説明

印刷装置

【課題】異常時の対応を適切に行う。
【解決手段】駆動対象物を駆動させるモーターと、駆動対象物の速度を検出する検出部と、加速域、定速域、及び、減速域を有する速度プロファイルに基づいて、モーターの駆動を制御する制御部であって、検出部の検出速度と速度プロファイルの速度の差が閾値を超えた場合、駆動対象物の速度が異常であると判断する制御部と、を備え、定速域では第1閾値が設定され、加速域及び前記減速域の少なくとも一部では第1閾値よりも大きい第2閾値が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置(例えばインクジェットプリンター)には、印刷ヘッドを搭載したキャリッジを移動させるためのキャリッジモーターや、媒体(例えば紙)を搬送するための搬送モーター等の各種モーターが備えられている。そして、印刷装置の制御部は、所定の速度プロファイルに基づいて、これらのモーターを駆動している。
【0003】
例えば、キャリッジモーターの場合、制御部は、キャリッジを媒体の幅方向に往復移動させる毎に、加速、定速、減速とキャリッジモーターを駆動させる。ところで、この往復移動の際に、用紙ジャム等によりキャリッジの速度を目標速度に制御できないことがある。そこで、キャリッジの速度から、キャリッジ移動に対する障害を推定し、異常と判断した場合、キャリッジの走査を停止させるようにしたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−283561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように加速、定速、減速とモーターを駆動させる場合、定速域ではモーターの駆動が安定しているので、異常を誤検出するおそれが小さい。しかし、定速域ではエネルギーが大きいとともに、距離(移動距離)が長いため、異常が発生するとその影響(用紙の破損や移動機構の故障など)が大きくなるおそれがある。
一方、加速域や、減速域ではモーターの駆動の動作が不安定であり、異常を誤検出するおそれが大きい。しかし、これらの領域ではエネルギーが小さく、また距離(移動距離)が短いため、異常が発生してもその影響は小さい。
よって、速度異常の判断を同じ判断基準で行うと、異常時の対応を適切に行えないおそれがあった。
そこで、本発明は、異常時の対応を適切に行なうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、駆動対象物を駆動させるモーターと、前記駆動対象物の速度を検出する検出部と、加速域、定速域、及び、減速域を有する速度プロファイルに基づいて、前記モーターの駆動を制御する制御部であって、前記検出部の検出速度と前記速度プロファイルの速度の差が閾値を超えた場合、前記駆動対象物の速度が異常であると判断する制御部と、を備え、前記定速域では第1閾値が設定され、前記加速域及び前記減速域の少なくとも一部では前記第1閾値よりも大きい第2閾値が設定されることを特徴とする印刷装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】インクジェットプリンターの概略構成図である。
【図2】制御部のうちのキャリッジモーターの駆動を制御する部分の構成を示したブロック図である。
【図3】印刷中に用紙ジャムが発生した状態の一例を示す図である。
【図4】図4A、図4Bは、キャリッジモーターに設けられた一対のエンコーダー出力の形態を示す波形図である。
【図5】キャリッジモーターの速度プロファイルの説明図である。
【図6】定速域と加減速域との比較を示す図である。
【図7】本実施形態における閾値の設定についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0009】
駆動対象物を駆動させるモーターと、前記駆動対象物の速度を検出する検出部と、加速域、定速域、及び、減速域を有する速度プロファイルに基づいて、前記モーターの駆動を制御する制御部であって、前記検出部の検出速度と前記速度プロファイルの速度の差が閾値を超えた場合、前記駆動対象物の速度が異常であると判断する制御部と、を備え、前記定速域では第1閾値が設定され、前記加速域及び前記減速域の少なくとも一部では前記第1閾値よりも大きい第2閾値が設定されることを特徴とする印刷装置が明らかとなる。
