、次の2つの条件を満たす領域を、暫定白地領域として特定し、その暫定白地領域についてもOD値も測定する。第1条件は「印刷用紙の中央領域であること」、第2条件は「測定可能な大きさの白地であること」であり、図4(a)に示す暫定白地領域76を特定し、暫定白地領域76のOD値を測定する。よって、裏面印刷によって、白地領域75を特定できない状況であっても、白地領域75の測定結果に代えて、暫定白地領域76の測定結果を利用できる。
【0035】
<印刷処理>
図5は、印刷処理を示すフローチャートである。この処理は、印刷指示が入力された場合に、複合機10のCPU88によって実行される処理である。尚、この印刷指示の中には、印刷実行指令の他、印刷する画像を示す画像データ、印刷部数の指示、片面/両面の指示、用紙種別、トレイの指定、解像度などが含まれる。また、図5では、印刷処理の概略を説明し、各処理の詳細については、図6乃至図10を参照して説明する。
【0036】
CPU88は、インク量調節値メモリ91aに記憶されているインク量調節値を取得する(S501)。印刷をする場合には、このインク量調節値に従ってインク量が調節される。即ち、今回の印刷で測定されるOD値に基づいて設定されるインク量調節値は、次回以降の印刷に反映されることになる。CPU88は、図6(a)に示すインク量調節条件確認処理によって、インク量を調節する必要があるかを確認し、必要がある場合には、調節するインク量を算出するためにOD値測定を実行するよう、各種フラグを設定する(S502)。
【0037】
CPU88は、印刷指示に含まれる画像データにて示される、印刷用紙の表面に印刷する印刷画像を取得すると(S503)、その取得した印刷画像によって着色される着色領域のうち、表面からOD値を測定する表面測定領域を、図6(b)に示す表面測定領域特定処理によって特定する(S504)。さらに、CPU88は、S503の処理で取得した印刷画像によって着色されない無着色領域のうち、表面からOD値を測定する暫定白地領域を、図6(c)に示す暫定白地領域特定処理によって特定する(S505)。CPU88は、給紙ローラ25によって印刷用紙を給紙すると(S506)、図7に示す表面印刷処理によって、表面の印刷をすると共に、S503の処理で特定した表面測定領域と、S504の処理で特定した暫定白地領域とについて、OD値を測定し(S507)、その測定結果から調節するインク量を、図8(a)に示す第1インク量調節処理によって設定する(S508)。
【0038】
CPU88は、指示された印刷が両面印刷かを、印刷指示に含まれる片面/両面の指示に応じて判断し(S509)、両面印刷でなければ(S509:No)、印刷用紙を排出し(S515)、本処理を終了する。よって、片面印刷の場合、調節するインク量は、S508の処理で設定されるインク量調節値に更新される。一方、CPU88は、両面印刷であれば(S509:Yes)、印刷指示に含まれる画像データにて示される、印刷用紙の裏面に印刷する印刷画像を取得し(S510)、裏面からOD値を測定する裏面測定領域を、図8(b)に示す裏面測定領域特定処理によって特定する(S511)。
【0039】
CPU88は、用紙を反転した後、再び、給紙ローラ25によって印刷用紙を給紙すると(S512)、図9に示す裏面印刷処理によって、裏面の印刷をすると共に、S511の処理で特定した裏面測定領域について、OD値を測定し(S513)、これまで測定した測定結果から、調節するインク量を、図10に示す第2インク量調節処理によって設定した後(S514)、印刷用紙を排出し(S515)、本処理を終了する。よって、両面印刷の場合、調節するインク量は、S514の処理で設定されるインク量調節値に更新される。
【0040】
図6(a)は、インク量調節条件確認処理を示すフローチャートである。この処理は、インク量を調節する必要があるかを確認し、必要がある場合には、調節するインク量を算出するためにOD値測定を実行するよう、各種フラグを設定する処理である。CPU88は、インク量を調節する必要がある条件として、トレイ開閉フラグ91bがオンか(S601)、用紙種別が変更されたか(S602)、トレイが変更されたかを確認する(S603)。用紙種別が変更されたかは(S602)、今回の印刷で指示された用紙種別が、用紙種別メモリ91cに記憶されている用紙種別から変更されたかを判断する。また、トレイが変更されたかは(S603)、今回の印刷で指示されたトレイが、トレイ変更メモリ91dに記憶されているトレイから変更されたかよって判断する。
