説明

印刷装置

【課題】 有機ELアレイを用いた電子写真方式の印刷装置において、有機ELアレイの輝度低下にともなう印刷品質の低下を防止する。
【解決手段】 感光体と、複数の発光素子が配列した発光素子アレイと、印刷データとエージングデータのうちの一方のデータを選択して前記発光素子アレイに入力する選択回路とを備え、
前記発光素子アレイは、選択されたデータを電流に変換して、決められた時間に前記発光素子に供給する駆動回路を含んでおり、
前記印刷データは、前記発光素子の点灯と消灯に対応する2値データであり、
前記エージングデータは、前記選択回路が前記印刷データを選択している期間に、前記発光素子の点灯もしくは消灯に対応する2値データが前記発光素子アレイに入力された回数に基づいて決定される多値データであることを特徴とする印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、詳しくは複写機やプリンタ等の電子写真方式を用いた印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の印刷装置には、発光ダイオードや有機エレクトロルミネセンス素子などの発光素子を直線状に並べ、これを露光用ヘッドとして用いたものがある。レーザ光をポリゴンミラーで走査する露光方式と異なり、発光素子アレイからの光をレンズアレイを介して感光体面上に照射し、感光体の移動速度に応じた周期で露光を繰り返すことにより感光体面に潜像を形成する。発光素子アレイを用いることにより印刷装置全体が小型化され、騒音も少ない。
【0003】
有機EL素子は、長時間使用すると輝度が低下するという性質がある。有機EL素子アレイ全体で均一に輝度低下する場合は、輝度低下が10%程度であっても印刷品質としては大きな問題にならない。しかし、一部の有機EL素子が他よりも長い時間点灯し続けるような印刷を繰り返すと、アレイの場所によって輝度低下の程度が違ってしまう。この場合には、輝度低下が1〜5%であっても印刷画像にスジ状のムラが生じてしまい、印刷品質の悪化を招いてしまう。
【0004】
特許文献1は、印刷中の各有機EL素子の点灯回数をカウントし、各有機EL素子の点灯回数が揃うように、印刷後に追加点灯する発明を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−334990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
印刷後の追加点灯によって点灯回数をそろえようとすると、追加点灯の回数が多いときはそれだけ時間がかかる。追加点灯期間中は印刷が中断されるので、追加点灯時間が長いと単位時間当たりの印刷枚数が少なくなり、利用上の不便をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述した課題を鑑みたものであり、露光用ヘッドとして有機ELアレイを用いた電子写真方式の印刷装置において、有機ELアレイの輝度低下にともなうスジ状の印刷ムラを解消することを目的とする。
【0008】
本発明は、感光体と、複数の発光素子が配列した発光素子アレイと、印刷データからエージングデータを生成するエージングデータ生成回路と、印刷データとエージングデータのうちの一方を選択して前記発光素子アレイに入力する選択回路とを備えた印刷装置であって、
前記発光素子アレイは、前記入力されたデータを電流に変換して前記発光素子に供給する駆動回路を含み、
前記印刷データは、前記発光素子の点灯と消灯に対応する2値データ、または前記発光素子の点灯デューティに対応する中間調を含むデータ、であり、
前記エージングデータは、前記選択回路が前記印刷データを選択している期間に、前記発光素子の点灯もしくは消灯に対応する2値データが前記発光素子アレイに入力された回数、または、前記選択回路が前記印刷データを選択している期間に、前記発光素子アレイに入力される前記発光素子の点灯デューティに対応する中間調を含むデータもしくはその補数の総和、に基づいて決定される多値データであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電流振幅を変調した追加点灯によって印刷中の点灯回数を補うので、追加点灯の時間が大幅に短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の印刷装置の概略図である。
【図2】本発明の印刷装置に用いられる露光ヘッドの概略図である。
【図3】本発明の印刷装置に用いられる有機ELアレイの平面図である。
【図4】本発明の印刷装置に用いられる有機ELアレイの回路図である。
【図5】本発明の印刷装置におけるデータ処理システムのブロック図である。
【図6】本発明の印刷装置におけるエージングデータの生成手順を示す図である。