このような印刷装置によれば、異常と判断する閾値を、定速部と、加速部及び減速部の少なくとも一部で異ならせているので、異常時の対応を適切に行なうことができる。
【0010】
かかる印刷装置であって、前記第1閾値及び前記第2閾値は、前記検出部の検出速度が前記速度プロファイルの速度よりも遅い場合に対して定められていてもよい。
このような印刷装置によれば、障害物などにより駆動対象物の速度が低下する場合の異常を検出することができる。
【0011】
かかる印刷装置であって、前記第1閾値及び前記第2閾値は、前記検出部の検出速度が前記速度プロファイルの速度よりも速い場合に対して定められていてもよい。
このような印刷装置によれば、駆動対象物が暴走する場合などの速度が上昇する場合の異常を検出することができる。
【0012】
かかる印刷装置であって、前記検出部の検出速度と前記速度プロファイルの速度との差は、予め定められた周期毎に算出され、前記加速域及び前記減速域の少なくとも一部では、前記定速域よりも前記周期が長く設定されていることが望ましい。
このような印刷装置によれば、定速部以外では制御部による演算量を低減させることができ、定速部では異常の検出の精度を高めることができるので、効率的に異常の検出を行うことができる。
【0013】
かかる印刷装置であって、前記第2閾値は、前記検出部の検出速度の値にかかわらずに、前記駆動対象物の速度が異常であると判断されない大きさであってもよい。
このような印刷装置によれば、動作の不安定な部分では比較を行わないようにすることができ、制御部による演算量を減らすことができる。
【0014】
かかる印刷装置であって、前記駆動対象物は、印刷ヘッドを搭載して移動範囲内で媒体の幅方向に往復移動するキャリッジであり、前記加速域及び前記減速域の少なくとも一部は、前記移動範囲内のうちの印刷領域外であることが望ましい。
このような印刷装置によれば、印刷品質の低下を防止することができる。
【0015】
以下の実施形態では、印刷装置としてインクジェトプリンターを例に挙げて説明する。
【0016】
===実施形態===
≪プリンターの構成について≫
図1は、インクジェットプリンターの概略構成図である。また、図2は、制御部のうちのキャリッジモーターの駆動を制御する部分の構成を示したブロック図である。
【0017】
図1に示すように、印刷媒体である用紙12が置かれるプラテン10には、図示しない用紙送り機構が設けられ、用紙12が副走査方向に移動される。プラテン10上には、記録ヘッドHを搭載したキャリッジ14が設けられており、キャリッジ14は移動範囲20内において用紙12の幅方向(主走査方向)に往復移動する。この往復移動を可能とするため、キャリッジ14は、キャリッジモーターCMで駆動されるタイミングベルト16に連結具15を介して連結されている。
【0018】
キャリッジ14には記録ヘッドHと共にインクタンク(図示せず)が設けられ、インクタンクには本体側に装着されたインクカートリッジ(図示せず)からインク供給チューブ(図示せず)を介してインクが供給される。そして、記録ヘッドH内の圧電素子または発熱素子によりインク滴がインクノズルから吐出される。
【0019】
また、プラテン10の左端には、キャップ22が設けられている。キャップ22は、非印刷状態において記録ヘッドHのインクノズルをキャップし、インクノズル内のインクが乾燥しないように保護する。また、必要に応じてキャップ22に連結されたインク吸引用モーター24によりインクノズル内のインク滴が吸引され、インクノズルがクリーニングされる。一方、プラテン10の右端には、フラッシング孔28が設けられ、所定の時間間隔または所定の印刷量ごとに、プラテン10の右端に移動してきたキャリッジ14の記録ヘッドHがインク滴を吐出し、インクノズル内のインクが硬化するのを防止する。フラッシング孔28に対向して、吸収剤26が設けられ、フラッシング孔28から吐出されたインク滴が吸収されるとともに、インク吸引用モーター24により吸引されたインクも吸収される。