【0041】
その結果、CPU88は、トレイ開閉フラグ91bがオン(S601:Yes)、用紙種別が変更された(S602:Yes)、トレイが変更された(S603:Yes)の何れかである場合には、表面測定フラグ90a、裏面測定フラグ90b、暫定白地測定フラグ90c、白地測定フラグ90d、を全てオンに設定し(S604)、本処理を終了する。即ち、かかる場合には、先回の印刷から用紙の種別が変更されたか、変更された可能性がある。用紙の種別が変わると、用紙上のインクの載り具合(用紙上に付着するインクの状態)が変わり、調節するインク量も変わるので、その調節するインク量を算出すべく、OD値測定を実行するよう、各種フラグを設定する。
【0042】
一方、CPU10は、トレイ開閉フラグ91bがオフであり(S601:No)、用紙種別が変更されておらず(S602:No)、トレイが変更されていない場合(S603:No)、本処理を終了する。即ち、かかる場合は、先回の印刷から用紙の種別が変更されておらず、インク量を調節する必要がない。よって、かかる場合は、OD値測定を実行しないよう設定し、不必要なOD値測定によって、指示された印刷が遅延するのを防止できる。
【0043】
図6(b)は、表面測定領域特定処理を示すフローチャートである。この処理は、図5に示すS503で取得した表面に印刷する印刷画像によって着色される着色領域のうち、表面からOD値を測定する表面測定領域を特定する処理である。CPU88は、表面測定フラグ90aがオンかを判断し(S605)、オフであれば(S605:No)、OD値を測定する必要がないので、本処理を終了する。一方、CPU88は、表面測定フラグ90aがオンであれば(S605:Yes)、表面に形成される着色領域のうち、印刷位置が用紙中央領域であり(S606:Yes)、測定可能な濃度であり(S607:Yes)、測定可能な大きさである(S608:Yes)、という3つの条件を満たす着色領域を、表面測定領域として特定し(S609)、本処理を終了する。尚、特定した表面測定領域の位置は、測定領域メモリ90gに記憶する。また、CPU88は、表面に形成される着色領域のうち、印刷位置が用紙中央領域でなく(S606:No)、測定可能な濃度でなく(S607:No)、測定可能な大きさでない着色領域は(S608:No)、表面測定領域として特定せず、本処理を終了する。
【0044】
図6(c)は、暫定白地領域特定処理を示すフローチャートである。この処理は、図5に示すS503で取得した印刷画像によって着色されない無着色領域のうち、表面からOD値を測定する暫定白地領域を特定する処理である。CPU88は、暫定白地測定フラグ90cがオンかを判断し(S610)、オフであれば(S610:No)、OD値を測定する必要がないので、本処理を終了する。一方、CPU88は、暫定白地測定フラグ90cがオンであれば(S610:Yes)、表面に形成される無着色領域のうち、用紙中央領域であり(S611:Yes)、測定可能な大きさの白地である無着色領域を(S612:Yes)、暫定白地領域として特定し(S614)、本処理を終了する。尚、特定した暫定白地領域の位置は、測定領域メモリ90gに記憶する。また、CPU88は、用紙中央領域でなく(S611:No)、測定可能な大きさの白地でない無着色領域は(S612:No)、暫定白地領域として特定せず、本処理を終了する。
【0045】
図7は、表面印刷処理を示すフローチャートである。この処理は、表面の印刷をすると共に、図6(b)のS609で特定した表面測定領域と、図6(c)のS614で特定した暫定白地領域とについて、OD値を測定する処理である。CPU88は、図5のS503で取得した表面の印刷画像から印刷データを作成し(S701)、その印刷データに従って印刷ヘッド39の用紙搬送方向の長さに応じた単位ライン分の印刷をし(S702)、その後、単位ライン分の印刷用紙を搬送する(S703)。
【0046】
CPU88は、暫定白地測定フラグ90cがオンか(S704)、両面印刷か(S705)、現在の用紙の搬送位置が暫定白地領域かを判断する(S706)。その結果、CPU88は、暫定白地測定フラグ90cがオンであり(S704:Yes)、両面印刷であり(S705:Yes)、暫定白地領域であると判断した場合には(S706:Yes)、その暫定白地領域についてOD値の測定を行い、暫定白地測定フラグ90cをオフに設定し(S707)、S708の処理に移行する。尚、CPU88は、暫定白地測定フラグ90cがオフであり(S704:No)、両面印刷でなく(S705:No)、現在の用紙の搬送位置が暫定白地領域でないと判断した場合には(S706:No)、S707の処理はスキップし、S708の処理に移行する。