【図7】本発明の印刷装置における別のエージングデータの生成手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る印刷装置の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書で特に図示または記載されない部分に関しては、当該技術分野の周知または公知技術を適用する。また以下に説明する実施形態は、有機エレクトロルミネセンス素子(以下、有機EL素子という)を例に取っているが、無機EL素子、LED,電界放出素子などの他の発光素子にも適用できる。
【0012】
図1は、本発明の実施形態である印刷装置の構成を示す概略図である。
【0013】
記録ユニット14は、感光材料が表面に塗布されたドラム状の感光体15と、帯電器16と、露光ヘッド17と、現像器18とを含んでいる。感光体15の表面が帯電器16で帯電させられ、露光ヘッド17内にある発光素子アレイが発光して感光体15を露光する。感光体の感光量は、露光照度と露光時間の積によって制御される。発光素子アレイの各発光素子は印刷データに応じて点灯または消灯される。発光素子が点灯し露光されたところは帯電がなくなり、感光体表面に静電潜像が形成される。
【0014】
記録ユニット14は、現像器18によって静電潜像にトナーを付着させ、転写器19によって静電潜像に付着したトナーを用紙12に転写する。用紙12は本体内の搬送ローラー13によって記録ユニット14に搬送される。記録ユニット14で画像データが転写された用紙12は、定着器110によってトナーが定着され、排出される。異なる色のトナーを備えた記録ユニット14を複数並べ、用紙12に順に印刷することでカラー画像を得ることもできる。
【0015】
露光ヘッド17の概略を図2に示す。
【0016】
露光ヘッド17は、有機ELアレイ21とレンズアレイ22とが筐体23によって一定距離で固定されたものである。有機ELアレイ21は、複数の有機EL素子211を図2の紙面に垂直に並べて形成されている。有機EL素子の並んだ方向は、感光体15の回転軸と平行である。
【0017】
レンズアレイ22はロッドレンズ221を有機EL素子211と平行に多数個並べて形成される。レンズアレイ22は有機EL素子211と感光体15の間に位置し、有機EL素子211から出射した光が、ロッドレンズ221を介して感光体15の表面で結像するようになっている。レンズアレイ22中のロッドレンズ221の数は、有機EL素子211の数と同じでなくてもよい。
【0018】
図3は有機ELアレイ21を発光面側から見た平面図である。
【0019】
有機ELアレイ21は、線状に配列した4728個の有機EL素子211を備えている。有機EL素子211の配列ピッチは42.3umであり、600dpiの精細度の画像を形成することが可能である。有機ELアレイ21は、感光体15上に、その移動に合わせて有機EL素子211と同じ42.3umピッチで露光を繰り返す。A4サイズ(210mm×297mm)の用紙に、長辺287mm、短辺200mmの有効領域で印刷する場合、1ページあたり6785ライン分の印刷データが入力される。1ライン当たりの露光時間はプロセススピードで決まっており、1ページを4秒で印刷するためには600us/1ラインの時間で露光が行われる必要がある。この時間が有機ELアレイの1回の発光時間になる。
【0020】
図4は有機ELアレイ21の回路を示す図である。有機ELアレイ21は、有機EL素子211の他に、それと同数の駆動回路52と、入力されるデータを各駆動回路に送る信号変換回路51を含んでいる。
【0021】
1ラインの印刷データは、クロック信号とともに信号変換回路51に入力される。後述するエージングモードでは、印刷データの代わりにエージングデータが入力される。以下の動作は印刷モードとエージングモードで全く同じである。
【0022】
信号変換回路51は、クロック信号に同期してシリアルに入力されるデータをパラレルデータに変え、さらに適当なアナログ電圧に変換して情報線Data1〜Data4728に出力する回路である。信号変換回路51は不図示のシフトレジスタとD/Aコンバータなどで構成することができる。
【0023】
情報線Data1は駆動回路52に接続されている。他の列にも同様に情報線Dataと駆動回路52がある。
【0024】
駆動回路52は、2つのトランジスタM11,M12と保持容量C11で構成されている。トランジスタM11のソースは情報線Data1に、ゲートはラッチ信号線P1に、ドレインは保持容量C11の一端にそれぞれ接続されている。トランジスタM12のゲートはトランジスタM11のドレインに、ドレインは有機EL素子211のアノードにそれぞれ接続されている。トランジスタM12のソースと保持容量C11の他端とは電源電位Vccに固定されている。
【0025】
ラッチ信号線P1がH(high)レベルになるとトランジスタM11が導通状態(オン)になり、情報線Data1のデータ信号が保持容量C11に伝達される。次に、ラッチ信号線P1がL(low)レベルになるとトランジスタM11が非導通状態(オフ)になるが、保持容量C11の電圧は保持される。トランジスタM12はデータ信号の電圧によって決まる電流を生成して有機EL素子211に供給する。