【0020】
マイクロプロセッサなどからなる制御部18は、キャリッジモーターCMに取り付けられたエンコーダー30(図2参照)からエンコーダー出力ENCを入力し、エンコーダー出力ENCをカウントするなどによりキャリッジ14の位置を監視する。そして、制御部18は、キャリッジモーターCMに駆動指令CMDRを出力してキャリッジモーターCMの駆動を制御し、キャリッジ14を移動範囲20内で往復移動させる。また、制御部18は、印刷データに基づいて記録ヘッドH内の圧電素子や発熱素子を駆動するヘッド駆動信号HDRを出力すると共に、所定のエラー発生時に対応してエラー信号ERを出力して、図示しない表示パネルやエラーランプにエラー出力させる。
【0021】
≪制御部の構成について≫
図2に示すように制御部18は、位置演算部71と、減算器72と、ゲイン73と、速度演算部74と、減算器75と、比例要素76Aと、積分要素76Bと、微分要素76Cと、加算器77と、PWM回路78と、モータードライバー79を有する。
【0022】
なお、本実施形態では、キャリッジモーターCMをPID制御する。PID制御では、目標回転位置と、エンコーダー30の出力から得られる実際の回転位置との位置偏差にゲインKpを乗算して目標回転速度を算出する。そして、制御部18は、この目標回転速度と、エンコーダー30の出力から得られる実際の回転速度との速度偏差に基づいて、比例要素76A、積分要素76B及び微分要素76Cを用いて比例成分、積分成分及び微分成分の演算を行い、これらの演算結果の和に基づいて、キャリッジモーターCMの制御を行う。
【0023】
位置演算部71は、エンコーダー30の出力パルスのエッジを検出し、その個数をカウントし、このカウント値に基づきキャリッジモーターCMの回転位置を演算する。位置演算部71は、2つのパルス信号の比較処理からキャリッジモーター32の正転・逆転を認知し、1個のエッジが検出された時に正転・逆転に応じてインクリメント・デクリメントするように計数処理する。
【0024】
減算器72は、目標位置と、位置演算部71により検出された検出位置との位置偏差を演算する。ゲイン73は、減算器72から出力される位置偏差にゲインKpを乗算し、目標速度を出力する。ゲインKpは、位置偏差に応じて決定される。なお、このゲインKpの値と位置偏差との関係を示すテーブルは、不図示のメモリーなどに格納されている。
【0025】
速度演算部74(検出部に相当する)は、エンコーダー30の出力パルスに基づいて、キャリッジモーターCMの回転速度を演算する。すなわち、速度演算部74は、エンコーダー30の出力パルスのパルス周期を計時し、このパルス周期に基づいてキャリッジモーターCMの回転速度を演算する。言い換えると、速度演算部74はキャリッジ14の速度を検出する。
【0026】
減算器75は、ゲイン73から出力される目標速度と、速度演算部74により検出された検出速度との速度偏差を演算する。
【0027】
比例要素76Aは、速度偏差に定数Gpを乗算し、比例成分を出力する。積分要素76Bは、速度偏差に定数Giを乗算したものを積算し、積分成分を出力する。微分要素76Cは、現在の速度偏差と、1つ前の速度偏差との差に定数Gdを乗算し、微分成分を出力する。比例要素76A、積分要素76B及び微分要素76Cの演算は、リニア式エンコーダー51の出力パルスの1周期毎に行われる。
【0028】
比例要素76A、積分要素76B及び微分要素76Cから出力される信号値は、それぞれの演算結果に応じたデューティを示す信号である。
加算器77は、比例要素76Aの出力と、積分要素76Bの出力と、微分要素76Cの出力とを加算する。
PWM回路78は、加算器77から出力されるデューティ信号に基づいて指令信号を生成する。
【0029】
モータードライバー79は、PWM回路78からの指令信号に基づいてキャリッジモーターを駆動させる。モータードライバー79は、例えば複数個のトランジスタを備えており、PWM回路78からの指令信号に基づいて、トランジスタをオン/オフさせることで、キャリッジモーターCMに電力を供給する。
【0030】
≪キャリッジの速度異常について≫