【0047】
CPU88は、S708の処理で、表面測定フラグ90aがオンか(S708)、現在の用紙の搬送位置が表面測定領域かを判断する(S709)。その結果、CPU88は、表面測定フラグ90aがオンであり(S708:Yes)、表面測定領域であると判断した場合(S709:Yes)、印刷用紙の搬送を停止し、表面測定領域の測定を開始するまで、所定時間待機する(S710)。CPU88は、所定時間待機した後、表面測定領域におけるOD値を測定し(S711)、表面測定フラグ90aをオフに設定し、また、インク量調節フラグ90eをオンに設定し(S712)、S713の処理に移行する。尚、S711で測定したOD値は、OD値メモリ90fに記憶する。S711の処理は、S710の処理で所定時間待機した後で、表面測定領域のOD値を測定するので、表面測定領域のインクが印刷用紙に十分に馴染んでおり、正確にOD値の測定ができる。
【0048】
また、測定対象である表面測定領域は、図5のS503で取得した印刷画像によって着色される着色領域から、図6に示すS609で特定された領域である。即ち、予め、用意されたテストパターンを測定するのではなく、印刷画像の中から、所定の条件を満たす表面測定領域を特定し、その表面測定領域について測定するので、測定のためのテスト印刷をする必要がない。よって、印刷用紙、インクを無駄にせず、OD値測定をすることができる。
【0049】
CPU88は、表面測定フラグ90aがオフである場合(S708:No)、表面測定領域でない場合(S709:No)、S710〜S712の処理は、スキップして、S713の処理に移行する。CPU88は、S713の処理において、印刷用紙の表面に画像データにて示される画像が印刷されたか(表面のページ印刷が終了したか)を判断し(S713)、終了していなければ(S713:No)、S701からの処理を繰り返し、終了していれば(S713:Yes)、本処理を終了する。
【0050】
図8(a)は、第1インク量調節処理示すフローチャートである。この処理は、図7のS711で測定した表面測定領域のOD値に基づいて、調節するインク量を設定する処理である。CPU88は、インク量調節フラグ90eがオンかを判断し(S801)、オンであれば(S801:Yes)、OD値メモリ90fから、表面測定領域のOD値を取得し(S802)、その取得したOD値が所定の臨界値以上かを判断し(S803)、臨界値以上であれば(S803:Yes)、インク量調節値メモリ91aに記憶されているインク量調節値を補正、更新し(S804)、インク量調節フラグ90eをオフに設定し(S805)、本処理を終了する。例えば、表面測定領域のOD値が、臨界値を超えている分に応じて、インク量を減少させるようにインク量調節値を補正、更新する。尚、表面測定領域のOD値と、図7のS707で測定した暫定白地領域のOD値との差分を測定結果とし、その測定結果と、臨界値とを比較した上で、インク量調節値を補正、更新しても良い。
【0051】
一方、CPU88は、S801の処理において、インク量調節フラグ90eがオンでないと判断した場合(S801:No)、本処理を終了する。即ち、インク量調節値を補正、更新しない。このように、測定結果に応じてリニアにインク量調節値を補正、更新するよりも、補正に対する処理負担を軽減できる。また、S803の処理において、OD値が臨界値以上でないと判断した場合(S803:No)、インク量調整値を更新せずに、インク量調整フラグ90eをオフに設定し(S805)、本処理を終了する。
【0052】
図8(b)は、裏面測定領域特定処理を示すフローチャートである。この処理は、裏面からOD値を測定する裏面測定領域と、裏面からOD値を測定する白地領域とを特定する処理である。CPU88は、裏面測定フラグ90bがオンかを判断し(S806)、オフであれば(S806:No)、OD値を測定する必要がないので、S807、S808の処理はスキップし、S809の処理に移行する。CPU88は、裏面測定フラグ90bがオンであれば(S806:Yes)、表面測定領域に対応する領域に着色領域がないかを判断し(S807)、無ければ(S807:Yes)、その表面測定領域に対応する領域を、裏面測定領域として特定し(S808)、S809の処理に移行する。尚、CPU88は、特定した裏面測定領域の位置を測定領域メモリ90gに記憶する。一方、CPU88は、表面測定領域に対応する領域に着色領域がある場合には(S807:No)、S808の処理はスキップし、S809の処理に移行する。