【0026】
印刷時に信号変換回路51に入力される印刷データは2値データであり、有機EL素子211の点灯を指示する信号と消灯を指示する信号の2つのいずれかである。以下、便宜的に、点灯を1、消灯を0とする。点灯と消灯のそれぞれに対応した2つの電圧が情報線Dataに出力される。
【0027】
なお、印刷データが2値でなく中間調を含むデータであるときは、1ライン当たりの有機EL素子の点灯デューティを調節する。点灯デューティを変えるには、図4の保持容量C11のトランジスタM12とは反対側の端子にランプ電圧を与え、保持容量C11の電圧によってトランジスタM12のゲート電圧が閾値電圧に達する時間を変調する。または、トランジスタM12と有機EL素子211の間にスイッチを設け、1ラインの露光中にこのスイッチのオン時間を印刷データに応じて調節することもできる。
【0028】
図5は、本発明の印刷装置におけるデータ処理システムの構成を示すブロック図である。
【0029】
データ処理システムは、選択回路61、記憶回路62、エージングデータ生成回路63および制御回路64を有している。
【0030】
印刷装置は、印刷とエージングの2つのモードに切り替えられて動作する。
【0031】
制御回路64は、印刷モードとエージングモードを切り替えるモード制御信号を出力する。モード制御信号は、選択回路61とエージングデータ生成回路62に送られる。制御回路はまた、クロック信号を発生して有機ELアレイ21の信号変換回路51に送る。
【0032】
データ処理システムが印刷モードにあるかエージングモードにあるかによって、選択回路61は、外部のホストコンピュータなどから入力される印刷データとエージングデータ生成回路63で生成されるエージングデータのいずれか一方を選択し、選択した方のデータを有機ELアレイに送る。印刷モードでは、選択回路61が印刷データを選択して有機ELアレイ21に送り、有機ELアレイ21はその印刷データにしたがって画像を印刷する。エージングモードでは、選択回路61がエージングデータを選択して有機ELアレイ21に送り、それによって有機ELアレイの各有機EL素子が発光するが、印刷はしない。
【0033】
有機ELアレイ21には画素(有機EL素子211と駆動回路52の組を画素と呼ぶ)と同数のデータ信号がシリアルに入力され、それに従って各画素の有機EL素子211が点灯または消灯して感光体が露光される。印刷データは、同時に入力される制御信号に同期してラインごとに入力され、そのつど露光が行われる。印刷データは、有機EL素子211を点灯させる“1”の信号と、消灯させる“0”の信号のいずれかの2値データである。
【0034】
印刷モード時に入力された印刷データは記憶回路62に保存される。記憶回路62は、選択回路61が印刷データを選択している期間に、有機ELアレイ21の画素ごとに、点灯を示す“1”のデータが来た回数をカウントし記憶する。消灯を示す“0”のデータが来た回数をカウントし記憶回路62に記憶させてもよい。印刷モードが終了し、エージングモードに切り替えられると、エージングデータ生成回路63が、記憶回路62に保存された内容をもとにエージングデータを作り、選択回路61に送る。
【0035】
決められた時間に印刷を続けそれが終了すると、あるいは決まった枚数の印刷を行いそれが終了すると、印刷装置は印刷モードからエージングモードに切り替えられる。
【0036】
エージングモードになると、エージングデータ生成回路63が、印刷モードで記憶回路62に保存された印刷データの集計結果をもとにエージングデータを生成し、選択回路61に出力する。選択回路61は印刷データとエージングデータのうちのエージングデータを選択し、有機ELアレイ21に送る。
【0037】
図6は、1ページ分の印刷データからエージングデータを生成する手順を示す図である。
【0038】
図6(a)は、印刷モード中に入力された1ページ分の印刷データを示している。「画素番号」は有機ELアレイ21の画素番号1から11までの画素を示し、「ライン番号」は第1行から6785行までのラインを示している。画素番号は11列までしか示していないが、A4サイズの用紙を印刷する有機ELアレイでは4728個の画素がある。
【0039】
図6(b)は(a)の印刷データについての各画素の点灯回数である。(b)は記憶回路62に蓄えられている。エージングデータ生成回路63は、記憶回路62から(b)を読み出し、以下の(c),(d),(e)の値を算出する。
【0040】
図6(c)は全ライン数6785から(b)の値を差し引いた数であり、画素が消灯状態にあった回数である。記憶回路62に点灯回数でなく消灯回数が記憶されているときは、(c)は(b)の値をそのまま持ってくればよい。その場合は、全ライン数のデータを用いる必要がない。
【0041】
(c)の値はその画素を追加点灯すべき回数を示している。(c)はエージングの元になるデータであり、エージングは(c)の値に比例する電流を有機EL素子に流して行われる。