図3は、印刷中に用紙ジャムが発生した状態の一例を示す図である。図3は、キャリッジ14が、キャップ22が設けられた左端から右方向100に移動中に、用紙ジャム12Aによって移動不能になる場合を示している。この場合、キャリッジ14の速度が低下して、目標速度に制御することができなくなる。
また、図3の状態において強制的に駆動を継続して用紙12が破れた場合や、キャリッジ14の移動機構が故障した場合など、キャリッジ14の速度が目標速度よりも上昇してキャリッジ14が暴走する場合もある。
従って、キャリッジ14の速度を監視して、上述したような異常の発生を検出する必要がある。本実施形態では、後述するようにエンコーダー出力ENCに基づいて算出された速度と、速度プロファイルの速度(目標速度)との比較を行うことによって異常の検出を行っている。
【0031】
≪エンコーダー出力について≫
図4A、図4Bは、キャリッジモーターに設けられた一対のエンコーダー出力の形態を示す波形図である。図4Aは、キャリッジモーターCMが一方に回転して、キャリッジ14を右方向に移動させるときのエンコーダー30の出力波形である。エンコーダー30の一方(エンコーダーAとする)の出力ENC−Aが、他方(エンコーダーBとする)の出力ENC−Bよりも位相が進んだ状態であり、キャリッジモーターCMの回転速度が一定であれば、エンコーダー出力の周期も一定になる。図4Bは、キャリッジモーターCMが逆方向に回転して、キャリッジ14を左方向に移動させるときのエンコーダー出力波形である。この場合は、エンコーダーBの出力ENC−BがエンコーダーAの出力ENC−Aよりも位相が進んだ状態になる。制御部18は、これらのエンコーダー出力ENCを位相状態に応じてカウントし、キャリッジ14の位置や速度を把握し続ける。
【0032】
≪異常の判断について≫
本実施形態の制御部18は、目標速度と、キャリッジ14の移動速度(以下、検出速度ともいう)との差を求めることにより、この速度差に基づいて異常の判断(以下、異常チェックともいう)を行っている。そして、目標速度と、検出速度の差が閾値を超える場合、用紙ジャムや、モーターの故障などの異常が発生したと判断し、キャリッジモーターCMの駆動を停止するようにしている。
【0033】
図5は、キャリッジモーターの速度プロファイルの一例の説明図である。図の横軸は位置(時間)であり、縦軸は速度である。
図のように、本実施形態の速度プロファイルには、停止状態から所定速度まで加速する加速域、所定速度を維持する定速域、所定速度から停止状態まで減速する減速域がある。以下、加速域と減速域をまとめて加減速域ともいう。また、実際には、定速域は加速域及び減速域よりもかなり長いが、図5では、便宜上、定速域の部分を短く示している。制御部18は、このような速度プロファイル(目標速度)に基づいて、キャリッジモーターCMの駆動を制御している。
【0034】
図6は、定速域と加減速域との比較を示す図である。
図のように定速域では、加減速域と比べて、エネルギー(速度エネルギー)が大きく、動作が安定している。また、距離(移動距離)が長い。このため、定速域でキャリッジ14が図3のような用紙ジャムが発生した場合、用紙12を破くおそれがあり、また用紙12を破く量が多くなる。
一方、加減速域では、動作が不安定である(すなわち、目標速度に制御しにくい)が、定速領域と比べて、エネルギー(速度エネルギー)が小さく、距離が短い。つまり、この領域でキャリッジ14が用紙ジャムと衝突したとしても用紙12を破く量は少ない。
【0035】
このため、もし仮に、加減速域と定速域で、異常検出のための条件(閾値)を同じにすると、適切な対応を行えないおそれがある。例えば、動作の不安定な加減速域において閾値を厳しく設定すると、正常であるにもかかわらず、異常と判断してしまうおそれがある。一方、定速域で閾値を緩く設定すると、異常が発生した場合に、異常の検出が遅れて用紙12の破損や移動機構の故障など被害が大きくなるおそれがある。
【0036】
そこで、本実施形態では定速域と、加減速域の少なくとも一部とで閾値を異ならせている。具体的には、定速域では閾値を厳しく(小さく)設定し、加減速域の少なくとも一部では閾値を緩く(大きく)設定している。
【0037】