【0053】
CPU88は、S809の処理では、白地測定フラグ90dがオンかを判断し(S809)、オフであれば(S809:No)、OD値を測定する必要がないので、S810〜S813の処理はスキップし、本処理を終了する。CPU88は、白地測定フラグ90dがオンであれば(S809:Yes)、裏面に形成される無着色領域のうち、用紙中央領域であり(S810:Yes)、測定可能な大きさの白地であり(S811:Yes)、真裏(表面)に着色領域がない無着色領域を(S812:Yes)、白地領域として特定し(S813)、本処理を終了する。尚、CPU88は、特定した白地領域の位置を測定領域メモリ90gに記憶する。CPU88は、裏面に形成される無着色領域のうち、用紙中央領域でなく(S810:No)、測定可能な大きさの白地でなく(S811:No)、真裏に印刷がある無着色領域は(S812:No)、白地領域として特定されず、本処理を終了する。
【0054】
図9は、裏面印刷処理を示すフローチャートである。この処理は、裏面の印刷をすると共に、図8のS808で特定した裏面測定領域と、図8のS813で特定した白地領域とで、OD値を測定する処理である。CPU88は、印刷指示に含まれる画像データにて示される、印刷用紙の裏面の印刷画像から印刷データを作成し(S901)、その印刷データに従って印刷ヘッド39の用紙搬送方向の長さに応じた単位ライン分の印刷をし(S902)、その後、単位ライン分の印刷用紙を搬送する(S903)。CPU88は、裏面測定フラグ90bがオンか(S904)、現在の用紙の搬送位置が裏面測定領域、または、白地領域か(S905)、裏面測定領域か(S906)、を判断する。
【0055】
その結果、CPU88は、裏面測定フラグ90bがオンであり(S904:Yes)、現在の用紙の搬送位置が裏面測定領域、または、白地領域であり(S905:Yes)、裏面測定領域であると判断した場合(S906:Yes)、裏面測定領域についてOD値を測定し(S907)、裏面測定フラグ90bをオフにし、インク量調節フラグ90eをオンにし(S908)、S908の処理に移行する。尚、S907で測定した裏面測定領域のOD値はOD値メモリ90fに記憶する。S907の処理において、裏面測定領域についてOD値を測定する場合、既に、図7のS710で所定時間待機され、図5のS512で反転して搬送されている。従って、インクが印刷用紙に十分に馴染んでいるので、正確なOD値を測定することができる。
【0056】
また、測定対象である裏面測定領域は、図8に示すS807で特定された領域である。即ち、予め、用意されたテストパターンを測定するのではなく、印刷画像の中から、所定の条件を満たす裏面測定領域を特定し、その裏面測定領域について測定するので、測定のためのテスト印刷をする必要がない。よって、印刷用紙、インクを無駄にせず、OD値測定をすることができる。
【0057】
一方、CPU88は、裏面測定フラグ90bがオンであり(S904:Yes)、現在の用紙の搬送位置が裏面測定領域、または、白地領域であるが(S905:Yes)、裏面測定領域でないと判断した場合(S906:No)、白地領域についてODを測定し(S909)、白地測定フラグ90dと、暫定白地測定フラグと90cとをオフし、インク量調節フラグ90eをオンに設定し(S910)、S911の処理に移行する。尚、S909で測定した白地領域のOD値はOD値メモリ90fに記憶する。また、CPU88は、裏面測定フラグ90bがオンでない(S904:No)、現在の用紙の搬送位置が裏面測定領域と、白地領域とのいずれでもないと判断した場合は(S905:No)、S911の処理に移行する。CPU88は、S911の処理において、印刷用紙の裏面に画像データにて示される画像が印刷されたか(裏面のページ印刷が終了したか)を判断し(S911)、終了していなければ(S911:No)、S901からの処理を繰り返し、終了していれば(S911:Yes)、本処理を終了する。
【0058】