【0042】
図6(d)は、(c)の値が最大である画素(図6の例では画素番号3の6714が最大であるとする)のデータを“255”として、これでその他の列のデータを規格化した結果である。画素番号1の場合、(5070/6714)*255=192.6、これを整数化して193とする。(c)の消灯回数の値は(d)で0〜255の整数に量子化される。
【0043】
エージングデータ生成回路63は(d)の値をエージングデータとして出力する。エージングは、各列の有機EL素子に、一定の時間、この階調レベルに応じた電流を流すことにより行なわれる。エージングの時間は次の(e)で説明する方法で決定される。
【0044】
エージングデータ生成時の量子化の階調数はあらかじめ決められており、エージングによって発光素子の輝度が均一化される精度を決定する。印刷時の点灯回数に大きな差がない場合は、256階調でなく、64階調、あるいはさらに小さい階調数で量子化してもよい。有機EL素子を印刷時の発光回数の多いほうと少ないほうに2分して、2値の階調でエージングしてもよい。
【0045】
図6(e)は、エージング時間、すなわちエージングモードで電流を流す時間を算出した結果である。この時間は、印刷モードの1ラインあたりの露光時間600μsに(c)の最大値6714を掛けた値を、あらかじめ定められた一定の加速係数で割った値である。ここでは加速係数を5としたので、(e)のエージング時間は
6714*600μs/5=0.806秒
となる。
【0046】
加速係数は、エージング時の階調レベルの最高値すなわち255に対応する電流と、印刷時の点灯データに対する電流の比である。この比が5のとき、エージング電流は印刷時の平均電流の5倍となり、エージング時は劣化が印刷時よりも5倍速く進むので、エージング時間は1/5でよい。
【0047】
加速係数を1とし、エージング電流の最大値を印刷モードでの点灯電流と同じにすると、エージング時間は1ページの印刷時間と同じ位に長くなってしまう。エージング電流の最大値を印刷モードでの点灯電流より大きくすることによりエージング時間を短くすることができる。追加点灯の必要回数が少ない印刷データの場合は、加速係数を1に近い値にすることも可能である。
【0048】
エージングデータは“0〜255”、“0〜63”などの多値データであって、有機ELアレイ21は、この多値データを階調データとして電流振幅を変調させた駆動を行う。このため、信号変換回路51は、2値の電圧だけでなく多値の電圧レベルが生成できるようなDAコンバータを備えていることが好ましい。
【0049】
また、加速係数を1より大きくするときは、印刷モードより大きな最大電流がエージングモードで必要である。そのため、信号変換回路51の出力する階調信号電圧の振幅は、印刷モードにおける2値信号の振幅より大きく設定される。これによってトランジスタM12のゲートソース間電圧が大きくなり、大きなドレイン電流が流れる。
【0050】
エージングが終了した後、記憶回路62の内容は初期化され、印刷モードに戻る。
【0051】
先に述べたように、印刷データが2値でなく中間調を含む場合、例えば印刷データが、点灯、半点灯、消灯の3段階に対応した3値である場合、においては、1ライン当たりの有機EL素子の点灯デューティを変調して中間の露光量を得ることができる。フルに点灯するときのデータを”1”、まったく点灯しないときのデータを”0”とし、中間の露光量に対応するデータをデューティに応じて0と1の間の数に割り当てると、2値の場合の点灯回数、すなわち図6(b)の値に相当するのは、入力される全データの総和である。消灯回数、すなわち図6(c)の値に相当するのは、各データの1に対する補数の総和に相当する。(d)以下の手順は2値データの場合と同じである。
【0052】
以上説明した手順でエージング電流とエージング時間を決定することにより、エージング時の発光強度は、従来技術における追加露光の発光強度の積算値と一致する。このようなエージングモードを追加することで、印刷モードとエージングモードを合わせた積算発光量が有機ELアレイ内の全有機EL素子について同じになる、その結果、スジ状の印刷ムラは緩和され、印刷品位を長期的に維持することが可能となる。また、電流振幅を変調し、一定の時間でエージングを行うことにより、エージングに要する時間を印刷時間に比べて短くすることができる。
【0053】
図6で説明したエージングデータの生成方法では、白い紙に黒の文字で書かれた文書など、黒く印刷される箇所(有機EL素子の消灯回数)が少ない画像の場合は、エージング時間は短く、かつ印刷データによって大きくは変わらない。逆に、全面が黒に近い画像のような、消灯回数が点灯回数より圧倒的に大きい印刷データが入力されると、エージング時間が長くなってしまう。印刷装置としては、どのような印刷データが入力された場合でも、エージング時間を短く保つことが好ましい。
【0054】
図7は、図6とは別のエージングデータの生成手順を示す図である。図7と同じ部分には同じ符号をつけた。