図7は、本実施形態における閾値の設定についての説明図である。
本実施形態では図に示すように、加速域をa〜cの3つの領域分け、また、減速域をd〜fの3つの領域に分けている。なお、図に示すようにキャリッジ14の移動範囲のうち、加速域の領域cから減速域の領域dまでが用紙12に印刷を行う領域(印刷領域)になっている。
【0038】
この図では、印刷領域外における加速域の領域(領域a、b)と減速域の領域(領域e、f)での異常の判断条件(閾値)を定速域の閾値よりも大きく設定している。具体的には、印刷領域内では閾値を目標速度のプラス10%(上限)及びマイナス10%(下限)に設定しているのに対し、領域b及び領域eでは、閾値を目標速度のプラス50%(上限)及びマイナス50%(下限)に設定している。さらに、印刷領域外のうち最も動作が不安定な領域a及び領域fでは、閾値を無限大に設定している。つまり、領域a及び領域fでは、検出速度の値にかかわらずに、キャリッジ14の速度が異常であると判断されないようになっている。こうすることにより、目標速度と検出速度の速度差を比較する必要がなくなるので、演算量を減らすことができる。
【0039】
また、本実施形態では、閾値と同様に、異常チェックを行う間隔(周期)も領域に応じて変えている。例えば、印刷領域内(定速域、加速域c、減速域d)では、異常チェックを行う間隔を短くし、加速域b及び減速域eでは、異常チェックを行う間隔を(印刷領域よりも)長くしている。また、加速域a及び減速域fでは異常チェックを行わない。こうすることにより、定速域、加速域c、減速域dでは、速度異常の検出精度を高めることができ、加速域b、加速域c、減速域d、減速域fでは、異常チェックのための演算量を軽減させることができる。
【0040】
このように、本実施形態では、定速部における異常の判断条件(閾値)を厳しく設定しているので、例えば図3のような用紙ジャム12Aによってキャリッジ14の速度が低下した場合、迅速に異常を検出することができる。また、逆に、キャリッジ14が暴走する場合も同様に、速度が上昇したことを迅速に検出することができる。このように、異常を迅速に検出することができ、その際にキャリッジモーターCMを停止することで、用紙12の破損や移動機構の故障など被害の低減を図ることができる。
【0041】
一方、加減速域のうちの一部(印刷領域外)では、閾値を定速域よりも大きく設定しているので、異常と検出されにくくなっている。これにより、動作が不安定であることによる、異常の誤検出を防止することができる。また、印刷領域外においても加速域、減速域を複数の領域に分けており、移動範囲の最も外側の領域a及び領域fでは、閾値が無限大であり(異常の検出を行なう必要がなく)、このため演算量を減らすことができる。
【0042】
以上説明したように、制御部18は、エンコーダー30の検出信号ENCに基づいて検出されたキャリッジ14の検出速度と、速度プロファイルの速度(目標速度)を比較し、その差が閾値を超えた場合、キャリッジ14の速度が異常であると判断している。そして、本実施形態では、この閾値として定速域では厳しい(小さい)値が設定され、加速域及び減速域の一部(図7の印刷領域外)では定速域よりも緩い(大きい)値が設定されている。
これにより、異常の判断をキャリッジ14の駆動状態に応じて行うことができ、異常時の対応を適切に行うことができる。
【0043】
===変形例===
前述の実施形態(図7)では、移動範囲の最も外側の領域a及び領域fの閾値が、領域b及び領域eの閾値よりも大きかった(無限大であった)が、領域a及び領域fに、領域b及び領域eと同じ閾値(目標速度の±50%)を設定してもよい。
また、印刷領域外の領域a、領域b、領域e、及び領域fの閾値を無限大とし、これらの領域では検出速度と目標速度の比較を行わないようにしてもよい。
また、前述の実施形態(図7)において定速域に近い領域c及び領域dの閾値を、定速域の閾値よりも大きくしてもよい。例えば、領域c及び領域dの閾値を目標速度の±30%に設定してもよい。
【0044】
===その他の実施形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0045】