図10は、第2インク量調節処理を示すフローチャートである。この処理は、これまで測定した測定結果(OD値)から、調節するインク量を設定する処理である。CPU88は、インク量調節フラグ90eがオンかを判断し(S1001)、オフであると判断した場合(S1001:No)、本処理を終了する。一方、CPU88は、インク量調節フラグ90eがオンであれば(S1001:Yes)、白地測定フラグ90dがオンかを判断し(S1002)、白地測定フラグ90dがオフ、即ち、白地測定を実行済であれば(S1002:No)、OD値メモリ90fに記憶されている表面測定領域のOD値と、裏面測定領域のOD値と、白地領域のOD値とを、測定値として取得し、各OD値から測定値を算出し(S1004)、S1005の処理に移行する。
【0059】
例えば、裏面測定領域のOD値と、白地領域のOD値との差分を第1裏抜け値、表面測定領域のOD値と、白地領域のOD値との差分を第2裏抜け値とし、第1裏抜け値と、第2裏抜け値との平均を測定結果として算出する。これにより、表面測定領域のOD値と、裏面測定領域のOD値と、白地領域のOD値とを加味した測定結果を取得することができる。尚、単に、裏面測定領域のOD値だけを測定結果としても良く、また、裏面測定領域のOD値と、白地領域のOD値との差分を測定結果として良い。
【0060】
CPU88は、S1002の処理において、白地測定フラグ90dがオン、即ち、白地測定を未実行の場合(S1002:Yes)、OD値メモリ90fに記憶されている表面測定領域のOD値と、裏面測定領域のOD値と、暫定白地領域のOD値とを、測定値として取得し、各OD値から測定値を算出し(S1003)、S1005の処理に移行する。即ち、裏面印刷の影響で白地測定ができなかったとしても、白地領域のOD値に代え、暫定白地領域のOD値を使用することで、S1004で算出した測定結果と同レベルの測定結果を取得することができる。
【0061】
CPU88は、S1005の処理において、S1003の処理、または、S1004の処理で取得した測定値が臨界値以上かを判断し(S1005)、臨界値以上であると判断した場合は(S1005:Yes)、インク量調節値メモリ91aに記憶されているインク量調節値を補正、更新し(S1006)、インク量調節フラグ90eをオフに設定し(S1007)、本処理を終了する。即ち、測定結果に応じてリニアにインク量調節値を補正、更新するよりも、補正に対する処理負担を軽減できる。また、インク量調節値の補正は、例えば、表面測定領域のOD値が、臨界値を超えている値に応じて、インク量を減少させるようにインク量調節値を補正、更新する。一方、CPU88は、臨界値以上でないと判断した場合(S1005:No)、インク量調整値を更新せずに、インク量調整フラグ90eをオフに設定し(S1007)、本処理を終了する本処理を終了する。
【0062】
<本実施形態による効果>
上記構成によると、濃度測定部50によって着色領域を測定する場合、所定時間待機した後にOD値を測定するので、印刷剤を印刷用紙に十分に馴染ませることができる。よって、着色領域の印刷状態を正確に測定することができる。具体的には、両面印刷において、裏面からOD値を測定する場合、印刷用紙を反転経路16に搬送することで所定時間を経過させるので、印刷剤を印刷用紙に十分に馴染ませる時間を確保することができる。また、表面からOD値を測定する場合、搬送路上で印刷用紙を停止させることで所定時間を経過させるので、印刷剤を印刷用紙に十分に馴染ませる時間を確保することができる。
【0063】
さらに、印刷用紙の用紙種別が異なるタイミングで、印刷用紙に形成される着色領域を測定するので、用紙種別が変わることで、印刷状態が変わる可能性がある場合に、印刷状態を測定できる。換言すれば、用紙種別が変わらず、印刷状態が変わらない場合には、測定しないことで、測定に伴う印刷の遅延を防止できる。また、両面印刷の場合に、裏面から表面に形成されている着色領域の印刷状態を測定することができる。即ち、着色領域が反対面に与える影響を測定することができる。また、着色領域の測定結果と、無着色領域の測定結果と、から測定結果を算出するので、無着色領域の測定結果である印刷用紙の下地の影響を、着色領域の測定結果に反映させることができる。
【0064】
また、表面と裏面との測定結果から、両面から測定した測定結果を反映した一の測定結果を得ることができる。さらに、測定結果が所定の臨界値を超えた場合に、印刷用紙に付加する印刷剤の量を補正するので、測定結果に応じてリニアに補正するよりも、補正に対する処理負担を軽減できる。また、一の印刷用紙に対する測定結果から算出した補正値は、一の印刷用紙以外の印刷用紙について補正する場合に使用するので、同じ印刷用紙に印刷される画像の印刷状態が変化するのを防止することができる。