【0055】
図7(a)と(b)は図7と同じであるので説明を省略する。
【0056】
図7(c)は、(b)の値の最大値(図7の例では、画素番号6の列が3135で最大であるとする)から各列の(b)の値を差し引いた結果である。(c)の値は、印刷中に最も点灯回数の多かった列の点灯回数をそのままにして、ほかの列の点灯回数をそれにそろえようとしたときの追加点灯の回数に他ならない。
【0057】
以下の手順は図6と同じであり、図7(d)で(c)の最大値を255で規格化し、これをエージングデータとする。図7(e)でエージング時間を算出する。
【0058】
図7の例では、(c)の最大値は画素番号3の3064であり、印刷時の1ラインあたりの露光時間を600μs、加速係数を5とすると、エージング時間は0.368秒となる。
【0059】
印刷データ(a)の点灯回数の代わりに消灯回数をカウントして記憶回路62に記憶する場合は、エージングデータ生成回路63は、記憶回路62から消灯回数のデータを読み出す。その中の最小値を探して、読み出した各列の値からその最小値を差し引いた結果が(c)となる。(d)と(e)の演算は点灯回数カウントの場合と同じである。
【0060】
この方法では、全面が黒に近い画像のような消灯回数が圧倒的に多い印刷データが入力された場合でも、消灯回数の最大と最小の差が小さければエージング時間は短くて済む。
【0061】
露光ヘッド17中の有機ELアレイ21は、有機EL素子211が2列以上配列したものであってもよい。その場合も、列ごとに有機EL素子211の点灯回数もしくは消灯回数をカウントしてそれに基づいてエージングを行う。
【符号の説明】
【0062】
15 感光体
21 有機ELアレイ
211 有機EL素子
51 信号変換回路
52 駆動回路
61 選択回路
62 記憶回路
63 エージングデータ生成回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、複数の発光素子が配列した発光素子アレイと、印刷データからエージングデータを生成するエージングデータ生成回路と、印刷データとエージングデータのうちの一方を選択して前記発光素子アレイに入力する選択回路とを備えた印刷装置であって、
前記発光素子アレイは、前記入力されたデータを電流に変換して前記発光素子に供給する駆動回路を含み、
前記印刷データは、前記発光素子の点灯と消灯に対応する2値データ、または前記発光素子の点灯デューティに対応する中間調を含むデータ、であり、
前記エージングデータは、前記選択回路が前記印刷データを選択している期間に、前記発光素子の点灯もしくは消灯に対応する2値データが前記発光素子アレイに入力された回数、または、前記選択回路が前記印刷データを選択している期間に、前記発光素子アレイに入力される前記発光素子の点灯デューティに対応する中間調を含むデータもしくはその補数の総和、に基づいて決定される多値データであることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記多値データが、前記発光素子の消灯に対応する2値データが前記発光素子アレイに入力された回数、または前記発光素子の点灯デューティに対応する中間調を含むデータの補数の総和を、あらかじめ決められた階調数に量子化したデータであることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記多値データが、前記発光素子の点灯に対応する2値データが前記発光素子アレイに入力された回数と前記回数が最大の発光素子の前記回数との差、または前記発光素子の点灯デューティに対応する中間調を含むデータの総和と前記総和が最大の発光素子の前記総和との差を、あらかじめ決められた階調数に量子化したデータであることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記エージングデータを電流に変換して発光素子に供給する時間が、前記多値データの最高値を変換して得られる電流と、前記点灯に対応する2値データを変換して得られる電流との比で決定されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記多値データの最高値を変換して得られる電流が、前記点灯に対応する2値データを変換して得られる電流より大きいことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記発光素子が有機エレクトロルミネセンス素子であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−99900(P2013−99900A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245796(P2011−245796)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】