例えば、前述の実施形態では、キャリッジ14の移動を制御するキャリッジモーターCMの制御について説明したが、これには限られず、例えば、用紙12を搬送させる搬送モーターの制御についても同様にして異常の検出を行ってもよい。
【0046】
また、前述の実施形態では目標速度に対する閾値を上限側と下限側の両方に設定していたが、何れか一方であってもよい。例えば、印刷領域外では、用紙ジャムによる速度の低下の可能性が小さいので、キャリッジ14の暴走のみを検出するように上限だけに閾値を設けてもよい。
【0047】
また、前述の実施形態では加速域c〜減速域dまでが印刷領域であったが、これには限られない。例えば加速域b〜減速域eまでが印刷領域であってもよいし、あるいは、定速域のみが印刷領域であってもよい。
【0048】
また、図7に示すような閾値を、速度プロファイルと同様にデータ(テーブル)としてメモリーなどに記憶させておいてもよい。この場合、閾値を算出するための演算が不要になる。一方、閾値を速度プロファイルの速度に対する割合(%)として、領域毎に設定しておけば、速度プロファイルの速度に基づいて演算を行うことによって各領域の閾値を算出できるので、データ量を減らすことができる。
【符号の説明】
【0049】
10 プラテン、12 用紙、14 キャリッジ、
15 連結具、16 タイミングベルト、
18 制御部、20 移動範囲、
22 キャップ、24 インク吸引用モーター、
26 吸収剤、28 フラッシング孔、
CM キャリッジモーター、H 記録ヘッド、
ENC エンコーダー出力、CMDR 駆動指令、
ER エラー信号、HDR ヘッド駆動信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象物を駆動させるモーターと、
前記駆動対象物の速度を検出する検出部と、
加速域、定速域、及び、減速域を有する速度プロファイルに基づいて、前記モーターの駆動を制御する制御部であって、前記検出部の検出速度と前記速度プロファイルの速度の差が閾値を超えた場合、前記駆動対象物の速度が異常であると判断する制御部と、
を備え、
前記定速域では第1閾値が設定され、前記加速域及び前記減速域の少なくとも一部では前記第1閾値よりも大きい第2閾値が設定される、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記第1閾値及び前記第2閾値は、前記検出部の検出速度が前記速度プロファイルの速度よりも遅い場合に対して定められる、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記第1閾値及び前記第2閾値は、前記検出部の検出速度が前記速度プロファイルの速度よりも速い場合に対して定められる、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の印刷装置であって、
前記検出部の検出速度と前記速度プロファイルの速度との差は、予め定められた周期毎に算出され、
前記加速域及び前記減速域の少なくとも一部では、前記定速域よりも前記周期が長く設定されている、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の印刷装置であって、
前記第2閾値は、前記検出部の検出速度の値にかかわらずに、前記駆動対象物の速度が異常であると判断されない大きさである
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の印刷装置であって、
前記駆動対象物は、印刷ヘッドを搭載して移動範囲内で媒体の幅方向に往復移動するキャリッジであり、
前記加速域及び前記減速域の少なくとも一部は、前記移動範囲内のうちの印刷領域外である
ことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−25097(P2012−25097A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167856(P2010−167856)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】