【0065】
また、濃度測定部50は、搬送路上において、印刷部によって印刷用紙に印刷がされる印刷面側に配置されるので、両面印刷の場合に、裏面から表面に形成されている着色領域の印刷状態を測定することができる。即ち、着色領域が反対面に与える影響を測定することができる。
【0066】
<対応関係>
複合機10が「印刷装置」の一例である。印刷ヘッドが「印字部」の一例であり、第1〜第4ローラ45〜48が「搬送部」の一例である。濃度測定部50が「測定部」の一例であり、CPU88が「搬送制御部」、「種別判断部」、「両面判断部」、「算出部」、「臨海地判断部」、「補正値算出部」、「補正部」の一例である。
【0067】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0068】
<変形例>
(1)上述した実施形態では、測定したOD値に基づいてインク量調節値を設定、更新する場合について説明したが、ユーザからの印刷指示や、用紙厚測定器から印刷用紙の種別や、厚さを取得し、その印刷用紙の種別や厚さと、測定したOD値とに応じてインク量調節値を設定、更新しても良い。この場合は、より適切なインク量調節値に設定、更新することができる。
【0069】
(2)また、本実施形態では、OD値の測定中は、印刷用紙を停止させる場合について説明したが、OD値を測定可能な範囲であれば、印刷用紙を搬送しながら、OD値を測定するように構成しても良い。この場合は、OD値測定に伴う印刷の遅延を防止できる。
【0070】
(3)また、本実施形態では、印刷用紙を停止(S710)、反転することで(S512)、表面に形成された着色領域が印刷用紙に馴染む時間を確保する場合について説明したが、例えば、表面に着色領域を形成してから、測定を開始するまでの間、通常の印刷よりも搬送速度を遅くしたり、測定地点を通過させた後、反転させることなく、印刷用紙を逆送させるようにしても良い。
【0071】
(4)また、本実施形態では、予め用意されたテストパターンではなく、指示された印刷画像から測定対象を特定し、その特定した測定対象について測定する場合について説明したが、予め用意されたテストパターンを測定するようにしても良い。かかる場合は、指示された印刷画像から測定対象を特定する、という処理負担を軽減できる。
【0072】
(5)また、本実施形態では、1つの測定対象について、1回測定を行う場合について説明したが、1つの測定対象について、複数回測定を行うように構成しても良い。複数回測定を行うことで、より正確な測定結果を得ることができる。
【0073】
(6)また、本実施形態では、図6(a)に示す通り、トレイ開閉フラグ91bがオンである場合(S601:Yes)、または、用紙種別が変更された場合(S602:Yes)、または、トレイが変更された場合(S603:Yes)に、OD値を測定する場合について説明したが、例えば、印刷解像度に応じて、OD値測定の実行/非実行を切替えても良い。例えば、印刷モードが、標準モードと、ファインモードとの場合(標準解像度以上のモードの場合)、OD値測定を実行し、ドラフトモードの場合(低解像度モード)、OD値測定を非実行とするように構成しても良い。
【0074】
(7)また、特定する測定対象は1つに限らず、複数であっても良く、また、複数の色毎に、1つ以上の測定対象を特定しても良い。複数の色毎に、1つ以上の測定対象を特定した場合には、各色毎に適切なインク量調節値を設定できる。また、一つの色から他の色のインク量調節値を設定しても良い。
【符号の説明】
【0075】
16:反転経路、39:印刷ヘッド、45〜48:第1〜第4ローラ、50:濃度測定部、62:排紙ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷剤によって印刷用紙に画像を印刷する印刷部と、
前記印刷部から排紙部に印刷用紙を搬送する搬送路を有する搬送部と、
前記搬送部の搬送路上に設けられ、前記印刷部によって前記印刷用紙に前記印刷剤が付加されて形成される着色領域を、前記着色領域が形成された第1面と、前記第1面の反対面である第2面とのうち、少なくとも一方の面から測定する測定部と、
前記測定部によって前記着色領域を測定する場合、前記着色領域が形成されてから所定時間経過後に、前記測定部が前記測定を行うための測定地点を前記着色領域が通過するように前記印刷用紙を搬送する第1搬送処理と、前記測定部によって前記着色領域を測定しない場合、前記着色領域が形成されてから前記所定時間経過前に、前記測定地点を前記着色領域が通過する第2搬送処理と、を実行する搬送制御部と、
を備えていることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記搬送部は、前記搬送路から分岐して、前記印刷用紙を反転させた状態で前記印刷部に前記印刷用紙を搬送する反転経路を有し、
前記搬送制御部は、前記第1搬送処理において、前記印刷シートを前記反転経路に搬送することで前記所定時間を経過させることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記搬送制御部は、前記第1搬送処理において、前記搬送路上で前記印刷シートを停止させることで前記所定時間を経過させることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
第1印刷用紙と、前記第1印刷用紙の次に搬送する第2印刷用紙との用紙種別が異なるかを判断する種別判断部と、
前記搬送制御部は、前記種別判断部によって種別が異なると判断された場合に、前記第2印刷用紙に形成される着色領域を、前記測定部によって測定するように前記第1搬送処理を実行することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
両面印刷指示を受け付けたかを判断する両面判断部と、
前記搬送制御部は、前記両面判断部によって両面印刷指示を受けたと判断された場合に、前記着色領域を、前記測定部によって測定するように前記第1搬送処理を実行し、
前記測定部は、前記着色領域を、前記着色領域が形成されている前記第1面とは反対面である前記第2面から測定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記測定部は、さらに、前記印刷部によって前記印刷用紙に前記印刷剤が付加されていない無着色領域を測定し、
前記着色領域の着色測定結果と、前記無着色領域の無色測定結果と、から一の測定結果を算出する算出部をさらに備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
前記測定部は、前記着色領域を、前記着色領域が形成された前記第1面からと、前記第1面の反対面である前記第2面からとの両面から測定し、
前記第1面から測定した第1面測定結果と、前記第2面から測定した第2面測定結果と、から一の測定結果を算出する算出部をさらに備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項8】
前記測定部によって測定した測定結果が、所定の臨界値を超えたかを判断する臨界値判断部と、
前記臨界値判断部によって所定の臨界値を超えたと判断された場合に、前記測定結果を用いて、前記印刷剤の量を補正する補正値を算出する補正値算出部と、
前記補正値算出部によって算出した補正値を用いて、前記印刷用紙に付加する前記印刷剤の量を補正する補正部と、
をさらに備えていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項9】
前記補正値算出部は、前記測定部によって一の印刷用紙に対する測定結果を用いて、前記印刷剤の量を補正する補正値を算出し、
前記補正部は、前記補正値算出部によって算出した補正値を用いて、前記一の印刷用紙以外の印刷用紙に付加する前記印刷剤の量を補正することを特徴とする請求項8に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記測定部は、前記搬送路上において、前記印刷部によって前記印刷用紙に印刷がされる印刷面側に配置されることを特徴とする請求項1か9のいずれかに記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−210719(P2012−210719A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76555(P2011−76555)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】